JP4348249B2 - 静電荷像現像用トナーおよびその製造方法 - Google Patents

静電荷像現像用トナーおよびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真法、静電記録法等に用いられる静電荷像現像用トナーおよびその製造方法に関する。
一般に、電子写真方式の複写機やプリンターなどの画像形成装置は、光導電性を有する感光体上に潜像を形成し、その潜像にキャリアとの摩擦、あるいは現像装置の一部を構成する帯電部材との摩擦により、摩擦帯電電荷を得た絶縁性トナーを静電気的に付着して現像し、次いで形成されたトナー画像を、普通紙、フィルムなどの転写媒体に転写した後、加熱、加圧、溶剤蒸気等により転写媒体上に定着させることにより複写画像ないしプリント画像を形成することを基本原理とするものである。
このような画像形成装置において、トナーを定着させる方法としては、熱効率が高いこと、高速定着が可能であることなどから、熱ローラ定着方式が一般的に用いられている。この方式は加熱ローラを有する定着機において、転写媒体を加熱ローラに接触させることによりトナーを定着させるものである。しかし、この方式では、定着時にトナーの一部が加熱ローラの表面に付着して、このトナーが転写媒体上に再転移して後続の画像を汚してしまう、いわゆるオフセット現象が発生するおそれがある。さらに、この方式では、転写媒体が加熱ローラの表面に巻き付く、いわゆる巻き付き現象が発生するおそれもある。このような現象は、加熱ローラにより溶融したトナーの離型性が適当でない場合に発生しやすい。特にフルカラー画像形成の場合は、通常、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを重ねて画像を形成するため、モノカラー画像形成の場合に比べてトナー層の厚さが大きくなるので、オフセット現象や巻き付き現象がより生じやすく、トナーの離型性をより高めることが必要である。
そこで、このような現象の発生を防止する手段としては、通常、トナー中にワックス等の離型剤を導入する方法が従来より用いられている(例えば、特許文献1〜4参照)。しかし、この方法ではトナーの耐融着性が悪化し、トナー粒子同士が融着してトナーの熱保存性が悪化したり、現像機の各部材に融着しやすくなり均一な画像形成の妨げになるおそれがある。特に非磁性一成分現像方式においては、帯電ブレードや現像スリーブにトナーが融着しやすい。また、この方法では、トナー製造時において、離型剤を結着樹脂に均一に分散し、かつ微分散させることが容易ではなく、この分散性が低い場合には、耐融着性がより悪化しやすい。また、この分散性を向上させるための成形条件(混合、熱溶融混練、押出し、冷却等)の選択も容易ではないので、トナーの成形性が十分でない。上記のような問題は、離型剤の導入量が多いほど発生しやすい。したがって、離型剤等の導入だけでは、トナーの耐融着性、熱保存性等の特性を低下させることなく、オフセット現象や巻き付き現象などの定着特性を向上させるのは困難である。なお、トナーの成形性とは原材料の分散が良好なトナーの製造のし易さをいう。
また、上記オフセット現象や巻き付き現象を防止するために、熱定着ローラにシリコーンオイル等の離型オイルを塗布することも行われている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、そのための装置が必要となるため、定着機が大型化し、メンテナンスも煩雑になる。また、フルカラー画像を形成する場合は、離型オイルが色調に影響し、色調の再現性を妨げる。したがって、近年ではオイルレス定着方式が指向されている。
特開昭62−100775号公報 特開平3−91764号公報 特開平3−168649号公報 特開平8−334919号公報 電子写真学会編、「電子写真技術の基礎と応用」、初版、株式会社コロナ社、昭和63年6月15日、p.321−324
よって、本発明の目的は、現像により形成されたトナー画像を、特にオイルレス定着方式の加熱ローラ定着機によって転写媒体に定着させる場合においても、広い温度範囲において、オフセット現象および巻き付き現象が起こりにくい、すなわち定着特性に優れた静電荷像現像用トナーおよびその製造方法を提供することにある
本発明者は、トナーの熱力学的性質に着目して、前記課題を達成するために鋭意検討した結果、少なくとも結着樹脂と、着色剤とで構成されている静電荷像現像用トナーの熱力学的性質を安定化させることにより、オフセット現象が起こらない温度範囲、あるいは巻き付き現象が起こらない温度範囲が広くなり、トナーの定着特性が改善されるとともに、耐融着性が改善されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂と着色剤とを含有する静電荷像現像用トナーであり、前記結着樹脂が、ポリエステル系樹脂であり、前記トナーが、Tg−10(℃)〜Tg(℃)(ただしTgは下記に定義される。)で0.5〜1000(hr)の熱処理を施されたものであり、下記に定義される前記該トナーの緩和エンタルピー量(ΔH)が、2mJ/mg以上であることを特徴とするものである。
(Tg)
トナー約5mgをアルミ製セルに入れた試料を、示差走査熱量計(DSC)に載置し、1分間に50mlのN 2 ガスを吹き込みながら試料を20〜120℃の間で1分間あたり10℃の割合で昇温させ、120℃で10分間保持し、次に、120〜20℃に1分間あたり10℃の割合で降温させ、20℃で10分間保持し、次に、上記条件で2回目の昇温をし、その時に観測されるDSC昇温曲線において、低温側のベースラインから、ガラス転移に伴い観測される階段状変化部分の曲線が離れる点の温度をTgとする。
(トナーの緩和エンタルピー量(ΔH))
トナー約5mgをアルミ製セルに入れた試料を、示差走査熱量計(DSC)に載置し、1分間に50mlのN 2 ガスを吹き込みながら試料を20〜120℃の間で1分間あたり10℃の割合で昇温させ、その時に観測されるDSC昇温曲線のTg近傍における吸熱ピークの高温側ベースラインの開始点をP 1 とし、P 1 から吸熱ピーク開始点近傍に向かって吸熱ピーク曲線に接線を描き、接点をP 2 とし、吸熱ピークとP 1 、P 2 で囲まれた部分の吸熱ピーク面積(S)を緩和エンタルピー量(ΔH)とする。
また、本発明の静電荷像現像用トナーは、さらに融点が50〜120℃である離型剤を含有し、離型剤の含有量が、結着樹脂100質量部に対して3質量部以下であることが望ましい。
また、本発明の静電荷像現像用トナーは、さらに熱可塑性エラストマーを含有し、該熱可塑性エラストマーの含有量が、結着樹脂100質量部に対して50質量部以下であることが好ましい。
このような静電荷像現像用トナーは、非磁性一成分現像方式用トナー、フルカラー用トナーに好適である。
