JP4347602B2 - 熱源運転支援制御方法、システムおよびプログラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱源システムの最適運転スケジュールを決定する技術に係り、特に目的関数を最小にする混合整数線型計画法により、蓄熱槽を含む熱源システムの最適運転スケジュールを決定する熱源運転支援制御方法、システムおよびプログラムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
業務用ビルのエネルギー消費量は、近年、国内全エネルギー消費量の10%程度を占めるまでに及んでおり、エネルギー消費量の低減とCO2 排出量の削減を実現する設備の構築、運用・制御が重要となってきている。このため、建物における省エネルギーや省コストおよびCO2 排出量削減等の環境負荷低減への対応が求められており、いかにこれらの要求に対応できる設備を設計して、それを運用するかが重要なテーマとなっている。
【0003】
大型ビルのエネルギー供給システムは、入力エネルギーを電力、都市ガス、石油、水とし、出力である供給エネルギーを電力、冷水、温水、蒸気などとする多入力、多出力のシステムである。このシステムは、経済性、省エネルギー性、環境保全性および都市防災などの観点から総合的に評価、設計され、コジェネレーション・システム、ヒートポンプ氷(または水)蓄熱システム、ガス冷温水機などを設置した複合熱源システムとなっている。
【0004】
このようなコジェネレーション・システムや蓄熱槽を含むエネルギー供給システムでは、運転コストを最小にする最適運転スケジュールが作成され、この最適運転スケジュールに基づいて熱源機器の運転制御が行われていた(例えば、特許文献1参照)。なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
【0005】
【特許文献1】
特開平1−137145号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示されたビル管理システムによれば、熱源設備の経済的な運転が可能になる。しかしながら、このシステムでは、熱源機器の運転における経済的な要求には対応できるが、省エネルギーや環境保全など他の要求には対応できないという問題点があった。
【0007】
このような要求に対応できる技術として期待されているのが、数理計画法を用いた熱源機器の最適運転スケジュールの決定方法である。数理計画法は、目的関数を最小にする演算(最適化)を行うので、目的関数を経済性(建設費+運転費)や省エネルギー性(エネルギー消費量)、環境保全性(CO2 排出量)、制御性(制御量偏差と操作量の2乗和)として表すことにより、目的に合った設計、運用、制御のための解を得ることができる。熱源システムを構成する機器の多くは、オン/オフ動作することから、これらの機器の動作状態は、「1」または「0」の値をとる整数変数により表される。したがって、数理計画法による熱源システムの最適運転スケジュール問題は、整数変数を含む混合整数線型計画法により定式化することができる。
【0008】
しかし、数理計画法を用いた従来の最適運転スケジュール演算方法では、合理的な計算時間で最適運転スケジュールを演算することができず、数理計画法を熱源機器の最適運転スケジュール演算に適用することは事実上不可能であった。その理由は、混合整数線型計画法においては、整数変数の取り得る状態の組み合わせの中から目的関数を最小化する、すなわち、整数変数の値を決定する必要があるため、整数変数の個数が多く、また考慮すべき期間が長い(各機器の状態が変化し得るインターバルの数が多い)ほど、整数変数の取り得る状態の組み合わせは指数関数的に増大するからである。例えば、多くの熱源システムは、20台以上の機器から構成されるので、20台の機器がオン/オフ動作するとなると、混合整数線形計画法においては、少なくとも20個の整数変数を含むことととなる。さらに、蓄熱槽を含む熱源システムの場合、最適運転スケジュールを決定するには、次のインターバルにおける機器の動作状態を決定するにも、少なくとも1日(24時間)にわたる熱源システムの動作状態を考慮しなければならない。そのため、仮に30分ごとに運転スケジュールを決定するとなると、1日当たり48(=24×2)のインターバルについて組み合わせを検討する必要がある。その結果、混合整数線形計画法によりこの熱源システムの最適運転スケジュールを決定しようとすれば、20台の機器が48のインターバルについて取り得る動作状態の組み合わせの数は2の(20×48)乗にものぼるため、コンピュータを用いてこれらの組み合わせの中から目的関数を最小化する解を求め、合理的な計算時間で最適な動作状態を決定することは不可能である。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、数理計画法を用いた熱源機器の最適運転スケジュール演算を実用化し、熱源機器の運転における多様な要求に対応することができる熱源運転支援制御方法、システムおよびプログラムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、目的関数を最小にする混合整数線型計画法により、蓄熱槽を含む熱源システムの最適運転スケジュールを決定する熱源運転支援制御方法において、前記熱源システムを構成する各機器の運転・停止状態を表す変数のうち、所定のサンプリング時刻の変数については整数変数とし、前記所定のサンプリング時刻を除いたサンプリング時刻の変数については連続変数として設定する変数設定手順と、前記熱源システムの負荷を予測する負荷予測演算手順と、この負荷予測演算手順で予測した負荷予測値と前記目的関数と前記運転・停止状態を表す変数とに基づいて、前記熱源システムの最適運転スケジュールを決定する最適運転スケジュール演算手順とを備えるようにしたものである。
また、本発明の熱源運転支援制御方法の1構成例は、前記目的関数を切り換える目的関数切換手順を備えるようにしたものである。
また、本発明の熱源運転支援制御方法の1構成例は、前記最適運転スケジュールを決定する際の各機器の運転制約条件を設定する運転制約条件設定手順を備えるようにしたものである。
また、本発明の熱源運転支援制御方法の1構成例は、前記熱源システムの各熱源機器の運転優先順位を前記最適運転スケジュールで決定した運転時間が長い順に高くして、前記熱源機器の運転順序を決定する熱源運転順序決定手順を備えるようにしたものである。
