JP4339006B2 - 蓄熱性複合繊維及び蓄熱性布部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、衣料品、寝具、合成皮革基布、車両内装材、室内用内装材等に使用される、温度調節機能を有する複合繊維及びそれを用いた布部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
温度変化が著しい環境において使用される衣服等に、様々な温度調節用蓄熱性部材が利用されている。
例えば、一般に常温付近に融点を有する物質を封入したマイクロカプセルを布に固着したものや、マイクロカプセルを含有する合成樹脂を紡糸し、得られた繊維を布地とする方法が知られている。
また、蓄熱性物質として、パラフィンワックスとポリエチレン樹脂との組成物を芯材とした複合繊維が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8−311716号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、マイクロカプセルを布地に固着させたものでは、固着に使用した接着剤が布地を硬くし風合いを損なったり、また、塗布した接着剤により、布地に必要な透湿性が低下したりするため、衣服としての機能低下が問題となっていた。
一方、マイクロカプセルを含有する合成樹脂を紡糸し、得られた繊維を布地とする方法については、マイクロカプセルの粒子径が大きいため、紡糸工程や織りこみ工程で糸切れを起こす恐れが生じていた。
また、パラフィンワックス組成物を芯材とした複合繊維は、ワックス配合時や複合繊維製造時にワックスが熱により飛散する等により製造に困難が伴い、また、そのため十分な蓄熱性能がでない等の問題があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み、製造加工が容易で温度調節機能に優れる蓄熱性複合繊維及びそれを用いた蓄熱性布部材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の態様によれば、融点が−10〜100℃であって、潜熱が30J/g以上であるポリマー若しくはオリゴマーからなる蓄熱材料、又はこの蓄熱材料若しくはポリマー若しくは又はオリゴマーの架橋体からなる蓄熱材料を合成樹脂に配合してなる蓄熱性組成物が芯部であり、合成樹脂が鞘部である芯鞘構造を有する蓄熱性複合繊維が提供される。
【0007】
好ましくは、芯部における合成樹脂は、少なくともポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂のうちいずれか1からなる。
好ましくは、蓄熱材料は、側鎖結晶型である。
好ましくは、芯部における合成樹脂の融点は100℃以上である。
好ましくは、蓄熱材料の潜熱は50J/g以上である。
【0008】
本発明の第二の態様によれば、式(1)に示される主鎖部X、結合部Y及び側鎖Zから構成され、側鎖Zが互いに結晶化し得る結晶性ユニットを、主構成成分とするポリマー又はオリゴマーである蓄熱材料、又はこの蓄熱材料を合成樹脂に配合してなる蓄熱性組成物が芯部であり、合成樹脂が鞘部である芯鞘構造を有する蓄熱性複合繊維が提供される。
【化5】
【0009】
本発明の第三の態様によれば、式(1)に示される主鎖部X、結合部Y及び側鎖Zから構成され、側鎖Zが互いに結晶化し得る結晶性ユニットを、主構成成分とするポリマー又はオリゴマーの架橋体である蓄熱材料を合成樹脂に配合してなる蓄熱性組成物が芯部であり、合成樹脂が鞘部である芯鞘構造を有する蓄熱性複合繊維が提供される。
【化6】
【0010】
好ましくは、主鎖部X、結合部Y及び側鎖Zの重量は、以下の式を満たす。
Z/(X+Y+Z)≧0.75
好ましくは、主鎖部Xは、
【化7】
から選択される少なくとも一種類であり、
結合部と側鎖Y−Zは、−CO−O−R、―O−CO−R、−O−R、−CH2−Rから選択される少なくとも一種類であり、Rは、炭素数9以上の炭化水素基である。
好ましくは、ポリマー又はオリゴマーは、ポリドコシルメタクリレート、ポリヘンエイコシルメタクリレート、ポリエイコシルアクリレート、ポリノナデシルアクリレート、ポリヘプタデシルアクリレート、ポリパルミチルアクリレート、ポリペンタデシルアクリレート、ポリステアリルアクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリミリスチルアクリレート、ポリミリスチルメタクリレート、ポリペンタデシルメタクリレート、ポリパルミチルメタクリレート、ポリヘプタデシルメタクリレート、ポリノナデシルメタクリレート、ポリエイコシルメタクリレート、ポリステアリルメタクリレート、ポリ(パルミチル/ステアリル)メタクリレート、ポリビニルラウレート、ポリビニルミリステート、ポリビニルパルミテート、ポリビニルステアレート、ポリラウリルビニルエーテル、ポリミリスチルビニルエーテル、ポリパルミチルビニルエーテル又はポリステアリルビニルエーテルである。
