JP4346920B2 - 小型滑走艇 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水流を後方に噴出してその反動で水上を航行する小型滑走艇( Personal Watercraft(パーソナルウォータークラフト); PWCとも呼ばれる) に関し、特に船体内に配置される電装品の接続カプラーの配置構造に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
小型滑走艇、例えば、所謂ジェット推進型の小型滑走艇は、レジャー用,スポーツ用としてあるいはレスキュー用として、近年多用されている。この小型滑走艇では、一般に艇の底面に設けられた吸水口から吸い込んだ水を、ウォータージェットポンプで加圧・加速して後方へ噴射することによって船体を推進させる。そして、このジェット推進型の小型滑走艇の場合、前記ウォータージェットポンプの噴射口の後方に配置したステアリングノズルを、操舵ハンドルを左右に操作することによって左右に揺動させて、後方への水の噴射方向を左右に変更させて、艇を右側あるいは左側に操舵する。
【0003】
ところで、このような小型滑走艇では、ハルとデッキに囲まれた船体内に形成されたエンジンルーム内には、エンジンおよび必要な電装品が配置されている。このエンジンルーム内では、底部に溜まっている水が、エンジンとプロペラシャフトとを連結するカップリングの回転によって、周囲に飛散するような状態になる場合もある。
このため、前記電装品および通常該電装品に一体に設けられている接続カプラーは、いずれも防水仕様が施される(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】
特開2003-28038号公報。
【0005】
そして、前記接続カプラーを含む電装品は、さらに防水仕様の電装ボックス内に収納されている。
【0006】
従って、電装品の点検あるいは保守、又は交換作業等をおこなうときには、まず電装ボックス自体を開け、続いてその中の電装品あるいは接続カプラー部分を点検あるいは保守等する必要がある。
【0007】
しかも、一方において、電装ボックスが防水仕様で内部が密閉されていることから、該電装ボックス内に温度変化が生じると、結露によって内部に水滴が生じるような場合には、防水仕様であると逆に電装ボックス内に水を生成するような場合もある。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みておこなわれものであって、簡単な構成によって、電装品特にその接続カプラーの実質的防水性能を高めるよう構成した小型滑走艇を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、以下のような構成からなる小型滑走艇によって解決することができる。即ち、
前記目的を達成すべく、本第1の発明にかかる小型滑走艇は、ハルとデッキで囲まれた船体内に推進用エンジンを搭載するとともに、該船体内に電装品を内装した小型滑走艇において、
前記電装品の防滴仕様接続カプラーを船体内に露呈して配置するとともに、該接続カプラーの接続面が下方を向くように配置したことを特徴とする。
【0010】
しかして、このように構成された小型滑走艇によれば、接続カプラーの接続面が下方を向いているため、該接続カプラーの接続面に水滴が付着し難くなり、仮に僅かの水滴等が付着したとしても、水滴自体の自重によって下方に落下して接続カプラーの接続部分への侵入を防ぐことができる。また、接続カプラーが、防水仕様より防水性能が低い防滴仕様であり、外気側と通気性を具備する船体内に露呈しているため、温度変化によって、接続カプラー部分に結露が生じ難く、且つ仮に結露が生じたとしても接続カプラーの接続部分に影響を与えるようなことはない。
【0011】
また、前記目的を達成すべく、本第2の発明にかかる小型滑走艇は、ハルとデッキで囲まれた船体内に推進用エンジンを搭載するとともに、該船体内に電装品を内装した小型滑走艇において、
前記電装品の防滴仕様接続カプラーが、ブラケット部を介して、該ブラケット部と船体内壁面との間に隙間が形成されるような状態で、該船体に固定されるとともに、該防滴仕様接続カプラーをこの隙間にエンジン側から見て該ブラケット部の裏側に配置したことを特徴とする。
【0012】
しかして、このように構成された小型滑走艇によれば、航行中にエンジン側から水滴が接続カプラー部分に向かって飛散したとしても、水滴はブラケット部で邪魔され、接続カプラーにかかり難くなる。従って、防水仕様でなく、防滴仕様の接続カプラーを船体内に露呈した状態で配置することが可能となり、この結果、接続部分が極く小さな隙間によって外気側(外側)と連通し、温度変化による結露等の影響を受けることはない。また、前記ブラケット部(電装品固定部)は、船体の一部を利用したものであっても、あるいは別部材となったブラケット部材(電装品固定部材)であってもよい。
