JP4345216B2 - 電磁バルブのシール構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電磁バルブのシール構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
電磁力により弁体を駆動して流体通路を開閉する電磁バルブにおいては、流体通路内の流体が電磁バルブを介して外部に漏洩するのを防止するため、適宜の箇所にシール材を配置している。例えば、高圧燃料ポンプの加圧室を開閉する電磁バルブでは、燃料通路からコイル収容空間等を介して燃料が外部に漏出するのを防止するために燃料通路とコイル体収容空間との間に形成された間隙をシールするためにシール材が各所に配置されている(特開2000−186650号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
更に、電磁バルブにおいては、コイル体収容空間内への水入りによるコイルの短絡が生じるおそれがある。このためボビンに巻いたコイルに対して更に射出成形によりボビンから露出しているコイル部分を樹脂にて被覆することがなされている。しかし、このような合成樹脂による被覆によっても、ボビンと合成樹脂との接続界面から水入りが生じるおそれが依然として存在する。このため、このような接続界面をシール材によりシールして水入りを完全に防ぐ必要がある。
【0004】
このように電磁バルブの構成においては、流体が外部に漏出するのを防止するためのシール材に加えて、水入りによるコイルの短絡を防止するためのシール材も必要となる。このため電磁バルブの部品点数が増加し、組み付け性の悪化や製造コストの増大を招くという問題が存在する。
【0005】
本発明は、電磁バルブの部品点数を少なくして組み付け性の悪化や製造コストの増大を防止することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段およびその作用効果について記載する。
請求項1記載の電磁バルブのシール構造は、コイルが巻かれたボビンに対して該コイルが露出している部分を被覆部材で被覆してなるリング状のコイル体と、該コイル体の中心孔を貫通しかつ該コイル体の外周面を覆うとともに一部が開口することにより流体通路を開閉する弁体を駆動するための磁極を形成する磁路形成部材とを備えた電磁バルブおけるシール構造であって、
前記磁路形成部材の開口部分において前記コイル体側へ制御対象の流体が漏出することを阻止するための流体用シールと、前記コイル体のボビンと被覆部材との接続界面をシールする接続界面用シールとが、一体に構成されたシール材にてなされており、前記コイル体の中心孔を貫通して前記弁体側に突出している磁路形成部材の柱状部の外周面と、前記コイル体の弁体側端面を覆っている磁路形成部材から前記弁体側に突出して形成されている円筒部の内周面との間に形成された前記開口の奥に、前記シール材の一部に形成されたリング状の流体用シール部を前記柱状部の外周面と前記円筒部の内周面とに接触させて配置することにより、前記コイル体側へ制御対象の流体が漏出することを阻止するようシールされていることを特徴とする。
【0007】
磁路形成部材の開口位置に対してコイル体のボビンと被覆部材との接続界面位置は比較的近い位置に存在する。したがって、流体用シールと接続界面用シールとの両方のシールを、一体に構成された1つのシール材にて実現することができる。このように流体用シールと接続界面用シールとの両方のシールができるようにシール材を形成することにより、電磁バルブの部品点数が減少できると共に、更にシール材を配置する際も1度の作業で済むことになる。このため組み付け性の悪化や製造コストの増大を防止することができる。
磁路形成部材の開口が、コイル体の中心孔を貫通して弁体側に突出している磁路形成部材の柱状部の外周面と、コイル体の弁体側端面を覆っている磁路形成部材から弁体側に突出して形成されている円筒部の内周面との間に形成されている場合、この開口の奥に、シール材の一部に形成されたリング状の流体用シール部を柱状部の外周面と円筒部の内周面とに接触させて配置することができる。このことによりコイル体側へ制御対象の流体が漏出することを阻止できる。
