図1を参照して本発明の受信装置の例を説明する。本例の受信装置は、アレーアンテナ111及び信号処理部112及び干渉除去器103を有するアダプティブアレーアンテナ100と、アダプティブアレーアンテナ100からのOFDM信号を復調するOFDM復調器105とを有する。
アレーアンテナ111は複数のアンテナから構成される。アレーアンテナ111によって受信された信号は、信号処理部112に入力される。信号処理部112は、アレーアンテナ111が受信した信号に対して、フィルタリング、増幅、ダウンコンバート、直交復調、アナログデジタル変換等の適切な処理を行い、デジタルの受信信号102を生成する。信号処理部112は、アレーアンテナ111を構成する各アンテナが受信した信号毎に受信信号102を生成する。受信信号102はベースバンド信号であり、I(同相)成分とQ(直交)成分からなる。以下、受信信号102は、I成分を実軸、Q成分を虚軸に有する複素数で表現される複素ベースバンド信号であるとして説明する。また、アレーアンテナ111を構成するアンテナの数は、図示の例では4本であるが、何本でも良い。
干渉除去器103は、インパルス応答推定器113、インパルス応答処理器115、重み計算器118及び指向性形成器120を有し、受信信号より干渉波を除去し希望波を取り出す。指向性形成器120は複数の乗算器121と加算器122とを有する。インパルス応答推定器113は、伝播路のインパルス応答を推定し、それをインパルス応答処理器115へ出力する。インパルス応答処理器115は、推定されたインパルス応答114の変形、及び、希望波の選定と希望波の遅延時間を算出し、それを重み計算器118へ出力する。重み計算器118は、変形されたインパルス応答116と希望波の遅延時間117から重み119を計算し、それを指向性形成器120へ出力する。インパルス応答114、及び、変形されたインパルス応答116は、入力が遅延時間、出力が複素振幅である関数である。重み119は複素数である。
指向性形成器120において、乗算器121は、各アンテナからの受信信号102に重み119を乗算し、その積を求める。加算器122は、各アンテナからの受信信号102と重み119の積の和を求め、それをOFDM復調器105へ出力する。OFDM復調器105は、干渉除去器103からの出力信号104を入力し、OFDM信号の復調を行う。
図18は本発明による伝送信号の周波数特性を示す。本例では、干渉除去器103は、信号が伝送されるキャリア1801のみを用いる。従って、本例では、従来のように、信号が伝送されないキャリアを使用する場合に比べて、周波数利用効率が高い。
次に、本発明による受信装置のアダプティブアレーアンテナを用いることによって、ビット誤り率特性が向上することを説明する。OFDM方式は、遅延波が存在する環境でも比較的ビット誤り率特性を劣化させることなく信号を伝送できるという特徴があるが、希望波に対して相対的な遅延時間の長い遅延波が存在すると、やはりビット誤り率特性は劣化する。しかしながら、希望波に対して相対遅延時間の短い遅延波の存在は、復調時の信号電力を増加させることになり、ビット誤り率特性の向上に寄与する場合もある。
図21は本発明のアダプティブアレーアンテナ出力点(干渉除去器出力104)から見た伝播路のインパルス応答の例を示す。この時の実際の伝播路のインパルス応答の概念図は図19のようになっている。希望波である遅延波1に対して相対的な遅延時間が大きい遅延波3、4の電力レベルは雑音電力レベル2000と同一レベルまで抑圧されているが、希望波である遅延波1に対して相対遅延時間が小さい先行波と遅延波2の電力レベルは雑音電力レベルより十分大きいレベルまでの抑圧にとどめることができる。例えば、雑音電力レベルの約3倍までの抑圧にとどめることができる。ここで、例として約3倍であるとしているが、これは後述するマスク関数を調整することによって変更可能であり、この値に限定されるものではない。こうして、本例では、希望波である遅延波1に対して相対遅延時間が小さい先行波と遅延波2の抑圧後の電力レベルを雑音電力レベルより十分大きくでき、この結果OFDM信号復調時の信号電力が増大するため、ビット誤り率特性が向上する。
図2はOFDM方式の伝送信号のフレームフォーマットを示す。OFDM方式の伝送信号の各フレーム200は、情報シンボル201とパイロットシンボル202から構成される。パイロットシンボル202はフレーム内の所定の位置に配置されるが、本例では各フレームの先頭に配置されている。情報シンボル及びパイロットシンボルの各々は、有効シンボル203とガードインターバル204から構成される。ガードインターバル204は、有効シンボルの最後部の所定の長さの部分をコピーし、有効シンボルの前に付加したものである。
図3を参照してインパルス応答推定器113の構成及び動作を説明する。インパルス応答推定器113は、パイロットシンボル同期信号発生器301、FFT(Fast Fourier Transform)(高速フーリエ変換)演算器302、乗算器303及びIFFT(Inverse Fast Fourier Transform)(逆高速フーリエ変換)演算器304を有し、伝播路のインパルス応答を推定する。
