上述の特許文献1の睡眠検出装置は、体動信号に基づいて就寝者の離床/在床判定や入眠/覚醒判定を行うものであるが、このような就寝者の睡眠状態を時系列データとして記憶することで、就寝者の健康管理を行うことが考えられる。具体的には、例えば就寝者が寝具に入床してから翌日に目覚めて離床するまでの間で、就寝者の入眠時間や離床時間、あるいは就寝者が覚醒状態であったか入眠状態であったかをデータとして記憶すると、その後にこのデータを観察し、一晩についての就寝者の睡眠状況を把握することができる。また、上記体動信号に基づいて就寝者の呼吸や心拍に伴う信号を抽出し、これらの信号を適宜記憶することで、就寝者の呼吸や心拍の挙動を観察して健康管理等に利用することも考えられる。
ところで、これらのデータを時々刻々と記憶していくと、記憶させる期間に対応してメモリ等の記憶容量を費やすことになる。このため、この睡眠検出装置を常時ONとして体動信号に基づくデータを常時記憶させていくと、就寝者が入床する前のデータや、就寝者が翌日に目覚めて離床してからのデータも記憶されることとなり、無駄に記憶容量を費やしてしまう。
一方、一晩についての就寝者のデータを無駄なく記憶するためには、就寝者が入床する際にスイッチ等をONしてデータの記憶を開始させ、翌日に就寝者が目覚めて離床する際にスイッチ等をOFFしてデータの記憶を終了させることが考えられる。しかしながらこの場合には、記憶されるデータ量は必要最小源となるものの、就寝者がスイッチを操作得するのに手間がかかるので、ユーザの負担が大きくなってしまう。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザーの手を煩わすことなく、就寝者の体動信号に基づく時系列データを無駄なく記憶することができる睡眠自動記憶装置を提供することである。
第1の発明の睡眠自動記憶装置は、就寝者の体動に伴う体動信号を検出する体動検知手段(20)と、上記体動信号に基づく時系列データを記憶する記憶手段(37)と、上記体動信号に基づいて就寝者が離床しているか在床しているかの判定を行う離床判定手段(34)と、上記離床判定手段(34)が在床と判定すると、記憶手段(37)によるデータの記憶を開始させる一方、記憶手段(37)によるデータの記憶中に上記離床判定手段(34)が離床と判定すると、その時点から所定時間が経過するまでの間に該離床判定手段(34)が離床と判定した時間を積算し、該時間の積算値が規定値以上となると上記記憶手段(37)によるデータの記憶を終了させる記憶制御手段(38)とを備えていることを特徴とするものである。
第1の発明では、体動検知手段(20)で検出された体動信号に基づき、離床判定手段(34)が就寝者の離床/在床判定を行う。具体的に、離床判定手段(34)は、寝具上に就寝者の微体動や粗体動が生起しており、体動信号の信号レベルが比較的大きくなると、就寝者が離床していると判定する一方、寝具上に就寝者の微体動や微体動が生起しておらず、体動信号の信号レベルも比較的小さくなると、就寝者が離床していると判定する。
ここで、例えば夜中に就寝者が寝具に入床した結果、離床判定手段(34)が「在床」と判定すると、記憶制御手段(38)は、記憶手段(37)による時系列データの記憶を開始させる。その結果、記憶手段(37)には、経過時間と共にこれらのデータが適宜記憶されていく。なお、記憶手段(37)に記憶される時系列データとしては、就寝者の入眠時刻や離床時刻、就寝者の就寝状態(覚醒状態又は入眠状態)、就寝者の体動に伴う体動信号、体動信号から抽出された呼吸や心拍に伴う信号のデータ等が挙げられる。
その後、例えば翌日の朝方に就寝者が寝具から離床すると、離床判定手段(34)は「離床」と判定する。ここで、仮に離床判定手段(34)が「離床」と判定した直後から記憶手段(37)によるデータの記憶を終了させてしまうと、実際には就寝者が未だに在床中であり、離床判定手段(34)の離床判定結果が誤判定であった場合、必要なデータが記憶手段(37)に記憶されないことになってしまう。
そこで、本発明の睡眠自動記憶装置では、上述のような記憶手段(37)によるデータの記憶中に、記憶制御手段(38)が、離床判定手段(34)で「離床」と判定された時点から所定時間(例えば15分))が経過するまでの間に、離床判定手段(34)の判定結果が本当に正しかったかどうかの判定を行う。具体的に、記憶制御手段(38)は、この判定時間において離床判定手段(34)で「離床」と判定された時間を積算する。そして、この時間の積算値(累積時間)が規定時間(例えば12分)以上であると、就寝者が寝具から確実に離床しているとみなすことができるので、この場合には、記憶制御手段(38)が記憶手段(37)によるデータの記憶を終了させる。一方、上記判定時間の間に、離床判定手段(34)で「離床」と判定された累積時間が規定時間未満の場合、離床判定手段(34)の判定結果が誤判定である可能性が高いので、この場合には、記憶制御手段(38)によるデータの記憶を引き続き継続させる。