また、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、結着樹脂と着色剤とを含有する静電荷像現像用トナーの製造方法であり、前記結着樹脂が、ポリエステル系樹脂であり、前記トナーの緩和エンタルピー量(ΔH)が2mJ/mg以上となるように、トナーにTg−10(℃)〜Tg(℃)で0.5〜1000(hr)の熱処理を施すことを特徴とする。
本発明の静電荷像現像用トナーは、現像により形成されたトナー画像を、特にオイルレス定着方式の加熱ローラ定着機によって転写媒体に定着させる場合においても、広い温度範囲において、オフセット現象および巻き付き現象が起こりにくい、すなわち定着特性に優れるものである。これにより、本発明の静電荷像現像用トナーは、定着特性を維持しつつ離型剤の量を減らすことが可能であり、トナー中での離型剤の分散がよくなるので、さらに耐融着性および熱保存性にも優れる。また、離型剤の量を少なくできるので、製造の際の成形性にも優れる。ここで、成形性とは、原材料の分散が良好なトナーの製造のし易さをいう。
また、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法によれば、定着特性に優れる静電荷像現像用トナーを得ることができる。
本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂と着色剤とを含有するものであり、トナーの緩和エンタルピー量(ΔH)が、2mJ/mg以上のものである。
<緩和エンタルピー量(ΔH)>
静電荷像現像用トナーは、通常、40質量%以上が結着樹脂で構成されている。結着樹脂は、通常、ポリエステル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂などの非結晶性樹脂を主成分とするものである。このような非結晶性樹脂は、ガラス転移温度(以下、Tgと記す)より低い温度では、熱力学的に不安定な非平衡状態にあり、過剰体積あるいは過剰エンタルピーを有している。
このような状態はトナーおいても同様であり、本発明においては、この熱力学的に不安定な非平衡状態にあるトナーを熱処理することにより過剰エンタルピーを比較的短時間に減少させて、熱力学的に安定な平衡状態に近づけることにより、トナーの定着特性等を改良した。
本発明は、上述のごとく、トナーの定着特性等の改良に、熱処理による過剰エンタルピーの減少、すなわちエンタルピー緩和を利用するものである。このエンタルピー緩和は、例えば、プラスチックフィルムの巻癖防止等(特開平9−204005号公報)や電子写真感光体の摩耗や傷の防止(特開2000−275876号公報)に利用されたことはあるけれども、トナーの特性改善にエンタルピー緩和を応用した例はこれまでにない。
このエンタルピー緩和の原理について、概要を図面に基づいて以下に説明する。
図1は、非結晶性樹脂における、体積やエンタルピーなどの熱力学量と温度との関係を示すグラフである。非結晶性樹脂は、Tgより高い温度では、熱力学的に安定な平衡状態にある(図1中のA点)。非結晶性樹脂は、この状態から冷却していくと、Tg近傍(図1中のB点)で温度に対して体積の収縮が追いつかなくなり、Tgより低い温度では、過冷却液体状態つまりガラス状態となる(図1中のC点)。この状態は、熱力学的に不安定な非平衡状態であり、熱力学的に安定な平衡状態(図1中のE点)と比較して体積やエンタルピー量が大きい。すなわち、非結晶性樹脂は、Tgより低い温度では、過剰体積あるいは過剰エンタルピー(図1中のC点とE点のエンタルピー量の差)を有している。
この状態(図1中のC点)は、熱力学的に不安定な非平衡状態にあるので、例えば、積極的にTgより低い温度で熱処理すると、熱力学的に安定な平衡状態(図1中のE点)に向かってエンタルピー量の減少が生じ(図1中のD点)、その結果、過剰エンタルピーも減少する。このエンタルピーの減少(図1中のC点からD点へのエンタルピーの減少)が生じる現象は、エンタルピー緩和あるいは構造緩和と呼ばれている。本発明では、このエンタルピーの減少量(図1中のC点とD点のエンタルピー量の差)を「緩和エンタルピー量(ΔH)」と定義する。なお、エンタルピー緩和は、非結晶性樹脂のみならず、結晶性樹脂であっても樹脂の構造中に非結晶部分を含有しているため、生じる現象である。また、積極的に熱処理を行わない場合、例えば、常温で放置した場合でも、エンタルピー緩和は生じるが、緩和エンタルピー量(ΔH)はわずかである。
緩和エンタルピー量(ΔH)は、図2に示すDSC昇温測定において、Tg近傍における吸熱ピークの吸熱量(吸熱ピーク面積)の増大により観察できる。すなわち、エンタルピーの減少分すなわち緩和エンタルピー量(図1中のC点からD点へのエンタルピーの減少)は、DSC昇温過程(図1中のD点からF点に向かう過程)において、Tg近傍で熱力学的非平衡状態から熱力学的平衡状態に転移するのに伴い回復(図1中のF点からB点へのエンタルピーの回復)するため、図2のDSC昇温曲線でのTg近傍における吸熱ピークの吸熱量を測定することにより、緩和エンタルピー量(ΔH)を求めることができる。
具体的には、図2のDSC昇温曲線(a)において、高温側ベースラインの開始点をP1 とし、P1 から吸熱ピーク開始点近傍に向かって吸熱ピーク曲線に接線を描き、接点をP2 とし、吸熱ピークとP1 、P2 で囲まれた部分の吸熱ピーク面積(S)が吸熱ピークの吸熱量となり、この吸熱ピーク面積(S)を緩和エンタルピー量(ΔH)とする。
ちなみに、積極的にTgより低い温度で熱処理した場合、緩和エンタルピー量(ΔH)は大きく、図2のDSC昇温曲線(a)に示すような大きな吸熱ピークが観察されるが、積極的に熱処理を行わない場合、例えば、常温で放置した場合、緩和エンタルピー量(ΔH)はわずかであるため、図2のDSC昇温曲線(b)に示すように、観察される吸熱ピークは小さくなる。
本発明は、トナーにおいてこの緩和エンタルピー量(ΔH)が特定範囲の値を有していることにより、トナーの定着特性等を改善できることを見出したものである。
本発明の静電荷像現像用トナーの緩和エンタルピー量は、2mJ/mg以上であり、好ましくは2〜20mJ/mgであり、より好ましくは3〜20mJ/mgであり、さらに好ましくは4〜20mJ/mgであり、特に好ましくは5〜20mJ/mgである。緩和エンタルピー量が2mJ/mg未満では定着特性の向上が見られない。一方、緩和エンタルピー量が20mJ/mgを超えることは、一般的な結着樹脂を用いた場合では稀であるが、緩和エンタルピー量を20mJ/mgを超えて大きくすることが可能であっても、長時間熱処理する必要があり生産性の観点から好ましくない。
<結着樹脂>
