JP4343420B2 - 極性基含有分岐型オレフィン共重合体および該共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
極性基含有分岐型オレフィン共重合体および該共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は極性基含有分岐型オレフィン共重合体およびこの共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、極性樹脂との相容性、接着性に優れ、また表面親水性、耐電防止性に優れる極性基含有分岐型オレフィン共重合体および熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
一般にポリオレフィンは、成形性、耐熱性、機械的特性、衛生適合性、耐水蒸気透過性などに優れ、成型品の外観が良好であるなどの特長を有することから、押出成型品、中空成型品、射出成型品などに広く使用されている。
しかし、ポリオレフィンは分子中に極性基を含まないため、ナイロン、EVOHなどの極性樹脂との相容性や接着性が低く、これらの材料とブレンドして利用したり、積層して利用したりすることが困難であった。また、ポリオレフィンからなる成形体は表面親水性、耐電防止性などに劣っているという問題点もあった。
【0003】
このような問題を解決するために従来より、ポリオレフィンに極性基含有モノマーをラジカル重合を利用してグラフトし、極性物質との親和性を向上させる方法が広く行われているが、この方法ではグラフト反応と並行してポリオレフィン同士の分子間架橋や分子鎖の切断が起こるため、グラフト重合体と極性樹脂との粘度マッチングが難しく、相容性が十分でない場合があった。また、分子間架橋によって生成するゲル分や、分子鎖の切断によって生成する目やに(ダイのリップに付着する異物)などによって成形物の外観が悪くなる場合もあった。
【0004】
また、表面親水性、耐電防止性を向上させるために、低分子量の界面活性剤をポリオレフィンに少量添加して成型する方法が行われているが、この方法では、添加した界面活性剤が表面にブリードアウトしてくるため、成形後にフィルム表面が白化する問題が生じる場合があった。また、表面にブリードアウトした界面活性剤は付着した水滴などと流出してしまうため、効果が長期間持続しない問題が発生する場合もあった。
【0005】
そこで、本発明者らは上記問題点に鑑み検討した結果、特定の分子構造を有する共重合体およびこれを含む組成物が、極性樹脂との相容性、接着性に優れ、また表面親水性、耐電防止性に優れることを見出し本発明を完成するに至った。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、極性樹脂との相容性、接着性に優れ、また表面親水性、耐電防止性に優れた極性基含有分岐型オレフィン共重合体および熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的としている。
【0007】
【発明の概要】
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体は、下記一般式(1)で表される構成単位および下記一般式(2)で表される構成単位と、必要に応じて下記一般式(3)で表される構成単位とがランダムに結合してなり、構成単位(1)と、構成単位(2)および構成単位(3)の合計とのモル比((1):((2)+(3))が、99.9:0.1〜30:70であり、重量平均分子量(Mw)が5000〜130万の範囲であることを特徴としている。
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、R1は炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基または水素原子を示し、R2は炭素原子数6〜20の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示し、R3はヘテロ原子またはヘテロ原子を含む基を示し、rは0を示し、Zはメタクリル酸メチルのアニオン重合によって得られるセグメントまたはエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドの開環重合によって得られるセグメントを示し、Xは水酸基を示し、pは1〜3の整数、qは0、かつp+q≦3であり、pが2または3のとき−O−Zは互いに同一でも異なっていてもよく、この場合においてrが0のとき−O−ZはR2の同一または異なる原子に結合していてもよく、mは0を示し、nは1〜3の整数を示し、nが2または3のときXは互いに同一でも異なっていてもよく、この場合においてmが0のときXはR2の同一または異なる原子に結合していてもよい。)。
【0010】
本発明に係る極性基含有オレフィン分岐型共重合体は、分子量分布が3以下であることが好ましく、13C-NMRスペクトルにおけるTαα+Tαβに対するTαβの強度比(Tαβ/(Tαα+Tαβ))が1.0以下であることも好ましい。
【0011】
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、上記極性基含有分岐型オレフィン共重合体を含むことを特徴としている。
【0012】
【発明の具体的説明】
以下、本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体および該共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物について具体的に説明する。
極性基含有分岐型オレフィン共重合体
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体は、下記一般式(1)で表される構成単位(以下、構成単位(1)という。)および下記一般式(2)で表される構成単位(以下、構成単位(2)という。)と、必要に応じて下記一般式(3)で表される構成単位(以下、構成単位(3)という。)とからなる。
【0013】
【化3】
【0014】
一般式(1)中、R1は炭素原子数1〜18の直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素基から選ばれる1種の基または水素原子を示す。
炭素原子数1〜18の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基としては、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、2-メチルプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、1,1-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、1-エチル-1-メチルプロピル、1,1-ジエチルプロピル、2-エチルヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルなどが挙げられる。これらの中では、炭素原子数1〜10、特に炭素原子数1〜6のものが好ましい。
【0015】
一般式(2)および(3)中、R2は飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基などの炭化水素基を示す。
飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数1〜20の直鎖状または分岐状の炭化水素基が挙げられ、具体的には、メチレン、エチレン、トリメチレン、メチルエチレン、テトラメチレン、メチルトリメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、ウンデカメチレン、ドデカメチレン、テトラデカメチレン、ペンタデカメチレン、ヘキサデカメチレン、ヘプタデカメチレン、オクタデカメチレン、ノナデカメチレン、イコサメチレンなどが挙げられる。
【0016】
脂環族炭化水素基としては、その構造の一部に脂環構造を有する炭素原子数3〜20の基が好ましく、具体的にはシクロプロピレン、シクロペンチレン、シクロヘキシレン、シクロオクチレンなどが挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、その構造の一部に芳香環を有する炭素原子数6〜20の基が好ましく、具体的には−Ph−、−Ph−CH2−、−Ph−(CH2)2−、−Ph−(CH2)3−、−Ph−(CH2)6−、−Ph−(CH2)10−、−Ph−(CH2)11−、−Ph−(CH2)12−、−Ph−(CH2)14−などが挙げられる。
【0017】
一般式(2)において、R2の価数はrが1でありR3がR2に結合している場合は2価であり、rが0でありp個の(−O−Z)とq個のXがR2に結合している場合は(p+q+1)価である。
また一般式(3)において、R2の価数はmが1でありR3がR2に結合している場合は2価であり、mが0でありn個のXがR2に結合している場合は(n+1)価である。
【0018】
一般式(2)中のR2と、一般式(3)中のR2とは、互いに同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
一般式(2)および(3)中、R3はヘテロ原子またはヘテロ原子を含む基を示す。
ヘテロ原子としては酸素原子、窒素原子、イオウ原子などが挙げられ、酸素原子、窒素原子であることが好ましい。
【0019】
ヘテロ原子を含む基としては酸素原子、窒素原子またはイオウ原子を含む基が挙げられる。ヘテロ原子またはヘテロ原子を含む基として具体的には、例えば−O−、−C(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−C(=O)NH−、−S−など、およびこれらの基を含む脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0020】
具体的には、後述の極性基含有モノマーの例示に示されるような構造が挙げられる。
一般式(2)においてR3は、R3中のヘテロ原子またはヘテロ原子が結合した炭素原子がR2と結合していることが好ましく、このような例としては、−R2−O−R−O−Z、−R2−C(=O)−R−O−Z、−R2−C(=O)O−R−O−Z、−R2−OC(=O)O−R−O−Z、−R2−C(=O)NH−R−O−Z、−R2−S−R−O−Z(但し、Rはメチレン、フェニレン、シクロへキシレンを示す。)などが挙げられる。なお上記例示は一般式(2)においてpが1であり、qが0の場合を示すが、他の場合も同様である。
【0021】
一般式(3)においてR3は、R3中のヘテロ原子またはヘテロ原子が結合した炭素原子がR2と結合していることが好ましく、このような例としては、−R2−O−R−X、−R2−C(=O)−R−X、−R2−C(=O)O−R−X、−R2−OC(=O)O−R−X、−R2−C(=O)NH−R−X、−R2−S−R−X(但し、Rはメチレン、フェニレン、シクロへキシレンを示す。)などが挙げられる。なお上記例示は一般式(3)においてnが1の場合を示すが、他の場合も同様である。
【0022】
一般式(2)および(3)においてR3が炭素原子を含む場合、R3を形成する炭素原子数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5である。
一般式(2)中のR3と、一般式(3)中のR3とは、互いに同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0023】
一般式(2)中、rは0または1を示す。rが0のとき、−O−ZはR2を形成するいずれかの炭素原子に結合し、rが1のとき、−O−ZはR3を形成するいずれかの炭素原子に結合する。
一般式(3)中、mは0または1を示す。mが0のとき、XはR2を形成するいずれかの炭素原子に結合し、mが1のとき、XはR3を形成するいずれかの炭素原子に結合する。
【0024】
一般式(2)中、Zはアニオン重合、開環重合、重縮合のいずれかによって得られる重合体セグメントを示す。
このような重合体セグメントの例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリロニトリル、アクリルアミドの単独または2種以上のアニオン重合によって得られるセグメント;ラクトン、ラクチド、シロキサン、ラクタム、環状エーテル、オキサゾリン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどの開環重合によって得られるセグメント;多価カルボン酸と多価アルコール、多価カルボン酸と多価アミン、ヒロドキシカルボン酸などのモノマーの重縮合によって得られるセグメントなどが挙げられる。
【0025】
重合体セグメントの形成に用いられる極性単量体としてより具体的には、
(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、イソホニルアクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレートまたはβ−フェニルエチルメタクリレートなどの1価のアルコール類とアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル類;
2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、2-ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、1-メトキシ-2-プロピルメタクリレート、3-メトキシプロピルアクリレート、4-エトキシブチルメタクリレート、6-メトキシヘキサメチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシジプロピレングリコールメタクリレート、エトキシトリプロピレングリコールメタクリレート、エトキシポリエチレングリコールアクリレートまたはメトキシポリプロピレングリコールメタクリレートなどの一末端がエーテル結合で保護された2価アルコール類とアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル類;
エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3-プロパンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリ(エチレンオキシド)トリオールトリアクリレート、ポリ(プロピレンオキシド)トリオールトリアクリレート、ポリ(プロピレンオキシド)トリオールトリメタアクリレートなどの価以上の多価アルコール類の全てのヒドロキシ基とアクリル酸またはメタクリル酸がエステル化している多価エステル類;
