JP4344237B2 - 受容体、その使用、およびそのマウス抗体 - Google Patents

受容体、その使用、およびそのマウス抗体 Download PDF

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Description

本発明は、迅速に増殖している細胞、特に胃癌細胞の表面上に見られる受容体、その使用、および該受容体に特異的に結合するマウス抗体の構造に関する。
ハイブリドーマから生成したモノクローナル抗体を、臨床的アッセイおよび科学的アッセイに使用することは広く知られる。B細胞ハイブリドーマから産生したヒトモノクローナル抗体の投与は、腫瘍、ウイルス感染および微生物感染、抗体産生が減少したB細胞免疫不全、並びに免疫系の他の損傷の治療に有望である。
胃癌は、世界的に、最も頻繁に発生する癌の型の1つである。Lauren, “The two histological main types of gastric carcinoma,” Acta Path. Microbiol. Scand. 64:331−49によれば、胃癌は、組織学的に、散在性腺癌および腸性腺癌に分けられる。腸性胃癌には、しばしば、慢性B型胃炎、そして特に腸化生(metaplasia)が伴い、これらは形成異常(dysplastic)変化および胃癌の前駆症であるとみなされる。これらの2つの種類間の相違はまた、散在型の癌腫を有する患者が、しばしば血液型群Aに属し、このことからこの癌のリスクに対して遺伝因子の影響があることが結論づけ可能である一方、腸型の癌腫の発生には、環境型因子、例えばヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)感染が重要である可能性があることにも示される。西側では、胃腺癌頻度の減少が達成されたが、現在、東側で胃腺癌発生が増加している。
胃癌の発展は、多段階および多因子過程である(Correa, 1992, Cancer Res. 52:6735−6740)。分子機構に関しては、ほとんど知られていないが、高濃度の塩摂取、アルコール、ニトロソアミン、および細菌ヘリコバクター・ピロリ(H.ピロリ)感染などの要因は、胃癌発症の開始に関与していることが明確に立証されている。H.ピロリ感染および胃炎発生、形成異常および胃癌の発展が強く相関しているため、この細菌は、WHOによって、I型発癌因子と分類されてきた。H.ピロリは、粘膜環境において、深刻な前癌性細胞変化を直接誘導し、そしてまた、胃炎患者および胃癌患者に頻繁に観察される、自己抗体の増加にも関与している(Negriniら, 1996, Gastroenterol. 111:655−665)。これらの抗体は、胃上皮において、胃病変およびアポトーシスを誘導可能である(Steinigerら, 1998, Virchows Arch. 433:13−18)。抗原の性質は今なお一部未知である。胃H+/K(+)−ATPアーゼ(Claeysら, 1998, Gastroenterology 115:340−347)、インターロイキン−8(Crabtreeら, 1993, Scand. J. Immunol. 37:65−70;Maら, 1994, Scand. J. Gastroenterol. 29:961−965)およびルイス血液型群抗原(Appelmelkら, 1997, Trends. Microbiol. 5:70−73)に対する抗体が、胃粘膜または胃癌にしばしば見られる。
今日まで、療法は、胃切除およびリンパ節切除に限定されてきた;しかし、それにもかかわらず予後が劣っているため、新たな付随療法に対する必要性が存在する。免疫系が悪性細胞と有効に戦うことが不能である場合であっても、細胞性活性および体液性活性は測定可能であり、しかし腫瘍細胞を破壊するのには不十分であることが、免疫学的研究によって示されている。ここで、有効なアプローチは、患者の免疫反応から生じる抗体を単離し、適切な方法でこれらを再生し(reproduce)、そして療法的に使用することである。したがって、例えば、肺癌、食道癌、および結腸癌を有する患者で生じる抗体を単離し、そして該抗体から、例えば腫瘍細胞の分化および増殖に直接影響を与える、ヒトモノクローナル抗体を得る。
アポトーシスは、DNAの断片化、細胞収縮、および小胞体の膨張、その後の細胞断片化、および膜結合小胞またはアポトーシス体の形成を通じた、プログラム細胞死、すなわち細胞の自殺である。細胞死の生理学的な型であるアポトーシスは、壊死の場合におけるような、炎症過程または組織外傷を誘発することなく、不要な細胞の迅速でそしてきれいな除去を保証する。病的状態下では、アポトーシスはまた、癌前駆細胞などの悪性細胞を除去するのにも用いられる。アポトーシスは、細胞傷害性Tリンパ球または腫瘍壊死因子などのサイトカイン、グルココルチコイド、および抗体など、非常に多様な刺激を通じて、誘発可能である。アポトーシスは、真核細胞の最も高頻度の死因であり、そして胚形成、変態、および組織萎縮中に起こる。NGF/TNFファミリーのものなど、細胞表面上のアポトーシス受容体は、主に、リンパ球上で発現されるが、他の多様な細胞種上にも見られ、このため、これらは癌療法には不適切である。特に、これらの受容体のリガンドおよび抗体は、in vivo試験において、肝臓損傷を導いた。したがって、アポトーシス機能を有する腫瘍特異的受容体が、特に重要である。
最近の刊行物で、我々は、散在型腺癌の胃癌患者から単離され、H.ピロリおよび胃癌細胞と交差反応する、ヒト抗体103/51を記載した(Vollmersら, 1994, Cancer 74:1525−1532)。すべてのアッセイにおいて、DSMZ−ドイツ微生物および細胞培養コレクションGmBH, Mascheronder Weg 1b, 38124 Braunschweigに寄託番号ACC201で寄託されている、既知の胃腺癌細胞株23132を用いた。この抗体は、低用量で、130kD膜受容体に結合して、in vitroで胃癌細胞の有糸分裂に影響を有する(Henselら, 1999, Int. J. Cancer 81:229−235)。この抗体は、130kD膜受容体に結合することによって、in vitroで胃癌細胞の有糸分裂に何らかの影響を有する(Henselら, 1999, Int. J. Cancer 81:229−235)。抗体可変遺伝子領域を配列決定すると、抗体103/51が自己反応抗体であることが同定された。免疫組織化学研究によって、抗体が胃癌細胞および腺性胃細胞と強く反応することが示される。
