JP4335345B2 - 長尺円筒状セラミックス焼結体の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、長尺円筒状セラミックス焼結体の製造方法に関するものである。更に詳しくは長尺円筒状セラミックス焼結体のソリ不良と真円性不良を低減させる製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
長尺円筒状セラミックス焼結体は、保護管、焼成容器等の耐火材、Na−S電池用固体電解質であるベータアルミナセラミックス焼結体等の機能材料として利用されている。一般に、長尺円筒状セラミックス焼結体を製造する場合、真円でソリのないことが要求される。しかし、焼成工程において、焼成収縮に伴う反りが発生し、歩留りが低くなる問題点があった。このため、コストダウンが図れず、セラミックス部品の利用拡大の障害の一つになっていた。
【0003】
この問題を解決するために、種々の治具を用いて吊し焼成する方法が特開平3−88279号公報や特開平7−232957号公報に開示されているが、長尺円筒状セラミックス成形体の治具へのセット方法が複雑で大量生産には向かないという問題点があった。
【0004】
また、有底管状ベ−タアルミナ焼結体を焼成する場合において、セラミックス成形体の開口端部を下方から支持する方法が特開平3−88278号公報に開示されている。しかし、この方法では円筒口端部は支持できるが、円筒底部はフリーになっており、焼成収縮時に傾くことがあり、完全にソリを防止することは出来ないという問題点があった。また焼成収縮時に傾くと口端部とセッターとの面圧が不均一になり、均一な収縮が阻害され、真円性が悪化する原因になる。
【0005】
真円性を向上させる方法としては、成形体の上下両端部に嵌合する凹部を有するセッターを用いる方法が特開平10−167838号公報に開示されている。この方法により焼結体のソリを低減することは可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、長尺で薄肉円筒状セラミックス焼結体の焼結時のソリ不良と真円性不良を低減させる簡便な製造方法(焼成方法)を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、長尺円筒状セラミックス成形体を焼成用容器の中で立てて焼成する長尺円筒状セラミックス焼結体の製造方法において、焼成容器に対するセラミックス成形体の円周方向の変位を規制する保持部材を成形体の上端部に配置し、該保持部材が円板の一部を欠落させた形状を有すると共に、該保持部材が焼成容器の内壁面の一部と相補する外側面及びセラミックス成形体の上端部の少なくとも一部を把持する凹部を有することを特徴とする長尺円筒状セラミックス焼結体の製造方法を要旨とする。具体例を示すと、図1が焼成前の状態、図2が焼成後の状態の例である。
【0008】
図1のように長尺円筒状セラミックス成形体の上端に成形体の端部を把持する凹部を有する保持部材が配置されている。この保持部材は、下面から見ると円板状セッターの円周方向の両端部を欠落させた形状(例えば図3(b)を参照)であり、焼成容器の内壁面の一部と相補している。そして、円板状セッターを用いた場合より軽量になる。
【0009】
保持部材の形状に特に制約はないが、少なくとも焼成容器の円周方向の2方向を規制していれば、ソリの低減に効果がある。例えば、図3〜5に示すように円板状セッターの円周方向の両端部を欠落させた形状や十字型のセッター形状及び対角線長さが焼成容器の内周よりわずかに小さい多角形などが挙げられる。特に長尺で薄肉の成形体において、この軽量な保持部材がソリ低減と真円度の向上に有効である。
【0010】
請求項2の発明は、長尺円筒状セラミックス成形体を焼成用容器の中で立てて焼成する長尺円筒状セラミックス焼結体の製造方法において、保持部材を成形体の上下両端部に配置し、上側の保持部材が焼成容器の内壁面の一部と相補する外側面及びセラミックス成形体の上端部の少なくとも一部を把持する凹部を有することを特徴とする長尺円筒状セラミックス焼結体の製造方法を要旨とする。
【0011】
請求項1と同様の軽量な保持部材を成形体の上端部に配置すると共に、下端部にも保持部材を配置することを特徴としている。係る構成を取ることで、ソリの低減効果はさらに高いものになる。