パイロットシンボル同期信号発生器301は、各アンテナからの受信信号を用いてパイロットシンボルに同期した同期信号を発生する。具体的な方法の一例としては、あるアンテナに対応する受信信号をパイロットシンボルに対応する整合フィルタに入力し、この出力(複素数)の絶対値を2乗する。次に、信号処理部112におけるこのアンテナに対応する受信信号の処理時の利得に比例する値でこの2乗値を除し、結果として利得補正済2乗値を得る。他のアンテナについても同様にしてこの利得補正済2乗値を計算する。そして、すべてのアンテナについてのこの利得補正済2乗値の和を計算する。この和が最大値を取るタイミングをパイロットシンボルのタイミングとし、これに同期した同期信号を発生する。
また別の例として、あるアンテナに対応する上述の2乗値を計算し、他のアンテナについても同様にしてこの2乗値を計算する。そして、すべてのアンテナについてのこの2乗値の和を計算する。この和が最大値を取るタイミングをパイロットシンボルのタイミングとしてもよい。このほかにも様々な同期信号の発生方法が考えられ、以上述べた2例に限らないことは言うまでも無い。
FFT演算器302は、同期信号のタイミングを元にFFTウインドウタイミングを設定しFFTの演算を行う。この結果FFT演算器302の出力は、パイロットシンボルの周波数特性と伝播路の周波数特性が乗算された周波数関数となる。
乗算器303はパイロットシンボルの周波数特性の逆特性を乗算する。この結果、乗算器303の出力は、伝播路の周波数特性を表す周波数関数となる。IFFT演算器304はこの周波数関数のIFFT演算を行う。これにより、IFFT演算器304は、伝播路のインパルス応答を出力する。以上のような手順で伝播路のインパルス応答の推定を行う。もちろん本例は一例であって、他の方法を用いて伝播路のインパルス応答を推定することも可能であり、以上のべた方法に限定されない。
図4及び図5を参照してインパルス応答処理器115の構成及び動作を説明する。インパルス応答処理器115は、希望波選定器411及びインパルス応答変形器401を有し、インパルス応答変形器401は、関数乗算器412、遅延器413及びマスク関数発生器414を有する。インパルス応答処理器115は、推定されたインパルス応答114を入力し、変形されたインパルス応答116、及び、希望波の遅延時間117を出力する。
図5(a)は、インパルス応答推定器113の出力114であり、インパルス応答推定器113によって推定されたインパルス応答114の時間波形の概念図である。ここでインパルス応答114は、ある遅延時間に対して複素数の値をとる関数であるため、実数成分と虚数成分をとり、2次元の図として表せないので、縦軸はこの複素数の絶対値の2乗、または絶対値そのもの、または、実数成分か虚数成分のどちらか、などを表している。よって概念図と呼んでおり、以下でも同じように表している。希望波選定器411は、推定されたインパルス応答114を入力し、最大電力を有するパスである遅延波2(符号510)を希望波として選定し、希望波の遅延時間117を出力する。
最大電力を有するパスは以下の方法で見つける。遅延時間をτ、あるアンテナeに対応する推定されたインパルス応答をhe(τ)、信号処理部112におけるアンテナeに対応する受信信号の処理時の利得をGe、アンテナeに対応する比例定数をCe、複素数Aの絶対値の2乗を|A|2、遅延時間τにおけるパスの電力をσ(τ)とすると、次式を用いて遅延時間τにおけるパスの電力σ(τ)を計算する。
この値を最大にするτ=τmaxを見つけ、τmaxを最大電力を有するパスの遅延時間とする。比例定数はあらかじめ設定しておく。他の方法や、近似的な方法でももちろん良い。
マスク関数発生器414は、予め設定されたマスク関数(請求項6における予め設定された関数)を出力する。遅延器413はマスク関数を、希望波の遅延時間だけ遅延させる。図5(b)は、遅延器413の出力422であり、希望波の遅延時間だけ遅延したマスク関数の時間波形の概念図である。関数乗算器412は、図5(a)のインパルス応答114に図5(b)の遅延されたマスク関数422を乗算し、インパルス応答を変形させる。図5(c)は、関数乗算器412の出力116であり、遅延されたマスク関数422との乗算によって変形されたインパルス応答116の時間波形の概念図である。
図5(c)に示す変形されたインパルス応答116と図5(a)に示す推定されたインパルス応答114とを比較すると、変形処理によって、遅延波1(符号512)の電力が小さくなっているのが判る。
図6はマスク関数発生器414にて予め設定されたマスク関数の時間波形の概念図である。時点tにおけるマスク関数の値をf(t)、予め設定された非負の定数をTとすると、本例のマスク関数は以下のような特徴がある。まず、f(0)=1であり、|t|≧Tなる時点tについてf(t)=1である。また、−T<t<0においては単調に減少し、0<t<Tにおいては単調に増加する。