第2の発明は、第1の発明の睡眠自動記憶装置において、上記記憶制御手段(38)は、上記記憶手段(37)によるデータの記憶開始から記憶終了までの1サイクルの終了時に、直前の1サイクルの間で記憶手段(37)に記憶されたデータを保存するか消去するかの判定を行うことを特徴とするものである。
第2の発明の記憶制御手段(38)は、記憶手段(37)によるデータ記憶の1サイクルの終了時に、これまでの1サイクルの間に記憶手段(37)に記憶したデータが不要であり、これらのデータを消去するべきなのか、あるいはこれらのデータが必要であり、そのまま残して保存すべきなのかを判断する。そして、これらのデータが不要な場合には、記憶制御手段(38)が、これらのデータを自動的に消去する。一方、これらのデータが必要な場合には、記憶制御手段(38)が、これらのデータをそのまま残して保存する。
第3の発明は、第1の発明の睡眠自動記憶装置において、記憶手段(37)によるデータの記憶時間が所定時間以上に亘って継続すると、上記記憶制御手段(38)が記憶手段(37)によるデータの記憶を強制的に終了させることを特徴とするものである。
第3の発明では、記憶手段(37)によるデータの記憶が継続して行われる際、このようなデータの記憶時間が、実際にはあり得ない就寝時間(例えば24時間)以上継続すると、記憶制御手段(38)が記憶手段(37)によるデータの記憶を強制的に終了させる。つまり、就寝者が離床しているにも拘わらず、何らかの要因によって記憶手段(37)による記憶終了条件が満たされない場合にも、記憶時間が所定時間以上となると、記憶制御手段(38)が記憶手段(37)によるデータの記憶を終了させる。
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか1の発明の睡眠自動記憶装置において、上記体動信号から就寝者の呼吸に伴う呼吸信号を抽出する呼吸抽出手段(32)と、上記体動信号から就寝者の心拍に伴う心拍信号を抽出する心拍抽出手段(33)とを備え、上記離床判定手段(34)は、上記体動信号、呼吸信号、及び心拍信号に対応する離床判定閾値をそれぞれ記憶すると共に、該体動信号、呼吸信号、及び心拍信号のうち2つ以上の信号レベルが、各々に対応する離床判定閾値以下になると、就寝者が離床していると判定することを特徴とするものである。
第4の発明は、離床判定手段(34)が、体動信号、呼吸信号、及び心拍信号に基づいて就寝者の在床/離床判定を行う。ところで、体動検知手段(20)で検出される体動信号には、就寝者の呼吸・心拍に由来する振動(微体動)の信号成分と、就寝者の寝返り時、入床時、離床時等に生起する振動(粗体動)の信号成分とが含まれることになる。上記呼吸抽出手段(32)は、これら複数の成分が重畳された体動信号から就寝者の呼吸に由来する成分を抽出した信号(呼吸信号)を得る。また、上記心拍抽出手段(33)は、上記体動信号から就寝者の心拍に由来する成分を抽出した信号(心拍信号)を得る。
一方、離床判定手段(34)には、就寝者の離床判定を行うための3つの離床判定閾値が記憶される。具体的に、離床判定手段(34)は、上記体動信号との比較対象となる離床判定閾値(以下、体動離床判定閾値と称す)と、上記呼吸信号との比較対象となる離床判定閾値(以下、呼吸離床判定閾値と称す)と、上記心拍信号との比較対象となる離床判定閾値(以下、心拍離床判定閾値と称す)とを記憶している。
離床判定手段(34)は、上記体動信号、呼吸信号、及び心拍信号と、それぞれに対応する離床判定閾値との大小比較を行うことで、就寝者が離床しているか、在床しているかの判定を行う。具体的に、例えば上記体動信号の信号レベルが体動離床判定閾値以下であり、かつ上記呼吸信号の信号レベルが呼吸離床判定閾値以下である場合には、就寝者からの体動(微体動及び粗体動を含む)、及び呼吸が生起していないとみなすことができるので、このような場合には、就寝者が寝具上におらず離床していると判断される。また、例えば上記体動信号の信号レベルが体動離床判定閾値以下であり、かつ上記心拍信号の信号レベルが心拍離床判定閾値以下である場合には、就寝者からの体動及び心拍が生起していないとみなすことができるので、このような場合にも就寝者が離床していると判定される。