【0012】
請求項3の発明は、成形体の上端部に配置するセッターの凹部が、下方に向かって広がるテーパ又は円弧状であり、焼成終了後にセラミックス焼結体の上端部の少なくとも一部を実質的に把持する形状であることを要旨とし、請求項1又は2に記載の製造方法のより好ましい実施形態を例示したものである。
【0013】
これは、成形体の段階では、テーパ又は円弧状の凹部の下方で成形体の上端部の少なくとも一部を把持し、焼成収縮の進行と共に成形体の把持部が上方へ移動し、焼結体の段階では凹部の上方で焼結体の上端部の少なくとも一部を把持することを意味している。これにより焼成終了時まで焼結体の変位を規制し続けるため、ソリの低減には最も好ましい形態である。
【0014】
請求項4の発明は、上記の長尺円筒状セラミックス成形体が、一端封止の有底形状であることを要旨とし、請求項1乃至3に記載の製造方法より好ましい実施形態を例示したものである。具体例を示すと、図6が焼成前の状態、図7焼成後の状態の例である。請求項1乃至3に記載の製造方法と同様に、焼成終了時まで焼結体の変位を規制し続けるため、ソリを低減した長尺の有底円筒状セラミックス焼結体が得られる。
【0015】
請求項5の発明は、上記の長尺円筒状セラミックス焼結体が、ベ−タアルミナ質からなり、上記保持部材がマグネシア、スピネル、ジルコニアのいずれかからなることを特徴とする請求項1乃至4に記載の長尺円筒状セラミックス焼結体の製造方法を要旨とする。
【0016】
保持部材の材質は、被焼成物によりそれぞれ適したものが存在する。一般的には、被焼成物の焼結温度で芯材自体が変形しないことと被焼成物との反応性に乏しいことが必要である。
【0017】
被焼成物がベ−タ・アルミナ質である場合には、請求項5に示したようにマグネシア、スピネル、ジルコニアのいずれかであることが好ましい。ベ−タアルミナ質の焼結過程においては、焼結助材剤として添加した酸化ナトリウムが蒸気として揮散するため、請求項5に記載した材質以外ではナトリウム成分との反応により、数回の使用で保持部材が破損するからである。
【0018】
【実施例】
(実施例1)
実施例1は、長尺円筒状のαアルミナセラミックス成形体を用いた例である。出発原料としてαアルミナ、焼結助剤としてMgO、CaO、SiO2を用いた。αアルミナは純度99.9%の原料、MgO、CaO、SiO2は試薬1級を用いた。αアルミナ、MgO、CaO、SiO2がそれぞれ99.5%、0.15%、0.15%、0.2%となるようにバインダーと共に水溶媒で所定量混合しスラリとし、スプレードライ造粒し造粒粉末を得た。
【0019】
粉末はCIPにて全長480mm×外径54mm×内径48mm、肉厚3mmの円筒状に成形した。予備焼成試験の結果、この円筒状焼結体の内径は40mmで割掛け率(計算式は、成形体内径/焼結体内径)は1.200であった。
【0020】
図1は長尺円筒状αアルミナセラミックス成形体を焼成用容器にて覆った状態の一例である。αアルミナセラミックス成形体4は、一方の開口端面を下にして立て、その上下両端部にアルミナセラミックス焼結体からなる厚さ5mmの円板状の保持部材(以下、セッターと称する)である上側セッター5及び下側セッター3を配置し、アルミナ焼結体からなる円筒状焼成容器6と、これと同材質の蓋2で囲った状態で炉床1にセットした。
【0021】
上側セッター5の成形体4との接触面には、成形体4の上端部を把持する深さ3mmの凹部が設けてある。上側セッター5の焼成容器と相補する部分の外径は、焼成容器(全長550mm、内径70mm、肉厚3mm)の内径より若干小さい68mmで、厚さ5mm、幅40mmの短冊形状である。以下、図3のタイプを「短冊状」、図4のタイプを「十字型」、図5のタイプを「長方形」、通常の円板状のタイプを「円板」とも称する。
【0022】
特に上側セッターには、図4及び図5に示すような十字形状のセッター及び四角形状のセッターも試験した。図12は、上側セッター及び下側セッターが凹部を有する円板である比較例での成形体のセット状態を示す説明図である。表1に示す上側セッター4種類と、下側セッター2種類(E;凹部有り、F;凹部無し)を用いて行った焼成試験の結果を表2に示した。焼成は、1620℃×1時間キープのスケジュールで行い、各条件で合計50本のソリの程度と真円度を評価した。