更に、このことによりシール材は、流体用シール部と接続界面用シール部とが角度を持って、例えば直角に折れ曲がって一体化されたものとなる。このため、磁路形成部材内でのシール材の位置決めが容易となり、製造時のシール材の配置および固定作業が容易となるので、組み付け作業が一層効率的となる。
接続界面用シール部と流体用シール部とが異なる位置をシールしているため、相互に異なる方向の位置決めの役割を果たしている。このため、磁路形成部材内への配置したことで自然にシール材の位置固定がなされる。したがって、接続界面用シール部と流体用シール部とのいずれか一方または両方に対する収納用溝が不要となり、収納用溝を形成しなくても良くなるので、製造コストが一層低減できる。
【0008】
請求項2記載の電磁バルブのシール構造は、請求項1記載の構成において、前記コイル体における前記接続界面はコイル体軸方向の両端面側にそれぞれリング状に形成されるとともに、該接続界面の内で、前記磁路形成部材の開口側の接続界面に対するシールが、前記磁路形成部材と前記コイル体との間に、前記シール材の一部に形成されたリング状の接続界面用シール部を配置することによりなされていることを特徴とする。
【0009】
2つの接続界面の内で磁路形成部材の開口側における接続界面をシールするように、磁路形成部材とコイル体との間に、シール材の一部に形成されたリング状の接続界面用シール部を配置する。このことにより、1つのシール材により流体用シールと接続界面用シールとを実現することができる。
【0010】
磁路形成部材の開口側とは反対側の接続界面についてはボビンに対して被覆部材を形成する際、例えば射出成形にて被覆部材を形成する場合には、樹脂注入口側ではボビンと被覆部材との溶融あるいは融着により十分にシールさせることができる。したがって磁路形成部材の開口側における接続界面のみをシール材でシールするようにすることで十分なシールが可能となる。また、両接続界面ともシール材によるシールが必要な場合には、磁路形成部材の開口側とは反対側の接続界面についても別途シール材を用いれば良い。
【0011】
このように、磁路形成部材の開口と開口側における接続界面とについては、1つのシール材にてシールすることができるので、電磁バルブの部品点数が減少でき、組み付け性の悪化や製造コストの増大を防止することができる。この場合も、上述したごとく磁路形成部材の開口側とは反対側の接続界面についてシール材が不要であれば、更に電磁バルブの部品点数が減少でき、組み付け性の悪化や製造コストの増大を防止することができる。
【0012】
また、リング状の接続界面用シール部は磁路形成部材とコイル体との間に配置されていることにより、磁路形成部材内に配置されたコイル体の軸方向のがたつきを吸収することができる。このため、がたつき吸収のためのウェーブワッシャ等の部品を廃止することができ、一層、部品点数が減少でき、組み付け性の悪化や製造コストの増大を更に効果的に防止することができる。
【0013】
請求項3記載の電磁バルブのシール構造は、請求項2記載の構成において、前記接続界面用シール部は、前記接続界面の両側にリング状の突条を配置することにより、前記接続界面をシールしていることを特徴とする。
【0014】
接続界面のシールとしては、接続界面の両側にリング状の突条をそれぞれ配置して接続界面部分に密閉空間を形成することにより、接続界面をシールすることができる。
【0020】
請求項記載の電磁バルブのシール構造は、請求項2又は3に記載の構成において、前記接続界面用シール部には、コイル体軸方向での屈曲を規制するリング状支持体が一体化されていることを特徴とする。
【0021】
このように、接続界面用シール部にリング状支持体を一体化してコイル体軸方向での屈曲を規制することにより、シール材の位置固定性が更に効果的となり、シールの耐久性を向上させることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1は、上述した発明が適用された高圧燃料ポンプ2、その燃料供給系統および制御系統の概略構成説明図である。ここで、高圧燃料ポンプ2は、6気筒の筒内噴射型ガソリンエンジン(以下、エンジンと略す)4に対して高圧燃料を供給するものである。エンジン4では高圧燃料ポンプ2から供給された高圧燃料を各燃焼室内へ燃料噴射弁6から直接噴射している。また高圧燃料ポンプ2は、フィードポンプ8により燃料タンク10から汲み上げられた低圧燃料をフィルタ12aが設けられた燃料供給経路12を介して供給されている。なおフィードポンプ8にて汲み上げられた燃料の内で、高圧燃料ポンプ2に吸入されなかった燃料はリリーフ弁8aを有するリリーフ通路8bを介して燃料タンク10に戻される。