以上のように、本発明では、上記体動信号、呼吸信号、及び心拍信号のうち、2つ以上の信号が各々の信号に対応する離床判定閾値以下になると就寝者が離床していると判定され、逆に言うと、2つ以上の信号が各々の信号に対応する離床判定閾値を上回る場合には、就寝者が在床していると判定される。
本発明では、離床判定手段(34)による離床/在床判定の結果に基づいて記憶手段(37)によるデータの記憶開始と、これらのデータの記憶終了とを自動的に行えるようにしている。このため、ユーザーがわざわざスイッチ等をON/OFFさせることなく、就寝者の体動信号に基づく時系列データを記憶手段(37)に適宜記憶させていくことができる。
また、本発明によれば、就寝者が在床中である期間にデータを記憶する一方、就寝者が離床中である期間にはデータを記憶しないようにしているので、記憶手段(37)に蓄積されるデータ量の増加を抑制でき、ひいては記憶手段(37)の記憶容量を低減することができる。
更に、本発明では、離床判定手段(34)で「在床」と判定されると、記憶手段(37)によるデータの記憶を開始させる一方、離床判定手段(34)で「離床」と判定されると、その後の所定時間内において、「離床」と判定される累積時間が規定時間以上である場合に、記憶手段(37)によるデータの記憶を終了させるようにしている。このため、本発明では、確実に就寝者が離床とみなされる場合以外には、記憶手段(37)によるデータの記憶が終了しない。つまり、実際には就寝者が在床中であるにも拘わらず、離床判定手段(34)が誤って一時的に「離床」と判定してしまったとしても、記憶手段(37)によるデータの記憶は即座に終了しないので、記憶手段(37)に引き続きデータを記憶することができる。したがって、記憶手段(37)で記憶すべきデータが欠落してしまうことを未然に回避することができ、この睡眠自動記憶装置の信頼性を向上できる。
特に、第2の発明では、1サイクルの間で記憶手段(37)に記録されたデータを保存するか消去するかの判定を行うようにしている。したがって、記憶手段(37)に不要なデータが蓄積されても、このデータを自動的に消去することができ、記憶手段(37)の記憶容量を有効に利用することができる。
更に、第3の発明では、記憶手段(37)による記憶時間が長時間継続すると、記憶手段(37)によるデータの記憶を強制的に終了させるようにしている。このため、何らかの要因によって記憶手段(37)の記憶終了条件が満たされない場合においても、長時間(例えば24時間)以上に亘ってデータが蓄積されることを未然に回避でき、記憶手段(37)の記憶容量を一層有効に利用することができる。
また、第4の発明では、体動信号、呼吸信号、及び心拍信号のうち、2つ以上の信号レベルが各離床判定閾値以下となると、就寝者が離床していると判定するようにしている。このため、仮に体動信号のみに基づいて離床/在床判定を行う場合、就寝者以外の震動源に起因して体動信号にノイズが重畳してしまうと、誤判定を招いてしまう可能性が高かったのに対し、本発明では、2つ以上の信号に基づき離床判定を行うようにしているので、このような誤判定を抑制することができる。したがって、離床判定手段(34)による離床判定精度を高めることができ、この睡眠自動記憶装置に不要なデータが記憶されてしまうのを抑制することができる。
更に、本発明では、上述のようなノイズが重畳しにくい呼吸信号又は心拍信号のいずれか一方、又は両方が各離床判定閾値以下にならないと離床と判定しないようにしている。つまり、本発明では、ノイズ等の影響を受けにくい呼吸信号又は心拍信号を離床/在床判定に用いているので、離床判定手段(34)による離床判定精度を更に高めることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態の睡眠自動記憶装置(10)は、就寝者から生起する体動の挙動を適宜記憶し、これらのデータを就寝者の健康管理に利用するためのものである。この睡眠自動記憶装置(10)は、睡眠センサ(20)と回路ユニット(30)とを備えている。
図1及び図2に示すように、睡眠センサ(20)は、就寝者の体動に伴う振動を検出して体動信号を出力する体動検知手段を構成している。この睡眠センサ(20)は、感圧部(21)と受圧部(22)とを備えている。
上記感圧部(21)は、ベッドなどの寝具の寝台に敷かれたマットレス上に敷設されるものである。この感圧部(21)は、細長で中空状のチューブで構成されている。そして、就寝者がベッドに横臥すると、就寝者の体動に伴い感圧部(21)に圧力・振動が伝達され、感圧部(21)の内圧が受圧部(22)に作用する。