【0023】
ソリの程度は図11に示す如く、円筒状αアルミナ焼結体を水平板上に置き、チューブの側面ストレート部が最も水平板から離れた距離rを測定し、rが焼結後のチューブの全長(400mm)に対し何%になるかで評価を行った。ソリの合否は0.2%以内(最大乖離距離0.8mm以内)を合格としている。
【0024】
真円度の評価は、
真円度=100×(開口端部最大外径−開口端部最小外径)/口端部最小外径
の式で求め、合否の判定は、1%以内を合格とした。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
焼成試験の結果、本発明法で焼成した長尺円筒状αアルミナ焼結体のソリの程度と真円度は改善され、合格率が向上することがわかる。上側セッターのみ凹部を有するものを用いた場合(表2の試料番号1〜試料番号3)でも、ソリと真円度が改善されているが、特に上下とも凹部を有するセッターを用いた場合(表2の試料番号4〜試料番号6)の方がより合格率が高くなる。
【0028】
(実施例2)
実施例2は、長尺有底円筒状のベータアルミナセラミックス成形体を用いた例である。出発原料にはαアルミナ、炭酸ナトリウム、安定化剤として炭酸リチウムを用いた。αアルミナは純度99.9%の原料、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムは試薬1級を用いた。αアルミナ、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムを酸化アルミニウム、酸化ナトリウム、酸化リチウムで90.4%、8.85%、0.75%となるように所定量混合し、1250℃で10時間仮焼の後、振動ミルで粉砕し粉砕原料を得た。
【0029】
該βアルミナ粉砕粉末とバインダーを水溶媒で混合しスラリとし、スプレードライ造粒し造粒粉末を得た。粉末はCIPにて全長480mm×外径48mm、肉厚2.4mmの有底円筒状に成形した。予備焼成試験の結果、この焼結体の内径はいずれも40mmで割掛け率(計算式は成形体内径/焼結体内径)は1.200であった。
【0030】
図6は有底円筒状ベータアルミナセラミックス成形体を焼成用容器にて覆った状態の一例である。ベータアルミナセラミックス成形体8は、開口端面を下にして立て、その上下両端部にマグネシアセラミックス焼結体からなるセッターを配置し、マグネシアセラミックス焼結体からなる円筒状焼成容器6とこれと同材質の蓋2及び7で囲った状態で炉床1にセットした。
【0031】
下側セッター30の成形体開口端部との接触面には、成形体8と実質的に勘合する内径50mm、深さ2mmの凹部が設けられており、上側セッター52には、成形体8の底部を把持するテーパ形状の凹部が設けてあり、成形体8との接触部は、テーパ部の下方になるように設定してある。
【0032】
上側セッターの焼成容器の内壁と相補する部分の外径は、焼成容器(全長550mm、内径70mm、肉厚3mm)の内径より若干小さい68mmで、厚みは8mm、幅30mmの短冊状である。上側セッターには、図8、図9及び図10に示す形状のものも試験した。以下、図8のタイプを「短冊状」、図9のタイプを「十字型」、図10のタイプを「長方形」、通常の円板状のタイプを「円板」とも称する。
【0033】
表3に示す上側セッター7種類と、下側セッター2種類を用いて行った焼成試験の結果を表4に示した。表4の試料番号14〜17では、図13に示すように、成形体の有底面の頂上部に外径20mm、高さ3mmの円柱状の突起部を設けた成形体9及び、この部分を把持する上側セッター55を用いた。成形体底面と勘合する凹部は、内径21mm、深さ2mmとした。焼成は、1580℃×0.5時間キープのスケジュールで行い、各条件で合計50本のソリの程度と真円度を評価した。
【0034】
ソリの程度は図11示す如く、有底円筒状ベータアルミナ焼結体を水平板上に置き、チューブの側面ストレート部が最も水平板から離れた距離rを測定し、rが焼結後のチューブの全長(400mm)に対し何%になるかで評価を行った。ソリの合否は0.2%以内(最大乖離距離0.8mm以内)を合格としている。
【0035】
真円度の評価は、
真円度=100×(開口端部最大外径−開口端部最小外径)/口端部最小外径