また、本発明の熱源運転支援制御方法の1構成例において、前記熱源運転順序決定手順は、1日を複数の運転時間帯に分け、複数の運転時間帯のうち前記運転順序の決定対象時刻を含む運転時間帯の最適運転スケジュールに基づいて、前記決定対象時刻の運転順序を決定するようにしたものである。
【0011】
また、本発明は、目的関数を最小にする混合整数線型計画法により、蓄熱槽を含む熱源システムの最適運転スケジュールを決定する熱源運転支援制御システムにおいて、前記熱源システムを構成する各機器の運転・停止状態を表す変数のうち、所定のサンプリング時刻の変数については整数変数とし、前記所定のサンプリング時刻を除いたサンプリング時刻の変数については連続変数として設定する変数設定手段と、前記熱源システムの負荷を予測する負荷予測演算手段と、この負荷予測演算手段で予測された負荷予測値と前記目的関数と前記運転・停止状態を表す変数とに基づいて、前記熱源システムの最適運転スケジュールを決定する最適運転スケジュール演算手段とを備えるものである。
また、本発明の熱源運転支援制御システムの1構成例は、前記目的関数を切り換える目的関数切換手段を備えるものである。
また、本発明の熱源運転支援制御システムの1構成例は、前記最適運転スケジュールを決定する際の各機器の運転制約条件を設定する運転制約条件設定手段を備えるものである。
また、本発明の熱源運転支援制御システムの1構成例は、前記熱源システムの各熱源機器の運転優先順位を前記最適運転スケジュールで決定した運転時間が長い順に高くして、前記熱源機器の運転順序を決定する熱源運転順序決定手段を備えるものである。
また、本発明の熱源運転支援制御システムの1構成例において、前記熱源運転順序決定手段は、1日を複数の運転時間帯に分け、複数の運転時間帯のうち前記運転順序の決定対象時刻を含む運転時間帯の最適運転スケジュールに基づいて、前記決定対象時刻の運転順序を決定するものである。
【0012】
また、本発明は、目的関数を最小にする混合整数線型計画法により、蓄熱槽を含む熱源システムの最適運転スケジュールをコンピュータに決定させる熱源運転支援制御プログラムにおいて、前記熱源システムを構成する各機器の運転・停止状態を表す変数のうち、所定のサンプリング時刻の変数については整数変数とし、前記所定のサンプリング時刻を除いたサンプリング時刻の変数については連続変数として設定する変数設定手順と、前記熱源システムの負荷を予測する負荷予測演算手順と、この負荷予測演算手順で予測した負荷予測値と前記目的関数と前記運転・停止状態を表す変数とに基づいて、前記熱源システムの最適運転スケジュールを決定する最適運転スケジュール演算手順とをコンピュータに実行させるようにしたものである。
また、本発明の熱源運転支援制御プログラムの1構成例は、前記目的関数を切り換える目的関数切換手順をコンピュータに実行させるようにしたものである。
また、本発明の熱源運転支援制御プログラムの1構成例は、前記最適運転スケジュールを決定する際の各機器の運転制約条件を設定する運転制約条件設定手順をコンピュータに実行させるようにしたものである。
また、本発明の熱源運転支援制御プログラムの1構成例は、前記熱源システムの各熱源機器の運転優先順位を前記最適運転スケジュールで決定した運転時間が長い順に高くして、前記熱源機器の運転順序を決定する熱源運転順序決定手順をコンピュータに実行させるようにしたものである。
また、本発明の熱源運転支援制御プログラムの1構成例において、前記熱源運転順序決定手順は、1日を複数の運転時間帯に分け、複数の運転時間帯のうち前記運転順序の決定対象時刻を含む運転時間帯の最適運転スケジュールに基づいて、前記決定対象時刻の運転順序を決定するようにしたものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態となる熱源運転支援制御システムの構成を示すブロック図である。本実施の形態の熱源運転支援制御システムは、冷熱源と温熱源と蓄熱槽とを含む複合熱源システム1と、複合熱源システム1を監視する中央監視システム2と、経済性、省エネルギー性、環境保全性あるいは制御性を高めるために複合熱源システム1の最適運転スケジュールを決定する熱源運転支援システム3と、建物内の設備を制御する設備統合コントローラ(以下、UICとする)4と、複合熱源システム1のうち冷熱源を制御する冷熱源台数制御コントローラ5と、複合熱源システム1のうち温熱源を制御する温熱源台数制御コントローラ6と、複合熱源システム1のうち蓄熱槽を制御する蓄熱コントローラ7と、データを収集する監視装置8と、外部から収集した翌日分の予想気温データを熱源運転支援システム3に転送する気象データ転送PC9と、中央監視システム2と熱源運転支援システム3とUIC4と監視装置8と気象データ転送PC9とを相互に接続するネットワーク10と、複合熱源システム1のうちコジェネレーション群を制御するコジェネシステムコントローラ20とからなる。
【0014】
図2は複合熱源システム1の構成を示すブロック図である。複合熱源システム1は、一次エネルギー(電力会社から供給される電力、ガス会社から供給される都市ガス、および水道会社から供給される水)を消費して、電力、冷水、温水、蒸気を発生させ、建物内の電気設備や空調設備に供給する機器である。
【0015】
図2において、E1は電力会社から供給される業務用電力、E2は蓄熱調整契約電力、Wは水道会社から供給される水、Fはガス会社から供給される都市ガスを表す。夜間に蓄熱のために運転されるチラー、ポンプ、冷却塔には、安価な蓄熱調整契約電力料金が適用される。
【0016】
複合熱源システム1は、都市ガスFと補給水Wとにより電力を生成するコジェネレーション群11と、都市ガスFから蒸気を生成するボイラ群12と、ボイラ群12から供給された蒸気とコジェネレーション群11で生じた回収蒸気とコジェネレーション群11で生じた回収温水とにより冷水を生成する冷凍機群13と、コジェネレーション群11から供給された電力とボイラ群12から供給された蒸気とコジェネレーション群11で生じた回収温水とコジェネレーション群11で生じた回収蒸気とにより温水を生成する温水ポンプ群14と、安価な蓄熱調整契約電力E2を熱の形で蓄え、熱需要が集中する昼間に利用するための蓄熱槽群15とから構成される。
【0017】
