JP4342676B2 - 複合紡糸方法及び複合紡糸口金 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性合成樹脂を原料とするサイドバイサイド型複合繊維を溶融紡糸するための複合紡糸方法とそのための複合紡糸口金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、樹脂種、粘度、重合度、あるいは熱収縮特性などの性質の異なる2種類の熱可塑性ポリマー(以下、単に「ポリマー」とも称する)を偏心芯鞘型あるいはサイドバイサイド型複合繊維として溶融紡糸することで、潜在捲縮性を発現させる技術が、工業的に広く知られ、行われている。
【0003】
ここで、本明細書においては、「糸条」とは、或る一定の本数(例えば、12本)からなる複合単繊維群(或いは、「複合フィラメント群」ともいう)を一つの単位として紡出して、これらを纏めて1つの束(複合マルチフィラメント)としたものとする。さらに、本明細書において、「複合単繊維(複合フィラメント)の本数」を、「fil」で表示する。従って、例えば「12filの糸条」と言えば、「12本の複合単繊維からなる複合マルチフィラメント」を指すこととなる。
【0004】
次に、従来の紡糸工程を図4を援用して簡単に説明すると、その構造は、加熱媒体1aが封入されたスピンブロック1のパックドームに、紡糸口金2’が装着された紡糸パック3を取り付けた紡糸装置からなる。なお、このような紡糸装置は、例えば、後述する特開昭52−53019号公報、あるいは特開平2−307905号公報などに記載されている公知のものを使用することができる。したがって、その詳細な構造説明は省略することを断った上で、以下に基本構成について簡単に説明する。
【0005】
先ず、サイドバイサイド型複合繊維を得るために、紡糸原料であるポリマー(A)と(B)とを、ギヤポンプなどの計量供給手段(図示せず)によって、紡糸パック3へ供給し、紡糸口金2’から糸条Yとして紡出する。そして、この紡出された糸条Yは、断熱シャッター5によって、紡糸口金2’の直下領域の温度を一定に制御しながら、その下流側に備えられた冷却装置4により冷却される。
【0006】
なお、この冷却装置4からは、整流手段41によって整流された横吹き冷却風Wを吹出すことができ、これによって紡出された糸条Yを×印で示した冷却開始点Sより冷却しながら、紡糸筒6内で細化・固化することができる。この時、前記の断熱シャッター5は、下流側で吹出された冷却風が紡糸口金3直下の保温領域に流入しないようにする役割を果たす。
【0007】
その際、前述のような性質の異なる2種類のポリマーによってサイドバイサイド型複合繊維を得る溶融紡糸工程においては、紡糸口金2’からポリマーを吐出する時に、ポリマー粘度が高い成分を有するポリマー側に向かって吐出されたポリマーが大きく屈曲するという、いわゆるベンディング現象が生ずる。もし、このような屈曲現象が溶融紡糸工程において発生すると、著しい工程調子の悪化を惹起し、その結果として、溶融紡糸工程の安定性、得られる複合繊維の物性の安定性などに多大の悪影響を与える。
【0008】
このため、前記のベンディング現象を防止するための従来技術が、例えば特開昭52−53019号公報、あるいは特開平2−307905号公報などに提案されている。すなわち、これらの従来技術によると、貼り合せるポリマーの流速分布に関して、そのそれぞれの速度が溶融紡糸口金の導入孔内、あるいはその吐出孔内において、異なることがベンディング現象の発生する原因と考え、これを抑制する手段を採用することが提案されている。
【0009】
しかしながら、これらの各ポリマー流速を制御する従来技術によっても、溶融紡糸口金からのポリマー吐出時において、前記のベンディング現象を完全に抑制するには至っておらず、工程を長期に亙って安定させるには不十分と言わざるを得ない。
【0010】
また、従来、複合単繊維群のそれぞれを均一に溶融紡出するための紡糸口金としては、図5に示すように、上口金板21'、上部中間口金板22'、下部中間口金板23'、そして下口金板24'からなる4層の積層板からなる紡糸口金2'が使用されている。なお、図5(a)は、4層に積層した紡糸口金2’の正面断面を模式的に表わした断面説明図であり、図5(b)は、下口金板24’をポリマーの吐出面側から見た吐出孔H4’群の円周配列を模式的に例示した斜視図である。
【0011】
この従来の紡糸口金2’では、前記下口金板24'には、その吐出孔H4'群の配置を同心円周群(図5では「一つの同心円」の場合を例示)上に等ピッチで回転対称に配列した紡糸口金2’が使用されており、前記4層の口金板群21'〜24'は、このような円周配列に穿孔された吐出孔H4’群にポリマー(A’)と(B’)とをサイドバイサイドに貼り合せて供給するために設けられたものである。その際、ポリマー(A’)は外周側に、ポリマー(B’)は内周側に位置するように配置される。
【0012】
確かに、このような同心円周上に回転対称に穿設された吐出孔H4’群は、同一の同心円上では回転対称に穿設されているが故に、熱履歴、流路抵抗、流路長さなどの条件がほぼ等しくなるために、均一な複合単繊維群を得るためには、非常に有効な方法で有る。このため、通常は、このようなタイプの吐出孔配列を有する紡糸口金2’が慣用されることとなる。
【0013】