【0023】
高圧燃料ポンプ2は、シリンダボディ14、カバー16、フランジ18および吸入調量用電磁バルブ20を備えている。シリンダボディ14の中心軸位置にはシリンダ14aが形成され、内部にプランジャ22を軸方向に摺動可能に支持している。シリンダ14aの先端側には加圧室24が形成され、プランジャ22の進入・退出により加圧室24の容積は変化するようにされている。加圧室24は燃料圧送経路26により吐出側チェック弁28に接続されている。この吐出側チェック弁28は、燃料圧送経路26により燃料分配管30に接続しており、加圧室24内の燃料が高圧化した場合に開弁して、高圧燃料が燃料分配管30側に圧送されるようにしている。なお、燃料分配管30側に噴射量よりも多い燃料が圧送された場合には、余分な燃料はリリーフ弁31aを有するリリーフ通路31を介して燃料タンク10に戻される。このことにより燃料圧力が過大になることが防止されている。
【0024】
シリンダボディ14と下方のフランジ18との間には、スプリングシート32およびリフターガイド34が積層状態で配置されている。スプリングシート32の内周面にはオイルシール36が取り付けられている。このオイルシール36は略円筒状をなして、下端部36aはプランジャ22の外周面に摺動状態で密着している。プランジャ22とシリンダ14aとの間隙から漏出した燃料は、オイルシール36の燃料収納室36bに蓄積され、その後、燃料収納室36bに接続している燃料排出管36cを介して燃料タンク10側に戻される。
【0025】
リフターガイド34内にはリフタ38が軸方向に摺動可能に収納されている。このリフタ38の底板部38aの内部表面に形成されている突出受部38bに、プランジャ22の下端部22aが当接している。またプランジャ22の下端部22aはリテーナ40に係合されている。そしてスプリングシート32とリテーナ40との間に圧縮状態で配置されたスプリング42により、プランジャ22の下端部22aは、リフタ38の突出受部38b側に押し付けられている。このプランジャ22の下端部22aからの押圧力により、リフタ38の底板部38aは燃料ポンプ用カム44に当接されている。燃料ポンプ用カム44は例えば吸気カムシャフトあるいは排気カムシャフトに取り付けられており、エンジン4の回転に連動して回転する。この回転により、リフタ38の底板部38aを、燃料ポンプ用カム44のカムノーズ44aが押し上げることにより、リフタ38が上昇する。これに連動して、加圧室24の容積を押し縮めるようにプランジャ22が上昇する。この上昇行程が加圧室24に対する加圧行程となる。加圧行程では、加圧室24が吸入している燃料量に対応した容積となった場合に加圧室24内の燃料が高圧となる。高圧となった燃料は吐出側チェック弁28を押し開いて、燃料分配管30側に吐出する。
【0026】
また、燃料ポンプ用カム44のカムノーズ44aが下がる時には、リフタ38およびプランジャ22は、スプリング42の付勢力により下降し、加圧室24の容積を拡大する。この下降行程が吸入行程となる。吸入行程では吸入調量用電磁バルブ20の開弁期間に応じた量の燃料を、燃料供給経路12側から加圧室24内に吸入する。
【0027】
ここで図2の部分拡大図に基づいて吸入調量用電磁バルブ20から加圧室24にかけての構成を説明する。吸入調量用電磁バルブ20は、ハウジング46、コイル体48、コア50、副弁体52、主弁体54およびシート体56を備えている。ハウジング46は高透磁率材料からなる略円筒状を形成し、大径部46aと小径部46bとが段差部46cにて接続された形状をなしている。大径部46aの内部には、コイル体48が配置されている。コア50は高透磁率材料からなり、円板部50aとこの円板部50aの中心から突出状に形成されている軸部50bとから構成されている。この軸部50bがコイル体48の中心孔部分を貫通し、円板部50aがハウジング46の大径部46aの一端側を覆い、加締加工によりハウジング46とコア50とが内部にコイル体48を収納した状態で固定されている。このことによりコア50の軸部50bの先端50cとハウジング46の小径部46bの先端46dとは、接近した状態で共に下方に突出した状態となる。そしてこの突出部分をカバー16の上方に円筒状に形成されたハウジング挿入部16aに挿入した状態で、ハウジング46、コイル体48およびコア50全体がカバー16に加締加工にて固定されている。このハウジング46とコア50とが磁路形成部材に相当する。なお、コイル体48は、射出成形により形成された樹脂製ボビン48aにコイル48bが巻かれ更にボビン48aから露出しているコイル48bに射出成形にて樹脂被覆部材48cが形成されている。