図7を参照して重み計算器118の第1の例を説明する。本例の重み計算器118は、ランダムQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)(4相位相シフトキーイング)信号発生器702を有する擬似送信信号発生器701と、フィルタ705及び雑音加算器706を有する擬似受信信号発生器704と、遅延器708と、重み推定アルゴリズム実行器710と、を有する。重み計算器118は、インパルス応答処理器115から出力された、変形されたインパルス応答116と希望波の遅延時間117に基づいて、重み119を計算する。重み計算器118の内部の構成と重みの計算方法は、電子情報通信学会論文誌Vol. J81−B−1 No. 11 pp. 661(1998/11発行)にて示されているものと基本的に同一である。
まず、擬似送信信号発生器701は、擬似送信信号703を発生する。実際にはランダムQPSK信号発生器702が発生するランダムなQPSK信号を擬似送信信号としている。擬似受信信号発生器704は、擬似送信信号703を入力し、擬似受信信号707を発生する。擬似受信信号発生器704の動作の詳細は後述する。一方、擬似送信信号703は遅延器708によって、希望波の遅延時間117の分だけ遅延され、次に述べる重み推定アルゴリズム710にて用いる参照信号709を生成する。
なお、擬似送信信号の方式としてQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)(4相位相シフトキーイング)方式を用いているが、OFDM方式や他の方式を用いてももちろん良い。またこの方式として、実際の伝送方式であるOFDM方式ではなく、QPSK方式や、BPSK(Binary Phase Shift Keying)(2相位相シフトキーイング)方式をはじめ、多相PSK(Phase Shift Keying)(シフトキーイング)方式、多値QAM(Quadrature Amplitude Modulation)(直交振幅変調)方式を用いることによって、擬似送信信号発生器701は容易に構成が可能となる。
重み推定アルゴリズム実行器710では、擬似受信信号707と参照信号709を用いて重み推定アルゴリズムを実行し、重み119を出力する。重み推定アルゴリズムとしては、最小平均自乗誤差法に基づくものであればどのようなものでもよく、例えば、SMI(Sample Matrix Inverse)法、RLS(Recursive Least Squares)法、又は、LMS(Least Mean Square)法などを用いる。
ここで擬似受信信号発生器704の動作を説明する。フィルタ705は、変形されたインパルス応答116をタップ係数として、擬似送信信号703を処理する。雑音加算器706は、フィルタ705からの出力信号に雑音を加算し、擬似受信信号707を生成する。雑音加算器706にて加算する雑音の電力量は、擬似受信信号707の希望波信号電力対雑音電力比と、受信信号102の希望波信号電力対雑音電力比が同一になるように適宜調整される。この方法としては例えば、あるアンテナに対応する雑音加算器706において加算する雑音の電力量を、信号処理部112におけるこのアンテナに対応する受信信号の処理時の利得に比例させる方法がある。もちろん他の方法でもよい。
以上のように、重み計算器118は、既知の重み推定アルゴリズムを用いて、変形されたインパルス応答116から重み119を計算する。この重み推定アルゴリズムは統計的に計算を行うアルゴリズムであり、このため受信信号と参照信号709の一定量以上のサンプルを必要とする。本例の重み計算器118では、受信信号として、擬似受信信号発生器704にて得られた擬似受信信号707が用いられる。重み計算器118の内部では、変形されたインパルス応答116を有する伝播路がシミュレーションによって再現される。この伝播路上に擬似送信信号703を仮想的に送信することによって、擬似受信信号707が得られる。参照信号709は、擬似送信信号703を希望波の遅延時間117だけ遅延させることによって生成される。
変形されたインパルス応答116を有する伝播路は仮想的な伝播路であり、実際の伝播路とは特性が異なる。実際の伝播路が有するインパルス応答の推定値はインパルス応答114である。本発明の特徴は、重み計算器118において重みを計算する際、このような仮想的な伝播路を想定してこれに適応する重みを計算するところにある。
再び図5を参照して、マスク関数の機能を説明する。希望波である遅延波2(符号510)を受信する場合、これとの遅延時間差が大きい先行波や遅延波3は、OFDM復調の際に干渉となり、遅延時間差の小さい遅延波1は、OFDM復調の際にある程度ビット誤り率の向上に寄与する。従来の技術では、先行波、遅延波1及び遅延波3を雑音レベルまでに一様に強く抑圧する。本発明では、先行波と遅延波3については強く(雑音レベルまで)抑圧し、遅延波1についてはこれらより弱く抑圧することによって、ビット誤り率を向上させる。
本例では、先ず、先行波、希望波及び遅延波3の電力値を変化させずに、遅延波1の電力値が6割に減少するように、インパルス応答を変形させる。ここで、6割という値を例示しているが、上述したマスク関数を変更することによってこの値は変更可能であり、この値に限らない。こうして変形されたインパルス応答116を使用して重みを計算し、これを指向性形成器120に適用する。先行波及び遅延波3の電力は本来の値に評価されるため、強く(雑音レベルまで)抑圧されるが、遅延波1の電力は本来の値の6割程度に評価されるため、本来のインパルス応答(すなわち、推定されたインパルス応答114)を用いて重みを計算する場合よりも抑圧度は6割程度に減少すると考えられる。その結果、遅延波1の電力レベルは、雑音レベルの1.67(=1/0.6)倍程度にまでしか抑圧されないことになる。