本発明における結着樹脂としては、ポリエステル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体樹脂、熱可塑性エラストマー、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸系樹脂、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのα−オレフィン樹脂など)、ビニル系樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなど)、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、テルペンフェノール樹脂、ポリ乳酸樹脂、水添ロジン、環化ゴム、シクロオレフィン共重合体樹脂等が挙げられる。これらは、単独で、または2種以上組み合わせて使用できる。これらの中でも、トナーの画質特性、耐久性、生産性などの要求をバランスよく満たすことができるという観点から、ポリエステル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体樹脂が好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
また、フルカラー用トナーに使用される結着樹脂としては、ポリエステル系樹脂が好ましい。フルカラー用トナーに使用される結着樹脂は、発色性や透明性の観点から、トナー定着時において瞬時に溶融して平滑な画像表面を形成するとともに、トナー粒子界面が存在しないようにする必要があり、このため、低温で速やかに溶融する比較的低分子量の樹脂を使用する必要がある。しかし、樹脂を低分子量化させる場合には、機械的強度の低下が生じやすく、これに伴い、トナー粉砕工程での過粉砕による粉砕性の問題が生じたり、トナー粒子の現像機内での破壊によるトナー耐久性の低下、転写媒体に対するトナー付着強度(定着強度)の低下、ガラス転移温度低下に起因する熱保存性の悪化などを引き起こすといった問題がある。
したがって、フルカラー用トナーの結着樹脂としては、樹脂を低分子量化しても適度な機械的強度を有しており、かつ低溶融粘度や高ガラス転移温度などの特性を有しているポリエステル系樹脂が好ましい。他の樹脂を併用する場合は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して他の樹脂を30質量部以下の範囲内から適宜選択できる。
一方、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体樹脂は、フルカラー用として使用する場合、低分子量化に伴い機械強度の低下が生じやすく、これに伴い、トナーの生産性の低下、耐久性の低下や定着強度の低下といった問題などが生じやすいので、通常、モノカラー用トナーに使用されることが多い。ただし、重合法トナーにおいては、フルカラー用としても広く使用されている。
ポリエステル系樹脂としては、アルコールと、カルボン酸との縮重合により得られるものが挙げられる。
アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等のジオール類;1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノール類;その他の二価のアルコール単量体を挙げることができる。これらのアルコールは、単独で、または2種以上組み合わせて使用してもよい。
カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、これらの酸の無水物、低級アルキルエステルとリノレイン酸の二量体、その他の二価の有機酸単量体を挙げることができる。これらのカルボン酸は、単独で、または2種以上組み合わせて使用してもよい。
ポリエステル系樹脂は、二官能性単量体のみによる重合体のみでなく、三官能以上の多官能性単量体による成分を含有する重合体であってもよい。多官能性単量体である三価以上の多価アルコール単量体としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、その他の三価以上の多価アルコール単量体を挙げることができる。
三価以上の多価カルボン酸単量体としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポール三量体酸、これらの酸無水物、その他の三価以上の多価カルボン酸単量体挙げることができる。
三官能以上の多官能性単量体の使用量は、アルコールおよびカルボン酸の成分の合計100モルに対して、10〜90モル、好ましくは20〜80モル、さらに好ましくは30〜80モルの割合から適宜選択できる。
スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体樹脂は、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸系単量体単位との共重合体で構成でき、必要に応じてその他の単量体単位を含有していてもよい。
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、アルキルスチレン(o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのビニルトルエン、ビニルキシレン、p−t−ブチルスチレンなど)またはこれら誘導体、アルコキシスチレン(p−メトキシスチレンなど)またはこれら誘導体、p−フェニルスチレンまたはこれら誘導体、ハロスチレン(o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレンなど)またはこれら誘導体などが挙げられる。これらの単量体は単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。前記誘導体としては、アルキル置換体、アルキリデン置換体、アルコキシ置換体、アシル置換体、ハロゲン置換体、ニトロ置換体、アミノ置換体、ヒドロキシ置換体、カルボキシル置換体等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル〔(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステル、(メタ)アクリル酸C4-10シクロアルキルエステル〕、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸C7-12アラルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル〔(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなど〕、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキル〔(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルなど〕、ジC1-4 アルキルフォスフェートエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