モノクローナル抗体103/51の細胞性受容体は、以前は未知であった。本発明につながる実験の過程で、この細胞性受容体を同定することが可能であった。しかし、この同定は困難であることが示された。一方で、モノクローナル抗体103/51は、ウェスタンブロット解析中、非常に特異的なストリンジェンシー条件下でのみ、該受容体と反応する。他方で、さらなるタンパク質のアレイを用いると、変性アーティファクトに引き起こされる、非特異的反応が見られる。
配列決定解析によって、該受容体がCFR−1タンパク質に対応するが、CFR−1タンパク質と同一ではないことが示された。したがって、既知のCFR−1のものと対応する、1以上の決定基(リガンド)を有する糖タンパク質化合物を、さらに請求する。特に、本出願にしたがって、一次アミノ酸配列における少なくとも80%の対応と定義されるべき相同性が必要である。したがって、この受容体は、CFR−1のアイソフォームである。さらに、ヒト抗体103/51および/またはネズミ抗体58/47−69いずれかに対する特異的結合が必要である。
糖タンパク質上の特異的結合部位が炭水化物残基、すなわち糖残基である場合、特に対象となる。
特定の態様において、CFR−1タンパク質は、決定基として、付属書類S、細胞株23132にしたがったアミノ酸配列を有する。
抗体103/51の細胞性受容体は、タンパク質CFR−1のアイソフォームであり、腫瘍細胞、特に胃癌細胞に特異的であり、正常組織には存在しない。このアイソフォームの特異的受容体特性は、N連結を介してタンパク質主鎖に連結されている特別の糖構造に基づく。特異的結合パートナーを同定するためのスクリーニング法において、この腫瘍特異的受容体が使用可能である。本発明にしたがって、受容体に対する特異的結合パートナーは、CFR−1の腫瘍特異的糖構造に選択的に結合し、そして好ましくは、アポトーシスを誘導する能力を有する化合物である。これらの特異的結合パートナーは、腫瘍治療用の療法剤産生に、そして診断剤産生に使用可能である。
該タンパク質化合物は、精製、配列決定、およびトランスフェクションによって、CFR−1のアイソフォームと特徴付けられた。同一の反応および機能を有する精製分子からネズミ抗体を産生することにより、免疫組織化学染色および2つのCFR−1陰性細胞株のMTTアッセイを通じて、抗原103/51に関する特異性を確認した。CFR−1分子のアイソフォームは、ヒト抗体およびネズミ抗体両方によって検出され、上皮細胞の細胞膜に局在し、そしてCFR−1に関して先に記載されたもの(Burrusら, 1992, Mol. Cell. Biol. 12:5600−5609)とは異なる発現パターンを有する。
ニワトリ線維芽細胞から高親和性FGF結合タンパク質として単離されたCFR−1(Burrusら, 1992, Mol. Cell. Biol. 12:5600−5609)は、いくつかのFGFに結合し、そして細胞増殖制御に役割を有する可能性がある。チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)において、CFR−1は、ゴルジ体のみで発現されることが見出された(Burrusら, 1992, Mol. Cell. Biol. 12:5600−5609)が、突然変異型で分泌されることも可能である(Zuberら, 1997, J. Cell Physiol. 170:217−227)。CFR−1には、生物に応じて検出される、2つの変異体、ESL−1およびMG−160があり、これらは80%〜95%の配列相同性を共有し(Burrusら, 1992, Mol. Cell. Biol. 12:5600−5609;Stieberら, 1995, Exp. Cell Res. 219:562−570;Steegmaierら, 1995, Nature 373:615−620;Mourelatosら, 1996, DNA Cell Biol. 15:1121−1128)、そして他の既知のタンパク質とはいかなる配列相同性も共有しないようである。CFR−1およびその相同体(homologue)の機能および細胞分布は、比較的未知であり、そして矛盾している。内側ゴルジ・シアロ糖タンパク質であり、そしてラット脳から精製されたMG−160が、細胞内FGF輸送に役割を果たしていることが示されている(Zuberら, 1997, J. Cell Physiol. 170:217−227)。
最近の発見によって、このタンパク質の局在がゴルジ体に限定されないことが示されてきた。しかし、C末端で一部切除(trancated)すると、このタンパク質を形質膜および糸状仮足に局在化させることが可能である(Gonatasら, 1998, J Cell Sci. 111:249−260)。これはマウス好中球前駆細胞(32Dcl3)から単離された第三の相同体ESL−1が、ゴルジ体とともに、細胞表面上の微絨毛にも局在するという知見と一致する(Steegmaierら, 1997, J. Cell Sci. 110:687−694、Gonatasら, 1998, J. Cell Sci. 111:249−260)。ESL−1は、好中球におけるE−セレクチンのリガンドと同定され、およその分子量は150kDであった。ESL−1抗体を用いた免疫沈降によって、いくつかの癌性細胞株を含む多様な細胞から、このタンパク質の定義されていないアイソフォームを沈降可能であることが示された(Steegmaierら, 1995, Nature 373:615−620)。
癌性細胞において、CFR−1は主に膜に分布するため、記載した受容体がCFR−1のアイソフォームであると結論付けられる。CFR−1およびその相同体の多様な細胞分布は、おそらく、言及した結果に関与し、そして他のタンパク質に関して知られる現象である(Smalheiser, 1996, Mol. Biol. Cell 7:1003−1014)。悪性細胞における異なるグリコシル化パターンが形質膜への輸送を導く可能性があり、これによって分布の改変が引き起こされている可能性がある。
組織分布によって、CFR−1分子が、細胞活性化、および抗体Ki67を用いた染色により立証される増殖と相関していることが示される(Ramiresら, 1997, J. Pathol. 182:62−67)。正常な胃粘膜は、測定可能な量でこの受容体を発現しないが、H.ピロリが浸潤した上皮および形成異常上皮は、この抗原を有する。どちらの組織も増殖し、そして胃癌前駆症である可能性がある。