このように、本例では、本来のインパルス応答114とは異なる変形されたインパルス応答116を用いて重みを計算することにより、本来のインパルス応答114を用いて重みを計算する場合と比較して、遅延時間ごとに抑圧特性を変えることが可能となる。
以上のことから、マスク関数に所定の特徴を付与することによって、遅延時間が異なる干渉波に対して、所望の抑圧特性を付与することができる。ある時点tにおけるマスク関数の値をf(t)と表す。まず、f(0)の絶対値よりも、f(t)の絶対値が小さくなるようなtが1個以上存在すれば、干渉波(希望波以外の先行波や遅延波)の遅延時間から希望波の遅延時間を引いた値がtになるような干渉波に対して弱く抑圧することが可能となる。また、f(k)≠f(l)、且つ、k≠0、且つ、l≠0となるようなk、lの組が1組以上存在すれば、希望波との遅延時間差が異なるような2つの干渉波に対して、抑圧特性を異なるものとすることが可能となる。また、f(k)の絶対値よりも、f(l)の絶対値が大きく、且つ、k、lともに0より大きく、且つkよりlが大きいようなk、lの組を1組以上含むか、又は、f(k)の絶対値よりも、f(l)の絶対値が大きく、且つ、k、lともに0より小さく、且つkよりlが小さいようなk、lの組を1組以上含む、ことを特徴とすれば、希望波との遅延時間差が短い干渉波より長い干渉波を強く抑圧できる。
次に、本発明の動作原理をさらに別の観点から説明する。なお、説明のために、マスク関数の別の例も示している。説明には図8を用いる。
アダプティブアレーアンテナは、遅延波を抑圧できるという特徴がある。アダプティブアレーアンテナを構成するアンテナの数から1を引いた数はアダプティブアレーアンテナの自由度と呼ばれる。一般的には、アダプティブアレーアンテナが抑圧できる遅延波の最大数は自由度に等しい。
例えば、希望波の他に2つの遅延波がある環境において、2本のアンテナから構成される従来までのアダプティブアレーアンテナの動作を考える。アンテナの数は2であるから、自由度は1であり、抑圧することができる遅延波の数は1個である。よって、このアダプティブアレーアンテナは、2つの遅延波のどちらも十分に抑圧することができない。従って、アダプティブアレーアンテナの出力(本実施例における干渉除去器出力104に相当)点において、十分に抑圧されなかった遅延波が含まれる。十分に抑圧されなかった遅延波の希望波に対する遅延時間が十分大きければ、OFDM復調の際、ビット誤り率特性が劣化する。しかし、本発明では仮想的な伝播路を想定しこれに適応する重みを計算するため、次のように所望の遅延波の抑圧特性を得ることができ、OFDM復調の際のビット誤り率特性の劣化を軽減できる。
図8を参照して本発明の受信装置の動作を説明する。図8は、説明を簡単にするためにかなり極端な例を示す。図8(a)は、インパルス応答推定器113によって推定されたインパルス応答114の時間波形の概念図である。最大電力値を有する希望波810のほかに、遅延波1(符号811)、遅延波2(符号812)が存在する。図8(b)は、マスク関数を希望波の遅延時間だけ遅延させた関数422の時間波形の概念図である。本例では遅延時間がある値より小さければ、原点以外では値が0となるようなマスク関数を用いている。図8(c)は、このマスク関数を用いて、推定されたインパルス応答114を変形した結果である、変形されたインパルス応答116の時間波形の概念図である。マスク関数による変形の結果、遅延波1の成分が削除され遅延波2のみが残る。従って、この変形されたインパルス応答116を用いて重みを計算すると、1つの遅延波2を十分に抑圧することができる重みを計算できる。
図8(d)は、指向性形成器120において、各アンテナからの受信信号にこの重みを用いることによって得られた干渉除去器出力104から見たインパルス応答804の時間波形の概念図である。このインパルス応答804は、干渉除去器出力104点から見た、伝播路特性とアダプティブアレーアンテナ(本実施例におけるアレーアンテナ111及び信号処理部112及び干渉除去器103)の特性を含めたトータルのインパルス応答を示す。図8(d)は、OFDM復調の際に特性劣化の原因となる遅延波2のみが十分に抑圧されていることを示す。この干渉除去器出力信号104をOFDM復調することによって、ビット誤り率特性の劣化を軽減できる。遅延波1については上述した重みの適用の結果、希望波との電力比や位相関係が変化するが、希望波との遅延時間差が小さいため問題にならず、時にはOFDM復調の際の信号電力の向上に寄与しビット誤り率特性を向上させる事も考えられる。
一般的に、OFDM方式は、ガードインターバルより長い遅延波には弱く、ガードインターバルより短い遅延波には強いという性質がある。よって、希望波と遅延波2の遅延時間差がガードインターバルより長く、希望波と遅延波1の遅延時間差がそれより短いような環境では、本発明を用いることによるビット誤り率特性の従来方式からの改善度合いは相当大きいと考えられる。
