JP4350834B2 - 履歴型ダンパ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄骨造、鉄筋コンクリート造および鉄骨鉄筋コンクリート造建物などに組み込んだ履歴型ダンパの累積変位量の測定機構、およびそれを組み込んだ履歴型ダンパに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の耐震建築物には、地震時の大きな揺れを吸収する制震部材が建築物の架構内に設けられている。かかる制震部材としては、鋼製弾塑性ダンパ、高減衰オイルダンパ、粘弾性ダンパなど種々の形式のものが開発され使用されている。
【0003】
このうち鋼製弾塑性ダンパは、履歴型ダンパと言われ、一般鋼材の約1/3程度の降伏強度を有する鋼材を使用して、地震時の振動を低降伏点鋼部分で吸収し、建築物に及ぼす振動の影響を減ずるものである。かかる鋼製弾塑性ダンパとしては、ハニカムダンパやアンボンドブレースおよび極低降伏点鋼パネルダンパなどが知られている。
【0004】
極低降伏点鋼パネルダンパなどの履歴型ダンパは、建物の架構内に組み込まれ、地震時にはそれ自体が変形して振動を吸収できるように構成されている。かかる極低降伏点鋼パネルダンパの構成を図11に示す。
【0005】
かかる極低降伏点鋼パネルダンパでは、例えば板厚25mm程度の普通鋼よりなる2枚のエンドプレート1、1’が、平行に対面して設けられ、このエンドプレート1、1’間に上下が挟まれた状態で、例えば板厚6mm程度の極低降伏点鋼パネル2がパネル面を立てて設けられている。
【0006】
上下が挟まれた極低降伏点鋼パネル2の左右両端側には、例えば板厚12mm程度の普通鋼を使用した鋼板からなる枠フランジ3、3’が設けられ、極低降伏点鋼パネル2の周囲は、エンドプレート1、1’、枠フランジ3、3’とで枠状に囲まれている。
【0007】
極低降伏点鋼パネル2のパネル両面には、例えば板厚6mm程度の普通鋼を使用した鋼板を十文字に構成した補強リブ4が設けられている。
【0008】
例えば、図12(a)に示すように、かかる構成の極低降伏点鋼パネルダンパは(図中Aで表示)、柱5や梁6で構成される構面内に設けた間柱7の途中に上下に挟まれるように介在させて、建物の架構に組み込まれることとなる。
【0009】
地震時には、図12(b)に示すように、極低降伏点鋼パネルダンパが他に先行して塑性化して振動エネルギーを吸収し、建物の応答を抑え、柱5や梁6の損傷を最小限に抑える。極低降伏点鋼パネルダンパの支持方法には、図13に示すように、ブレース8を使用した構成もある。
【0010】
上記のように建物の架構内に組み込まれた極低降伏点鋼パネルダンパなどの履歴型ダンパには、地震時の振動吸収時の塑性変形の繰り返しにより、最終的に耐力の低下や破断などの損傷が発生する。これらの損傷は累積変位量と密接に関係しており、累積変位量によってその損傷の状況を推定することができる。
【0011】
地震後に、極低降伏点鋼パネルダンパなどの履歴型ダンパの損傷があるレベルを越えていれば、交換しなければならない。そのため、履歴型ダンパの累積変位量の実態把握は、制震部材としての履歴型ダンパの性能保証上極めて重要なことである。
【0012】
従来、かかる地震時の履歴型ダンパの累積変位量を求めるには、地震応答解析による推定、あるいは時系列変位を測定する地震観測による方法などで対処している。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の地震応答解析による推定では、入力地震動を測定しなければならないため、地震観測装置の設置が必要となる。また、解析上、建物をモデル化するため、履歴型ダンパのうち極低降伏点鋼パネルダンパではその極低降伏点鋼パネル部分1枚の変位としてみた場合には、誤差が大きくなるなどの問題点があった。
【0014】
一方、変位計による時系列変位の測定では、測定精度は高いものの、測定システムが大掛かりとなり現実的には採用し難いという問題点も指摘されていた。
【0015】
そこで、本発明者らは、上記極低降伏点鋼パネルダンパなどの履歴型ダンパに、累積変位量を測定する簡易な機構を設けた構成を提案した(特願平9−290168号)。
【0016】
かかる提案では、例えは図14に示すように、極低降伏点鋼パネルダンパの上下のエンドプレート1、1’の一方に回転支持部材10を取り付け、この回転支持部材10に回転体11を一方向にのみ回転できるように取り付けて、回転距離を累積表示させることにより、極低降伏点鋼パネルダンパの累積変位量を知ることができるように構成した。
【0017】
回転支持部材10は、細長い矩形状に形成され、その一端側が上のエンドプレート1に取り付けられている。エンドプレート1への取り付けは、ボルトなどにより取り付け固定されている。
【0018】
回転支持部材10は、上側のエンドプレート1の下面から鉛直下方に向けて取り付けられ、回転支持部材10の下側には、図14に示すように、板ばね12を介して、回転体11が下側のエンドプレート1’面上を回転できるように設けられている。
【0019】
板ばね12を介して回転体11を支持することにより、回転体11を常に下側のエンドプレート1’面上に押し付け、回転体11が下側のエンドプレート1’面に多少の上下振動が発生しても、上下動に追従して離れないようにしている。不要な空回転を防止して、正確な累積変位量を表示できるようにしている。
【0020】
板ばね12の押し付け力は、極低降伏点鋼パネルダンパに上下動が発生しても、回転体11がエンドプレート1’面上から離れない程度に、且つ極低降伏点鋼パネルダンパが水平変位した場合には、その水平変位に追従して回転体11の回転が滞ることなく回転できるように設定されている。
【0021】
回転体11の回転周面にはゴムなどの摩擦部材13が薄く貼られ、回転体11の周面曲率にほぼ合わせた曲率のツメ状の回転方向規制部材14が、摩擦部材13上をカバーするように設けられている。