【0028】
コア50の軸部50bの先端50cとハウジング46の小径部46bの先端46dとは離れていることにより、それぞれ磁極として形成されるとともに開口部20aを形成している。この開口部20aの奥には後述する形状のリング状シール材57が配置されている。
【0029】
カバー16には、ハウジング挿入部16aの下方に、ハウジング挿入部16aと同軸に、それぞれ円筒状の小径弁体収納室16b、大径弁体収納室16cおよびシート体収納室16dが設けられている。これらはハウジング挿入部16a、小径弁体収納室16b、大径弁体収納室16cおよびシート体収納室16dに移るに従って径が大きく形成されている。この内、小径弁体収納室16bには高透磁率材料からなる副弁体52、小径弁体収納室16bから大径弁体収納室16cにかけては高透磁率材料からなる主弁体54、シート体収納室16dにはシート体56が収納されている。なお、小径弁体収納室16bと大径弁体収納室16cとの段差部分に係合する第1リング状バネ58が主弁体54の上面に配置され、主弁体54をシート体56側に付勢している。またコア50の先端50cと副弁体52との間には第2リング状バネ60が配置され、副弁体52を主弁体54側に付勢している。このことにより、副弁体52は主弁体54の中央部を貫通しているオリフィス54aを閉塞可能としている。
【0030】
シート体56は上部シート体62と下部シート体64とからなる。これら上部シート体62と下部シート体64とは、シート体収納室16dの下端縁部にて下部シート体本体64aを加締加工することによりシート体収納室16d内に固定されている。そして下部シート体64は下部シート体本体64aから下方に突出する筒部64bが、更にシリンダボディ14の加圧室24に連続して形成されている収納凹部14bに挿入されている。また、上部シート体62と下部シート体64との間に形成される間隙部にはバネ受けを兼ねる弁体収納部66の縁部が挟持されて固定されている。弁体収納部66は凹状をなし、上部シート体62に形成されている中間供給流路62bの下側開口部を囲んでいる。そして弁体収納部66に形成された収納空間66a内部には円板状のチェック弁体68を収納している。このチェック弁体68は、バネ66cにより中間供給流路62bの下側開口部に付勢されている。このため加圧室24の圧力が中間供給流路62bの圧力以上となった場合に、チェック弁体68は、図2に示したごとく上部シート体62のチェック弁シート部62fに当接して、加圧室24内の燃料が中間供給流路62b側へ流れるのを阻止する。なお、弁体収納部66の中央部には収納空間66a内に突出するストッパー66bが設けられている。中間供給流路62b側の圧力が加圧室24側の圧力よりも高くなった場合に、チェック弁体68はチェック弁シート部62fから離れるが、このストッパー66bにてチェック弁シート部62fとの距離が規制されている。また、下部シート体64の筒部64bの外周面に形成されたシールリング収容溝64d内にはバックアップリング70とシールリング72とが収納されている。
【0031】
吸入調量用電磁バルブ20の開口部20aの奥に配置されているリング状シール材57の構成を図3に示す。図3において(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図、(D)は斜視図、(E)は(B)におけるI−I断面図、(F)は裏返して見た斜視図である。リング状シール材57は、平板状の接続界面用シール部57a、この接続界面用シール部57aとは同軸に形成された略円筒状の流体用シール部57b、およびこれら接続界面用シール部57aと流体用シール部57bとの中心部を貫通して設けられた貫通孔57cから構成されている。