【0011】
本発明の第四の態様によれば、ポリエーテルである主鎖と、互いに結晶化し得る側鎖とを有するユニットを、主構成成分とするポリマー又はオリゴマーである蓄熱材料、又はこの蓄熱材料を合成樹脂に配合してなる蓄熱性組成物が芯部であり、合成樹脂が鞘部である芯鞘構造を有する蓄熱性複合繊維が提供される。
【0012】
好ましくは、上記ユニットは、式(2)又は式(3)で示される。
【化8】
(式中、R1は、炭素数11以上の炭化水素基から選択される少なくとも一種類であり、R2は、炭素数14以上の炭化水素基から選択される少なくとも一種類である。)
【0013】
好ましくは、蓄熱材料の重量平均分子量Mwは、1,000〜2,000,000である。
【0014】
好ましくは、鞘部における合成樹脂は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂である。
【0015】
本発明の第五の態様によれば、上記の蓄熱性複合繊維を含む蓄熱性布部材が提供される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
1.蓄熱性複合繊維
本発明の蓄熱性複合繊維は、蓄熱材料、又はこの蓄熱材料を合成樹脂に配合してなる蓄熱性組成物を芯部とし、合成樹脂を鞘部とした芯鞘構造を有する。
(1)蓄熱材料
本発明の蓄熱性複合繊維の芯部に使用する蓄熱材料は、融点が−10〜100℃であって、潜熱が30J/g以上であるポリマー若しくはオリゴマー又はこれらの架橋体である。この材料は、好ましくは、側鎖結晶型で、潜熱が50J/g以上である。
具体的には、以下の蓄熱材料(A)〜(C)が挙げられる。
(A)式(1)に示される主鎖部X、結合部Y及び側鎖Zから構成され、側鎖Zが互いに結晶化し得る結晶性ユニットを、主構成成分とするポリマー又はオリゴマー
【化9】
(B)上記式(1)に示される主鎖部X、結合部Y及び側鎖Zから構成され、側鎖Zが互いに結晶化し得る結晶性ユニットを、主構成成分とするポリマー又はオリゴマーの架橋体(架橋蓄熱材料)
(C)ポリエーテルである主鎖と、互いに結晶化し得る側鎖とを有するユニットを、主構成成分とするポリマー又はオリゴマー(ポリエーテル蓄熱材料)
尚、本発明では、これら蓄熱材料(A)〜(C)のうち、蓄熱材料(B)を用いる場合は、芯部を、蓄熱材料(B)を合成樹脂に配合してなる蓄熱性組成物から構成する。
【0017】
これらの蓄熱材料は、所望の温度範囲において、材料(A)及び(B)にあっては、側鎖Zの非結晶化又は結晶化により相変化(融解、凝固)し、また、材料(C)にあっては、側鎖の凝集解離により相変化(融解、凝固)し、その際、大きな潜熱を放出又は吸収する。従って、これらの蓄熱材料は、外気温度が上昇すると熱を吸収して融解し、外気温度が低下すると熱を放出して凝固するので、外気温度の変動を和らげ、一定の温度が保たれ易く、蓄熱材料としての機能を発揮する。また、材料(A)及び(B)では、式(1)の主鎖部Xが、上記の温度範囲では融解せず、さらに、材料(B)では、架橋によって三次元網目構造となるので、材料全体が流出することなく形状は保持される。また、これらの蓄熱材料(A)、(B)及び(C)は、側鎖の長さを調節することにより、融点を容易に調節できる。
【0018】
まず、蓄熱材料(A)及び(B)について説明する。
蓄熱材料(A)及び(B)において、式(1)の主鎖部Xは、側鎖Zの結晶化を阻害する構造でなければ特に限定されないが、好ましくは、
【化10】
から選択される少なくとも一種類である。
結合部Yは、主鎖部Xと側鎖Zを結合する部であり、1原子ユニットを意味する。側鎖Zは、結晶化できれば特に限定はされないが、好ましくは、炭素数9以上の炭化水素基を含み、さらに好ましくは、炭素数9以上の直鎖アルキル基を含む。
結合部と側鎖Y−Zは、好ましくは、−CO−O−R、−O−CO−R、−O−R、−CH2−Rから選択される少なくとも一種類であり、Rは、炭素数9以上の炭化水素基であり、さらに好ましくは、炭素数9以上の直鎖アルキル基である。
【0019】
特に好ましい、主鎖部X、結合部Y及び側鎖Zからなる結晶性ユニットは、以下に示す、ポリメタクリレート系、ポリアクリレート系、ポリビニルエステル系、ポリビニルエーテル系又は炭化水素系である。
【化11】
【0020】
