JP4337527B2 - 圧縮着火式内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents

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Description

本発明は圧縮着火式内燃機関の排気浄化装置に関する。
排気ガス中に含まれる炭化水素、即ちHCを吸着するためのHC吸着触媒を機関排気通路内に配置し、流入する排気ガスの空燃比がリーンのときには排気ガス中に含まれるNOXを吸蔵し流入する排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸蔵されたNOXを放出するNOX吸蔵触媒をHC吸着触媒下流の機関排気通路内に配置した内燃機関が公知である(例えば特許文献1)。この内燃機関ではリーン空燃比のもとで燃焼が行われているときに発生するHCはHC吸着触媒に吸着され、このとき発生するNOXはNOX吸蔵触媒に吸蔵される。
ところでこのようなNOX吸蔵触媒を用いたときにはNOX吸蔵触媒のNOX吸蔵能力が飽和する前にNOX吸蔵触媒からNOXを放出させる必要があり、この場合燃料の供給量を増量してNOX吸蔵触媒に流入する排気ガスの空燃比をリッチにすればNOX吸蔵触媒からNOXを放出させかつ放出したNOXを還元することができる。
しかしながらNOX吸蔵触媒からNOXを放出させる毎にリーンからリッチに空燃比を大巾に変化させると燃料消費量が増大してしまう。
ところが上述のHC吸着触媒ではHC吸着触媒の温度が活性化温度付近、即ち200℃付近になると吸着されているHCの酸化反応が活発となり、その結果排気ガス中の酸素が急激に消費されるために排気ガス中の酸素濃度が急激に低下する。従ってこのときには少量の燃料を追加供給すれば排気ガスの空燃比をリッチにすることができる。そこで上述の内燃機関ではHC吸着触媒において十分な量の酸素が消費されているか否かを検出し、HC吸着触媒において十分な量の酸素が消費されているときに排気ガスの空燃比をリッチにしてNOX吸蔵触媒からNOXを放出させるようにしている。
特開2003−97255号公報
しかしながらHC吸着触媒の温度が活性化温度付近になる時期、即ちHC吸着触媒において十分な量の酸素が消費される時期は限られているので、NOX吸蔵触媒からのNOX放出作用からみて必要な時期にHC吸着触媒の温度が活性化温度にならず、斯くして上述の内燃機関ではNOX吸蔵触媒からNOXを放出することが必要となったときにNOX吸蔵触媒からNOXを放出することができないという問題がある。また、HC吸着触媒が劣化するとNOX吸蔵触媒からのNOX放出作用に影響が出るのでHC吸着触媒が劣化したか否かを判断する必要があるがこの内燃機関ではHC吸着触媒が劣化したか否かを全く判断していない。
上記問題点を解決するために本発明によれば、微粒子状の燃料を排気ガス中に添加するための燃料添加手段と、燃料添加手段下流の機関排気通路内に配置されて排気ガス中に含まれる炭化水素を吸着するHC吸着触媒と、HC吸着触媒下流の機関排気通路内に配置されて流入する排気ガスの空燃比がリーンのときには排気ガス中に含まれるNOXを吸蔵し流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比又はリッチになると吸蔵したNOXを放出するNOX吸蔵触媒とを具備し、HC吸着触媒が劣化していないときにNOX吸蔵触媒からNOXを放出すべく排気ガス中に微粒子状の燃料が添加されたときにはHC吸着触媒から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比がリッチになると共に暫らくの間リッチに維持され、NOX吸蔵触媒からNOXを放出すべく排気ガス中に微粒子状の燃料が添加されたときにHC吸着触媒から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比がリッチにならないか又はリッチになったとしてもリッチに維持される時間がHC吸着触媒非劣化時に比べて短かくなったときにはHC吸着触媒が劣化したと判断され、HC吸着触媒が劣化したと判断されたときはNO X 吸蔵触媒からNO X を放出すべく排気ガス中に添加される微粒子状の燃料を増量してHC吸着触媒が劣化したか否かを再度判断するようにしている。
NOX吸蔵触媒から確実にNOXを放出させることができると共にHC吸着触媒が劣化したか否かを判断することができる。
図1に圧縮着火式内燃機関の全体図を示す。