接続界面用シール部57aの上面には、同心円状に形成された2本のリング状突条57d,57eが形成されている。また接続界面用シール部57aの下面側にはリング状支持体57fが一体化されている。リング状シール材57は、リング状支持体57fを除いてゴム弾性部材からなるが、このリング状支持体57fは剛直な金属板からなり、図4に示すごとく中心孔57gを形成した円板状であり中心孔周縁部は補強のために下方に湾曲している。なお、図4において(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は底面図、(D)は斜視図、(E)は(B)におけるJ−J断面図、(F)は裏返して見た斜視図である。リング状シール材57はリング状支持体57fに対してゴム弾性部材を射出成形することにより一体として形成されている。また、流体用シール部57bは下端側において断面が略円弧状に膨らんだ形状となっている。
【0032】
このような形状のリング状シール材57が図2に示したごとく配置されている。すなわち、リング状シール材57の接続界面用シール部57aは、コイル体48におけるボビン48aと樹脂被覆部材48cとの接続界面48d部分に配置される。この接続界面48d部分では、ハウジング46の段差部46cとコイル体48とにより接続界面用シール部57aが挟持されるが、内側のリング状突条57dはボビン48a側に、外側のリング状突条57eは樹脂被覆部材48c側に接触する。このことにより接続界面48dの両側にそれぞれリング状突条57d,57eが配置されることにより接続界面48d部分に密閉空間が形成される。こうして接続界面48d部分がシールされる。したがってコア50の円板部50aとハウジング46の大径部46aとの間隙20b、樹脂被覆部材48cと大径部46aとの間隙20cおよび樹脂被覆部材48cと段差部46cとの間隙20dを介して水入りが生じても、接続界面48dからコイル48bに水入りするのを阻止できる。同様に、コア50の円板部50aとハウジング46の大径部46aとの間隙20b、円板部50aと樹脂被覆部材48cとの間隙20e、円板部50aとボビン48aとの間隙20fおよび軸部50bとボビン48aとの間隙20gを介して水入りが生じても、接続界面48dからコイル48bに水入りするのを阻止できる。
【0033】
なお、コイル体48の上側に、もう一つの接続界面48eがリング状に存在する。この接続界面48eは、コイル48bが巻かれたボビン48aに対して樹脂被覆部材48cを射出成形する際に、樹脂注入口側とされていたため、ボビン48aの樹脂と樹脂被覆部材48cの樹脂とが界面にて十分に溶融し合っている。このため接続界面48eでは十分なシールが形成されている。したがって上側の接続界面48eについては特にシール材は配置しない。なおコイル体48の製造方法によっては上側の接続界面48eについても溶融が十分でない場合には別個シール材を配置しても良い。
【0034】
また接続界面用シール部57aの下面側では、リング状支持体57fがハウジング46の段差部46cの上面に接触し、リング状シール材57全体の形状を支持し軸方向の位置を固定している。更に、リング状シール材57の流体用シール部57bは、開口部20aの奥にて、コア50の柱状軸部50bの外周面とハウジング46の円筒状の小径部46bの内周面とに接触する。このことにより開口部20aにおいて副弁体52側に存在する燃料に対するシールがなされる。またリング状シール材57の貫通孔57cをコア50の柱状軸部50bが貫通していることにより、軸とは直交する方向の位置も固定している。
【0035】
高圧燃料ポンプ2においては、上述のごとく形成された吸入調量用電磁バルブ20が燃料供給経路12と加圧室24との間に配置されていることにより、副弁体52および主弁体54の開弁期間の調整により、加圧室24に対する燃料吸入量を調整することが可能となっている。そして、このような吸入調量用電磁バルブ20の機能を利用して、エンジン4の運転時に電子制御装置(ECU)80にて、次に述べるごとく吸入調量用電磁バルブ20を制御することができる。なおECU80は、エンジン4に設けられた各種センサからエンジン回転数、クランク角、吸気圧、冷却水温度、アクセル開度、スロットル開度、排気中の酸素濃度、燃料分配管30に設けられた燃圧センサ30aから燃料分配管30内の燃料圧力、その他の各種データを検出している。そして、これらの運転状態データに基づいて、吸入調量用電磁バルブ20のコイル体48に対する通電量や通電タイミング、燃料噴射弁6の燃料噴射タイミングや燃料噴射期間などを調整している。
