JP4346134B2 - 電磁加熱用陶磁器又はガラス食器及びその製造法 - Google Patents

電磁加熱用陶磁器又はガラス食器及びその製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁加熱用の陶磁器又はガラス食器の電磁誘導加熱対応の調理容器及びその製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電磁誘導加熱調理器は、火を使わない安全性に優れた調理器として高層ビルや老人施設などで多く使用されている。この調理器は、誘導コイルから発生する磁力線によって電磁誘導加熱対応の内釜や鍋などの調理容器の内部に渦電流を生じさせて自己発熱させるようになっている。
【0003】
このような電磁調理器で使用される調理容器には、鉄、ステンレスなどの磁性体金属材料または磁性体金属材料と非磁性体金属材料のクラッド材、または非磁性体である陶磁器(土鍋等)などは、容器外側または内部に鉄板などの磁性体金属材料が取り付けられたものや容器外側に電磁誘導により発熱する鉄を溶射処理したものなどが使用されていた。
【0004】
しかし、この中で非磁性体である陶磁器(土鍋等)やガラス食器などに溶射処理を施した調理容器は、前処理であるブラストによる基材の割れや溶射処理による熱衝撃による割れなどで施工が難しくほとんど普及していないのが現状である。特に鉄材料で溶射処理を施した容器などは、適切な発熱量を得るのに薄い皮膜の厚み(100μm程度)では発熱しないために、溶射膜厚が700μm以上もの厚い皮膜が必要で製品が重くなって取扱が悪く、非常に高価なものとなり、また性能上塩分や漏れに対する耐食性や皮膜の剥離などの耐久性に問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の電磁加熱用陶磁器やガラス食器における上記の問題点を解決し、軽量で熱効率及び耐食性に優れ、調理に適した実用的な電磁加熱用陶磁器又はガラス食器又はその製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため本発明は
非磁性体セラミック陶磁器又はガラス食器の容器本体の外面に発熱体として亜鉛、アルミニウム、マグネシウムなどの軽金属又はその合金を溶射法により薄くコーティング層を形成することを特徴とする電磁加熱用陶磁器又はガラス食器
上記容器本体と上記コーティング層との密着性を高めるためにニッケルアルミ合金などのニッケルを主成分とした合金をアンダーコート層とすることを特徴とする上記第1発明記載の電磁加熱用陶磁器又はガラス食器
上記容器本体の外面に前処理のブラスト処理を行うことなく酸化物セラミックのプラズマ溶射により粗面層を形成した後に上記第1又は第2発明記載のコーティング層又はアンダーコート層を形成することを特徴とする電磁加熱用陶磁器又はガラス食器
上記容器本体の外面に前処理のブラスト処理を行うことなく無機系接着剤などで粗面層を形成した後に上記第1又は第2発明記載のコーティング層又はアンダーコーティング層を形成することを特徴とする電磁加熱用陶磁器又はガラス食器
上記第1発明記載の電磁加熱用陶磁器又はガラス食器の製造方法
上記第2発明記載の電磁加熱用陶磁器又はガラス食器の製造方法
上記第3発明記載の電磁加熱用陶磁器又はガラス食器の製造方法
上記第4発明記載の電磁加熱用陶磁器又はガラス食器の製造方法
によって構成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
製造工程は、被施工容器の脱脂、マスキング、ブラスト、溶射施工、仕上げの順からなる。その中でも前処理のブラスト処理が溶射皮膜の耐久性(皮膜の剥離や浮き上がりなど)を決める最も重要な要因である。陶磁器(陶器又は磁器)は、粗いブラスト材を使用すると、基材が硬くてもろいため、基材がくずれ、きれいなブラスト面に仕上がらない。また、ガラス食器では同様に硬いためにブラストによって基材に割れが発生する。
【0008】
そこで、ブラスト処理を行うときは、ブラスト材としてアランダム#60より細かい粒度(#80、#100、#120)のものを使用し、ブラスト処理を行わないときは、陶器(磁器を含む)やガラス食器に直接酸化物セラミックをプラズマ溶射して約50〜100μmの粗面層4を形成したり、無機系接着剤を直接塗布して粗面層4を形成する。この前処理を施した上に発熱体(コーティング層3)の溶射皮膜を形成する。発熱体の皮膜の厚みは、約50〜150μmが望ましい。この発熱体の皮膜の膜厚が約50〜150μmである理由は、皮膜の厚みが50μmより少ないと適切な発熱量が得られず、150μm以上であると皮膜の剥離が発生しやすくなるからである。従って、発熱体の皮膜の厚みは、50μm以上150μm以内が最も良好な厚みである。これらの溶射皮膜の積層仕様は、1層でも2層以上でも良い。また、これらの溶射施工後に耐久性や商品性を高めるために溶射施工部分に耐熱塗料などを塗布しても良い。
【0009】
使用するアンダーコート層2の皮膜の厚みは、約50〜100μmが望ましい。アンダーコート層2は、陶磁器やガラス食器の容器本体1の基材とトップコート(コーティング層3)の発熱体で使用する亜鉛、アルミニウム及びその合金との熱膨張率の違いを緩和して密着性を高めるために行うコーティングである。皮膜の厚みについては上記発熱体の皮膜の厚みと同様の理由である。
【0010】
又使用する溶射は、プラズマ溶射、アーク溶射、ガス溶射などの方法が適用される。電磁誘導加熱で使用する発熱体の溶射材料は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウムなどの軽金属またはその合金などを用いる。アンダーコート層を形成する溶射材料は、ニッケルアルミ、ニッケルクロムなどのニッケルを主成分とする合金を用いる。また、粗面層4を形成するのに用いる溶射材料は、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、アルミナを主成分とする複合材料などの酸化物セラミックを用いる。これらの材料形態は、粉末、ワイヤーなどである。
【0011】
粗面層4を形成するのに用いる無機系接着剤は、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナを主成分とするセラミックなどを用いる。これらの接着剤は、すべて室温硬化型であるので、陶磁器やガラス食器に割れの原因となる熱負荷を与えることなく、粗面層4の施工ができる。この接着剤の最高使用温度は、1100℃以上である。陶磁器(土鍋等)やガラス食器に対する密着性、耐食性及び耐熱性が非常に優れている。
【0012】
使用する容器本体の基材は、陶磁器の場合、土鍋用セラミック(コーディライト系、ペタライト系、ユークリプタイト系などのセラミック)で、耐熱ガラスの場合、耐熱ガラス(岩城ガラス、日本電気硝子(株)、HARIO社製などの耐熱ガラス)を用いる。
【0013】
【実施例】
実施例1
各種溶射皮膜の電流値の測定結果を表1に示す。試験は、125mm×125mm×3のガラス板上にブラスト処理(アランダム#60、空気圧3kg/cm)を行った後、皮膜の膜厚が50μm、100μm、150μm、200μmになるようにガス溶射にて溶射皮膜を作製した。この作製したガラス板を電磁誘導加熱調理器(National KZ−K220A 200V:2.0kw)上に下向き(溶射面が下になるように)に置き、各種溶射皮膜の電流特性を測定した。電流値の測定には、HIOKI 3127 HITESTERを用いた。また、AlとFeの溶射材料については、同様にセラミック板(125mm×125mm×4)上にも溶射皮膜を作製して溶射皮膜の発熱特性を確認した。この試験により、溶射皮膜の発熱特性を評価する。
【0014】
【表1】
Figure 0004346134
【0015】
表1の測定結果より、ガラス板上の亜鉛、アルミニウム及びその合金の溶射皮膜は、膜厚100μmぐらいで良好な電流値を示したが、その他の溶射皮膜(Ni5%Al、Mo、Fe)は、銅材料の4Aも含めてほとんど反応がなく発熱しなかった。また、セラミック板についてもアルミニウムの溶射皮膜は、同様に良好な電流値を示したが、鉄の溶射被膜は、膜厚が100μmぐらいでは、電流が発生せず、200μmで剥離した。このことより、亜鉛、アルミニウム及びその合金の溶射被膜は、非常に薄い皮膜で高い出力電流を発生することが分かった。また、この被膜の厚みは200μmぐらい厚くなると、剥離が発生しやすくなったので、膜厚100μmぐらいが適当な厚みと考えられる。
【0016】
実施例2
上記結果より、市販のガラス製ポット(HARIO製)の外側の底(φ135mm)にアランダム#60でブラストした後、約100μmのアルミ溶射皮膜をガス溶射で作製した。このガラスポットに500ml、800mlの水を入れ、お湯の沸く時間を測定した。電磁調理器は、電磁誘導加熱調理器(National KZ−K220A 200V:2.0kw)を用いた。その結果を表2に示す。比較として家庭用のガスコンロの場合と電熱器600Wの場合をステンレス製ケットル(2.3リットル)を用いて行った。
【0017】
【表2】
Figure 0004346134
【0018】
表2の結果より、アルミ溶射皮膜を施したガラスポットは、500mlの水量で比較すると、家庭用ガスコンロよりも早く沸くことが分かった。この時のガラスポットの出力電流は、7Aであった。この後、このガラスポットを使用して50回ほどお湯を沸かしたが皮膜が剥離したり、腐食することもなく、良好であった。このことより、電磁調理器用ガラスポットは、実用的に使用可能であることが分かった。
【0019】
【発明の効果】
以上述べてきたように本発明によれは、非磁性体である陶磁器(土鍋等)やガラス食器の容器本体の外面に亜鉛、アルミニウム、マグネシウムなどの軽金属またはその合金材料を溶射して薄い皮膜として発熱体を形成することで、高い発熱量を発生することができるので、軽量で、熱効率及び耐食性に優れた調理に適した実用的な電磁加熱用陶磁器とガラス食器を提供することができる。また、本発明によれば、薄い溶射皮膜で実用可能であるため、容易に低コストで製造することができ、剥離に対しても強い、耐久性に優れた製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電磁加熱用調理器の1実施例の縦断面図である。
【符号の説明】
1 容器本体
2 アンダーコート層
3 コーティング層
4 粗面層

