JP4599683B2 - 構造物の累積変形量測定装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、構造物に発生する変形量の累積値、特に、構造物に生じた軸方向変形またはせん断変形のうち、一方向側の変形のみを累積して計測する、構造物の累積変形量測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図12は、特開平6−74875号公報に開示された従来の「構造物疲労寿命予知センサー」の一実施例を示す斜視図である。図12において、構造物の固着部と応力検出部の間に、構造物より短い疲労寿命となる形状寸法に形成した変形断面部4を配置し、この変形断面部4を定期的に点検して構造物の疲労の度合いを検出するものである。(従来技術1)
【0003】
図13は、特開平10−253595号公報に開示された従来の「鋼構造物の疲労寿命診断方法および寿命診断機能付き鉄骨部材」の実施例における磁気ヘッドの一例を示す概略斜視図である。図13において、励磁コイル12を備えた励磁ヘッド2により、被測定物4からのバルクハウゼンノイズを測定し、このバルクハウゼンノイズの実効値電圧または電圧振幅値から、被測定部位の疲労損傷の度合を診断するものである。(従来技術2)
【0004】
図14は、特開平5−312633号公報に開示された従来の「振動で蓄積されるエネルギの被検出体への影響の診断方法」を示す概略斜視図である。図14において、重り7が支柱5により変位自在に支えられている。支柱5の台座3は構造物に設置され、構造物が変位した際には、重り7が振り子状に変位して、支柱5に疲労が蓄積することになる。したがって、疲労の蓄積に伴う支柱5の電気的性質の変化や、機械的な破損状況を観察することにより、被検出体の組みたての不具合や、疲労状況を診断するものである。(従来技術3)
【0005】
図15は、特開平11−325802号公報に開示された従来の「構造物用制振ダンパーの累積変形測定装置」の説明用側面図である。図15において、構造物に取り付けられたせん断型鋼材ダンパーの上部5および下部7に、パンタグラフ型水平変位拡大手段(リンク11〜14)を設け、このパンタグラフ型水平変位拡大手段の一方向変位をラチェットギアを介して、カウンターにより測定することにより、ダンパーの劣化を判断するのもである。(従来技術4)
【0006】
図16は、特開平11−325806号公報に開示された従来の「構造物用制振ダンパーの累積変形測定装置」の説明用側面図である。図16において、構造物に取り付けられたせん断型鋼材ダンパーの上部フランジ5および下部フランジ7の間に、エンドレステープを緊張状態でガイドせしめ、このテープに上方水平走行部分と、下方水平走行部分とを有せしめ、上記ダンパーの上部の一方向の経によって上記テープを一方向に移動せしめると共に、上記テープの移動量を計測し、鋼材ダンパの劣化を判定するものである。(従来技術5)
【0007】
図17は、特開平11−325807号公報に開示された従来の「構造物用制振ダンパーの累積変形測定装置」の説明用側面図である。図17において、構造物に取り付けられたせん断型鋼材ダンパーの上部フランジ5または下部フランジ7の一方に、検出プーリ18を回転自在に支持し、この検出プーリに懸架したワイヤロープ20の両端を、伸縮部材を介して上部フランジ5または下部フランジ7の他方に固定し、検出プーリの一方向の回転量を計測し、鋼材ダンパの劣化を判定するものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の補強方法には以下のような問題があった。
従来技術1においては、応力センサー自体が構造物の荷重を伝達するため、応力センサーが破壊すると、その分だけ構造物の強度が低下し、これが構造物の破壊の起点となることが懸念される。特に、応力センサーの感度を高めようとすると、これが顕著になる。
【0009】
従来技術2においては、電圧による測定のためランニングコストが掛かることと、設置場所の選定が難しいこと、さらに、長期間の使用による励磁ヘッドの磁気特性の変化が懸念される。
【0010】
従来技術3においては、構造物の変位と重りの変位との関係、および、構造物の変位と支柱の性質の変化ないし破壊との関係が明確でないため、予測精度が悪い。特に、構造物のようなほぼ1次元の振動を行うような弾塑性材料の疲労寿命を求める際に、重りは2次元および3次元振動を行うため精度が悪く、また設置スペースも大きくとる必要があるため、非常に不経済であった。
【0011】