図1を参照すると、1は機関本体、2は各気筒の燃焼室、3は各燃焼室2内に夫々燃料を噴射するための電子制御式燃料噴射弁、4は吸気マニホルド、5は排気マニホルドを夫々示す。吸気マニホルド4は吸気ダクト6を介して排気ターボチャージャ7のコンプレッサ7aの出口に連結され、コンプレッサ7aの入口はエアクリーナ8に連結される。吸気ダクト6内にはステップモータにより駆動されるスロットル弁9が配置され、更に吸気ダクト6周りには吸気ダクト6内を流れる吸入空気を冷却するための冷却装置10が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置10内に導かれ、機関冷却水によって吸入空気が冷却される。一方、排気マニホルド5は排気ターボチャージャ7の排気タービン7bの入口に連結され、排気タービン7bの出口はHC吸着触媒11の入口に連結される。また、HC吸着触媒11の出口は排気管13を介してNOX吸蔵触媒12に連結される。排気マニホルド5にはミスト状の、即ち微粒子状の燃料を排気ガス中に添加するための燃料添加弁14が取付けられる。本発明による実施例ではこの燃料は軽油からなる。
排気マニホルド5と吸気マニホルド4とは排気ガス再循環(以下、EGRと称す)通路15を介して互いに連結され、EGR通路15内には電子制御式EGR制御弁16が配置される。また、EGR通路15周りにはEGR通路15内を流れるEGRガスを冷却するための冷却装置17が配置される。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置17内に導かれ、機関冷却水によってEGRガスが冷却される。一方、各燃料噴射弁3は燃料供給管18を介してコモンレール19に連結される。このコモンレール19内へは電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプ20から燃料が供給され、コモンレール19内に供給された燃料は各燃料供給管18を介して燃料噴射弁3に供給される。
電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備する。HC吸着触媒11にはHC吸着触媒11の温度を検出するための温度センサ21が取付けられ、排気管13内には排気ガス中のガス状成分の空燃比を検出するための空燃比センサ22が配置される。これら温度センサ21および空燃比センサ22の出力信号は夫々対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。また、NOX吸蔵触媒12にはNOX吸蔵触媒12の前後差圧を検出するための差圧センサ23が取付けられており、この差圧センサ23の出力信号は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。
アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して燃料噴射弁3、スロットル弁9駆動用ステップモータ、燃料添加弁14、EGR制御弁16および燃料ポンプ20に接続される。
図2に圧縮着火式内燃機関の別の実施例を示す。この実施例ではNOX吸蔵触媒12の出口に連結された排気管24内に排気ガス中のガス状成分の空燃比を検出するための空燃比センサ22が配置されている。
まず初めに図1および図2に示されるNOX吸蔵触媒12について説明すると、これらNOX吸蔵触媒12は三次元網目構造のモノリス担体或いはペレット状担体上に担持されているか、又はハニカム構造をなすパティキュレートフィルタ上に担持されている。このようにNOX吸蔵触媒12は種々の担体上に担持させることができるが、以下NOX吸蔵触媒12をパティキュレートフィルタ上に担持した場合について説明する。
図3(A)および(B)はNOX吸蔵触媒12を担持したパティキュレートフィルタ12aの構造を示している。なお、図3(A)はパティキュレートフィルタ12aの正面図を示しており、図3(B)はパティキュレートフィルタ12aの側面断面図を示している。図3(A)および(B)に示されるようにパティキュレートフィルタ12aはハニカム構造をなしており、互いに平行をなして延びる複数個の排気流通路60,61を具備する。これら排気流通路は下流端が栓62により閉塞された排気ガス流入通路60と、上流端が栓63により閉塞された排気ガス流出通路61とにより構成される。なお、図3(A)においてハッチングを付した部分は栓63を示している。従って排気ガス流入通路60および排気ガス流出通路61は薄肉の隔壁64を介して交互に配置される。云い換えると排気ガス流入通路60および排気ガス流出通路61は各排気ガス流入通路60が4つの排気ガス流出通路61によって包囲され、各排気ガス流出通路61が4つの排気ガス流入通路60によって包囲されるように配置される。
パティキュレートフィルタ12aは例えばコージライトのような多孔質材料から形成されており、従って排気ガス流入通路60内に流入した排気ガスは図3(B)において矢印で示されるように周囲の隔壁64内を通って隣接する排気ガス流出通路61内に流出する。