の式で求め、合否の判定は、1%以内を合格とした。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
焼成試験の結果、本発明法で焼成した有底円筒状ベータアルミナ焼結体のソリの程度と真円度は改善され、合格率が向上する。上側セッターにのみ成形体を把持する凹部を有するセッターを用いた場合(表4の試料番号8〜試料番号10)でも、ソリと真円度が改善されているが、特に上下ともに成形体を把持する部位を有するセッターを用いた場合(表4の試料番号11〜試料番号16)の方がより効果的である。またテーパ形状の凹部を有するセッターを上側に用いた場合(表4の試料番号11〜試料番号13)で最も合格率が高くなる。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、大量生産に向いた製造法で、長尺円筒状セラミックス焼結体の焼成時の収縮に伴うソリ不良と真円度不良を大幅に減少することができ、製造歩留りの向上が図られる。その結果、長尺円筒状セラミックス焼結体のコストダウンにも寄与できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による長尺円筒状セラミックス成形体の焼成容器へのセット状態を示す説明図。
【図2】本発明による焼成後の長尺円筒状セラミックス焼結体の焼成容器での状態を示す説明図。
【図3】短冊状上側セッターの外観図。
【図4】十字型上側セッターの外観図。
【図5】長方形上側セッターの外観図。
【図6】本発明による長尺有底円筒状セラミックス成形体の焼成容器へのセット状態を示す説明図。
【図7】本発明による焼成後の長尺有底円筒状セラミックス焼結体の焼成容器での状態を示す説明図。
【図8】短冊状上側セッターの外観図。
【図9】十字型上側セッターの外観図。
【図10】長方形上側セッターの外観図。
【図11】長尺円筒状セラミックス焼結体のソリの測定方法の説明図。
【図12】実施例1の比較例による長尺円筒状セラミックス成形体の焼成容器へのセット状態を示す説明図。
【図13】実施例2の有底面の頂上部に円柱状の突起部を設けた長尺有底円筒状セラミックス成形体の焼成容器へのセット状態を示す説明図。
【符号の説明】
1 炉床
2 蓋
3 下側セッター
4 長尺円筒状セラミックス成形体
5 上側セッター
6 焼成容器
Claims (6)
- 長尺円筒状セラミックス成形体を焼成容器の中で立てた状態で焼成する長尺円筒状セラミックス焼結体の製造方法において、
円板の一部を欠落させた形状を有すると共に、焼成容器の内壁面の一部と相補する外側面及び該セラミックス成形体の上端部の少なくとも一部を実質的に把持する凹部を有する保持部材を該セラミックス成形体の上端部に配置した状態で焼成することを特徴とする長尺円筒状セラミックス焼結体の製造方法。 - 請求項1に記載の長尺円筒状セラミックス焼結体の製造方法であって、
前記保持部材は、円周方向の少なくとも両端部を欠落させた形状を有することを特徴とする長尺円筒状セラミックス焼結体の製造方法。 - 請求項1又は請求項2に記載の長尺円筒状セラミックス焼結体の製造方法であって、
該セラミックス成形体の下端部に保持部材を配置した状態で焼成することを特徴とする長尺円筒状セラミックス焼結体の製造方法。 - 前記セラミックス成形体の上端部に配置する保持部材の凹部が、下方に向かって広がるテーパ又は円弧状であり、焼成終了後にセラミックス焼結体の上端部の少なくとも一部を実質的に把持する形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の長尺円筒状セラミックス焼結体の製造方法。
- 前記長尺円筒状セラミックス成形体が、一端封止の有底形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の長尺円筒状セラミックス焼結体の製造方法。
- 前記長尺円筒状セラミックス焼結体が、べ−タアルミナ質のセラミックスからなり、前記保持部材がマグネシア、スピネル、ジルコニアのいずれかの焼結体からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の長尺円筒状セラミックス焼結体の製造方法。
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