コジェネレーション群11は、都市ガスFと補給水Wとにより発電するガスエンジン発電機111と、ガスエンジン発電機111の補機112と、ガスエンジン発電機111から送られてくる高温冷却水の熱を外気に放熱して冷却水をガスエンジン発電機111に戻す冷却塔113と、冷却塔113の補機114とを有している。
ボイラ群12は、都市ガスFから蒸気を生成する貫流ボイラ121と、貫流ボイラ121の補機122とを有している。
【0018】
冷凍機群13は、ボイラ群12から供給された蒸気とコジェネレーション群11で生じた回収蒸気とコジェネレーション群11で生じた回収温水とにより冷水を生成する蒸気・温水併用吸収式冷凍機131と、蒸気・温水併用吸収式冷凍機131の補機132と、蒸気・温水併用吸収式冷凍機131から送られてくる高温冷却水の熱を外気に放熱して冷却水を蒸気・温水併用吸収式冷凍機131に戻す冷却塔133と、冷却塔133の補機134と、ボイラ群12から供給された蒸気とコジェネレーション群11で生じた回収蒸気とにより冷水を生成する蒸気吸収式冷凍機135と、蒸気吸収式冷凍機135の補機136と、蒸気吸収式冷凍機135から送られてくる高温冷却水の熱を外気に放熱して冷却水を蒸気吸収式冷凍機135に戻す冷却塔137と、冷却塔137の補機138とを有している。
【0019】
温水ポンプ群14は、コジェネレーション群11から供給された電力とコジェネレーション群11で生じた回収温水とにより温水を生成する温水ポンプ141と、コジェネレーション群11から供給された電力とボイラ群12から供給された蒸気とコジェネレーション群11で生じた回収蒸気とにより温水を生成する温水ポンプ142とを有している。
【0020】
蓄熱槽群15は、蓄熱調整契約電力E2により冷水を生成するスクリュー冷凍機151と、スクリュー冷凍機151の補機152と、スクリュー冷凍機151から送られてくる高温冷却水の熱を外気に放熱して冷却水をスクリュー冷凍機151に戻す冷却塔153と、冷却塔153の補機154と、スクリュー冷凍機151で生成された冷水を溜める蓄熱槽155と、蓄熱槽155に溜められている冷水を利用するために放水する冷水放熱ポンプ156とを有している。
【0021】
複合熱源システム1のうち、冷凍機群13と蓄熱槽群15の冷水放熱ポンプ156とは冷熱源を構成している。また、ボイラ群12と温水ポンプ群14とは温熱源を構成している。
【0022】
なお、図2の例では、ガスエンジン発電機111や貫流ボイラ121、蒸気・温水併用吸収式冷凍機131、蒸気吸収式冷凍機135、温水ポンプ141,142、スクリュー冷凍機151、蓄熱槽155、冷水放熱ポンプ156および冷却塔113,133,137,153をそれぞれ1台ずつとしているが、これらはそれぞれ複数台あってもよい。
【0023】
中央監視システム2は、複合熱源システム1の運転管理や、自動運転と手動運転の切り替え、日報や月報等の管理などを行うコンピュータ(PC)21からなる。
熱源運転支援システム3は、負荷予測演算、最適運転演算、蓄熱運転の決定、熱源運転順序の決定、コジェネ運転台数の決定などを行うPC31からなる。PC31は、変数設定手段と、負荷予測演算手段と、最適運転スケジュール演算手段と、実測値を収集する収集手段とを構成している。
【0024】
これらのPC21やPC31は、例えば演算装置、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。
【0025】
以下、本実施の形態の熱源運転支援制御システムの動作を説明する。図3は本実施の形態の熱源運転支援制御システムの動作を示すフローチャート、図4は熱源運転支援制御システムにおけるデータの流れを示す図である。
図3のステップS1〜S7の処理は、サンプリング時間間隔Δtごとに繰り返し実行される。すなわち、本実施の形態では、時間をサンプリング時間間隔Δtに離散化し、時間の進行に従ってPC31内部の時刻をサンプリング時間間隔Δtだけ進め、ステップS1〜S7の処理を繰り返す。本実施の形態では、サンプリング時間間隔Δtを30分としている。
【0026】
最初に、熱源運転支援システム3のPC31は、自装置および監視装置8で収集される収集データ(実測値)、気象データ転送PC9から送られる1日分の予想気温データおよび予め設定された負荷パターンに基づいて、1日分の複合熱源システム1の負荷を電力量、冷水熱量、温水熱量および蒸気量の各系統別に予測する負荷予測演算を行う(図3ステップS1)。
【0027】
ここでは、K個のサンプリング時刻(予測対象時刻)j=k+1,k+2,・・・・,k+Kについて複合熱源システム1の負荷を演算し、演算した負荷予測値を図4に示すようにチルダdj|k とする。以下、同様に文字上に付した「〜」をチルダと呼ぶ。
【0028】
負荷予測値チルダdj|k の第1の下付添字jはサンプリング時刻を表し、第2の下付添字|kは負荷予測演算を行う現時刻を表す。すなわち、チルダdj|k は現時刻kにおいて予測したサンプリング時刻jの負荷予測値を表す。以下、負荷予測値以外の物理量にも同様の規約で下付添字を用いるものとする。
【0029】
PC31は、1日分の負荷を予測するが、ここでの1日とは、22時から翌日の21時30分までのことを指す。ステップS1の負荷予測演算は21時30分から開始され、サンプリング時間間隔Δt毎に繰り返し行われる。前述のKは48−(l+1)の値をとる整数値である。ただし、lは現時刻kが21時30分の場合にl=1で、現時刻の更新毎に1ずつ増加する整数値である。
【0030】
したがって、PC31は、現時刻k=21時30分の場合、K=48個のサンプリング時刻(22時から翌日の21時30分までの30分毎)について負荷を演算し、現時刻k=22時の場合、K=47個のサンプリング時刻(22時30分から翌日の21時30分までの30分毎)について負荷を演算する。
【0031】
監視装置8で収集される収集データとしては、外気温度、電力量実測負荷がある。
また、UIC4から中央監視システム2を通じてPC31が収集する収集データとしては、冷水熱量実測負荷、温水熱量実測負荷、蒸気量実測負荷がある。これらのデータはサンプリング時間間隔Δt毎に収集される。
【0032】
気象データ転送PC9には、図示しない外部の気象予測システムから気象情報メールの形で1日分の30分毎の予想気温データが送られ、気象データ転送PC9は、この気象情報メールから予想気温データを取り出して熱源運転支援システム3に転送する。この予想気温データは、気象予測システムによってサンプリング時間間隔Δt毎に修正される。