2-ベンゾイルオキシエチルアクリレート、2-ベンゾイルオキシエチルメタアクリレート、2-アセチルオキシアクリレート、5-テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルペンチルアクリレート、5-テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルペンチルメタアクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-オキシ-5-オキサ−ヘプタン-1,7-ジイル−ジアクリレートなどのエステル結合を含むアルコール類とアクリル酸またはメタクリル酸とのエステル類;
2-ターシャル−ブチル-1,3-ジオキシシクロペンタン-2'-イルメタアクリレートまたは2-ターシャル−ブチル-5-エチル-5-ビニルカルボニルオキシメチル-1,3-ジオキシシクロヘキサン-2'(2)-イルアクリレートなどの環状アセタール結合を有するアルコール類とアクリル酸またはメタクリル酸とのエステル類;
N-オキシスクシンイミドアクリレート、N-オキシスクシンイミドメタクリレートなどのオキシスクシンイミドと、アクリル酸またはメタクリル酸とのエステル類;
2-ジメチルアミノエチルアクリレート、2-エチルプロピルアミノエチルメタクリレートなどの2級アミノ基を有するアルコール類と、アクリル酸またはメタクリル酸とのエステル類;
2-シアノエチルアクリレート、2-シアノプロピルメタクリレートなどのシアノ基を有するアルコール類と、アクリル酸またはメタクリル酸とのエステル類などが挙げられる。
【0026】
(メタ)アクリロニトリル類としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
アクリルアミド類は、アクリルアミド、N-一置換またはN,N-二置換のアクリルアミド類であり、例えば
アクリルアミド;
N-メチルアクリルアミド、N-エチルアクリルアミド、N-プロピルアクリルアミド、N-ブチルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド、N-フェニルアクリルアミド、N-グリシジルアクリルアミド、N,N'-エチレンビスアクリルアミドなどのN-一置換のアクリルアミド類;
N,N-ジメチルアクリルアミド、N-エチル-N-メチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピルアクリルアミド、N,N-ジオクチルアクリルアミド、N,N-ジフェニルアクリルアミド、N-エチル-N-グリシジルアクリルアミド、N,N-ジグリシジルアクリルアミド、N-メチル-N-(4-グリシジルオキシブチル)アクリルアミド、N-メチル-N-(5-グリシジルオキシペンチル)アクリルアミド、N-メチル-N-(6-グリシジルオキシヘキシル)アクリルアミド、N-アクリロイルピロリジン、N-アクリロイル-L-プロリンメチルエステル、N-アクリロイルピペリジン、N-アクリロイルモルホリン、1-アクリロイルイミダゾールなどのN,N-二置換のモノアクリルアミド類;
N,N'-ジエチル-N,N'-エチレンビスアクリルアミド、N,N'-ジメチル-N,N'-ヘキサメチレンビスアクリルアミド、ジ(N,N'-エチレン)ビスアクリルアミドなどのN,N'-二置換のビスアクリルアミド類などが挙げられる。
【0027】
ビニルピリジン類としては、例えば2-ビニルピリジン、2-イソプロペニルピリジン、4-ビニルピリジンなどのビニルまたはイソプロペニル置換ピリジン類が挙げられる。
N-置換マレイミド類としては、例えば
N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミドなどのN-脂肪族置換マレイミド類;
N-フェニルマレイミド、N-(4-メチルフェニル)マレイミドなどのN-芳香族置換マレイミド類などが挙げられる。
【0028】
ビニルケトン類としては、例えばメチルビニルケトン、イソプロペニルメチルケトン、エチルビニルケトン、エチルイソプロペニルケトン、ブチルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどが挙げられる。
スチレン誘導体類としては、例えばp-メトキシカルボニルスチレン、p-ターシャリー−ブトキシカルボニルスチレン、p-シアノスチレンなどが挙げられる。
【0029】
また極性単量体としては、アルキレンオキシド化合物が挙げられ、具体的には、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、メチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物が挙げられる。これらのうち、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、スチレンオキシドが好ましく、プロピレンオキシド、エチレンオキシドがより好ましく、プロピレンオキシドがさらに好ましい。
【0030】
これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル類のアニオン重合によって得られる重合体セグメント、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの開環重合によって得られる重合体セグメントが好ましい。
重合体セグメントの分子量は特に限定されないが、例えば重量平均分子量で200〜100万、好ましくは500〜10万の範囲である。
【0031】
Zがポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドである場合、極性基含有分岐型オレフィン共重合体は、塗装性、表面の親水性(防曇性)、耐電防止性、極性樹脂(ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等)との接着性・相容性、吸湿性、吸水性(Zを高い割合で含む場合)、水分散性、耐油性(Zを高い割合で含む場合)、生体適合性に優れる。
【0032】
ZがPMMAである場合、極性基含有分岐型オレフィン共重合体は表面硬度、金属との接着性、顔料分散性、フィラー分散性、耐油性(Zを高い割合で含む場合)、極性樹脂(アクリル樹脂、ナイロン、EVOH等)との接着性・相容性に優れる。
Zがポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミドである場合、極性基含有分岐型オレフィン共重合体は表面硬度、表面の親水性(防曇性)、耐電防止性、塗装性、金属との接着性、極性樹脂(ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリエステル等)との接着性・相容性、水分散性、生体適合性、刺激応答性、吸湿性、吸水性に優れる。
【0033】
Zがポリエチルメタクリレート、ポリブチルアクリレートである場合、極性基含有分岐型オレフィン共重合体は、金属との接着性、極性樹脂(アクリル樹脂、ナイロン、EVOH等)との接着性・相容性、耐油性に優れる。
Zがポリアミド(ラクタムの開環重合体を含む)である場合、極性基含有分岐型オレフィン共重合体は極性樹脂(ポリアミド等)との接着性・相容性、ガスバリア性、耐油性に優れる。
【0034】
Zがポリエステル(ラクトンの開環重合体を含む)である場合、極性基含有分岐型オレフィン共重合体は極性樹脂(ポリエステル等)との接着性・相容性、ガスバリア性に優れる。
一般式(2)中、pは1〜3の整数を示し、pが2または3のとき−O−Zは互いに同一でも異なっていてもよい。またpが2または3であり、かつrが0のとき−O−ZはR2の同一原子または異なる原子に結合していてもよく、pが2または3であり、かつrが1のとき−O−ZはR3の同一原子または異なる原子に結合していてもよい。
【0035】
一般式(2)および(3)中、Xは水酸基またはエポキシ基である。
一般式(2)中のXと、一般式(3)中のXとは、互いに同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
一般式(2)中、qは0、1または2を示し、qが2のときXは互いに同一でも異なっていてもよい。またqが2であり、かつrが0のときXはR2の同一原子または異なる原子に結合していてもよく、qが2であり、かつrが1のときXはR3の同一原子または異なる原子に結合していてもよい。
【0036】
また、p≧1かつq≧1の場合において、rが0のときXおよび−O−ZはR2の同一または異なる原子に結合していてもよく、rが1のときXおよび−O−ZはR3の同一または異なる原子に結合していてもよく、
なおp+q≦3である。
一般式(3)中、nは1〜3の整数を示し、nが2または3のときXは互いに同一でも異なっていてもよい。またnが2または3であり、かつmが0のときXはR2の同一原子または異なる原子に結合していてもよく、nが2または3であり、かつmが1のときXはR3の同一原子または異なる原子に結合していてもよい。
【0037】
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体は、構成単位(1)と構成単位(2)と、必要に応じて構成単位(3)が通常ランダムに結合している。
(共重合体の組成)
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体は、構成単位(1)と、構成単位(2)および構成単位(3)の合計とのモル比((1):((2)+(3))が、通常99.99:0.01〜0.01:99.99、好ましくは99.95:0.05〜10:90、さらに好ましくは99.9:0.1〜30:70である。また構成単位(2)と構成単位(3)とのモル比((2):(3))が、通常100:0〜0.01:99.99、好ましくは100:0〜10:99、さらに好ましくは100:0〜10:90である。
【0038】
なお本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体は、構成単位(1)を2種以上含んでいてもよく、構成単位(2)を2種以上含んでいてもよく、構成単位(3)を2種以上含んでいてもよい。
本発明では、構成単位(1)、構成単位(2)および構成単位(3)の好ましい組合せとして、下記表1に示す構成単位(1)の例示から選ばれる構成単位と、構成単位(2)の−R2−(R3)r−O-部の例示およびZ部の例示と、構成単位(3)の例示から選ばれる構成単位との組合せが挙げられ、具体的には、
1−A−Z1−a、1−A−Z2−a、1−A−Z3−a、1−A−Z4−a、1−A−Z5−a、1−A−Z6−a、1−A−Z7−a、1−B−Z1−b、1−B−Z2−b、1−B−Z3−b、1−B−Z4−b、1−B−Z5−b、1−B−Z6−b、1−B−Z7−b、1−C−Z1−c、1−C−Z2−c、1−C−Z3−c、1−C−Z4−c、1−C−Z5−c、1−C−Z6−c、1−C−Z7−c、
2−A−Z1−a、2−A−Z2−a、2−A−Z3−a、2−A−Z4−a、2−A−Z5−a、2−A−Z6−a、2−A−Z7−a、2−B−Z1−b、2−B−Z2−b、2−B−Z3−b、2−B−Z4−b、2−B−Z5−b、2−B−Z6−b、2−B−Z7−b、2−C−Z1−c、2−C−Z2−c、2−C−Z3−c、2−C−Z4−c、2−C−Z5−c、2−C−Z6−c、2−C−Z7−c、
3−A−Z1−a、3−A−Z2−a、3−A−Z3−a、3−A−Z4−a、3−A−Z5−a、3−A−Z6−a、3−A−Z7−a、3−B−Z1−b、3−B−Z2−b、3−B−Z3−b、3−B−Z4−b、3−B−Z5−b、3−B−Z6−b、3−B−Z7−b、3−C−Z1−c、3−C−Z2−c、3−C−Z3−c、3−C−Z4−c、3−C−Z5−c、3−C−Z6−c、3−C−Z7−c、
4−A−Z1−a、4−A−Z2−a、4−A−Z3−a、4−A−Z4−a、4−A−Z5−a、4−A−Z6−a、4−A−Z7−a、4−B−Z1−b、4−B−Z2−b、4−B−Z3−b、4−B−Z4−b、4−B−Z5−b、4−B−Z6−b、4−B−Z7−b、4−C−Z1−c、4−C−Z2−c、4−C−Z3−c、4−C−Z4−c、4−C−Z5−c、4−C−Z6−c、4−C−Z7−c、
5−A−Z1−a、5−A−Z2−a、5−A−Z3−a、5−A−Z4−a、5−A−Z5−a、5−A−Z6−a、5−A−Z7−a、5−B−Z1−b、5−B−Z2−b、5−B−Z3−b、5−B−Z4−b、5−B−Z5−b、5−B−Z6−b、5−B−Z7−b、5−C−Z1−c、5−C−Z2−c、5−C−Z3−c、5−C−Z4−c、5−C−Z5−c、5−C−Z6−c、5−C−Z7−c、
6−A−Z1−a、6−A−Z2−a、6−A−Z3−a、6−A−Z4−a、6−A−Z5−a、6−A−Z6−a、6−A−Z7−a、6−B−Z1−b、6−B−Z2−b、6−B−Z3−b、6−B−Z4−b、6−B−Z5−b、6−B−Z6−b、6−B−Z7−b、6−C−Z1−c、6−C−Z2−c、6−C−Z3−c、6−C−Z4−c、6−C−Z5−c、6−C−Z6−c、6−C−Z7−c、
7−A−Z1−a、7−A−Z2−a、7−A−Z3−a、7−A−Z4−a、7−A−Z5−a、7−A−Z6−a、7−A−Z7−a、7−B−Z1−b、7−B−Z2−b、7−B−Z3−b、7−B−Z4−b、7−B−Z5−b、7−B−Z6−b、7−B−Z7−b、7−C−Z1−c、7−C−Z2−c、7−C−Z3−c、7−C−Z4−c、7−C−Z5−c、7−C−Z6−c、7−C−Z7−c、
8−A−Z1−a、8−A−Z2−a、8−A−Z3−a、8−A−Z4−a、8−A−Z5−a、8−A−Z6−a、8−A−Z7−a、8−B−Z1−b、8−B−Z2−b、8−B−Z3−b、8−B−Z4−b、8−B−Z5−b、8−B−Z6−b、8−B−Z7−b、8−C−Z1−c、8−C−Z2−c、8−C−Z3−c、8−C−Z4−c、8−C−Z5−c、8−C−Z6−c、8−C−Z7−c、
9−A−Z1−a、9−A−Z2−a、9−A−Z3−a、9−A−Z4−a、9−A−Z5−a、9−A−Z6−a、9−A−Z7−a、9−B−Z1−b、9−B−Z2−b、9−B−Z3−b、9−B−Z4−b、9−B−Z5−b、9−B−Z6−b、9−B−Z7−b、9−C−Z1−c、9−C−Z2−c、9−C−Z3−c、9−C−Z4−c、9−C−Z5−c、9−C−Z6−c、9−C−Z7−c
の組合せが挙げられる。なお前記組合せの例示中、数字は構成単位(1)の例示を示し、A、BおよびCは、構成単位(2)の−R2−(R3)r−O−部の例示を示し、Z1ないしZ7は構成単位(2)のZ部の例示を示し、a、bおよびcは、構成単位(3)の−R2−(R3)m−Xn部の例示を示す。
