JP4350362B2 - 循環流動層 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、都市ゴミやバイオマス等の有機分を熱分解して主に可燃性ガスを回収するための循環流動層に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、流動層あるいは該流動層から排出された排気から固形物を捕集して流動層に返送するサイクロンを備えた循環流動層において、有機物を含む都市ゴミやバイオマス等の処理物を熱分解処理する場合には、処理物は、内部で流動用ガスにより流動媒体が流動させられる高温の流動層の本体に直接供給されていた(例えば、特許文献1参照)。しかして、このように高温の流動層本体に供給された処理物は、流動媒体とともに流動させられて解砕され、乾燥、昇温させられて有機物が熱分解させられることにより、チャーと呼ばれる炭素を主成分とした固体と、分解ガスと呼ばれる可燃性ガスとを生成する。
【0003】
【特許文献1】
特開平1−260206号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、本発明の発明者等の研究によると、有機物の熱分解で生成された上記チャーは、流動層本体において流動媒体が濃厚に分布する部分(デンスベッド部)およびサイクロン(ホットサイクロン)内で主に燃焼し、しかも低温で熱分解して生成されたチャーは120℃程度以上の温度で燃焼を始めて温度が高くなるほど燃焼速度(単位流動媒体中のチャーの単位時間当たりの燃焼量)が増大する。一方、分解ガスの燃焼は600℃以下では燃焼速度が遅く、630℃以上となると燃焼速度が増大する。従って、熱分解生成物として上記分解ガスの回収を目的とする場合においては、流動層本体の温度が高く、すなわち有機物の熱分解温度が高いと、流動層本体を含めた設備はコンパクトとなるものの、分解ガスの一部が燃焼してしまって回収される可燃性ガスの品質が低下するという問題が起きるため、流動層本体の温度を300℃〜600℃程度と比較的低温に設定して処理物を供給するようにしている。
【0005】
しかしながら、このように低温の流動層本体において熱分解を行うと、上記とは逆に流動媒体中でのチャーの燃焼速度が遅くなるため、流動媒体の量を多くする必要があり、これに伴い流動層本体も大型化したりして非経済的となってしまうという問題が生じる。また、こうして熱分解が低温で行われるために分解が不十分となり、タール分を含んだ分解ガスが回収されてしまって品質の低下を招くという問題も生じる。さらには、この流動層本体から排出されてホットサイクロンに導入された排気中の未燃焼のチャーが、該ホットサイクロンで捕集されずにこれよりも後の工程に排出されてしまった場合、これが低温分解してチャーに含まれる硫黄分が単純な硫化水素等とならずに有機性硫黄となってしまい、この後工程における硫黄分除去装置等の運転に支障を来すおそれもあった。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたもので、有機物の熱分解温度自体は低温として、高品質の分解ガスを回収することができる一方、流動層本体のコンパクト化を図ることができ、さらには熱分解の促進を図ることができるとともに、未燃焼のチャーが後工程に排出されてしまうのも確実に防止することが可能な循環流動層を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、内部で流動用ガスにより流動媒体が流動させられる流動層本体と、この流動層本体から排出された排気が導入されて固形物が捕集されるホットサイクロン部とを備え、このホットサイクロン部を、上記流動層本体に排気管を介して連結されて上記排気が導入されるとともに、下端に連結された返送管が該流動層本体に接続されて、捕集された固形物は上記返送管を介して上記流動層本体に循環可能とされた第1段のホットサイクロンと、前段のホットサイクロンに排気管を介して連結されてこの前段のホットサイクロンからの排気が導入される第2段またはそれ以降の段のホットサイクロンとの複数段のホットサイクロンによって構成して、上記流動層本体と上記第1段のホットサイクロンとを連結する上記排気管から有機物を含む処理物を供給可能とし、供給された上記処理物は、上記第1段のホットサイクロンに導入され、この第1段のホットサイクロンにおいて熱分解されて該処理物中の上記有機物からチャーと分解ガスとが生成され、上記チャーと、上記排気とともに導入された上記流動媒体とからなる上記固形物は、上記第1段のホットサイクロンにおいて捕集されて、上記返送管を通って上記流動層本体に返送され、この流動層本体に返送された上記チャーは、上記流動媒体とともに上記流動用ガスによって流動させられつつ燃焼されることを特徴とする。