このようにNOX吸蔵触媒12をパティキュレートフィルタ12a上に担持させた場合には、各排気ガス流入通路60および各排気ガス流出通路61の周壁面、即ち各隔壁64の両側表面上および隔壁64内の細孔内壁面上には例えばアルミナからなる触媒担持が担持されており、図4(A)および(B)はこの触媒担体45の表面部分の断面を図解的に示している。図4(A)および(B)に示されるように触媒担体45の表面上には貴金属触媒46が分散して担持されており、更に触媒担体45の表面上にはNOX吸収剤47の層が形成されている。
本発明による実施例では貴金属触媒46として白金Ptが用いられており、NOX吸収剤47を構成する成分としては例えばカリウムK、ナトリウムNa、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つが用いられている。
機関吸気通路、燃焼室2およびNOX吸蔵触媒12上流の排気通路内に供給された空気および燃料(炭化水素)の比を排気ガスの空燃比と称すると、NOX吸収剤47は排気ガスの空燃比がリーンのときにはNOXを吸収し、排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸収したNOXを放出するNOXの吸放出作用を行う。
即ち、NOX吸収剤47を構成する成分としてバリウムBaを用いた場合を例にとって説明すると、排気ガスの空燃比がリーンのとき、即ち排気ガス中の酸素濃度が高いときには排気ガス中に含まれるNOは図4(A)に示されるように白金Pt46上において酸化されてNO2となり、次いでNOX吸収剤47内に吸収されて酸化バリウムBaOと結合しながら硝酸イオンNO3 -の形でNOX吸収剤47内に拡散する。このようにしてNOXがNOX吸収剤47内に吸収される。排気ガス中の酸素濃度が高い限り白金Pt46の表面でNO2が生成され、NOX吸収剤47のNOX吸収能力が飽和しない限りNO2がNOX吸収剤47内に吸収されて硝酸イオンNO3 -が生成される。
これに対し、排気ガスの空燃比がリッチ或いは理論空燃比にされると排気ガス中の酸化濃度が低下するために反応が逆方向(NO3 -→NO2)に進み、斯くして図4(B)に示されるようにNOX吸収剤47内の硝酸イオンNO3 -がNO2の形でNOX吸収剤47から放出される。次いで放出されたNOXは排気ガス中に含まれる未燃HC,COによって還元される。
このように排気ガスの空燃比がリーンであるとき、即ちリーン空燃比のもとで燃焼が行われているときには排気ガス中のNOXがNOX吸収剤47内に吸収される。しかしながらリーン空燃比のもとでの燃焼が継続して行われるとその間にNOX吸収剤47のNOX吸収能力が飽和してしまい、斯くしてNOX吸収剤47によりNOXを吸収できなくなってしまう。そこで本発明による実施例ではNOX吸収剤47の吸収能力が飽和する前に燃料添加弁14から燃料を添加することによって排気ガスの空燃比を一時的にリッチにし、それによってNOX吸収剤47からNOXを放出させるようにしている。
さて、上述したように燃料添加弁14から燃料を添加することによって排気ガスの空燃比をリッチにすると排気ガス中の酸素濃度が低下するためにNOX吸収剤47からNOXが放出され、放出されたNOXが排気ガス中に含まれる未燃HC,COによって還元される。この場合、添加された燃料が液状であったとすると理論上は排気ガスの空燃比がリッチになったとしても排気ガス中の酸素濃度は低下せず、従ってNOX吸収剤47からNOXが放出しない。また、燃料が液状である場合にはNOXの還元も行われない。即ち、NOX吸収剤47からNOXを放出させかつ放出されたNOXを還元するにはNOX吸蔵触媒12に流入する排気ガス中のガス状成分の空燃比をリッチにしなければならない。
本発明では燃料添加弁14から添加される燃料は微粒子状であり、一部の燃料はガス状となっているがかなりの部分は液状となっている。本発明では添加された燃料がこのように微粒子状であっても排気ガス中の酸素濃度が低下しかつNOX吸蔵触媒12に流入する燃料がガス状となるようにNOX吸蔵触媒12の上流にHC吸着触媒11が配置されている。次にこのHC吸着触媒11について説明する。
HC吸着触媒11はゼオライトのような細孔構造をもつ比表面積の大きな材料から構成されており、図1に示すHC吸着触媒11の基体はゼオライトの一種であるモルデナイトからなる。図5(A)から(D)はHC吸着触媒11の表面部分の断面を図解的に示している。なお、図5(B)は図5(A)におけるB部分の拡大図を示しており、図5(C)は図5(B)と同じ断面を示しており、図5(D)は図5(C)におけるD部分の拡大図を示している。図5(B)および(C)からわかるようにHC吸着触媒11の表面は凸凹した粗い表面形状を呈しており、この粗い表面形状を有する表面上には図5(D)に示されるように多数の細孔51が形成されていると共に白金Ptからなる貴金属触媒52が分散して担持されている。