【0022】
回転方向規制部材14の先端側内面は、図14に示すように、回転体11の回転周面の摩擦部材13面に急角度を設けて接触させられ、回転体11が時計方向に回転するときは、回転方向規制部材14は回転体11の摩擦部材13面に突っかからずに回転が許容され、逆に、反時計廻りに回転体10が回転しようとする場合には、回転方向規制部材14の先端側が摩擦部材13面に突っかかって回転できないように構成されている。すなわち、回転体11は、エンドプレート1’上を滑ることとなる。
【0023】
さらに、回転体11の正面には、図14に示すように、累積変位量表示部材15が設けられ、回転体11の回転軸に連結されている指針16が、回転体11の累積回転距離に合わせてリング状の目盛17を指し示すように構成されている。
【0024】
回転体11の大きさは、その円周を回転体11の最大回転距離より長くなるように設定しておき、回転体11が最大限度まで回転しても1回転を越えることがないように設定されている。指針16の読み取りに際して、指針16が実際には2回以上回転しているのに1回転と勘違いするなどの誤った指針読み取りが起きないようにしているのである。
【0025】
例えば、図15(a)に示すように、架構内に組み込まれた極低降伏点鋼パネルダンパの上下の2枚のエンドプレート1、1’に力が加わり、極低降伏点鋼パネルダンパでは、上のエンドプレート1が右方向に、下のエンドプレート1’が左方向に相対的に変位する水平変形(以下、かかる変形を簡単に正側変形と呼ぶ。)が発生した場合には、回転体11は下のエンドプレート1’面上を時計方向に回転し、回転距離に合わせて累積変位量表示部材15の指針16も、時計廻りに回転し、回転距離に見合った箇所の目盛17を指す。
【0026】
次いで、上記正側変形が発生した後に、図15(b)に示すように、極低降伏点鋼パネルダンパの上のエンドプレート1が左方向に、下のエンドプレート1’が右方向に相対的に変位する水平変形(以下、この変形を負側変形と呼ぶ場合がある。)が発生した場合には、回転体11と下のエンドプレート1’面との間で、回転体11を反時計方向に回転させようとする力が働くが、回転方向規制部材14により回転体11の反時計方向の回転は拘束され、回転体11は下のエンドプレート1’面上を滑ることとなる。そのため、回転軸に連結された累積変位量表示部材15の指針16は回転せず、正側変形時に示した目盛17を指した状態で止まっている。
【0027】
このようにして、極低降伏点鋼パネルダンパが正側変形をする都度、その変位量に合わせて回転体11が時計方向に回転して、その回転距離の累積が指針16により表示されることとなる。この指針16の指示目盛17を読み取ることにより、極低降伏点鋼パネルダンパの累積変位量を知ることができる。
【0028】
なお、極低降伏点鋼パネルダンパには塑性変位以外に、弾性変位を受ける場合も考えられ、回転体11は弾性変位の場合でも時計方向に回転するので、累積変位量には累積塑性変位量と、累積弾性変位量との両方を合わせた変位量が含まれることとなる。
【0029】
上記構成では、高精度の累積変位量の測定という観点からは、回転体11の順方向への円滑な回転と、逆回転の阻止との両立が技術上必要となる。
【0030】
上記構成では、ツメ状の回転方向規制部材14と回転体11の外周面上に設けた摩擦部材13との圧接による摩擦力で回転阻止を図っているため、大きな水平力がかかる場合には、圧接だけでは十分な摩擦力が得られず回転阻止が確実に行えない場合も想定される。
【0031】
そこで、本発明者は、圧接力以外の簡易な方法で回転力を十分に阻止できる構成の開発が必要と考えた。
【0032】
上記構成の極低降伏点鋼パネルダンパを組み込んだ架構部分は、地震発生後の累積変位量の測定などを除いては、普段に点検する箇所ではなく、長期に亙って地震が発生しない場合には、回転体11の外周面の摩擦部材13面上に埃などが薄く層状に堆積して溜まることとなる。
【0033】
このように摩擦部材13上に埃などが堆積した状態では、回転体11の逆回転阻止時に、摩擦部材13と回転方向規制部材14との間にスリップなどが発生し易くなる。特に、堆積した埃が空気中の水分を吸湿して湿った状態では、より滑りやすくなる。
【0034】
かかる状態で、地震が発生した場合には、本来逆回転を阻止すべきときに、逆回転が幾分かでも発生する虞があり、逆回転した分だけ累積変位量が相殺されて累積変位量の測定誤差が発生することとなる。
【0035】
本発明者は、上記構成において埃などによる測定誤差を招かない構成が必要と考えた。
【0036】
また、回転体11の逆回転を阻止するという観点からは、摩擦部材13と回転方向規制部材14との摩擦力を大きく設定すればよい。しかし、かかる摩擦力を大きく設定すると、弱い地震に基づく微弱振動の場合には回転体11が円滑に回転できなくなり、累積変位量の測定感度を落とすことにもなる。
【0037】
累積変位量の測定誤差に繋がる逆回転の阻止と、累積変位量の測定感度に繋がる正回転の円滑さの確保とでは、摩擦部材13と回転方向規制部材14との摩擦力に関してはその要請が相拮抗することとなり、かかる相拮抗する要請に合わせて摩擦部材13と回転方向規制部材14との摩擦力の設定調整をするのは簡単ではない。
【0038】
本発明者は、かかる調整の必要のない構成が必要と考えた。
【0039】
また、上記構成では、指針16の読み取りに際して、指針16が実際には2回以上回転しているのに1回転と勘違いするなどの誤った指針読み取りが起きないように、回転体10の大きさは、その円周を回転体10の最大回転距離より長くなるように設定しておき、回転体10が最大限度まで回転しても1回転を越えることがないように設定されている。
【0040】
極低降伏点鋼パネルダンパのダンパ能力は、図14に示すように、パネル面を補強リブ4に四等分された極低降伏点鋼パネル2の短辺aと、極低降伏点鋼パネル2の板厚との比率(以下、この比率を幅厚比という。)に強く関係しており、この幅厚比が小さい場合には変形能力が大きくなる。
