JP4344542B2 - 高周波加熱装置のインバータ電源制御回路 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばマグネトロンを有する電子レンジのような高周波加熱装置の電源部として用いられるインバータ電源に関し、特にその保護動作を行う制御回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、インバータ電源は、交流電源からの交流入力を直流出力に変換し、インバータによって、PWM制御信号のような起動信号をスイッチング素子のゲートに入力させることにより、この直流出力を所望の交流出力に変換して、高周波加熱装置に電源を供給する。このとき、インバータ電源全体を制御する制御回路は、電流、電圧の異常、高周波加熱装置の温度異常を検出して、これらの異常を抑制したり、インバータ電源の発振を停止させたりするが、これらの制御はマイクロコンピュータで行われる場合が多い。この従来例を図6に示す。図6において、マイクロコンピュータMCにより、カレントトランス6で入力電流異常、感熱部15で高周波加熱装置の温度異常、およびスイッチング素子7の駆動電圧異常が検出される。
【0003】
また、例えば、電子レンジのような高周波加熱装置の電源部として用いられるインバータ電源においては、前記スイッチング素子として、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)素子が用いられる場合が多い。このIGBT素子は、MOS−FETとバイポーラトランジスタを組み合わせて1チップとした素子で、MOS−FETのもつ低駆動電力で高速スイッチング特性と、バイポーラトランジスタの低抵抗という特徴を合わせ持っている。
【0004】
一方、制御回路において、マイクロコンピュータを用いたディジタル回路ではなく、アナログ回路により、電流異常、電圧異常、温度異常を個々に検出して、インバータ電源の発信を停止することも知られている(例えば、特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−354659号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、電流異常検出は、マグネトロンの破壊等でパワーダウンして入力電流が低下したときの入力電流異常を検出することを目的としたもので、その原因が解消されるまでその検出状態が保持される。しかし、従来のアナログ回路では、他の電圧異常、温度異常により発振が停止された場合にも入力電流異常が検出されてしまうため、電圧異常、温度異常が解消されて運転を再開するときに、電流異常検出を一度リセットする必要があり、自動復帰が困難であるという問題があった。
【0007】
その一方、IGBT素子を用いた電子レンジ用のインバータ電源では、IGBT素子が前記したように優れた特性を有するものの、その構造上、過電流により誤動作のおそれがあり、また過熱の影響を他の素子よりも最も強く受けて素子破壊の可能性があるという欠点もあるため、その特性を考慮して過電流保護などの安全面から特にその異常を監視する必要があり、また、マグネトロンやPWMのような他の構成部品についても安全上その異常を監視する必要があるから、これら温度異常、電圧異常および電流異常について総合的に監視して保護する必要性が高い。この場合に保守時や安全基準の見直し時などにこれらの異常の監視レベルの変更が必要となる場合がある。また出荷時においても使用する国に応じて監視レベルの変更が必要となる場合もある。
しかし、従来のインバータ電源の保護装置の制御にはマイクロコンピュータが用いられており、このマイクロコンピュータに予め監視レベルが組み込まれているから、その変更は一般に困難となる。また、マイクロコンピュータを用いた場合、装置のコストが低下しないという問題もあった。
【0008】
本発明は前記の問題点を解決して、自動復帰を容易にし、またIGBT素子のようなスイッチング素子の特性を考慮して、低コストで、容易に監視レベルの変更が可能な高周波加熱装置のインバータ電源制御回路を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明にかかる高周波加熱装置のインバータ電源制御回路は、交流電源からの交流入力を直流出力に変換し、インバータによって、起動信号であるPWM制御信号に基づく駆動信号をスイッチング素子に与えることにより、前記直流出力を所望の交流出力に変換して、高周波加熱装置に電源を供給するインバータ電源の制御回路であって、起動信号であるPWM制御信号の異常を検出する起動異常検出部、スイッチング素子であるIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)素子の温度異常を検出する温度異常検出部、スイッチング素子であるIGBT素子の駆動信号電圧異常を検出する電圧異常検出部、および交流電源からの入力電流異常を検出し、その検出状態を保持する電流異常検出部を有する電源異常検出部と、これらの異常検出のうち少なくとも1つの異常検出が入力すると、スイッチング素子であるIGBT素子に異常制御信号を出力してインバータ電源の発振を停止させて、電源異常からインバータ電源を保護するインバータ発振制御部とを備え、前記起動異常検出部、温度異常検出部、電圧異常検出部の少なくとも1つは、それぞれの各異常検出による発振停止に基づく入力電流異常を前記電流異常検出部に検出させないように当該入力電流異常の検出状態の保持を阻止する保持阻止回路を介して、前記電流異常検出部に接続されており、各異常の解消後に前記電流異常検出部において、前記保持阻止回路が入力電流異常の検出状態の保持を阻止することによって、各異常検出による発振停止に基づく入力電流異常を当該電流異常検出部が検出することによる発振停止を発生させることなく自動復帰ができるものである。
【0010】
この構成によれば、起動異常検出部、温度異常検出部、電圧異常検出部の少なくとも1つは、それぞれの各異常検出による発振停止に基づく入力電流異常を電流異常検出部に検出させないように当該入力電流異常の検出状態の保持を阻止する保持阻止回路を有していることから、各異常の解消後に電流異常検出部において各異常検出による発振停止を発生させることなく自動復帰が容易にできる。
【0011】
好ましくは、異常検出用の基準電圧を設定する基準電圧設定部を備え、前記起動異常検出部は、前記起動信号であるPWM制御信号の出力電圧と、前記基準電圧設定部により設定された第1基準電圧とを第1の電圧比較器で比較して起動信号異常を検出し、前記温度異常検出部は、スイッチング素子であるIGBT素子の近傍に配置されてIGBT素子の温度を感知する感熱部を有し、この検知温度に応じて発生させた電圧と、前記基準電圧設定部により設定された第2基準電圧とを第2の電圧比較器で比較してIGBT素子の温度異常を検出し、前記電圧異常検出部は、交流電源からの入力電圧に対応して発生された起動信号であるPWM制御信号に基づきIGBT素子のゲートに入力される前記駆動信号を検知し、この検知した駆動信号電圧と、前記基準電圧設定部により設定された第3基準電圧とを第3の電圧比較器で比較して電圧異常を検出し、前記電流異常検出部は、前記交流電源からの入力電流を検知するカレントトランスを有し、この検知した入力電流に応じて発生させた検知電圧を保持しつつ、この保持した検知電圧と、前記基準電圧設定部により設定された第4基準電圧とを第4の電圧比較器で比較して電流異常を検出するものである。
【0012】
したがって、IGBT素子の特性に着目してその温度およびゲート電圧の異常検出を含む電源異常検出部をアナログ回路で構成したことにより低コストにでき、また基準電圧設定部により異常検出用の基準電圧を容易に設定できるから、容易に監視レベルの変更が可能となる。さらに監視レベルの変更を個々それぞれに行うことができ、特にIGBT素子の温度異常についてのみの監視レベルの変更も可能となる。
【0013】
好ましくは、前記第1〜4の電圧比較器が、複数の比較がそれぞれ可能な単一の電圧比較器として設けられている。したがって、装置の小型化、さらなる低コスト化が可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る高周波加熱装置のインバータ電源制御回路のブロック図を示す。このインバータ電源は、例えばマグネトロンMを有する電子レンジのような高周波加熱装置の電源部として用いられ、インバータ電源内に設けられて全体を制御する制御回路24は、起動異常、温度異常、電圧異常および電流異常の電源異常からインバータ電源および電子レンジを保護する制御も行う。
【0015】
インバータ電源は、交流電源1、コンバータ2、インバータ3、高周波トランス4およびマグネトロン駆動部5を備え、交流電源1からコンバータ2を介してインバータ3により、高周波トランス4の1次コイルに高周波電流を発生させ、その高周波トランス4の2次コイルに接続されたマグネトロン駆動部5に倍電圧整流電力を発生させてマグネトロンMを駆動する。交流電源1とコンバータ2の間に交流電源1からの入力電流を検知するカレントトランス(CT)6が設けられている。
【0016】