【0039】
【表1】
【0040】
(その他の共重合成分)
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体には、本発明の目的を損なわない範囲内で、構成単位(1)、構成単位(2)および構成単位(3)以外の構成単位を含んでいてもよい。
ここで、含まれていてもよい構成単位の例としては、下記式(4)で表される極性基含有モノマーを除く環状オレフィン、非共役ポリエン、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸およびその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニルなどから誘導される構成単位が挙げられる。
【0041】
これらの構成単位が含まれる場合、これらの構成単位の量は該極性基含有分岐型オレフィン共重合体を構成する全モノマーに対して、2モル%以下、好ましくは1.5モル%以下、さらに好ましくは1.0モル%以下である。
(共重合体の物性)
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常500〜200万、好ましくは、1000〜150万、さらに好ましくは5000〜130万であり、分子量分布(Mw/Mn)は、通常3以下、好ましくは2.8以下、さらに好ましくは2.5以下である。
【0042】
分子量分布(Mw/Mn)が3以下であると、極性基含有分岐型オレフィン共重合体は、極性物質との界面への極性基の配向に優れ、また極性物質に対する接着性、相溶性などに優れる。
ここで、MwおよびMw/MnはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、オルトジクロロベンゼン溶媒で、140℃で測定して得られたデータにより決定した。
【0043】
また、極性基含有分岐型オレフィン共重合体は、13C-NMRスペクトルにおけるTαα+Tαβに対するTαβの強度比(Tαβ/(Tαα+Tαβ))が1.0以下、好ましくは、0.8以下、より好ましくは0.5以下である。
強度比(Tαβ/(Tαα+Tαβ))が1.0以下であると、極性基含有分岐型オレフィン共重合体は、極性物質との界面への極性基の配向に優れる。
【0044】
ここで13C-NMRスペクトルにおけるTααおよびTαβは、炭素原子数4以上のα-オレフィンから誘導される構成単位中のCH2のピーク強度であり、下記に示すように第3級炭素に対する位置が異なる2種類のCH2を意味している。
【0045】
【化4】
【0046】
このようなTαβ/(Tαα+Tαβ)強度比は、下記のようにして求めることができる。
極性基含有分岐型オレフィン共重合体の13C-NMRスペクトルは、例えば日本電子(株)製JEOL-GX270 NMR測定装置を用いて測定される。測定は、試料濃度5重量%になるように調整されたヘキサクロロブタジエン/d6-ベンゼン=2/1(体積比)の混合溶液を用いて、67.8MHz、25℃、d6-ベンゼン(128ppm)基準で行う。測定された13C-NMRスペクトルを、リンデマンアダムスの提案(Analysis Chemistry43, p1245(1971))、J.C.Randall (Review Macromolecular Chemistry Physics, C29, 201(1989)) に従って解析してTαβ/(Tαα+Tαβ)強度比を求める。
【0047】
(製造方法)
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体は、例えば
(a)炭素原子数2〜20のα-オレフィンと、下記一般式(4)で表される極性基含有モノマーとを共重合して極性基含有オレフィン共重合体を製造した後、共重合された該極性基含有モノマーのX部からアニオン重合、開環重合または重縮合してZ部を形成する方法、
CH2=CH−R2−(R3)m−(X)n …(4)
(式中、R2、R3、X、mおよびnは、それぞれ上記一般式(3)中のR2、R3、X、mおよびnと同義である。)
(b)炭素原子数2〜20のα-オレフィンと上記一般式(4)で表される極性基含有モノマーとを共重合して極性基含有オレフィン共重合体を製造した後、共重合された該極性基含有モノマーのX部と、アニオン重合、開環重合または重縮合によって得られた重合体の末端官能基とを反応させる方法
(c)炭素原子数2〜20のα-オレフィンと、下記一般式(5)で表されるマクロモノマーとを共重合する方法、
【0048】
【化5】
【0049】
(式中、R2、R3、Z、X、p、qおよびrは、それぞれ上記一般式(2)中のR2、R3、Z、X、p、qおよびrと同義である。)
などによって製造することができる。
まず上記(a)の方法について具体的に説明する。
方法(a)では炭素原子数2〜20のα-オレフィンと、上記一般式(4)で表される極性基含有モノマーとを共重合して極性基含有オレフィン共重合体を製造した後、共重合された該極性基含有モノマーのX部に含まれる極性基からアニオン重合、開環重合または重縮合によって重合体セグメント(Z)を形成する。
【0050】
なお、極性基含有オレフィン共重合体中の上記一般式(4)で表される極性基含有モノマー由来の構成単位であって、該構成単位中のいずれかのX部に含まれる極性基から重合体セグメントが形成された場合には、該構成単位は構成単位(2)となり、上記一般式(4)で表される極性基含有モノマー由来の構成単位であって、該構成単位中のいずれのX部に含まれる極性基からも重合体セグメントが形成されなかった場合には、構成単位(3)となる。
【0051】
炭素原子数2〜20のα-オレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらの中でもエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンから選ばれる少なくとも2種であることが好ましい。
【0052】
上記一般式(4)で表される極性基含有モノマーとしては、
4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール、6-ヘプテン-1-オール、7-オクテン-1-オール、8-ノネン-1-オール、9-デセン-1-オール、10-ウンデセン-1-オール、11-ドデセン-1-オールなどのω-アルケニルオルコール類;5-ヘキセン-2-オール、6-ヘプテン-2-オール、7-オクテン-2-オール、8-ノネン-2-オール、9-デセン-2-オール、10-ウンデセン-2-オール、6-ヘプテン-3-オール、7-オクテン-3-オール、8-ノネン-3-オール、9-デセン-3-オール、10-ウンデセン-3-オール、11-ドデセン-3-オール、7-オクテン-4-オール、8-ノネン-4-オール、9-デセン-4-オール、10-ウンデセン-4-オール、8-ノネン-5-オール、9-デセン-5-オール、10-ウンデセン-5-オールなどの炭化水素部分が直鎖状であるアルコール類;2-エチル-5-ヘキセン-1-オール、3-メチル-6-ヘプテン-1-オール、3-メチル-7-オクテン-1-オール、4-メチル-8-ノネン-1-オール、3-エチル-9-デセン-1-オール、2-メチル-10-ウンデセン-2-オール、2,2-ジメチル-7-オクテン-1-オール、3-エチル-2-メチル-8-ノネン-1-オール、2,2,3-トリメチル-9-デセン-1-オール、2,3,3,4-テトラメチル-10-ウンデセン-2-オールなどの炭化水素部分が分枝状であるアルコール類;9-デセン-1,2-ジオール、10-ウンデセン-1,2-ジオール、11-ドデセン-1,2-ジオール、11-ドデセン-1,2-ジオールなどのジオール類、10-ウンデセン-1,2,3-トリオールなどのトリオール類などの上記一般式(4)においてXが水酸基である化合物、
5-ヘキセンエポキシド、6-ヘプテンエポキシド、7-オクテンエポキシド、8-ノネンエポキシド、9-デセンエポキシド、10-ウンデセンエポキシド、11-ドデセンエポキシドなどのω-アルケニルエポキシド類;2-メチル-5-ヘキセンエポキシド、2-メチル-6-ヘプテンエポキシド、2-メチル-7-オクテンエポキシド、2-メチル-8-ノネンエポキシド、2-メチル-9-デセンエポキシド、2-メチル-10-ウンデセンエポキシドなどの炭化水素部分が分枝状であるω-アルケニルエポキシド類などの上記一般式(4)においてXがエポキシ基である化合物が挙げられる。
【0053】
また極性基含有モノマーとして下記式で表される化合物も挙げられる。
【0054】
【化6】
【0055】
【化7】
【0056】
【化8】
【0057】
さらに上記以外にも、n-ノニル-1-オール、1,2-エポキシ-ノニル、n-ウンデシル-1-オール、4-ヘキセニロキシフェノールなどが挙げられる。
上記炭素原子数2〜20のα-オレフィンと、上記一般式(4)で表される極性基含有モノマーとの共重合は、例えば
(A)周期表第3〜10族(3族にはランタノイドおよびアクチノイドも含まれる。)から選ばれる遷移金属の化合物と、
(B)(B-1)有機アルミニウムオキシ化合物、
(B-2)前記化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、および
(B-3)有機アルミニウム化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物と
からなるオレフィン重合触媒の存在下に行われる。
【0058】
遷移金属化合物(A)としては、チーグラーナッタ触媒、メタロセン触媒の他に、公知の有機金属錯体を用いることができる。
遷移金属化合物(A)として好ましい化合物としては。例えば下記のようなものが挙げられる。
【0059】
【化9】
【0060】
(式中、M1は、周期表第3〜10族の遷移金属原子を示し、R25、R26、R27およびR28は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、窒素含有基、リン含有基、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基、ハロゲン原子を示し、R25、R26、R27、R28で示される基のうち、互いに隣接する基の一部が連結してそれらの基が結合する炭素原子とともに環を形成していてもよく、X1およびX2は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基、水素原子またはハロゲン原子を示し、Y1は、炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、-Ge-、-Sn-、-NR21-、-P(R21)-、-P(O)(R21)-、-BR21-または-AlR21-(ただし、R21は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子である)を示す。)
【0061】
【化10】
【0062】
(式中、M1は周期表第3〜10族から選ばれる遷移金属原子を示し、CpはM1にπ結合しているシクロペンタジエニル基またはその誘導体を示し、Z1は酸素原子、イオウ原子、ホウ素原子または周期表第14族の元素を含む配位子を示し、Y1は窒素原子、リン原子、酸素原子およびイオウ原子から選ばれる原子を含む配位子を示し、X1は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、20個以下の炭素原子を含有し1もしくは2以上の二重結合を有していてもよい炭化水素基、20個以下のケイ素原子を含有するシリル基またはゲルマニウム原子を含有するゲルミル基を示す。)
【0063】
【化11】
【0064】
(式中、M1は周期表第3〜10族から選ばれる遷移金属原子を示し、R11ないしR14、R17ないしR20およびR41は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜40の炭化水素基、炭素原子数1〜40のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基、ハロゲン原子または水素原子を示し、R11、R12、R13、R14、R17、R18、R19、R20、R41で示される基のうち、互いに隣接する基の一部が連結してそれらの基が結合する炭素原子とともに環を形成していてもよく、X1およびX2は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基、水素原子またはハロゲン原子を示し、Y1は炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、-Ge-、-Sn-、-NR21-、-P(R21)-、-P(O)(R21)-、-BR21-または-AlR21-(ただし、R21は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子である。)を示す。)
【0065】
【化12】
【0066】
(式中、M1は周期表第3〜10族から選ばれる遷移金属原子を示し、R11、R12、R41およびR42は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜40の炭化水素基、炭素原子数1〜40のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基、ハロゲン原子または水素原子を示し、R11、R12、R41、R42で示される基のうち、互いに隣接する基の一部が連結してそれらの基が結合する炭素原子とともに環を形成していてもよく、X1およびX2は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基、水素原子またはハロゲン原子を示し、Y1は炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基(但し、R11、R12、R41およびR42のすべてが水素原子である場合はY1はエチレンではない。)、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、-Ge-、-Sn-、-NR21-、-P(R21)-、-P(O)(R21)-、-BR21-または-AlR21-(ただし、R21は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子である。)を示す。)
【0067】
【化13】
【0068】