燃料添加弁14から微粒子状の燃料が添加されると一部の燃料は蒸発してガス状になるがかなりの部分は微粒子の形で基体50の表面上に吸着する。図5(A)および(B)は燃料微粒子53が吸着する様子を示している。このように液状の形で燃料が吸着するときの燃料吸着割合はガス状燃料の吸着割合に比べてかなり高くなる。なお、HC吸着触媒11が吸着しうる微粒子状燃料の吸着量は図6に示されるようにHC吸着触媒11の温度が低くなるほど増大する。
基体50の表面上に吸着した燃料微粒子53は徐々に蒸発してガス状燃料となる。このガス状燃料は主に炭素数の多いHCからなる。この炭素数の多いHCは蒸発する際にゼオライト表面上の酸点又は貴金属触媒52上においてクラッキングされ、炭素数の少ないHCに改質される。次いでこの改質されたガス状のHCがNOX吸蔵触媒12に流入する。
図7は燃料添加弁14からの燃料の添加量と、排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fとを示している。なお、図7において(A)はHC吸着触媒11に流入する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fを示しており、(B)はHC吸着触媒11から流出してNOX吸蔵触媒12に流入する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fを示しており、(C)はNOX吸蔵触媒12から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fを示している。
本発明による実施例ではNOX吸蔵触媒12からNOXを放出すべきときには図7に示されるように燃料添加弁14から燃料が時間間隔を隔てて複数回に亘りパルス状に添加される。燃料添加弁14から燃料が添加されると一部の燃料は蒸発するために排気ガス中の酸素濃度は低くなり、斯くして図7(A)に示されるようにHC吸収触媒11に流入する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fは小さくなる。しかしながら添加された燃料はかなりの部分が液状であるのでHC吸着触媒11に流入する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fはリッチとなるほど小さくはならない。
一方、燃料添加弁14から燃料が添加されると燃料微粒子はHC吸着触媒11に吸着され、次いでこの燃料微粒子から燃料が徐々に蒸発して前述したようにクラッキングされ、改質される。燃料微粒子から蒸発した燃料又は改質された燃料の一部は排気ガス中に含まれる酸素を反応して酸化され、それによって排気ガス中の酸素濃度が低下する。一方、余剰の燃料、即ち余剰のHCはHC吸着触媒11から排出され、その結果HC吸着触媒11から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fはわずかばかりリッチとなる。
HC吸着触媒11に吸着された燃料微粒子からは燃料が徐々に蒸発し、吸着された燃料微粒子が少量となるまで、HC吸着触媒11から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fはわずかばかりリッチになり続ける。従って図7(B)に示されるように燃料添加弁14からの燃料の添加作用が完了した後にかなりの時間に亘ってHC吸着触媒11から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fはわずかばかりリッチになり続ける。
HC吸着触媒11から流出しNOX吸蔵触媒12に流入する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/FがリッチになるとNOX吸蔵触媒12からNOXが放出され、放出されたNOXが未燃HC,COによって還元される。この場合、前述したようにNOX吸蔵触媒12に流入する未燃HCはHC吸着触媒11において改質されており、従って放出されたNOXは未燃HCによって良好に還元される。図7(C)からわかるようにNOX吸蔵触媒12からのNOXの放出作用と還元作用が行われている間、NOX吸蔵触媒12から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fはほぼ理論空燃比に維持される。
ところでHC吸着触媒11は長期間に亘って使用されるとHC吸着触媒11の基体を構成しているゼオライトが熱破壊したり、分子量の大きな炭化水素が固着堆積したり、ゼオライトの酸点や白金Ptの活性が低下したりしてHC吸着触媒11が次第に劣化する。HC吸着触媒11が劣化すると微粒子状の燃料を吸着保持する能力が低下すると共に蒸発したHCをクラッキングする能力が低下し、その結果ガス状HCの生成量が低下すると共に小さな分子量のガス状HCが生成されにくくなる。