従来技術4においては、リンク機構により構造物の変位が拡大されるとの効果があるものの、ラチットギアを用いたカウンターによる計測では、ギアの爪の間隔以下の振動に対しては、十分な精度が得られず、実際の変位より少ないカウントとなり、危険側の判断をしてしまう可能性があった。
【0012】
従来技術5においては、長時間使用に伴うエンドレステープの伸び、一方向送り機構におけるエンドレステープの滑り等による、計測精度の悪化が懸念され、十分な精度が得られず、実際の変位より少ないカウントとなり、危険側の判断をしてしまう可能性があった。
【0013】
従来技術6においては、長時間使用に伴うワイヤロープの伸び、ワイヤロープと検出プーリ間の滑り等による、計測精度の悪化が懸念され、十分な精度が得られず、実際の変位より少ないカウントとなり、危険側の判断をしてしまう可能性があった。
【0014】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、単純な機構を有する装置であって、その設置場所の制約がほとんどなく、しかも、長期間に渡り累積変形量を精度良く計測できる、構造物の累積変形量測定装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わる鋼管トラスの分岐部は、以下の特徴を有すものである。
[1] 構造物が両方向に繰り返し変形した際の片方向の変形の累積変形量を測定する、構造物の累積変形量測定装置であって、
累積変形量を測定しようとする構造物の変形側に接続する測定ピストンロッドと、
該構造物の基準側に設置する筒状の測定シリンダと、測定ピストンロッドに連結され、測定シリンダの内周を摺動して移動自在な測定ピストンと、測定シリンダと測定ピストンが形成する空間に連結され、該空間に液体を供給する逆止弁を具備する液体供給管と、液体供給管に連結され、供給する液体を貯蔵する液体供給槽と、測定シリンダと測定ピストンが形成する空間に連結され、該空間より液体を排出する逆止弁を具備する液体排出管と、液体排出管に連結され、排出される液体を貯蔵する液体排出槽と、液体供給槽内の液面高さまたは液体排出槽の液面高さの一方または両方を測定自在な液面高さ測定目盛とを有し、
前記変形側が目的とする測定方向に変形した際に限り、測定シリンダと測定ピストンが形成する空間内の液体が液体排出槽に排出され、前記変形側が測定方向と反対方向に変形した際には、測定シリンダと測定ピストンが形成する空間内に液体供給槽から液体が供給され、液体供給槽または液体排出槽の一方または両方の液面高さの変化により累積変形量を測定することを特徴とするものである。
【0016】
[2] 前記[1]において、液体供給管が複数であって、小流量用逆止弁を具備する液体供給管と大流量用逆止弁を具備する液体供給管とを有すことを特徴とするものである。
【0017】
[3] 前記[1]において、液体排出管が複数であって、小流量用逆止弁を具備する液体排出管と大流量用逆止弁を具備する液体排出管とを有すことを特徴とするものである。
【0018】
[4] 前記[1]〜[3]において,液体供給槽が、筒状の供給シリンダと、供給シリンダの内周を摺動して移動自在な供給ピストンと、供給ピストンに連結された供給ピストンロッドと、供給ピストンロッドの移動量を測定する供給量測定目盛とを有すことを特徴とするものである。
【0019】
[5] 前記[1]〜[3]において,液体排出槽が、筒状の排出シリンダと、排出シリンダの内周を摺動して移動自在な排出ピストンと、排出ピストンに連結された排出ピストンロッドと、排出ピストンロッドの移動量を測定する排出量測定目盛とを有すことを特徴とするものである
【0020】
[6] 前記[1]〜[5]において,測定シリンダが断面円形であって、測定ピストンが測定シリンダの中心軸に対し回転自在であることを特徴とするものである。
【0021】
[7] 前記[1]〜[6]において,測定ピストンロッドが相互に摺動自在な多重管であることを特徴とするものである。
【0022】
[8] 前記[1]〜[7]に記載の構造物の累積変形量測定装置を一対有し、一方の累積変形量測定装置の測定シリンダと他方の累積変形量測定装置の測定シリンダが平行または同軸に配置され、さらに、一方の累積変形量測定装置の測定ピストンロッドと他方の累積変形量測定装置の測定ピストンロッドが連結され、構造物が両方向に繰り返し変形した際の、片方向の変形の累積変形量およびこれと反対方向の変形の累積変形量を、それぞれの累積変形量測定装置が測定することを特徴とするものである。
【0023】
[9] 前記[8]において、一方の累積変形量測定装置の測定シリンダと他方の累積変形量測定装置の測定シリンダが、同一筒体内に形成されることを特徴とするものである。
【0024】