上記受圧部(22)は、ケーシング(23)と、このケーシング(23)に収納されるセンサ部(24)とで構成されている。センサ部(24)は、マイクロフォンや圧力センサなどで構成される。このセンサ部(24)は、上記感圧部(21)より作用した内圧を受け、この内圧を電圧に変換してリード線(25)を介して回路ユニット(30)に出力する。なお、本実施形態の睡眠センサ(20)では、感圧部(21)と受圧部(22)との接続位置に微小なリーク溝(26)が形成されている。このため、例えば就寝者がベッドに強い衝撃を与えた際、センサ部(24)に対して急激に上昇した内圧が作用し、その結果、センサ部(24)が故障してしまったり、睡眠センサの検出信号が飽和状態となってしまったりすることを抑制している。
図3に示すように、回路ユニット(30)は、上記睡眠センサ(20)で検出された体動信号に基づいて、就寝者の入床時刻、離床時刻、及び入床時刻から離床時刻までの間の睡眠状態等の時系列データを適宜記憶し、これらのデータをグラフで表示してモニタリング可能とするものである。この回路ユニット(30)は、処理手段(31)、呼吸抽出手段(32)、心拍抽出手段(33)、離床判定手段(34)、睡眠判定手段(35)、更新手段(36)、記憶手段(37)、及び記憶制御手段(38)を備えている。
上記処理手段(31)は、睡眠センサ(20)から出力された体動信号について、所定時間(例えば10秒)毎の標準偏差を算出して体動信号の前処理を行うものである。上記呼吸抽出手段(32)は、睡眠センサ(20)から出力された体動信号について、所定時間(例えば10秒)毎のFFT(Fast Fourier Transform)で得られたパワースペクトラムから就寝者の呼吸帯域(例えば0.25±0.15Hz)におけるスペクトルピーク値を算出し、上記体動信号から呼吸に伴う呼吸信号を抽出するものである。上記心拍抽出手段(33)は、睡眠センサ(20)から出力された体動信号について、所定時間(例えば10秒)毎のFFT(Fast Fourier Transform)で得られたパワースペクトラムから就寝者の心拍帯域(例えば1.4Hz±0.6Hz)におけるスペクトルピーク値を算出し、上記体動信号から心拍に伴う心拍信号を抽出するものである。なお、上記処理手段(31)による体動信号の前処理方法や、上記呼吸抽出手段(32)や心拍抽出手段(33)による各信号の抽出方法としては、上述の方法以外のものであっても良い。
上記離床判定手段(34)は、上記処理手段(31)で得られた体動信号と、上記呼吸抽出手段(32)で得られた呼吸信号と、上記心拍抽出手段(33)で得られた心拍信号とに基づいて、就寝者が寝具に在床しているか、寝具から離床しているかを判定するものである。この離床判定手段(34)には、離床判定を行うための3つの離床判定閾値が記憶されている。具体的に、離床判定手段(34)には、上記処理手段(31)で前処理した後の体動信号との比較対象となる体動離床判定閾値と、呼吸信号との比較対象となる呼吸離床判定閾値と、心拍信号との比較対象となる心拍離床判定閾値とが記憶されている。なお、この離床判定手段(34)における離床判定動作についての詳細は後述するものとする。
上記睡眠判定手段(35)は、上記離床判定手段(34)によって就寝者が在床状態であると判定された際に、更に就寝者の就寝状態を判定するものである。この睡眠判定手段(35)には、上述の体動離床判定閾値、呼吸離床判定閾値、及び心拍離床判定閾値よりも大きいレベルに設定される体動判定閾値が記憶されている。この体動判定閾値は、例えば図4に示すように、就寝者の体動に伴う体動信号のうち、就寝者の呼吸及び心拍に由来する微体動と、就寝者の入床時、離床時、寝返り時等に生起する粗体動との境界レベルとなる閾値である。なお、この体動判定閾値は、実験等で経験的に求められた固定値であっても良いし、上述した体動信号、呼吸信号、及び心拍信号等に基づいて適宜更新されるような変動値であっても良い。
この睡眠判定手段(35)では、上記処理手段(31)で得られた体動信号と上記体動判定閾値との大小比較によって就寝者の睡眠状態が判定される。具体的には、体動信号の信号レベルが体動判定閾値を所定時間以上継続して上回る場合、就寝者から断続的に粗体動が生起しているとみなされるので、就寝者が覚醒状態であると判定される。一方、体動信号が体動判定閾値を所定時間以上継続して下回る場合、就寝者から断続的な粗体動が生起していないとみなされるので、就寝者が入眠状態であると判定される。
上記更新手段(36)は、上述した離床判定手段(34)に記憶された各離床判定閾値を適宜修正して更新させるものである。この更新手段(36)による離床判定閾値の更新動作についての詳細は後述するものとする。