【0036】
まず、エンジン4の運転時において燃料ポンプ用カム44の回転によりカムノーズ44aが上昇すると、プランジャ22は押し上げられて加圧行程を開始する。この加圧行程では、加圧室24の容積が、プランジャ22の上昇により吸入行程にて吸入された液体燃料体積と同じになるまでは、加圧室24内の圧力Poは燃料蒸気圧に近い低圧に維持されている。この状態では図5(A)に示すごとく、既に副弁体52および主弁体54はコイル体48への通電が停止されて閉弁状態にある。また、チェック弁体68は、既に加圧室24内の圧力Poが燃料蒸気圧に近い低圧になった時に閉じている。
【0037】
プランジャ22が更に上昇して加圧室24内の容積と液体燃料体積とが等しくなると燃料を高圧に加圧し始める。これ以後、加圧室24内の燃料圧力Poは急速に上昇して、吐出側チェック弁28を押し開いて、燃料分配管30側に高圧燃料を吐出する。そして、プランジャ22がほぼ上死点になった時に、ECU80はコイル体48に副弁体52のみ開弁する電磁力を発生するように通電制御する。このことにより、副弁体52はコア50側に吸引されて第2リング状バネ60の付勢力に抗して移動を開始し、コア50の先端50cに当接する。このことにより図5(B)に示すごとく副弁体52は開弁状態となって、主弁体54の中央部を貫通するオリフィス54aが開き、中間供給流路62b内の燃料圧力は燃料供給経路12側の圧力と同じとなる。したがって、オリフィス54aが開くまでは、主弁体54には燃料供給経路12側の圧力とこの圧力よりも低圧の中間供給流路62b内の燃料圧力との差圧により、シート部62dへの押し付け力が存在していたが、副弁体52が開弁することにより差圧は解消し押し付け力は消失する。そして、次にコイル体48への通電量を上げて副弁体52における磁束を飽和させ、このことにより主弁体54への磁束密度を急速に上昇させて吸引力を強めて主弁体54を開弁させる。この時、先に副弁体52が開弁しているため上述したごとく既にシート部62dへの押し付け力は消失している。このため通電量上昇分が少なくても、主弁体54は第1リング状バネ58に抗して迅速に開弁する。
【0038】
そして、プランジャ22が下降に移って加圧室24内の圧力Poが中間供給流路62b側の圧力よりも低下すると、図6(A)に示すごとくチェック弁体68が開いて、主弁体54のシール部54bと上部シート体62のシート部62dとの間を介して、燃料供給経路12側から燃料が加圧室24内に吸入される。
【0039】
そして、1回の吐出に必要な燃料量が加圧室24内に吸入されたことを、ECU80は検出したクランク角の値で判断すると、次にコイル体48への通電を完全に停止して、主弁体54と副弁体52とを第1リング状バネ58および第2リング状バネ60の付勢力により元の位置に戻す。このことにより、図6(B)に示すごとく主弁体54は上部シート体62のシート部62dに接触し、副弁体52は主弁体54のオリフィス54aを閉塞して共に閉弁する。このため燃料供給経路12側から加圧室24側への燃料供給は停止される。更に、カムノーズ44aの移動に伴ってプランジャ22は加圧室24を最大容積とするまでスプリング42の付勢力により下降するが、燃料の吸入は停止されているので、液体燃料よりも容積が大きくなった分、加圧室24内は低圧の燃料蒸気にて満たされる。
【0040】
そして、次にカムノーズ44aの押し上げに伴いプランジャ22が上昇に転じると、図5(A)にて説明したごとくの状態となる。以下、このような動作を繰り返しすことになる。このような動作において主弁体54の開弁期間の長さにより、加圧室24に吸入される燃料量が調整されることにより、燃料分配管30側に吐出される燃料量が決定される。
【0041】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).ハウジング46とコア50とからなる磁路形成部材の開口部20aに対して、ボビン48aと樹脂被覆部材48cとの接続界面48dは近い位置に存在する。したがって接続界面用シール部57aと流体用シール部57bとを一体にしたリング状シール材57を形成することができる。このようにリング状シール材57を形成することにより、吸入調量用電磁バルブ20の部品点数を減少させることができると共に、更にリング状シール材57を配置する際も1度の作業で済むことになる。このため組み付け性の悪化や製造コストの増大を防止することができる。