【0008】
このように構成された循環流動層において、流動層本体とホットサイクロン部のうち上記第1段のホットサイクロンとを連結する排気管に供給された処理物は、流動層本体から排出された高温の排気とともに第1段のホットサイクロンに導入されて乾燥、昇温させられ、有機物が熱分解させられてチャーと分解ガスとが生成される。ここで、これらの操作はいずれも吸熱操作であるため、この第1段のホットサイクロンにおける熱分解温度は低温に抑えられ、従って生成された分解ガスが燃焼して可燃性ガスの品質が損なわれることはない。さらに、第1段のホットサイクロンから排出された排気は、第2段またはそれ以降の段のホットサイクロンに順次導入されてチャーや流動媒体が分離されるため、未燃焼のチャーが後工程に排出されて低温分解することもない。
【0009】
一方、この第1段のホットサイクロンによりチャーと排気とともに流動層本体から排出された流動媒体とは大部分が排気と分離され、上記返送管を介して流動層本体に返送されて循環させられる。そして、流動層本体に循環させられたチャーは流動媒体とともに流動用ガスによって流動させられつつ燃焼されるが、このとき該流動層本体においては分解ガスが燃焼するおそれがないために、循環させられたチャーを流動媒体が焼結しない範囲で高温で燃焼させることができ、従ってチャーの燃焼速度を速めることができるので流動媒体が少なくて済み、流動層本体のコンパクト化を図ることができる。なお、上記複数段のホットサイクロンのうち少なくとも最終段のホットサイクロンで捕集される固形物は、その燃焼が略完了していて、しかも低融点物質の含有率も高いので、流動層本体に返送して循環させることなく、系外に抜き出し可能とすればよい。
【0010】
ここで、上記第1段のホットサイクロン内の温度は300℃〜600℃に制御されるのが望ましい。すなわち、実質的に処理物中の有機物の熱分解を行うこの第1段のホットサイクロンの温度が300℃よりも低いと、熱分解が不十分となってタール分を含んだ分解ガスが生成されるおそれがあり、逆にこの第1段のホットサイクロン温度が600℃よりも高いと、分解ガスが燃焼してしまうおそれがあり、いずれも高品質の分解ガスを回収することができなくなるおそれが生じる。さらに、このように第1段のホットサイクロン内の温度を制御するには、一つに上記処理物の供給量を調整すればよく、すなわち処理物の供給量を増大させれば上記の吸熱操作によって第1段のホットサイクロン内温度を低下させることができ、逆に供給量を減らせば温度を上昇させることができる。また、他の一つとして、流動層本体に供給される上記流動用ガスの供給量または酸素濃度を調整するようにしてもよく、これにより流動層本体におけるチャーの燃焼温度を制御して、その排気が導入される第1段のホットサイクロン内温度も制御することが可能となる。しかも、このように流動用ガスの供給量や酸素濃度を調整することにより、この流動用ガスの酸素の殆どを流動層本体の流動媒体が濃厚となる部分でチャーの燃焼に消費させることができ、従ってこの流動用ガス中に酸素を含有させることなく排気として第1段のホットサイクロンに導入することができて、該第1段のホットサイクロンで生成されたチャーや分解ガスの燃焼を一層確実に防ぐことができる。
【0011】
また、第1段のホットサイクロンにおける有機物の分解において熱分解温度が低いと上述のように熱分解が不十分となり、チャーの生成割合が多くなって逆に回収される分解ガスの生成割合が少なくなったり、この分解ガスにおいても高分子のタール分の含有割合が増加したりするおそれがあるので、上述のような温度制御によっても第1段のホットサイクロン内の温度すなわち熱分解温度を十分に得ることができないような場合などには、上記流動媒体に、ゼオライト、塩化亜鉛、塩化カルシウム、リン酸のうち少なくとも1種よりなる熱分解促進剤を添加するのが望ましい。すなわち、このような熱分解促進剤を流動媒体に添加することにより、該熱分解促進剤は流動層本体からその排気とともに第1段のホットサイクロンに供給されて処理物の有機物の熱分解に関与することとなり、かかる熱分解促進剤の存在下では、低温熱分解でも低分子の分解ガスの生成割合が増加するので、分解ガスの品質および回収率の向上を図ることが可能となる。