インバータ3は、例えばPWM制御信号のような起動信号を発生する起動信号発生部21、起動信号発生部21からの信号に基づいてインバータ電源の発振制御を行うインバータ発振制御部22、この制御によりIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)素子7のようなスイッチング素子のゲートに所定のオンオフ制御信号(駆動信号)を入力させることによってIGBT素子7を駆動させるIGBTドライブ部23、およびこのオンオフ制御信号により高周波電流を発生させるIGBT素子7を備えている。インバータ発振制御部22は、前記起動異常、温度異常、電圧異常および電流異常のうち少なくとも1つの異常が検出されると、IGBT素子7のゲートに異常制御信号を出力してインバータ電源の発振を停止させる。
【0017】
前記制御回路24は、起動信号異常を検出する起動異常検出部31、温度異常を検出する温度異常検出部32、IGBT素子7の駆動信号電圧異常を検出する電圧異常検出部33および入力電流異常をその検出状態が保持されて検出する電流異常検出部34を有する電源異常検出部30と、異常検出用の基準電圧を設定する基準電圧設定部25とを備えている。
【0018】
前記基準電圧設定部25は、例えば基準電圧源に所定の抵抗を接続することにより、起動異常検出用、温度異常検出用、電圧異常検出用、電流異常検出用のそれぞれ第1〜4基準電圧Vref1〜Vref4を容易に所望の電圧に設定できる。なお、基準電圧源に可変抵抗を接続してその抵抗値を変化させることにより所望の電圧に設定してもよい。この例では、Vref1、4およびVref2、3がそれぞれ共通になっている。また異常検出信号について検出電圧生成の電圧源を与えるため、起動異常検出用の第1基準電圧Vref1に対する第5基準電圧Vref5が、温度異常検出用の第2基準電圧Vref2に対する第6基準電圧Vref6が、電圧異常検出用の第3基準電圧Vref3に対する第7基準電圧Vref7、電流異常検出用の第4基準電圧Vref4に対する第8基準電圧Vref8がそれぞれ設定される。なお、各基準電圧が一部共通する場合には、その電圧設定がより容易となる。
【0019】
以下、各異常検出部31〜34を図2〜5にそれぞれ具体的に示すが、各図は図1を展開したもので、便宜的に各異常検出部31〜34ごとにそれぞれ一部配置を並べ替えて示したものである。
【0020】
カレントトランス6の電流(電圧)監視
図2に電流異常検出部34を示す。この電流異常検出部34は、例えば、マグネトロンMの破壊等で入力がパワーダウンしたときに、入力電流異常検出用として、カレントトランス6の入力電流に対応する電圧を監視する。
【0021】
前記電流異常検出部34は、カレントトランス6の電圧を監視するもので、前記基準電圧設定部25により設定された第4基準電圧Vref4が抵抗R78とR79で分圧されて第4の電圧比較器CP4の+側に接続され、カレントトランス6の出力側に整流器8(図1)が設けられて直流に変換され、この出力がトランジスタ10のベースと接続され、第8基準電圧Vref8とグランド間に抵抗R77とコンデンサC74が接続されて、この接続点にトランジスタ10のコレクタに接続されるとともに、第4の電圧比較器CP4の−側に接続され、トランジスタ10のエミッタはグランドに接続されてなる。
【0022】
カレントトランス6の入力電流が低下すると、トランジスタ10がオフして、抵抗R77からコンデンサC74へ電流が流れ始めコンデンサC74の電圧が上昇する。コンデンサC74の電圧上昇速度は抵抗R77とコンデンサC74の時定数によって決定され、この時定数は、起動時におけるマグネトロン出力のタイムラグや異常時における急速な発振停止による部品損傷の発生防止などを考慮して例えば10〜20秒を目安として設定される。このコンデンサC74の電圧と第4基準電圧Vref4とを、第4の電圧比較器CP4で比較して、電流異常を検出する。第4の電圧比較器CP4の出力がインバータ発振制御部22に入力され、トランジスタ11がオンして電圧比較器12の+側の電圧を下げ、その−側よりも絶対値で低くなると、電圧比較器12の出力はL(低)となって異常制御信号となる。この異常制御信号は、図1のIGBTドライブ部23を介してIGBT素子7のゲートに入力されて、IGBT素子7がオフしインバータ電源の発振が停止される。
【0023】
電流異常検出部34は、マグネトロンMの破壊等による入力電流異常を検出するものであるから、その原因が解消されコンデンサC74の電圧が放電されてリセットされない限りその検出状態は保持され、つまりラッチ機能をもたしており、コンデンサC74が充電している間インバータ電源の発振は停止し続ける。
【0024】
PWM制御信号(起動信号)の異常監視