有効性が高いことを理解するには、健康な細胞に見られるCFR−1の構造と対照的に、特徴付けられるアイソフォームが、健康な細胞には見られず、もっぱら、迅速に増殖している細胞、すなわち迅速に分裂している細胞、例えば増殖段階および対応する前駆症段階にある腫瘍細胞のみに見られることに注目することが重要である。該受容体の機能は、本質的に、該受容体が、細胞が栄養摂取するためのエネルギー受容体として用いられ、そして癌細胞などの頻繁に分裂する細胞に特に優勢に配分されていることに基づく。この受容体が、胃癌においてのみでなく、むしろ、本質的に同一の反応機構を有するすべての上皮腫瘍にも適用を有するであろうことに特に注目すべきである。胃腫瘍にくわえ、これらの受容体の存在は、以下の腫瘍の癌性組織においても示された:食道、胃、腸、直腸、肝臓、胆嚢、膵臓、肺、気管支、乳房、頚部、前立腺、心臓、バレット、卵巣、および/または子宮の腫瘍。本発明にしたがった受容体に結合する、腫瘍に対して有効である抗体は、したがって、癌性細胞にターゲティングされる活性を有する(そして健康な細胞に対しての活性は持たない)。
既知の方法を用いて、例えばゲル電気泳動を用いて、測定可能な分子量がおよそ130kDであることから、該受容体構造が糖タンパク質であると同定可能であった。用語「およそ」は、当業者に認識可能であるように、この種のサイズ決定がどのような方法でも正確でなく、分子量決定法が変化するかまたは変動すると、測定値が変動するという事実に基づく。
この受容体の最も重要な適用分野は、診断および療法である。予防的適用には、該受容体の補助によってワクチン接種を達成することが可能であるように、抗体を刺激することを目的として、この受容体を薬剤用量で患者に投与する。抗体は、発生するいかなる腫瘍細胞の除去にも関与する。
しかし、腫瘍細胞が既に存在している場合の受容体の投与もまた、ありうる薬物療法である。投与された受容体は、抗体形成を強化し、そして増幅し、そしてしたがって、腫瘍細胞アポトーシスの上昇に、または補体が仲介する溶解に関与する。受容体の遮断は、増殖抑止を導くため、細胞は「餓死する」。
現時点までのアッセイによって、該受容体が以下の腫瘍前駆症を治療するのに特に適していることが立証されることが示された。胃の疾病に関しては、該受容体は、胃粘膜の形成異常および/または胃の腸化生を治療するのに適しており、そして/または細菌ヘリコバクター・ピロリに関連する胃粘膜の炎症を治療するのに適しており、そして胃の管状腺腫および管状絨毛腺腫を治療するのに適している。結腸の以下の疾患、特に結腸の管状腺腫、結腸の絨毛腺腫、および潰瘍性大腸炎における形成異常に対する適用もまた、示唆される。該受容体はまた、食道のバレット形成異常および食道のバレット化生にも適している。該受容体はまた、頚部の以下の疾患:頚部上皮内新形成(neoplasia)I、頚部上皮内新形成II、および頚部上皮内新形成IIIを治療するのにも適している。
最後に、上述の受容体はまた、気管支の扁平上皮化生および気管支の扁平上皮形成異常への投与にも適している。
上述の作用機構のため、該受容体は原則として、食道、胃、腸、直腸、肝臓、胆嚢、膵臓、肺、気管支、乳房、頚部、前立腺、心臓、バレット、卵巣、および/または子宮の腫瘍を治療するのに適している。
診断目的での該受容体の適用は、抗体が、特異的抗原/抗体相互作用のため、この受容体に結合する能力を使用する。この方法では、対応する抗体の存在、局在、および/または量に関する証拠を、受容体に結合する能力から得ることが可能である。同じ反応機構で、結合能を用いて、受容体を検出することが可能である。
特に抗体が腫瘍抗体である場合、これらを用いて腫瘍の存在を検出することが可能である。特に、該受容体を腫瘍マーカーとして使用可能である。
改良法において、該受容体を用いて抗腫瘍抗原を産生することが可能であり、ここで、該受容体に特異的に結合する能力に関して、腫瘍に対して潜在的に有効である化合物をアッセイして、そして陽性結果に際して、すなわち結合の発生に際して、この化合物を薬剤適用に用いる。もちろん、市場に出される薬剤を製造するのに、通常のように、適切に配合し、そして典型的な添加剤を添加することが必要である。
上述の受容体の補助によって、抗腫瘍医薬品を産生するために、ヒト抗体のみが考慮されるのでなく、むしろ、マウス抗体および/または任意の種いずれかのヒト化抗体も考慮されることに、明白に言及しなければならない。これはまた、抗体のタンパク質分解切断によって得られるような、FabおよびF(ab)および/またはFab’断片などの抗体断片にもあてはまる。これらにはまた、一本鎖抗体および/または四量体および/または二量体抗体型および/または二特異性抗体も含まれる。
さらに、モノクローナルマウス抗体を生成するのに、マウスにおいて免疫原性であるヒト腫瘍抗原を用いることが知られ、そしてこうした抗体はヒト抗原を特異的に認識可能であり、そしてしたがってヒトにおいて療法的に使用するのに適していることも知られる。
[発明の開示]
本発明の目的は、受容体構造の確立および該構造の使用である。しかし、「外来(foreign)」抗体および/またはマウス抗体をヒトに反復して注射すると、不都合な過敏性反応が生じ、そしてまた、循環抗体のクリアランス率の上昇が生じて、したがって抗体が標的位置に到達しないため、問題がある。
これらの理由から、マウス抗体の療法的な適切さを再度調べることが必要である。にもかかわらず、診断法と組み合わせた際の適切さは制限されない。ヒト化マウス抗体を得て、そしてこれらを療法目的に使用する可能性もまたある。これらの診断法の補助によって、存在する腫瘍だけでなく、前癌構造が性質決定される可能性もまた、明白である。
上述の受容体に加え、その構造が付属書類AおよびBに定義される、該受容体に特異的に結合するマウス抗体に関しての保護もまた請求する。すべての抗体に同一である領域は再生されず;個々の抗体に特徴的な領域を請求し、そして示した。
結果として、構造を記載し、CFR−1のアイソフォームと称すべき受容体によって、腫瘍のみならず、前癌構造の療法および診断が可能になる。さらに、該受容体に特異的に結合するマウス抗体の構造を記載する。
材料および方法
細胞培養および抗体精製
すべてのアッセイには、樹立胃腺癌細胞株23132(Henselら, 1999, Int. J. Cancer 81:229−235)を用いた。10%FCSおよびペニシリン/ストレプトマイシン(どちらも1%)を補ったRPMI−1640(PAA、オーストリア・ウィーン)中で、細胞を80%集密(confluency)まで増殖させた。記載するアッセイのため、トリプシン/EDTAを用いて細胞を剥離し、そして使用前にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄した。記載されるように(Vollmersら, 1994, Cancer 74:1525−1532)、ヒトハイブリドーマ細胞株103/51を産生し、そして増殖させた。別の箇所に記載されるように(Vollmersら, 1998, Oncol. Rep. 5:549−552)、IgM抗体の精製を行った。
膜抽出物の調製
