JP4337077B2 - 長尺物の表面加工装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、断面形状が円形、概略円形、多角形、異形等を成す長尺物を表面加工する装置に係り、より詳しくは前記長尺物を、表面荒らし、酸化スケール落とし、錆落とし、表面研磨、異物除去、バリ取り、丸み付けなどの表面加工を行うのに好適な装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上述した長尺物の表面加工を、バイト、研削ホイ−ル、ブラシ、ベルトサンダ等を用いて行うと、特に長尺物が断面寸法の小さい線材などの場合には、その外周を連続的にして一様に切削することが極めて難しい。このため、従来、線材などの酸化スケールや錆を除去する場合には酸洗法、ピ−リング法あるいはダイスによる皮剥き法等が(例えば、2857279号公報参照)、また付着物を除去する場合には、アルカリ洗浄法、有機溶剤洗浄法等が用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、酸洗法では、多量の水を使用するために廃水処理や環境対策費が高くなる上に設備が大規模なものとなり、しかも、細い線材などを処理するときには線材同士が接触して線材全体が酸洗液中に一様に浸漬することが難いため、処理にむらが生じ、さらに、長尺物が鉄系の場合には、使用する酸(薬品)によってはその機械的性質が低下するなどの問題があった。加えて、酸洗法では、上述のように設備が大規模であり、処理の操業中に稼動を一旦停止すると長尺物が過剰に酸中に浸漬されてその表面が著しく劣化することになり、したがって、酸洗法による処理装置のインライン化は困難であった。
【0004】
また、複合の刃物またはダイス等の刃具間に長尺物を通過させて異物等を削り取る皮剥ぎ法では、長尺物に切削跡が残ったり、切削抵抗による張力がかかって細線材などの場合には切断してしまうなどの弊害が生じている。 また、アルカリ洗浄法や有機溶剤洗浄法では、酸洗法と同様に使用液が化学薬品であるため作業環境の保護の面で管理が大変厄介であり、しかも湿式法であるため装置が大型化するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたもので、その目的は、環境問題を引き起こすことがなく、しかも長尺物の機械的性質が低下することもないインライン対応の長尺物の表面加工装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明における長尺物の表面加工装置は、長尺物を表面加工する装置であって、上下方向に直列的に配設され研削材を内蔵するとともに加圧しかつ上下方向へ延びる長尺物Wを貫通させる2組の表面加工手段と、2組の表面加工手段を長尺物Wを中心にして相互に反対方向へ低速回転させる回転手段と、表面加工手段のそれぞれに研削材を供給・排出する研削材給排出手段と、を具備し、2組の表面加工手段のそれぞれは、2個の軸受によって回転自在に支持した筒状の支持部材と、支持部材内の上下両側に装着しかつ長尺物用の入孔・出孔をそれぞれ有する2個の閉鎖部材と、2個の閉鎖部材間に装架され中空体状を成して粉粒体状の研削材を収納しかつ可撓性を有する可撓性管部材と、可撓性管部材を対向する2方向から押圧して挟持する押圧手段と、で構成し、2組の押圧手段は長尺物Wを中心にして相互にほぼ90度変位して配設され、回転手段は、2組の表面加工手段の支持部材における相互に対向する側に嵌着した2個の傘歯車と、2組の表面加工手段間に配設した減速機付き電動機と、減速機付き電動機の出力軸に嵌着しかつ傘歯車と噛み合う傘歯車と、で構成し、2組の押圧手段のそれぞれは、支持部材の外面に装着してあって、相対向する短尺円柱状の2個の押圧本体と、支持部材に装着され押圧本体を軸着しかつ押圧本体を可撓性管部材の外面に対して押圧・離隔させるリンク機構構造の進退機構と、支持部材に装着し進退機構を作動させるシリンダと、で構成したことを特徴とする。
【0007】