【0012】
一方、上記第2段またはそれ以降の段のホットサイクロンにおいては、水蒸気と酸化剤とを供給することにより、これら第2段またはそれ以降の段のホットサイクロン内の温度が、熱分解が行われる第1段のホットサイクロン内の温度より高温の800℃以上となるように制御されるのが望ましい。すなわち、こうして第2段またはそれ以降の段のホットサイクロンに酸化剤を供給することにより、この第2段またはそれ以降の段のホットサイクロンに導入された排気のうち、第1段のホットサイクロンにおける熱分解で生成された分解ガスの一部が燃焼して、該第2段またはそれ以降の段のホットサイクロン内温度がこのような高温に上昇させられるとともに、酸化剤とともに供給される水蒸気によって残りの分解ガスの水蒸気改質反応が促される。なお、この酸化剤としては、例えば酸素または酸素を含有したガスを用いることが可能である。また、このように第2段またはそれ以降のホットサイクロン内が高温に維持されることにより、第1段のホットサイクロンで捕集されなかったチャーと分解ガスやチャーの燃焼で発生した二酸化炭素とを反応させて一酸化炭素を生成させることができるとともに、チャーに含まれる硫黄分によって有機性硫黄が生成されても、高温で熱分解を促進させて硫化水素のような低分子の化合物に分解させることが可能となり、これらのような高温ガス改質反応を第2段以降のホットサイクロンで起こさせて第1段のホットサイクロンで生成された分解ガスの精製を行うことによって、回収される分解ガスの品質を高めることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の循環流動層の一実施形態を示すものである。この図1において符号1で示すのは流動層本体であり、この流動層本体1は本実施形態では上下が閉塞された縦長の筒状をなしていて、その内部には硅砂等の流動媒体Sが張り込まれているとともに、この流動媒体Sにはゼオライト、塩化亜鉛、塩化カルシウム、リン酸のうち少なくとも1種よりなる熱分解促進剤Tが添加されている。また、流動層本体1の下部は下方に向けて窄まる円錐状とされるとともに、その下端には図示されない流動媒体Sや灰分、不燃物等の抜き出し口が設けられている。そして、この流動層本体1の円錐状の下部には一次流動用ガスAの供給口2が設けられるとともに、この供給口2よりもやや上方には二次流動用ガスBの供給口3が設けられており、これらの供給口2,3から供給される一次、二次の流動用ガスA,Bにより流動層本体1内の流動媒体S等が流動させられるようになされている。なお、この流動用ガスA,Bとしては、例えば水蒸気に酸素を加えたガスが所定の温度まで加熱されて供給され、その供給量も調整可能とされる。ただし、この供給量は通常は流動用ガスA,Bの流動層本体1内における空塔速度が流動媒体S等の終末速度程度の流速となるように設定されている。
【0014】
一方、図中に符号4で示すのは、上記流動層本体1から排出された排気が導入されて該排気中の固形物を捕集するホットサイクロン部であり、本実施形態ではこのホットサイクロン部4は、流動層本体1の上部に排気管5を介して連結されて流動層本体1からの上記排気が導入される第1段のホットサイクロン6と、この第1段のホットサイクロン6の上部に排気管7を介して連結されて該第1段のホットサイクロン6から排出された排気が導入される第2段のホットサイクロン8と、さらにこの第2段のホットサイクロン8の上部に排気管9を介して連結されて該第2段のホットサイクロン8から排出された排気が導入される第3段のホットサイクロン10との、複数段(本実施形態では3段)のホットサイクロン6,8,10によって構成されている。なお、上記第1段のホットサイクロン6への排気管5は流動層本体1の上部側壁に連結されて水平に延びるようにされているのに対し、第2、第3段のホットサイクロン6への排気管7,9はそれぞれその前段の第1、第2段のホットサイクロン6,8の上面部に連結されて上方に延びた後に水平に折れ曲がるL字状とされており、これにより該第1〜3段のホットサイクロン6,8,10は後段のホットサイクロン8,10の位置が順次高くなるように配設されている。