図8は図7と同じ量の燃料を添加した場合の排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fを示している。なお、図8における(A),(B),(C)は図7の(A),(B),(C)と同じ場所における排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fを示している。また、図8の(B)および(C)における曲線aは夫々図7の(B)および(C)に示される曲線を表わしており、これら曲線aはHC吸着触媒11が劣化していない場合を示している。
一方、HC吸着触媒11が劣化すると図8の(B)および(C)に示される曲線はaからbへ、更に劣化するとbからcへ、更に劣化するとcからdへと変化する。即ち、HC吸着触媒11が劣化すると添加された微粒子状の燃料がガス化される割合が減少するために図8の(B)に示されるようにHC吸着触媒11から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fがリッチに維持される時間Δt1が次第に短かくなる。また、HC吸着触媒11が更に劣化すると空燃比A/Fはリッチにならなくなり、この場合にはHC吸着触媒11が劣化するほど最も小さくなったときの空燃比A/Fと理論空燃比との差ΔA/F1は大きくなる。
また、図8の(C)に示されるようにHC吸着触媒11から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fがリッチに維持される時間Δt1が短かくなるとNOX吸蔵触媒12から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fがほぼ理論空燃比に維持される時間Δt2が短かくなり、HC吸着触媒11が更に劣化した場合にはHC吸着触媒11が劣化するほど最も小さくなったときの空燃比A/Fと理論空燃比との差ΔA/F2は大きくなる。
図8の(B)および(C)においてΔt1とΔt2とはほぼ等しく、ΔA/F1とΔA/F2とはほぼ等しい。従って図9(A)に示されるようにΔt1,Δt2が短かくなるにつれてHC吸着触媒11の劣化の度合は大きくなり、図9(B)に示されるようにΔA/F1,ΔA/F2が大きくなるにつれてHC吸着触媒11の劣化の度合は大きくなる。なお、HC吸着触媒11の実際の劣化の度合は図9(A)および(B)を組合わせて図9(C)に示されるようになる。従ってΔt1,Δt2,ΔA/F1,ΔA/F2を検出すればHC吸着触媒11の劣化の度合がわかることになる。
即ち、本発明では、図8(B)の曲線aで示されるようにHC吸着触媒11が劣化していないときにNOX吸蔵触媒12からNOXを放出すべく排気ガス中に微粒子状の燃料が添加されたときにはHC吸着触媒11から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比がリッチになると共に暫らくの間リッチに維持され、NOX吸蔵触媒12からNOXを放出すべく排気ガス中に微粒子状の燃料が添加されたときにHC吸着触媒11から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fがリッチにならないか(図8(B)の曲線d)又はリッチになったとしてもリッチに維持される時間がHC吸着触媒非劣化時に比べて短かくなったときには(図8(B)の曲線b,c)HC吸着触媒11が劣化したと判断される。
排気ガス中のガス状成分の空燃比は排気ガス中のガス状成分から判断できるので、HC吸着触媒11から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比がリッチになったか否かを判断する判断手段として排気ガス中のガス状成分を検出するセンサを用いることができる。本発明による実施例では図1および図2に示されるようにこの判断手段として空燃比センサ22が用いられている。この空燃比センサ22は、ジルコニアの両側に白金薄膜電極を形成し、一方の白金薄膜電極を大気にさらすと共に他方の白金薄膜電極を拡散層を介して排気ガスにさらした、一般的に使用されているセンサであって、この空燃比センサ22は排気ガス中のガス状成分の空燃比に応じた出力信号を発生する。
図1に示す実施例ではHC吸着触媒11から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比を検出しうるように空燃比センサ22が配置されており、この空燃比センサ22の出力信号に基づいてHC吸着触媒11から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比がリッチになったか否かが判断される。