その他の単量体として、ビニル系単量体(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニルなど)、不飽和オレフィン系単量体(エチレン、プロピレンなど)、ジエン系単量体(イソプレン、ブタジエンなど)、不飽和ジカルボン酸(フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸およびこれらの無水物など)、(メタ)アクリロニトリル系単量体、(メタ)アクリルアミド系単量体、ケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンなど)、エーテル類(ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなど)等が挙げられる。これらのその他の単量体は、スチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体樹脂100質量部中、30質量部以下で含有することが好ましい
。また、酸価および帯電特性を調整するため、無水マレイン酸、フマル酸などのカルボキシル基または酸無水物基含有単量体を用いることが好ましい。
前記単量体により形成される好ましいスチレン−(メタ)アクリル酸系共重合体樹脂としては、スチレン系単量体単位および(メタ)アクリル酸系単量体単位を主成分とする重合体、例えば、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸−n−ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸−n−ブチル共重合体などのスチレン−(メタ)アクリル酸C1-18アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル等の多元重合体などが挙げられる。
結着樹脂の含有量は、静電荷像現像用トナー(100質量部)中、好ましくは、40〜95質量部であり、非磁性一成分現像方式用では、より好ましくは80〜95質量部である。
<熱可塑性エラストマー>
結着樹脂は、トナーの定着特性向上の観点から、トナー溶融時において適度な粘弾性を有していることが好ましい。よって、本発明の静電荷像現像用トナーは、他の結着樹脂として熱可塑性エラストマーを含有していることが好ましい。
熱可塑性エラストマーは、通常、硬い樹脂成分である硬質成分と、柔軟で弾性的性質を有する軟質成分とで構成されており、硬質成分と軟質成分の成分や組み合わせにより、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、フッ素系エラストマー、シリコーン系エラストマー、イソプレン系エラストマー、ブタジエン系エラストマー、ニトリルブタジエン系エラストマー、塩素化ポリエチレン系エラストマー、クロロプレン系エラストマーなどが挙げられる。これら熱可塑性エラストマーは、単独で、または2種以上組み合わせて使用してもよい。
熱可塑性エラストマーのうち、成形性等の観点から、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリアミド系エラストマーが好適に使用できる。特に結着樹脂として、ポリエステル系樹脂を使用する場合は、ポリエステル系エラストマーが好ましい。ポリエステル系エラストマーとしては、硬質成分がアルキレンアリーレート単位で構成され、軟質成分が脂肪族ポリエーテル単位または脂肪族ポリエステル単位で構成されたエラストマーなどが例示できる。
硬質成分を構成するアルキレンアリーレートとしては、エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート等のC2-4 アルキレンテレフタレート;エチレンナフタレート、ブチレンナフタレート等のC2-4 アルキレンナフタレート、好ましくはC2-4 アルキレンテレフタレート(特にブチレンテレフタレート)が例示できる。
軟質成分を構成する脂肪族ポリエーテルとしては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド等のポリC2-6 アルキレンオキシド等が例示できる。
脂肪族ポリエステルとしては、例えば、脂肪族C2-6 ジカルボン酸(例えば、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸等)と脂肪族C2-6 ジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等)とのポリエステル等が例示できる。
熱可塑性エラストマーの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下の範囲内において適宜選択できる。熱可塑性エラストマーの含有量が50質量部を超えると、トナーの粘弾性特性が適当でなくなるので、定着特性が低下し、また、コスト的にも不利となるおそれがある。
<離型剤>
本発明の静電荷像現像用トナーは、離型剤を含有していることが好ましい。離型剤としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、変性ポリエチレンワックスなどのポリオレフィン系ワックス;フィッシャートロプシュワックスなどの合成ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス;みつろう、鯨ろう等の動物系ワックス;カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス等の植物系ワックス;硬化ひまし油等の硬化油;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックスが挙げられる。これらの離型剤は、単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、通常は2〜20質量部程度であるが、本発明においては、好ましくは3質量部以下、より好ましくは0.5〜3質量部、さらに好ましくは、0.5〜2質量部である。離型剤の含有量が3質量部を超えると、耐融着性、熱保存性およびトナーの成形性が悪化するおそれがある。一方、離型剤の含有量が0.5質量部未満では、巻き付き現象が発生しやすく、また、定着特性が悪化するおそれがある。本発明の静電荷像現像用トナーは、緩和エンタルピー量(ΔH)が2mJ/mg以上であるので、離型剤の使用量を少なくでき、耐融着性、熱保存性およびトナーの成形性がより優れたものが得られ、特に、非磁性一成分現像方式用トナーにおいて、定着特性と耐融着特性の両立が容易となる。