好ましい蓄熱材料(A)の例として、ポリドコシルメタクリレート、ポリヘンエイコシルメタクリレート、ポリエイコシルアクリレート、ポリノナデシルアクリレート、ポリヘプタデシルアクリレート、ポリパルミチルアクリレート、ポリペンタデシルアクリレート、ポリステアリルアクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリミリスチルアクリレート、ポリミリスチルメタクリレート、ポリペンタデシルメタクリレート、ポリパルミチルメタクリレート、ポリヘプタデシルメタクリレート、ポリノナデシルメタクリレート、ポリエイコシルメタクリレート、ポリステアリルメタクリレート、ポリ(パルミチル/ステアリル)メタクリレート、ポリビニルラウレート、ポリビニルミリステート、ポリビニルパルミテート、ポリビニルステアレート、ポリラウリルビニルエーテル、ポリミリスチルビニルエーテル、ポリパルミチルビニルエーテル、ポリステアリルビニルエーテル等が挙げられる。
【0021】
また、好ましい蓄熱材料(B)の例として、上記蓄熱材料(A)の具体例の架橋体が挙げられる。
【0022】
好ましくは、主鎖部X、結合部Y及び側鎖Zの重量は、以下の式を満たす。
Z/(X+Y+Z)≧0.75
即ち、側鎖Zの結晶性ユニットに占める割合は75重量%以上である。75重量%未満では、側鎖Zが結晶化できなくなり、蓄熱性を発揮することができない恐れがある。
【0023】
蓄熱材料(A)及び(B)は、その特性を損なわない範囲において、他のユニットを含むことにより、所望の機能を発揮させることもできる。
【0024】
例えば、蓄熱材料(A)及び(B)は、親水性ユニットを含むことができる。これらの蓄熱材料は、側鎖として長鎖炭化水素基を有するため疎水性が高いが、親水性ユニットを含ませることにより、親水性を高めることができる。また、これらの蓄熱材料を、他の親水性物質と組み合わせて用いるとき、他の物質に対する密着性が向上する。
【0025】
このような親水性ユニットを形成するモノマーは、特に限定されないが、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等がある。2−ヒドロキシエチルメタクリレートから形成される親水性ユニットは、下記式(4)で表される。また、2−ヒドロキシエチルアクリレートから形成される親水性ユニットは、下記式(5)で表される。
【化12】
【0026】
親水性ユニットの含有量は、好ましくは、50重量%以下であり、より好ましくは、30重量%以下である。50重量%を越えると、側鎖Zの結晶性が低下する恐れがある。
【0027】
蓄熱材料(A)の重量平均分子量Mwは、好ましくは1,000〜2,000,000、より好ましくは10,000〜1,000,000である。Mwが1,000未満では、製品強度が弱く、また、融点が低いため、使用時に液化し、ベトツキ等の原因となる場合がある。一方、2,000,000を超えると、蓄熱材料としての流動性が悪化するため、紡糸、成形加工性が低下する場合がある。
【0028】
蓄熱材料(A)及び(B)の融点、即ち、側鎖Zが非結晶化する温度は、好ましくは−10〜100℃である。この範囲の下限は、より好ましくは0℃、さらに好ましくは10℃である。この範囲の上限は、より好ましくは80℃、さらに好ましくは50℃、特に好ましくは40℃である。
融点が100℃を超えると、これらの材料は、日常の使用雰囲気下において、常に固体状態で存在するため、昇温時に結晶化熱を吸収する性質を利用することができないため、蓄熱材料としての機能を十分に果たし難くなる。
また、融点が−10℃未満では、日常の使用雰囲気下において、これらの材料は、常に液体状態で存在するため、凝固時に熱を放出する性質を利用できないため、蓄熱材料としての機能を十分に果たし難くなる。
【0029】
蓄熱材料(A)及び(B)の融点と凝固点の差は、好ましくは15℃以内である。15℃より大きくなると、吸熱、放熱する間隔が広いため、蓄熱材料として所望の狭い温度範囲で機能を発揮し難くなる。
【0030】
蓄熱材料(A)及び(B)の潜熱は、上記の融点の範囲において、好ましくは30J/g以上、より好ましくは50J/g以上、さらに好ましくは70J/g以上である。潜熱が30J/g未満では、蓄熱材料としての効果が不十分となる恐れがある。また、通常200J/g以下である。
【0031】
蓄熱材料(A)及び(B)は、所定の温度範囲で、側鎖Zが大きな潜熱を伴って可逆的に結晶化、非結晶化の相転移をするが、主鎖Xはかかる相転移はしない。
【0032】
蓄熱材料(A)及び(B)の50℃における40重量%トルエン溶液の溶液粘度は、好ましくは100mm2/s以上、より好ましくは120mm2/s以上である。100mm2/s未満では、蓄熱材料が漏洩する恐れがあり、布地のベタツキ等の原因となる。
【0033】
ここで、融点、凝固点及び潜熱とは、それぞれ示差走査熱量測定(DSC)で測定し、融点は、融解ピークの頂点の温度を、凝固点は、結晶化ピークの頂点の温度を意味する(JIS K 7121)。尚、融点は、一度融解ピーク終了時より高い温度まで加熱し、所定温度まで冷却した後、再度加熱した時に得られる融解ピークの頂点の温度を融点とした。
【0034】
蓄熱材料(A)及び(B)の製造方法は、特に限定されない。