上記記憶手段(37)は、就寝者の入床時刻、離床時刻、及び在床中の就寝者が入眠状態であるか覚醒状態であるか等の就寝者の就寝状態に係る時系列データを適宜記憶するものである。具体的に、記憶手段(37)には、離床判定手段(34)で「離床」から「在床」へと判定が切り換わった際の時刻が入床時刻として、また、離床判定手段(34)で「在床」から「離床」へと判定が切り換わった際の時刻が離床時刻として記憶される。また、記憶手段(37)には、上記睡眠判定手段(35)で就寝者が「覚醒状態」又は「入眠状態」と判定された結果が時々刻々と記憶される。
上記記憶制御手段(38)は、離床判定手段(34)の離床/在床判定結果に基づいて、記憶手段(37)による各データの記憶を開始又は終了させ、就寝者の就寝状態を自動的に記憶させるようにするものである。なお、この記憶制御手段(38)による自動記憶制御動作についての詳細は後述するものとする。
−離床判定動作−
次に、本実施形態の睡眠自動記憶装置(10)の離床判定動作について、図5を参照しながら詳細に説明する。
上記離床判定手段(34)による離床判定動作では、まず、ステップS1及びステップS2において、離床判定手段(34)による離床判定の開始のタイミングの判定が行われる。具体的には、ステップS1において、処理手段(31)で前処理された後の現時点での体動信号と、上述した体動判定閾値との比較が行われる。このステップS1において、体動信号が体動判定閾値を上回る場合、就寝者が現時点で寝返り等の粗体動を生起しており、体動信号が急激に変化していることが予想される。このような状態では、上記呼吸抽出手段(32)及び心拍抽出手段(33)で得られる呼吸信号や心拍信号も不安定となり、信頼性を欠く信号となってしまうので、この場合には、後述のステップS3からステップS6までの離床判定動作へは移行しない。つまり、ステップS1において、体動信号が体動判定閾値を上回る状態では、離床判定手段(34)による離床判定が禁止される一方、体動信号が体動判定閾値以下になると、ステップS2へ移行する。
ステップS2では、ステップS1で体動信号が体動判定閾値以下となった時点(ステップS1による離床判定の開始判定時)の所定時間前(例えば1分前)の体動信号が体動判定閾値を上回っていたか否かの判定が行われる。ここで、ステップS1の判定の1分前の体動信号が体動判定閾値を上回っていた場合には、1分前に就寝者が粗動を生起しており、寝具に入床した、あるいは寝具から離床した可能性が高いので、このような場合には、ステップS3からステップS6までの離床判定動作へ移行する。一方、ステップS1の判定の1分前の体動信号が体動判定閾値以下であった場合には、1分前に就寝者が粗動(離床・入床動作)を生起しておらず、離床判定を行う必要性もないので、このような場合には離床判定手段(34)による離床判定は行われない。
ステップS3では、体動離床判定閾値と、体動信号との大小比較が行われる。このステップS3において、体動信号が体動離床判定閾値以下である場合には、第1の判定条件が成立する。次のステップS4では、呼吸信号と呼吸離床判定閾値との大小比較が行われる。このステップS4において、呼吸信号が呼吸離床判定閾値以下である場合には、第2の判定条件が成立する。更に、ステップS5では、心拍信号と心拍離床判定閾値との大小比較が行われる。このステップS5において、心拍信号が心拍離床判定閾値以下である場合には、第3の判定条件が成立する。なお、上記ステップS3からステップS5の動作の順序は不問である。
ステップS6では、上記第1から第3の判定条件のうち、2つ以上の判定条件が成立しているか否かの判定が行われる。例えば、体動信号及び呼吸信号の各信号レベルが、各々に対応する離床判定閾値以下である場合、就寝者からの体動(微体動及び粗体動を含む)、及び呼吸とが生起していないとみなすことができるので、離床判定手段(34)では就寝者が「離床」していると判定される。また、例えば呼吸信号及び心拍信号の各信号レベルが、各々に対応する離床判定閾値以下である場合、就寝者からの呼吸及び心拍が生起していないとみなすことができるので、同様に「離床」と判定される。また、ステップS6において、体動信号及び心拍信号の各信号レベルが、各々に対応する離床判定閾値以下である場合や、体動信号、呼吸信号、及び心拍信号の各信号レベルが、各々に対応する離床判定閾値以下である場合にも、同様に「離床」と判定される。以上のように、ステップS6においては、体動信号、呼吸信号、及び心拍信号のうち2つ以上の信号レベルが、各々に対応する離床判定閾値以下になると、就寝者が離床していると判定される。