【0041】
そこで、上記構成の極低降伏点鋼パネルダンパの設置スペースは変えなくても、使用する極低降伏点鋼パネル2の仕様によっては、大きな変位量が予想され、極低降伏点鋼パネルダンパには大きな累積変位量の測定ができる構成が求められる。
【0042】
しかし、特願平9−290168号で提案した構成では、累積変位量は回転体11の1回の回転内で測定できるように構成しているため、予想される累積変位量の増大に合わせてその分回転体11の径を大きくしなければならない。径を大きくした場合には、同じスペースでは、設置できない場合も考えられる。
【0043】
本発明者は、累積変位量を増大させても、回転体の径を大きくしないで済むように、回転体11の回転を複数回行わせても指針読み取りが行えるような構成が必要と考えた。
【0044】
また、特願平9−290168号では、図14に示す構成以外にも、回転体11の回転軸に、一方向にのみ回転を許容する既製の回転軸を使用する構成も提案したが、かかる既製の回転軸を使用した場合にも、以下のような問題点があることがその後の多数の実験から分かった。
【0045】
一方向に回転を許容する既製の回転軸では、その逆回転を阻止する剛性が強いため、ややもすると微弱な地震では、回転体11の回転が鋭敏に行われず滑りが発生して、その分累積変位量の測定に誤差が発生する場合も想定されることが分かった。
【0046】
本発明者は、かかる構成の一方向に回転方向を制御する回転軸の構成を、逆回転を効果的に阻止するとともに、正回転の応答を鋭敏に行えるようにする構成が必要と考えた。
【0047】
本発明の目的は、エンドプレート上に、一方向に回転する回転体を回転させて、その累積回転量から累積変位量を測定する極低降伏点鋼パネルダンパなどの履歴型ダンパで、回転体の逆回転の阻止と、正回転の鋭敏な反応が行えるようにすることにある。
【0048】
本発明の目的は、エンドプレート上に、一方向に回転する回転体を回転させて、その累積回転量から累積変位量を測定する極低降伏点鋼パネルダンパなどの履歴型ダンパで、回転体が複数回回転しても回転量を表示できるようにすることにある。
【0049】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【0050】
【課題を解決するための手段】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0051】
本発明では、履歴型ダンパの制震機能発現時に互いに相対変位するエンドプレートの一方のエンドプレートに設けられた回転支持部材に回転可能に支持された回転体を、回転制御機構により、他方のエンドプレート上を一方向に回転させて、この回転体の累積回転量により累積変位量を測定することができる。
【0052】
上記回転制御機構では、圧接部材の尖端部が、回転体側面に対して回転中心を通らない横断方向に圧接させられているため、正逆の回転に対して、尖端部に逆らわない順な方向の順回転(以下、正回転という場合もある)に対しては回転を許容する。
【0053】
しかし、尖端方向に逆らう逆回転に対しては、尖端部と回転体側面とは対向するように相対運動をするために、尖端部が回転体側面を突くこととなり、単に圧接させて摩擦力で逆回転を阻止する場合とは異なり、より確実に逆回転を阻止させることができる。
【0054】
単に摩擦力による圧接だけで逆回転を阻止するのでは、例えば埃などが介在して摩擦力を減ずる場合には、十分な阻止機能が発揮されない場合も想定されるが、上記のように尖端部が回転体側面を突く構成では、尖端部が側面に刺さるなどして確実に回転阻止が行える。
【0055】
圧接による摩擦力により逆回転を制御する構成では、圧接による摩擦力に関しては、前述のように、逆回転を阻止する観点と、正回転時には鋭敏に反応させる観点とから相拮抗する要請を調整する必要があるが、尖端部で回転体側面を突く構成では、かかる相拮抗する摩擦力の要請を均衡させる調整が必要ない。
【0056】
本発明の他の構成の回転制御機構では、回転軸の外周面に一端側を固定させた圧接部材の他端側を、軸受内面に圧接させて回転軸の回転制御を行うため、機械的に噛み合わせるなどした既製の逆回転を防止する回転軸に比べて、回転剛性がそれ程強く発現されず、既製の回転軸を使用する場合とは異なり、正回転時の応答性が向上して累積変位量の測定感度の向上が図れる。
【0057】
上記構成の圧接部材は、回転軸外周面に、所定間隔で複数枚羽根状の突片に形成すればよい。圧接部材の形状は、かかる突片状に形成しなくても、圧接部材と軸受内面との摩擦力による逆回転を阻止できる形状であればその他の形状でも構わない。
【0058】
さらに、上記構成では、圧接部材の一端側を回転軸の外周面に固定し、他端側を軸受内面に圧接させる構成としたが、逆に、軸受内面側に上記構成の圧接部材を固定しておき、回転軸外周面に圧接部材の他端側を圧接させるようにして、逆回転を阻止できるようにしても構わない。圧接部材は、簡単には、弾性のある素材を湾曲させて圧接力が得られるように構成しておけばよい。
【0059】
本発明の回転表示機構では、回転体に設けた歯車回転推進部材が回転することとにより、歯車状に構成されたカウンタ部材の歯が回転させられるので、回転した歯を確認することにより回転体の回転数を知ることができる。
【0060】
歯を各別に識別可能に構成しておけば、ある特定の歯に着目して、当初位置より一歯分変位していれば、回転体が1回転したと知ることができる。各別に識別可能に構成するに際しては、それぞれの歯部分に順に番号、あるいはその他の符合、記号などを振っておいてもよいし、あるいは色分けにして識別できるようにしても構わない。さらには歯の回転に支障のない部分の形状をそれぞれ変えるなどして識別可能に構成しても構わない。
【0061】
さらには、複数個設けた歯の1個の歯のみを特定できるように構成しておき、歯車状のカウンタ部材の回転周縁に、一歯分ずつ回転数を目盛っておけば、その特定の歯の指し示す目盛を読むことにより、回転数を知ることができる。