例えば、材料(A)は、結晶性ユニットを形成し得るモノマー、又は結晶性ユニット及び親水性ユニットを形成し得るモノマーを重合することにより製造できる。
【0035】
また、材料(B)は、結晶性ユニットを形成し得るモノマー、又は結晶性ユニット及び親水性ユニットを形成し得るモノマーを、架橋剤と共に重合することにより製造できる。
架橋を形成する架橋剤(モノマー)としては、ポリエチレングリコール(1000)ジアクリレート、ポリエチレングリコール(1000)ジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等があり、好ましくは、ポリエチレングリコール(1000)ジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレートである。
架橋剤の量は、結晶性ユニット及び親水性ユニットを形成し得るモノマーに対し、好ましくは、0.1〜20重量%であり、より好ましくは、0.2〜3重量%である。0.1重量%未満では、架橋効果がほとんど表れない。一方、20重量%を越えてもほとんど効果に差がない。
【0036】
次に、蓄熱材料(C)について説明する
蓄熱材料(C)は、上述したように、ポリエーテルである主鎖と、互いに結晶化し得る側鎖とを有するユニットを、主構成成分とするポリマー又はオリゴマーである。
蓄熱材料(C)において、側鎖は、結晶化できれば特に限定はされない。
具体的な蓄熱材料(C)としては、式(2)に示すユニットを有するポリグリセリン系、又は式(3)に示すユニットを有するポリアルキレングリコール系が挙げられる。
【0037】
【化13】
(式中、R1は、炭素数11以上の炭化水素基から選択される少なくとも一種類であり、R2は、炭素数14以上の炭化水素基から選択される少なくとも一種類である。)
【0038】
R1又はR2は、好ましくは上記の炭素数を有する直鎖アルキル基である。具体例としては、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、トリコシル基等が挙げられる。
特に好ましいのは、トリデシル基(C13)、ペンタデシル基(C15)、ヘプタデシル基(C17)、ヘンエイコシル基(C21)である。
【0039】
例えば、R1が炭素数13のトリデシル基、R2が炭素数14のテトラデシル基であるときは、本発明の蓄熱材料は、それぞれ式(6)又は式(7)に示すユニットを有する。
【0040】
【化14】
【0041】
上記のような構成において、所定の温度で、主鎖は結晶化しないが、長い側鎖同士が互いに結晶化し得る。
【0042】
ポリグリセリン系蓄熱材料の例としては、デカグリセリン−ラウリン酸(C12)反応物、デカグリセリン−ミリスチン酸(C14)反応物、デカグリセリン−パルミチン酸(C16)反応物、デカグリセリン−ステアリン酸(C18)反応物、デカグリセリン−ベヘン酸(C22)反応物等が挙げられる。このうち、好ましいのは、デカグリセリン−ミリスチン酸反応物、デカグリセリン−パルミチン酸反応物、デカグリセリン−ステアリン酸反応物、デカグリセリン−ベヘン酸反応物である。
【0043】
また、ポリアルキレングリコール系蓄熱材料の例としては、ドデシレンオキシド、テトラデシレンオキシド、ヘキサデシレンオキシド、オクタデシレンオキシド等のアルキレンオキシドの重合物等が挙げられる。このうち、好ましいのは、ヘキサデシレンオキシド、オクタデシレンオキシド等の重合物である。
【0044】
蓄熱材料(C)は、その特性を損なわない範囲において、側鎖の官能基を変えることにより、所望の機能を発揮させることもできる。
例えば、蓄熱材料(C)は、側鎖として長鎖炭化水素基を有するため疎水性が高いが、アルコール等の親水性官能基を含ませることにより、親水性を高めることができる。その結果、蓄熱材料を基材等に塗布するとき、基材等に対する密着性が向上する。
【0045】
蓄熱材料(C)の重量平均分子量Mw、融点、融点と凝固点の差及び潜熱は、蓄熱材料(A)及び(B)と同様である。
【0046】
蓄熱材料(C)も、所定の温度範囲で、側鎖が可逆的に結晶化、非結晶化の相転移をするが、主鎖はかかる相転移はしない。
【0047】
蓄熱材料(C)は、TG−DTA測定装置で測定した空気中での5%重量減少温度が、好ましくは200℃以上、より好ましくは240℃以上である。200℃未満では、加熱加工処理時に蒸発する場合がある。尚、5%重量減少温度とは、蓄熱材料(C)を加熱して、全体の5重量%が減少したときの温度である。
【0048】
蓄熱材料(C)の製造方法は、特に限定されない。例えば、ポリグリセリン系蓄熱材料は、ポリグリセリン(ポリエーテル主鎖)に存在する水酸基と、直鎖アルキル基を有するカルボン酸(側鎖)のカルボキシル基とを、公知のエステル化反応を用いて反応させることにより製造できる。