また、特開昭48―56924号公報、あるいは特公平3―67122号公報に提案されているように、紡糸口金から吐出されたポリマーを或る特定の方向から吹出した冷却風によって異方冷却することで、潜在捲縮性に優れた繊維を得る、いわゆる「異方冷却紡糸」も、従来慣用されている技術である。
【0014】
しかしながら、サイドバイサイド型複合繊維を溶融紡糸するための紡糸口金においては、前述の同心円群の各円周上に回転対称に穿設された吐出孔H4’群から紡出されたマルチ複合単繊維群に対して異方冷却を適用しようとすると、その吐出孔配列に固有に付随する問題を惹起するのである。
【0015】
つまり、互いにサイドバイサイドに貼り合わされた紡出複合単繊維群を異方冷却する場合においては、急速冷却したい各複合単繊維側のポリマーを風上側に、そして、緩慢冷却したい各複合単繊維側のポリマーを風下側に常に配置する必要が有る。何故ならば、もしこのような配置が実現不可能であれば、複合単繊維群の異方冷却時に付与される繊維断面方向の力学的なひずみと、サイドバイサイドに互いに貼り合わされたポリマーによるバイメタル効果とが互いに相殺されてしまい、その相乗効果は到底期待できないからである。
【0016】
ところが、本来、同一の各同心円周上にそれぞれ回転対称に穿設された吐出孔H4’群を有する紡糸口金2’は、既に述べたように、各吐出孔H4’から紡出されたそれぞれの複合単繊維の品質にバラツキが無いことを目的とするものである。それにも拘わらず、急速冷却したい複合単繊維側のポリマーを風上側に、そして、緩慢冷却したい複合単繊維側のポリマーを風下側に常に配置するように各吐出孔に流入する各ポリマーの流れ自体を異方性を有するように制御することは、相反する課題であり、その本来的な目的を一致させることは至難の業である。なお、この問題は、複数の糸条を紡糸するために、一つの紡糸口金パックに複数の紡糸口金を配設した所謂「多眼の紡糸口金パック」、あるいは一つの紡糸口金を分割して複数の糸条を得る「分割口金」において、より顕著になることは明白である。
【0017】
以上に述べたように、吐出孔H4’群を同心円の円周上に配列した吐出孔配列方式を採用する限り、どうしても、各吐出孔H4’ごとに、吐出されて形成される複合単繊維群に関しては、各繊維断面内に生じる力学的ひずみ量にバラツキが生じることは不可避となる。このため、粘度等の物性差を有する2種類のポリマーからなる複合単繊維を多数本併せて構成される糸条では、本来、各複合単繊維間で均一になるべき潜在捲縮性能が不揃いなものとなってしまい、各複合単繊維間でまとまりが無く、しかも繊維の長手方向におけるクリンプピッチが不等間隔となり、かつバラツキの多い糸条となってしまう。
【0018】
以上に述べたような問題を解決するために、従来、複合繊維用紡糸口金としては、様々な形態のものが提案されてきた。しかしながら、従来のこれらの技術においては、2種成分以上のポリマーを取り扱わなければならないという宿命から、複雑なポリマー流路を形成する必要が有り、その殆どが単独成分ポリマーからなる紡糸口金に比べ、著しく構造が複雑である。このように、従来の複合繊維用紡糸口金は、複雑な構造あるいは複雑なポリマー流路を有するが故に、単一のポリマーを紡糸するための口金としてみた場合、その外径、或いは厚みといった形状自体も物理的に非常に大きくならざるを得ない。そして、その結果として、複合繊維用紡糸設備自体も大型化するという問題を抱えていた。
【0019】
その上、前記のような理由から設備サイズが増大すると、これにかかるエネルギーコストも必然的に増大するのは勿論の事である。また、生産機においては、得られる複合繊維の糸品質を常に変わることなく、一定の品質に維持しておかなければならないという宿命が有る。したがって、複合繊維を得るために設定するポリマーの加熱温度、冷却風温度、冷却風の風速などで代表される、あらゆる紡糸条件を長期間にわたり、広範囲に均一に維持し続けなければならないという点において、複合繊維の紡糸技術そのものがより一層困難極まりないものとなる。
【0020】
更には、設備サイズが大型化するに従って、複合繊維紡糸は単独成分ポリマーだけの紡糸に比べ、多錘同時製糸をする場合にコンパクトなレイアウトが著しく困難となり、しかも、生産性も悪く、また加えて、フレキシビリティにも欠けるという問題を惹起する。その上、当然のことながら、設備サイズの大型化に伴って、その設備製造コスト、部品ストックコストも増大することは明らかである。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記の従来技術が有する諸問題を解決することを目的として為されたものであり、その目的は、
▲1▼ ベンディング現象が発生したとしても、その影響を余り受けること無く、
▲2▼ 殆ど物性差の無い極めて揃ったクリンプ形態を有し、
▲3▼ 糸条の長手方向にも規則的なクリンプピッチを発現でき、
▲4▼ 一つの紡糸口金から2本以上の糸条群を紡出して巻き取ることができる、といった利点を有する複合紡糸方法とそのための複合紡糸口金とを提供せんとするものである。
【0022】
更に、本発明によって、複合紡糸口金パックの構造をシンプルかつコンパクトにすることができ、したがって、複合紡糸設備全体も単独紡糸設備並みにコンパクトなものとすることができ、その結果として、設備製造コスト、製糸生産性などを著しく向上させることができる複合紡糸方法とそのための複合紡糸口金とを提供せんとするものである。
【0023】
【課題を解決するための手段】
ここに、本発明の複合紡糸口金として、