【0062】
他の回転表示機構の構成では、回転体側面に設けた渦巻状ガイドに、移動体がガイドに案内されるように設けられているので、回転体が回転すると、移動体は渦巻状ガイドに沿って移動し、その移動体の渦巻状ガイドの位置から、回転数を知ることができる。
【0063】
より具体的には、例えば、渦巻状ガイドの構成としては渦巻管を採用し、この渦巻管内に移動体として球体を入れておけばよい。回転体の回転に合わせて渦巻管は回転することとなるが、渦巻管内の球体は、常に鉛直下の位置に動くため、移動体のある渦巻管の位置により回転数を知ることができる。
【0064】
渦巻状ガイドは、上記渦巻管以外の構成でもよく、例えばレール状に形成しておき、移動体をこのレールに嵌合して左右自在に移動できるように構成しておいても一向に構わない。
【0065】
以上の説明では、履歴型ダンパにおける累積変位量の測定機構に伴う回転制御機構、回転表示機構について説明したが、上記構成の回転制御機構、回転表示機構を設けた累積変位量測定機構を、当初より一体に、極低降伏点鋼パネルダンパなどの履歴型ダンパに設けた構成にしてもよい。
【0066】
あるいは、履歴型ダンパ内に上記構成の累積変位量測定機構を一体に組み込む以外にも、例えば、上記構成の回転制御機構、回転表示機構を設けた累積変位量測定機構を履歴型ダンパとは別体に累積変位量測定装置として構成しておき、この累積変位量測定装置を必要の都度履歴型ダンパに取り付けるように構成してもよい。かかる構成を採用すれば、既存の履歴型ダンパにも取付けることができる。
【0067】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0068】
(実施の形態1)
本実施の形態では、履歴型ダンパの累積変位量測定機構に設ける回転制御機構について説明する。
【0069】
図1は、本発明の回転制御機構を設けた累積変位量測定機構を、履歴型ダンパである極低降伏点鋼パネルダンパに設けた様子を示す正面図である。図2(a)は、本発明の回転制御機構の要部側面図、(b)はその部分を上から見た様子を示す平面図である。なお、以下の説明では、図14に示すと同様の構成部分については、同じ符合を極力使用した。
【0070】
極低降伏点鋼パネルダンパでは、図1に示すように、上下に略矩形のエンドプレート1、1’が対面して設けられ、上下のエンドプレート1、1’間に、極低降伏点鋼パネル2がパネル面を垂直に立てて介在させられている。極低降伏点鋼パネル2の左右両端側には、枠フランジ3、3’が設けられ、エンドプレート1、1’、枠フランジ3、3’とで、極低降伏点鋼パネル2の周囲が囲まれた状態になっている。
【0071】
極低降伏点鋼パネル2の両面には、鋼板を使用して十文字状に構成された補強リブ4が設けられ、極低降伏点鋼パネル2のパネル面が四等分されている。
【0072】
エンドプレート1からは、回転支持部材10が鉛直下方に向けて取り付けられ、回転支持部材10の下側には、図1に示すように、板ばね12を介して、回転体11が下側のエンドプレート1’面上を回転できるように設けられている。
【0073】
回転支持部材10のエンドプレート1への取り付けに際しては、ボルト固定しても、あるいは溶接固定しても構わない。確実に固定取り付けができれば、どのような取り付け方法を採用しても構わない。
【0074】
なお、ボルトにより取り付ければ、溶接固定に比べて、回転支持部材10を含んだ累積変位量測定機構部の再使用が容易に図れる。すなわち、累積変位量から判断して制震機能の経時劣化が大きいと評価され、極低降伏点鋼パネルダンパの交換が必要となったときでも、回転支持部材10を含めた累積変位量測定機構部をエンドプレート1から取り外して、別の極低降伏点鋼パネルダンパに取り付けて再使用することができる。溶接固定の場合には、溶断などが必要となり簡単な再使用が図れない。
【0075】
板ばね12は、回転体11の回転軸の軸受支持部材12a側を常に下側のエンドプレート1’面上に押し付けるように機能して、回転体11が下側のエンドプレート1’面に多少の上下振動が発生しても、上下動に追従して離れないように構成している。不要な空回転を防止して、正確な累積変位量を表示できるようになっている。
【0076】
板ばね12の押し付け力は、極低降伏点鋼パネルダンパに上下動が発生しても、回転体11がエンドプレート1’面上から離れない程度に、且つ極低降伏点鋼パネルダンパが地震時に水平変位した場合には、その水平変位に追従して回転体11の回転が滞ることなく回転できるように設定されている。
【0077】
回転体11の外周面には、ゴムなどの摩擦部材13が薄く貼られ、回転体11がエンドプレー1’面をスリップしたり、空回したりせずに確実に回転できるようになっている。
【0078】
上記のように構成された回転体11は、本発明の以下の構成の回転制御機構により、一方向の回転が許容され、逆回転が起きないようにされている。
【0079】
本発明の回転制御機構では、回転支持部材10から回転体11の側面の回転中心に向けて、回転軸を支持する腕部材20が設けられ、この腕部材20により回転体11の回転軸が支持されている。腕部材20の端部には、図2に示すように、圧接部材支持部21が設けられ、この圧接部材支持部21から、尖端部を有した圧接部材22が保持されている。
【0080】
圧接部材22は、図2では針22a(22)に形成され、その尖端部が、回転体側面の回転中心を通らない横断方向に沿って斜め下方に向けて保持されている。針22aの尖端部は、図2(b)に示すように、回転体側面に対して鋭角θで圧接させられている。なお、図2(b)では、板ばね12の構成状況は、針22aの圧接状況が分かり易いように省略している。
【0081】
このように針22aを回転体側面に圧接させた構成の回転制御機構では、回転体11が、図2(a)に示すように反時計方向に回転する場合には、回転体は針22aの尖端方向と順方向に回転するため、回転体11は円滑に回転する。