【0033】
図5は熱源運転支援システム3のオペレータが負荷パターンを設定するための負荷パターン設定画面を示す図である。負荷パターンは、22時から翌日の21時30分までの30分毎の複合熱源システム1の負荷の標準的な値を示すものである。オペレータは、PC31の表示装置に表示される図5のような負荷パターン設定画面201上で負荷パターンを設定する。
【0034】
このとき、負荷パターンは、電力量、冷水熱量、温水熱量、蒸気量といった各系統別に設定される。また、複合熱源システム1の負荷は、平日と休日とでは大きく異なる。そこで、負荷パターンは、平日、休日、特異日1、特異日2といった日付別に設定される。特異日とは、例えば創立記念日や一斉早退日などの特別な日を意味する。さらに、複合熱源システム1の負荷は、季節によっても大きく異なる。そこで、負荷パターンは、夏期、中間期(夏期と冬期の中間)、冬期といった各季節別に設定される。このような負荷パターンの設定は、1年間分の設定が可能である。
【0035】
熱源運転支援システム3のPC31は、以上のような収集データ、予想気温データおよび負荷パターンに基づいて、複合熱源システム1の負荷予測値チルダdj|k を演算する。本実施の形態では、負荷の予測手法として、ARIMA(Auto Regressive Integrated Moving Average :自己回帰積分移動平均)モデルに基づく手法を採用している。
【0036】
熱源運転支援システム3のPC31は、演算した負荷予測値を図6のような負荷予測演算結果/実績確認画面202に表示する。負荷予測値は電力量、冷水熱量、温水熱量および蒸気量の各系統別に表示される。図6は冷水熱量について表示している例である。なお、負荷予測系統のうち、電力量については、熱源機器のオン/オフ動作時に伴う急激な需要量変動を取り除くために、各熱源機器で消費される電力量を差し引いたものが表示される。同様に、蒸気量についても、各熱源機器で消費される蒸気量を差し引いたものが表示される。
【0037】
次に、熱源運転支援システム3のPC31は、ステップS1で予測した負荷予測値チルダdj|k と、機器性能特性パラメータと、エネルギーコスト情報と、機器運転制約条件と、目的関数とに基づいて、数理計画法により複合熱源システム1の最適運転スケジュールを演算する(図3ステップS2)。なお、負荷予測値チルダdj|k のうち電力量については、前述と同様の理由により、各熱源機器で消費される電力量を差し引いたものが最適運転スケジュール演算に使用される。同様に、蒸気量についても、各熱源機器で消費される蒸気量を差し引いたものが使用される。
【0038】
数理計画法は、目的関数を最小にする演算(最適化)を行うので、目的関数を経済性(建設費+運転費)や省エネルギー性(エネルギー消費)、環境保全性(CO2 排出量)、制御性(制御量偏差と操作量の2乗和)として表すことにより、目的に合った設計、運用、制御のための解を得ることができる。
【0039】
本実施の形態では、数理計画法の中でも特にMILP(Mixed Integer Linear Programming:混合整数線型計画法)を用いて最適運転スケジュールを演算する。以下、混合整数線型計画法についてより詳細に説明する。前述のように、目的関数には様々な種類があるが、ここでは、システムの運用費を目的関数として、これを最小化するように運用方針を決定する。複合熱源システム1の運転スケジュールを記述するための変数として、各種エネルギー流量を表す連続変数ベクトルx、複合熱源システム1を構成する各機器の運転・停止状態を表す変数ベクトルyを用いる。この変数ベクトルyは、後述するように整数変数ベクトルまたは連続変数ベクトルである。
【0040】
ここで、予測した負荷が実際に発生するとは限らないので、エネルギー需給関係を考慮する際に、負荷に対して不確実性を考慮する必要がある。本実施の形態では、ステップS1で予測した負荷予測値チルダdj|k に対してだけでなく、これを式(1)内のあらゆる負荷(式(2))に対しても、複合熱源システム1を構成する各機器の運転・停止状態yj|k を変更することなく、エネルギー流量xj|k の変更のみによってエネルギー供給が可能なように運用方策を決定するものとする。
【0041】
【数1】
【0042】
【数2】
【0043】
式(1)、式(2)において、ハットdj|k は、不確実性を考慮した負荷予測値を表す。以下、同様に文字上に付した「∧」をハットと呼ぶ。また、Δdj|k -は不確実性の下限値を表し、Δdj|k +は不確実性の上限値を表す。
以上のような条件の基で最適運転スケジュール演算問題は次の式(3)で表される。
【0044】
【数3】
【0045】
ただし、式(3)には、次の式(4)〜式(12)に示すような条件が与えられる。
【0046】
【数4】
【0047】
【数5】
【0048】
【数6】
【0049】
【数7】
【0050】
【数8】
【0051】
【数9】
【0052】
【数10】
【0053】
【数11】
【0054】
【数12】
【0055】
チルダxj|k 、ハットxj|k は、それぞれチルダdj|k 、ハットdj|k に対応するエネルギー流量を表す。式(3)において、関数fj(チルダxj|k,yj|k|チルダdj|k)はエネルギー供給費用を表す。関数fj(チルダxj|k,yj|k|チルダdj|k)のうち記号「|」の前のチルダxj|k ,yj|k は決定すべき変数であることを表し、記号「|」の後のチルダdj|k はこの変数の決定に条件として与えられる定数であることを表す。
【0056】
関数gj(yj-1|k,yj|k )は複合熱源システム1を構成する各機器の機器起動・停止費用である。式(3)は、システムの運用費、すなわち前述のエネルギー供給費用と機器起動・停止費用との和が最小となるようにエネルギー流量チルダxj|k および変数ベクトルyj|k を決定することを表している。
【0057】
式(4)は、複合熱源システム1を構成する各機器の入出力エネルギー流量の関係を表す性能特性式である。関数hj(チルダxj|k,yj|k|チルダdj|k)のうち記号「|」の前のチルダxj|k ,yj|k は決定すべき変数であることを表し、記号「|」の後のチルダdj|k はこの変数決定に与えられる定数であることを表す。
【0058】