【0015】
また、これらのホットサイクロン6,8,10の下端からは捕集した固形物が排出可能とされており、このうち第1、第2段のホットサイクロン6,8の下端にはそれぞれ返送管11,12が連結されていて、これらの返送管11,12は斜め下向きに延びて、第1段のホットサイクロン6の返送管11が、流動層本体1内下部の流動媒体Sが高い濃度で流動する濃厚層部(デンスベッド部)の位置に接続されるとともに、第2段のホットサイクロン8の返送管12は上記返送管11の中途部分に接続されて合流させられており、第1、第2段のホットサイクロン6,8において捕集された固形物がこれらの返送管11,12を介して流動層本体1に返送されて循環可能とされている。なお、返送管12を流動層本体1の上記濃厚層部の位置に直接接続するようにしてもよい。一方、本実施形態において最終段となる上記第3段のホットサイクロン10に下端からは、この第3段のホットサイクロン10によって捕集された固形物Cが流動層本体1に返送されることなく系外に抜き出し可能とされるとともに、この第3段のホットサイクロン10の上面部からは、該第3段のホットサイクロン10から排出された排気Dが排出可能とされ、この排気Dは図示されない硫黄分除去装置等で処理された後、次述する可燃性の分解ガスとして回収される。
【0016】
そして、都市ゴミやバイオマス等の処理物Eは、このように構成された循環流動層の流動層本体1とホットサイクロン部4の上記第1段のホットサイクロン6とを連結する上記排気管5に設けられた供給口13から供給可能とされている。従って、この供給口13から供給された処理物Eは、該排気管5を通して排出される流動媒体Sを伴った流動用ガスA,B等よりなる流動層本体1からの高温の排気とともに上記第1段のホットサイクロン6に導入され、この第1段のホットサイクロン6において高温の上記流動媒体Sおよび流動用ガスA,Bにより加熱されて乾燥、昇温させられ、さらには熱分解されて該処理物E中の有機物からチャーと上記分解ガスとが生成される。また、これに対して、ともに導入された流動媒体Sおよび流動用ガスA,Bは吸熱されて冷却され、これにより第1段のホットサイクロン6内の温度は上記流動層本体1内の温度よりも低温とされる。なお、この第1段のホットサイクロン6内の温度は、流動層本体1への上記流動用ガスA,Bの供給量やその酸素濃度を調整したり、あるいは上記供給口13からの処理物Eの供給量を調整したりすることにより所定の温度に制御可能とされ、望ましくは300℃〜600℃の範囲に制御される。
【0017】
こうして第1段のホットサイクロン6において熱分解されて生成したチャーと排気とともに導入された流動媒体Sとからなる固形物の大部分は、該第1段のホットサイクロン6において気体の流動用ガスA,Bおよび分解ガスから分離されて捕集され、返送管11を通って流動層本体1に返送される。一方、このように固形物が分離された流動用ガスA,Bおよび分解ガスよりなる排気は排気管7を通って第2段のホットサイクロン8に導入されてさらに固気分離され、この第2段のホットサイクロン8で捕集された固形物は返送管12,11を通ってやはり流動層本体1に返送されるとともに、排気は排気管9を通って第3段のホットサイクロン10に導入される。
【0018】
このように第1、第2段のホットサイクロン6,8から返送管11,12を介して流動層本体1に返送された流動媒体Sおよびチャーは、流動媒体Sが流動用ガスA,Bによって流動層本体1内において再び流動させられるとともに、チャーはこの流動用ガスA,Bに含有される酸素によって燃焼させられ、その燃焼熱によって流動媒体Sおよび流動用ガスA,Bが高温に昇温させられ、すなわち流動層本体1内の温度が高温に維持される。ここで、この流動用ガスA,Bに含有される酸素量(流動用ガスA,Bの酸素濃度)は、このように流動層本体1内におけるチャーの燃焼によって上記流動層本体1内温度が第1段のホットサイクロン6内温度よりも高温に維持されるように調整され、引いては上述のようにこの第1段のホットサイクロン6内温度が300℃〜600℃の範囲に制御されるようになされている。
【0019】