(式中、M1は周期表第3〜10族から選ばれる遷移金属原子を示し、R41およびR42は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜40の炭化水素基、炭素原子数1〜40のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基、ハロゲン原子または水素原子を示し、R41、R42で示される基のうち、互いに隣接する基の一部が連結してそれらの基が結合する炭素原子とともに環を形成していてもよく、X1およびX2は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、ケイ素含有基、水素原子またはハロゲン原子を示し、Y1は炭素原子数1〜20の2価の炭化水素基、炭素原子数1〜20の2価のハロゲン化炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価のゲルマニウム含有基、2価のスズ含有基、-O-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、-Ge-、-Sn-、-NR21-、-P(R21)-、-P(O)(R21)-、-BR21-または-AlR21-(ただし、R21は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、水素原子またはハロゲン原子である。)。
【0069】
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物(B-1)は、従来公知のアルミノキサン(アルモキサンともいう。)であってもよく、また特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
さらに有機アルミニウムオキシ化合物としては、下記一般式で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
【0070】
【化14】
【0071】
式中、R8は炭素原子数1〜10の炭化水素基を示す。R9は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜10の炭化水素基を示す。
本発明で用いられる前記遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(B-2)(以下「イオン化イオン性化合物」ということがある)としては、特表平1-501950号公報、特表平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP-5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物が挙げられる。さらにヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物を挙げることもできる。
【0072】
ルイス酸としてはマグネシウム含有ルイス酸、アルミニウム含有ルイス酸、ホウ素含有ルイス酸などが挙げられ、こられのうちホウ素含有ルイス酸が好ましい。イオン性化合物は、カチオン性化合物とアニオン性化合物とからなる塩である。アニオンは前記遷移金属化合物と反応することにより遷移金属化合物をカチオン化し、イオン対を形成することにより遷移金属カチオン種を安定化させる働きがある。そのようなアニオンとしては、有機ホウ素化合物アニオン、有機ヒ素化合物アニオン、有機アルミニウム化合物アニオンなどがあり、比較的嵩高で遷移金属カチオン種を安定化させるものが好ましい。このようなイオン化イオン性化合物は、2種以上混合して用いることができる。
【0073】
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物(B-3)は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、シロキシ基、アミド基、水素原子で置換されているアルミニウム化合物である。これらの有機アルミニウム化合物は、2種以上組合わせて用いることもできる。
本発明で用いられるオレフィン重合触媒は、上記遷移金属化合物(A)と、有機アルミニウムオキシ化合物(B-1)、イオン化イオン性化合物(B-2)および有機アルミニウム化合物(B-3)から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)から形成され、例えば遷移金属化合物(A)がシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物である場合には、該化合物と、有機アルミニウムオキシ化合物(B-1)および/またはイオン化イオン性化合物(B-2)と、必要に応じて有機アルミニウム化合物(B-3)とから形成される。
【0074】
本発明で用いられるオレフィン重合触媒には、遷移金属化合物(A)、有機アルミニウムオキシ化合物(B-1)、イオン化イオン性化合物(B-2)および有機アルミニウム化合物(B-3)のうち少なくとも1つの成分が粒子状担体に担持されてなる固体状触媒、および粒子状担体、遷移金属化合物(A)、有機アルミニウムオキシ化合物(B-1)(またはイオン化イオン性化合物(B-2))および予備重合により生成するオレフィン重合体と、必要に応じて有機アルミニウム化合物(B-3)とからなる予備重合触媒が含まれる。
【0075】
重合する際には、上記遷移金属化合物(A)は、重合容積1リットル当り、遷移金属原子に換算して、通常、約0.00005〜0.1ミリモル、好ましくは約0.0001〜0.05ミリモルの量で用いられる。
有機アルミニウムオキシ化合物(B-1)は、遷移金属原子1モルに対して、アルミニウム原子が、通常、約1〜10,000モル、好ましくは10〜5,000モルとなるような量で用いられる。
【0076】
イオン化イオン性化合物(B-2)は、遷移金属原子1モルに対して、ボロン原子が、通常、約0.5〜500モル、好ましくは1〜100モルとなるような量で用いられる。
有機アルミニウム化合物(B-3)は、有機アルミニウムオキシ化合物(B-1)中のアルミニウム原子1モルに対して、通常、約0〜200モル、好ましくは約0〜100モルとなるような量で必要に応じて用いられる。また、イオン化イオン性化合物(B-2)中のボロン1モルに対して、通常、0〜1000モル、好ましくは約0〜500モルとなるような量で用いられる。
【0077】
水素を用いる場合は、重合に供されるモノマー1モルに対して10-5〜1モル、好ましくは10-4〜10-1モルとなるような量で用いられる。
オレフィンと極性基含有モノマーとの共重合は、懸濁重合、溶液重合などの液相重合法、気相重合法あるいは高圧法いずれにおいても実施できる。
液相重合法では、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素などの不活性炭化水素媒体が用いられる。また、オレフィン自体を溶媒として用いることもできる。これらは組み合わせて用いてもよい。
【0078】
重合温度は、懸濁重合法を実施する際には、通常−50〜100℃、好ましくは0〜90℃の範囲であることが望ましく、溶液重合法を実施する際には、通常0〜300℃、好ましくは20〜250℃の範囲であることが望ましく、気相重合法を実施する際には、重合温度は通常0〜120℃、好ましくは20〜100℃の範囲であることが望ましい。また、高圧法を実施する際には、重合温度は通常50〜1000℃、好ましくは100〜500℃の範囲であることが好ましい。重合圧力は、通常、常圧〜100kg/cm2、好ましくは常圧〜50kg/cm2 の条件下であり、高圧法の場合には、通常100〜10000kg/cm2 、好ましくは500〜5000kg/cm2 の条件であり。重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0079】
得られるオレフィン重合体の分子量は、水素の量を調整するか、または重合温度、重合圧力を変化させることによって調節することができる。
次いで、上記のようにして得られた極性基含有オレフィン共重合体中の共重合された極性基含有モノマーのX部からアニオン重合、開環重合または重縮合によってZ部を製造する。
【0080】
共重合された極性基含有モノマーのX部からアニオン重合、開環重合または重縮合によってZ部を製造する方法としては、例えば極性基含有オレフィン共重合体とプロトン引抜剤との存在下に、または極性基含有オレフィン共重合体とプロトン引抜剤および活性水素化合物との存在下に、極性単量体をアニオン重合させる方法がある。
【0081】
極性単量体としては、例えば上述したような(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリロニトリル類、アクリルアミド類、ビニルピリジン類、N-置換マレイミド類、ビニルケトン類、スチレン誘導体類などが挙げられる。
これらの極性単量体のうち、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物は、そのもの自体での重合では高度に架橋されたポリマーを与えるが、エチレン性不飽和結合を1個のみ有する極性基含有エチレン性不飽和単量体と共重合させると、エチレン性不飽和結合を1個のみ有する極性基含有エチレン性不飽和単量体の重合体の主鎖同士を架橋させることができる。
【0082】
これらの極性単量体のうち、好ましいモノマーとしては、1価のアルコール類と、アクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル類、一末端がエーテル結合で保護された2価アルコール類とアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル類、2価以上の多価アルコール類の全てのヒドロキシ基とアクリル酸またはメタクリル酸がエステル化している多価エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N,N-二置換のモノアクリルアミド類、ビニルまたはイソプロペニル置換ピリジン類、N-芳香族置換マレイミド類、ビニルケトン類などが挙げられる。
【0083】
より好ましいものとしては、1価のアルコール類とアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル類、一末端がエーテル結合で保護された2価アルコール類とアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル類、2価以上の多価アルコール類の全てのヒドロキシ基とアクリル酸またはメタクリル酸がエステル化している多価エステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N,N-二置換のモノアクリルアミド類などが挙げられる。
【0084】
また極性単量体としては、上述したようなアルキレンオキシド化合物が挙げられる。
これらの極性単量体は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。極性単量体を2種以上組み合わせて用いる場合には、アルキレンオキシド化合物を除く上記極性単量体(以下「エチレン性不飽和単量体」ということがある。)と、アルキレンオキシド化合物とを組み合わせることが好ましい。
【0085】
複数の極性単量体を組み合わせて共重合させる際には、複数のエチレン性不飽和単量体を用いる方法、単独のエチレン性不飽和単量体と複数のアルキレンオキシド化合物を用いる方法、複数のエチレン性不飽和単量体と単独のアルキレンオキシド化合物を用いる方法、複数のエチレン性不飽和単量体と複数のアルキレンオキシド化合物を用いる方法があり、これらを重合器に添加する方法、順次に重合器に使用する方法または順次添加を繰返して行う方法などを採用することができる。
【0086】
複数の極性単量体を同時に併用して共重合させると、それらの化合物の反応性の差にもよるが、比較的ランダム性の高い共重合体からなる重合体セグメントが得られ、2種以上のモノマーを順次に重合させると、2種以上のブロックを含むブロック共重合体からなる重合体セグメントが得られる。そのような順次併用を繰り返せばさらに複雑な共重合体からなる重合体セグメントが得られる。
【0087】
なかでも、エチレン性不飽和単量体とアルキレンオキシド化合物を順次に併用して、それらの複数のモノマーからなるブロック共重合体からなる重合体セグメントを製造することは好ましい。その際のアルキレンオキシド化合物がプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドであることがより好ましく、プロピレンオキシドであることがさらに好ましい。
【0088】
活性水素化合物としては、例えばフッ化水素、炭素原子上に活性水素を有する活性水素化合物、酸素原子上に活性水素を有する活性水素化合物、窒素原子上に活性水素を有する活性水素化合物またはイオウ原子上に活性水素を有する活性水素化合物などが挙げられる。
炭素原子上に活性水素を有する活性水素化合物としては、例えば、シアン化水素;酢酸エチル、プロピオン酸シクロヘキシル、酪酸イソプロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸tert-ブチル、カプロン酸ヘキシル、ラウリン酸ブチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸エチル、フェニル酢酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸メチル、1,2-ビス(2-プロピルカルボニルオキシ)エタン、1,2,3-トリス(2-プロピルカルボニルオキシ)プロパンなどの1価のカルボン酸エステル類;マロン酸ジメチル、メチルマロン酸ジメチル、コハク酸ジエチル、2,3-ジメチルコハク酸ブチル、アジピン酸メチル、スベリン酸エチル、ブタンテトラカルボン酸メチル、1,2-ビス(2-メトキシカルボニルエトキシ)エタン、1,2-ビス(2-エトキシカルボニルプロポキシ)エタン、1,2-ビス(2-エトキシカルボニルプロピルメルカプト)エタン、N,N,N',N'-テトラキス(2-ブトキシカルボニルプロピル)エチレンジアミンなどの多価カルボン酸エステル類;アセト酢酸エチル、アセト酢酸シクロペンチル、カルバモイル酢酸メチル、2-シクロヘキシルカルボニル酢酸エチル、ベンゾイル酢酸ブチルなどのケトカルボン酸エステル類;アセトニトリル、2-シアノプロパン、マロノニトリル、メチルマロノニトリル、1,3-ジシアノプロパン、アジポニトリルなどのニトリル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジシクロヘキシルケトン、アセトフェノンまたはイソプロピルフェニルケトンなどのケトン類が挙げられる。
【0089】