図10を参照して重みの計算と適用のタイミングの第1の例を説明する。伝送信号はパケット信号1001であってもよいし、連続フレーム信号1002であってもよい。各パケット1001は、先頭のパイロットシンボル1011と、その後の情報シンボル1012を含む。連続フレーム信号1002は、連続するフレーム1013からなり、各フレーム1013は、パイロットシンボル1011と情報シンボル1012を含む。
受信装置は、パイロットシンボル1011からインパルス応答を推定し、これを変形して重みを計算する。この重みを、指向性形成器120にて、その後に続く情報シンボル1012に適用する。パイロットシンボル1011を受信してから重みを計算するまでに時間がかかり、そのパイロットシンボルに続く情報シンボルへの重みの適用が間に合わなければ、指向性形成器120の直前に遅延器を挿入してよい。
図11を参照して重みの計算と適用のタイミングの第2の例を説明する。本例では、各パケット1001bは、図10の例と比較して、末尾にパイロットシンボル1112を含む。
受信装置はパケット又はフレームの先頭のパイロットシンボル1111から重み1121を計算し、さらにパケットの末尾、又は、次のフレームの先頭のパイロットシンボル1112からも重み1122を計算する。次に、2つの重み1121、1122から補間して時間的により適切な重みを算出し、それを時間的に対応する情報シンボルに適用する。このように補間を行うことによって、インパルス応答の変動が激しい場合においても良好な特性が得られる。
又、図示はしていないが、インパルス応答の変動が十分遅ければ、2つの重みの平均値を計算し、それを情報シンボルに適用してもよい。このように重みの平均値を計算することによって、重みに含まれる誤差の影響を少なくし、良好な特性を得ることができる。
図12を参照して重みの計算と適用のタイミングの第3の例を説明する。本例では、各パケット1001bは、図11の例と同様に、末尾にパイロットシンボル1112を含む。
受信装置はパケット又はフレームの先頭のパイロットシンボル1111からインパルス応答を推定し、さらにパケットの末尾、又は、次のフレームの先頭のパイロットシンボル1112からもインパルス応答を推定する。次に、2つの推定されたインパルス応答から補間して時間的により適切なインパルス応答を算出し、それから重みを計算する。この重みを、時間的に対応する情報シンボルに適用する。
又、図示はしていないが、インパルス応答の変動が十分遅ければ、2つのインパルス応答の平均値を計算し、それより重みを計算し、情報シンボルに適用してもよい。
以上のようにパイロットシンボルから重みを計算し情報シンボルに適応する過程についてはさまざまな方法や組合せが存在し、以上例示した過程に限らない。
本発明の実施例は、全てハードウエアで実現することもできるし、ハードウエアとソフトウエアを組み合わせても実現でき、限定されない。例えば、干渉除去器103については、受信信号102の1フレーム分、又は、1パケット分を一旦メモリに蓄積し、これまでに述べた処理方法をCPUとソフトウエアを用いて実行し、処理後の信号を、干渉除去器出力104として出力する方法を採用することもできる。
図9を参照して重み計算器118の第2の例を説明する。図7に示した重み計算器では重みを統計的計算によって求めていた。従って、統計的誤差を少なくするためにはサンプル数を大きくする必要がある。その結果計算量が増大するという問題があった。本例では統計的計算の代わりに代数的な計算によって重みを求める。従って計算量が削減されるという利点がある。
本例の重み計算器118は、ステアリングベクトル発生器901、自己相関行列計算器903、アルゴリズム実行器905及び雑音用自己相関行列発生器906を有する。ステアリングベクトル発生器901は、変形されたインパルス応答116と希望波の遅延時間117に基づいて、ステアリングベクトル902を発生する。自己相関行列計算器903は、変形されたインパルス応答116から自己相関行列904を計算する。雑音用自己相関行列発生器906は、雑音に起因する自己相関行列907を発生する。自己相関行列904と雑音に起因する自己相関行列907は加算され、受信信号トータルの自己相関行列908となる。アルゴリズム実行器905は、ステアリングベクトル902と受信信号トータルの自己相関行列908とに基づいて、ウイナー方程式の解を求めるアルゴリズムを実行し、解を重み119として出力する。この構成を用いて重みを計算する方法については、特開2003−101449(P2003−101449A)にて開示されている方法と基本的には同じ考え方である。
ここで、重みの計算方法をさらに詳細に述べるために次の定義を行う。アレーアンテナ111を構成する複数のアンテナをそれぞれ、アンテナ1、アンテナ2、・・・、アンテナNeleとする。ここで、Neleはアンテナの数であり、本例ではNele=4である。又、これらのアンテナに対応する変形されたインパルス応答を表す関数をそれぞれ、h1(t)、h2(t)、・・・、hNele(t)とし、希望波の遅延時間をτとする。さらに、A*はAの複素共役、ATはAの転置、|A|2はAの絶対値の2乗を表す。