一方、上記第2段のホットサイクロン8と第3段のホットサイクロン10とを連結する排気管9には、酸素含有ガス供給口14と水蒸気供給口15とが設けられていて、この排気管9を通って第3段のホットサイクロン10に導入される排気に、酸化剤として酸素やPSA等により酸素濃度が高濃度に調整された空気等よりなる酸素含有ガスFと高温の水蒸気Gとが供給可能とされている。しかして、上記第3段のホットサイクロン10においては、この酸素含有ガスFにより、該第3段のホットサイクロン8に導入された排気中の分解ガスの一部が燃焼させられて、この第3段のホットサイクロン10内の温度が第2段のホットサイクロン8内よりも高温の800℃〜1200℃に昇温させられる。
【0020】
また、供給口15から供給された水蒸気Gにより、分解ガス中の比較的分子量の大きい成分が水蒸気改質されてより低分子量の分解ガスにされるとともに、流動層本体1内におけるチャーの燃焼やこの第3段のホットサイクロン10における上記分解ガスの燃焼によって生成された二酸化炭素は、この第3段のホットサイクロン10において未捕集のチャーの炭素と反応して一酸化炭素とされ、さらには該排気中に含まれた有機性硫黄も高温で熱分解されて低分子の硫化水素等にされる。そして、このように第3段のホットサイクロン10において改質されて精製された分解ガスは上記排気Dとして排出されて回収され、一方この第3段のホットサイクロン10において捕集された固形物Cは上述のように系外に抜き出される。
【0021】
従って、このように構成された循環流動層においては、処理物Eが、従来の通常の流動層や循環流動層のように流動層本体1に供給されるのではなく、上記導入管5から第1段のホットサイクロン6に供給され、その有機物が比較的低温で熱分解させられてチャーと分解ガスとが生成されるので、この分解ガスが燃焼することにより排気Dとして回収される可燃性ガスの品質が損なわれたりすることがない。また、この第1段のホットサイクロン6から排出された分解ガスを含む排気は、第2、第3段のホットサイクロン8,10によって固形物が分離されるため、未燃焼のチャーがホットサイクロン部4から後の工程に排出されてしまうのも防ぐことができ、かかる未燃焼のチャーが後工程で低温分解して有機性硫黄となることによりこの後工程の硫黄分除去装置等の運転に支障を来すような事態も未然に防止することができる。
【0022】
その一方で、上記第1段のホットサイクロン6において分解ガスから分離されたチャーは流動層本体1に返送されて流動用ガスA,Bにより燃焼させられるが、このときにはチャーとともに分解ガスが燃焼するおそれがないために、流動層本体1内温度を上述のように高温としてチャーの燃焼を行うことができ、これにより流動媒体S中でのチャーの燃焼速度を増大させることが可能となって、少ない流動媒体Sでチャーの燃焼を促すことができるとともに、これに伴い流動層本体1もそのコンパクト化を図ることができる。従って、上記構成の循環流動層によれば、特に熱分解で生成された分解ガスを回収してその利用を図ろうとする場合に、発熱量が高くて不純物の少ない高品質の分解ガスを得ることができるとともに、かかる高品質の分解ガスを得るのにも流動層本体1が大型化したりすることのない経済的な循環流動層を提供することが可能となる。
【0023】
また、本実施形態では、上記処理物Eの有機物の熱分解を行う第1段のホットサイクロン6内の温度が300℃〜600℃に制御されているので、この有機物の熱分解を十分に促すことができてタール分を含んだ分解ガスが生成されたりするのを防ぎながらも、生成された分解ガスが燃焼してしまうのを確実に防止することができる。そして、さらにこのように第1段のホットサイクロン6内温度を制御するのに、本実施形態ではまず供給口13からの処理物Eの供給量を調整可能としており、これにより処理物Eの乾燥、昇温、およびその有機物の熱分解に消費される流動層本体1からの排気の熱量を調整して第1段のホットサイクロン6内温度を確実に制御することが可能となる。また、本実施形態ではさらに、上記流動層本体1に供給されて第1段のホットサイクロン6から返送されたチャーを燃焼させる流動用ガスA,Bの供給量や酸素濃度も調整可能とされており、これにより該流動層本体1内の温度も制御してこの流動層本体1から排出される排気の温度も調整可能とし、この排気が導入される第1段のホットサイクロン6内温度をより確実に制御することが可能となる。