式(5)は、各種エネルギー流量の収支関係を表すエネルギー・バランスおよび需給関係式である。関数hj(ハットxj|k,yj|k|ハットdj|k)のうち記号「|」の前のハットxj|k ,yj|k は決定すべき変数であることを表し、記号「|」の後のハットdj|k はこの変数決定に与えられる定数であることを表す。
【0059】
式(6)、式(7)は、蓄熱槽群15の入出力熱流量と蓄熱量との関係を表す式であり、rは蓄熱量を表す連続変数である。関数pj(チルダrj-1|k,チルダrj|k|チルダdj|k)のうち記号「|」の前のチルダrj-1|k,チルダrj|kは決定すべき変数であることを表し、記号「|」の後のチルダdj|k はこの変数決定に与えられる定数であることを表す。同様に、関数pj(ハットrj-1|k,ハットrj|k|ハットdj|k)のうち記号「|」の前のハットrj-1|k,ハットrj|kは決定すべき変数であることを表し、記号「|」の後のハットdj|k はこの変数決定に与えられる定数であることを表す。
【0060】
式(8)のYは複合熱源システム1を構成する各機器の現時刻kにおける運転・停止状態、Rは蓄熱槽群15の現時刻kにおける蓄熱量である。
式(9)はチルダxj|k が0以上であることを表し、式(10)はハットxj|k が0以上であることを表す。
【0061】
式(11)は、機器の運転・停止状態yi|k が0(停止)または1(運転)の整数値をとる整数変数ベクトルであることを表す。
式(12)は、機器の運転・停止状態ym|k が0と1の間の実数値をとる連続変数ベクトルであることを表す。
機器の運転・停止状態yi|k ,ym|k の意味については後述する。
【0062】
式(4)、式(5)には、複合熱源システム1を構成する各機器の性能特性式が含まれる。例えば、スクリュー冷凍機の入力エネルギー量(電力消費量)と出力エネルギー量(冷水製造熱量)との関係が図7のように表されるとき、スクリュー冷凍機の性能特性式は、冷水製造熱量=A×電力消費量+B×δとなる。δは0(停止)または1(運転)の整数値である。この性能特性式を定めるための係数A,Bが機器性能特性パラメータである。性能特性式は、複合熱源システム1を構成する各機器毎に予め定められるので、機器性能特性パラメータも各機器毎に予め定められる。
【0063】
図8は熱源運転支援システム3のオペレータがエネルギーコスト情報を設定するためのエネルギー契約単価入力画面を示す図である。オペレータは、PC31の表示装置に表示される図8のようなエネルギー契約単価入力画面203上でエネルギーコスト情報を設定する。
【0064】
このエネルギーコスト情報は、夜間電力、昼間通常電力、昼間重負荷電力、昼間休日電力、ガス、水道の各種類別に月毎に設定される。エネルギーコスト情報は、前述のエネルギー供給費用と機器起動・停止費用の演算に使用される。例えば、電力のコストは、電力消費量×電力単価であることは言うまでもない。
【0065】
機器運転制約条件は、複合熱源システム1を構成する各機器の運転時の制約条件を示す情報であり、熱源運転支援システム3のオペレータによってあらかじめ設定される。機器運転制約条件には、蓄熱量、機器情報、強制運転条件、冷熱源運転モード情報、温熱源運転モード情報、運転順序設定情報、蓄熱槽優先切換情報などがある。
【0066】
蓄熱量は、蓄熱槽群15の30分毎あるいは1時間毎の蓄熱量を指定するものである。機器情報は、複合熱源システム1を構成する各機器の30分毎あるいは1時間毎の状態(故障中、メンテナンス中、強制停止中など)を表す情報である。強制運転条件は、強制的に運転させる機器を指定する情報である。運転順序設定情報は、冷熱源の中での運転の優先順位および温熱源の中での運転の優先順位を指定する情報である。蓄熱槽優先切換情報は、蓄熱槽群15の複数のスクリュー冷凍機151の中での運転の優先順位を指定する情報である。
【0067】
以上のようにして、熱源運転支援システム3のPC31は、混合整数線型計画法により複合熱源システム1の最適運転スケジュール(エネルギー流量の最適解チルダxj|k 、機器の運転・停止状態の最適解yj|k )を演算する。
ところで、従来の混合整数線型計画法では、熱源システムに含まれる全ての機器がそれぞれオンまたはオフの運転・停止状態しかとれないとすると、前述の式(11)のみが存在し、式(12)は存在しない。すなわち、機器の運転・停止状態yj|k は、全て整数変数であった。
【0068】
蓄熱槽群15を含む複合熱源システム1では、複合熱源システム1を構成する各機器が20台以上のプラントが多い。このため、1日にわたって30分毎の各機器の運転と停止を表す整数変数の値の組み合わせは、2の20×48(30分毎に最適運転スケジュールを決める場合の1日の計算回数)乗、つまり凡そ2の1000乗の個数に達する。
【0069】
一般に、整数変数の個数が150個以下の場合には、合理的な計算時間で最適運転スケジュールを演算することができ、250個未満の場合には、問題によっては合理的な計算時間で最適運転スケジュールを演算することができる。しかしながら、蓄熱槽群15を含む複合熱源システム1では、1日にわたって30分毎の各機器の運転と停止を表す整数変数の個数が約1000個となり、その整数変数の組み合わせが凡そ2の1000乗に達するので、合理的な計算時間で最適運転スケジュールを演算することは不可能であり、混合整数線型計画法を複合熱源システム1の最適運転スケジュール演算に適用することは不可能であった。
【0070】
これに対して、本実施の形態では、従来、整数変数であった機器の運転・停止状態yj|k のうち一部を連続変数とすることで、整数変数を150個前後に低減して、合理的な計算時間で最適運転スケジュールを演算することを可能にしている。整数変数を低減しても問題がないのは、本システムでは、後述のように1日を複数の運転時間帯に分けて、その時間帯で運転時間の長い順に運転優先順序を決定しているため、その時間帯のみ主となる機器の運転・停止情報、すなわち整数変数情報が得られればよい、という理由による。
【0071】
式(11)に示した機器の運転・停止状態yi|k は、運転・停止状態yj|k (j=k+1,k+2,・・・,k+K)のうちサンプリング時刻iの運転・停止状態については整数変数とすることを表し、式(12)に示した機器の運転・停止状態ym|k は、運転・停止状態yj|k (j=k+1,k+2,・・・,k+K)のうちサンプリング時刻iを除いたサンプリング時刻mの運転・停止状態については連続変数とすることを表す。
【0072】