一方、ポリアルキレングリコール系蓄熱材料は、アルキレンオキシドを開環重合することにより製造できる。
【0049】
(2)蓄熱性組成物
本発明の蓄熱性複合繊維の芯部に使用する蓄熱性組成物は、上記の蓄熱材料を合成樹脂に配合したものである。
蓄熱性組成物に用いる合成樹脂としては、融点が100℃以上のものが好ましい。具体的には、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、PET)、ポリカーボネート樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、熱可塑性エラストマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ABS樹脂等が挙げられる。このうち、好ましくは、上述した樹脂である。これらは、一種単独で用いてもよく、また、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
蓄熱材料の配合量は、要求される温度調節機能により異なるが、合成樹脂に対して、5重量%以上、好ましくは20重量%以上、特に好ましくは30重量%以上である。5重量%以下では、その温度調節機能が十分に発揮されない恐れがある。
【0051】
蓄熱性組成物には、相溶性改良材として、エポキシ基含有アクリル系ポリマーや、アリルエーテルコポリマー等を配合することができる。これにより、合成樹脂間の相溶性が向上し、蓄熱材料の配合量を増加することが可能となる。
また、蓄熱性組成物には、その特性を損なわない範囲で、種々の添加剤、例えば、酸化防止剤、耐光剤、無機充填剤(炭酸カルシウム、タルク等)、発泡剤(化学発泡材等)、老化防止剤、抗菌剤、防カビ剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、加工助剤、安定剤、可塑剤、架橋剤、反応促進剤等を配合することができる。
【0052】
蓄熱性組成物の潜熱は、−10〜100℃において、蓄熱機能上、好ましくは1J/g以上であり、より好ましくは5J/g以上である。潜熱が1J/g未満では、蓄熱の効果が十分でない場合がある。また、好ましくは−10〜80℃、より好ましくは0〜50℃において、好ましくは1J/g以上、より好ましくは5J/g以上である。
この特性により、外気温度等に対して、温度調節機能が十分に発揮できる。
このような蓄熱性組成物は、蓄熱材料と合成樹脂とを、公知の方法でブレンドし、混練することより製造することができる。
【0053】
(3)合成樹脂
本発明の蓄熱性複合繊維の鞘部に使用する合成樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等が挙げられる。このうち、好ましくは、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂である。
このような合成樹脂を用いることにより、容易に芯鞘構造の蓄熱性複合繊維を紡糸できる。
【0054】
(4)蓄熱性複合繊維
上記の蓄熱材料又は蓄熱性組成物、及び合成樹脂を、公知のエクストルーダ型複合紡糸機等を用いて紡糸することにより、蓄熱材料又は蓄熱性組成物が芯部であって、合成樹脂が鞘部の複合繊維を製造できる。
紡糸温度は、使用する繊維原料により異なるが、通常180〜350℃程度である。
蓄熱性複合繊維中の蓄熱材料の割合は、0.5〜70質量%が好ましく、より好ましくは1〜50質量%である。
【0055】
尚、上記の蓄熱性複合繊維を製造するとき、その特性を損なわない範囲において、適宜、吸湿剤、湿潤剤、着色剤、安定剤、難燃剤、静電剤、老化防止剤、酸化防止剤、抗菌剤、防カビ剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、加工助剤、可塑剤、架橋剤、反応促進剤、発泡剤等を添加できる。
【0056】
蓄熱性複合繊維の断面形状は、円形に限られず、三角形や四角形等の異形断面でもよい。
【0057】
蓄熱性複合繊維を製造するとき、原料となる蓄熱材料又はその組成物は、高分子量なので、蒸発、漏洩の問題がない。また、樹脂なので、塗布、練り込み、繊維化が可能であり、連続紡糸、織り込み等の加工が容易である。即ち、本発明の蓄熱性複合繊維は、紡糸性に優れ、製造が容易である。
【0058】
蓄熱性複合繊維の芯部は、上記の蓄熱材料を含んでいるので、蓄熱性複合繊維は、蓄熱材料の融点において、潜熱を発生する。即ち、−10〜100℃において、好ましくは1J/g以上、より好ましくは5J/g以上の潜熱を発生する。潜熱が1J/g未満では、蓄熱の効果が十分でない場合がある。また、好ましくは−10〜80℃、より好ましくは0〜50℃において、好ましくは1J/g以上、より好ましくは5J/g以上の潜熱を発生する。
この特性により、外気温度等に対して、温度調節機能が十分に発揮できる。