一方、ステップS6において、2つ以上の判定条件が成立しない場合、つまり、体動信号、呼吸信号、心拍信号のうち2つ以上の信号が、各々に対応する離床判定閾値よりも大きい場合には、就寝者が「在床」していると判定される。
−離床判定閾値の更新動作−
上述のように、離床判定手段(34)には、就寝者の離床/在床の判定を行うための3つの離床判定閾値が記憶されている。これらの離床判定閾値は、予め実験等で経験的に求められた値が離床判定手段(34)に初期値として入力される。一方、就寝者から生起する体動、呼吸、心拍の強度は、就寝者に依って個人差があり、また、睡眠センサ(20)で検出される信号レベルは、ベッドや布団等の寝具の種類等によっても変化する。したがって、離床判定手段(34)に初期値として入力された各離床判定閾値をそのまま使うと、就寝者の個体差や寝具の種類の影響を受けて就寝者の離床判定を正確に行えない可能性が生じる。このため、本実施形態の睡眠自動記憶装置(10)には、体動離床判定閾値、呼吸離床判定閾値、及び心拍離床判定閾値をそれぞれ修正して更新するための更新手段(36)が設けられている。以下に、この更新手段(36)による離床判定閾値の更新動作について図6を参照しながら説明する。
離床判定閾値を更新する際には、就寝者が回路ユニット(30)の操作部(図示省略)を操作し、睡眠自動記憶装置(10)を「更新モード」とする。この「更新モード」では、就寝者が安静に睡眠していることを前提に各離床判定閾値の修正・更新が行われる。このため、ステップS11において、上述したような離床判定動作によって就寝者が離床していると判定される場合には、後述のステップS12からステップS15までの離床判定閾値の更新動作は行われない。一方、ステップS11において、就寝者が在床と判定されると、ステップS12へ移行する。
更新手段(36)は、就寝者が安静に睡眠している状態において、処理手段(31)で前処理した後の体動信号、呼吸抽出手段(32)で抽出された呼吸信号、及び心拍抽出手段(33)で抽出された心拍信号を所定の間隔で記憶する。なお、更新手段(36)による各信号の記憶は、例えば就寝者が寝具に入床し、翌日に目覚めて離床するまでの間継続して行われる。そして、更新手段(36)は、以上のようにして記憶された各信号データに基づいて各離床判定閾値の修正を行う。
具体的に、ステップS12では、更新手段(36)に記憶された体動信号の最小値が算出され、ステップS13では、更新手段(36)に記憶された呼吸信号の最小値が算出され、更に、ステップS14では、更新手段(36)に記憶された心拍信号の最小値が算出される。そして、ステップS15において、各信号の最小値に基づいて各離床判定閾値の算出・更新が行われる。体動離床判定閾値は、体動信号の最小値に所定倍率(例えば0.5)を乗じた値と、更新前の体動離床判定閾値とを平均することによって算出される。同様に、呼吸離床判定閾値は、呼吸信号の最小値に所定倍率(例えば0.5)を乗じた値と、更新前の呼吸離床判定閾値とを平均することによって算出され、心拍離床判定閾値は、心拍信号の最小値に所定倍率(例えば0.5)を乗じた値と、更新前の心拍離床判定閾値とを平均することによって算出される。更新手段(36)によって算出された各離床判定閾値は、新たな離床判定閾値としてそれぞれ離床判定手段(34)に設定され、その後の離床判定動作に利用される。以上のようにして得られた各離床判定閾値は、各就寝者の個体差や寝具の種類等の影響が加味された体動信号、呼吸信号、及び心拍信号に基づいて決定されるものとなるので、その後の離床判定動作においては、就寝者の個体差や寝具の種類の影響に依らず就寝者の離床判定が行われる。
−自動記憶制御動作−
次に、本実施形態の睡眠自動記憶装置(10)における記憶制御手段(37)によるデータの自動記憶制御動作について、図7を参照しながら説明する。なお、この自動記憶制御動作は、ユーザーが回路ユニット(30)のスイッチ等を操作し、「自動記憶モード」を選択することで実行される。この自動記憶モードでは、就寝者が寝具に在床状態である期間のみ、記憶手段(37)にデータが記憶される制御が行われる。
この自動記憶モードでは、まず、ステップS21において、記憶手段(37)によるデータの記憶時間が、継続して所定の設定時間(例えば24時間)以上続いているかどうかの判定が行われる。このステップS21において、既に記憶手段(37)による記憶時間が24時間以上継続している場合、就寝者が24時間以上に亘って在床中であることはあり得ないので、このような場合には、記憶制御手段(38)が記憶手段(37)によるデータの記憶を強制終了させる。一方、ステップS21において、記憶手段(37)によるデータの記憶時間が24時間未満である場合には、ステップS22が実行される。