機器の運転・停止状態を表す変数を整数変数にするか連続変数にするかは、各運転時間帯の運転の精度を上げることを考慮して決定する。運転時間帯は、1日を夜間、ピークカット前、ピークカット中、ピークカット後の4つに分けたものである。夜間は22時から翌日の8時、ピークカット前は8時30分から13時、ピークカット中は13時30分から16時、ピークカット後は16時30分から21時30分である。
【0073】
複合熱源システム1を構成する各機器のうち主に夜間に運転する機器については、夜間(22時から8時までの30分間隔で計算回数が20回)を対象にして運転・停止状態を表す変数が整数変数となるようにし、その他は連続変数となるようにする。したがって、30分毎に最適運転スケジュールを演算するとすれば、48個のインターバルのうち20個が整数変数、残りの28個が連続変数となる。したがって、このルールが適用される機器の数をxとすれば、組み合わせの数は高々220x となる。
【0074】
一方、主に昼間に運転する機器については、昼間の時間帯を対象にして運転・停止状態を表す変数が整数変数となるようにし、その他は連続変数となるようにする。また、蓄熱槽群15の冷水放熱ポンプ156については、インバータポンプであり、運転時の部分負荷特性が一定であるので、運転・停止状態を表す変数を全て連続変数とする。このように、所定の時間帯に関しては所定の機器の運転・停止状態を整数変数ではなく、連続変数で表すことにより、混合整数線型計画問題における組み合わせの数を減らし、目的関数を最小にする解、すなわち運転スケジュールを合理的な計算時間で求めることができる。
【0075】
最適運転スケジュールの演算後、PC31は、演算結果を図9のような最適運転演算結果/実績確認画面204に表示する。演算結果は、電力量、冷水熱量、温水熱量および蒸気量の各系統別に表示される。図9は冷水熱量について表示している例である。図9において、上段のグラフは、負荷予測値を折線グラフで表示し、最適運転スケジュールの演算結果を機器毎に生産エネルギー値で表示している。下段のグラフは、機器の運転ステータスをバー表示している。
【0076】
次に、熱源運転支援システム3のPC31は、1日の運転開始時刻21時30分にステップS2で演算した複合熱源システム1の最適運転スケジュールに基づいて、1日の放熱分負荷を決定する(図3ステップS3)。
【0077】
続いて、熱源運転支援システム3のPC31は、ステップS2で演算した複合熱源システム1の最適運転スケジュールに基づいて、次の時刻k+1の冷熱源運転順序および温熱源運転順序を決定する(図3ステップS4)。すなわち、PC31は、最適運転スケジュールで予測される冷熱源の運転時間が長い順に冷熱源の運転優先順位が高くなるようにして、冷熱源運転順序を決定する。このとき、PC31は、時刻k+1が属する運転時間帯全体の最適運転スケジュールに基づいて時刻k+1の冷熱源運転順序を決定する。
【0078】
同様に、PC31は、最適運転スケジュールで予測される温熱源の運転時間が長い順に温熱源の運転優先順位が高くなるようにして、温熱源運転順序を決定する。このとき、PC31は、時刻k+1が属する運転時間帯全体の最適運転スケジュールに基づいて時刻k+1の温熱源運転順序を決定する。
【0079】
時刻k+1が属する運転時間帯全体の最適運転スケジュールに基づいて時刻k+1の冷熱源運転順序および温熱源運転順序を決定する理由は、時刻k+1が属する運転時間帯の熱源運転の精度を上げるためである。
【0080】
また、熱源運転支援システム3のPC31は、ステップS2で演算した複合熱源システム1の最適運転スケジュールに基づいて、次の時刻k+1のコジェネレーション群11のガスエンジン発電機111の運転台数を決定する(図3ステップS5)。このとき、PC31は、時刻k+1が属する運転時間帯全体の最適運転スケジュールに基づいて時刻k+1のコジェネ運転台数を決定する。
【0081】
時刻k+1が属する運転時間帯全体の最適運転スケジュールに基づいて時刻k+1のコジェネ運転台数を決定する理由は、時刻k+1が属する運転時間帯のコジェネレーション群11の運転の精度を上げるためである。
【0082】
次に、熱源運転支援システム3の出力に基づいて、蓄熱コントローラ7は蓄熱槽群15のスクリュー冷凍機151を制御し、冷熱源台数制御コントローラ5は冷熱源を制御し、温熱源台数制御コントローラ6は温熱源を制御し、コジェネシステムコントローラ20はコジェネレーション群11を制御する(図3ステップS6)。
【0083】
すなわち、蓄熱コントローラ7は、熱源運転支援システム3からUIC4を通じて受け取った放熱分負荷の値に基づいて、夜間(22時から翌日の8時)に蓄熱槽群15のスクリュー冷凍機151が放熱分負荷を夜間蓄熱するようにスクリュー冷凍機151を制御する。
【0084】
冷熱源台数制御コントローラ5は、熱源運転支援システム3からUIC4を通じて指定された冷熱源運転順序に従って、この冷熱源運転順序で指定された冷熱源が時刻k+1までに定常運転状態になるように冷熱源を制御する。
【0085】
温熱源台数制御コントローラ6は、熱源運転支援システム3から指定された温熱源運転順序に従って、この温熱源運転順序で指定された温熱源が時刻k+1までに定常運転状態になるように温熱源を制御する。
【0086】
コジェネシステムコントローラ20は、熱源運転支援システム3からUIC4を通じて指定されたコジェネ運転台数に従って、指定された台数のガスエンジン発電機111が時刻k+1までに定常運転状態になるようにコジェネレーション群11を制御する。
【0087】
次に、監視装置8は、時刻k+1における外気温度および電力量実測負荷の各収集データを計測し、PC31は、UIC4から中央監視システム2を通じて時刻k+1の冷水熱量実測負荷、温水熱量実測負荷、蒸気量実測負荷、機器運転・停止状態および蓄熱量の各収集データを計測する(図3ステップS7)。これらの収集データは、時刻k+1における負荷予測演算および最適運転スケジュール演算で使用される。最適運転スケジュール演算では、式(3)の機器運転・停止状態の実測値yj-1|k 、式(6)の蓄熱量実測値チルダrj-1|k 、式(7)の蓄熱量実測値ハットrj-1|k (チルダrj-1|k =ハットrj-1|k )に収集データが使用される。
【0088】