ここで、本発明における中空体状を成しかつ可撓性の容器とは、粉粒体状の研削材を保持するとともに外部からの押圧に対応して弾性変形することが出来れば、大きさや形状や材質は問わない。ただし、長尺物を連続的に加工処理する場合には、容器に対して研削材を供給・排出させる一対の開口を容器に設ける必要がある。さらに、容器内に、冷却用の圧縮空気などを貫流させて研削材の加熱を防止するようにしてもよい。
【0008】
なお、本発明において用いる軟質性の研削材は、籾殻、椋葉、木賊等の研削性を有する植物の単体またはこれらの混合物である。これらの研削材は長尺物の表面をいわゆる軽度な表面仕上げや付着物の除去をするのに適している。
【0009】
またなお、本発明において用いる硬質性の研削材は、アルミナ、セラミックス、ガラス粉、非鉄金属粉、金属粉等の単体またはこれらの混合物である。これらの研削材は、長尺物の酸化スケール落とし、錆落とし、異物除去、バリ取り、丸み付けなど強力な加工に適している。
【0010】
またなお、本発明において用いる軟質性のものと硬質性のものとの混合物は、籾殻、椋葉、木賊等の研削性を有する植物、アルミナ、セラミックス、ガラス粉、非鉄金属粉、金属粉等であって、これらの混合物である。これらの研削材は長尺物の表面を軽研削あるいは研磨するのに適している。
【0011】
またなお、本発明における長尺物を所要大きさの力で所要長さ挟持することは、長尺物が研削材に対して相対的に移動可能であることを意味する。そして、長尺物を挟持する所要大きさの力および所要長さは、長尺物の表面加工の目的に基づいて決定される。ここで、相対的に移動可能とは、研削材内臓の容器本体が長尺物の長手方向の中心線を中心にして回転していて長尺物が移動する場合や、長尺物が停止していて研削材内臓の容器本体が回転移動する場合や、研削材内臓の容器と長尺物とが反対方向へ移動する場合などをいう。また、研削材内臓の容器または/および長尺物を往復動させることにより加工能力を高めることもできる。
【0012】
またなお、本発明に用いる研削材の大きさは、長尺物の断面寸法などとの相関関係により決まるものであるが、粒径が0.02〜2.50mmである場合には、容器への供給が容易であり、しかも、長尺物表面の異物除去に優れている。また、研削材を加湿することにより表面加工の機能を高めることができる。
【0013】
またなお、本発明における長尺物とは、断面形状が円形、概略円形、多角形、異形等を成すものをいい、その材質は問わない。
【0014】
またなお、本発明は基本的には容器を対向する2方向から押圧して把持するものであるが、ほぼ一様の表面加工を期待したにもかかわらず、充分でない場合には、長尺物を中心にして押圧位置を所要角度変位させた位置で再度表面加工を行うようにしてもよい。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、発明を適用した長尺物の表面加工装置の一実施例について図1〜図3に基づき詳細に説明する。図1に示すように、本表面加工装置は、研削材を内蔵するとともに加圧しかつ上下方向へ延びる長尺物Wを貫通させる2組の表面加工手段1・2と、2組の表面加工手段1・2を前記長尺物Wを中心にして相互に反対方向へ低速回転させる回転手段3と、前記表面加工手段1・2のそれぞれに研削材を供給・排出する研削材給排出手段(図示せず)と、で構成してある。
【0016】
そして、前記2組の表面加工手段1・2のそれぞれは、図2にしめすように、2個の軸受5・5によって回転自在に支持した筒状の支持部材4と、支持部材4内の上下両側に装着しかつ長尺物W用の入孔6・出孔7をそれぞれ有する2個の閉鎖部材8・9と、2個の閉鎖部材材8・9間に装架され中空体状を成して粉粒体状の研削材10を収納しかつ可撓性を有する容器本体としての可撓性管部材11と、可撓性管部材11を対向する2方向から押圧して挟持する押圧手段12と、で構成してある。
【0017】
また、前記回転手段3は、図1に示すように、2組の前記表面加工手段1・2の前記支持部材4・4における相互に対向する側に嵌着した2個の傘歯車13・13と、前記2組の表面加工手段1・2間に配設した減速機付き電動機14と、減速機付き電動機14の出力軸に嵌着しかつ前記傘歯車13・13と噛み合う傘歯車15と、で構成してあって、減速機付き電動機14の駆動により、2組の表面加工手段1・2は相互に反対方向に回転するようになっている。