「高粘度及び/又は高収縮性の熱可塑性ポリマー(A)と、低粘度及び/又は低収縮性の熱可塑性ポリマー(B)とがサイドバイサイドに貼り合わされた複合単繊維群を溶融紡糸するための複合紡糸口金が下記の(1)〜(4)の要件を同時に満足することを特徴とする複合紡糸口金。
(1) 前記複合単繊維群を紡出するための吐出孔群が複数の直線状列群上に分割されて穿設され、
(2) 前記各直線状列同士は、互いに並列に配設されると共に、各直線状列の各中心線の左右両側に供給される前記ポリマー(A)と(B)に関して、前記ポリマー(A)が下口金の反中心線側の位置に、そして、ポリマー(B)が下口金の中心線側位置にそれぞれ選択的に偏在するように、前記ポリマー(A)及び(B)を前記各吐出孔へそれぞれ個別に供給するためのポリマー流路が形成され、
(3) 前記ポリマ流路は、櫛状の流路を有する櫛形流路であって、かつポリマー(A)用とポリマー(B)用とにそれぞれ分離して形成され、そして、
(4) ポリマー(A)用とポリマー(B)用の前記各櫛形流路の櫛歯部を構成する各櫛歯状流路部がポリマー(A)とポリマー(B)に対して交互に並列して配置されていること。」
が提供される。
このとき、本発明の複合紡糸口金として、前記直線状列群を互いに並列させると共に、該直線状列群のそれぞれの各列を一つの単位として、「単独列からなる吐出孔群」又は「互いに隣接する2以上の複数列を併せてなる吐出孔群」からそれぞれ紡出される複合単繊維群から形成される糸条が、一つの複合紡糸口金から少なくとも2本同時に紡出される分割口金であることが好ましい。更には、前記分割口金に穿設された吐出孔群の孔配置が左右鏡像対称にそれぞれ形成され、左右鏡像対称の左側部分と右側部分とに2分された2群の吐出孔群のそれぞれの群から複合単繊維群からなる2本の糸条をそれぞれ吐出することが好ましい。
【0024】
また、本発明の複合紡糸方法として、
「前記複合紡糸口金を使用して、前記ポリマー(A)とポリマー(B)とがサイドバイサイドに貼り合わされた複合単繊維群からなる糸条を溶融紡糸することを特徴とする複合紡糸方法」が提供される。
このとき、前記方法は、紡出された前記複合単繊維群を冷却するに際して、前記直線状列群の列方向に沿って一方向に並行吹出しする横吹き冷却風を使用することが好ましい。また、前記ポリマー(A)と(B)とが互いに貼り合わされて整列する整列方向が、前記横吹き冷却風の吹き付け方向に対して、ほぼ垂直であることが好ましい。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の態様について、図面を参照しながらその作用と共に詳細に説明する。
先ず、本発明を適用する紡糸装置としては、紡糸口金2’を除いて、図4に例示したものを使用することができる。従って、本発明においても、図4に模式的に例示した紡糸装置を使用することを前提として、以下の説明において、図4で使用した参照記号をそのまま流用することとする。
【0026】
次に、図4に例示した紡糸装置に使用する、本発明の複合紡糸口金の実施態様について、図1を参照しながら以下に詳細に説明する。なお、図1に例示した複合紡糸口金は、左右に分割された複合紡糸口金から2本の糸条群を紡出するための実施形態を例示している。
【0027】
図1において、図1(a)は、本発明の複合紡糸口金の実施形態を模式的に例示した断面説明図であって、該図1(a)において、参照符号21は円盤状の上口金板、参照符号22は円盤状の中口金板、そして、参照符号23は円盤状の下口金板である。なお、これらは、図1(a)に例示したように3層に積層されて、複合紡糸口金2を構成する。また、その積層位置は、後述する図1(b)〜(d)にそれぞれ示した各口金板の中心を通る中心線P1〜P3が互いに上下に重なるように積層配置する。
【0028】
ただし、該図1(a)では、上口金板21、中口金板22、そして、下口金板23の断面位置は、各口金板におけるポリマー(A)と(B)との流れ状況を説明するため便宜上それぞれ異ならせており、上口金板21、中口金板22、及び下口金板23の断面位置はそれぞれ異なっていることを念のために付言しておく。なお、更に付言すると、図1(a)を含め、これ以降に説明する諸図において、高粘度及び/又は高収縮性の熱可塑性ポリマー(A)を単に参照記号「A」、低粘度及び/又は低収縮性の熱可塑性ポリマー(B)を単に「B」で表わすことにする。
【0029】
以上に述べたことを念頭に置いて、前記図1(a)において説明した、3層に積層した各口金板のそれぞれの役割について、図1(b)〜(d)を援用しながら、各口金板毎に以下に詳細に説明する。なお、図1(b)〜(d)は斜視図であって、図1(b)では円盤状の上口金板21、図1(c)では円盤状の中口金板22、そして、図1(d)では円盤状の下口金板23をそれぞれ模式的に例示している。
【0030】
前記上口金板21を例示する図1(b)において、サイドバイサイド型複合繊維を紡出するために、先ず最初に、紡糸パック内の濾過体(図示せず)などを通過したポリマー(A)と(B)とが、それぞれポリマー供給孔H1AとH1Bとから複合紡糸口金2を構成する部材である上口金板21へ供給される。
【0031】
なお、ここでは詳細な説明を省略するが、これらのポリマー(A)と(B)とは、上口金板21へ供給される以前の工程において、紡糸パック3内を流れる間に熱劣化しないように、ポリマーが長期間特定の場所に滞留しないように配慮dて設計することは、勿論である。また、先に簡単に触れたように、ポリマー中に何らかの原因で含まれる異物などを除去するための前記濾過体なども含まれていることは言うまでもない。