Henselら(Henselら, 1999, Int. J. Cancer 81:229−235)によって記載されるように、細胞株23132を用いて、腫瘍細胞から膜タンパク質を単離した。簡潔には、集密腫瘍細胞をPBSで2回洗浄し、細胞スクレーパーで採取し、そして遠心分離し、そして低張緩衝液(20mM HEPES、3mM KCl、3mM MgCl)に再懸濁した。氷上で15分間インキュベーションし、その後、5分間超音波処理した後、10,000g、10分間の遠心分離によって核をペレットにした。スイングアウトローター中、100,000gで30分間、上清を遠心分離して、膜をペレットにした。低張緩衝液でペレットを洗浄した後、膜溶解緩衝液(50mM HEPES pH7.4、0.1mM EDTA、10%グリセロール、および1% Triton X−100)に再懸濁した。すべての溶液に、プロテアーゼ阻害剤(Boehringer, Mannheim、ドイツ)を添加した。
ウェスタンブロッティング
別の箇所に記載されるような標準的プロトコルを用いて(Henselら, 1999, Int. J. Cancer 81:229−235)、タンパク質の10%還元SDS−PAGEゲル電気泳動およびウェスタンブロッティングを行った。簡潔には、ブロッティングしたニトロセルロース膜を、2%低脂肪乳粉末を含有するPBSでブロッキングした後、10μg/ml精製抗体103/51とともに1時間インキュベーションした。Pierce(KMF、ドイツ・セントオーガスチン)のSuperSignal化学発光キットを用いて、二次抗体(ペルオキシダーゼ結合ウサギ抗ヒトIgM抗体(Dianova、ドイツ・ハンブルグ))を検出した。PBS+0.05% Tween−20で3回洗浄した後、二次抗体(ペルオキシダーゼ結合ウサギ抗ヒトIgM抗体(Dianova、ドイツ・ハンブルグ))をインキュベーションした。該反応は、Pierce(KMF、ドイツ・セントオーガスチン)のSuperSignal化学発光キットの補助によって検出した。
抗原103/51の精製
Pharmacia(ドイツ・フライブルグ)FPLC装置を用いたカラムクロマトグラフィーによって、抗原の精製を行った。サイズ排除クロマトグラフィーのため、Pharmacia Superdex 200カラム(XK16/60)に5mgの膜調製物を装填し、そして緩衝液A(100mM Tris/Cl、pH7.5、2mM EDTA、40mM NaCl、1% Triton X−100)を用いてクロマトグラフした。その後、溶出物を分画し、そして抗体103/51との反応に関して、ウェスタンブロット解析で調べた。緩衝液Aを用いて、陽性分画をMonoQ(5/5)カラムに装填した。緩衝液B(100mM Tris/Cl、pH7.5、1M NaCl、2mM EDTA、1M NaCl、1% Triton X−100)を用いて、結合タンパク質を直線勾配で溶出し、分画し、そしてクーマシー染色SDS−PAGEおよびウェスタンブロット解析で調べた。陽性バンドをゲルから切り出し、そして配列決定するか、またはマウス免疫に用いた。
MALDIペプチドマッピング
目的のバンドを切除し、そして約1mmx1mmの小片に切った。別の箇所に記載されるように(Shevchenkoら, 1996, Anal. Chem. 68:850−858)、ゲル小片を洗浄し、DTTで還元し、ヨードアセトアミドでS−アルキル化し、そしてトリプシン(未修飾、配列決定等級、Boehringer)でゲル内消化した。37℃で3時間消化した後、0.3μlの消化溶液を取り除き、そして遅延引き出し機構(delayed extraction)を備えたBruker反射MALDI−TOF(Bruker−Franzen、ドイツ・ブレーメン)上で、MALDIペプチド・マスマッピングに供した。試料調製には、薄膜技術を採用した(Jensenら, 1996, Rapid. Commun. Mass. Spectrom. 10:1371−1378)。トリプシン・ペプチドマスを用い、自社開発したPeptideSearchソフトウェアプログラムによって、非重複タンパク質配列データベースを検索した。
CFR−1アンチセンスベクターのクローニングおよびトランスフェクション
記載されるように(Henselら, 1999, Int. J. Cancer 81:229−235)、RNA単離、cDNA合成、およびPCRを行った。簡潔には、塩基対802〜1699の範囲の897bp断片を増幅するPCRには、以下のプライマーを用いた:CFR−For 5’ GCTTGGAGAAAGGCCTGGTGAA 3’、CFR−Rev 5’ TGGCACTTGCGGTACAGGACAG 3’。以下の周期プロフィールを用いて増幅を行った:95℃2分間、その後、35周期の94℃30秒間;60℃30秒間;72℃60秒間、および72℃4分間の最終伸長。前述のように(Henselら, 1999, Int. J. Cancer 81:229−235)、pCR−Script Amp SK(+)ベクターへのクローニングおよびDNA配列決定を行った。挿入物をpHook−2ベクター(Invitrogen、オランダ・リーク)にサブクローニングし、そして再び、配列決定によって、クローニングを管理した。
供給者のマニュアルにしたがい、PrimeFector試薬(PQLab、ドイツ・エルランゲン)を用いて、pHOOK2−抗CFR−1での細胞株23132のトランスフェクションを達成した。簡潔には、プラスミドDNAを10μg/mlに希釈し、そして1:10の比で、プライム因子試薬を血清不含増殖培地に添加した。希釈したプラスミドDNA(450μl)、希釈したPrimefector試薬(90μl)、および血清不含培地(460μl)を混合し、そして室温でインキュベーションした。60ミリリットル細胞培養プレート(70%集密)を血清不含培地で2回洗浄し、そしてその後、PrimeFector/DNA混合物を一滴ずつ添加した。37℃および7%COで18時間、細胞をインキュベーションし、その後、血清不含増殖培地を、10%FCSを含有する増殖培地と交換し、そしてCFR−1発現を調べる前に、細胞をさらに24時間インキュベーションした。
フローサイトメトリー
トランスフェクション48時間後、トリプシン/EDTAによって細胞株23132を培養プレートから剥離し、洗浄し、そして続いて、抗体103/51およびヒト・アイソタイプマッチ対照抗体(Chromopure、ヒトIgM)とともに、氷上で15分間インキュベーションし、その後、FITC標識ウサギ抗ヒトIgM抗体(Dianova)とともに、氷上で15分間インキュベーションした。0.01%アジ化ナトリウムを含有するPBS中で、抗体を最適に希釈した。フローサイトメトリー(FACScan;Becton Dickinson、米国)によって細胞を解析した。
グリコシダーゼアッセイ