酸素上に活性水素を有する活性水素化合物としては、例えば、水;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、n-オクチルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、アリルアルコール、クロチルアルコール、メチルビニルカルビノール、ベンジルアルコール、1-フェニルエチルアルコール、トリフェニルカルビノール、シンナミルアルコール、パーフルオロ-tert-ブチルアルコール、α-ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α-ヒドロキシイソプロピルナフチルケトン、α-ヒドロキシイソ酪酸メチルなどの1価のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコール類;フェノール、クレゾール、キシレノール、2-ナフトール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ビスフェノールAなどの芳香族ヒドロキシ化合物類などが挙げられる。
【0090】
窒素原子上に活性水素を有する活性水素化合物としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、β-フェニルエチルアミン、アニリン、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジンなどの脂肪族または芳香族一級アミン類;ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、エチル-n-ブチルアミン、メチル-sec-ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N-メチルアニリンまたはジフェニルアミンなどの脂肪族または芳香族二級アミン類;エチレンジアミン、ジ(2-アミノエチル)アミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、トリ(2-アミノエチル)アミン、N,N'-ジメチルエチレンジアミン、N,N'-ジエチルエチレンジアミンまたはジ(2-メチルアミノエチル)アミンなどの一級または二級アミノ基を有する多価アミン類;ピロリジン、ピペリジン、モルホリンまたは1,2,3,4-テトラヒドロキノリンなどの飽和環状二級アミン類;3-ピロリン、ピロール、インドール、カルバゾール、イミダゾール、ピラゾール、プリンなどの不飽和環状二級アミン類;ピペラジン、ピラジン、1,4,7-トリアザシクロノナンなどの二級アミノ基を含む環状の多価アミン類;アセトアミド、プロピオンアミド、N-メチルプロピオンアミド、N-メチル安息香酸アミド、N-エチルステアリン酸アミドなどの無置換またはN-一置換の酸アミド類;β-プロピオラクタム、2-ピロリドン、δ-バレロラクタム、ε-カプロラクタムなどの環状アミド類;コハク酸イミド、マレイン酸イミド、フタルイミドなどのジカルボン酸のイミド類などが挙げられる。
【0091】
イオウ原子上に活性水素を有する活性水素化合物としては、例えばメタンチオール、エタンチオール、n-ブタンチオール、tert-ブタンチオール、ヘキサンチオール、デカンチオール、シクロペンチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタンなどの1価のチオール類;1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2,3-ブタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、2,3-ジ(メルカプトメチル)-1,4-ブタンジチオールなどの多価チオール類、チオフェノール、o-チオクレゾール、チオナフトール、1,2-ベンゼンジチオールなどの芳香族メルカプト化合物類が挙げられる。
【0092】
さらに活性水素化合物としては、例えばポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシドなどの末端に活性水素を有するポリ(アルキレンオキシド)類;(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリロニトリル類、アクリルアミド類、ビニルピリジン類、N-置換マレイミド類、ビニルケトン類、スチレン誘導体類のアニオン重合やその他の重合方法で得られるポリマー;ラクトン類、ラクタム類、ラクチド類、環状シロキサン類などの開環重合で得られるポリマー;末端および/または主鎖中に活性水素を有するポリ{(メタ)アクリル酸エステル}類、ポリ{(メタ)アクリロニトリル}類、ポリ(アクリルアミド)類、ポリ(ビニルピリジン)類、ポリ(N-置換マレイミド)類、ポリ(ビニルケトン)類、ポリ(スチレン誘導体)類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリラクチド類、ポリシロキサン類などのポリマーが挙げられ、またそれらのコポリマーなども挙げられる。
【0093】
これらの活性水素化合物のうち好ましいものとしては、シアン化水素、1価のカルボン酸エステル類、多価カルボン酸エステル類、水、1価のアルコール類、多価アルコール類、1価のチオール類、末端および/または主鎖中に活性水素を有する、ポリ(アルキレンオキシド)類、ポリ{(メタ)アクリル酸エステル}類、ポリ{(メタ)アクリロニトリル}類、ポリ(アクリルアミド)類、ポリ(ビニルピリジン)類、ポリ(N-置換マレイミド)類、ポリ(ビニルケトン)類またはポリ(スチレン誘導体)類、またそれらのコポリマーなどが挙げられる。
【0094】
これらのプロトン引抜剤は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
本発明では、プロトン引抜剤および活性水素化合物の存在下またはプロトン引抜剤の存在下に、少なくとも極性単量体をアニオン重合させる。またこの方法で開環重合を行うこともできる。
【0095】
重合に用いるプロトン引抜剤、あるいは活性水素化合物からプロトンを引抜いてアニオンとするためには次の方法を用いることができる。
(1)アルカリ金属水酸化物やアルカリ金属炭酸塩を用いる方法。
(2)アルカリ金属、アルカリ金属ヒドリド、アルカリ金属アミド、アルカリ金属アルキルなどのアルカリ金属を用いる方法。
(3)亜鉛化合物を用いる方法。
(4)アンモニウムヒドロキシドを用いる方法。
(5)ホスファゼニウム塩を使用する方法。
【0096】
ホスファゼニウム化合物は、EP0791600の12頁から13頁に記載の方法または類似の方法で合成することができる。
極性基含有モノマーのX部からアニオン重合によってZ部を製造する方法としては、少なくともプロトン引抜剤と極性単量体とを有効に接触させうる方法であれば特に限定されず、回分法でも、極性単量体を間歇または連続的に供給する方法でも実施できる。
【0097】
また重合反応は極性単量体の溶融状態で実施することもできるが、適宜な溶媒を用いて液相で行うこともできる。この場合、液相は均一でも懸濁でよい。ここで用いられる溶媒としては、例えばn-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族または脂環族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族ハロゲン化物類;ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランまたはN、N'-ジメチルイミダゾリジノンなどの非プロトン性極性溶媒類などが挙げられる。
【0098】
プロトン引抜剤の使用量は特に制限はないが、通常、極性単量体1モルに対して、1×10-6〜1×10-1モルであり、好ましくは、1×10-4〜3×10-1モルの範囲である。重合反応の温度は、用いるプロトン引抜剤および極性単量体の種類や量などによって一様ではないが、通常、−50℃〜250℃であり、好ましくは−20℃〜150℃の範囲である。重合反応の圧力は、用いる極性単量体の種類や量、反応温度などにより一様ではないが、通常、3.0MPa(メガパスカルで表す絶対圧、以降同様)以下であり、好ましくは0.01〜1.5MPa、より好ましくは0.1ないし1.0MPaである。
【0099】
重合反応の反応時間は、用いるプロトン引抜剤および極性単量体の種類や量、反応温度などによって異なるが、通常、50時間以内であり、好ましくは0.1ないし24時間である。
次に、上記(b)の方法について具体的に説明する。
方法(b)では炭素原子数2〜20のα-オレフィンと上記一般式(4)で表される極性基含有モノマーとを共重合して極性基含有オレフィン共重合体を製造した後、共重合された該極性基含有モノマーのX部と、アニオン重合、開環重合または重縮合によって得た重合体の末端官能基とを反応させる。
【0100】
極性基含有オレフィン共重合体は、上記方法(a)と同様にして製造することができる。
アニオン重合、開環重合または重縮合によって得られた重合体(以下「末端官能基含有重合体」ということがある。)としては、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリロニトリル、アクリルアミドの単独または2種以上のアニオン重合によって得られるセグメントや、ラクトン、ラクチド、シロキサン、ラクタム、環状エーテル、オキサゾリン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどの開環重合によって得られるセグメント、多価カルボン酸と多価アルコール、多価カルボン酸と多価アミンやヒドロキシカルボン酸等のモノマーの重縮合によって得られる重合体などが挙げられる。この中でも、アクリル酸エステルあるいはメタアクリル酸エステル誘導体のアニオン重合によって得られるセグメントや、エチレンオキサイドあるいはプロピレンオキサイドの開環重合によって得られる重合体が好ましい。
【0101】
このような末端官能基含有重合体は、例えば、上記方法(a)において用いられた極性単量体を、上記プロトン引抜剤との存在下、または上記プロトン引抜剤および上記活性水素化合物との存在下に、極性単量体をアニオン重合、開環重合または重縮合させる方法がある。
次いで、上記のようにして得られた極性基含有オレフィン共重合体と、末端極性基含有重合体とを共重合する。
【0102】
次に上記(c)の方法について具体的に説明する。
方法(c)では、炭素原子数2〜20のα-オレフィンと、上記一般式(5)で表されるマクロモノマーとを共重合する。
炭素原子数2〜20のα-オレフィンとしては、上記と同様のものが挙げられる。
【0103】
上記一般式(5)で表されるマクロモノマーの例としては下記のマクロモノマーが挙げられる。
【0104】
【化15】
【0105】
【化16】
【0106】
このようなマクロモノマーは、例えば上記のような極性基含有モノマーを用い、上記方法(a)と同様にして極性基含有モノマーの極性基からアニオン重合、開環重合または重縮合によって重合体セグメントを重合することにより製造することができる。
上記炭素原子数2〜20のα-オレフィンと、上記一般式(5)で表されるマクロモノマーとの共重合は、例えば上記方法(a)で炭素原子数2〜20のα-オレフィンと、一般式(4)で表される極性基含有モノマーとの共重合に用いられるオレフィン重合触媒を用い、上記方法(a)の炭素原子数2〜20のα-オレフィンと、一般式(4)で表される極性基含有モノマーとの共重合と同様の条件で行われる。
【0107】
熱可塑性樹脂組成物
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、上記極性基含有分岐型オレフィン共重合体から選ばれる2種以上の共重合体から形成されていてもよく、上記極性基含有オレフィン分岐型共重合体と、該極性基含有分岐型オレフィン共重合体以外の熱可塑性樹脂とから形成されていてもよい。
(熱可塑性樹脂)
本発明では熱可塑性樹脂としてポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニルおよびエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ジエン系ゴムから選ばれる1種の熱可塑性樹脂が好適に用いられる。
【0108】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリメチルペンテン、ポリメチルブテンなどのオレフィン単独重合体、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-α-オレフィン三元共重合体などのオレフィン共重合体などが挙げられ、この中でもポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体が好ましい。なお、ポリオレフィンが炭素原子数3以上のオレフィンから得られるポリオレフィンである場合には、アイソタクチック重合体であってもよく、シンジオタクチック重合体であってもよい。
【0109】
また、ポリオレフィンの製造に用いられる触媒としては、チーグラー・ナッタ型触媒またはメタロセン触媒等公知のいずれの触媒を用いても良い。
ポリアミドとしては、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−10、ナイロン−12、ナイロン−46などの脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンより製造される芳香族ポリアミドなどが挙げられ、ナイロン−6が好ましい。
【0110】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートなどが挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
ポリアセタールとしては、ポリホルムアルデヒド(ポリオキシメチレン)、ポリアセトアルデヒド、ポリプロピオンアルデヒド、ポリブチルアルデヒドなどを挙げられ、ポリホルムアルデヒドが特に好ましい。
【0111】
ポリスチレンは、スチレンの単独重合体であってもよく、スチレンとアクリロニトリル、メタクリル酸メチル、α-メチルスチレンなどとの二元共重合体、例えばアクリロニトリル-スチレン共重合体であってもよい。
ABSとしては、アクリロニトリルから誘導される構成単位を20〜35モル%の量で含有し、ブタジエンから誘導される構成単位を20〜30モル%の量で含有し、スチレンから誘導される構成単位を40〜60モル%の量で含有するものが好ましく用いられる。
【0112】
ポリメタクリレートとしては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が好ましい。