【0032】
このようにして、上口金板21の上部からそれぞれ供給されたポリマー(A)と(B)とは、前記ポリマー供給孔H1AとH1B内をそれぞれ流下し、次いで、上口金板21の底部に設けられた櫛状の流路を有する櫛形流路G1AとG1Bとへとそれぞれ流入する。
【0033】
なお、その際、図1(b)に透視した状態で例示したように、ポリマー(A)を供給する櫛形流路G1A(図には太い実線で表示)の4つの櫛歯状流路群を参照符号DA1、DA2、DA3、及びDA4でそれぞれ表わし、ポリマー(B)を供給する櫛形流路G1B(図には細い実線で表示)の4つの櫛歯状流路群を参照記号DB1、DB2、DB3、及びDB4でそれぞれ表わすことにして、以下に詳細に説明することとする。
【0034】
以上の参照符号を念頭に置いて、図1(b)に例示した上口金板21を見ると、該上口金板21では、櫛形流路G1Aと櫛形流路G1Bとがその流路が交錯しないように互いに並列に噛み合わせられている。したがって、前記の各櫛歯状流路(DA1、DA2、DA3、DA4、DB1、DB2、DB3、又はDB4)は、互いに並列に配列させられ、これらが交互に並列配置されたポリマーの分配流路群を形成している。
【0035】
この時、前記櫛歯状流路群DA1、DA2、DA3、DA4、DB1、DB2、DB3、及びDB4に関しては、上口金板21の中心線P1(図中に一点鎖線で示す)を基準として左右に振り分けた場合に、左側の櫛歯状流路群の配列が、DA1−DB1−DA2−DB2となり、右側の櫛歯状流路群の配列が、DB3−DA3−DB4−DA4となるように並列かつ交互に分配配置されている。
【0036】
したがって、その左側の櫛歯状流路群DA1、DB1、DA2、及びDB2のそれぞれに対しては、ポリマー(A)と(B)とが、ポリマー(A)、ポリマー(B)、ポリマー(A)、及びポリマー(B)というようにそれぞれ分配供給されることとなる。また、右側の櫛歯状流路群DB3、DA3、DB4、及びDA4のそれぞれに対しては、ポリマー(A)、ポリマー(B)、ポリマー(A)、及びポリマー(B)というようにそれぞれ分配供給されることとなる。
【0037】
このようにして、中口金板22へポリマー(A)と(B)とをそれぞれ分配する櫛歯状の分配流路を形成することで、前記中心線P1を対称軸として、左半分の櫛歯状流路群DA1、DB1、DA2、及びDB2から左側糸条を、また、右半分の櫛歯状流路群DB3、DA3、DB4、及びDA4から右側糸条をそれぞれ紡出するための最初の準備が完了する。
【0038】
なお、この時、前記の櫛歯状流路群DA1、DB1、DA2、DB2、DB3、DA3、DB4、及びDA4は、前記中心線P2を対称軸として、中口金板22の左側半分と右側半分とが左右線対称(特に、左右鏡像対称が好ましい)に配置されていることが、均一な2本の糸条群を一つの複合紡糸口金2から紡出する上で好ましい。
【0039】
以上で上口金板21の説明を一旦終了し、次に、図1(c)に例示したような構造を有する中口金板22について以下に説明する。
この中口金板22は、前記上口金板21から分配供給されるポリマー(A)と(B)とが分配されて供給される各櫛歯状流路DA1、DB1、DA2、DB2、DB3、DA3、DB4、及びDA4からそれぞれ受け取って、これらの分配されたポリマーを下口金板23の所定位置へそれぞれ個別に供給する役割を果たす。そして、この役割と同時に、後述する下口金板23内で分配供給された各ポリマー(A)と(B)とをそれぞれ合流させて、サイドバイサイドに貼り合わすためのポリマー導入部材としての役割をも果たす。
【0040】
ここで、以下の説明の理解を容易にするために、前記上口金板21の場合と同様に、中口金板22の中心を通る中心線P2(図中に一点鎖線で示した)を想定する。そうすると、サイドバイサイド型複合単繊維を紡糸するためのポリマー配置に関しては、前記中心線P2を基準とて、ポリマー(B)を前記中心線P2側に近い位置に配置し、他方、ポリマー(A)を中心線P2とは遠い位置に配置することが必要となる。
【0041】
なお、このようにポリマー(A)と(B)とを配置することの理由については、その詳細は後述するので、ここでは簡単に説明しておく。つまり、その理由は、分配供給された各ポリマー(A)と(B)とがサイドバイサイドに貼り合わされる各ポリマー接合面を、紡出後においても、全て一定の方向に引き揃えるためである。そして、正しく中口金板22がこのような機能を果たすための補助的な役割を演じるのである。
【0042】
そこで、前述のサイドバイサイド型ポリマー配置を実際に具現化するために、図1(c)に破線で示した前記の櫛歯状流路群DA1、DB1、DA2、及びDB2のそれぞれに対応して、その直下に導入孔群H2A1、H2B1、H2A2、及びH2B2を各櫛歯状流路に沿って、それぞれ列を形成させながら穿孔する。このとき、複合単繊維を紡糸するために必要な隣接する各一対の櫛歯状流路DA1とDB1、及び櫛歯状流路DA1とDB1の直下に位置する各導入孔群H2A3、H2B3、H2A4、及びH2B4に関しては、互いにペア(各導入孔群H2A1とH2B1、及び各導入孔群H2A2とH2B2)を組ませながら一対として、サイドバイサイドに並列配置されることとなる。
【0043】