一方、図7(B)および(C)に示されるようにHC吸着触媒11から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/FがわずかばかりリッチになっているときにはNOX吸蔵触媒12から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fはほぼ理論空燃比となる。従って図2に示す実施例ではNOX吸蔵触媒12から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比を検出しうるように空燃比センサ22が配置されており、この空燃比センサ22により検出された排気ガス中のガス状成分の空燃比がほぼ理論空燃比であるときにHC吸着触媒から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比がリッチになっていると判断される。
次にNOX吸蔵触媒12からのNOX放出制御およびHC吸着触媒11の劣化判定を含む排気浄化処理全体について説明する。
本発明による実施例ではNOX吸蔵触媒12に単位時間当り吸蔵されるNOX量NOXAが要求トルクTQおよび機関回転数Nの関数として図10(A)に示すマップの形で予めROM32内に記憶されており、このNOX量NOXAを積算することによってNOX吸蔵触媒12に吸蔵されたNOX量ΣNOXが算出される。更に、本発明による実施例ではこのNOX量ΣNOXが許容値NXに達する毎にNOX吸蔵触媒12に流入する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fが一時的にリッチにされ、それによってNOX吸蔵触媒12からNOXが放出される。
また、HC吸着触媒11から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比A/Fをリッチにするのに必要な燃料添加量は空燃比がリーンなほど増大し、排気ガス量、即ち吸入空気量が多くなるほど増大する。一方、空燃比および吸入空気量は要求トルクTQおよび機関回転数Nの関数であり、従って本発明による実施例では燃料添加量AQが要求トルクTQおよび機関回転数Nの関数として図10(B)に示すマップの形で予めROM32内に記憶されている。
なお、図6に示されるようにHC吸着触媒11ではHC吸着触媒11の温度に応じて吸着しうる燃料量が変化するのでこのことを考慮して燃料添加量を定める必要がある。例えばHC吸着触媒11の温度が低くなるほど吸着しうる燃料量が増大するのでHC吸着触媒11の温度が低くなるほど燃料添加量を増大することができる。
一方、排気ガス中に含まれる粒子状物質はNOX吸蔵触媒12を担持しているパティキュレートフィルタ12a上に捕集され、順次酸化される。しかしながら捕集される粒子状物質の量が酸化される粒子状物質の量よりも多くなると粒子状物質がパティキュレートフィルタ12a上に次第に堆積し、この場合粒子状物質の堆積量が増大すると機関出力の低下を招いてしまう。従って粒子状物質の堆積量が増大したときには堆積した粒子状物質を除去しなければならない。この場合、空気過剰のもとでパティキュレートフィルタ12aの温度を600℃程度まで上昇させると堆積した粒子状物質が酸化され、除去される。
そこで本発明による実施例ではパティキュレートフィルタ12a上に堆積した粒子状物質の量が許容量を越えたときには排気ガスの空燃比がリーンのもとでパティキュレートフィルタ12aの温度を上昇させ、それによって堆積した粒子状物質を酸化除去するようにしている。具体的に言うと本発明による実施例では差圧センサ23により検出されたパティキュレートフィルタ12aの前後差圧ΔPが許容値PXを越えたときに堆積粒子状物質の量が許容量を越えたと判断され、このときパティキュレートフィルタ12aに流入する排気ガスの空燃比をリーンに維持しつつ燃料添加弁14から燃料を添加してこの添加された燃料の酸化反応熱によりパティキュレートフィルタ12aの温度を上昇させる昇温制御が行われる。
図11は排気浄化処理ルーチンを示している。
図11を参照するとまず初めにステップ100において図10(A)に示すマップから単位時間当り吸蔵されるNOX量NOXAが算出される。次いでステップ101ではこのNOXAがNOX吸蔵触媒12に吸蔵されているNOX量ΣNOXに加算される。次いでステップ102では吸蔵NOX量ΣNOXが許容値NXを越えたか否かが判別され、ΣNOX>NXとなったときにはステップ103に進んで燃料添加弁14からの燃料添加処理および劣化判断が行われる。この燃料添加処理および劣化判断の2つの例が図12および図13,14に示されている。
次いでステップ104では差圧センサ23によりパティキュレートフィルタ12aの前後差圧ΔPが検出される。次いでステップ105では差圧ΔPが許容値PXを越えたか否かが判別され、ΔP>PXとなったときにはステップ106に進んでパティキュレートフィルタ12aの昇温制御が行われる。