Claims (3)

  1. 非磁性体セラミック陶磁器又はガラス食器の容器本体の外面に、前処理のブラスト処理を行うことなくアルミナ、シリカ又はシリカ−アルミナを主成分とするセラミックの室温硬化型の無機系接着剤で粗面層を形成した後に、発熱体として亜鉛、アルミニウム又はマグネシウムの軽金属又はその合金を溶射法により膜厚50〜150μmのコーティング層を形成することを特徴とする電磁加熱用陶磁器又はガラス食器。
  2. 上記容器本体と上記コーティング層との密着性を高めるためにニッケルアルミ合金などのニッケルを主成分とした合金を、上記粗面層と上記コーティング層との間に設けられるアンダーコート層とすることを特徴とする請求項1記載の電磁加熱用陶磁器又はガラス食器。
  3. 非磁性体セラミック陶磁器又はガラス食器の容器本体の外面に、前処理のブラスト処理を行うことなくアルミナ、シリカ又はシリカ−アルミナを主成分とするセラミックの室温硬化型の無機系接着剤で粗面層を形成した後に、発熱体として亜鉛、アルミニウム又はマグネシウムの軽金属又はその合金を溶射法により膜厚50〜150μmのコーティング層を形成することを特徴とする電磁加熱用陶磁器又はガラス食器の製造方法。
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