また、右側に位置する櫛歯状流路群DB3、DA3、DB4、及びDA4に関しても同様に、これら櫛歯状流路群DB3、DA3、DB4、及びDA4のそれぞれ対応して、その直下に導入孔群H2B3、H2A3、H2B4、及びH2A4を各櫛歯状流路に沿って、それぞれ列を形成させながら穿孔する。したがって、これに関しても、複合単繊維を紡糸するために必要な隣接する各一対の櫛歯状流路群DB3、DA3、DB4、及びDA4の直下に位置する各導入孔群H2B3、H2A3、H2B4、及びH2A4に関しては、互いにペア(各導入孔群H2B3とH2A3、及び各導入孔群H2B4とH2A4)を組ませながら一対として、サイドバイサイドに並列配置されることとなる。
【0044】
以上に述べたような工程を経て、最終的に、分配供給されたそれぞれのポリマー(A)と(B)とが、図1(d)に示す下口金板23に穿孔された吐出孔H3群でそれぞれ合流して貼り合わされた後、各吐出孔H3から吐出され、サイドバイサイド型複合単繊維群として紡出されることとなる。
【0045】
そこで、最後に、3層に積層された口金板群の中、最後部に位置する下口金板23について、図1(d)を援用しながら、以下に詳細に説明することとする。既に述べた中口金板22において、それぞれ互いにペアを組む導入孔群H2A1とH2B1、導入孔群H2A2とH2B2、導入孔群H2B3とH2A3、及び導入孔群H2B4とH2A4が形成されることを説明した。そこで、これらの導入孔群H2A1、H2B1、H2A2、H2B2、H2B3、H2A3、H2B4、及びH2A4を実線で表示して重ね合せた図が図1(d)である。したがって、図1(d)では導入孔群H2A1、H2B1、H2A2、H2B2、H2B3、H2A3、H2B4、及びH2A4を実線で表示しているが、これらは下口金板23に実際に穿孔されているものではない。
【0046】
したがって、図1(d)から明らかなように、前記下口金板23において、複合単繊維を紡出するための吐出孔H3群を複数の直線状列R1、R2、R3、及びR4に分繊分割し、分繊分割した吐出孔H3群に対して前記直線状列R1、R2、R3、及びR4同士を互いに並列させることができる。
【0047】
勿論、その際、導入孔群H2A1とH2B1、導入孔群H2A2とH2B2、導入孔群H2B3とH2A3、及び導入孔群H2B4とH2A4とが一対として各吐出孔H3の直上にサイドバイサイドに配置される。このために、各吐出孔H3へこれらのポリマーがそれぞれ流入すると、ポリマー(A)と(B)とが各吐出孔H3内で合流して、互いに貼り合わせられた後、紡出されることとなる。
【0048】
この場合、吐出孔H3群が配列する各直線状列R1、R2、R3、及びR4群の各中心線に対して、前記ポリマー(A)又は(B)の何れか一方が必ず右側又は左側に位置するように、前記ポリマー(A)又は(B)を左右に振り分けた状態(特に、中心線P3を対称軸とし、この中心線P3に対して鏡像対称となるように、貼り合わせた状態)で複合単繊維群を紡出することを可能とする。
【0049】
つまり、このような工夫によって、各直線状列R1、R2、R3、及びR4の各中心線に対して、左右のどちらか一方側に、前記ポリマー(A)又は(B)の何れか一方が、選択的に偏在するようにポリマー(A)及び(B)を前記の各吐出孔H3へそれぞれ個別に供給することを可能とする。
【0050】
なお、本発明の櫛型分配流路を用いて各吐出孔毎に分配されたポリマー(A)と(B)の口金内での滞留時間は、図5に例示した従来の円周配列複合紡糸口金とは異なり、吐出孔が回転対称に穿孔されていないために、その吐出孔ごとに異なることになる。したがって、滞留時間の差異は均質なポリマー物性が要求される合繊維の紡糸においては、本来、望ましいことでは無いが、我々の検討の結果、本口金における滞留時間の差異は最大でも数秒と非常にわずかであることから、糸物性バラツキにつながる可能性は極めて低いと考えられる。
【0051】
なお、これに関しては、実際に本発明の複合紡糸口金を用いた製糸テストの結果でも、従来の円周配列複合紡糸口金を用いて製造された繊維と同等の物性の均一性を有するという結果が得られたことを付言しておく。
【0052】
また、本発明の複合紡糸方法では、以上に述べた複合紡糸口金2から溶融状態で紡出された糸条群を固化するに当たって、一本の糸条を一つの単位として見た場合に、図2(a)に示すように、この一本の糸条を構成する全ての複合単繊維群のポリマーの貼り合わせ方向が特定の一方向に引き揃えられた状態とすることを特徴とする。即ち、ポリマー(A)と(B)とが互いに貼り合わされて整列する整列方向が、前記横吹き冷却風の吹き付け方向に対して、ほぼ垂直とすることができる。
【0053】
したがって、このようにすることで、一方向に並行吹出しされた横吹き冷却風Wによる紡出複合単繊維群の冷却において、一方向からの横吹き冷却風Wによる非対称冷却によって、繊維の横断面方向に力学的なひずみが付与されて、潜在的な立体的捲縮性が付与されても、均一に結晶化が進み、バラツキのない均一な収縮特性を発現させることを可能とする。
【0054】
なお、図2(b)に例示したように、本発明の複合紡糸方法によって、複合紡糸口金2から紡出される複合単繊維の横断面形状は、丸断面に限らず、中空、異形をはじめとするあらゆるサイドバイサイド複合合成繊維の溶融紡糸において適用できることは言うまでも無い。
【0055】