また、芯部を上記の蓄熱材料又はその組成物とすることにより、蓄熱材料を繊維中に均一に分散させることができ、引張り強度のばらつき等を抑制することができる。また、鞘部を上記の合成樹脂とすることにより、繊維の表面を従来の合成繊維と同様にでき、織・編物への加工や染色等も従来と同様の方法で行うことができ、取扱いが容易となる。
【0059】
2.蓄熱性布部材
本発明の蓄熱性布部材は、その一部又は全部が、上記の蓄熱性複合繊維からなる。
例えば、織物、編物、不織布等の構造をとり得る。
蓄熱性複合繊維は、他の繊維と組み合わせて用いることもできる。
【0060】
上述したように、本発明の蓄熱性複合繊維及びそれを用いた蓄熱性布部材は、温度調整機能を有するため、体の周囲に接触又は非接触して用いて、体温に対して温度調節するのに適する。
具体的には、スキーウェア、レインウェア等のスポーツ衣料、防寒衣料、靴下、パンティストッキング、シャツ、背広等の一般衣料、中綿等の寝具、手袋、靴材、家具用、自動車用人工レザー、保温、保冷が要求される食品包装材、建材等に使用でき、特に、繊維製品、家具及び自動車用レザー製品等に好適に使用できる。
例えば、本発明の蓄熱性複合繊維及びそれを用いた蓄熱性布部材は、高温の部屋に入った場合、蓄熱材料が潜熱を奪うため、外気温度の影響を受けることが少なく、衣類温度の上昇を防止できる。また、低温の部屋に入った場合、蓄熱材料が固化し、その際凝固熱を発生するため、衣類の温度低下を防止できる。従って、いわゆる温度調節機能を有する繊維製品として、防寒着、スポーツ衣料等に使用できる。
また、家具用、自動車用人口レザー等にあっては、人体の接触する部位で、体温での基材の温度上昇速度を緩和でき、特に夏場では快適な素材となり得る。
【0061】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、各例で得られた試料の評価は下記の方法で行った。
(1)融点、凝固点、潜熱:示差走査熱量計(DSC−7:パーキンエルマージャパン社製)にて、試料量:3mg、昇温、降温速度:10分/分で測定した。
(2)分子量:GPC測定装置(日本分光社製)にて、テトラヒドロフランを溶媒として測定した。分子量はポリスチレン換算で計算した。
(3)重量減少率:150℃で1時間保持したときの重量減少率を、TG−DTA装置(セイコーインスツルメント社)にて、試料量:3mg、Air流速:300ml/分の条件で測定した。
(4)溶融粘度:動粘度(単位mm2/s)(JIS−K2283)を75℃で測定した。
(5)5%重量減少温度:TG−DTA装置(セイコーインスツルメント社)にて、試料量:3mg、Air流速:300ml/分の条件で測定した。
【0062】
(蓄熱材料の製造)
製造例1
蓄熱材料として、ポリステアリルメタクリレートを以下の方法で重合した。
2lの4つ口セパラブルフラスコに窒素導入管、攪拌翼、還流器をつけ、そのフラスコにステアリルメタクリレート400g、及び溶媒としてトルエン600mlを入れた。
窒素をゆっくり通気しながら、65℃の水浴中で約15分間攪拌しながらステアリルメタクリレートを溶解した。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBN)1.0gを入れ、内温が75℃になるように水浴温度を調節し、8時間反応させた。
反応終了後、室温にて反応物を冷却し、反応物を5lビーカーに入れたメタノール4l中へ攪拌しながら加え重合物を沈殿させた。2時間攪拌後析出した重合物をろ過し、その後風乾し蓄熱材料を得た。
得られた重合物の重量平均分子量は202,000であり、融点は38℃であった。潜熱は84J/gであった。
【0063】
製造例2〜14
製造例1と同様にして、表1に示す蓄熱材料を製造した。
製造例1〜14で製造した蓄熱材料の物性を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
製造例15
ポリステアリルメタクリレート架橋体(1%架橋)を以下の方法により合成した。
▲1▼ 2Lセパラブルフラスコ(4つ口)に窒素導入管、攪拌装置、リフラックス装置を付けた。
▲2▼ フラスコに、ステアリルメタクリレート(モノマー)99gと、架橋剤としてポリエチレングリコール(1000)ジメタクリレート(ポリエチレングリコール部平均分子量1,000)1gを仕込み、それに重合開始剤としてAIBNを0.5g加えた。
▲3▼ 窒素をゆっくり流しながら、オイルバス50℃につけ、ゆっくり攪拌(約200rpm)して全体を均一に溶解させた。
▲4▼ 次に、予め分散剤として界面活性剤ネオコールSW−C(商品名:第一工業製薬(株)製)40gを溶解させた水800mLを、▲3▼の均一溶液に500rpmで攪拌しながら、一度に加えた。
▲5▼ オイルバスの温度を90℃に上げ、500rpmで3時間攪拌を続けた。