また、熱源運転支援システム3のPC31は、自装置および監視装置8で収集された電力量実測負荷、冷水熱量実測負荷、温水熱量実測負荷および蒸気量実測負荷を、各系統別に負荷予測演算結果/実績確認画面202および最適運転演算結果/実績確認画面204に表示する。図6、図9は冷水熱量について表示している例である。なお、オペレータは、PC31に指示して、任意の過去の実測負荷を折線グラフによって負荷予測演算結果/実績確認画面202上に表示させることができる。図6の例では、2002年4月3日の実測負荷が表示されている。
【0089】
次に、PC31は、内部の時刻をサンプリング時間間隔Δtだけ進め(図3ステップS8)、ステップS1に戻って時刻k+1の負荷予測演算を行う。以上のようにして、図3のステップS1〜S7の処理が、サンプリング時間間隔Δtごとに繰り返し実行される。
【0090】
以上のようにして、本実施の形態では、機器の運転・停止状態を表す整数変数を150個前後に減らすことで、混合整数線型計画法による最適運転スケジュール演算の実用化を達成した。
【0091】
なお、本実施の形態では、システムの運用費を目的関数として、最小コストとなるように最適運転スケジュール演算を行っているが、これに限るものではなく、省エネルギー性を高めるため、一次エネルギー量(電力会社から供給される電力、ガス会社から供給される都市ガスF、および水道会社から供給される水)を目的関数として、最小一次エネルギー量となるように最適運転スケジュール演算を行ってもよい。また、環境保全性を高めるため、CO2 の排出量を目的関数として、最小CO2 排出量となるように最適運転スケジュール演算を行ってもよい。また、制御性を高めるため、制御量偏差と操作量の2乗和を目的関数として、この2乗和が最小となるように最適運転スケジュール演算を行ってもよい。目的関数の切り換えは、熱源運転支援システム3のオペレータが適宜行う。
【0092】
また、本実施の形態では、運転時間帯を夜間、ピークカット前、ピークカット中、ピークカット後の4つにしているが、これに限るものではなく、その他の運転時間帯で1日を分けてもよい。
さらに、本実施の形態では、サンプリング時間間隔Δtを30分としているが、これに限るものではなく、その他のサンプリング時間間隔Δtで処理を行ってもよい。
【0093】
前述のように、本実施の形態の熱源運転支援システム3は、コンピュータによって実現することができる。このようなコンピュータにおいて、本発明の熱源運転支援制御方法を実現させるための熱源運転支援制御プログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体に記録された状態で提供される。この記録媒体を読取装置に挿入すると、記録媒体に書き込まれたプログラムが読み取られ、コンピュータに転送される。そして、CPUは、読み込んだプログラムを記憶装置に書き込む。しかる後に、CPUは、図3で説明した前述の処理を実行する。
【0094】
【発明の効果】
本発明によれば、熱源システムを構成する各機器の運転・停止状態を表す変数の一部を予め連続変数に設定するようにしたので、目的関数を最小にする混合整数線型計画法により熱源システムの最適運転スケジュールを演算する際の機器の運転・停止状態を表す整数変数の個数を減らすことができ、合理的な計算時間で最適運転スケジュールを演算することができる。その結果、数理計画法による熱源システムの最適運転スケジュール演算の実用化を達成することができ、経済性だけでなく、省エネルギー性や環境保全性、制御性といった多様な要求に対応可能な最適運転スケジュールを決定することができる。
【0095】
また、目的関数を切り換える目的関数切換手順を備えることにより、システムの運用費を目的関数として、最小コストとなるように最適運転スケジュールを演算したり、一次エネルギー量を目的関数として、最小一次エネルギー量となるように最適運転スケジュールを演算したり、CO2 の排出量を目的関数として、最小CO2 排出量となるように最適運転スケジュールを演算したり、制御量偏差と操作量の2乗和を目的関数として、2乗和が最小となるように最適運転スケジュールを演算したりといったように、最小コスト、最小一次エネルギー量、最小CO2 排出量、最小制御量偏差などの目的に応じて目的関数を適宜切り換えることができ、目的に応じた熱源システムの運転の最適化を実現することができる。たとえば、1期工事、2期工事等それぞれに計画されている長期間にわたるビル建設計画においては、初期計画時のエネルギー利用や排熱の利用状態等は、計画と異なってしまうことが多い。よって、運用コスト最初の最適運転スケジュールは、必ずしも最小CO2 排出量や省エネルギーにつながらないことがある。このため、目的関数を適宜切り換えることで、建設計画段階に対応した運転を行うことができる。
【0096】
また、最適運転スケジュールを決定する際の各機器の運転制約条件を設定する運転制約条件設定手順を備えることにより、蓄熱槽の蓄熱量、機器情報、強制的に運転させる機器を指定する強制運転条件、冷熱源運転モード情報、温熱源運転モード情報、運転の優先順位を指定する運転順序設定情報、蓄熱槽の優先順位を指定する蓄熱槽優先切換情報などの運転制約条件を自動または手動で設定して、最適運転スケジュール演算に反映にさせることができる。
【0097】
また、熱源システムの各熱源機器の運転優先順位を最適運転スケジュールで決定した運転時間が長い順に高くして、熱源機器の運転順序を決定する熱源運転順序決定手順を備えることにより、熱源機器のコントローラとの実用的な機能分担を考慮した運転制御を行うことができる。
【0098】
また、1日を複数の運転時間帯に分け、複数の運転時間帯のうち運転順序の決定対象時刻を含む運転時間帯の最適運転スケジュールに基づいて、決定対象時刻の運転順序を決定するようにしたことにより、運転順序の決定対象時刻を含む運転時間帯の熱源運転の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態となる熱源運転支援制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】 本発明の実施の形態における複合熱源システムの構成を示すブロック図である。
【図3】 本発明の実施の形態の熱源運転支援制御システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】 本発明の実施の形態の熱源運転支援制御システムにおけるデータの流れを示す図である。
【図5】 本発明の実施の形態の熱源運転支援制御システムにおける負荷パターン設定画面を示す図である。