本発明における離型剤の少なくても1種は、示差走査熱量計により測定される融点が50〜120℃のものが好ましく、50〜100℃のものがより好ましく、50〜85℃のものがさらに好ましい。離型剤の融点が50℃未満では、トナーの耐融着性、および熱保存性が低下するおそれがあり、120℃を超えると、トナーの定着特性および定着強度が悪化するおそれがある。
離型剤の融点の測定は、ASTM D3418−82に準じ下記のとおりに行う。
試料約5mgを計量してアルミ製セルに入れて、示差走査熱量計(DSC)(セイコーインスツルメント社製、商品名:SCC−5200)に載置し、1分間に50mlのN2 ガスを吹き込む。そして、0〜200℃の間を1分間あたり10℃の割合で昇温させ、200℃で10分間保持し、次に、200℃から0℃に1分間あたり10℃の割合で降温させ、次に上記条件で2回目の昇温をし、その時の最大吸熱ピークの頂点の温度を融点とする。
<着色剤>
本発明における着色剤としては、黒トナー用としては、ブラック用顔料、カラートナー用としては、マゼンタ用顔料、シアン用顔料、イエロー用顔料等が挙げられる。
ブラック用顔料としては、通常、カーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックの個数平均粒子径、吸油量、PH等は、特に制限されることない。市販品としては、例えば、米国キャボット社製、商品名:リーガル(REGAL)400、660、330、300、SRF−S、ステリング(STERLING)SO、V、NS、R;コロンビア・カーボン日本社製、商品名:ラーベン(RAVEN)H20、MT−P、410、420、430、450、500、760、780、1000、1035、1060、1080;三菱化学社製、商品名:#5B、#10B、#40、#2400B、MA−100等が挙げられる。これらのカーボンブラックは、単独で、または2種以上組み合わせて使用できる。
カーボンブラックの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは1〜10質量部、さらに好ましくは1〜5質量部、特に好ましくは1〜3質量部である。カーボンブラックの含有量が少なすぎると画像濃度が低下し、多すぎると画質が低下しやすく、トナー成形性も低下する。ブラック用顔料としては、カーボンブラックの他、酸化鉄、フェライトなどの黒色の磁性粉も使用できる。
マゼンタ用顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48、49、50,51、52、53、54、55、57、58、60、63、64、68、81、83、87、88、89、90、112、114、122、123、163、202、206、207、209;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2,10、13、15、23、29、35等が挙げられる。これらのマゼンタ用顔料は、単独で、または2種以上組み合わせて使用できる。
シアン用顔料としては、C.I.ピグメントブルー2、3、15、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45等が挙げられる。これらのシアン用顔料は、単独で、または2種以上組み合わせて使用できる。
イエロー用顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、65、73、74、83、93、94、97、155、180等が挙げられる。これらのイエロー用顔料は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
フルカラー用トナーのカラー用顔料としては、混色性および色再現性の観点から、マゼンタ用顔料としてはC.I.ピグメントレッド57、122が、シアン用顔料としては、C.I.ピグメントブルー15が、イエロー用顔料としては、C.I.ピグメントイエロー17、93、155、180が好適に使用できる。
カラー用顔料の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、通常、1〜20質量部であり、好ましくは3〜10質量部、さらに好ましくは4〜9質量部、特に好ましくは4.5〜8質量部である。カラー用顔料の含有量が上記範囲より少な過ぎると、画像濃度が低下し、多過ぎると帯電安定性が悪化して画質が低下しやすい。またコスト的にも不利である。また、カラー用顔料としては、あらかじめ結着樹脂となり得る樹脂中にカラー用顔料を高濃度で分散させた、いわゆるマスターバッチを使用してもよい。
<他の成分>
(帯電制御剤)
本発明の静電荷像現像用トナーは、必要に応じて、帯電制御剤を含有してもよい。
正帯電性の帯電制御剤としては、例えば、ニグロシンおよび脂肪酸金属塩等による変性物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の第四級アンモニウム塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート;ピリジウム塩、アジン、トリフェニルメタン系化合物、カチオン性官能基を有する低分子量ポリマー等が挙げられる。これらの正帯電性の帯電制御剤は、単独で、または2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの正帯電性の帯電制御剤の中でも、ニグロシン系化合物、第四級アンモニウム塩が好ましく用いられる。
負帯電性の帯電制御剤としては、例えば、アセチルアセトン金属錯体、モノアゾ金属錯体、ナフトエ酸あるいはサリチル酸系の金属錯体または塩等の有機金属化合物、キレート化合物、アニオン性官能基を有する低分子量ポリマー等が挙げられる。これらの負帯電性の帯電制御剤は、単独で、または2種類以上組み合わせて用いることができる。これらの負帯電性の帯電制御剤の中でも、サリチル酸系金属錯体、モノアゾ金属錯体が好ましく用いられる。
帯電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、通常、0.1〜5質量部の範囲であり、好ましくは0.5〜4質量部、さらに好ましくは1〜4質量部である。また、帯電制御剤は、カラートナー用には無色あるいは淡色であることが好ましい。
(磁性粉)
本発明の静電荷像現像用トナーは、さらに必要に応じて、磁性粉を含有していてもよい。磁性粉としては、例えば、コバルト、鉄、ニッケル等の金属;アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、マグネシウム、スズ、亜鉛、金、銀、セレン、チタン、タングステン、ジルコニウム、その他の金属の合金;酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ニッケル等の金属酸化物;フェライト、マグネタイトなどが挙げられる。