剥離し、そして洗浄した細胞を、10%FCSを含有するRPMI−1640に再懸濁し、そして氷上で1時間インキュベーションし、その後、計数し、そしてサイトスピンを調製した。風乾後、サイトスピン調製物をアセトン固定し(10分間)、洗浄し、そして20μU/ml O−グリコシダーゼまたは5mU/ml N−グリコシダーゼ(Boehringer)とともに、37℃で4時間インキュベーションした。その後、スライドを洗浄し、そして免疫組織化学的に染色した。
膜タンパク質の脱グリコシル化のため、脱グリコシル化緩衝液(50mM PO緩衝液、pH7.4)中で希釈した1mU/ml N−グリコシダーゼとともに、膜抽出物を、37℃で16時間インキュベーションした。対照実験として、脱グリコシル化緩衝液のみと抽出物をインキュベーションした。その後、上述のように、SDS−PAGEによって抽出物を分離し、そしてウェスタンブロットを行った。
ネズミモノクローナル抗体の産生
抗体103/51の精製抗原5μgを用いて、BALB/cマウスを17日以内に2回免疫し、そして第二の免疫の4日後に殺した。先に記載されるように(Vollmersら, 1985, Cell 40:547−557)、脾臓を機械的に破壊し、そして1x10のNS0細胞と融合させた。免疫組織化学染色およびウェスタンブロット解析における反応によって、抗体産生ハイブリドーマを試験した。陽性に反応するクローン58/47−69をさらなる実験に用いた。
パラフィン切片の免疫組織化学染色
パラフィン包埋したヒト胃粘膜および腫瘍の切片を作成し(5μm)、脱パラフィン処理し、そしてPBSで希釈したBSA(15mg/ml)で30分間ブロッキングした。ハイブリドーマ103/51、または58/47−69の上清、BSA/PBS(Dako、ドイツ・ハンブルグ)で1:15に希釈した、Ki67(Loxo、ドイツ・ドッセンハイム)またはマウス抗サイトケラチン8抗体とともに、切片を、加湿インキュベーター中で2時間インキュベーションした。その後、これらをTris/NaClで3回洗浄し、その後、ウサギ血清を含有するPBS(抗体103/51)中、またはヒトAB血漿を含有するPBS(抗体58/47−69および抗サイトケラチン)中で、1:50に希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ヒトコンジュゲートまたはウサギ抗マウスコンジュゲート(Dako)とともにインキュベーションした。Tris/NaClで3回洗浄し、そしてPBS中で10分間インキュベーションした後、ジアミノベンジジン(0.05%)−過酸化水素(0.02%)を用いて室温で10分間染色した。流水下で反応を停止し、そして切片をヘマトキシリンで対比染色した。
生存細胞およびアセトン固定細胞の免疫組織化学染色
生存細胞染色のため、細胞を剥離し、洗浄し、そして1x10細胞/mlに希釈した。1mlの細胞懸濁物を1,500gで5分間遠心分離した。完全RPMIで40μg/mlに希釈した抗体を、最終体積1mlまで添加し、そして氷上で90分間インキュベーションした。その後、1,500gで5分間遠心分離して細胞をペレットにし、そして500μlのRPMIに再懸濁した。細胞懸濁物200μlを用いてサイトスピン調製物を調製し、そして30分間風乾した。細胞をアセトン中で30分間固定し、そしてTris/NaClで3回洗浄した。HRP結合ウサギ抗ヒトIgM(DAKO)をPBS/BSA(0.1%)で1:50に希釈し、そして室温で30分間インキュベーションした。3回洗浄した後、上述のように染色を行った。
アセトン固定細胞の染色には、上述のように、サイトスピンを調製し、室温で風乾し、そしてアセトン中で固定した。その後、サイトスピンをPBS/BSA(0.1%)で15分間ブロッキングし、そして10μg/mlの一次抗体で30分間インキュベーションした後、3回洗浄した。二次抗体でのインキュベーションおよび染色を、上述のように行った。
MTT増殖アッセイ
樹立細胞株23132を用いたMTTアッセイを、記載されるように(Vollmersら, 1994, Cancer 74:1525−1532)行った。簡潔には、トリプシン処理した細胞を、完全増殖培地中、1x10細胞/mlに希釈し、そして細胞懸濁物50μlを96ウェルプレートの各ウェルに添加した。その後、完全増殖培地を用いて、示した濃度に希釈した抗体50μlをウェルに添加し、そしてプレートを37℃で1〜2日間、加湿インキュベーター中でインキュベーションした。測定のため、50μlのMTT(3(4,5ジメチルチアゾール)−2,5ジフェニルテトラゾリウムブロミド)溶液(5mg/ml)を各ウェルに添加し、そしてプレートを30分間インキュベーションした。インキュベーション後、プレートを800gで5分間遠心分離し、MTT溶液を取り除き、染色した細胞ペレットを150μlジメチルスルホキシドに溶解し、そして540nmおよび690nmの波長で、吸収を測定した。
CFR−1の配列を決定する方法
cDNAを合成するため、QiagenのRNeasyキットの補助によってRNAを調製した。調製のため、1x10細胞を、氷冷PBSで2回洗浄し、そして1000xgで5分間遠心分離してペレットにし、そして製造者の説明にしたがってRNAを調製した。5μgのRNA(1〜5μl溶液)を1μlのオリゴ−dT15(1μg/μl)および2μlのランダムプライマー(40μM)と混合し、そしてHOを用いて8μlの総体積にした。65℃で10分間、RNAを変性し、そして続いて試料を氷上で冷却した。その後、5.2μlのDEPC−HO、5μlの5x逆転写酵素緩衝液、2.5μlのdNTP(10mMあたり)、2.5μlのDTT(250mM)、0.8μlのRNasin(400U)、および1μlのM−MLV逆転写酵素(200U)からなる17μlのマスターミックスをピペットで添加した。37℃で70分間、cDNA合成を行い、そして続いて、95℃に5分間加熱することによって、合成を終結させた。1〜5μlのcDNAをPCRマスターミックスと混合し、そしてHOを用いて25μlの総体積にした。PCRマスターミックスは、2.5μlの10xTaqポリメラーゼ緩衝液、0.5μlの10mM NTP、1.5〜2μlの25mMのMgCl、各0.5μlの20pM 3’プライマーおよび5’プライマー、並びに0.2μlのTaqポリメラーゼ(1U)からなった。多様なPCR産物の増幅条件を以下の表に列挙する。
多様なcDNAの増幅に用いたPCRプログラムの概観
Figure 0004344237
プライマー配列
PCRに用いたオリゴヌクレオチドの配列
Figure 0004344237
Applied Biosystems社の配列決定装置を用いて、配列決定を行った。クローニングしたPCR産物を配列決定するのに、以下のオリゴを用いた:
Figure 0004344237
プラスミドDNA 3μlを、プライマー1μl(3.2pM)、HO 11μl、およびAbiPrism配列決定キットの反応混合物5μlと混合し、そして以下のパラメーター:
Figure 0004344237
を用いて、サーモサイクラー中で25周期インキュベーションした。
オリゴおよびdNTPを除去するため、Sephadex G−50カラムを通過させて反応混合物を精製した。この目的のため、100μlピペットチップの上端までカラム材料を装填し、そして2000xgで3分間遠心分離した。続いて、試料を適用し、そしてこの小カラムを再び遠心分離した。その後、2μl酢酸ナトリウム(pH5.2)および50μl 100%エタノールによってDNAを沈殿させ、そして13,000xgで15分間遠心分離することによってペレットにした。乾燥後、DNAを3μlホルムアミド/25mM EDTA(5:1)に入れ、そして配列決定装置中で解析した。
配列決定解析
すべてのクローニングから、少なくとも5クローンを配列決定した。Taqポリメラーゼを用いた増幅中および/または配列決定中に生じるエラーを除去するため、Windows用のDNAsisソフトウェアの補助によって、クローニングしたPCR断片の配列を互いに比較し、そして両方の読み取り方向から、すべてのクローンのコンセンサス配列を確証した。DNA配列をアミノ酸配列に書き直すことによって、サイレント突然変異の数およびアミノ酸置換突然変異の数を決定した。MG160およびCFRの配列をNCBIデータバンクから得て、そしてWindows用のDNAsisプログラムを用いて、配列決定したPCR産物の配列と比較した。

表1:異なる組織と抗体103/51の反応パターン
抗体染色を以下のようにスコア付けした:−=染色なし、+=中程度の染色、++=強い染色。HCC=肝細胞癌、増殖領域、腺小窩(glandular foveola)、球状帯、索状帯(膜染色)、小胞体の集合管。
付属書類A
付属書類B
付属書類S:既に公表されているCFR−1およびMG160の配列に対する、細胞株23132から得たCFR−1のアミノ酸配列の比較。
これらの実験的比較は主に、細胞株23132から得たCFR−1タンパク質が、先に知られていたCFR−1配列と同一でなく、そのアイソフォームに相当することを示す。先に知られ、そして公表されていたCFR−1およびMG160に関連する相違に加えて、該アミノ酸配列は、広く請求する受容体の特別の態様とみなされ、そして初めて、そして特別に同定された位置によって固有に特徴付けられる。
結果
抗原103/51の精製および同定
ウェスタンブロット解析を用いて、抗体103/51が胃癌細胞上のおよそ130kD膜タンパク質に結合することが示された。我々は、サイズ排除クロマトグラフィーおよび陰イオン交換クロマトグラフィーを連続して行って、このタンパク質を前精製した(図1a)。クーマシー染色した分離用SDS−PAGEからこのタンパク質を切除し、一部をマウスモノクローナル抗体の産生に用い(以下を参照されたい)、そして一部を、Shevchenkoら(1996, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 93:14440−14445)に概略される方法を用いて、タンパク質を同定するのに用いた。トリプシンで3時間、ゲル内消化した後、総消化体積の約1%を取り除き、そして高マス精度MALDIペプチド・マスマッピングに供した(消化物の残りは、MALDI MSが明確な同定につながらなかった場合に備え、ナノエレクトロスプレー解析のために取り置いた)。MALDI解析には、タンパク質消化物のフェントモル量を消費したが、それにもかかわらず、データベース検索によって、マス精度50ppm以内で、35ペプチドがCFR−1配列にマッチした。これらのペプチドは、CFR−1配列の29%の範囲に渡り、したがって、およそ134kDの計算分子量を有する該タンパク質を明確に同定した(Burrusら, 1992, Mol. Cell Biol. 12:5600−5609)(図1b)。
抗体103/51の結合および生存細胞染色に対する、CFRアンチセンスベクターでの細胞株23132の一過性トランスフェクションの影響
免疫組織化学およびフローサイトメトリーを用いて、胃癌細胞株23132のアンチセンストランスフェクションの影響を調べた。これを行うため、802および1699塩基対の間の領域に隣接するCFRの897bpのPCR断片を、CMVプロモーターに対してアンチセンス方向で、pHOOK−2ベクターにクローニングした。中間工程で、洗浄した細胞をpHOOK−CFRアンチセンスベクター、pHOOK−lacZ、およびpHOOKベクターでトランスフェクションした。トランスフェクションは、β−ガラクトシダーゼアッセイによって管理した(データ未提示)。トランスフェクション48時間後、サイトスピン調製物を調製し、そして抗体103/51および対照としての抗サイトケラチン18で染色した(データ未提示)。
免疫組織化学によって、モックトランスフェクション細胞と比較して、pHOOK−CFRアンチセンスベクターでトランスフェクションした細胞において、染色の明らかな減少が示された(図2a〜b)。これによって、抗体103/51がCFR−1に結合することが確認された。どちらの染色にも見られた、細胞質のわずかな染色は、アセトン固定細胞に対するヒトIgM抗体での染色でしばしば観察される非特異的結合のためである可能性がある。また、膜発現およびトランスフェクションの影響をフローサイトメトリーによっても試験した(図2g〜i)。データによって、CFR−1アンチセンスベクターで細胞をトランスフェクションした後、抗体103/51の結合が減少することが示される。しかし、未処理細胞または対照ベクターpHOOK−2でトランスフェクションした細胞は、細胞株23132に明らかな結合を示し、該細胞膜上でCFR−1が発現していることが示される。
CFR−1アイソフォームの特定の膜分布を調べるため、細胞株23132およびいくつかの非胃癌細胞株を用いて生存細胞染色を行った。細胞株23132に対しては明らかな染色が見られた(図2c、d)が、ヒト肺腺癌細胞株Colo−699(図2e、f)およびヒト類表皮肺癌細胞株EPLC−272H(データ未提示)は、明らかに陰性であった。このデータによって、記載するCFR−1アイソフォームがすべての癌性細胞株に発現されているのではなく、そして23132細胞に限定された膜染色によって、このCFR−1アイソフォームが、これまでにCFR−1に関して記載されてきたものとは異なる分布を有するようであることが示される。
グリコシダーゼアッセイ
