JP4345272B2 - 純水製造装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体、液晶、製薬、食品、電力等の各種分野の産業や研究設備で利用される脱イオン水を製造する電気脱イオン装置、及び複数の電気脱イオン装置を直列に接続して純水を製造する純水製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
本特許出願人は、pH8.5以下の原水をアルカリ薬剤を添加することなく処理したときに、上記原水のpHよりもpHが1.0以上、高い処理水を得るために、陰極と陽極との間に複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配列し、上記隣接した2枚のアニオン交換膜とカチオン交換膜との間に、セル(枠体)を配置し、イオン交換体を充填した脱塩室と、濃縮室とを交互に積層して設け、脱塩室の厚さを7mm以上の電気脱イオン装置と、複数の電気脱イオン装置を直列に接続し、原水を上記直列に接続された複数の電気脱イオン装置に順次通水して処理する純水製造装置を、特開2001−113281号公報で提案した。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、その後、鋭意研究を進めていった結果、電気脱イオン装置でpH8.5以下の原水をアルカリ薬剤を添加することなく処理したときに、上記原水のpHよりもpHが1.0以上、高い処理水を得るには、脱塩室にイオン交換体として充填するアニオン、カチオン両交換樹脂の混合比に最適値が存在し、アニオン交換樹脂の比率が72%未満であると、原水中のナトリウムイオンが除去されてしまい、処理水のpHの上昇が起きにくくなり、脱塩室内がアルカリにならず、且つシリカがイオン化しないために、シリカの除去率も低下し、逆にアニオン交換樹脂の比率が78%より大きくなると必要な電流を確保するための電圧値が上昇し、セル間の電気抵抗が上昇して好ましくないことを見出した。
【0004】
更に、複数の電気脱イオン装置を直列に接続し、被処理水をこの直列に接続した複数の電気脱イオン装置に順次通水して処理する純水製造装置においても、2段目以降の電気脱イオン装置の脱塩室内に充填するアニオン、カチオン両イオン交換樹脂の混合比にも最適値があり、アニオン交換樹脂の比率が55%未満であるとシリカの除去率が低下し、逆に65%より大きくなると、被処理水中のナトリウムイオンを除去できず、処理水の比抵抗値が極端に低下することを見出した。
【0005】
このように脱塩室に充填するアニオン、カチオン両イオン交換樹脂の混合比を最適化することにより、pH8.5以下の原水をアルカリ薬剤を添加することなく処理したときに、上記原水のpHよりもpHが1.0以上高い処理水が得られるのは、原水中のナトリウムイオンを選択的に残留させ、シリカのイオン化のために利用するからであって、このことは前述した特開2001−113281号の従来装置と大きく異なる点である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明の純水製造装置は、被処理水を直列に接続した複数の電気脱イオン装置に順次通水して処理する純水製造装置において、第1段目の電気脱イオン装置が、陰極と陽極との間に複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配列し、前記隣接した2枚のアニオン交換膜とカチオン交換膜との間にイオン交換体を充填した脱塩室と、濃縮室とを交互に積層して設け、脱塩室の厚さが7mm以上である電気脱イオン装置において、前記脱塩室に充填するイオン交換体をアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合物にし、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合比率を再生型体積比率で7.2:2.8(アニオン比率72%)〜7.8:2.2(アニオン比率78%)にした電気脱イオン装置であって、第2段以降の電気脱イオン装置のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合比率を再生型体積比率で5.5:4.5(アニオン比率55%)〜6.5:3.5(アニオン比率65%)にしたことを特徴とする。この場合、第1段目の電気脱イオン装置に供給する被処理水の供給管の上流側に被処理水にナトリウム塩を添加する添加装置を設け、上記添加装置で被処理水にナトリウム塩を添加して電気脱イオン装置から排出される処理水のpHを制御するようにすることが好ましい。