[10] 前記[8]または[9]において、一対の累積変形量測定装置のそれぞれの測定シリンダの断面積が等しく、一方の累積変形量測定装置の測定シリンダに接続する液体排出管と,他方の累積変形量測定装置の測定シリンダに接続する液体排出管が,一つの液体排出槽に接続することにより,両方向の累積変形量の和を測定することを特徴とする,請求項8,9記載の,構造物の累積変形量測定装置。
【0025】
[11] 前記[1]から[10]において、測定ピストンロッドと構造物の変形側との接合をピン接合とすることにより,測定ピストンロッドが測定シリンダの中心軸と平行に回転自在であることを特徴とする,請求項1〜10記載の,構造物の累積変形量測定装置。
【0026】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1は本発明の一実施の形態を説明する説明図である。図1において、測定シリンダー1、測定シリンダー1に摺動自在に嵌設された測定ピストン2、測定シリンダー1に取り付けられた液体供給管4と液体排出管5、さらに、液体供給管4に連結された液体供給槽6、液体排出管5に連結された液体排出槽7とから構成され、液体供給管4には、液体を測定シリンダー方向にのみ流通させる逆止弁41が、一方、液体排出管5には、液体を液体排出槽7の方向にのみ流通させる逆止弁51が設置されている。
【0027】
したがって、構造物に取り付けられた測定ピストン2がその変形に伴い、測定シリンダー1と測定ピストン2が形成する空間の容積を減らす方向(以下、マイナス方向と称す)に移動すると、測定シリンダー1内の液体3が、液体排出管5の逆止弁51を通して液体排出槽7にのみ押し出され、液体排出槽7に蓄積される。
【0028】
一方、測定ピストン2がこれと反対方向(以下、プラス方向と称す)に移動する時には、測定シリンダー1内に、液体供給槽6から液体供給管4の逆止弁41を通して液体3が供給される。
【0029】
したがって、液体排出槽7に蓄えられた液体3の高さの変化を測定用目盛り71により確認することにより、マイナス方向の累積変形量を知ることができる。また、液体供給槽6の液面の高さの変化を測定用目盛り61により確認することにより、プラス方向の累積変形量を知ることができる。よって、これらに基づいて、疲労損傷を予測することが可能となる。
【0030】
なお、液体供給槽6および液面排出槽7の内周部の断面積(内径)は、測定シリンダー1の内周部の断面積(内径)に比べ十分小さくしているので、測定ピストン2の移動量は、数倍に拡大されて、内液体供給槽6および液面排出槽7の液面の高さの変化として表れる。よって、精度の高い測定が可能になる。
【0031】
[実施の形態2]
図2は本発明の一実施の形態を説明する説明図である。図2は、図1に示す実施の形態に対し、液体供給管4に第二の液体供給管42を設け、ここに、液体供給管4に設置した逆止弁41より流量の小さい(より小さい差圧で流通可能)第二の逆止弁43が設置され、一方、液体排出管5に第二の液体排出管52を設け、液体排出管5に設置した逆止弁51より流量の小さい(より小さい差圧で流通可能)第二の逆止弁53が設置されている。
【0032】
また、液体供給層6の液面には、先端に矢印62を設けたフロート63が浮かべられ、一方、液体排出槽7の液面には、先端に矢印72を設けたフロート73が浮かべられている。
【0033】
したがって、測定ピストンが、微小な移動をした場合でも、逆止弁43および逆止弁53が機能して、正確に液体を流通せしめることができる。また、それぞれのフロートに設置した矢印により、測定目盛を正確に確認することができる。
【0034】
[実施の形態3]
図3は本発明の一実施の形態を説明する説明図ある。図3は、図1に示す実施の形態に対し、液体供給槽6および液体排出槽7をそれぞれ液体供給シリンダ64および液体排出シリンダ74に変更したものである。図3において、液体供給シリンダ64には、その内周に摺動して移動する液体供給ピストン65が設置され、液体供給ピストン65に連結された液体供給ピストンロッド66には矢印67が設置されている。したがって、この矢印67と測定用目盛61により、液体供給シリンダ64と液体供給ピストン65の形成する空間内の液体の量(変化量)を正確に測定することができる。
【0035】
また、液体排出シリンダ74には、その内周に摺動して移動する液体排出ピストン75が設置され、液体排出ピストン75に連結された液体排出ピストンロッド76には矢印77が設置されている。したがって、この矢印77と測定用目盛71により、液体供給シリンダ64と液体供給ピストン65の形成する空間内の液体の量(変化量)を正確に測定することができる。
【0036】