CFR−1は、5つのありうるN−グリコシル化部位を持つシアロ糖タンパク質であり、そしてグリコシダーゼFでの処理によって、この分子がこれらの部位でグリコシル化されていることが示されている(Steegmaierら, 1995, Nature 373:615−620)。腫瘍反応性抗体はしばしば、炭水化物残基と反応するため、抗体103/51の場合もそうであるかどうかを調べた。細胞株23132のサイトスピン調製物を、O−グリコシダーゼおよびN−グリコシダーゼとともに4時間インキュベーションし、そしてその後、抗体103/51を用いた免疫組織化学染色に供した。N−グリコシダーゼで細胞を処理すると、103/51染色の劇的な減少が導かれた(図3b)が、脱リン酸化緩衝液(図3a)とのインキュベーション、またはO−グリコシダーゼでの消化(データ未提示)は、抗体103/51の結合に影響を持たなかった。これによって、抗体103/51結合の特異性は、糖残基に位置付けられるはずであり、そして一次タンパク質配列には位置付けられないことが示される。
この効果をさらに管理するため、細胞株23132の膜抽出物を16時間、脱グリコシル化し、そしてウェスタンブロットを調製して、そして抗体103/51で染色した。対照溶解物に比較して、N−グリコシダーゼとインキュベーションした溶解物に対する反応には、減少が見られた(図3c)。
ネズミ抗体の産生および胃腺癌のパラフィン切片の免疫組織化学染色
CFR−1に対する商業的な抗体は入手不能であるため、特異性が強化され、そしてCFR−1発現をさらに性質決定するモノクローナル抗体を産生するために、クーマシー染色SDS−ゲルから溶出した精製タンパク質を用いて、マウスを免疫した。ヘテロ骨髄腫(heteromyeloma)NS0と融合することによって、脾臓細胞を不死化した。免疫組織化学染色に関して、150のクローンを試験した。陽性クローンを再度クローニングし、そしてさらなる性質決定には、クローン58/47−49(IgM)を用いた。ヒト抗体103/51およびネズミ抗体58/47−69の結合特性を調べるため、15の異なる胃腺癌および1つの腺腫のパラフィン切片を染色した。正常上皮組織の腺細胞の同一の染色、および癌細胞の強い染色が見られた(図4)。簡潔には、初期癌(n=2)は、どちらの抗体でも染色された。腸型癌腫に対しては、どちらの抗体も5つの症例のうち4つを染色し、散在型癌に対しては、すべての症例(n=4)が染色され、そして中間型は、どちらの抗体を用いても50%(n=4)が陽性であった。これらの結果によって、胃癌の大部分の症例で、CFR−1が高発現されていることが示される。調べた腺腫は、異なる染色パターンを示し、陽性細胞は、正常細胞から形質転換細胞への推移中にのみ見られた。
胃粘膜に対する抗体103/51での免疫組織化学染色
胃粘膜に対する抗体103/51の反応パターンを、より詳細に調べるため、炎症を伴わない胃組織、H.ピロリ関連慢性活性胃炎、高い等級の形成異常および胃腺癌に対して、免疫組織化学染色を行った。非炎症胃組織に対しては、反応は見られなかった(図5)。しかし、H.ピロリ胃炎患者の粘膜では、主に小窩細胞の基底領域に染色が見られた。抗体103/51の染色パターンは、Ki67染色によって示される活性化パターンと強い相関を示す(Ramiresら, 1997, J. Pathol. 182:62−65)。胃形成異常の増殖領域で、抗体103/51のより強い染色が見られ、これもまた、Ki67染色と相関していた。最も強い染色は、胃腺癌の増殖領域で見られた。
異なる組織に対する抗体103/51および58/47−69の免疫組織化学染色
抗体103/51および58/47−69を用いた、パラフィン切片の免疫組織化学染色によって、他の癌性組織および正常組織におけるCFR−1の発現を調べた。15の癌性組織(胃癌とは異なる)のうち、抗体103/51は13の症例で染色を示した(図6、表1a)。肺の未分化(anaplastic)細胞に対しては陰性染色が観察され、これによって、免疫組織化学染色、並びに細胞株Colo−699およびEPLC−272Hを用いたMTTアッセイ由来の結果が確認された。このデータによって、CFR−1の過剰発現および悪性形質転換細胞の細胞膜への分布が示される。試験した28の正常組織上で、発現は、3つの腸臓器上のみに限定されていた(表1b)。胃の腺小窩、並びに副腎の球状帯および索状帯上で膜染色が観察され、一方、腎臓の集合管ではゴルジ体の染色が見られた(図5)。これによってさらに、この抗原が、Burrusら(1992, Mol. Cell Biol. 12:5600−5609)に先に記載されているCFR−1と性質決定されることが確かめられた。
ヒトおよびネズミモノクローナル抗体での刺激
我々の先の刊行物(Vollmersら, 1994, Cancer 74:1525−1532;Henselら, 1999, Int. J. Cancer 81:229−235)に記載するように、抗体103/51は、in vitroで細胞株23132の刺激を導く。抗体103/51でのこの刺激を、増殖の標準的なアッセイであるミトコンドリア・ヒドロキシラーゼアッセイ(MTT)を用いて測定した(Carmichaelら, 1987, Cancer Res. 47:936−942)。抗体103/51の刺激特性をさらに調べるため、細胞株23132を多様な濃度の精製抗体とインキュベーションした。濃度依存刺激が見られ、最大活性は4μg/mlで見られた(図7a)。濃度がこれより高いと、刺激のわずかな減少が示された。
ネズミ抗体58/47−69が細胞増殖に同じ影響を有するかどうか試験するため、同程度の量の精製抗体を用いて、MTT刺激アッセイを行った。図7bに見られるように、どちらの抗体もin vitroで細胞株23132の刺激を導く。このことによって、どちらの抗体も同一の特異性を有することがさらに確認される。
抗体103/51およびネズミ抗体58/47−69の刺激がCFR−1への結合によって仲介されていることを確認するため、対照ベクターpHOOK−2およびCFR−1アンチセンスベクターで細胞をトランスフェクションし、そしてMTTアッセイにおいて、トランスフェクション細胞を試験した。トランスフェクションの陽性対照として、細胞をまた、pHOOK−2−lacZベクターでもトランスフェクションし、その後、βガラクトシダーゼ染色した(データ未提示)。非トランスフェクション細胞および対照ベクターpHOOK−2でトランスフェクションした細胞で、同程度の刺激が観察されたため、トランスフェクション法によって両抗体の刺激効果が減少した可能性は排除される。対照的に、CFR−1アンチセンスベクターでトランスフェクションした細胞は、明らかに、刺激の減少を示した(図7c)。