ステップS22では、睡眠センサ(20)と回路ユニット(30)との間の断線の確認が行われる。このステップS22において、回路ユニット(30)に睡眠センサ(20)からの出力が全く入力されない場合には、「断線」と判定されて回路ユニット(30)に異常サインが表示される。
ステップS23では、上述した離床判定手段(34)による離床/在床判定が行われる。ここで、例えば離床状態であった就寝者が寝具に入床し、離床判定手段(34)が「在床」と判定すると、ステップS24へ移行する。このステップS24において、既に記憶手段(37)がデータの記憶中である場合には、そのままの状態で復帰される。一方、記憶手段(37)がデータの記憶を行っていない場合には、記憶制御手段(38)が、記憶手段(37)によるデータの記憶を開始させる。その結果、記憶手段(37)には、入床時刻と共に、上記睡眠判定手段(35)によって得られる就寝者の就寝状態(入眠状態又は覚醒状態)のデータが適宜記憶されていく。
その後、ステップS23において、在床中であった就寝者が離床して、離床判定手段(34)が「離床」と判定すると、ステップS25へ移行する。このステップS25において、記憶手段(37)がデータの記憶を行っていない場合には、そのままの状態で復帰される。一方、記憶手段(37)がデータの記憶中である場合には、ステップS26へ移行する。このステップS26では、記憶手段(37)によるデータの記憶を引き続いて所定時間(例えば15分)継続して行う。そして、15分が経過すると、記憶制御手段(38)は、過去15分間において、離床判定手段(34)で「離床」と判定された時間を積算する。そして、この時間の積算値(累積時間)が規定時間(例えば12分)以上となると、就寝者がほぼ確実に離床していると判断できるので、この場合、記憶制御手段(38)が記憶手段(37)によるデータの記憶を終了させる。なお、この際には、15分前における離床判定手段(34)による「離床」という判定が正しかったとみなすことができるので、記憶手段(37)には、15分前の時刻(ステップS23で離床と判定された時刻)が就寝者の離床時刻として記憶される。
一方、上述の累積時間が規定時間(例えば12分)未満である場合には、離床判定手段(34)による「離床」という判定が誤判定であったとみなすことができるので、この場合には、記憶手段(37)によるデータの記憶を終了せずに再び復帰する。
記憶手段(37)によるデータの記憶が終了すると、ステップS28へ移行する。このステップS28では、記憶手段(37)によるデータの開始から終了までの1サイクルの記憶期間について、記憶手段(37)に記憶されたデータを保存するか、消去するかの判定が行われる。具体的に、記憶制御手段(38)は、記憶手段(37)による記憶データの終了時に、直前の1サイクルの間で就寝者が「入眠状態」と判定された累積時間を算出する。そして、この累積時間が規定時間(例えば15分)以上である場合には、就寝者が少なくとも睡眠をとっていたと判定し、この1サイクルのデータをそのまま残して保存する。一方、「入眠状態」と判定された累積時間が15分未満である場合には、就寝者が睡眠をとっていなかったと判定し、この1サイクルの記憶期間のデータを不要とみなして消去する。
−実施形態の効果−
上記実施形態では、離床判定手段(34)による離床/在床判定の結果に基づいて記憶手段(37)によるデータの記憶開始と、記憶終了とを自動的に行えるようにしている。このため、ユーザーの手を煩わすことなく、就寝者の就寝状態のデータを記憶手段(37)に適宜記憶していくことができる。
また、上記実施形態では、就寝者が在床中である場合のみに、データを記憶するようにしているので、必要最小限のデータ記憶期間で就寝状態のデータを記憶することができる。したがって、記憶手段(37)に蓄積されるデータ量の削減、更には記憶手段(37)の記憶容量の削減を図ることができる。
更に、上記実施形態では、記憶手段(37)によるデータの記憶時間が必要以上(例えば就寝時間としてあり得ない24時間以上)連続して継続すると、記憶手段(37)によるデータの記憶を強制的に終了させるようにしている。このため、記憶手段(37)に無駄なデータが蓄積されるのを未然に回避でき、記憶手段(37)の記憶容量を有効に利用することができる。
また、上記実施形態では、記憶手段(37)によるデータの記憶終了時に、直前の1サイクルの間で記憶されたデータが不要であるとみなされると、これらのデータを消去するようにしている。したがって、無駄なデータが記憶手段(37)に蓄積されるのを未然に回避でき、記憶手段(37)の記憶容量を一層有効に活用することができる。