【0082】
しかし、回転体が逆回転(図2では、時計方向の回転)する場合には、回転体側面に対して、図2(b)に示すように、針22aの尖端が鋭角θで圧接させられているため、針22aの尖端部が回転体側面を突いて、回転体11の逆回転を阻止することとなる。
【0083】
腕部材20の回転軸の端面には、指針16が設けられ、回転体11の回転量に合わせて指針16が回転するように構成されている。指針16の周囲には、目盛17がリング状に設けられ、指針16の読み取りにより回転体11の回転量が分かる。
【0084】
また、回転体11の大きさは、適宜の大きさに設定して構わないが、例えば、回転体11の円周を回転体11の最大回転距離より長くなるように設定しておけば、回転軸に連動させた目盛読み取り用の指針16は、回転体11が最大限度まで回転しても1回転を越えることはなく、例えば、指針16が実際には2回以上回転しているのに1回転と勘違いするなどの誤った指針読み取りを防ぐことができる。
【0085】
このようにして構成された累積変位量測定機構では、例えば、図3(a)、(b)に示すように、極低降伏点鋼パネルダンパの紙面横方向への水平変形時の累積変位量を測定することができる。
【0086】
例えば、図3(a)に示すように、地震時に、極低降伏点鋼パネルダンパの上下の2枚のエンドプレート1、1’に力が加わり、上のエンドプレート1が紙面左方向に、下のエンドプレート1’が紙面右方向に相対的に変位する水平変形(以下、かかる変形を簡単に負側変形と呼ぶ。)が発生したとする。
【0087】
この場合には、回転体11は下のエンドプレート1’面上を反時計方向に回転する。回転距離に合わせて指針16も、反時計廻りに回転し、回転距離に見合った箇所の目盛17を指す。
【0088】
次いで、上記負側変形が発生した後に、図3(b)に示すように、極低降伏点鋼パネルダンパの上のエンドプレート1が紙面右方向に、下のエンドプレート1’が紙面左方向に相対的に変位する水平変形(以下、この変形を簡単に正側変形と呼ぶ。)が発生したとする。
【0089】
この場合には、回転体11と下のエンドプレート1’面との間で、回転体11を時計方向に回転させようとする力が働くが、前記説明のように針22aが回転体11の側面を突いて、時計方向の回転は阻止されることとなる。回転体11は下のエンドプレート1’面上を回転せずに滑り、指針16は上記負側変形で示した目盛17を指した状態で止まっている。
【0090】
このようにして、極低降伏点鋼パネルダンパが負変形をする都度、その変位量に合わせて回転体11が反時計方向に回転して、その回転距離の累積が指針16により表示されることとなる。この指針16の指示目盛17を読み取ることにより、極低降伏点鋼パネルダンパの累積変位量を知ることができる。
【0091】
なお、回転体11は弾性変位の場合でも反時計方向に回転するので、累積変位量には累積塑性変位量と、累積弾性変位量との両方を合わせた変位量が含まれることとなる。
【0092】
図4には、上記構成の回転制御機構を有した別構成の累積変位量測定機構を設けた変形例を示す。図4の場合には、極低降伏点鋼パネルダンパの上のエンドプレート1に回転支持部材10が図1に示すと同様に取り付けられ、回転支持部材10から腕部材20が、その先端側20aを回転体11の回転側面の回転軸側に向けて設けられている。
【0093】
腕部材20の他端側20bは、ばね23を介して回転支持部材10側に引きつけられ状態に連結され、回転支持部材10と腕部材20との連結点を支点として、腕部材20の先端側20aが下のエンドプレート1’側に押し付けられた状態になるように構成されている。そのため、下側のエンドプレート1’面から回転体11が離れずに、不要な空回転が防止され、正確な累積変位量が表示できるようになっている。
【0094】
ばね23の引っ張り力は、極低降伏点鋼パネルダンパに上下動が発生した場合でも、回転体11がエンドプレート1’面上から離れない程度に、且つ極低降伏点鋼パネルダンパが図3に示すような水平変形した場合でも、その水平変形に追従して回転体11の回転が滞ることなく回転できるように設定しておけばよい。
【0095】
回転体11の回転制御機構、および回転量を示す指針16、目盛17は、図1に示す場合と全く同様に構成しておけばよい。
【0096】
図1、4に示す場合には、針22aが1個設けられた構成になっているが、複数個設ける構成にしても構わない。
【0097】
なお、以上の説明では、図1、4に示すように、極低降伏点鋼パネルダンパを履歴型ダンパとして使用した場合について説明しているが、これ以外の例えば、従来より既知のハニカムダンパのようなダンパに適用しても構わない。
【0098】
(実施の形態2)
本実施の形態で説明する回転制御機構は、回転体11の一方向への回転制御を回転軸で行えるように構成した回転制御機構である。
【0099】
図5(a)は、本発明の回転制御機構を設けた回転体の要部側面図、(b)は(a)のA−A線で切断した場合の回転軸周辺の要部平断面図、(c)は回転軸の様子を示した要部縦断面図、(d)は変形例を示す部分断面図である。
【0100】
本実施の形態の回転制御機構では、図5に示すように、回転体11の回転軸24は、所定間隔離した2個の軸受25a、25bにより回転可能に支持されている。回転軸24で、2個の軸受25a、25bに挟まれた区間の外周面には、羽根状に形成された圧接部材26が、図5(b)、(c)に示すように、回転中心から略放射状に突設させて設けられている。圧接部材26は、適当な厚さの金属板を湾曲させて、圧接力を得るようにしておけばよい。
【0101】
図5に示す場合には、上記構成の圧接部材26は回転体11の回転を許容する方向に順方向となるように湾曲させられており、軸受25a、25bを支持する軸受支持筒27の内周面27aに、その先端部が圧接させられている。回転体11が時計方向に回転する場合には、回転軸24も時計方向に回転するが、回転軸24の外周面に設けた圧接部材26の先端側は、回転方向と順方向を向くように湾曲させられているので、円滑な回転が許容されることとなる。