ポリカーボネートとしては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタンなどから得られるものが挙げられ、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから得られるポリカーボネートが好ましい。
【0113】
ポリフェニレンオキシドとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド)が好ましい。
ポリ塩化ビニルは、塩化ビニルの単独重合体であってもよく、塩化ビニリデン、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、プロピレンなどとの共重合体であってもよい。
【0114】
ポリ塩化ビニリデンは、通常塩化ビニリデン単位を85%以上含む、塩化ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、アリルエステル、不飽和エーテル、スチレンなどとの共重合体が用いられる。
ポリ酢酸ビニルは、酢酸ビニルの単独重合体であってもよく、エチレン、塩化ビニルとの共重合体であってもよい。これらのうち、エチレン-酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0115】
エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-エチルメタクリレート共重合体が好ましい。
ジエン系ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレンまたはSBR(スチレン-ブタジエンゴム)としても知られるエラストマー型のスチレン-ブタジエンコポリマーなどの共役ポリジエンが挙げられる。これらは、分子中の二重結合の少なくとも一部が水素化されていてもよい。
【0116】
上記のような熱可塑性樹脂は、1種単独でまたは2種以上組合わせて用いることができる。
これらの熱可塑性樹脂の中では、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレンを用いることが好ましい。
本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、極性基含有分岐型オレフィン共重合体と熱可塑性樹脂とを、例えばリボンブレンダー、タンブラーブレンダー、ヘンシェルブレンダーなどで混合することにより製造することができる。
【0117】
また本発明に係る熱可塑性樹脂組成物は、極性基含有分岐型オレフィン共重合体と熱可塑性樹脂とを、例えばコニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、単軸押出機、2軸押出機などの混練機、2軸表面更新機、2軸多円板装置などの横型攪拌機またはダブルヘリカルリボン攪拌機などの縦型攪拌機などの溶融混練の装置を用いて溶融混練することによっても製造することができる。
【0118】
配合剤
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体および熱可塑性樹脂組成物は、無機充填剤、有機フィラー、結晶核剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、難燃剤、ブルーミング防止剤などを本発明の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0119】
(無機充填剤)
無機充填剤としては、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カルシウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデンなどが挙げられる。
【0120】
中でも層状化合物が好ましく、さらには分散媒に対して膨潤・へき開性を有する粘土鉱物が特に好ましく用いられる。かかる粘土鉱物は、一般に、シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウムなどを中心金属にした八面体層を有する2層構造を有するタイプと、シリカの四面体層が、アルミニウムやマグネシウムなどを中心金属にした八面体層を両側から狭んでなる3層構造を有するタイプに分類される。前者の2層構造タイプとしては、カオリナイト族、アンチゴライト族などを挙げることができ、後者の3層構造タイプとしては、層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族等を挙げることができる。
【0121】
これらの粘土鉱物としては、より具体的には、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石などを挙げることができる。
【0122】
また、粘土鉱物を有機物で処理したもの(以下、有機修飾粘土鉱物と称する場合もある)も無機層状化合物として用いることができる(なお、有機物で処理した粘土鉱物に関しては、朝倉書店、「粘土の事典」参照)。
上記粘土鉱物の中でも、膨潤性またはへき開性の観点から、スメクタイト族、バーミキュライト族およびマイカ族が好ましく、さらに好ましくはスメクタイト族が好ましい。スメクタイト族としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライトを例示できる。
【0123】
無機層状化合物を膨潤または劈開させる分散媒は、例えば天然の膨潤性粘土鉱物の場合、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトンなどが挙げられ、水やメタノール等のアルコール類がより好ましい。
【0124】
また、有機修飾粘土鉱物の場合、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-オクタンなどの脂肪族炭化水素類、クロロベンゼン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、パークロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル、メタアクリル酸メチル(MMA)、フタル酸ジオクチル(DOP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブ、シリコンオイルなどが挙げられる。
【0125】
(結晶核剤)
結晶核剤としては、従来知られている種々の核剤が特に制限されることなく用いられる。結晶核剤として下記に挙げる芳香族リン酸エステル塩、ベンジリデンソルビトール、芳香族カルボン酸、ロジン系核剤などが例示される。
芳香族リン酸エステル塩としては、下記一般式(A)で表される化合物が挙げられる。
【0126】
【化17】
【0127】
(式中、R11は酸素原子、イオウ原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基を示し、R12およびR13は水素原子または炭素原子数1〜10の炭化水素基を示し、R12およびR13は同種であっても異種であってもよく、R12同士、R13同士またはR12とR13とが結合して環状となっていてもよく、Mは1〜3価の金属原子を示し、nは1〜3の整数である。)
前記一般式(A)で表される化合物として具体的には、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2'-メチレン-ビス-(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4-i-プロピル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2'-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-2,2'-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス[2,2'-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム-ビス[2,2'-チオビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、カルシウム-ビス[2,2'-チオビス-(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2'-チオビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2'-チオビス-(4-t-オクチルフェニル)フォスフェート]、ナトリウム-2,2'-ブチリデン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-ブチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス-(2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート)、マグネシウム-ビス[2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム-ビス[2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム(4,4'-ジメチル-5,6'-ジ-t-ブチル-2,2'-ビフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス[(4,4'-ジメチル-6,6'-ジ-t-ブチル-2,2'-ビフェニル) フォスフェート]、ナトリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4-m-ブチル-6-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-エチルフェニル)フォスフェート、カリウム-2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フオスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、バリウム-ビス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]、アルミニウム-トリス[2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェル)フォスフェート]およびアルミニウム-トリス[2,2'-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート]およびこれらの2個以上の混合物を例示することができる。特にナトリウム-2,2'-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートが好ましい。
【0128】
芳香族リン酸エステル塩として、下記一般式(B)で表される化合物を挙げることができる。
【0129】
【化18】
【0130】
(式中、R14は水素原子または炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示し、Mは1〜3価の金属原子を示し、nは1〜3の整数である。)
前記一般式(B)で表される化合物として具体的には、ナトリウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-ビス(4-メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-ビス(4-エチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-ビス(4-i-プロピルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-ビス(4-t-オクチルフェニル)フォスフェート、カリウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、マグネシウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、アルミニウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェートおよびこれらの2種以上の混合物を例示することができる。特にナトリウム-ビス(4-t-ブチルフェニル)フォスフェートが好ましい。
【0131】
ベンジリデンソルビトールとしては、下記一般式(C)で表される化合物を挙げることができる。
【0132】
【化19】
【0133】
(式中、R15は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示し、mおよびnはそれぞれ0〜5の整数である。)前記一般式(C)で表される化合物として具体的には、1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3-ベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-n-プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-i-プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-n-ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-s-ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-t-ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(2',4'-ジメチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-エトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3-ベンジリデン-2-4-p-クロルベンジリデンソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-ベンジリデンソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-エチルベンジリデンソルビトール、1,3-p-メチルベンジリデン-2,4-p-クロルベンジリデンソルビトール、1,3-p-エチルベンジリデン-2,4-p-クロルベンジリデンソルビトールおよび1,3,2,4-ジ(p-クロルベンジリデン)ソルビトールおよびこれらの2個以上の混合物を例示でき、特に1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ(p-クロルベンジリデン)ソルビトールおよびそれらの2種以上の混合物が好ましい。