【0024】
しかも、本実施形態では、このように流動用ガスA,Bの供給量や酸素濃度を調整可能とすることにより、流動層本体1に供給されたこの流動用ガスA,B中の酸素の殆どを、この流動層本体1の流動媒体S濃度が濃厚となる濃厚層部で返送されたチャーの燃焼に消費させるように制御することもできる。従って、このような制御を行った場合には、流動層本体1から排出される排気に酸素を殆ど含有させることなく第1段のホットサイクロン6に導入することが可能となり、この第1段のホットサイクロン6で生成された分解ガス等が該第1段のホットサイクロン6において燃焼してしまうような事態を一層確実に防ぐことができるので、さらに高品質の分解ガスを回収することが可能となる。
【0025】
さらに、本実施形態では、この流動層本体1に張り込まれる流動媒体Sにゼオライト、塩化亜鉛、塩化カルシウム、リン酸のうち少なくとも1種よりなる熱分解促進剤Tが添加されており、この熱分解促進剤Tが流動媒体Sとともに排気に伴われて第1段のホットサイクロン6に導入されることにより、処理物Eの有機物の熱分解を促進することができる。このため、例えば上述のように処理物Eの供給量や流動用ガスA,Bの供給量、酸素濃度を調整しても、この第1段のホットサイクロン6内温度が上記範囲に達せずに低温熱分解となったとしても、この熱分解促進剤Tによってチャーの生成割合を抑えて低分子の分解ガスの生成割合を増加させるとともに、分解ガス中の高分子のタール分の含有割合も低減させることができ、これにより回収される分解ガスの品質の維持と回収率の向上とを図ることが可能となる。
【0026】
さらに、本実施形態では、こうして第1段のホットサイクロン6において生成された分解ガスを含む排気が第2段のホットサイクロン8から第3段のホットサイクロン10に導入される際に、これら第2、第3のホットサイクロン8,10を連結する排気管9に設けられた供給口14,15から酸化剤としての酸素含有ガスFと水蒸気Gが供給され、このうち酸素含有ガスFによって分解ガスの一部が燃焼させられることにより、該第3段のホットサイクロン10内の温度が第1、第2段のホットサイクロン6,8よりも高温の800℃以上となるように制御可能とされている。従って、このように第3段のホットサイクロン10内温度が高温とされることにより、これより前段の第1、第2段のホットサイクロン6,8で捕集されなかったチャーと、分解ガスやチャーの燃焼で生じた二酸化炭素とを反応させて一酸化炭素を生成することができるとともに、チャーに含まれる硫黄分によって有機性硫黄が生成されてもこれを硫化水素のような低分子化合物に熱分解させて上記後工程で除去し易くすることができる。
【0027】
なお、このような一酸化炭素の生成や有機性硫黄の熱分解を確実に促すには、この第3段のホットサイクロン10内温度はさらに高温の1100℃以上に制御されるのが望ましい。ただし、この第3段のホットサイクロン10内温度を高くしすぎると、酸素含有ガスFによって燃焼させられる分解ガス量が増大してその回収率が損なわれるとともに、第3段のホットサイクロン10自体にも高い耐熱性を確保しなければならなくなるので、この第3段のホットサイクロン10内温度は本実施形態のように1200℃以下とされるのが望ましい。
【0028】
また、この酸素含有ガスFとともに供給された水蒸気Gにより分解ガスは水蒸気改質されて、該分解ガス中の比較的分子量の大きい成分が低分子の分解ガスに分解させられるので、本実施形態によれば、さらに一層高品質の分解ガスを回収することが可能となる。さらにまた、本実施形態におけるホットサイクロン部4の最終段となるこの第3段のホットサイクロン10において捕集された固形物Cは、その燃焼が略完了していて流動層本体1に返送してもこの流動層本体1内温度の維持に寄与するようなことはなく、その一方で低融点物質の含有率が高くなっていて、むしろ流動層本体1に返送した場合には、かかる物質の溶融により却って流動層本体1における流動媒体Sの流動等に悪影響を与えるおそれがあるので、本実施形態のように系外に抜き出して排出するのが望ましい。
【0029】