【0102】
一方、回転体11が反時計方向に回転する場合には、湾曲させられた圧接部材26の先端方向は、軸受支持筒27の内周面27aに対して相対的に対向方向に向くため、圧接部材26と軸受支持筒27の内周面27aとの摩擦力が大きくなり、回転が阻止されることとなる。
【0103】
上記構成では、圧接部材26の湾曲度、圧接部材26の数などを調節することにより、所要の圧接強度に調整して、回転体11の逆回転の制御を行うことができる。
【0104】
また、図5(d)に示すように、軸受支持筒27の内周面27aに凹凸27bを設けておき、回転体11が逆回転体する際には、圧接部材26の先端部が軸受支持筒27の上記凹凸に噛んで、回転阻止を確実にすることができるようにしてもよい。凹凸27bの刻みを細かく設定すれば、それだけ逆回転の阻止機能が鋭敏に機能することとなる。
【0105】
上記構成の回転制御機構を有した回転体11は、前記実施の形態と同様に、極低降伏点鋼パネルダンパの累積変位量測定機構に組み込んで使用すればよい。組み込みに際しては、図5に示す腕部材20は、極低降伏点鋼パネルダンパのエンドプレート1に設けた回転支持部材10に取付けておけばよい。回転体11のエンドプレート1’への押圧機構は、上記実施の形態1の図1に示すと同様に板ばね12を使用した機構でも、あるいは図4に示すと同様にばね23を使用した構成のいずれの構成を使用しても構わない。
【0106】
(実施の形態3)
本実施の形態では、履歴型ダンパの累積変位量測定機構に設ける回転表示機構について説明する。
【0107】
図6(a)は本発明の回転表示機構を回転体に設けた様子を示す要部側面図で、(b)はその回転表示機構の作用を示す説明図である。
【0108】
回転体11の回転側面の周縁側に、小突起状に形成した歯車回転推進部材28が設けられている。歯車回転推進部材28は、回転体11の回転に合わせて一緒に回転し、回転体11が1回転すると歯車回転推進部材28も1回転することとなる。
【0109】
回転体11は、前記実施の形態と同様に極低降伏点鋼パネルダンパのエンドプレート1に設けた回転支持部材10から伸ばした腕部材20に回転支持しておけばよい。
【0110】
腕部材20には支持部材29が設けられ、この支持部材29に、複数個の歯30を略放射状に張り出した歯車状のカウンタ部材31が、回転可能に設けられている。カウンタ部材31の取付け位置は、歯30の先端側の回転軌跡と、上記歯車回転推進部材28の回転軌跡とが、図6(b)に示すように、一部重なるように設定されている。
【0111】
回転体11が回転すると、これに伴って歯車回転推進部材28も回転し、回転する歯車回転推進部材28がカウンタ部材31の歯30に当たって、カウンタ部材31を回転させることとなる。
【0112】
図6(b)に示す場合には、複数個の歯30には、それぞれ回転数を示す番号が0から順番に付けられている。0の番号を付けた歯30a(30)を鉛直上方に向けた位置を基準位置としてセットしておけば、回転体11が回転するとそれに合わせて回転する歯車回転推進部材28により、歯車回転推進部材28の直前位置にある歯30b(30)が押されて回転する。
【0113】
歯30bの回転により、図6(b)の紙面左から右にかけて、回転の様子を順次示した要領で歯30aも回転して、基準位置に1の番号を付けた歯30c(30)が来ることとなる。回転体11の1回転に際して歯車回転推進部材28も1回転し、これによりカウンタ部材31の歯30も一歯分回転する。このようにして、基準位置にある歯30の番号を読み取ることにより、回転体11の回転数を知ることができる。
【0114】
カウンタ部材31の歯30は、上記構成では、各別に識別ができるように回転数を表示する番号を設けたが、色分け、あるいは先端形状を変えるなどして、識別できるようにしても構わない。
【0115】
また、回転体11の回転軸には、前記実施の形態1で説明したように、指針16を設け、その周りにリング状の目盛17を設けておけばよい。カウンタ部材31により回転数を計数して、且つ上記指針16の読み取り目盛により、回転数+指針読み取り目盛で、累積変位量を測定することができる。
【0116】
かかる構成の回転表示機構を使用することにより、回転体11が複数回転しても累積変位量を正確に測定することができる。そのため、予想される水平変形量の大小に関わりなく、同一径の回転体11を使用しても累積変位量を測定することができる。
【0117】
カウンタ部材31の歯30の回転周縁部に、一歯分ずつ回転数を目盛ったリング状目盛を設けておき、特定の歯30を指針に見立ててこの歯30の示す目盛で回転数を読み取るようにしても構わない。
【0118】
本実施の形態の回転表示機構では、回転数しかカウンタ部材31からは読み取れないので、上記説明のように回転軸とともに回転する指針16、目盛17などから構成される回転体11の回転距離を累積表示する累積表示機構を併有しなければならない。
【0119】
(実施の形態4)
本実施の形態は、渦巻状ガイドを有する回転表示機構で、履歴型ダンパの累積変位量測定機構に設けるものである。
【0120】
図7(a)、(b)、(c)は、回転体側面に設けた本実施の形態の回転表示機構の機能状況を順に示す説明図である。
【0121】
腕部材20により回転軸が支持された回転体11の側面には、渦巻状ガイド32として、管内が透けて見える渦巻管32a(32)が設けられている。渦巻管32a内には、移動体33が入れられている。移動体33としては、渦巻管32a内を自由に移動できる例えば金属球などの球体33a(33)に構成しておけばよい。
【0122】
回転体11が回転すると、渦巻管32aも回転体11と共に回転し、球体33aは、回転する渦巻管23a内で、常に鉛直真下位置に留まろうと渦巻管32aに対して相対移動することとなる。