【0134】
上記のようなベンジリデンソルビトールの中では、下記一般式(D)で表される化合物を好ましい例として挙げることができる。
【0135】
【化20】
【0136】
(式中、R15は互いに同一でも異なっていてもよく、メチル基またはエチル基を示す。)
芳香族カルボン酸としては、下記一般式(E)で表されるアルミニウムヒドロキシジパラt-ブチルベンゾエートなどを挙げることができる。
【0137】
【化21】
【0138】
ロジン系の結晶核剤としては、たとえばロジン酸の金属塩があり、ロジン酸の金属塩とは、ロジン酸と金属化合物との反応生成物をいう。ロジン酸としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン;不均化ロジン、水素化ロジン、脱水素化ロジン、重合ロジン、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンなどの各種変性ロジン;前記天然ロジンの精製物、変性ロジンの精製物などを例示できる。なお、前記α,β-エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンの調製に用いられる不飽和カルボン酸としては、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などを挙げることができる。これらの中では、天然ロジン、変性ロジン、天然ロジンの精製物および変性ロジンの精製物からなる群より選ばれる少なくとも一種のロジン酸であることが好ましい。ここで、ロジン酸は、ピマル酸、サンダラコピマル酸、パラストリン酸、イソピマル酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、ジヒドロピマル酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸などから選ばれる樹脂酸を複数含んでいる。
【0139】
前記ロジン酸と反応して金属塩を形成する金属化合物としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの金属元素を有し、かつ前記ロジン酸と造塩する化合物が挙げられる。具体的には、前記金属の塩化物、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
その他の結晶核剤としては、高融点ポリマー、芳香族カルボン酸や脂肪族カルボン酸の金属塩、無機化合物などを例示できる。
【0140】
高融点ポリマーとしては、ポリビニルシクロヘキサン、ポリビニルシクロペンタンなどのポリビニルシクロアルカン、ポリ3-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、ポリアルケニルシランなどが挙げられる。
芳香族カルボン酸や脂肪族カルボン酸の金属塩としては、安息香酸アルミニウム塩、p-t-ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム、チオフェネカルボン酸ナトリウム、ピローレカルボン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0141】
(成形法)
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体および熱可塑性樹脂組成物はカレンダー成形、押出成形、射出成形、ブロー成形、プレス成形、スタンピングモールド成形等で製造することができる。
押出成形により、シートまたはフィルム(未延伸)に成形することができる。
【0142】
延伸フィルムは、上記のような押出シートまたは押出フィルム(未延伸)を、例えばテンター法(縦横延伸、横縦延伸)、同時二軸延伸法、一軸延伸法により延伸することにより得られる。また本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体、熱可塑性樹脂組成物からインフレーションフィルムを製造することもできる。
【0143】
フィラメントは、例えば溶融した組成物を、紡糸口金を通して押出すことにより製造することができる。また、メルトブローン法で調製してもよい。
射出成形体は、従来公知の射出成形装置を用いて公知の条件を採用して、組成物を種々の形状に射出成形して製造することができる。本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体、熱可塑性樹脂組成物からなる射出成形体は帯電しにくく、剛性、耐熱性、耐衝撃性、表面光沢、耐薬品性、耐磨耗性などに優れており、自動車内装用トリム材、自動車用外装材、家電製品のハウジング、容器など幅広く用いることができる。
【0144】
ブロー成形体は、従来公知のブロー成形装置を用いて公知の条件を採用して、製造することができる
また、射出ブロー成形では、本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体、熱可塑性樹脂組成物を樹脂温度100℃〜300℃でパリソン金型に射出してパリソンを成形し、次いでパリソンを所望形状の金型中に保持した後空気を吹き込み、金型に着装することにより中空成形体を製造することができる。
【0145】
プレス成形体としてはモールドスタンピング成形体が挙げられる。
(用途)
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体および熱可塑性樹脂組成物は種々の用途に使用でき、例えば以下の用途に使用できる。
(1)フィルムおよびシート
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体または熱可塑性樹脂組成物からなるフィルムおよびシートは、柔軟性、透明性、粘着性、防曇性、耐熱性、分離性のいずれかに優れている。
(2)積層体
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体または熱可塑性樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む積層体としては、例えば農業用フィルム、ラップ用フィルム、シュリンク用フィルム、プロテクト用フィルム、血漿成分分離膜、水選択透過気化膜などの分離膜例、イオン交換膜、バッテリーセパレータ、光学分割膜などの選択分離膜などが挙げられる。
(3)本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体および熱可塑性樹脂組成物は、マイクロカプセル、PTP包装、ケミカルバルブ、ドラッグデリバリーシステムに用いることができる。
(4)改質材
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体または熱可塑性樹脂組成物を樹脂用改質剤として用いると、耐衝撃性、流動性、塗装性、結晶性、接着性、透明性などの改質効果がある。
【0146】
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体または熱可塑性樹脂組成物をゴム用改質剤として用いると、耐候性、耐熱性、接着性、耐油性などの改質効果がある。
ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレン系ゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM等)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO等)、シリコーンゴム(Q)、フッ素系ゴム(FKM等)等の架橋型ゴム;スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、エステル系、アミド系、塩化ビニル系等の熱可塑型ゴムが挙げられる。
【0147】
潤滑油溶改質剤、例えばガソリンエンジン油、ディーゼルエンジン油、舶用エンジン油、ギア油、機械油、金属加工油、モーター油、マシン油、スピンドル油、絶縁油などの潤滑油用途、またこれらの粘度調節剤、凝固点降下剤として用いることができる。
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体または熱可塑性樹脂組成物をワックス用改質剤として用いると、接着性、流動性、強度などの改質効果がある。ワックスとしては、モンタンワックス、ピートワックス、オゾケライト・セレシンワックス、石油ワックス等の鉱物性ワックス、ポリエチレン、Fischer-Tropschワックス、化学修飾炭化水素ワックス、置換アミドワックス等の合成ワックス、植物ろう、動物ろうなどが挙げられる。
【0148】
セメント用改質剤として用いると、成形性、強度などの改質効果がある。
セメントとしては、石灰、石こう、マグネシアセメント等の気硬性セメント、ローマンセメント、天然セメント、ポルトランドセメント、アルミナセメント、高硫酸塩スラグセメント等の水硬性セメント、耐酸セメント、耐火セメント、水ガラスセメント、歯科用セメント等の特殊セメント等がある。
(5)粘度調節剤、成形性改良剤
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体および熱可塑性樹脂組成物は、凸版印刷インキ、平板印刷インキ、フレキソインキ、グラビアインキ等のインキ、油性塗料、繊維素誘導体塗料、合成樹脂塗料、水性焼き付き塗料、粉状水性塗料、漆等のインキ・塗料の粘度調節剤、成形性改良剤として用いることができる。
(6)建材・土木用材料
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体および熱可塑性樹脂組成物は、例えば、床材、床タイル、床シート、遮音シート、断熱パネル、防振材、化粧シート、巾木、アスファルト改質材、ガスケット・シーリング材、ルーフィングシート、止水シート等の建材・土木用樹脂および建材・土木用成形体などに用いることができる。
(7)自動車内外装材およびガソリンタンク
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体または熱可塑性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物からなる自動車内外装材、ガソリンタンクは、剛性、耐衝撃性、耐油性、耐熱性に優れる。
(8)電気、電子部品等
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体および熱可塑性樹脂組成物は、電気絶縁材料;電子部品処理用器材;磁気記録媒体、磁気記録媒体のバインダー、電気回路の封止材、家電用素材、電子レンジ用容器などの容器用器材、電子レンジ用フィルム、高分子電解質基材、導電性アロイ基材等。コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケーススイッチコイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、光コネクター、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、ハウジング、半導体、液晶ディスプレー部品、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、HDD部品、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・光ディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品、オフィスコンピューター関連部品、電話機関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、電磁シールド材、スピーカーコーン材、スピーカー用振動素子等に用いることができる。
(9)水性エマルジョン
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体または熱可塑性樹脂組成物を含む水性エマルジョンは、ヒートシール性に優れたポリオレフィン用の接着剤となり得る。
(10)塗料ベース
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体または熱可塑性樹脂組成物を含む溶剤分散体は、溶剤に対する分散安定性に優れ、金属や極性樹脂とポリオレフィンを接着する際に良好な接着性を示す。
(11)医療・衛生用材料
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体および熱可塑性樹脂組成物は、不織布、不織布積層体、エレクトレット、医療用チューブ、医療用容器、輸液バッグ、プレフィルシリンジ、注射器などの医療用品、医療用材料、人工臓器、人工筋肉、濾過膜、食品衛生・健康用品;レトルトバッグ、鮮度保持フィルムなどに用いることができる。
(12)雑貨類
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体および熱可塑性樹脂組成物は、デスクマット、カッティングマット、定規、ペンの胴軸・グリップ・キャップ、ハサミやカッター等のグリップ、マグネットシート、ペンケース、ペーパーフォルダー、バインダー、ラベルシール、テープ、ホワイトボード等の文房具:衣類、カーテン、シーツ、絨毯、玄関マット、バスマット、バケツ、ホース、バック、プランター、エアコンや排気ファンのフィルター、食器、トレー、カップ、弁当箱、コーヒーサイフォン用ロート、メガネフレーム、コンテナ、収納ケース、ハンガー、ロープ、洗濯ネット等の生活日用雑貨類:シューズ、ゴーグル、スキー板、ラケット、ボール、テント、水中メガネ、足ヒレ、釣り竿、クーラーボックス、レジャーシート、スポーツ用ネット等のスポーツ用品:ブロック、カード、等の玩具:灯油缶、ドラム缶、洗剤やシャンプー等のボトル、等の容器;看板、パイロン、プラスチックチェーン:等の表示類等に用いることができる。
(13)フィラー改質剤
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体および熱可塑性樹脂組成物は、フィラー分散性改良剤、分散性の改良されたフィラーを調製するための添加剤などの用途に好適に用いることができる。
(14)相溶化剤