本発明の吐出孔H3群が左右対称に並列配列された複合紡糸口金2を使用したサイドバイサイド型複合繊維の紡糸方法は、複合紡糸口金2に穿孔した吐出孔H3群を、中心線P3を対称軸として、左右に半分ずつ線対称(特に、鏡像対称が好ましい)に配置する。このような配置を採用することで、左右に2分割した複合紡糸口金2から紡出される2本の糸条群に対して、全く同じ潜在捲縮性能を発現させることができる。
【0056】
また、図2に示すような実施形態で、本発明の複合紡糸口金2を用い、一方向からに並行吹出しする横吹き冷却風Wによる冷却で溶融紡糸を実施し、すべての吐出孔H3群において、高粘度あるいは高収縮性ポリマー(A)と低粘度あるいは低収縮性ポリマー(B)とが、図2に示したように冷却風の吹き出し方向に対して垂直に並列して配置することも分割型の複合紡糸口金2においては重要である。
【0057】
何故ならば、紡出された全ての複合単繊維群に対して、一方向からの横吹き冷却風Wによる非対称冷却を行うことにより、繊維横断面方向に力学的なひずみを付与することができるからである。そして、これによって、均一な潜在的立体的捲縮性が付与しても、分割型の複合紡糸口金2の左右から紡出される各糸条あるいはそれを構成するそれぞれの複合単繊維群は、全て一様に結晶化が進み、均一な収縮特性を発現するからである。また、この結果として、左右の糸条間では、同じ潜在捲縮性能を発現させることができる。
【0058】
更には、本発明のようなポリマー分配ならびに吐出孔H3配列を採用することにより、それぞれの吐出孔H3から吐出されたポリマーはベンディング現象を発現しても、図3に示したように、自分自身以外の他の複合単繊維群に影響を与えることなく引き取りを開始することが可能となる。また、複合紡糸口金2の左右に半分ずつ全く線対称(特に、鏡像対称)の吐出孔配置をすることにより、左右の糸条群には、例えベンディング現象が生じても、この現象をむしろ利用することができる。
【0059】
つまり、左右の糸条を構成する2群の複合単繊維群は、それぞれ一群としてみた場合に、互いに反対方向にベンディングすることとなり、左右の糸条間で互いの複合単繊維が混入することがなく、別々に下部紡糸筒内に落とすことが可能である。したがって、左右半分ずつの糸条は、紡糸筒を出たのちに、さらに別々の油剤付与、別々のガイドの糸導を通過させることが出来、その結果、二つの糸条を別々にワインダーで巻き取ることが可能となる。
【0060】
これらの効果により、各錘内の複合単繊維間で殆ど差異の無い極めて品質の揃ったクリンプ形態を有し、また糸条の長手方向にも規則的で均一なクリンプを発現させた糸条群を一組の複合紡糸口金2から紡出して、冷却・固化した後に、同時に2本の糸条を巻き取ることが可能となるのである。
【0061】
また、これにより、伸縮性、嵩高性、風合い、染着、発色、あるいは光沢が整い、その肌触り、着用性、外観が極めて良好である織物を提供することが可能となるのである。
【0062】
また、本紡糸方式の採用により、口金装置はシンプルかつコンパクトになるにも関わらず、限られたスペースの中で、極めて多数の糸条の同時引き取りが可能となることから複合紡糸設備全体を単独紡糸設備並みに、あるいはそれ以上にコンパクトなものとし、設備製造コスト、ストック保持コスト、製糸エネルギーコストを著しく低減させることは勿論、サイドバイサイド複合合成繊維の製糸生産性自体を著しく向上させることが出来る。
【0063】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明する。なお、実施例及び比較例における各物性あるいは評価は下記の方法により測定あるいは評価した。
【0064】
(1)発現捲縮数[コ/cm]
所定の速度で紡出糸条を巻き取った後に、通常延伸、熱処理を施した延伸糸条に発現している捲縮個数を、採取したサンプル糸1m中の任意の10箇所から抽出測定する。本測定を巻取り長約106mごとに繰り返し、その平均値ならびに分散を用いて表わした。
【0065】
(2)全捲縮率(TC:Total Crimp)[%]
全捲縮率(TC)の測定方法は、従来広く使用されている下記の方法で行った。なお、従来の測定方法においては、「繊度」の表示はde(デニール)表示であったので、de値からdtex値に換算して表示した。なお、参考として、dtex値に換算する時に使用したde値を括弧()内に併記した。
まず、測定する試料に441μN/dtex(50mg/de)の張力を負荷し、カセ枠に巻取り、約3333dtex(3000de)のカセを作る。カセ作成後、カセの一端に17.6μN/dtex(2mg/de)+1764μN/dtex(200mg/de)の荷重を負荷し、1分間経過後の長さL0(cm)を測定する。次いで、1764μN/dtex(200mg/de)の荷重を除去した状態で、100℃の沸騰水中にて20分間処理する。沸水処理後17.6μN/dtex(2mg/de)の荷重を除去し、24時間自由な状態で自然乾燥する。自然乾燥した試料に、再び17.6μN/dtex(2mg/de)+1764μN/dtex(200mg/de)の荷重を負荷し、1分間経過後の長さL1(cm)を測定する。次いで、1764μN/dtex(200mg/de)の荷重を除去し、1分間経過後の長さL2(cm)を測定し、次の算定で全捲縮率を算出した。
TC(%)={(L1−L2)/L0}×100
値は10回測定の平均値を用い、各測定値のバラツキを分散を用いて表わした。
【0066】
(3)繊度 [dtex]
所定の速度で紡出糸条を巻き取った原糸サンプルの任意の10箇所から約100mの糸条を抽出し、重量を測定する。この重量を10000m単位換算し、その平均値ならびに分散を用いて表わした。