【図6】 本発明の実施の形態の熱源運転支援制御システムにおける負荷予測演算結果/実績確認画面を示す図である。
【図7】 本発明の実施の形態の複合熱源システムを構成する各種機器の性能特性の1例を示す図である。
【図8】 本発明の実施の形態の熱源運転支援制御システムにおけるエネルギー契約単価入力画面を示す図である。
【図9】 本発明の実施の形態の熱源運転支援制御システムにおける最適運転演算結果/実績確認画面を示す図である。
【符号の説明】
1…複合熱源システム、2…中央監視システム、3…熱源運転支援システム、4…設備統合コントローラ、5…冷熱源台数制御コントローラ、6…温熱源台数制御コントローラ、7…蓄熱コントローラ、8…監視装置、9…気象データ転送PC、10…ネットワーク、11…コジェネレーション群、12…ボイラ群、13…冷凍機群、14…温水ポンプ群、15…蓄熱槽群、20…コジェネシステムコントローラ。
Claims (15)
- 目的関数を最小にする混合整数線型計画法により、蓄熱槽を含む熱源システムの最適運転スケジュールを決定する熱源運転支援制御方法において、
前記熱源システムを構成する各機器の運転・停止状態を表す変数のうち、所定のサンプリング時刻の変数については整数変数とし、前記所定のサンプリング時刻を除いたサンプリング時刻の変数については連続変数として設定する変数設定手順と、
前記熱源システムの負荷を予測する負荷予測演算手順と、
この負荷予測演算手順で予測した負荷予測値と前記目的関数と前記運転・停止状態を表す変数とに基づいて、前記熱源システムの最適運転スケジュールを決定する最適運転スケジュール演算手順とを備えたことを特徴とする熱源運転支援制御方法。 - 請求項1記載の熱源運転支援制御方法において、
前記目的関数を切り換える目的関数切換手順を備えたことを特徴とする熱源運転支援制御方法。 - 請求項1記載の熱源運転支援制御方法において、
前記最適運転スケジュールを決定する際の各機器の運転制約条件を設定する運転制約条件設定手順を備えたことを特徴とする熱源運転支援制御方法。 - 請求項1記載の熱源運転支援制御方法において、
前記熱源システムの各熱源機器の運転優先順位を前記最適運転スケジュールで決定した運転時間が長い順に高くして、前記熱源機器の運転順序を決定する熱源運転順序決定手順を備えたことを特徴とする熱源運転支援制御方法。 - 請求項4記載の熱源運転支援制御方法において、
前記熱源運転順序決定手順は、1日を複数の運転時間帯に分け、複数の運転時間帯のうち前記運転順序の決定対象時刻を含む運転時間帯の最適運転スケジュールに基づいて、前記決定対象時刻の運転順序を決定することを特徴とする熱源運転支援制御方法。 - 目的関数を最小にする混合整数線型計画法により、蓄熱槽を含む熱源システムの最適運転スケジュールを決定する熱源運転支援制御システムにおいて、
前記熱源システムを構成する各機器の運転・停止状態を表す変数のうち、所定のサンプリング時刻の変数については整数変数とし、前記所定のサンプリング時刻を除いたサンプリング時刻の変数については連続変数として設定する変数設定手段と、
前記熱源システムの負荷を予測する負荷予測演算手段と、
この負荷予測演算手段で予測された負荷予測値と前記目的関数と前記運転・停止状態を表す変数とに基づいて、前記熱源システムの最適運転スケジュールを決定する最適運転スケジュール演算手段とを備えたことを特徴とする熱源運転支援制御システム。 - 請求項6記載の熱源運転支援制御システムにおいて、
前記目的関数を切り換える目的関数切換手段を備えたことを特徴とする熱源運転支援制御システム。 - 請求項6記載の熱源運転支援制御システムにおいて、
前記最適運転スケジュールを決定する際の各機器の運転制約条件を設定する運転制約条件設定手段を備えたことを特徴とする熱源運転支援制御システム。 - 請求項6記載の熱源運転支援制御方法において、
前記熱源システムの各熱源機器の運転優先順位を前記最適運転スケジュールで決定した運転時間が長い順に高くして、前記熱源機器の運転順序を決定する熱源運転順序決定手段を備えたことを特徴とする熱源運転支援制御システム。 - 請求項9記載の熱源運転支援制御システムにおいて、
前記熱源運転順序決定手段は、1日を複数の運転時間帯に分け、複数の運転時間帯のうち前記運転順序の決定対象時刻を含む運転時間帯の最適運転スケジュールに基づいて、前記決定対象時刻の運転順序を決定することを特徴とする熱源運転支援制御システム。 - 目的関数を最小にする混合整数線型計画法により、蓄熱槽を含む熱源システムの最適運転スケジュールをコンピュータに決定させる熱源運転支援制御プログラムにおいて、
前記熱源システムを構成する各機器の運転・停止状態を表す変数のうち、所定のサンプリング時刻の変数については整数変数とし、前記所定のサンプリング時刻を除いたサンプリング時刻の変数については連続変数として設定する変数設定手順と、
前記熱源システムの負荷を予測する負荷予測演算手順と、
この負荷予測演算手順で予測した負荷予測値と前記目的関数と前記運転・停止状態を表す変数とに基づいて、前記熱源システムの最適運転スケジュールを決定する最適運転スケジュール演算手順とをコンピュータに実行させることを特徴とする熱源運転支援制御プログラム。 - 請求項11記載の熱源運転支援制御プログラムにおいて、前記目的関数を切り換える目的関数切換手順をコンピュータに実行させることを特徴とする熱源運転支援制御プログラム。
- 請求項11記載の熱源運転支援制御プログラムにおいて、前記最適運転スケジュールを決定する際の各機器の運転制約条件を設定する運転制約条件設定手順をコンピュータに実行させることを特徴とする熱源運転支援制御プログラム。
- 請求項11記載の熱源運転支援制御プログラムにおいて、前記熱源システムの各熱源機器の運転優先順位を前記最適運転スケジュールで決定した運転時間が長い順に高くして、前記熱源機器の運転順序を決定する熱源運転順序決定手順をコンピュータに実行させることを特徴とする熱源運転支援制御プログラム。
- 請求項14記載の熱源運転支援制御プログラムにおいて、前記熱源運転順序決定手順は、1日を複数の運転時間帯に分け、複数の運転時間帯のうち前記運転順序の決定対象時刻を含む運転時間帯の最適運転スケジュールに基づいて、前記決定対象時刻の運転順序を決定することを特徴とする熱源運転支援制御プログラム。
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