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体および熱可塑性樹脂組成物は、相溶化剤として用いることができる。本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体を用いると、ポリオレフィンと、極性基を含有する熱可塑性樹脂とを任意の割合で混合することができる。本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体は、ポリオレフィンの主鎖と極性基を有する側鎖とを有しているので元来非相溶であった成分を混和させることができ、極性基含有オレフィン共重合体を用いない場合に比べて破断点伸びを著しく向上させることができる。
【0149】
【発明の効果】
本発明に係る極性基含有分岐型オレフィン共重合体および熱可塑性樹脂組成物は、金属、極性樹脂などの極性物質との接着性、相容性、表面の親水性、塗装性、印刷適性、防曇性、帯電防止性、耐油性、生体適合性、水分散性、溶剤分散性、顔料分散性、フィラー分散性に優れると共に、透明性、機械強度、成形性にも優れている。
【0150】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお実施例において各種物性は以下のようにして測定した。
[防曇性]
フィルムの作製
プレス板上にポリエチレンテレフタレート(PET)製シート、および中央を15cm×15cm角に切り取った厚さ100μmのアルミ製シートをこの順に敷き、この中央(切り取られた部分)に3.3gの試料(ジブロック共重合体)を置いた。次いで、PET製シート、アルミ製シート、プレス板をこの順にさらに重ねた。
【0151】
上記プレス板で挟まれた試料を200℃のホットプレスの中に入れ、約7分間の予熱を行った後、試料内の気泡を取り除くため、加圧(50kg/cm2-G)脱圧操作を数回繰り返した。次いで、100kg/cm2-G に昇圧し、2分間加圧加熱した。脱圧後、プレス板のプレス機から取り出し、0℃に圧着部が保たれた別のプレス機に移し、100kg/cm2-G で4分間加圧冷却を行った後、脱圧し、試料を取り出した。ジブロック共重合体フィルムを初期防曇性評価用として使用した。
【0152】
初期防曇性の評価
100ccのビーカーに70ccの水を入れ、その上面を試料フィルムで覆い、50℃の恒温水槽にビーカーをつけて20℃の恒温室に放置した。試料フィルム内面の曇りの程度を24時間後に観察した。
評価基準;
○:流滴状態で、水滴が認められない
△:部分的に大粒の水滴がフィルムに付着している
×:細かい水滴がフィルムのほぼ全面に付着している
[機械物性]
試験片の作成
実施例で得られたグラフト共重合体を55t射出成形機(東芝機械(株)製IS55EPN)を用いて、シリンダー温度200℃、金型温度40℃にて成形を行った。
【0153】
曲げ弾性率(FM)
ASTM C790に準拠して、厚さ1/8インチの試験片を用いて、スパン間51mm、曲げ速度20mm/分の条件下で測定した。
ロックウェル硬度(HR)
ASTM D785に準拠して、厚さ2mm×縦120mm×横130mmの角板を用いて測定した。
【0154】
鉛筆硬度
JIS K5401に準拠して、厚さ1/8インチの試験片を用いて、23℃の条件下で測定した。
熱変形温度(HDT)
ASTM D648(4.6kg/cm2)に準拠して、厚さ1/4インチの試験片を用いて測定した。
【0155】
[水分散性]
水分散体の調製
得られた極性基含有分岐型オレフィン共重合体 40gと、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(プロピレン/エチレン:98/2モル比、無水マレイン酸含量:4.0重量%、粘度平均分子量:17,000、密度:0.919g/cm3 、融点:136℃、軟化点:143℃、溶融粘度(180℃):500cps)4gと、オレイン酸カリウム1.2gとを室温で混合した後、ラボプラストミル(設定温度:200℃)にて5分間溶融混練し、次いで水酸化カリウムの18.7%水溶液を1.4g添加し、更に5分間溶融混練した。続いて、内容物を取り出し、固形状の乳化物を60℃の温水中で分散させて水性樹脂散体を得た。
【0156】
分散粒子径の測定
ハネウエル社製マイクロトラックを用いて測定した。
分散安定性
実施例で得られた水性樹脂分散体を密閉可能なガラス瓶に入れ、室温下静置し、1ヶ月後に水相と樹脂相に分離していないかどうかを確認した。
【0157】
1 H - NMRによる(2)/(3)の算出法
装 置:JEOL GFX400型核磁気共鳴装置
観 測 核: 1H
観測周波数:400MHz
パルス幅:45°
繰返し時間:5.0秒
積算回数:8000回
測定温度:115℃
測定溶媒:オルトジクロルベンゼン
測定:得られたポリマー25ないし40mgをオルトジクロルベンゼンに溶解し、上記の測定条件でNMRの測定を行った。
【0158】
未反応のアルコールの隣のメチレン基のケミカルシフトは3.50ppmである。未反応のアルコール基はトリフルオロ酢酸−d1との反応でトリフルオロ酢酸エステルへと変換する(アルコールの隣のメチレン基のケミカルシフトは4.17ppmへとシフトする)。一方、生成したポリマーの酸素の隣のメチレン基のケミカルシフトは3.35−3.65ppmに出現するので、(2)/(3)=(3.35−3.65ppmの積分強度)/(4.17ppmの積分強度)により算出することができる。
【0159】
【実施例1】
十分に窒素置換した内容量1000mlのガラス製重合器にトルエン400mlを装入し、窒素を20リットル/時間の量で流通させ、90℃で10分間保持させておいた。これに、トリイソブチルアルミニウム2.0mmolを加え、次いで下記式で表されるUndecene-ol(活性アルミナで乾燥後、減圧蒸留したもの)1.88mmolを添加した。
【0160】
【化22】
【0161】
さらに、メチルアルミノキサン1.100mmolを加え窒素の流通を停止し、エチレンを5リットル/時間の量で流通させた。最後に、ジメチルシリレン(2,7-ジメチル-4,5(2-メチル−ベンゾ)-1-インデニル)(2,7-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド 0.008mmolとメチルアルミノキサン 2.00mmolとを室温で10分間接触したトルエンスラリー溶液を添加し、重合を開始し、常圧下90℃で1時間重合を行った後、少量のイソブチルアルコールを添加し重合を停止した。さらに、濃塩酸水溶液1mlを含むイソブチルアルコール溶液100mlを添加し、窒素下75℃で加熱した。ポリマー溶液を大過剰のメタノールに加え、ポリマーを析出させ、80℃で12時間、減圧乾燥を行った結果、エチレン/側鎖モノマー(モル比=99.2/0.8)であるポリマー12.21gが得られた。
【0162】
温度測定管、圧力計、攪拌装置及びアルキレンオキシド導入管を装備した内容積1500mlのオートクレーブに、上記の方法で製造したエチレン/側鎖モノマー(モル比=99.2/0.8)共重合体12.0g、EP0791600の32頁に記載された方法と同様にして合成したテトラキス[トリス(ジメチルアミノ)ホスフォラニリデンアミノ]ホスフォニウムヒドロキシド{[(Me2N)3P=N]4P+OH-}31.0mgおよびテトラリン800gを仕込んだ。その後内容物を125℃まで昇温させ、圧力が0.9MPa(絶対圧)前後を保つようにエチレンオキシド3.1gを間欠的に供給しながら同温度で12時間反応させた。次いで、同温度で残留する未反応のエチレンオキシドを減圧下で留去した後、内容物を室温まで冷却し、その内容物をメタノール800mlに注いだ。析出した白色固体を濾別し、その固体に更にメタノール20mlを加え、30分間加熱還流した。この混合物を熱時濾過して得られた固体を減圧下60℃で乾燥させて、1個の水酸基に対して約13個のエチレンオキシドがグラフト重合したグラフト共重合体を10.1g得た。
【0163】
得られた極性基含有分岐型オレフィン共重合体の物性を表2に示す。
また上記のようにして得られた極性基含有分岐型オレフィン共重合体から得られたフィルムについて防曇性を上記のようにして評価した。結果を表3に示す。またこのポリマーを1H-NMRで測定した結果、(2)/(3)=100/0であった。
【0164】
【実施例2】
十分に窒素置換した内容量1000mlのガラス製重合器にトルエン400mlを装入し、窒素を20リットル/時間の量で流通させ、90℃で10分間保持させておいた.これに、トリイソブチルアルミニウム1.08mmolを加え、次いでUndecene-ol(活性アルミナで乾燥後、減圧蒸留したもの)0.90mmolを添加した。さらに、メチルアルミノキサン1.100mmolを加え窒素の流通を停止し、エチレンを100リットル/時間の量で流通させた。最後に、ジメチルシリレン(2,7-ジメチル-4,5(2-メチル−ベンゾ)-1-インデニル)(2,7-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド 0.008mmollとメチルアルミノキサン 2.00mmolとを室温で10分間接触したトルエンスラリー溶液を添加し、重合を開始し、常圧下90℃で1時間重合を行った後、少量のイソブチルアルコールを添加し重合を停止した。さらに、濃塩酸水溶液1mlを含むイソブチルアルコール溶液100mlを添加し、窒素下75℃で加熱した。ポリマー溶液を大過剰のメタノールに加え、ポリマーを析出させ、80℃で12時間、減圧乾燥を行った結果、エチレン/側鎖モノマー(モル比=99.75/0.25)であるポリマー14.83gが得られた。
【0165】
このポリマー12.0gを用い、実施例1において、エチレンオキシドを15.1g用いた他は実施例1と同様の方法で重合を行った。1個の水酸基に対して約65個のエチレンオキシドがグラフト重合したグラフト共重合体を11.8g得た。
得られた極性基含有分岐型オレフィン共重合体の物性を表2に示す。
【0166】
また上記のようにして得られた極性基含有分岐型オレフィン共重合体から得られたフィルムについて防曇性を上記のようにして評価した。結果を表3に示す。
【0167】
【実施例3】
実施例1におけるエチレンオキシドの代わりに、プロピレンオキシド5.0gを用いた以外は全く実施例1と同様に行って、1個の水酸基に対して約10個のプロピレンオキシドがグラフト重合したグラフト共重合体を10.3g得た。
得られた極性基含有分岐型オレフィン共重合体の物性を表2に示す。
【0168】
また上記のようにして得られた極性基含有分岐型オレフィン共重合体から得られたフィルムについて防曇性を上記のようにして評価した。結果を表3に示す。またこのポリマーを1H-NMRで測定した結果、(2)/(3)=99/1であった。
【0169】
【実施例4】
実施例2で製造したエチレン/側鎖モノマー(モル比=99.75/0.25)のポリマーを用い、エチレンオキシド3.1gを間欠的に供給しながら重合を行った。1個の水酸基に対して約13個のエチレンオキシドがグラフト重合したグラフト共重合体を11.8g得た。
【0170】
得られた極性基含有オレフィン共重合体の物性を表2に示す。
また上記のようにして得られた極性基含有分岐型オレフィン共重合体から得られたフィルムについて防曇性を上記のようにして評価した。結果を表3に示す。
【0171】
【実施例5】
実施例1における、仕込みに対して更にα-ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン7.75gを追加して仕込み、圧力を0.9から0.2へ変え、エチレンオキシドの代わりにメタクリル酸メチル5.8gを用い、さらにはメタノールの代わりにテトラヒドロフランを用いた以外は全て実施例1と同様に行って、1個の水酸基に対して約20個のメタクリル酸メチルがグラフト重合したグラフト共重合体を11.3g得た。
【0172】
得られた極性基含有分岐型オレフィン共重合体の物性を表2に示す。
また上記のようにして得られた極性基含有分岐型オレフィン共重合体について機械物性を上記のようにして評価した。結果を表3に示す。
【0173】
【実施例6】
十分に窒素置換した内容量2リットルのステンレス(SUS)製オートクレーブに、1-オクテン105g、三井へキサン895mlおよびトリイソブチルアルミニウム1.50ミリモルを添加した。このSUS製オートクレーブを150℃まで加熱し、メチルアルミノキサン1.140ミリモルを加え、次いでundecene-1-ol(活性アルミナで乾燥後、減圧蒸留したもの)1.350ミリモルを添加した。150℃を維持しながら、全圧が30kg/cm2-Gとなるようにエチレンで加圧した。一方、充分窒素置換した20mlのガラス製フラスコに、ジメチルシリレン(2-メチル-4,5-ベンゾ-1-インデニル)(2,7-ジtert-ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド0.00075ミリモルとメチルアルミノキサン0.4300mmolとを室温で10分間接触したトルエンスラリー溶液を窒素で圧入し、さらに水素600Nmlを圧入した。圧入後、オートクレーブを10分間、温度を150℃で維持し、圧力はエチレン加圧により圧入直後の圧力を維持した。少量のイソブチルアルコールを添加し重合を停止した。ポリマー溶液を大過剰のメタノールに加え、ポリマーを析出させ、80℃で12時間、減圧乾燥を行った結果、ポリマー8.45gが得られた。
【0174】
このポリマー8gを用いて、実施例1と同様にエチレンオキシド3.1gを間欠的に供給しながら重合を行った。1個の水酸基に対して約13個のエチレンオキシドがグラフト重合したグラフト共重合体を11.8g得た。
得られた極性基含有分岐型オレフィン共重合体の物性を表2に示す。
また上記のようにして得られた極性基含有分岐型オレフィン共重合体について水分散性を上記のようにして評価した。結果を表3に示す。
【0175】
【表2】
【0176】
【表3】
Claims (4)
- 下記一般式(1)で表される構成単位および下記一般式(2)で表される構成単位と、必要に応じて下記一般式(3)で表される構成単位とがランダムに結合してなり、構成単位(1)と、構成単位(2)および構成単位(3)の合計とのモル比((1):((2)+(3))が、99.9:0.1〜30:70であり、重量平均分子量(Mw)が5000〜130万の範囲であることを特徴とする極性基含有分岐型オレフィン共重合体;
- 分子量分布が3以下である請求項1に記載の極性基含有分岐型オレフィン共重合体。
- 13C-NMRスペクトルにおけるTαα+Tαβに対するTαβの強度比(Tαβ/(Tαα+Tαβ))が1.0以下である請求項1または2に記載の極性基含有分岐型オレフィン共重合体。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載の極性基含有分岐型オレフィン共重合体を含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
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