本実施の形態においては、液体が全てシリンダ内に封入されているため、設置の姿勢に制約が無いから、傾斜して設置しても、また横向きに設置してもよい。また、液体が大気に触れないため、液体自体の経年劣化を最小にすることができる。
【0037】
なお、それぞれのシリンダの内径(内周部の面積)は適宜設定すれば、前記のように、測定ピストンの移動量を拡大して測定することができる。
【0038】
[実施の形態4]
図4は本発明の一実施の形態を説明する説明図ある。図4は、図2に示す実施の形態における累積変形量測定装置を一対用い、それぞれの測定シリンダ11、12を平行に配置し、かつ、それぞれの測定シリンダロッド21、22を連結したものである。測定シリンダ11と測定シリンダ12の内周の断面(内径)に差を設けているため、内周の断面(内径)が大きい測定シリンダ11からは、微小の移動に対しても、所定の量の流体が排出され、正確な測定が可能になる。また、測定シリンダ11に連結された液体供給槽には、その液面が所定の高さ以下になった場合には空気を吸い込む様にしているため、過剰な液体が液体排出槽に排出されることがなく、過剰な液体を保管する必要がない。したがって、微小移動の場合には断面(内径)が大きい測定シリンダ11を用い、一方、地震発生時のような大移動の場合いには断面(内径)が小さい測定シリンダ12を用いることができる。
【0039】
[実施の形態5]
図5は本発明の一実施の形態を説明する説明図ある。図5は、図3に示す実施の形態における累積変形量測定装置を一対用い、それぞれの測定シリンダ11、12を同じ筒体に配置し、かつ、それぞれの測定シリンダロッド21、22を連結したものである。前記実施の形態4に同じ効果が得られるとともに、狭い場所に設置することができる。
【0040】
[実施の形態6]
図6は本発明の一実施の形態を説明する説明図である。図6は,図5に示す実施の形態における累積変形量測定装置を一部変形したものであり,それぞれの測定シリンダに接続している液体供給管を同じ液体供給槽に接続し,かつ,それぞれの測定シリンダに接続している液体排出管を同じ液体排出槽に接続したものである。これにより,両方向の累積変形量の和を瞬時に計測することができ,また,液体供給槽および液体排出槽の数が減り,より省スペース化が図れる。
【0041】
[実施例1]
図7は、本発明の一実施の形態における実施例を示す断面図ある。図7において、測定シリンダー1、測定シリンダー1に摺動自在に嵌設された測定ピストン2、測定ピストン2に設置された測定ピストンロッド21、測定シリンダー1およびに測定ピストンロッド21に摺動自在に嵌設された測定ピストンカバー25が配置されている。それぞれの摺動部にOリング24、26が設置され、液体漏れを防止している。特に、Oリング24は、測定シリンダ1および測定ピストン2により形成される空間31内の液体と、測定ピストン2および測定ピストンカバー25により形成される空間32内の液体との両方に接しているため、経年劣化が防止され、長期間の正確な測定を保証している。
【0042】
[実施例2]
図8は,本発明の一実施の形態における実施例を示す側面図である。図8において,この装置をせん断型の制震デバイス14に取り付ける際は,上下エンドプレート13間にピン接合された中空の棒材15に,断面円形であって,かつ中心軸に対し回転自在とした測定シリンダに接続された測定ピストンロッド2を隙間なく挿入する。これにより,せん断変形に伴う上下方向の伸縮,また測定シリンダの中心軸およびその直角方向に対する回転による付加荷重および変形を取り除くことが出来る。さらに,本装置を断熱性のあるボックス16中に格納することにより,外部からの衝撃および熱膨張による本装置の破損を防止するとともに,万が一破損したときには,内部液体の流出を防ぐことが出来る。さらに,測定目盛の位置にガラス窓17を設けることにより,目視による測定が可能となる。
【0043】
[実施例3]
図9は、本発明の一実施の形態における累積変形測定装置を、構造物中の梁の間に設置した場合の、構造物の変形状況を示す説明図である。図9の(a)は変形前であって、図9の(b)は変形後である。すなわち構造物の床梁201には垂直上向きに設置した設置台202が、天井梁203には垂直下向きに設置した変形側設置台204が設けられ、累積変形測定装置200は、設置台202および変形側設置台204に接続されている。したがって、構造物が水平力を受けて、柱205が傾倒すると、設置台202の上端と変形側設置台204の下端との水平距離が変化するから、この変化が測定されることになる。
【0044】
[実施例4]