【0067】
(4)破断強度 [cN/dtex]
所定の速度で紡出糸条を巻き取った後に、通常延伸、熱処理を施した延伸糸の破断強度を10回測定し、その平均値を用いて表わした。
【0068】
(5)破断伸度 [%]
所定の速度で紡出糸条を巻き取った後に、通常延伸、熱処理を施した延伸糸の破断伸度を10回測定し、その平均値を用いて表わした。
【0069】
(6)沸水収縮率 [%]
所定の速度で紡出糸条を巻き取った後に、通常延伸、熱処理を施した延伸糸の沸水収縮率を10回測定し、その平均値を用いて表わした。
【0070】
(7)繊度斑度(U%) [%]
所定の速度で紡出糸条を巻き取った後に、通常延伸、熱処理を施した延伸糸の繊度斑度を10回測定し、その平均値を用いて表わした。
【0071】
[実施例1]
複合紡糸口金として、一つの複合紡糸口金から2本の糸条を得るために、図1に模式的に例示した分割口金を使用して常法にしたがって紡糸した。このとき、ポリマー(A)として、固有粘度が0.64である高粘度ポリエチレンテレフタレート(PET)を使用した。また、ポリマー(B)として、固有粘度が0.39である低粘度ポリエチレンテレフタレート(PET)とを使用することで、ポリマー(A)とポリマー(B)との固有粘度の差異が0.25となるように調整した。そして、これらのポリマー(A)と(B)とを24ホールの丸型吐出孔群が穿設された複合紡糸口金を使用し、ポリマー(A)を1.5cm3/min/孔、そしてポリマー(B)を1.5cm3/min/孔で各吐出孔へ合流させて供給して、各吐出孔から紡出した。
【0072】
その際、複合紡糸口金のポリマー吐出面を基準として、このポリマー吐出面から糸条の引き取り方向に向かって下流側へ約100mmの位置で、一方向横吹き冷却風による冷却を開始し、ポリマー吐出面から下流側へ約600mmの位置でポリマーへの冷却風の吹き付けを終了する糸条の冷却方法を用い、常法にしたがって、引取速度1450m/minにて引き取った。この時、冷却風の温度としては、20℃に維持し、風速0.5m/secで紡出糸条に吹き付けた。
【0073】
このようにして得られた2本のサイドバイサイド複合糸条は、その横断面で見た場合に、ポリマーの占有面積が、50:50の面積比を有する丸形断面を呈していた。また、この時得られた複合糸条の横断面を観察するとポリマー接合面が高粘度側において凸となる緩やかな曲線を呈していた。その後、このようにして紡糸工程で得られた複合糸条を伸度が40%となるように、延伸倍率、延伸速度、延伸温度を適宜設定して、延伸と熱処理とを行って、最終的に、56dtex(50de)、12filの延伸複合糸条を得た。
【0074】
[実施例2]
12ホールの吐出孔群を有する一つの複合紡糸口金を用いて、56dtex(50de)、12filの1本の複合糸条を得た以外は実施例1に準じた。
【0075】
[比較例1]
実施例1と同様のポリマーを用い、従来より慣用されている各吐出孔が同心円周上に等ピッチで穿設配列され、かつ高粘度PETが外周側、低粘度PETが内周側に配置されるように設計した、12ホールの複合紡糸口金を用いて、一本のサイドバイサイド複合糸条を一つの複合紡糸口金から紡糸した。このとき、複合紡糸口金として、12ホールの円周配列の吐出孔群を有する複合紡糸口金を用いた以外は実施例1に準じ、56dtex(50de)、12filとなる延伸糸条を得た。
【0076】
[比較例2]
実施例1と同様のポリマーを用い、24ホールの吐出孔群が同心円周上に配列され、かつ24ホールの吐出孔群が左右12ホールずつ分離して配置されており、更に高粘度PETが円周外側、低粘度PETが円周内側に配置される円周配列の紡糸口金を用いて、一本の複合糸条を一つの複合紡糸口金から紡糸した。その際、24ホールの吐出孔群を有する円周配列の複合紡糸口金を用いた以外は実施例1に準じた。そして、このようにして得た紡出糸を延伸して、56dtex(50de)、12filとなる2本の延伸複合糸条を得た。
【0077】
前記のそれぞれの結果は、表1ならびに表2に表わした。
これらの表1及び表2に示した結果を見れば明らかなように、実施例1と2とは、共に均質で、かつ優れた捲縮特性を有していた。また、実施例1においては、実施例2と大差無く優れた捲縮特性、糸物性が左右の糸条共に均一に発現している。
【0078】
これに対し、比較例2では、その捲縮性能自体は発現しているものの、その捲縮特性に関してみると、糸条の長手方向で捲縮にバラツキが生じており、均質な捲縮性能を有しているとは言えない。特に、この比較例2は、複合紡糸口金からのポリマー吐出時のベンディング現象の影響で、2つの糸条を完全に分割して紡出させ、初期糸掛けを行うこと極めて困難であり、かつ紡糸開始後もしばしば、双方の糸条に複合単繊維の相互混入が発生し、安定して継続生産を行うこと自体が極めて困難であった。
【0079】
これらの結果から、一方向からの横吹き冷却風による冷却で、紡出した複合糸条を溶融固化し、その際に、全ての複合単繊維が冷却風の吹き付け方向に対して、垂直方向にA、B2種類のポリマーが並列した形で配置した実施例1および2の実施形態が得られる糸条の捲縮特性を均質なものとする機能に優れていた。
【0080】
また本発明の紡糸口金構造を用いることにより、一枚の複合紡糸口金から極めて簡易に、2つの糸条を取り出すことが可能となった。そして、これによりサイドバイサイド複合糸条の製糸生産性は著しく向上し、かつ、サイドバイサイド複合糸条の複合紡糸口金の小型化が可能となった。その結果として、複合繊維用紡糸設備そのものの大きさを極めて小さく抑えることが可能となった。