ステアリングベクトル発生器901が発生するステアリングベクトル902は、希望波の遅延時間τの時点においてアンテナxに対応する変形されたインパルス応答が取る値の複素共役をx行目に有するNele次の列ベクトルである。ステアリングベクトルをrxdと表すと、rxd=(h1*(τ)、h2*(τ)、・・・、hNele*(τ))Tとなる。
自己相関行列計算器903は、アンテナxに対応する変形されたインパルス応答とアンテナyに対応する変形されたインパルス応答との間の相関関数の原点の値をx行y列にもつNele次の正方行列を算出し、これを自己相関行列904として出力する。ここで、全てのxとyの組合せに対して一般的に表現するために、「アンテナxに対応する変形されたインパルス応答とアンテナyに対応する変形されたインパルス応答との間の相関関数」と述べたが、正確にはx≠yの場合は、「アンテナxに対応する変形されたインパルス応答と、アンテナyに対応する変形されたインパルス応答との間の相互相関関数」、x=yの場合は、「アンテナxに対応する変形されたインパルス応答の自己相関関数」のことである。アンテナxに対応する変形されたインパルス応答と、アンテナyに対応する変形されたインパルス応答との間の相関関数を、RFxy(t)、この相関関数の原点の値をRF0xyとすると、それらは、次の式によって表される。
自己相関行列904をRssと表すとRssのx行y列の値はRF0xyとなる。雑音用自己相関行列発生器906は、アンテナxに対応する重み計算における雑音電力をx行x列にもつNele次の対角行列を、雑音に起因する自己相関行列907として発生する。アンテナxに対応する重み計算における雑音電力は、信号処理部112におけるアンテナxに対応するAGC(自動利得制御)の利得に比例するように制御される。このときの比例定数は、アンテナxに対応する重み計算における希望波信号電力対雑音電力比と受信信号102のうちアンテナxに対応する受信信号における希望波信号電力対雑音電力比とが同一になるように、各アンテナに対応する比例定数毎に予め設定しておく。
ここで、アンテナxに対応する重み計算における希望波信号電力対雑音電力比とは、アンテナxに対応する変形されたインパルス応答の、希望波の遅延時間τの時点の値の絶対値の2乗とアンテナxに対応する重み計算における雑音電力との比である。雑音に起因する自己相関行列をRnn、アンテナxに対応する重み計算における雑音電力をNx、アンテナxに対応するAGCの利得をGx、アンテナxに対応する比例定数をCx、アンテナxに対応する重み計算における希望波信号電力対雑音電力比をSdNx、アンテナxに対応する変形されたインパルス応答の、希望波の遅延時間τの時点の値をhx(τ)、と表し、以上を整理すると、Rnnのx行x列の値はNxとなり、Nx = Cx・Gx 、SdNx = |hx(τ)|2/Nx と表され、SdNxが、受信信号102のうちアンテナxに対応する受信信号における希望波信号電力対雑音電力比と同一になるようにCxを予め設定しておく。
アルゴリズム実行器905は、ステアリングベクトル902と受信信号トータルの自己相関行列908とに基づいて、ウイナー方程式の解を求めるアルゴリズムを実行し、解を重み119として出力する。ステアリングベクトルをrxd 、受信信号トータルの自己相関行列をRxx(=Rss+Rnn)、未知数であるアンテナxに対応する重みをx行目に有するNele次の列ベクトルをWとすると、ウイナー方程式はRxx・W=rxdと表される。ウイナー方程式はNele個の未知数を有する連立方程式であり、解を求めるアルゴリズムとしては、例えば、Gauss-Jordanの消去法を用いる。また別のアルゴリズムとしては、自己相関行列Rxxの逆行列を計算し、ステアリングベクトルrxdに掛けあわせることによって求める方法もある。また、他にもさまざまな方法が考えられ、これら2つの方法に限らない。
上述した2つのアルゴリズムにおいて、自己相関行列Rxxの行列式の絶対値が小さい場合、解を正確に求めることができなかったり、計算を最後まで続行することができなかったりする場合がある。このような問題を避けるためには次のように設計すればよい。すなわち、上述したアルゴリズムを用いて解を求める際、自己相関行列Rxxの行列式の絶対値を算出し、この値があらかじめ設定された閾値TH以上であれば、上述したアルゴリズムを用いて求めた解を重み119として出力し、閾値TH未満であればさらに別の方法を用いて重みを算出する。この方法の例としては、希望波信号電力対雑音電力比を最大にする方法がある。希望波信号電力対雑音電力比を最大にする方法は、最大比合成ダイバーシティーを行う際に用いられよく知られているので説明は省略する。ただし、この方法で算出した重みは、ウイナー方程式から厳密に求めた重みと比べ誤差が大きくなる。また、他にもさまざまな方法が考えられ、この方法に限らない。
図13はOFDM方式の伝送信号のフレームフォーマットの他の例を示す。OFDM方式の1シンボルは、詳細には、所定の周波数成分1301に分解することができる。このような観点においては、例えば、図2の情報シンボルは符号1303、パイロットシンボルは符号1304のように表すことができる。パイロットシンボル1304は、全ての周波数成分において、それぞれ既知の値を有するパイロット成分1302から構成される。