【0013】
また、前記小型滑走艇において、前記船体が非導電性物質によって形成されていると、電装品又はその取り付け用のブラケット部(金属製のブラケット)あるいはボルト等が電触によって腐食することが無い点でも優れた構成となる。
【0014】
また、前記小型滑走艇において、前記防滴仕様接続カプラーが電装品と一体になっていてもよい。勿論、電装品と接続カプラーが別体であってもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態にかかる小型滑走艇について、図面を参照しながら、具体的に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施形態にかかる小型滑走艇の一部切欠いて内部の構造を示す全体側面図、図2は図1に示す小型滑走艇の全体平面図、図3は図1に示す小型滑走艇のエンジンルーム内におけるエンジンおよび補機等と電装品等との配置状態を示す部分平面図、図4は船体の長手方向後方から見た吸気ボックスを省略した状態での電装品の配置状態を示す図3のIV−IV矢視図、図5は電装品とその接続カプラーの具体的配置状態を示す図4のV−V矢視図である。
【0017】
図1,図2において、Aは船体で、この船体Aは、ハルHとその上方を覆うデッキDから構成され、これらハルHとデッキDとを全周で接続する接続ラインはガンネルラインGと呼ばれ、この実施例では、このガンネルラインGは、この小型滑走艇の喫水線Lより上方に位置している。
【0018】
そして、前記デッキDの中央よりやや後部には、図2に図示するように、船体Aの上面に長手方向に延びる平面視において略長方形の開口部16が形成され、図1,図2に図示するように、この開口部16上方に騎乗用のシートSが配置されている。
【0019】
また、エンジンEは、前記シートS下方のハルHとデッキDに囲まれた横断面形状が「凸」状の空間(エンジンルームともいう)20内に配置される。
この実施形態では、エンジンEは、多気筒(この実施例では4気筒)の4サイクル式のエンジンEで、図1に図示するように、クランク軸26が船体Aの長手方向に沿うような向きで搭載されており、このクランク軸26の出力端は、カップリング30、プロペラ軸27を介して、インペラ21が取着されているウォータージェットポンプPのポンプ軸21S側に、一体的に回転可能に連結されている。そして、このインペラ21は、その外周方が、ポンプケーシング21Cで覆われ、小型滑走艇の底面に設けられた吸水口17から取り入れた水を吸水通路28を介して取り込んで、ウォータージェットポンプPで加圧・加速して、通水断面積が後方にゆくに従って小さくなったポンプノズル(噴出部)21Rを通って、後端の噴射口21Kから吐出して、推進力を得るよう構成されている。
【0020】
また、図1において、21VはウォータージェットポンプP内を通過する水を整流するための静翼である。また、図1,図2おいて、24はバー型の操舵ハンドルで、このハンドル24を左右に操作することによって、図2に一点鎖線で示すケーブル25を介して、前記ポンプノズル21R後方のステアリングノズル18を左右に揺動させて、ウォータージェットポンプPの稼働時に、艇を所望の方向に操舵できるよう構成されている。なお、図2において、Ltは、エンジンEの回転数を操作するための、スロットルレバーである。
【0021】
また、図1に図示するように、前記ステアリングノズル18の上後方には、水平に配置された揺動軸19aを中心に下方に揺動可能に、ボウル形状のリバース用のデフレクター19が配置され、このデフレクター19をステアリングノズル18後方の下方位置へ揺動動作させることによって、ステアリングノズル18から後方に吐出される水を前方に転向させて、後進できるよう構成されている。
【0022】
また、図1,図2において、22は後部デッキで、この後部デッキ22には、開閉式のハッチカバー29が設けられ、ハッチカバー29の下方に小容量の収納ボックスが形成されている。また、図1あるいは図2において、23は前部ハッチカバーで、このハッチカバー23の下方には備品等を収納するボックス33が設けられている。
【0023】
ところで、本実施形態にかかる小型滑走艇の場合、電装品、具体的には、図5あるいは図4に図示するように、エンジン・コントロール・ユニット(ECU)1、スタータモータ稼働用リレー2、オルタネータ(発電機)用レギュレータ3、点火コイル4(図4参照)等が、船体A内に収納されている。
【0024】
そして、図5に図示するように、前記エンジン・コントロール・ユニット1、リレー2は、ブラケット部である共用のブラケット5Aに固着され、このように該ブラケット5Aに固着された状態において、エンジン・コントロール・ユニット1の接続カプラー1Aの接続面1aと、リレー2の接続カプラー1Bの接続面1bは、いずれも下方を向いて配置されている。