【0018】
また、前記押圧手段12は、前記支持部材4の外面に装着してあって、図1に示すように、
相対向する短尺円柱状の2個の押圧本体16・16と、前記支持部材4に装着され前記押圧本体16・16を軸着しかつ押圧本体16・16を前記可撓性管部材11の外面に対して押圧・離隔させるリンク機構構造の進退機構17と、前記支持部材4に装着し前記進退機構17を作動させるシリンダ18と、で構成してある。そして、シリンダ18の伸縮作動により前記押圧本体16・16は前記進退機構17を介して前記可撓性管部材11に対して押圧・離隔するようになっている。
【0019】
なお、押圧本体16・16を円柱体状に構成することにより、前記可撓性管部材11内の前記粉粒体状研削材10の流動を容易にすることができる。また、シリンダ18の伸長作動時の力の大きさを調節することにより、前記押圧本体116・16による押圧力の大きさを制御することができる。
【0020】
なお、図1で示すように、前記2組の表面加工手段1・2は、上下方向に直列的に配設してあり、かつ、それらの押圧手段12・12は、前記長尺物を中心にして相互にほぼ90度変位している。またなお、前記研削材給排出手段は前記可撓性管部材11のそれぞれに形成した供給口19および排出口20にそれぞれ連通している。
【0021】
次に、このように構成した装置によって長尺物Wを表面加工する手順について説明する。まず、長尺物Wを、上位の表面加工手段1における閉鎖部材8の入孔6、可撓性管部材11内および閉鎖部材9の出孔7を順に進入させてこれらを貫通させ、続いて、同様にして下位の表面加工手段2に長尺物Wを貫通させる。次いで、上位の表面加工手段1において研削材給排出手段により供給口19から粉粒体状の研削材10を可撓性管部材11に供給して可撓性管部材11内に充填させるとともに排出口20から自由に排出可能にし、続いて、押圧手段12のシリンダ18を伸長作動して押圧手段12の押圧本体16・16により可撓性管部材11の外面および研削材10の一部を押圧する。下位の表面加工手段2においても同様にして可撓性管部材11の外面および研削材10の一部を押圧する。
【0022】
この場合、シリンダ18の伸長による研削材10に対する押圧力は、牽引時に長尺物Wが移動可能となる範囲内であって長尺物Wの表面加工目的に対応した大きさにする。この状態の下に、図示しない慣用の牽引手段により長尺物Wを下方へ牽引するとともに、減速機付き電動機14の駆動により、2組の表面加工手段1・2を相互に反対方向に回転させる。これにより、回転長尺物Wは研削材10によって表面加工されることとなる。そして、長尺物Wから削り取られた不純物は研削材10と一緒に排出口20から排出される。なお、研削材10への加圧下での長尺物Wの移動により摩擦熱が発生することがあり、この場合には必要に応じて供給口19から圧縮空気、炭酸ガス等の冷却用気体を供給する。
【0023】
なお、上記の実施例では、対向する押圧本体16・16は2個であるが、長尺物Wの断面寸法によっては3個以上にしてもよい。またなお、上記の実施例では、研削材10は可撓性管部材11に対して供給・排出するようにしてあるが、特に長尺物Wの断面寸法が小さい上にこれを研磨する場合のように、研削材1の供給・排出が不要の場合には研削材10を収納した可撓性管部材11に対して長尺物Wを相対的に移動させるようにしてもよい。またなお、上記の実施例において、供給口6から供給する研削材1を図示しない加湿装置により加湿してもよい。