【0042】
(ロ).開口部20aとは反対側の接続界面48eについては、前述したごとくボビン48aと樹脂被覆部材48cとが溶融により十分にシールされている。このため、コイル体48内への水入り防止用のシールと開口部20aからの燃料漏れ防止用のシールとを1つのリング状シール材57で実現することが可能となる。こうして吸入調量用電磁バルブ20の部品点数が一層減少でき、組み付け性の悪化や製造コストの増大を効果的に防止することができる。
【0043】
(ハ).接続界面48dのシールについては、接続界面用シール部57aは、2本のリング状突条57d,57eにより接続界面48dを両側から間隔を置いてシールして密閉空間を形成することでシールしている。このためコイル体48の表面に現れている接続界面48dの位置に成形時や組み立て時に誤差が発生しても確実に密閉空間内に接続界面48dを配置でき、確実にシールすることができる。
【0044】
(ニ).接続界面用シール部57aはハウジング46の段差部46cとコイル体48の軸方向の端面との間に配置されていることにより、ハウジング46とコア50とからなる磁路形成部材内に配置されたコイル体48の軸方向のがたつきを吸収することができる。このため、がたつき吸収のためのウェーブワッシャ等の部品を廃止することができ、一層、部品点数が減少でき、組み付け性の悪化や製造コストの増大を更に効果的に防止することができる。
【0045】
(ホ).シール材57は、接続界面用シール部57aと流体用シール部57bとが直角に折れ曲がって一体化されて、接続界面用シール部57aと流体用シール部57bとは異なる位置をシールしている。このため相互に異なる方向の位置決めの役割を果たしているので、ハウジング46内での位置決めが容易となる。したがって、製造時のシール材57の配置および固定作業が容易となるので組み付け作業が一層効率的となる。
【0046】
(ヘ).また、前記(ホ)に述べたごとく、シール材57の形状自体により位置決めがなされることから、接続界面用シール部57aおよび流体用シール部57bに対する収納用溝が不要となり、収納用溝を形成しなくても良くなるので、製造コストが一層低減できる。
【0047】
(ト).なお、前記(ホ)、(ヘ)の効果は、接続界面用シール部57aに、剛直なリング状支持体57fを一体化してコイル体軸方向での接続界面用シール部57aの屈曲を規制しているため、より顕著なものとなる。
【0048】
特に、リング状支持体57fと一体化されている接続界面用シール部57aがコイル体48と段差部46cとに挟持されている。このことでシール材57全体が吸入調量用電磁バルブ20内に強固に固定される。このため前述したごとく副弁体52や主弁体54が駆動してその圧力振動が近傍に存在する流体用シール部57bに伝達されても、シール材57の位置を強固に維持することができる。
【0049】
[その他の実施の形態]
・前記実施の形態1においては、ガソリンエンジンの例を示したが、本発明の電磁バルブのシール構造はディーゼルエンジンの高圧燃料ポンプに用いられる電磁バルブのシール構造にも適用でき、他の用途の電磁バルブにも適用できる。
【0050】
・また前記実施の形態1は、吸入行程時に加圧室24内への燃料吸入量を調整することにより加圧行程で燃料分配管30側へ吐出される燃料量を調整する吸入調量タイプの高圧燃料ポンプであったが、これ以外に、本発明の電磁バルブのシール構造は、加圧行程時に加圧室内の燃料の一部を電磁バルブを開弁状態として溢流させ、残りの燃料を電磁バルブを閉弁して燃料分配管側へ吐出させることにより燃料量を調量するスピル調量タイプの高圧燃料ポンプにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1の高圧燃料ポンプ、その燃料供給系統および制御系統の概略構成説明図。
【図2】実施の形態1の高圧燃料ポンプの要部拡大縦断面図。
【図3】実施の形態1のシール材の構成説明図。
【図4】実施の形態1のリング状支持体の構成説明図。