最後に、抗体103/51による刺激が、CFR−1以外の受容体によって仲介されているのではないことを立証するため、細胞株23132を用いてMTT刺激アッセイを行い、そしてこれをCFR−1陰性肺癌細胞株Colo−699およびEPLC−272Hと比較した。細胞株23132は上述のように刺激されるが、2つの肺癌細胞株は、抗体103/51によるいかなる刺激も示さず(図7d)、免疫組織化学で観察された結果が確認される。
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抗体103/51の抗原の同定を示す。a)胃癌細胞株23132の膜抽出物からの抗原タンパク質精製。膜分画をクロマトグラフィー法によってプロセシングし、そして全膜分画(レーン2)、または精製タンパク質(レーン3)をクーマシーで染色した(レーン1:10kDaラダー)。細胞株23132の膜分画に対する抗体103/51を用いたウェスタンブロット解析によって、およそ130kDの分子量のタンパク質との単一の反応が示された(レーン4)。プロセシングした膜抽出物の特異性を、103/51を用いたウェスタンブロッティング(レーン5)によって管理した。矢印で示すタンパク質バンドを分離用ゲルから切除し、そしてMALDIマスマッピングおよびマウスの免疫に用いた。b)高分解能MALDIペプチド・マスマッピングによる、ゲル分離された130kDaタンパク質の同定。「」で示したピークは、50ppmより優れたマス精度で、U28811ヒト・システインリッチ線維芽細胞増殖因子受容体(CFR−1)のトリプシンペプチドの計算されたマスにマッチする。「T」で示したピークは、トリプシン自己分解産物に対応する。挿入図は、m/z 1707.818のピークのマス解像度(m/Δm=9000)を示す。 抗体103/51染色および生存細胞染色に対するCFR−1アンチセンストランスフェクションの影響(倍率200x)を示す。a)対照ベクターで一過性にトランスフェクションし、そしてアセトン固定した細胞株23132は、抗体103/51で強い染色を示す。b)CFR−1アンチセンスベクターで一過性にトランスフェクションした細胞では、染色の減少が見られる。c)免疫組織化学染色において、バックグラウンド染色を減少させるため、細胞株23132で生存細胞染色を行った。明らかな膜染色が見られる。d)細胞株23132に対する対照生存細胞染色(二次抗体のみ)。e)抗体103/51を用いた細胞株Colo−699に対する生存細胞染色が陰性であることによって、この細胞株がCFR−1発現に関して陰性であることが示される。f)細胞株Colo−699に対する対照生存細胞染色(二次抗体のみ)。g)抗体ChromopureヒトIgM(灰色)および103/51を用いた細胞株23132のフローサイトメトリー。h)対照ベクターpHOOK−2でトランスフェクションした細胞の、フローサイトメトリーを用いた、トランスフェクション48時間後の解析。i)CFR−1アンチセンスベクターでトランスフェクションした細胞は、抗体103/51結合の明らかな減少を示す。 抗体103/51を用いた染色に対する脱グリコシル化の影響を示す。a)脱グリコシル化緩衝液でインキュベーションし、そしてアセトン固定した細胞(23132)は、抗体103/51で強い染色を示す。b)N−グリコシダーゼで処理し、その後、アセトン固定した細胞(23132)は、染色の明らかな減少を示す。c)ウェスタンブロット解析における抗体103/51との反応に対する、細胞株23132の膜抽出物の脱グリコシル化の影響。脱グリコシル化緩衝液(緩衝液)で16時間インキュベーションした抽出物は、染色に関して、未処理抽出物(対照)といかなる相違も示さない。N−グリコシダーゼとインキュベーションすると、染色が明らかに減少する(N−グリコ)。 胃腺癌に対する、ネズミ抗体58/47−69および103/51での免疫組織化学染色を示す。抗体103/51およびネズミ抗体58/47−69の特異性が同一であることを示すため、散在型胃腺癌を、ヘマトキシリン−エオジン(a)、抗体103/51(b)および58/47−69(c)、および陽性対照としての抗サイトケラチン18で染色した。(c)および(d)の染色が同一であることは、特異性が同一であることを示す(矢印=腫瘍細胞)。 異なる胃組織に対する抗体103/51の免疫組織化学染色を示す。胃組織の凍結切片を、HE、抗体Ki67(増殖している細胞を示すための抗体)および抗体103/51によって染色した(倍率x100)。a)炎症を起こした胃組織、b)H.ピロリが誘導した胃炎(挿入図は、示した腺の拡大図を示す)、c)形成異常、d)胃腺癌。 異なる癌性組織および正常組織に対する、抗体103/51での免疫組織化学染色を示す。以下の組織に対する抗体103/51の染色を示す:ファーター膨大部の癌腫(a)、乳癌浸潤小葉(b)、結腸の腺癌、および染色されない結腸の正常ビーカー状細胞上皮(c)、肝細胞癌(d)、副腎の球状帯および索状帯(e)、ゴルジ体の腎臓特異的染色の集合管(矢印)(f)。a〜dの矢印は腫瘍細胞を示し、(c)の赤い矢印はビーカー状細胞であり、(f)の矢印はゴルジ体を示す(倍率は、(g)が200xである以外、400x)。 比色MTTアッセイによって測定される抗体103/51および58/47−69を用いた細胞株の刺激を示す。a)精製抗体103/51を用いた抗体価測定(titration)によって、4μg/mlまでの刺激の増加が示される。より高い濃度は、より高い刺激にはつながらない(c=対照、抗体を添加しない)。b)等濃度(4μg/ml)の精製抗体103/51および58/47−69を用いたMTTアッセイによって、インキュベーション1〜2日後、腫瘍細胞23132の同程度の刺激が示される(対照1=chromopureヒトIgM、対照2、相関しないマウスIgM)。c)細胞株23132を対照ベクターpHOOK−2またはCFR−1アンチセンスベクターで一過性にトランスフェクションし、24時間インキュベーションし、そして4μg/mlの精製抗体103/51で24時間刺激した後、MTTアッセイで試験した。トランスフェクションしていない細胞もまた、対照としてインキュベーションした(対照、相関しないヒトIgM)。d)異なる上皮腫瘍細胞株に対して、等濃度(4μg/ml)の抗体103/51を用いたMTT−アッセイによって、抗体添加24時間後、CFR−1陽性細胞株23132に対してのみ、刺激が示される。CFR−1陰性細胞株Colo−699およびEPLC−272Hは、抗体103/51によるいかなる刺激も示さない。

Claims (2)

  1. 配列番号2の配列を含む精製ポリペプチドであって、該ポリペプチドがヒト腺癌細胞株23132に特異的に結合する、ポリペプチド。
  2. 該ポリペプチドが配列番号4の配列をさらに含む、請求項1記載の精製ポリペプチド。
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