また、上記実施形態では、体動信号、呼吸信号、及び心拍信号のうち、2つ以上の信号レベルが各々の信号に対応する離床判定閾値以下となると、離床判定手段(34)によって就寝者が離床していると判定するようにしている。このため、例えば体動信号のみを用いて離床判定を行う離床判定方法では、就寝者以外の震動源に起因して体動信号にノイズが重畳してしまった場合に、誤判定を招いてしまう可能性が高かったのに対し、上記実施形態では、2つ以上の判定条件が成立しない限り離床判定を行わないようにしているので、このような誤判定を抑制することができる。したがって、この睡眠自動記憶装置(10)の離床判定精度及び信頼性を向上させることができる。
また、上記実施形態では、「更新モード」時に更新手段(36)に記憶させた体動信号、呼吸信号、及び心拍信号の最小値に基づいて各離床判定閾値を適宜更新するようにしている。ここで、更新された各離床判定閾値は、就寝者の個体差や寝具の種類等に対応したものとなるので、この睡眠自動記憶装置(10)の離床判定精度及び信頼性を一層向上させることができる。
更に、上記実施形態では、体動信号が体動判定閾値を上回る場合、離床判定手段(34)による離床判定を禁止するようにしている。このため、ステップS2からステップS5までの離床判定を行う際には、安定且つ信頼性の高い信号が得られる状態となるので、この睡眠自動記憶装置(10)の離床判定精度を更に向上させることができる。また、このように離床判定手段(34)による離床判定を適宜規制することで、離床判定手段(34)による無駄な演算処理を省くことができるので、離床判定手段(34)の演算処理の負荷を低減できる。
また、上記実施形態では、体動信号が体動判定閾値以下の状態であり、且つ、この体動信号が体動判定閾値以下となった所定時間(例えば1分)前の体動信号が体動判定閾値を上回っていた場合に、離床判定手段(34)による離床判定を開始する一方、それ以外の条件では離床判定を禁止するようにしている。このため、上記実施形態の睡眠自動記憶装置(10)では、体動信号が体動判定閾値を上回り、再度の離床判定が必要となる際のみに離床判定が行われるので、就寝者が粗動を生起した場合のみに離床判定が行われるので、離床判定手段(34)による無駄な離床判定動作を禁止することができる。したがって、離床判定手段(34)による離床判定の演算処理の負荷を省くことができ、更には、無駄な離床判定動作に伴う誤判定も削減することができる。
<その他の実施形態>
上記実施形態の自動記憶制御動作では、ステップS28において、前回の1サイクル間で記憶されたデータについての就寝者の累積入床時間が規定時間以上であったか否かを各データの保存/削除条件としている。しかしながら、このようなデータの保存/削除条件として、例えば記憶手段(37)による継続した記憶期間が極端に短い(例えば5分未満の)場合に、この短い記憶期間に記憶されたデータを削除するというように、他の保存/削除条件を設定するようにしてもよい。
また、上記実施形態の離床判定手段(34)には、体動離床判定閾値、呼吸離床判定閾値、及び心拍離床判定閾値から成る3つの離床判定閾値を記憶させ、体動信号、呼吸信号、及び心拍信号のうち2つ以上の信号レベルが、各々に対応する離床判定閾値以下となると就寝者が離床していると判定するようにしている。しかしながら、離床判定手段(34)に呼吸離床判定閾値及び心拍離床判定閾値のみを記憶させ、呼吸信号と心拍信号との双方の信号レベルが、各々に対応する離床判定閾値以下となると就寝者が離床していると判定するようにしてもよい。このようにすると、寝具の周辺の震動源等の影響によるノイズが重畳しにくい呼吸信号及び心拍信号に基づいて離床判定を行うことができるので、このような震動源に起因する離床/在床の誤判定が抑制される。
更に、上記実施形態では、記憶手段(37)に記憶するデータとして、入床時刻、離床時刻、及び就寝者の就寝状態(覚醒状態又は入眠状態)を扱うようにしている。しかしながら、例えば上記呼吸抽出手段(32)で得られた呼吸信号や、上記心拍抽出手段(33)で得られた心拍信号等を時系列データとして記憶手段(37)に記憶させるようにしてもよい。この場合には、記憶手段(37)で記憶されるデータ量が特に膨大となるが、記憶制御手段(38)によって記憶手段(37)に記憶させるデータ量を規制することで、効果的にデータ量を削減することができ、記憶手段(37)の記憶容量を大幅に削減することができる。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。