図13のフォーマットでは、このようなパイロットシンボルは存在せず、時間的周波数的に限定されたパイロット成分が所定の場所にそれぞれ既知の値を有するだけである。このようなフォーマットは地上波デジタル放送の伝送方式(電波産業会発行地上デジタルテレビジョン放送の伝送方式 ARIB STD-B31 1.2版 3.12.2 同期変調部のOFDMセグメント構成参照)などに採用されている。地上波デジタル放送の伝送方式ではこのようなパイロット成分をスキャッタードパイロット(同 3.13.1 スキャッタードパイロット(SP) 参照)と呼ぶ。
このように、パイロットシンボルが存在しない場合においても、次のようにインパルス応答を推定することによって、本発明を適応することができる。まず重みを、暫定的に、各アンテナ(例えば4本)に対してそれぞれ1、0、0、0のように定める。これは、アンテナ1本だけで受信することを意味する。このようにしてOFDM信号を受信し、OFDM復調器でFFT処理を行う。この結果のうち、パイロット成分については、パイロット成分本来の値と、伝播路の周波数特性の積になっている。この値を既知であるパイロット成分本来の値で割ると、パイロット成分が存在する時間と周波数における、伝播路の周波数特性の値が算出される。
このようにして各パイロット成分が存在する時間と周波数における、伝播路の周波数特性の値をそれぞれ求める。これらを用いて、時間軸に対して、補間、又は、インパルス応答の変動が十分に遅ければ、平均、を行い、あるシンボルの時点に関する全ての周波数成分における周波数特性を求める。すなわち、パイロット成分1311、1312から、これらが存在する時間と周波数における周波数特性の値を求め、補間、又は、平均を行って、ある時点の周波数成分1310における周波数特性を求める。同様にして、同一時点の他の周波数成分1313についても、これらの直前、直後のパイロット成分における周波数特性から求める。このようにして、ある時点の全ての周波数成分について、周波数特性を求め、これのIFFT演算を行うことによって、インパルス応答を推定することができ、これを用いて重みを計算することができる。このインパルス応答は、暫定的な重みを用いて推定したため、誤差が含まれており、重みにも、誤差が含まれているが、この重みを用いてさらに上述の手順を繰り返すことによって、次第に誤差の少ないインパルス応答の推定、重みの計算ができるようになる。
図14を参照して変形されたインパルス応答を更に変形する処理について説明する。本例では、インパルス応答処理器115と重み計算器118の間に、変形されたインパルス応答116をさらに変形する処理手段を挿入する。図14(a)の符号1401は、この処理手段の処理前における変形されたインパルス応答の時間波形の概念図であり、図14(b)の符号1402は、この処理手段の処理後における変形されたインパルス応答の時間波形の概念図である。図14の変形されたインパルス応答は、図5に示した変形されたインパルス応答116と比較すると、時間軸のスケールが大幅に拡大して図示されている。従って、図14では、希望波や遅延波は実際には時間的な幅を有することが示されている。
図14(a)の変形されたインパルス応答1401はデジタル信号であるため、図示のように、サンプリング周期Ts毎に値を有する。図14(a)のデジタル信号より3倍のサンプリング周期3Ts毎に信号を残し他を間引く処理を行う。希望波の遅延時間は、間引き処理前は符号1410で示される値であるが、間引き処理後は、直前及び直後の有効な値における時間(符号1411及び1412)のうち、電力値の大きい方の信号(符号1411)の時間を採用する。又は、処理前の遅延時間1410に対して時間的に近い方の信号(符号1412)の時間を採用してもよい。又は、間引き処理を、希望波の遅延時間のサンプルが残るように行ってもよい。
すなわち、整数nとkを用いて残すサンプルの時間を(3n+k)Tsと表した時、希望波の遅延時間が残るようにkを調節(図14においてはk=2)した後、間引き処理を行ってもよい。
さらには、k=0、1、2の3つの場合それぞれにおいて間引き処理を行い、変形されたインパルス応答と希望波の遅延時間とを、3つの場合それぞれに対して生成する。それらの変形されたインパルス応答と希望波の遅延時間とをそれぞれ用いて3つの重みを計算し、それぞれを用いて指向性形成を行い、それによって、3つの干渉除去器出力を得る。これらをOFDM復調し、ビット誤り率特性が最も良好なものを用いても良い。ビット誤り率特性は、データにFEC(Forward Error Correction)による符号化を施すことによって計測できる。もちろん他の方法も考えられる。以上のように、図1に示される受信装置の構成以外にも様々な構成が考えられ、図1の構成に限定されない。
図15を参照してインパルス応答処理器115の第2の例を説明する。本例のインパルス応答処理器115は、図4に示した第1の例と比較して、インパルス応答変形器1501における処理が異なる。本例のインパルス応答変形器1501は、メモリとCPUから構成されており、インパルス応答114は、一旦メモリに蓄積され、ソフトウエアによって変形処理が行われ、出力される。