図10は,本発明の一実施の形態における実施例を示す側面図である。図10において,この装置をブレース型の制震デバイス14に取り付ける際は,弾性変形部材21,22のそれぞれに接合された平行部材15,23のうち一方を測定シリンダ1に,他方を一部ピン接合として,かつある程度のクリアランスを確保して,測定ピストンロッド2に挿入する。これにより,軸材が塑性変形したときに生じる回転および中心軸の偏芯による付加荷重および変形を取り除くことが出来る。以下,実施例2と同様にボックス16中に格納する。
【0045】
図11は、本発明の一実施の形態における累積変形測定装置を、構造物中のブレース型の制震デバイス14に設置した場合の、構造物の変形状況を示す説明図である。図11の(a)は変形前であって、図11の(b)は変形後である。すなわち構造物の床梁301と一方の柱302の隅部と、天井梁303と他方の柱304の隅部がブレース型の制震デバイス21により連結され、該ブレース型の制震デバイス21に並行に累積変形測定装置300が配置されている。したがって、構造物が水平力を受けて、柱205が傾倒すると、一方の柱と梁の隅部と他方の柱と梁の隅部との距離が変化するから、この変化が測定されることになる。
【0046】
【発明の効果】
本発明に係る構造物の累積変形量測定装置は、前記の構成であるから、以下のような顕著な効果が得られる。
1)液体排出槽または液体供給槽の一方または両方に蓄えられた液体に高さの変化を計ることにより、簡単に累積変形量を測定でき、構造物の疲労損傷を予測することができる。
2)液体排出槽または液体供給槽のそれぞれに蓄えられた液体に高さの変化を計ることにより、両方向の累積変形量を個別に、または両方向の累積変形量を合計して、測定することができる。
3)簡単な機構で電源が不要であるから、ランニングコストが大幅に減少し、また、任意の場所に取り付けることが可能になる。
4)ピストンの断面を小さくすることにより、必要とする液体量を減らし、省スペース化が図れる。
5)測定シリンダーの内径を、液体排出槽あるいは液体排出シリンダの内径、または液体供給槽あるいは液体供給シリンダの内径より大きくすることにより、微小移動に対しても正確な移動量を測定することが可能になる。
6)本発明に係る構造物の累積変形量測定装置を、構造物中の制震デバイスの変形方向に一致させて取り付けることにより、該制震デバイスの疲労寿命を推定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態であって、液体供給槽および液体排出槽を有す実施の形態を説明する説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態であって、液体供給管および液体排出管がそれぞれ複数で、液体供給槽および液体排出槽がそれぞれフロートを有す実施の形態を説明する説明図である。
【図3】本発明の一実施の形態であって、液体供給シリンダおよび液体排出シリンダを有す実施の形態を説明する説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態であって、一対の測定シリンダが平行に配置された実施の形態を説明する説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態であって、一対の測定シリンダが同じ筒体内に配置された実施の形態を説明する説明図である。
【図6】本発明の一実施の形態であって、一対の測定シリンダのそれぞれの液体供給槽および液体排出槽を一体にした実施の形態を説明する説明図である。
【図7】本発明の一実施の形態における測定シリンダの断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態における累積変形測定装置を、構造物中のせん断型制震デバイスに設置した状況を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施の形態における累積変形測定装置を、構造物中の梁の間に設置した場合の、構造物の変形状況を示す説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態における累積変形測定装置を、構造物中のブレース型制震デバイスに設置した状況を示す説明図である。
【図11】本発明の一実施の形態における累積変形測定装置を、構造物中のブレース型制震デバイスに設置した場合の、構造物の変形状況を示す説明図である。
【図12】従来の「構造物疲労寿命予知センサー」の一実施例を示す斜視図である。
【図13】従来の「鋼構造物の疲労寿命診断方法および寿命診断機能付き鉄骨部材」の実施例における磁気ヘッドの一例を示す概略斜視図である。
【図14】従来の「振動で蓄積されるエネルギの被検出体への影響の診断方法」を示す概略斜視図である。
【図15】従来の「構造物用制振ダンパーの累積変形測定装置」の説明用側面図である。