図12を参照するとまず初めにステップ200において図10(B)に示すマップから燃料添加量AQが算出される。次いでステップ201では燃料添加量AQに従って燃料添加弁14から燃料、即ち軽油が添加される。次いでステップ202では図1に示される実施例においては空燃比センサ22の出力信号に基づいてΔt1およびΔA/F1が検出され、図2に示される実施例において空燃比センサ22の出力信号に基づいてΔt2およびΔA/F2が検出される。次いでステップ203では図9(C)に示す関係からHC吸着触媒11の劣化度合が算出される。次いでステップ204ではΣNOXがクリアされる。
図13および図14に別の実施例を示す。図13(A)はNOX吸蔵触媒12からNOXを放出すべきときの燃料の添加量を示しており、通常は図13(A)に示す量の燃料が添加される。この実施例ではHC吸着触媒11が劣化したと判断されたときには燃料添加量の不足が原因であるかも知れないので次にNOX吸蔵触媒12からNOXを放出すべきときに図13(B)に示されるように排気ガス中に添加される微粒子状の燃料が増量され、HC吸着触媒11が劣化したか否かが再度判断される。
このときHC吸着触媒11は劣化していないと判断された場合には燃料添加量の不足が原因であったと考えられるのでその後は図13(B)に示されるように増量された状態に保持される。これに対し、このときHC吸着触媒が劣化していると判断されたときにはその後NOX吸蔵触媒12からNOXを放出すべきときに図13(C)に示されるように一回当りの燃料添加量が減少せしめられるか、又は燃料の添加回数が減少せしめられる。即ち、燃料の吸着作用を期待しないでNOX吸蔵触媒12からNOXを放出させるために燃料添加量が減少せしめられる。
図14はこの実施例を実行するための燃料添加および劣化判断ルーチンを示している。
図14を参照するとまず初めに劣化の再チェック条件であるか否かが判別される。通常は再チェック条件ではないのでステップ301に進む。ステップ301では図10(B)に示すマップから燃料添加量AQが算出される。次いでステップ302では燃料添加量AQに補正係数Kを乗算することによって最終的な燃料添加量AQ(=AQ・K)が算出される。この補正係数Kは最初は1.0に設定されている。
次いでステップ303では最終的な燃料添加量AQに従って燃料添加弁14から燃料、即ち軽油が添加される。次いでステップ304では図1に示される実施例においては空燃比センサ22の出力信号に基づいてΔt1およびΔA/F1が検出され、図2に示される実施例においては空燃比センサ22の出力信号に基づいてΔt2およびΔA/F2が検出される。次いでステップ305では図9(C)に示す関係からHC吸着触媒11の劣化度合が予め定められた度合を越えたか否か、即ちHC吸着触媒11が劣化したか否かが判別される。HC吸着触媒11が劣化していないと判断されたときにはステップ307に進んでΣNOXがクリアされる。これに対し、HC吸着触媒11が劣化していると判断されたときにはステップ306に進んで再チェックすべきであると判断される。
再チェックすべきであると判断されるとステップ300において再チェックすべきであると判断されたときと同じ運転状態であるか否かが判別され、同じ運転状態のときにはステップ308に進んで図10(B)に示すマップから燃料添加量AQが算出される。次いでステップ309では燃料添加量AQに補正係数K0を乗算することによって最終的な燃料添加量AQ(=AQ・K0)が算出される。この補正係数K0は1.0より大きな値に設定されている。
次いでステップ310では最終的な燃料添加量AQに従って燃料添加弁14から燃料、即ち軽油が添加される。このとき燃料の添加量は図13(B)に示されるように増量される。次いでステップ311では図1に示される実施例においては空燃比センサ22の出力信号に基づいてΔt1およびΔA/F1が検出され、図2に示される実施例においては空燃比センサ22の出力信号に基づいてΔt2およびΔA/F2が検出される。次いでステップ312では図9(C)に示す関係からHC吸着触媒11の劣化度合が予め定められた度合を越えたか否か、即ちHC吸着触媒11が劣化したか否かが判別される。
HC吸着触媒11が劣化していないと判断されたときにはステップ311に進んで補正係数KがK0とされる。即ち、以後の添加量は図13(B)に示される添加量となる。これに対し、HC吸着触媒11が劣化していると判断されたときにはステップ307に進んで図13(C)に示すように燃料添加量が減少される。