磁性粉の含有量は、静電荷像現像用トナー(100質量部)中、通常、1〜70質量部、好ましくは5〜50質量部である。磁性粉としては、その平均粒子径が0.01〜3μmのものを好適に使用できる。
(他の添加剤)
本発明の静電荷像現像用トナーは、さらに必要に応じて種々の添加剤、例えば、安定剤(例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤など)、難燃剤、防曇剤、分散剤、核剤、可塑剤(フタル酸エステル、脂肪酸系可塑剤、リン酸系可塑剤など)、高分子帯電防止剤、低分子帯電防止剤、相溶化剤、導電剤、充填剤、流動性改良剤などを含有してもよい。
(無機微粒子)
本発明の静電荷像現像用トナーは、流動性向上や帯電安定性のために無機微粒子が表面に付着していることが好ましい。無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、カーボンブラック粉末、磁性粉等が挙げられる。これらの無機微粒子は、単独で、または2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの無機微粒子のうち、シリカが特に好適に使用できる。
シリカは、平均粒子径、BET比表面積、表面処理など特に制限されなく、用途に応じ適宜選択できる。中でも、BET比表面積が50〜400m2 /gの範囲にあるものが好ましく、さらに、表面処理された疎水性シリカが好ましい。
(樹脂微粉末)
本発明の静電荷像現像用トナーは、前記無機粉粒子に加えて、さらに、ポリ4フッ化エチレン樹脂粉末、ポリフッ化ビニリデン樹脂などの樹脂微粉末が表面に付着していてもよい。
無機微粒子や樹脂微粉末を添加する割合は、静電荷像現像用トナー100質量部に対して、0.01〜8質量部の範囲から適宜選択でき、好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜4質量部、特に好ましくは0.3〜3質量部である。添加する割合が0.01質量部未満では、トナーの流動性や帯電安定性への効果が少なく、均一な画像が形成されにくく、8質量部を超えると、無機微粒子などが遊離しやすくなり、感光体や現像機部材に付着して画像品質を低下させる。
<静電荷像現像用トナー>
本発明の静電荷像現像用トナーは、現像方式によって特に使用が制限されるものではなく、非磁性一成分現像方式、磁性一成分現像方式、二成分現像方式、その他の現像方式に使用できる。磁性一成分現像方式においては、磁性粉を結着樹脂に混合し磁性トナーとして使用する。二成分現像方式においては、トナーをキャリアと混合して使用する。近年、装置の簡便性やコスト的な観点から非磁性一成分現像方式が好まれている。本発明の静電荷像現像用トナーは、帯電ブレードや現像スリーブ等の現像機の各部材にトナーが融着しにくいので、非磁性一成分方式に適する。また、本発明の静電荷像現像用トナーは、定着特性に優れるので、オイルレス定着方式に適し、かつフルカラー用途にも適する。
二成分現像方式におけるキャリアとしては、例えば、ニッケル、コバルト、酸化鉄、フェライト、鉄、ガラスビーズなどが使用できる。これらのキャリアは、単独で、または2種以上組み合わせて使用してもよい。キャリアとしては、その平均粒子径が20〜150μmであるものが好ましい。また、キャリアの表面は、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などの被覆剤で被覆されていていてもよい。また、磁性体を結着樹脂中に分散したものでもよい。
本発明の静電荷像現像用トナーは、モノカラー用トナーであっても、フルカラー用トナーであってもよく、特にフルカラー用として好ましく使用される。モノカラー用トナーでは、着色剤としてカーボンブラック等が使用でき、フルカラー用トナーでは、着色剤として、前記カラー用顔料が使用できる。
<静電荷像現像用トナーの製造方法>
静電荷像現像用トナーは、トナー粒子からなるトナーを製造するトナー製造工程と、該トナーを熱処理する熱処理工程とを経て製造される。
(トナー製造工程)
トナー粒子の製造方法としては、(i)結着樹脂、着色剤、および必要に応じて他の成分を混合し、混合物を熱溶融混練し、押出成形物を得た後、該押出成形物を粉砕および分級して所望の粒子径および粒子形状のトナー粒子からなるトナーを得る方法;(ii)結着樹脂を重合しながらトナー粒子を得る方法;などが挙げられる。
熱溶融混練方法としては、種々の方法、例えば、2軸押出機による方法、バンバリーミキサーによる方法、加圧ローラによる方法、加圧ニーダーによる方法等が挙げられる。成形性および汎用性の観点から2軸押出機による方法が好ましい。押出成形物は、混合物を2軸押出機により溶融混練し、2軸押出機の先端部の口金(ダイ)より押出すことにより得られる。2軸押出機の混練温度は、70〜250℃、好ましくは70〜200℃、さらに好ましくは90〜200℃程度である。
粉砕方法としては、ハンマーミル、カッターミルあるいはジェットミル等の装置による粉砕方法が挙げられる。また、分級法としては、通常、乾式遠心分級機のような気流分級機による方法が挙げられる。
このようにして得られたトナーの体積平均粒子径は、通常、6〜10μm程度であり、好ましくは6〜9μm、さらに好ましくは6〜8μmである。体積平均粒子径は、粒度分布測定装置(マルチザイザーII、ベックマン・コールター社製)を用いて測定した体積50%径である。
また、トナー粒子表面には、タービン型攪拌機、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の攪拌機を用いて攪拌することにより、前記無機微粒子および樹脂微粉末を付着させてもよい。
(熱処理工程)
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法においては、熱処理工程が必要である。
熱処理の方法としては、例えば、(i)所定の温度の室内あるいは容器内に置く方法、(ii)所定温度の炉中を通過させる方法、(iii)所定の温度の気流中に浮遊させる方法、などが挙げられる。(iii)の方法はトナー製造工程における連続方式も可能であり、粉砕、分級、外添等の工程中や、工程間においても可能であるし、最終工程とすることも可能である。生産性やコストの面からは、(iii)の方法が好ましい。
トナーへの熱処理は、静電荷像現像用トナーの緩和エンタルピー量(ΔH)が2mJ/mg以上となるように行うことが必要である。熱処理温度(℃)は、トナーのガラス転移温度をTgとすると、好ましくはTg−20(℃)〜Tg(℃)、より好ましくはTg−15(℃)〜Tg(℃)、さらに好ましくはTg−10(℃)〜Tg(℃)、特に好ましくはTg−5(℃)〜Tg(℃)である。熱処理温度がTg(℃)を超えると、トナーを冷却する過程において、再度過剰エンタルピーを有してしまうため、本発明の効果が全く得られない。一方、熱処理温度がTg−20(℃)未満では、緩和エンタルピー量(ΔH)が小さくなり、本発明の効果が得にくい。また、Tg−20(℃)未満の温度で、緩和エンタルピー量を大きくするためには、通常、非常に長時間熱処理する必要があり、生産性の観点から効率的でない。