図3に起動異常検出部31を示す。この起動異常検出部31は、例えば、PWM制御信号を光信号として伝達するフォトカプラPCの破壊等により、PWM制御信号が制御回路24に入力されないときに、ノイズ等によりマイクロコンピュータが誤動作する場合がある。このため、制御回路24に入力する起動信号異常検出用として、PWM制御信号の出力電圧を監視する。
【0025】
前記起動異常検出部31は、起動信号発生部21からのPWM制御信号の出力電圧を監視するもので、前記基準電圧設定部25により設定された第1基準電圧Vref1が抵抗R78とR79で分圧されて第1の電圧比較器CP1の+側に接続され、PWM制御信号がフォトカプラPCにより光信号として伝達され、この出力がコンデンサC71を介してトランジスタ9のベースと接続され、第5基準電圧Vref5とグランド間に抵抗R73とコンデンサC72が接続されて、この接続点にトランジスタ9のコレクタに接続されるとともに、第1の電圧比較器CP1の−側に接続され、トランジスタ9のエミッタは第2の電圧比較器CP2の出力に接続されてなる。
【0026】
また、起動異常検出部31は前記電流異常検出部34と、その抵抗R77とC74の接続点にR75が接続され、さらにダイオードD71bを介して第1の電圧比較器CP1とダイオードD71aの間に接続されることにより、互いに接続されている。この回路が起動異常検出部31において、起動異常検出による発振停止に基づく入力電流異常を電流異常検出部34に検出させないようにその検出状態の保持を阻止する保持阻止回路となる。
【0027】
フォトカプラPCからの信号がPWM制御信号でない場合、トランジスタ9はオフしたままで、コンデンサC72の電圧が上昇していき、第1の電圧比較器CP1の−側が+側よりも絶対値で高くなると、第1の電圧比較器CP1の出力はL(低)となる。ダイオードD71aを介して第3の電圧比較器CP3の−側の電圧も下がり、その+側よりも絶対値で低くなると、第3の電圧比較器CP3の出力はH(高)となる。
【0028】
第3の電圧比較器CP3の出力がH(高)となることで、インバータ発振制御部22のトランジスタ11がオンして、電圧比較器12の+側の電圧を下げ、その−側よりも電圧が低くなると、電圧比較器12の出力はL(低)となって異常制御信号となる。この異常制御信号は、同様に図1のIGBTドライブ部23を介してIGBT素子7のゲートに入力されて、IGBT素子7がオフしインバータ電源の発振が停止される。
【0029】
その一方、起動異常検出時には、電流異常検出部34では、起動異常による発振停止に基づいて電流異常が検出されることとなるが、第1の電圧比較器CP1の出力はL(低)となっているので、前記保持阻止回路により電流異常検出部34のコンデンサC74への充電電流がダイオードD71bを介して流れることにより充電が阻止される。これにより、起動異常の解消後に電流異常検出部34の起動異常検出による発振停止を発生させることなく自動復帰が容易にできる。
【0030】
IGBT素子7の温度監視
図4に温度異常検出部32を示す。この温度異常検出部32は、例えば、マグネトロンMが過負荷になったり、電子レンジの冷却ファンが停止したり、庫内に食物のカス等が付着して、庫内の温度が異常に上昇する場合に、電源基板上のIGBT素子7の温度が上昇する。IGBT素子7は、この温度上昇の影響を他の素子よりも最も強く受けて、過熱により素子破壊の可能性があり、インバータ電源の暴走を招きかねないため、温度異常検出用として、IGBT素子7の温度を監視することが最も有効である。
【0031】
前記温度異常検出部32は、IGBT素子7の温度を監視するもので、IGBT素子7近傍の例えば電源基板上にサーミスタのような感熱部15が設けられて、前記基準電圧設定部25により設定された第2基準電圧Vref2が抵抗R32とR33、R34とで分圧されて第2の電圧比較器CP2の+側に接続され、第6基準電圧Vref6とグランド間に抵抗R71とこのサーミスタ15が接続され、これらの接続点が第2の電圧比較器CP2の−側に接続されてなり、サーミスタ15の検知温度に応じて発生させた電圧と、第2基準電圧Vref2とを第2の電圧比較器CP2で比較して温度異常を検出する。
また、起動異常検知部31のトランジスタ9のエミッタは第2の電圧比較器CP2の出力に接続されている。この回路が温度異常検出部32において、温度異常検出による発振停止に基づく入力電流異常を電流異常検出部34に検出させないようにその検出状態の保持を阻止する保持阻止回路となる。
【0032】