なお、第1段目の電気脱イオン装置の脱塩室の厚さは7mm以上、特に8〜30mmが好ましい。第2段目以降の電気脱イオン装置における脱塩室の厚さは、第1段目の電気脱イオン装置の脱塩室の厚さよりも薄い方が好ましく、特に2.0〜6.0mmがより好ましい。これにより、第1段目の電気脱イオン装置でシリカ、ホウ素等の弱電解物質及び硬度成分が除去され、第2段目以降でシリカ及びホウ素がさらに除去される。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に実施例を挙げて本発明の効果を具体的に説明する。実験には直列に接続可能な前段、後段の2基の電気脱イオン装置を使用した。
1.前後各段におけるイオン交換樹脂を充填するセル(枠体)の有効寸法、使用枚数、イオン交換樹脂、イオン交換膜は次の通りである。
▲1▼前段の電気脱イオン装置
脱塩室の厚さ=15mm、樹脂層高=600mm
脱塩室のセルの枚数=3枚
▲2▼後段の電気脱イオン装置
脱塩室の厚さ=5mm、樹脂層高=600mm
脱塩室のセルの枚数=6枚
▲3▼前後両電気脱イオン装置の脱塩室に充填された混合物を構成するイオン交換樹脂
アニオン交換樹脂:ダウケミカル社製 商品名 550A
カチオン交換樹脂:ダウケミカル社製 商品名 650C
▲4▼前後両脱イオン装置に使用したイオン交換膜
アニオン交換樹脂:(株)トクヤマ製 商品名 ネオセプタAHA
カチオン交換樹脂:(株)トクヤマ製 商品名 ネオセプタCMB
【0008】
[実施例1]
前段の電気脱イオン装置を使用し、セル当たりの操作電圧を6V/セル、SV85/時で原水を通水して厚さを7mm以上の15mmの脱塩室に充填すベきアニオン交換樹脂の、カチオン交換樹脂に対する混合比率を再生型体積比で50〜100%の間で変え、その時々のシリカ除去率、ナトリウム除去率、セルの電気抵抗を測定した。試験結果を図1に示す。
アニオン交換樹脂の比率が72%未満なると、被処理水ナトリウムイオンが除去されてしまい、シリカの除去率も低下した。これは脱塩室内がアルカリにならないため、シリカがイオン化しないからである。又、アニオン交換樹脂の比率が78%より大きくなると、必要な電流を確保する電圧値が上昇し、これに伴いセル間の電気抵抗が上昇した。この結果、陰極と陽極との間に複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配列し、この隣接した2枚のアニオン交換膜とカチオン交換膜との間にイオン交換体を充填した脱塩室と、濃縮室とを交互に積層して設け、脱塩室の厚さを7mm以上、且つセル当たりの操作電圧が1〜50V/セル、SV30〜150/時である電気脱イオン装置において、上記脱塩室に充填するイオン交換体をアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合物にし、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合比率を再生型体積比率で7.2:2.8(アニオン比率72%)〜7.8:2.2(アニオン比率78%)にすることにより最適の結果が得られることを見出した。
【0009】
[実施例2]
実施例1で使用した電気脱イオン装置に供給する被処理水にナトリウム塩(塩化ナトリウム)を添加し、被処理水の導電率を任意に変化させた。その時の電気脱イオン装置からの処理水のpHを測定した結果を図2に示した。この図からも明らかなように、供給する被処理水の導電率の上昇に伴い処理水のpHは上昇した。
【0010】
[実施例3]
前段の電気脱イオン装置と後段の電気脱イオン装置とを直列に接続し、純水製造装置としての評価試験を行った。尚、前段の電気脱イオン装置の脱塩室に充填したアニオン交換樹脂の、カチオン交換樹脂に対する比率は75%にした。
後段の電気脱イオン装置の脱塩室に充填すべきアニオン交換樹脂の、カチオン交換樹脂に対する混合比率を再生型体積比で50〜70%の間で変え、その時々のシリカ除去率、電気比抵抗値を測定した結果を図3に示す。55%未満になるとシリカの除去率が低下した。又、65%より大きくなると、被処理水中のナトリウムイオンを除去することができず、処理水の比抵抗値は極端に低下した。この結果、複数の電気脱イオン装置を直列に接続し、被処理水を順次通水して処理する純水製造装置において、上記各電気脱イオン装置の脱塩室に充填するイオン交換体をアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合物にし、第1段の電気脱イオン装置のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合比率を再生型体積比率で7.2:2.8(アニオン比率72%)〜7.8:2.2(アニオン比率78%)にし、第2段以降の電気脱イオン装置のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合比率を再生型体積比率で5.5:4.5(アニオン比率55%)〜6.5:3.5(アニオン比率65%)にすることにより最適の結果が得られることを見出した。