【0024】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は、長尺物を表面加工する装置であって、上下方向に直列的に配設され研削材を内蔵するとともに加圧しかつ上下方向へ延びる長尺物Wを貫通させる2組の表面加工手段と、2組の表面加工手段を長尺物Wを中心にして相互に反対方向へ低速回転させる回転手段と、表面加工手段のそれぞれに研削材を供給・排出する研削材給排出手段と、を具備し、2組の表面加工手段のそれぞれは、2個の軸受によって回転自在に支持した筒状の支持部材と、支持部材内の上下両側に装着しかつ長尺物用の入孔・出孔をそれぞれ有する2個の閉鎖部材と、2個の閉鎖部材間に装架され中空体状を成して粉粒体状の研削材を収納しかつ可撓性を有する可撓性管部材と、可撓性管部材を対向する2方向から押圧して挟持する押圧手段と、で構成し、2組の押圧手段は長尺物Wを中心にして相互にほぼ90度変位して配設され、回転手段は、2組の表面加工手段の支持部材における相互に対向する側に嵌着した2個の傘歯車と、2組の表面加工手段間に配設した減速機付き電動機と、減速機付き電動機の出力軸に嵌着しかつ傘歯車と噛み合う傘歯車と、で構成し、2組の押圧手段のそれぞれは、支持部材の外面に装着してあって、相対向する短尺円柱状の2個の押圧本体と、支持部材に装着され押圧本体を軸着しかつ押圧本体を可撓性管部材の外面に対して押圧・離隔させるリンク機構構造の進退機構と、支持部材に装着し進退機構を作動させるシリンダと、で構成したから、環境問題を引き起こすことがなく、しかも、長尺物の機械的性質を低下させることもなく、長尺物を適確に表面加工することができるなどの優れた実用的効果を奏する。
【0025】
加えて、長尺物の材質、表面硬度、断面形状、処理目的により、研削材の材質、形状、粒度等を選択し、かつ、長尺物を挟持する力の大きさと容器の回転数等を適確に選定することにより、長尺物の表面に螺旋状の加工条痕を付けることが可能であるため、
後工程で引抜加工あるいは圧延加工する場合、酸洗処理と比較して、湿式あるいは乾式の潤滑剤を効率良く加工工具部に誘導することができる。その上、本発明によって生じた加工条痕は、化成皮膜や塗料の下地処理としても好適であり、しかも、酸洗法あるいは他の湿式洗浄法と比較して、装置を著しく小型にすることができるため、表面加工装置をインラインすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の外面を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施例の主要部を示す一部断面正面図である。
【符号の説明】
1;2 表面加工手段
3 回転手段
Claims (1)
- 長尺物を表面加工する装置であって、
上下方向に直列的に配設され研削材を内蔵するとともに加圧しかつ上下方向へ延びる長尺物Wを貫通させる2組の表面加工手段1・2と、
2組の表面加工手段1・2を前記長尺物Wを中心にして相互に反対方向へ低速回転させる回転手段3と、
前記表面加工手段1・2のそれぞれに研削材を供給・排出する研削材給排出手段と、
を具備し、
前記2組の表面加工手段1・2のそれぞれは、2個の軸受5・5によって回転自在に支持した筒状の支持部材4と、支持部材4内の上下両側に装着しかつ長尺物用の入孔6・出孔7をそれぞれ有する2個の閉鎖部材8・9と、2個の閉鎖部材8・9間に装架され中空体状を成して粉粒体状の研削材10を収納しかつ可撓性を有する可撓性管部材11と、可撓性管部材11を対向する2方向から押圧して挟持する押圧手段12と、で構成し、2組の押圧手段12・12は前記長尺物Wを中心にして相互にほぼ90度変位して配設され、
前記回転手段3は、2組の前記表面加工手段1・2の前記支持部材4・4における相互に対向する側に嵌着した2個の傘歯車13・13と、前記2組の表面加工手段1・2間に配設した減速機付き電動機14と、減速機付き電動機14の出力軸に嵌着しかつ前記傘歯車13・13と噛み合う傘歯車15と、で構成し、
前記2組の押圧手段12・12のそれぞれは、前記支持部材4の外面に装着してあって、相対向する短尺円柱状の2個の押圧本体16・16と、前記支持部材4に装着され前記押圧本体16・16を軸着しかつ押圧本体16・16を前記可撓性管部材11の外面に対して押圧・離隔させるリンク機構構造の進退機構17と、前記支持部材4に装着し前記進退機構17を作動させるシリンダ18と、で構成したことを特徴とする長尺物の表面加工装置。
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