【0025】
また、図5に図示するように、前記レギュレータ3は、前記ブラケット5Aに隣接して設けられた別のブラケット部であるブラケット5Bに固着され、このように固着された状態において、レギュレータ3の接続カプラー1Cの接続面1cは、下方を向いて配置されている。
【0026】
そして、前記ブラケット5Aおよびブラケット5Bは、船体Aを横断面した図4に図示するように、船体AのデッキDの右舷側の上方への膨出部32の上端部に、それぞれのブラケット5A,5Bの上端部が固着されている。これらブラケット5A、5Bと前記デッキDの膨出部32の内壁面32aとの間には、隙間(空間)31が形成されるよう固着されている。
そして、前記エンジン・コントロール・ユニット1、リレー2は、前記ブラケット5AのエンジンE側(図4においてブラケット5Aの左側)から見て裏側に、つまり前記内壁面32aとブラケット5Aとの間の隙間31に配置される。
また、前記レギュレータ3も、前記ブラケット5BのエンジンE側(図4においてブラケット5Bの左側)から見て裏側に、つまり前記内壁面32aとブラケット5Bとの間の隙間31に配置される。
【0027】
また、前記ブラケット5Aの、船体Aの平面視における位置は、図3に符号50Aで示す如く、エンジンEの右舷側のやや後方の位置に配置される。また、前記ブラケット5Bの、船体Aの平面視における位置は、図3に符号50Bで示す如く、エンジンEの右舷側のやや後方の位置で、前記ブラケット5Aの後方に隣接した位置に配置される。なお、図3において矢印「F」は、艇の前方を示す。
【0028】
一方、前記点火コイル4は、図4に図示するように、船体の左舷側でブラケット6に固着され、このように固着された状態において、点火コイル4の接続カプラー1Dの接続面1dは、下方を向いて配置されている。
【0029】
そして、前記ブラケット6は、図4に図示するように、船体AのデッキDの左舷側の上方への膨出部32の上端部に、前記ブラケット6の上端部が固着されている。そして、このように船体A側に取着されたブラケット6のエンジンE側の面に、前記点火コイル4が配置されている。
また、前記ブラケット6の、船体Aの平面視における位置は、図3に符号60Aで示す如く、エンジンEの左舷側の前部の位置に配置される。
従って、この点火コイル4の場合、図1に図示するように、前記位置60Aが、エンジンEとプロペラシャフト27とを連結するカップリング30から船体前方へ距離的に離れていること、およびこの点火コイル4とカップリング30との間にエンジンE本体および排気マニフォルド132(図3参照)が存在するため、カップリング30から飛散する水がかかることが少ないため、前述のように、ブラケット6のエンジンE側の面に取着されている。しかし、水の飛散の可能性がある場合には、ブラケット6のエンジンE側のから見て裏側の面と船体との間の空間部に配置してもよい。
【0030】
ところで、前記電装品を配置しているエンジンルーム20内には、図3に図示されるように、エンジンEの他に種々の補機等が配置されている。つまり、図3に図示するように、エンジンEの左舷側に位置する図示しない排気ポートには排気マニホールド132が接続され、この排気マニフォルド132の排気ガス流の後流(下流)側には、水冷式のマフラー120,121が2つ艇の左右に離間して配置されている。
また、エンジンEの右舷側には、吸気マニフォルド133が配置され、この吸気マニフォルド133へは、エンジンEの後方に隣接して配置されている吸気ボックス135からフレッシュエアが供給されるよう構成されている。また、これら吸気マニフォルド133と吸気ボックス135の間には、スロットルボディ136が配設されている。また、エンジンEの左舷後端部には、エンジンのクランクケース側から回収されたオイルを溜める、オイルタンク137が配置されている。このオイクタンク137内には図示しない冷却通路が形成され、オイルを冷却するよう構成されている。そして、前記吸気ボックス135の右舷後方部位には、バッテリー122が配置されている。そして、エンジンEの左舷前端部には、ブリーザボックス138が配置されている。このブリーザボックス138は、クランクケースに溜まったブローバイガスを気液分離して気体(ガス)のみエンジンE上方のシリンダヘッド139内へ送り、オイル(液体)はクランクケース側へ戻すように構成されている。
【0031】
しかして、このように構成された本実施例にかかる小型滑走艇の場合、船底に水が溜まり、前記カップリング30の回転によってこの水をエンジンルーム20内に飛散させるようなことがあったとしても、前記エンジン・コントロール・ユニット(ECU)1、スタータモータ稼働用リレー2、オルタネータ(発電機)用レギュレータ3は、ブラケット5A,5BのエンジンE側から見て裏側に取着されているため、飛散した水はこれらの電装品にかかることはない。