【0123】
渦巻状ガイド32は渦巻管32aに構成されているので、図7(a)に示した球体33aの位置を基準位置として、回転体11が1回転した場合には、球体33aは、図7(b)に示すように一つ内側の渦巻部の上記基準位置の直上位置に来る。図7(b)の位置から、さらに回転体11が1回転すると、図7(c)に示すように、さらに一つ内側の渦巻部(図7(a)に示す場合より2つ内側の渦巻部となる)に球体33aが来ることとなる。
【0124】
このようにして、渦巻管32aの球体33aのある渦巻部を数えることにより、簡単に回転体11の回転数を知ることができる。
【0125】
また、渦巻管32aに予め回転体の回転距離に対応させて目盛(例えばmm単位などで)を設けておけば、上記要領で球体33aがある渦巻部で回転数知るとともに、球体33aのある読み取り目盛と、図7(a)の球体33aのある基準位置との間の距離として累積回転距離(累積変位量に相当)を測定することができる。
【0126】
渦巻管32aに振った目盛では読みにくい場合には、前記実施の形態1で示したように、回転軸に設けた指針16と、リング状の目盛17とで累積回転量を測定できるようにしておけばよい。
【0127】
図7に示す場合には、渦巻状ガイド32を渦巻管32aに構成した場合について説明したが、例えばレール状に構成して、移動体33もレールに噛み合って移動可能な形状に構成しておけばよい。
【0128】
次に、上記説明の回転制御機構、回転表示機構を組み込んだ累積変位量測定機構を当初より一体に設けた極低降伏点鋼パネルダンパを、建物の架構内に取り付けて、この極低降伏点鋼パネルダンパの制震機能の劣化状況を評価する方法について説明する。
【0129】
図8に示すように、建物の架構部の上下の大梁40の間に間柱41を設け、この間柱41の上下の間に極低降伏点鋼パネルダンパ(図中Aで表示)を介在させて建物の制震構造が構成されている。
【0130】
極低降伏点鋼パネルダンパは、その上下のエンドプレート1、1’を、間柱41の極低降伏点鋼パネルダンパ取り付け部のベース42に、ボルト固定により取り付けられている。間柱41の間に介在させた上記極低降伏点鋼パネルダンパには、前記実施の形態1、2で説明したいずれかの回転制御機構を組み込んだ累積変位量測定機構が設けられている。かかる累積変位量測定機構には、さらに、前記実施の形態3、4で説明したいずれかの回転表示機構も組み込まれている。
【0131】
回転体11は、図3(a)に示す負側変形時にのみ反時計方向に回転して、その累積回転距離が、極低降伏点鋼パネルダンパが受けた負側変形時の累積変位量を指示するようになっている。
【0132】
一方、予め、使用する極低降伏点鋼パネルダンパに関して、累積変位量と極低降伏点鋼パネルダンパとのせん断力との関係を求めておく。
【0133】
極低降伏点鋼パネルダンパの極低降伏点鋼パネル2は、図1に示すように、補強リブ4によりパネル面が四等分されているが、その短辺a(図1参照)と、極低降伏点鋼パネル2の板厚との比率(幅厚比)で、使用する極低降伏点鋼パネルダンパは、それぞれ区別できるようになっている。
【0134】
このようにして種々の幅厚比の極低降伏点鋼パネルダンパについて、座屈発生時の累積塑性変位量と、極低降伏点鋼パネルダンパの幅厚比との関係を、図9に示すように実験で求めておく。
【0135】
さらに、実験で求めた上記関係に基づき、それぞれの幅厚比における極低降伏点鋼パネルダンパについて、図10に示すように、その累積塑性変位量(mm)とせん断力(tf)との関係を求めておく。図10の白抜き三角印で示した箇所は座屈発生点を示し、黒の三角印はき裂発生点をそれぞれ示している。
【0136】
このようにして、予め求めておいた極低降伏点鋼パネルダンパの累積塑性変位量とせん断力との関係に、前記架構内に組み込んだ極低降伏点鋼パネルダンパの累積変位量測定機構から求められた累積変位量の実測値を照らして、極低降伏点鋼パネルダンパの制震機能の劣化状況を評価する。
【0137】
すなわち、極低降伏点鋼パネルダンパの累積変位量が、既に座屈発生点を過ぎているか否か、あるいは、座屈発生点まで間があるか否か、あるいはき裂発生点に近づいているか否かなどを評価する。そして、例えば、累積変位量が座屈発生点からき裂発生点の間に入っている場合には、極低降伏点鋼パネルダンパの交換をすべきと判断することができる。
【0138】
また、座屈発生までは十分に間がある範囲に累積変位量がある場合には、そのまま架構内に組み込んでおいても構わないと判断できる。
【0139】
従来のように、面倒なコンピュータ入力を駆使する地震応答解析法や、大掛かりな測定システムを構築する時系列変位測定による地震観測法などを使用する場合に比べて、極めて簡単に実際に建物の架構内に組み込んだ極低降伏点鋼パネルダンパの累積変位量を実測して、その極低降伏点鋼パネルダンパの制震機能の劣化状況を速やかに評価して、適切な判断を現場で素早く行なうことができる。
【0140】
なお、上記説明では、間柱41間に極低降伏点鋼パネルダンパを取り付けた状態で、累積変位量測定機構を設けた場合について説明したが、極低降伏点鋼パネルダンパの組み込みに際しては、従来より行なわれているようにブレース型に組み込んでも構わない。
【0141】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更することができる。
【0142】
【発明の効果】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0143】
本発明によれば、履歴型ダンパの累積変位量測定機構を構成する回転体の逆回転の阻止を確実に行うことができる。
【0144】
その分、累積変位量の測定誤差を少なくして、高精度の累積変位量の測定が行える。
【0145】
本発明によれば、履歴型ダンパの累積変位量測定機構を構成する回転体が複数回転しても、その回転数を計数することができる。
【0146】