なお、本実施形態ではホットサイクロン部4が3段のホットサイクロン6,8,10によって構成されていて、このうち上述のように第2、第3段のホットサイクロン8,10を連結する排気管9に上記酸素含有ガスFと水蒸気Gの供給口14,15が設けられているが、例えばこのホットサイクロン部4は第1、第2の2段のホットサイクロン6,8によって構成されていてもよく、その場合には供給口14,15は両ホットサイクロン6,8を連結する排気管7に設ければよい。また、逆に、ホットサイクロン部4は4段以上のホットサイクロンによって構成されていてもよい。さらに、上記熱分解促進剤Tとしては、上記ゼオライト、塩化亜鉛、塩化カルシウム、リン酸のうち少なくともいずれか1種が添加されていればよく、場合によってはこれらのうちの2種以上の混合物を用いることも可能である。
【0030】
【実施例】
次に、図1に示した実施形態の循環流動層によって処理物Eを処理した場合のより具体的な本発明の実施例を挙げて、本発明の効果を実証する。本実施例では、内径300mm、高さ10mの円筒状の流動層本体1を用い、その内部に流動媒体SとしてJIS7号硅砂に熱分解促進剤として塩化カルシウムを20%重量部添加したものを張り込んだ。ただし、この熱分解促進剤としては、消石灰や炭酸石灰を張り込んで処理物Eの塩素と反応させた塩化カルシウムや、リン酸、ゼオライト、塩化亜鉛等を使用してもよい。また、流動用ガスA,Bとしては、圧力0.2Paの水蒸気に酸素を加えたガスを500℃まで加熱して供給した。さらに、供給口14から供給する酸素含有ガスFとしては酸素を使用し、供給口15からは圧力0.2Pa、温度800℃〜1000℃の水蒸気Gを供給した。
【0031】
一方、処理物Eは、きのこ栽培後のおがくずであり、水分28.5%、無機分1.5%、有機分70%で、有機分の発熱量は約25MJ/kgであった。本実施例では、このような処理物Eを上記供給口13から、第1段のホットサイクロン6内の温度が300℃〜600℃に制御されるようにその供給量を調整しつつ供給した。また、上記流動用ガスA,Bは、流動層本体1の上記濃厚層部の温度が850℃〜900℃に制御されるようにその酸素濃度(酸素量)を調整し、かつ流動層本体1のガス空塔速度が3.3m/sとなるようにその供給量を調整して供給した。さらに、供給口14からは第3段のホットサイクロン10内温度が1050℃に制御されるように供給量を調整しつつ酸素含有ガス(酸素)Fを供給するとともに、供給口15からの水蒸気Gは、処理物Eの供給量の70%の重量で供給するようにした。
【0032】
ここで、処理物Eの供給量が600kg/hのとき、流動用ガスA,Bの供給量は水蒸気量が60kg/h、酸素量が180kg/hであり、また供給口14からの酸素含有ガスFすなわち酸素の供給量は90kg/h、供給口15からの水蒸気Gの供給量は420kg/hであった。そして、このとき、流動層本体1内の温度は880℃に制御される一方、第1段のホットサイクロン6内の温度は480℃に制御され、その結果回収された分解ガスの発熱量は8800MJ/hであった。従って、本実施例では、処理物Eとしてのおがくずの熱量10500MJ/hのうち、約84%の熱量を精製分解ガスとして回収することができ、従来の一般的な流動層或いは循環流動層では回収可能な分解ガスの熱量が60%であるのに対し、発熱量の高い高品質の分解ガスが回収可能であることが分かった。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ホットサイクロン部を複数段のホットサイクロンによって構成し、その第1段のホットサイクロンに処理物を供給して有機物を熱分解することにより、その熱分解温度を比較的低温に抑えるとともに、後段のホットサイクロンによって固形物を確実に捕集して未燃焼のチャーが排出されたりするのを防いで、回収される分解ガスの高品質化を図ることができる一方、流動層本体においては上記第1段のホットサイクロンから返送されたチャーを高温で燃焼させることができ、これにより流動層本体のコンパクト化を図って経済的な循環流動層を提供することが可能となる。また、少なくとも最終段のホットサイクロンでは捕集した固形物を系外に抜き出すことにより、流動層本体への影響を防ぐことができる。
【0034】