また、仮にかかるようなことがあったとしても、接続カプラー1A,1B,1Cの接続面が下側を向いているため、水は接続面から自重によって落下し、接続部分に侵入するようなことはない。
【0032】
また、点火コイル4の場合、ブラケット6のエンジンE側の面に取着されているが、この部分には、カップリング30側からの水の飛散がエンジンE本体および排気マニフォルド132等によって遮られるため、点火コイル4の接続カプラー1Dには水がかかることはない。また、前記接続カプラー1Dも接続面1dが下向きに配置されているため、水滴等が接続カプラー1Dに付着したとても、自重によって水滴は下に落下して、接続カプラー1Dの接続部分に水が侵入することを防ぐことが出来る。
【0033】
また、前記接続カプラー1A〜1Dはいずれも防滴仕様であるため、厳密な意味において外気が接続部分まで侵入し、また、エンジンルーム20内も、船外と通気しているため、温度変化が生じたとしても、接続カプラー内の接続部分において結露するようなこともない。
【0034】
ところで、前記実施例では、電装品として、前述のエンジン・コントロール・ユニット(ECU)1、スタータモータ稼働用リレー2、オルタネータ(発電機)用レギュレータ3、点火コイル4を例に挙げて説明したが、他の電装品、例えば、アクチュエータ用のリレー等の接続カプラーについても同様に構成することができ、且つ同様の作用効果を得ることができる。
【0035】
また、前述した実施例では、前記電装品は、ブラケット(船体とは別部材になったブラケット部材)を介して、デッキDに配置され、しかもこの実施例の場合には、小型滑走艇のデッキDおよびハルHが強化プラスチック(非導電性物質)で形成されているため、前記ブラケットがどのような金属で構成され、該ブラケットを船体に取着する止具(ボルト)がどのような金属であっても、これらのブラケット,止具と小型滑走艇の他の金属製の部分に電触が発生することはない。
【0036】
ところで、前述した実施形態では、ブラケット部として、船体Aとは別部材となったブラケット5A,5Bを用いているが、これに代えて、図6に図示するように、船体Aの一部、この実施形態では、デッキDの上端部を下方に湾曲した部分を、さらに下方に延設して、ブラケット部105を形成してもよい。かかる場合にも、図4に図示する実施形態の場合と同様の作用効果を奏する。なお、図6において、図4と同じ構成については同じ参照符号を付している。
【0037】
【発明の効果】
本発明にかかる小型滑走艇によれば、簡単な構成によって、電装品特にその接続カプラー部分の実質的防水性能を高めることが可能となる。しかも、温度変化に対しても、影響を受け難い接続カプラーを備えた小型滑走艇となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態にかかる小型滑走艇の一部切欠いて内部の構造を示す全体側面図である。
【図2】 図1に示す小型滑走艇の全体平面図である。
【図3】 図1に示す小型滑走艇のエンジンルーム内におけるエンジンおよび補機等と電装品等との配置状態を示す部分平面図である。
【図4】 船体の長手方向に直交する方向から見た電装品の配置状態を示す図3のIV−IV矢視図である。
【図5】 電装品とその接続カプラーの具体的配置状態を示す図4のV−V矢視図である。
【図6】 図4と別の実施形態にかかる船体の長手方向に直交する方向から見た図4と対応する図である。
【符号の説明】
E……エンジン
A……船体
D……デッキ
H……ハル
1……エンジン・コントロール・ユニット(電装品)
2……リレー(電装品)
3……レギュレータ(電装品)
4……点火コイル
1A〜1D……接続カプラー
1a〜1d……接続面
Claims (4)
- ハルとデッキで囲まれた船体内に推進用エンジンを搭載するとともに、該船体内に電装品を内装した小型滑走艇において、
前記電装品の防滴仕様接続カプラーが、電装品固定部を介して、該電装品固定部と船体内壁面との間に隙間が形成されるような状態で、該船体内壁面に固定されるとともに、該防滴仕様接続カプラーをこの隙間にエンジン側から見て該電装品固定部の裏側に配置したことを特徴とする小型滑走艇。 - 前記電装品の防滴仕様接続カプラーを船体内に露呈して配置するとともに、該接続カプラーの接続面が下方を向くように配置したことを特徴とする請求項1記載の小型滑走艇。
- 前記船体が非導電性物質によって形成されていることを特徴とする請求項2記載の小型滑走艇。
- 前記防滴仕様接続カプラーが電装品と一体になっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1の項に記載の小型滑走艇。
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