そのため、回転体の円周を予想される水平変位量より大きく設定する構成に比べて、水平変位量の大小にかかわらず同一径の回転体を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回転制御機構を設けた累積変位量測定機構を、履歴型ダンパである極低降伏点鋼パネルダンパに設けた様子を示す正面図である。
【図2】(a)は本発明の回転制御機構の要部側面図、(b)はその部分を上から見た様子を示す平面図である。
【図3】(a)は、図1に示す極低降伏点鋼パネルダンパの負側変形時の状況を示す正面図である。(b)は、図1に示す極低降伏点鋼パネルダンパの正側変形時の状況を示す正面図である。
【図4】図1に示すと同様の回転制御機構を設けた極低降伏点鋼パネルダンパの変形例を示す正面図である。
【図5】(a)は、回転制御機構が回転軸に組み込まれている場合の回転体を示す要部側面図である。(b)は、(a)に示すA−A線で切断した場合の回転制御機構の要部を示す平断面図である。(c)は、回転軸に設けた圧接部材の様子を示す断面図である。(d)は、変形例のうち軸受支持筒内面の凹凸に圧接部材が圧接されている状況を示す部分断面図である。
【図6】(a)は、本発明の回転表示機構の一実施の形態例を示す要部正面図である。(b)は、(a)に示す回転表示機構のカウンタ部材のカウンタ機能を段階的に示す説明図である。
【図7】(a)、(b)、(c)は、渦巻管を使用した回転表示機構の機能を説明する説明図である。
【図8】極低降伏点鋼パネルダンパを間柱型に設けた状況を部分的に示す正面図である。
【図9】座屈発生時の累積塑性変位量と極低降伏点鋼パネルダンパの幅厚比の関係を示すグラフである。
【図10】極低降伏点鋼パネルダンパのせん断力と累積塑性変位量の関係を示すグラフである。
【図11】(a)は、従来構成の極低降伏点鋼パネルダンパを示す正面図で、(b)は平面図である。
【図12】(a)は、極低降伏点鋼パネルダンパを柱と梁とで構成される構面内の間柱に取り付けた状況を示す正面図である。(b)は、極低降伏点鋼パネルダンパが塑性変位した状況を示す正面図である。
【図13】極低降伏点鋼パネルダンパをブレースを使用して、柱と梁で構成される構面内に取り付けた状況を示す正面図である。
【図14】回転体を使用した累積変形量測定機構を設けた極低降伏点鋼パネルダンパの構成を示す正面図である。
【図15】(a)は、 図14に示す極低降伏点鋼パネルダンパの正側変形時の状況を示す正面図である。(b)は、図14に示す極低降伏点鋼パネルダンパの負側変形時の状況を示す正面図である。
【符号の説明】
1 エンドプレート
1’ エンドプレート
2 極低降伏点鋼パネル
3 枠フランジ
3’ 枠フランジ
4 補強リブ
5 柱
6 梁
7 間柱
8 ブレース
10 回転支持部材
11 回転体
12 板ばね
12a 軸受支持部材
13 摩擦部材
14 回転方向規制部材
15 累積変位量表示部材
16 指針
17 目盛
20 腕部材
20a 先端側
20b 他端側
21 圧接部材支持部
22 圧接部材
22a 針
23 ばね
24 回転軸
25a 軸受
25b 軸受
26 圧接部材
27 軸受支持筒
27a 内周面
27b 凹凸
28 歯車回転推進部材
29 支持部材
30 歯
31 カウンタ部材
32 渦巻状ガイド
32a 渦巻管
33 移動体
33a 球体
40 大梁
41 間柱
42 ベース
A 極低降伏点鋼パネルダンパ

Claims (4)

  1. 震機能発現時に互いに相対変位するエンドプレートの一方のエンドプレートに設けられた回転支持部材に、回転可能に設けられて、他方のエンドプレート上を、回転制御機構により一方向の回転を許容するように回転させられる回転体を有し、前記回転体の回転量により累積変位量を測定する累積変位量測定機構を備えた履歴型ダンパであって、
    前記回転制御機構は、前記回転体の回転中心を通らない回転体側面の横断方向に沿って、尖端部を有する圧接部材の前記尖端部を、前記回転体側面に、前記回転体の順方向の回転に際しては回転を許容し、前記回転体の逆方向の回転に対しては、前記尖端部が前記回転体側面を突いて回転を阻止するように圧接させられてなることを特徴とする履歴型ダンパ。
  2. 震機能発現時に互いに相対変位するエンドプレートの一方のエンドプレートに設けられた回転支持部材に、回転可能に設けられて、他方のエンドプレート上を、回転制御機構により一方向の回転を許容するように回転させられる回転体を有し、前記回転体の回転量により累積変位量を測定する累積変位量測定機構を備えた履歴型ダンパであって、
    前記回転制御機構は、前記回転体を回転可能に支持する回転軸の外周面あるいは、前記回転軸を受ける軸受内面のいずれか一方に、圧接部材の一端側が固定され、他方に前記圧接部材の他端側が、前記回転体の順方向の回転に際しては回転を許容し、前記回転体の逆方向の回転に対しては回転を阻止するように圧接させられてなることを特徴とする履歴型ダンパ。
  3. 請求項1または2記載の履歴型ダンパにおいて、
    前記累積変位量測定機構には回転表示機構が設けられ、
    前記回転表示機構は、前記回転体に設けられた歯車回転推進部材と、前記回転体の回転に伴って回転する前記歯車回転推進部材により回転させられる歯を複数個歯車状に設けたカウンタ部材とを有し、回転させられた前記歯により前記回転体の回転数がわかるように構成されていることを特徴とする履歴型ダンパ。
  4. 請求項1または2記載の履歴型ダンパにおいて、
    前記累積変位量測定機構には回転表示機構が設けられ、
    前記回転表示機構は、前記回転体に設けた渦巻状ガイドと、前記渦巻状ガイドに沿って移動する移動体とを有し、前記回転体の回転に伴って回転する渦巻状ガイドの前記移動体の位置により前記回転体の回転量がわかるように構成されていることを特徴とする履歴型ダンパ。
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