また、処理物の供給量を調整可能としたり、流動用ガスの酸素濃度や供給量を調整可能としたりして、上記第1段のホットサイクロンの温度を300℃〜600℃に制御することにより、有機物の熱分解を効果的に促しつつも分解ガスの燃焼を確実に防止することができる。さらに、流動層本体の流動媒体に熱分解促進剤を添加することにより、第1段のホットサイクロン温度が低かったりしても、熱分解によるチャーの生成割合の増大や分解ガス中のタール分の含有割合の増大を防いで、高品質な分解ガスをより高い回収率で回収することが可能なる。さらにまた、後段のホットサイクロンにおいて導入される排気に水蒸気と酸化剤とを供給してその温度を800℃以上に制御することにより、未捕集のチャーと二酸化炭素を反応させて一酸化炭素を生成するとともに、有機性硫黄を熱分解して硫化水素等の低分子化合物とし、さらには水蒸気によって分解ガスの改質を図って、より一層発熱量の高い高品質の分解ガスを回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態を示す図である。
【符号の説明】
1 流動層本体
4 ホットサイクロン部
5,7,9 排気管
6 第1段のホットサイクロン
8 第2段のホットサイクロン
10 第3段のホットサイクロン
11,12 返送管
A,B 流動用ガス
C 固形分
D 排気
E 処理物
F 酸素含有ガス
G 水蒸気

Claims (7)

  1. 内部で流動用ガスにより流動媒体が流動させられる流動層本体と、
    この流動層本体から排出された排気が導入されて固形物が捕集されるホットサイクロン部とを備え、
    このホットサイクロン部は、
    上記流動層本体に排気管を介して連結されて上記排気が導入されるとともに、下端に連結された返送管が該流動層本体に接続されて、捕集された固形物は上記返送管を介して上記流動層本体に循環可能とされた第1段のホットサイクロンと、
    前段のホットサイクロンに排気管を介して連結されてこの前段のホットサイクロンからの排気が導入される第2段またはそれ以降の段のホットサイクロンとの複数段のホットサイクロンによって構成されていて、
    上記流動層本体と上記第1段のホットサイクロンとを連結する上記排気管から有機物を含む処理物が供給可能とされ
    供給された上記処理物は、上記第1段のホットサイクロンに導入され、この第1段のホットサイクロンにおいて熱分解されて該処理物中の上記有機物からチャーと分解ガスとが生成され、
    上記チャーと、上記排気とともに導入された上記流動媒体とからなる上記固形物は、上記第1段のホットサイクロンにおいて捕集されて、上記返送管を通って上記流動層本体に返送され、
    この流動層本体に返送された上記チャーは、上記流動媒体とともに上記流動用ガスによって流動させられつつ燃焼されることを特徴とする循環流動層。
  2. 上記複数段のホットサイクロンのうち少なくとも最終段のホットサイクロンで捕集された固形物は、系外に抜き出し可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の循環流動層。
  3. 上記第1段のホットサイクロン内の温度が300℃〜600℃に制御されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の循環流動層。
  4. 上記処理物の供給量を調整することにより、上記第1段のホットサイクロン内の温度が制御されることを特徴とする請求項3に記載の循環流動層。
  5. 上記流動用ガスの供給量または酸素濃度を調整することにより、上記第1段のホットサイクロン内の温度が制御されることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の循環流動層。
  6. 上記流動媒体に、ゼオライト、塩化亜鉛、塩化カルシウム、リン酸のうち少なくとも1種よりなる熱分解促進剤が添加されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の循環流動層。
  7. 上記第2段またはそれ以降の段のホットサイクロンに水蒸気と酸化剤とを供給することにより、該ホットサイクロン内の温度が800℃以上に制御されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の循環流動層。
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