図16を参照して図15のインパルス応答処理器115における処理を説明する。図16(a)は、インパルス応答変形器1501による処理前のインパルス応答114、即ちインパルス応答推定器113によって推定されたインパルス応答114の時間波形を示し、図16(b)は、インパルス応答変形器1501による処理後の変形されたインパルス応答116の時間波形を示す。
図16(a)に示す処理前のインパルス応答114において、最大電力を有するパスは先行波1510であり、希望波選定器411はこれを希望波として選択する。インパルス応答変形器1501は、まず、希望波1510との遅延時間差が大きい干渉波(希望波以外の先行波や遅延波)から順番に、干渉波の電力と予め設定しておいた閾値1520とを比較する。比較の結果、干渉波の電力の方が閾値1520より大きければ、この干渉波のインパルス応答の値をそのまま残す。干渉波の電力の方が閾値1520より小さければ、この干渉波のインパルス応答の値を0とする。また、そのまま残した干渉波の数が、予め定めておいた数に達した場合、この干渉波よりも、希望波との遅延時間差が小さい干渉波については、全て値を0とする。
このような処理の結果、遅延波4(符号1514)、遅延波2(符号1512)は、その電力が閾値を越えるので残り、遅延波3(符号1513)は、逆に値が0になり消える。予め設定された数が2本であれば、遅延波2、4の2本を残したので、これより希望波との遅延時間差の小さい遅延波1(符号1511)も値が0になり消える。このような処理の結果得られた変形されたインパルス応答116を出力する。なお、以上のような処理を行うためには、図15のインパルス応答処理器の入力であるインパルス応答114は、図14のところで述べた間引き処理と同様の処理を前処理として行っておく必要がある。
インパルス応答変形器1501において行う処理については、以上述べた処理や、図4のインパルス応答変形器401において行うような関数を乗算する処理の他に、様々な処理が考えられ、限定されない。
図22にインパルス応答処理器115の別の例を示す。本例のインパルス応答処理器115が図4のインパルス応答処理器と異なる点は、本例では、希望波選定器411が、処理内容が異なる希望波選定器2211に置き換わった点、遅延器413、及びマスク関数発生器414が、係数関数発生器2214に置き換わった点である。希望波選定器2211の処理内容については後ほど述べる。係数関数発生器2214は希望波選定器2211の選定結果を元に係数関数2222を発生させる。係数関数2222の特徴については後ほど述べる。係数関数2222は関数乗算器412によってインパルス応答114に乗算される。
図23(a)は、図22に示すインパルス応答処理器115に入力されるインパルス応答114の概念図、図23(b)は、図22の係数関数発生器2214で生成される係数関数2222の概念図である。
希望波選定器2211は、候補時間区間2311に含まれるパス2312の中から希望波を選定する。例えばこれらのうち最大電力を有するパス2313を希望波として選定する。
候補時間区間2311の長さは予め決めておく。例えば、伝送に用いるOFDM方式のガードインターバルの長さと等しくする。
また、候補時間区間2311の長さは伝送に用いるOFDM方式のガードインターバルの長さ以下の値に予め決めておく例も考えられる。
候補時間区間2311は、遅延時間が候補時間区間に含まれるパスの電力の総和が最大となるように決定される。この方法については例えば「数1」で計算されるσ(τ)と、候補時間区間内の時点では値が1、これ以外の時点では0となるような矩形関数とを畳み込み、この結果が最大となる点を求めるような方法が考えられる。
係数関数2222は、候補時間区間に含まれる時点でかつ希望波の遅延時間以外の時点に取る値の絶対値が、候補時間区間以外に含まれる時点に取る値の絶対値以下となることを特徴とする。具体的には区間2321に取る値の絶対値が区間2322に取る値の絶対値以下となるということである。例えば図23(b)の概念図のように、候補時間区間に含まれる時点でかつ希望波の遅延時間以外の時点に取る値が0、これ以外の時点にとる値が1となるような関数を考えることができる。
以上のような構成とすることで、図23(a)の概念図のようなインパルス応答であった場合、遅延波2314を希望波ではなく干渉波として扱うことができる。もし、遅延波2314を希望波としてしまうと、先行する到来波の数がアダプティブアレーアンテナの自由度よりも多いため十分抑圧できず、ガードインターバルよりも長い遅延時間差を持つ干渉波が存在する信号をOFDM復調しなければならなくなり、ビット誤り率特性が大きく劣化してしまう。一方、遅延波2314を干渉波として扱えば、アダプティブアレーアンテナによって十分抑圧でき、OFDM復調器に渡す信号にはガードインターバルよりも短い遅延時間差を持つ干渉波しか存在しなくなり、ビット誤り率特性が改善する。
以上、本発明の例を説明したが、本発明は上述の例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲にて様々な変更が可能であることは当業者に理解されよう。
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