サーミスタ15の温度が上昇すると、サーミスタ自身の抵抗値が下がり、第2の電圧比較器CP2の−側の電圧が下がり、その+側よりも絶対値で低くなると、第2の電圧比較器CP2の出力はH(高)となる。第2の電圧比較器CP2の出力がH(高)となることで、インバータ発振制御部22のトランジスタ11がオンして、電圧比較器12の+側の電圧を下げ、その−側よりも絶対値で低くなると、電圧比較器12の出力はL(低)となって異常制御信号となる。この異常制御信号は、同様に図1のIGBTドライブ部23を介してIGBT素子7のゲートに入力されて、IGBT素子7がオフしインバータ電源の発振が停止される。
【0033】
その一方、温度異常検出時には、電流異常検出部34では、温度異常による発振停止に基づいて電流異常が検出されることとなるが、前記保持阻止回路が働く。すなわち、温度異常検知による発振停止時でも起動信号発生部21からPWM制御信号は入力され続けるので、トランジスタ9のエミッタは第2の電圧比較器CP2の出力に接続されていることから、第2の電圧比較器CP2の出力はH(高)となっているため、トランジスタ9はコンデンサC72の充電電圧を放電できず、第1の電圧比較器CP1の−側の電圧が上昇し、その出力はL(低)となる。第1の電圧比較器CP1の出力がL(低)となると、電流異常検出部34のコンデンサC74の充電電流はダイオードD71bを介して放電され、コンデンサC74への充電はなくなり、電流異常検出の機能は働かない。これにより、温度異常の解消後に電流異常検出部34の温度異常検出による発振停止を発生させることなく自動復帰が容易にできる。
【0034】
IGBT素子7の駆動信号電圧監視
図5に電圧異常検出部33を示す。この電圧異常検出部33は、例えば、電源線路の異常や落雷等によって交流電源1からの入力電圧が極めて低くなる場合に、IGBT素子7をはじめとするインバータ電源の各種素子に損傷を与えるため、電圧異常検出用として、交流電源1に対応するIGBT素子7のゲートに入力する駆動信号電圧を監視する。
【0035】
前記電圧異常検出部33は、IGBT素子7の駆動信号電圧を監視するもので、前記基準電圧設定部25により設定された第3基準電圧Vref3が抵抗R32とR33、R34とで分圧されて第3の電圧比較器CP3の+側に接続され、第7基準電圧(IGBT素子7の駆動信号電圧)Vref7とグランド間に抵抗R85と抵抗R74が接続され、この分圧抵抗R85、R74の接続点が第3の電圧比較器CP3の−側に接続されてなり、IGBT素子7のゲートに入力する駆動信号電圧と、第3基準電圧Vref3とを第3の電圧比較器CP3で比較して電圧異常を検出する。第3の電圧比較器CP3の出力がインバータ発振制御部22に入力され、同様に、IGBTドライブ部23を介してIGBT素子7のゲートに異常制御信号が入力されて、IGBT素子7がオフしインバータ電源の発振が停止される。なお、この例では、電圧異常検出部33に、起動異常検出部31や温度異常検出部32に設けたような保持阻止回路を設けていないが、同様に設けることができる。
【0036】
このように、本発明は、起動異常検出部31、温度異常検出部32、電圧異常検出部33の少なくとも1つは、それぞれの各異常検出による発振停止に基づく入力電流異常を電流異常検出部34に検出させないように当該入力電流異常の検出状態の保持を阻止する保持阻止回路を有していることから、各異常の解消後に電流異常検出部34において各異常検出による発振停止を発生させることなく自動復帰が容易にできる。
【0037】
また、IGBT素子7の特性に着目してその温度およびゲート電圧の異常を検出し、カレントトランス6の電流異常を検出する電源異常検出部30をアナログ回路で構成したことにより、従来のマイクロコンピュータを用いたディジタル回路で構成するのと比べて、装置を低コストにでき、電源基板上における各異常検出部の配置についての設計の自由度も向上する。また、基準電圧設定部25により異常検出用の基準電圧を容易に設定できるから、容易に監視レベルの変更が可能となる。さらに、監視レベルの変更を個々それぞれに行うことができ、特にIGBT素子7の特性を考慮してその温度異常についてのみの監視レベルの変更も可能となる。
【0038】
なお、この実施形態では、各電圧比較器CP1〜CP4をそれぞれ別個に有しているが、複数の比較がそれぞれ可能な単一の電圧比較器としてもよい。この場合、装置の小型化、さらなる低コスト化が可能となる。
【0039】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、起動異常検出部、温度異常検出部、電圧異常検出部の少なくとも1つは、それぞれの各異常検出による発振停止に基づく入力電流異常を電流異常検出部に検出させないようにその検出状態の保持を阻止する保持阻止回路を有していることから、各異常の解消後に電流異常検出部において各異常検出による発振停止を発生させることなく自動復帰が容易にできる。