【0011】
[実施例4]
実施例3で使用した純水製造装置の前段の電気脱イオン装置に供給する被処理水にナトリウム塩(塩化ナトリウム)を添加して、被処理水の導電率を任意に変化させ、後段の電気脱イオン装置から排出される処理水のシリカ濃度を測定し、それから算出されるシリカ除去率を図4に示した。なお、この時の被処理水中のシリカ濃度は200〜300ppbであった。この図からも明らかなように、供給する被処理水の導電率の上昇に伴い処理水のシリカ除去率は向上した。
【0012】
請求項2で被処理水に添加するナトリウム塩としては価格面からNaClが好ましい。そして、ナトリウム塩を添加して被処理水の導電率を3〜20μs/cm、好ましくは5〜15μs/cmに調整すると、前段の電気脱イオン装置の処理水のpHは9.5前後になり、後段の電気脱イオン装置においてシリカが効率よく除去できる。
【0013】
【発明の効果】
請求項1の発明のように、脱塩室に充填するアニオン、カチオン両イオン交換樹脂の、カチオン交換樹脂に対するアニオン交換樹脂の混合比を、再生型体積比を最適に選択することで脱イオン装置のナトリウムイオンのリークを増進し、処理水のpHが上昇する。又、請求項3により、第1段目の電気脱イオン装置においては被処理水のナトリウムイオンを選択的に残留させ、第2段目以降の電気脱イオン装置におけるシリカのイオン化のために利用してシリカを効率よく除去できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のカチオン交換樹脂に対するアニオン交換樹脂の混合比率を再生型体積比で50〜100%の間で変えたときのシリカ除去率、ナトリウム除去率、セルの電気抵抗の変化を示す図。
【図2】実施例2の電気脱イオン装置に供給する被処理水にナトリウム塩を添加して導電率を変化させた場合の処理水のpHの変化を示す図。
【図3】実施例3の脱塩室に充填するアニオン交換樹脂の、カチオン交換樹脂に対する混合比率を、再生型体積比で50〜70%の間で変化させた場合のシリカ除去率、電気比抵抗値の変化を示す図。
【図4】実施例4の前段の電気脱イオン装置に供給する被処理水にナトリウム塩を添加して導電率を変化させた場合の、後段の電気脱イオンから排出される処理水のシリカ除去率を示す図。

Claims (2)

  1. 被処理水を直列に接続した複数の電気脱イオン装置に順次通水して処理する純水製造装置において、第1段目の電気脱イオン装置が、陰極と陽極との間に複数のアニオン交換膜とカチオン交換膜とを交互に配列し、前記隣接した2枚のアニオン交換膜とカチオン交換膜との間にイオン交換体を充填した脱塩室と、濃縮室とを交互に積層して設け、脱塩室の厚さが7mm以上である電気脱イオン装置において、前記脱塩室に充填するイオン交換体をアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合物にし、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合比率を再生型体積比率で7.2:2.8(アニオン比率72%)〜7.8:2.2(アニオン比率78%)にした電気脱イオン装置であって、第2段以降の電気脱イオン装置のアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合比率を再生型体積比率で5.5:4.5(アニオン比率55%)〜6.5:3.5(アニオン比率65%)にしたことを特徴とする純水製造装置。
  2. 第1段目の電気脱イオン装置において、該電気脱イオン装置に供給する被処理水の供給管の上流側に被処理水にナトリウム塩を添加する添加装置を設け、上記添加装置で被処理水にナトリウム塩を添加して電気脱イオン装置から排出される処理水のpHを制御するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の純水製造装置。
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