圧縮着火式内燃機関の全体図である。 圧縮着火式内燃機関の別の実施例を示す全体図である。 パティキュレートフィルタの構造を示す図である。 NOX吸蔵触媒の触媒担体の表面部分の断面図である。 HC吸着触媒の触媒担体の表面部分の断面図である。 燃料吸着量を示す図である。 排気ガス中のガス状成分の空燃比の変化を示す図である。 排気ガス中のガス状成分の空燃比の変化を示す図である。 劣化度合を示す図である。 吸蔵NOX量NOXA等のマップを示す図である。 排気浄化処理を行うためのフローチャートである。 燃料添加処理および劣化判断を行うためのフローチャートである。 燃料の添加パターンを示す図である。 燃料添加処理および劣化判断を行うためのフローチャートである。
符号の説明
4…吸気マニホルド
5…排気マニホルド
7…排気ターボチャージャ
11…HC吸着触媒
12…NOX吸蔵触媒
14…燃料添加弁

Claims (7)

  1. 微粒子状の燃料を排気ガス中に添加するための燃料添加手段と、該燃料添加手段下流の機関排気通路内に配置されて排気ガス中に含まれる炭化水素を吸着するHC吸着触媒と、該HC吸着触媒下流の機関排気通路内に配置されて流入する排気ガスの空燃比がリーンのときには排気ガス中に含まれるNOXを吸蔵し流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比又はリッチになると吸蔵したNOXを放出するNOX吸蔵触媒とを具備し、HC吸着触媒が劣化していないときにNOX吸蔵触媒からNOXを放出すべく排気ガス中に微粒子状の燃料が添加されたときにはHC吸着触媒から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比がリッチになると共に暫らくの間リッチに維持され、NOX吸蔵触媒からNOXを放出すべく排気ガス中に微粒子状の燃料が添加されたときにHC吸着触媒から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比がリッチにならないか又はリッチになったとしてもリッチに維持される時間がHC吸着触媒非劣化時に比べて短かくなったときにはHC吸着触媒が劣化したと判断され、HC吸着触媒が劣化したと判断されたときはNO X 吸蔵触媒からNO X を放出すべく排気ガス中に添加される微粒子状の燃料を増量してHC吸着触媒が劣化したか否かを再度判断するようにした圧縮着火式内燃機関の排気浄化装置。
  2. 上記HC吸着触媒の基体がゼオライトからなり、白金からなる貴金属触媒が担持されており、該HC吸着触媒は排気ガス中に添加された微粒子状の燃料を吸着保持した後に徐々に蒸発させると共に蒸発した燃料をクラッキングする機能を有している請求項1に記載の圧縮着火式内燃機関の排気浄化装置。
  3. NOX吸蔵触媒からNOXを放出すべく排気ガス中に微粒子状の燃料が添加されたときにHC吸着触媒から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比がリッチになったときにはリッチに維持される時間が短かいほどHC吸着触媒の劣化の度合が大きいと判断される請求項1に記載の圧縮着火式内燃機関の排気浄化装置。
  4. NOX吸蔵触媒からNOXを放出すべく排気ガス中に微粒子状の燃料が添加されたときにHC吸着触媒から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比がリッチにならないときには最も小さくなったときの空燃比と理論空燃比との差が大きいほどHC吸着触媒の劣化の度合が大きいと判断される請求項1に記載の圧縮着火式内燃機関の排気浄化装置。
  5. HC吸着触媒下流の機関排気通路内にHC吸着触媒から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比を検出しうる空燃比センサを配置し、該空燃比センサの出力信号に基づいてHC吸着触媒から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比がリッチになったか否かを判断する請求項1に記載の圧縮着火式内燃機関の排気浄化装置。
  6. NOX吸蔵触媒下流の機関排気通路内にNOX吸蔵触媒から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比を検出しうる空燃比センサを配置し、該空燃比センサにより検出された排気ガス中のガス状成分の空燃比に基づいてHC吸着触媒から流出する排気ガス中のガス状成分の空燃比がリッチになったか否かを判断する請求項1に記載の圧縮着火式内燃機関の排気浄化装置。
  7. HC吸着触媒が劣化したか否かを再度判断したときにHC吸着触媒が劣化していると再び判断されたときにはその後NOX吸蔵触媒からNOXを放出すべきときに燃料添加量を減少させる請求項1に記載の圧縮着火式内燃機関の排気浄化装置。
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