【0081】
また、設備サイズの小型化が可能となったことから、本発明の複合紡糸口金を用いた複合繊維紡糸設備においては、単独ポリマーを紡糸する単独繊維紡糸設備と同様に、多錘同時製糸設備配置が可能となり、生産性が向上し、また加えて、フレキシビリティにも優れていた。また、設備サイズの小型化に伴い、そのユーティリティコスト、設備製造コスト、部品ストックコストも著しく低減された。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明の複合紡糸方法と複合紡糸口金とによれば、従来の方法で発生する複合糸条の捲縮性能不足、捲縮性のバラツキといった問題が解消され、複合単繊維同士を互いに比較しても、これら複合単繊維群間で殆ど差異の無い極めて揃ったクリンプ形態を有し、かつ糸条の長手方向にも規則的なクリンプピッチを発現させることが可能となった。また、これにより、伸縮性、嵩高性、風合い、染着、発色、あるいは光沢が整い、その肌触り、着用性、外観が極めて良好である織物を提供することができるようになった。
【0085】
更に、本発明の複合紡糸方法と複合紡糸口金とにより、複合紡糸装置をシンプルかつコンパクトに設計することを可能としたことから、複合紡糸設備全体を単独紡糸設備並みに、コンパクトなものとでき、その設備製造コスト、製糸生産性を著しく向上させることができるという工業的に極めて有益な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる複合紡糸口金の構造とその機能を模式的に説明するための説明図であって、図(a)は断面図、図(b)は上口金板、図(c)は中口金板、そして、図(d)は下口金板をそれぞれ模式的に例示した斜視図である。
【図2】本発明の複合紡糸方法に適用する一方向横吹き冷却の実施形態を例示した模式説明図である。
【図3】ベンディング現象を説明した模式図である。
【図4】複合紡糸方法と複合紡糸口金が適用される複合紡糸工程を模式的に例示した説明図である。
【図5】従来の円周配列型吐出孔群を有する複合紡糸口金を模式的に例示した断面図である。
【符号の説明】
2 複合紡糸口金
21 上口金板
22 中口金板ポリマー分配板
23 下口金板
A 高粘度及び/又は高収縮性の熱可塑性ポリマー
B 低粘度及び/又は低収縮性の熱可塑性ポリマー
DA1〜DA4 ポリマー(A)用の櫛歯状流路
DB1〜DB4 ポリマー(B)用の櫛歯状流路
G1A ポリマー(A)用の櫛形流路
G1B ポリマー(B)用の櫛形流路
H1A ポリマー(A)用のポリマー供給孔
H1B ポリマー(B)用のポリマー供給孔
P1〜P3 中心線
R1〜R4 直線状列
Claims (6)
- 高粘度及び/又は高収縮性の熱可塑性ポリマー(A)と、低粘度及び/又は低収縮性の熱可塑性ポリマー(B)とがサイドバイサイドに貼り合わされた複合単繊維群を溶融紡糸するための複合紡糸口金が下記の(1)〜(4)の要件を同時に満足することを特徴とする複合紡糸口金。
(1) 前記複合単繊維群を紡出するための吐出孔群が複数の直線状列群上に分割されて穿設され、
(2) 前記各直線状列同士は、互いに並列に配設されると共に、各直線状列の各中心線の左右両側にに供給される前記ポリマー(A)と(B)に関して、前記ポリマー(A)が下口金板の反中心線側位置に、そして、ポリマー(B)が下口金板の中心線側位置にそれぞれ選択的に偏在するように、前記ポリマー(A)及び(B)を前記各吐出孔へそれぞれ個別に供給するためのポリマー流路が形成され、
(3) 前記ポリマ流路は、櫛状の流路を有する櫛形流路であって、かつポリマー(A)用とポリマー(B)用とにそれぞれ分離して形成され、そして、
(4) ポリマー(A)用とポリマー(B)用の前記各櫛形流路の櫛歯部を構成する各櫛歯状流路部がポリマー(A)とポリマー(B)に対して交互に並列して配置されていること。 - 前記直線状列群を互いに並列させると共に、該直線状列群のそれぞれの各列を一つの単位として、「単独列からなる吐出孔群」又は「互いに隣接する2以上の複数列を併せてなる吐出孔群」からそれぞれ紡出される複合単繊維群から形成される糸条が、一つの複合紡糸口金から少なくとも2本同時に紡出される分割口金であることを特徴とする請求項1に記載の複合紡糸口金。
- 請求項2記載の分割口金に穿設された吐出孔群の孔配置が左右鏡像対称にそれぞれ形成され、左右鏡像対称の左側部分と右側部分とに2分された2群の吐出孔群のそれぞれの群から複合単繊維群からなる2本の糸条をそれぞれ吐出することを特徴とする複合紡糸口金。
- 請求項1〜3の何れか一項に記載の複合紡糸口金を使用して、前記ポリマー(A)とポリマー(B)とがサイドバイサイドに貼り合わされた複合単繊維群からなる糸条を溶融紡糸することを特徴とする複合紡糸方法。
- 請求項1に記載の複合紡糸口金を使用して紡出された前記複合単繊維群を冷却するに際して、前記直線状列群の列方向に沿って一方向に並行吹出しする横吹き冷却風を使用することを特徴とする複合紡糸方法。
- 前記ポリマー(A)と(B)とが互いに貼り合わされて整列する整列方向が、前記横吹き冷却風の吹き付け方向に対して、ほぼ垂直であることを特徴とする請求項4又は5に記載の複合紡糸方法。
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