▲6▼ 3時間後、オイルバスを氷水にかえて、1時間攪拌しながら冷却を行った。
▲7▼ 内容物を加圧濾過器に移し、No.2の濾紙にて濾過を行った。次に、水で濾過、最後にメタノールで濾過した後、得られた粉体をドラフトで風乾、さらに減圧乾燥機で乾燥させた。
このようにして白い架橋粉体が99g得られた。電子顕微鏡(SEM)で観察すると、平均粒径が約2μmの真球状粒子であった。このものは、架橋していないポリマーと同様の相転移点を持つが、高温域で相転移した後も液状にはならず、粘着性が出るのみであった。
【0066】
製造例16
製造例15で、水を600mL、ステアリルメタクリレート(モノマー)を297g、ポリエチレングリコール(1000)ジメタクリレートを3g、ネオコールSW−Cを14g、AIBNを過硫酸アンモニウム1gに変えた以外は、製造例15と同様に反応を行い、白色粉体299gを得た。尚、本製造例では、濾紙は、0.1μmのものを使用した。
製造例15〜16で製造した架橋体の物性を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
製造例17
デカグリセリン−ミリスチン酸(C14)反応物を、以下の方法により合成した。
▲1▼ 2Lセパラブルフラスコ(4つ口)に、窒素導入管、攪拌装置、ディーンスターク水分離装置を付けた。このとき、水分離装置は60−70℃に保温した。
▲2▼ フラスコに、デカグリセリン310gとミリスチン酸(固体)1,090gを仕込んだ。
▲3▼ 窒素をゆっくり流しながら、マントルヒーター(100℃)で加熱し、ゆっくり攪拌して固体を溶解させた。
▲4▼ 溶解して均一な溶液になった後、ヒーターの温度を徐々に上げ、攪拌を続けた。このとき、160−170℃付近から水の流出が始まり、同時にミリスチン酸もトラップに出てくるため、固化して詰まらせないようにしながら水を除去した。そして、そのまま内温を180℃程度に調節しながら反応を続けた。
▲5▼ 5−6時間後、ヒーターの温度を、内温が240℃程度になるまで上げ、そのまま2−3時間攪拌を続けた。
▲6▼ 水の留出が認められなくなったら、水分離装置を減圧蒸留装置に付け替え、20mmHg程度で軽質分をカットした。
▲7▼ フラスコをヒーターからはずし、攪拌しながら80℃程度まで放冷した。
▲8▼ 内容物を金属製のパットにあけ、さらに冷却し、固化させた後、粉砕してフレーク状の固体1,210gを得た。
NMR分析の結果、デカグリセリンの反応点12個所に対し、平均10ユニットのミリスチン酸がエステル結合したものであることが確認された。
尚、後述する製造例18、製造例19、製造例20で得られた反応物についても同様にNMR分析したところ、製造例17と同様の化学シフト値が得られ、その強度が炭素数に応じて異なっていた。
【0069】
重量平均分子量は2,750であった。
各特性を測定した。その結果を表3に示す。
【0070】
製造例18
ミリスチン酸の代わりにパルミチン酸を使用した以外は、製造例17と同様の方法で合成を行い、デカグリセリン−パルミチン酸(C16)反応物を得た。
重量平均分子量は2,899であった。
各特性を測定した。その結果を表3に示す。
【0071】
製造例19
ミリスチン酸の代わりにステアリン酸を使用した以外は、製造例17と同様の方法で合成を行い、デカグリセリン−ステアリン酸(C18)反応物を得た。
重量平均分子量は3,151であった。
各特性を測定した。その結果を表3に示す。
【0072】
製造例20
ミリスチン酸の代わりにベヘン酸を使用した以外は、製造例17と同様の方法で合成を行い、デカグリセリン−ベヘン酸(C22)反応物を得た。
重量平均分子量は3,396であった。
各特性を測定した。その結果を表3に示す。
【0073】
製造例21
ミリスチン酸の代わりにラウリン酸を使用した以外は、製造例17と同様の方法で合成を行い、デカグリセリン−ラウリン酸(C12)反応物を得た。
重量平均分子量は1,927であった。
各特性を測定した。その結果を表3に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
実施例1〜14
製造例1〜14で製造した蓄熱材料及びナイロン6を紡糸原料とし、エクストルーダ型複合紡糸機を用いて複合紡糸した。この複合紡糸では、蓄熱材料を芯部、ナイロン6が鞘部となるよう別々に溶融し、芯鞘型紡糸用口金から複合繊維として紡糸し、延伸ローラで熱セットした後巻き上げ、38デニール、12フィラメントの延伸糸(蓄熱性複合繊維)を得た。蓄熱性複合繊維中の蓄熱材料の量は約35質量%であった。
この蓄熱性複合繊維をウレタン繊維の周りに巻き、シングルカバードヤーン型の加工糸とし、丸編み機でニット(蓄熱性布部材)を作成した。
【0076】
実施例15