また、IGBT素子の温度およびゲート電圧の異常検出を含む電源異常検出部をアナログ回路で構成したことにより低コストにでき、また基準電圧設定部により異常検出用の基準電圧を容易に設定できるから、容易に監視レベルの変更が可能となる。さらに監視レベルの変更を個々それぞれに行うことができ、特にIGBT素子の温度異常についてのみの監視レベルの変更も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る高周波加熱装置のインバータ電源制御回路を示す構成図である。
【図2】電流異常検出部を示す構成図である。
【図3】起動異常検出部を示す構成図である。
【図4】温度異常検出部を示す構成図である。
【図5】電圧異常検出部を示す構成図である。
【図6】従来の高周波加熱装置のインバータ電源制御回路を示す構成図である。
【符号の説明】
1…交流電源、3…インバータ、6…カレントトランス、7…IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)素子、15…感熱部(サーミスタ)、24…制御回路、25…基準電圧設定部、30…電源異常検出部、31…起動異常検出部、32…温度異常検出部、33…電圧異常検出部、34…電流異常検出部、CP1〜CP4…第1〜4の電圧比較器、M…マグネトロン。
Claims (3)
- 交流電源からの交流入力を直流出力に変換し、インバータによって、起動信号であるPWM制御信号に基づく駆動信号をスイッチング素子に与えることにより、前記直流出力を所望の交流出力に変換して、高周波加熱装置に電源を供給するインバータ電源の制御回路であって、
起動信号であるPWM制御信号の異常を検出する起動異常検出部、スイッチング素子であるIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)素子の温度異常を検出する温度異常検出部、スイッチング素子であるIGBT素子の駆動信号電圧異常を検出する電圧異常検出部、および交流電源からの入力電流異常を検出し、その検出状態を保持する電流異常検出部を有する電源異常検出部と、
これらの異常検出のうち少なくとも1つの異常検出が入力すると、スイッチング素子であるIGBT素子に異常制御信号を出力してインバータ電源の発振を停止させて、電源異常からインバータ電源を保護するインバータ発振制御部とを備え、
前記起動異常検出部、温度異常検出部、電圧異常検出部の少なくとも1つは、それぞれの各異常検出による発振停止に基づく入力電流異常を前記電流異常検出部に検出させないように当該入力電流異常の検出状態の保持を阻止する保持阻止回路を介して、前記電流異常検出部に接続されており、
各異常の解消後に前記電流異常検出部において、前記保持阻止回路が入力電流異常の検出状態の保持を阻止することによって、各異常検出による発振停止に基づく入力電流異常を当該電流異常検出部が検出することによる発振停止を発生させることなく自動復帰が可能な高周波加熱装置のインバータ電源制御回路。 - 請求項1において、さらに、
異常検出用の基準電圧を設定する基準電圧設定部を備え、
前記起動異常検出部は、前記起動信号であるPWM制御信号の出力電圧と、前記基準電圧設定部により設定された第1基準電圧とを第1の電圧比較器で比較して起動信号異常を検出し、
前記温度異常検出部は、スイッチング素子であるIGBT素子の近傍に配置されてIGBT素子の温度を感知する感熱部を有し、この検知温度に応じて発生させた電圧と、前記基準電圧設定部により設定された第2基準電圧とを第2の電圧比較器で比較してIGBT素子の温度異常を検出し、
前記電圧異常検出部は、交流電源からの入力電圧に対応して発生された起動信号であるPWM制御信号に基づきIGBT素子のゲートに入力される前記駆動信号を検知し、この検知した駆動信号電圧と、前記基準電圧設定部により設定された第3基準電圧とを第3の電圧比較器で比較して電圧異常を検出し、
前記電流異常検出部は、前記交流電源からの入力電流を検知するカレントトランスを有し、この検知した入力電流に応じて発生させた検知電圧を保持しつつ、この保持した検知電圧と、前記基準電圧設定部により設定された第4基準電圧とを第4の電圧比較器で比較して電流異常を検出するものである高周波加熱装置のインバータ電源制御回路。 - 請求項2において、
前記第1〜4の電圧比較器が、複数の比較がそれぞれ可能な単一の電圧比較器として設けられている高周波加熱装置のインバータ電源制御回路。
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