本発明においてTgは以下のように定義する。トナー約5mgをアルミ製セルに入れた試料を、示差走査熱量計(DSC)(セイコーインスツルメント社製、商品名:SCC−5200)に載置し、1分間に50mlのN2 ガスを吹き込みながら、ASTM D3418−82またはJIS K 7121−1987に準じてDSC測定を行い、観測されるDSC昇温曲線からTgを求める。具体的な測定方法としては、まず、試料を20〜120℃の間で1分間あたり10℃の割合で昇温させ、通常、トナーのTgより高温である120℃で10分間保持する。次に、120〜20℃に1分間あたり10℃の割合で降温させ、20℃で10分間保持する。次に、上記条件で2回目の昇温をし、その時に観測されるDSC昇温曲線の、ガラス転移に伴い観測される階段状変化部分によりTgを求める。図3はこのような条件で測定されたトナーのDSC昇温曲線の概略図を示している。図3において、階段状変化部分でない温度領域におけるDSC昇温曲線をベースラインとして、低温側のベースラインから、ガラス転移の階段状変化部分の曲線が離れる点の温度を本発明におけるTgとする。
エンタルピーを緩和させる熱処理時間(hr)は、好ましくは0.5〜1000(hr)、より好ましくは10〜500(hr)、さらに好ましくは10〜100(hr)、特にこのましくは10〜50(hr)である。熱処理時間が0.5(hr)より短いと、緩和エンタルピー量が小さくなり、本発明の効果が得にくい。また、熱処理時間が1000(hr)を超えて長いと、生産性の観点から不利である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例、比較例で用いた材料成分、物性の測定方法、およびトナーの評価方法を以下に示す。
[材料成分]
<結着樹脂>
PES:ポリエステル樹脂(三菱レイヨン(株)製、商品名:FC1198)。
TPEE:ポリエステル系熱可塑性エラストマー(東レ・デュポン(株)製、商品名:ハイトレル2551)。
<着色剤>
PIG.:トナー用シアン顔料C.I.ピグメントブルー15:3(クラリアントジャパン(株)製、商品名:Hostaperm Blue B2G)。
<帯電制御剤>
CCA:亜鉛塩系帯電制御剤(オリエント化学(株)製、商品名:BONTRON E−84)。
<離型剤>
WAX:カルナウバワックス(加藤洋行社製、商品名:カルナウバワックス2号粉末、融点82.5℃)。
[物性の測定方法]
<緩和エンタルピー量の測定>
試料約5mgを計量してアルミ製セルに入れて、示差走査熱量計(DSC)(セイコーインスツルメント社製、商品名:SCC−5200)に載置し、1分間に50mlのN2 ガスを吹き込みながら、20℃〜120℃の間を1分間あたり10℃の割合で昇温させ、その時に現れる吸熱ピークの吸熱ピーク面積(S)を、SCC−5200に付属の解析ソフトを用いて算出し、緩和エンタルピー量(ΔH)を求めた。吸熱ピーク面積(S)は、図2の斜線部である。P1 は高温側ベースラインの開始点である。P1 から吸熱ピーク開始点近傍に向かって吸熱ピーク曲線に接線を描き、接点をP2 とし、吸熱ピークとP1 、P2 で囲まれた部分が吸熱ピーク面積である。
[トナーの評価方法]
<定着特性>
トナー4質量部と、ノンコートフェライトキャリア(FL−1020、パウダーテック(株)製)96質量部とを混合して、二成分系現像剤を作製した。次に、この現像剤を使用して市販の複写機(SF−9800、シャープ(株)製)により、A4の転写紙に縦3cm、横6cmの帯状の未定着画像を作製した。転写紙上のトナー付着量は、トナー濃度、感光体の表面電位、現像電位、露光量、転写条件等により、およそ2.0mg/cm2 に調整した。ついで、表層がポリ4フッ化エチレンで形成された熱定着ローラと、表層がシリコーンゴムで形成された圧力定着ローラとが、対になって回転するオイルレス方式定着機を、ローラ圧力が1Kgf/cm2 、ローラスピードが125mm/secになるように調節し、熱定着ローラの表面温度を150〜200℃の間で10℃の間隔で段階的に上昇させて、各表面温度において上記未定着画像を有した転写紙のトナー像の定着をおこなった。定着後、余白部分にトナー汚れが生じるか否かの観察を行い、汚れが生じない温度領域を非オフセット温度領域とした。非オフセット温度領域において、未定着画像を有する転写紙が熱定着ロールの表面に巻き付くか否かの観察を行い、巻付きが発生しない温度領域を非巻付き温度領域とし、非巻付き温度領域の高温側の上限温度を確認した。
[耐融着性]
トナーを非磁性一成分方式のQMS2200型プリンタ(ミノルタQMS社製)の現像機に投入し、画像比率が5%のA4原稿を、A4の転写紙に3000枚複写した。3000枚複写後に、現像機の帯電部材(帯電ブレード)にトナーの融着が見られるかどうか、目視により確認した。
○:トナーの融着なし。
×:トナーの融着あり。
[成形性]
2軸押出機により押出された板状の押出成形物の、押出方向に対して垂直方向の断面を、光学顕微鏡(倍率400倍)で観察し、結着樹脂、着色剤、離型剤等の各材料の混練性(分散の程度)を確認した。
○:各材料が均一に分散し、かつ微分散している。
×:各材料の分散状態が不均一である。
[総合評価]
トナーの実用性の観点から、定着特性と耐融着性とのバランスを考慮した総合的な評価を行った。
○:定着特性および耐融着性のいずれにも優れている。
△:定着特性に優れているが、耐融着性が十分でない。
×:定着特性に劣っている。
[実施例1〜5、比較例1〜5]
トナーの原料としては、ポリエステル樹脂と、熱可塑性エラストマーと、着色剤と、離型剤と、帯電制御剤とを表1および表2に示す割合で用いた。
前記各材料を2軸混練押出機(PCM−30、池貝(株)製)を用いて、温度160℃、吐出量3.5kg/hr、回転数250rpmで溶融混練し、厚さ2〜3mmの板状の押出成形物を得た。得られた板状の押出成形物の断面観察を行い、前記各材料の成形性を評価した。ついで、押出成形物を、ジェットミルにて粉砕し、その後乾式気流分級機で分級して、体積平均粒径が8.0μmのトナー粒子を得た。得られたトナー粒子100質量部に対して、体積平均粒子径8nmの疎水性シリカ(TS−530、キャボット社製)を1.2質量部と、体積平均粒子径が30nmの疎水性シリカ(NA−50H、日本アエロジル(株)製)を0.3質量部とを添加し、ヘンシェルミキサーにて、周速40m/secで10分間攪拌混合し、トナー粒子表面に疎水性シリカが添加された外添トナーを得た。各トナーのTgを測定し、表1および表2に記載した。これらの外添トナー200gを、蓋付ステンレス製容器に入れて蓋をし、熱風循環型乾燥機(TS−620、東洋科学産業(株)製)に入れて、表1および表2に示す条件で熱処理を施した。熱処理後、トナーを熱風循環型乾燥機から取り出し自然放置により室温付近まで冷却して、実施例1〜5および比較例1〜5のトナーを得た。得られたトナーの緩和エンタルピー量を測定し、ついで、定着特性、耐融着性を評価し、この評価結果に基づいて、トナーとしての実用レベルを考慮して総合評価を行った。結果を表1および表2に示した。