【図16】従来の「構造物用制振ダンパーの累積変形測定装置」の説明用側面図である。
【図17】従来の「構造物用制振ダンパーの累積変形測定装置」の説明用側面図である
【符号の説明】
1 測定シリンダ
2 測定ピストン
3 液体
4 液体供給管
5 液体排出管
6 液体供給槽
7 液体排出槽
41 逆止弁
51 逆止弁
61 測定用目盛
64 供給シリンダ
65 供給ピストン
71 測定用目盛
71 排出シリンダ
75 排出ピストン

Claims (11)

  1. 構造物が両方向に繰り返し変形した際の片方向の変形の累積変形量を測定する、構造物の累積変形量測定装置であって、
    累積変形量を測定しようとする構造物の変形側に接続する測定ピストンロッドと、
    該構造物の基準側に設置する筒状の測定シリンダと、
    測定ピストンロッドに連結され、測定シリンダの内周を摺動して移動自在な測定ピストンと、
    測定シリンダと測定ピストンが形成する空間に連結され、該空間に液体を供給する逆止弁を具備する液体供給管と、
    液体供給管に連結され、供給する液体を貯蔵する液体供給槽と、
    測定シリンダと測定ピストンが形成する空間に連結され、該空間より液体を排出する逆止弁を具備する液体排出管と、
    液体排出管に連結され、排出される液体を貯蔵する液体排出槽と、
    液体供給槽内の液面高さまたは液体排出槽の液面高さの一方または両方を測定自在な液面高さ測定目盛とを有し、
    前記変形側が目的とする測定方向に変形した際に限り、測定シリンダと測定ピストンが形成する空間内の液体が液体排出槽に排出され、前記変形側が測定方向と反対方向に変形した際には、測定シリンダと測定ピストンが形成する空間内に液体供給槽から液体が供給され、
    液体供給槽または液体排出槽の一方または両方の液面高さの変化により累積変形量を測定することを特徴とする、構造物の累積変形量測定装置。
  2. 液体供給管複数であって、小流量用逆止弁を具備する液体供給管と大流量用逆止弁を具備する液体供給管とを有すことを特徴とする請求項1記載の、構造物の累積変形量測定装置。
  3. 液体排出管が複数であって、小流量用逆止弁を具備する液体排出管と大流量用逆止弁を具備する液体排出管とを有すことを特徴とする請求項1記載の、構造物の累積変形量測定装置。
  4. 液体供給槽が、筒状の供給シリンダと、供給シリンダの内周を摺動して移動自在な供給ピストンと、供給ピストンに連結された供給ピストンロッドと、供給ピストンロッドの移動量を測定する供給量測定目盛と
    を有すことを特徴とする請求項1〜3記載の、構造物の累積変形量測定装置。
  5. 液体排出槽が、筒状の排出シリンダと、排出シリンダの内周を摺動して移動自在な排出ピストンと、排出ピストンに連結された排出ピストンロッドと、排出ピストンロッドの移動量を測定する排出量測定目盛と
    を有すことを特徴とする請求項1〜3記載の、構造物の累積変形量測定装置。
  6. 測定シリンダが断面円形であって、測定ピストンが測定シリンダの中心軸に対し回転自在であることを特徴とする請求項1〜5記載の、構造物の累積変形量測定装置。
  7. 測定ピストンロッドが相互に摺動自在な多重管であることを特徴とする請求項1〜6記載の、構造物の累積変形量測定装置。
  8. 請求項1〜7記載の構造物の累積変形量測定装置を一対有し、一方の累積変形量測定装置の測定シリンダと他方の累積変形量測定装置の測定シリンダが平行または同軸に配置され、さらに、一方の累積変形量測定装置の測定ピストンロッドと他方の累積変形量測定装置の測定ピストンロッドが連結され、
    構造物が両方向に繰り返し変形した際の、片方向の変形の累積変形量およびこれと反対方向の変形の累積変形量を、それぞれの累積変形量測定装置が測定することを特徴とする構造物の累積変形量測定装置。
  9. 一方の累積変形量測定装置の測定シリンダと他方の累積変形量測定装置の測定シリンダが、同一筒体内に形成されることを特徴とする請求項8記載の、構造物の累積変形量測定装置。
  10. 一方の累積変形量測定装置の測定シリンダに接続する液体排出管と,他方の累積変形量測定装置の測定シリンダに接続する液体排出管が,一つの液体排出槽に接続することにより,両方向の累積変形量の和を測定することを特徴とする,請求項8,9記載の,構造物の累積変形量測定装置。
  11. 測定ピストンロッドと構造物の変形側との接合をピン接合とすることにより,測定ピストンロッドが測定シリンダの中心軸と平行に回転自在であることを特徴とする,請求項1〜10記載の,構造物の累積変形量測定装置。
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