【図5】実施の形態1における高圧燃料ポンプの動作説明図。
【図6】実施の形態1における高圧燃料ポンプの動作説明図。
【符号の説明】
2…高圧燃料ポンプ、4…エンジン、6…燃料噴射弁、8…フィードポンプ、8a…リリーフ弁、8b…リリーフ通路、10…燃料タンク、12…燃料供給経路、12a…フィルタ、14…シリンダボディ、14a…シリンダ、14b…収納凹部、16…カバー、16a…ハウジング挿入部、16b…小径弁体収納室、16c…大径弁体収納室、16d…シート体収納室、18…フランジ、20…吸入調量用電磁バルブ、20a…開口部、20b,20c,20d,20e,20f,20g…間隙、22…プランジャ、22a…下端部、24…加圧室、26…燃料圧送経路、28…吐出側チェック弁、30…燃料分配管、30a…燃圧センサ、31…リリーフ通路、31a…リリーフ弁、32…スプリングシート、34…リフターガイド、36…オイルシール、36a…下端部、36b…燃料収納室、36c…燃料排出管、38…リフタ、38a…底板部、38b…突出受部、40…リテーナ、42…スプリング、44…燃料ポンプ用カム、44a…カムノーズ、46…ハウジング、46a…大径部、46b…小径部、46c…段差部、46d…先端、48…コイル体、48a…ボビン、48b…コイル、48c…樹脂被覆部材、48d…接続界面、48e…接続界面、50… コア、50a…円板部、50b…軸部、50c…先端、52…副弁体、54…主弁体、54a…オリフィス、54b…シール部、56…シート体、57…シール材、57a…接続界面用シール部、57b…流体用シール部、57c…貫通孔、57d,57e…リング状突条、57f…リング状支持体、57g…中心孔、58…第1リング状バネ、60…第2リング状バネ、62…上部シート体、62b…中間供給流路、62d…シート部、62f…チェック弁シート部、64…下部シート体、64a…下部シート体本体、64b…筒部、64d…シールリング収容溝、66…弁体収納部、66a…収納空間、66b…ストッパー、66c…バネ、68…チェック弁体、70…バックアップリング、72…シールリング、80…ECU。

Claims (4)

  1. コイルが巻かれたボビンに対して該コイルが露出している部分を被覆部材で被覆してなるリング状のコイル体と、該コイル体の中心孔を貫通しかつ該コイル体の外周面を覆うとともに一部が開口することにより流体通路を開閉する弁体を駆動するための磁極を形成する磁路形成部材とを備えた電磁バルブおけるシール構造であって、
    前記磁路形成部材の開口部分において前記コイル体側へ制御対象の流体が漏出することを阻止するための流体用シールと、前記コイル体のボビンと被覆部材との接続界面をシールする接続界面用シールとが、一体に構成されたシール材にてなされており、
    前記コイル体の中心孔を貫通して前記弁体側に突出している磁路形成部材の柱状部の外周面と、前記コイル体の弁体側端面を覆っている磁路形成部材から前記弁体側に突出して形成されている円筒部の内周面との間に形成された前記開口の奥に、前記シール材の一部に形成されたリング状の流体用シール部を前記柱状部の外周面と前記円筒部の内周面とに接触させて配置することにより、前記コイル体側へ制御対象の流体が漏出することを阻止するようシールされていることを特徴とする電磁バルブのシール構造。
  2. 請求項1記載の構成において、前記コイル体における前記接続界面はコイル体軸方向の両端面側にそれぞれリング状に形成されるとともに、該接続界面の内で、前記磁路形成部材の開口側の接続界面に対するシールが、前記磁路形成部材と前記コイル体との間に、前記シール材の一部に形成されたリング状の接続界面用シール部を配置することによりなされていることを特徴とする電磁バルブのシール構造。
  3. 請求項2記載の構成において、前記接続界面用シール部は、前記接続界面の両側にリング状の突条を配置することにより、前記接続界面をシールしていることを特徴とする電磁バルブのシール構造。
  4. 請求項2又は3に記載の構成において、前記接続界面用シール部には、コイル体軸方向での屈曲を規制するリング状支持体が一体化されていることを特徴とする電磁バルブのシール構造。
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