Figure 0004348249
Figure 0004348249
表1および表2から明らかなように、実施例1、2のトナーは、定着特性に優れるが、離型剤が多めのため耐融着性および成形性が劣るので総合評価は△であった。実施例3〜5のトナーは、定着特性、耐融着性、成形性に優れているので総合評価も○であった。実施例5のトナーは、熱可塑性エラストマーを含有するため定着特性が特に優れていた。
これに対して、比較例1のトナーは、熱処理温度が低いため緩和エンタルピー量が小さく、定着特性、耐融着性、成形性、総合評価において劣るものであった。
比較例2のトナーは、熱処理温度がTgを超えたため緩和エンタルピー量が小さく、定着特性、耐融着性、成形性、総合評価において劣るものであった。
比較例3のトナーは、熱処理をしなかったため緩和エンタルピー量が小さく、定着特性、耐融着性、成形性、総合評価において劣るものであった。
比較例4のトナーは、比較例3に対して離型剤含有量を少なくしたため、耐融着性、成形性は優れるが、定着特性が悪化し、総合評価は劣るものであった。
比較例5のトナーは、熱処理をしなかったものであるが、熱可塑性エラストマーを含有しているため総合評価も優れる。しかし、実施例5に比べると定着特性が劣る。
本発明の静電荷像現像用トナーは、定着特性に優れるものであり、非磁性一成分現像方式、オイルレス定着方式、フルカラー画像形成に用いられるトナーとして好適である。
非結晶性樹脂における、体積やエンタルピーなどの熱力学量と温度との関係を示すグラフである。 DSC昇温測定において観察されるDSC昇温曲線を示す図であり、(a)は緩和エンタルピー量(ΔH)が大きい場合のDSC昇温曲線、(b)は緩和エンタルピー量(ΔH)が小さい場合のDSC昇温曲線である。 DSC昇温曲線を用いたガラス転移点の決定方法を説明する図である。

Claims (6)

  1. 結着樹脂と着色剤とを含有する静電荷像現像用トナーであり、
    前記結着樹脂が、ポリエステル系樹脂であり、
    前記トナーが、Tg−10(℃)〜Tg(℃)(ただしTgは下記に定義される。)で0.5〜1000(hr)の熱処理を施されたものであり、
    下記に定義される前記トナーの緩和エンタルピー量(ΔH)が、2mJ/mg以上であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
    (Tg)
    トナー約5mgをアルミ製セルに入れた試料を、示差走査熱量計(DSC)に載置し、1分間に50mlのN 2 ガスを吹き込みながら試料を20〜120℃の間で1分間あたり10℃の割合で昇温させ、120℃で10分間保持し、次に、120〜20℃に1分間あたり10℃の割合で降温させ、20℃で10分間保持し、次に、上記条件で2回目の昇温をし、その時に観測されるDSC昇温曲線において、低温側のベースラインから、ガラス転移に伴い観測される階段状変化部分の曲線が離れる点の温度をTgとする。
    (トナーの緩和エンタルピー量(ΔH))
    トナー約5mgをアルミ製セルに入れた試料を、示差走査熱量計(DSC)に載置し、1分間に50mlのN 2 ガスを吹き込みながら試料を20〜120℃の間で1分間あたり10℃の割合で昇温させ、その時に観測されるDSC昇温曲線のTg近傍における吸熱ピークの高温側ベースラインの開始点をP 1 とし、P 1 から吸熱ピーク開始点近傍に向かって吸熱ピーク曲線に接線を描き、接点をP 2 とし、吸熱ピークとP 1 、P 2 で囲まれた部分の吸熱ピーク面積(S)を緩和エンタルピー量(ΔH)とする。
  2. さらに融点が50〜120℃である離型剤を含有し、
    離型剤の含有量が、結着樹脂100質量部に対して3質量部以下であることを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
  3. さらに熱可塑性エラストマーを含有し、
    該熱可塑性エラストマーの含有量が、結着樹脂100質量部に対して50質量部以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
  4. 非磁性一成分現像方式用トナーであることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
  5. フルカラー用トナーであることを特徴とする請求項1ないしいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
  6. 結着樹脂と着色剤とを含有する静電荷像現像用トナーの製造方法であり、
    前記結着樹脂が、ポリエステル系樹脂であり、
    下記に定義される前記トナーの緩和エンタルピー量(ΔH)が2mJ/mg以上となるように、トナーにTg−10(℃)〜Tg(℃)(ただしTgは下記に定義される。)で0.5〜1000(hr)の熱処理を施すことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
    (Tg)
    トナー約5mgをアルミ製セルに入れた試料を、示差走査熱量計(DSC)に載置し、1分間に50mlのN 2 ガスを吹き込みながら試料を20〜120℃の間で1分間あたり10℃の割合で昇温させ、120℃で10分間保持し、次に、120〜20℃に1分間あたり10℃の割合で降温させ、20℃で10分間保持し、次に、上記条件で2回目の昇温をし、その時に観測されるDSC昇温曲線において、低温側のベースラインから、ガラス転移に伴い観測される階段状変化部分の曲線が離れる点の温度をTgとする。
    (トナーの緩和エンタルピー量(ΔH))
    トナー約5mgをアルミ製セルに入れた試料を、示差走査熱量計(DSC)に載置し、1分間に50mlのN 2 ガスを吹き込みながら試料を20〜120℃の間で1分間あたり10℃の割合で昇温させ、その時に観測されるDSC昇温曲線のTg近傍における吸熱ピークの高温側ベースラインの開始点をP 1 とし、P 1 から吸熱ピーク開始点近傍に向かって吸熱ピーク曲線に接線を描き、接点をP 2 とし、吸熱ピークとP 1 、P 2 で囲まれた部分の吸熱ピーク面積(S)を緩和エンタルピー量(ΔH)とする。
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