ポリプロピレン(IDEMITSU PP Y−2005GP)に、製造例1で製造したポリステアリルメタクリレート(蓄熱材料)を30質量%配合し、加熱溶融状態で二軸押し出し機(池貝鐵工製PCM−30)を用いて230℃で混練し、蓄熱性組成物を製造した。
実施例1において使用した蓄熱材料の代わりに、上記の組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、40デニール、12フィラメントの延伸糸(蓄熱性複合繊維)を製造し、同様にニット(蓄熱性布部材)を作成した。蓄熱性複合繊維中のポリステアリルメタクリートの量は約15質量%であった。
【0077】
実施例16
ナイロン6に、製造例1で製造したポリステアリルメタクリレート(蓄熱材料)を20質量%配合し、実施例15と同様にして蓄熱性組成物を製造した。
実施例15において使用した蓄熱性組成物の代わりに、上記の蓄熱性組成物を使用した以外は、実施例15と同様にして、40デニール、12フィラメントの延伸糸(蓄熱性複合繊維)を製造し、同様にニット(蓄熱性布部材)を作成した。蓄熱性複合繊維中のポリステアリルメタクリートの量は約10質量%であった。
【0078】
実施例17
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂に、製造例1で製造したポリステアリルメタクリート(蓄熱材料)を20質量%配合し、実施例15と同様にして蓄熱性組成物を製造した。上記組成物が芯部、PET樹脂が鞘部となるように実施例15と同様にして、40デニール、12フィラメントの延伸糸(蓄熱性複合繊維)を製造し、同様にニット(蓄熱性布部材)を作成した。蓄熱性複合繊維中のポリステアリルメタクリートの量は約10質量%であった。
【0079】
実施例18〜24
実施例15において使用した蓄熱材料の代わりに、製造例15〜21で製造した蓄熱材料を使用した以外は、実施例15と同様にして蓄熱性組成物を製造した。この組成物を用い、実施例15と同様にして、40デニール、12フィラメントの延伸糸(蓄熱性複合繊維)を製造し、同様にニット(蓄熱性布部材)を作成した。
【0080】
比較例1
実施例1において、芯材として使用した蓄熱材料の代わりに、ポリプロピレンを使用した以外は、実施例1と同様にして、38デニール、12フィラメントの延伸糸(蓄熱性複合繊維)を製造し、同様にニット(蓄熱性布部材)を作成した。
【0081】
比較例2
実施例1において、芯材として使用した蓄熱材料の代わりに、鞘部と同じナイロン6を使用した以外は、実施例1と同様にして、70デニール、24フィラメントの延伸糸(蓄熱性複合繊維)を製造し、同様にニット(蓄熱性布部材)を作成した。
【0082】
上記実施例及び比較例で得られた布部材を10cm角の大きさに切断し、熱電対型温度計の周りにそれぞれ巻きつけ実験装置とした。
この実験装置で、20℃の雰囲気下に熱電対型温度計が20℃になるまで放置し、その後50℃の雰囲気下に移動し、熱電対型温度計が40℃になるまでの時間を測定して布部材の温度調節機能を評価した。結果を表4に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
【発明の効果】
本発明によれば、製造加工が容易で温度調節機能に優れる蓄熱性複合繊維及びそれを用いた蓄熱性布部材を提供することができる。
Claims (7)
- 前記ポリマー又はオリゴマーが、ポリドコシルメタクリレート、ポリヘンエイコシルメタクリレート、ポリエイコシルアクリレート、ポリノナデシルアクリレート、ポリヘプタデシルアクリレート、ポリパルミチルアクリレート、ポリペンタデシルアクリレート、ポリステアリルアクリレート、ポリラウリルアクリレート、ポリミリスチルアクリレート、ポリミリスチルメタクリレート、ポリペンタデシルメタクリレート、ポリパルミチルメタクリレート、ポリヘプタデシルメタクリレート、ポリノナデシルメタクリレート、ポリエイコシルメタクリレート、ポリステアリルメタクリレート、ポリ(パルミチル/ステアリル)メタクリレート、ポリビニルラウレート、ポリビニルミリステート、ポリビニルパルミテート、ポリビニルステアレート、ポリラウリルビニルエーテル、ポリミリスチルビニルエーテル、ポリパルミチルビニルエーテル又はポリステアリルビニルエーテルである請求項1又は2に記載の蓄熱性複合繊維。
- 前記蓄熱材料の重量平均分子量Mwが、1,000〜2,000,000である請求項1又は4に記載の蓄熱性複合繊維。
- 前記鞘部における合成樹脂が、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂である請求項1〜5のいずれか一項に記載の蓄熱性複合繊維。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の蓄熱性複合繊維を含む蓄熱性布部材。
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