JP4334722B2 - カメラのレンズフード装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レンズ画角以外からの有害光を遮蔽するために、有害光遮蔽用のレンズフードを、カメラの撮影レンズ鏡筒の先端部位に対して着脱自在に装着可能としたカメラのレンズフード装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
カメラで撮影を行なう際、正規のレンズ画角以外の領域に、たとえば太陽や蛍光ランプなどの光源が存在すると、これらの光源からの光が有害光として撮影レンズから侵入し、撮影画像にゴーストやフレアを生じさせる原因となる。このようなレンズ画角以外からの有害光を遮蔽するために、撮影レンズ鏡筒の先端部位には、必要に応じて有害光遮蔽用のレンズフードが装着される。
【0003】
上記レンズフードの中には、前記有害光のみを遮断し、撮影に必要な光は十分取り込めるように、フード先端部位を花びら形に形成した花びら形レンズフードがある(特開平11―44904号公報参照)。
【0004】
一方、レンズフードをカメラにおける撮影レンズ鏡筒の先端部位に対して着脱自在に装着する手段として、いわゆるバヨネット機構が多用されている。このバヨネット機構は、基本的には、撮影レンズ鏡筒の先端部外周面に円周方向へ所定間隔で配設した複数の係合部たとえば係合爪と、この係合爪と係合可能な如く、レンズフードの基端部内周面に円周方向へ所定間隔で配設した複数の係合部たとえば係合溝とを備えている(特開平06−130466号公報参照)。
【0005】
従って、レンズフードを着脱操作するには、撮影レンズ鏡筒に対し、レンズフードを次の如く直進操作および回動操作を行なうだけでよい。すなわち、レンズフードを撮影レンズ鏡筒に装着する場合には、レンズフードを撮影レンズ鏡筒の光軸に沿って前進させ、その基端部を撮影レンズ鏡筒の先端部に対して嵌め込み操作し、しかる後、右方向または左方向へ回動操作することにより、係合爪と係合溝とを係合させる。またレンズフードを取り外す場合には、レンズフードを左方向または右方向へ回動操作して係合爪と係合溝との係合を解き、しかる後、レンズフードを撮影レンズの光軸に沿って後退させることにより取り外す。
【0006】
かくして、レンズフードの着脱操作を行なうに際しては、撮影レンズ鏡筒の光軸方向への直進操作と同光軸を中心とする円周方向への回動操作との組み合わせ操作を行なうことによって、係合爪と係合溝との係合または離脱を行なわせ、これにより撮影レンズ鏡筒に対するレンズフードの着脱操作を簡単に行なうことができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
先端部位が花びら形をなすように形成された花びら形レンズフードを、バヨネット機構を用いて撮影レンズ鏡筒の先端部位に着脱自在に装着するようにした従来のレンズフード装置には、次のような問題がある。
【0008】
撮影レンズ等の光学系を介して得られる画面は、通常の場合、横長の画面となる。したがって、これに対応して花びら形レンズフードにおける上下一対の花びら部片と、左右一対の花びら部片とは、異なった形状およびサイズに形成されている。すなわち、上下に対向して同一形状に形成される一対の花びら部片は、幅および長さが共に比較的大きく形成される。これに対し、左右に対向して同一形状に形成される一対の花びら部片は、幅および長さが共に比較的小さく形成される。
【0009】
したがって撮影レンズ鏡筒に対する、花びら形レンズフードの取り付け回転角度は、メガホン型をなす一般的なレンズフード等に比べて、より厳格に特定する必要がある。特に係合爪と係合溝とのペア数が三つ以上になった場合に、レンズフードの装着ミスが発生するおそれがある。
【0010】
すなわち係合爪および係合溝のペアが、例えば120°の間隔で三組設けられている場合には、正規のものを含めて三つの取り付け態様が生じる。したがってレンズフードが間違った態様で取り付けられ、そのままの状態で撮影が行なわれてしまうおそれがある。
【0011】
この点、係合爪および係合溝のペアが、例えば180°異なる位置に二組設けられている場合には、撮影レンズ鏡筒に対する花びら形レンズフードの取り付け回転角度がたとえ逆になっても、花びら形レンズフードは上下及び左右の花びら部片が反対側に移動するだけで、有害光の遮蔽機能の点では格別の支障は生じない。
【0012】
しかし係合爪および係合溝のペアを二組だけ設けた場合には、レンズフードと撮影レンズ鏡筒との結合状態が不安定になる可能性が高い。したがって両者間の結合強度を高めると共にガタツキを小さくする必要があり、そのために係合爪および係合溝のサイズを相当大きなものにすることが要求される。しかるに係合爪は、通常の場合、撮影レンズ鏡筒の先端部位に設けられるので、上記係合爪のサイズが大きくなると、撮影レンズ鏡筒としての見栄えが悪くなり、カメラ全体としてもデザイン上の外観不良を招く。
【0013】
本発明の目的は、下記のような利点を有するカメラのレンズフード装置を提供することにある。
【0014】
(a)係合爪のサイズが小さく、カメラの外観不良をきたすおそれがない。
【0015】
(b)撮影レンズ鏡筒に対するレンズフードの装着ミスを未然に防止できる。その結果、レンズフードが間違った態様で装着されたまま撮影が行なわれるおそれがない。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のカメラのレンズフード装置は下記の如く構成されている。
【0017】
(1)本発明のカメラのレンズフード装置は、
基端部位が円筒形をなし先端部位が花びら形をなすレンズフードを、カメラにおける撮影レンズ鏡筒に対し、バヨネット機構を介して着脱自在に装着可能な如く設けられたカメラのレンズフード装置であって、
前記バヨネット機構は、前記撮影レンズ鏡筒の先端部位に円周方向に沿って形成された複数の鏡筒側係合部と、これらの鏡筒側係合部とそれぞれ係合可能な如く、前記レンズフードの基端部位に円周方向に沿って形成された複数のフード側係合部とからなり、互いに緊密に係合し合う前記鏡筒側係合部と前記フード側係合部とのペアのうち、一つのペアにおける前記撮影レンズ鏡筒の光軸方向の係合寸法が、他のペアにおける当該光軸方向の係合寸法とは異なる値に設定されていることを特徴としている。
【0018】
(2)本発明のカメラのレンズフード装置は、前記(1)に記載のレンズフード装置であって、
前記鏡筒側係合部と前記フード側係合部とのペアは、係合爪と係合溝との組み合わせにより構成されていることを特徴としている。
【0019】
(3)本発明のカメラのレンズフード装置は、前記(1)又は(2)に記載のレンズフード装置であって、
前記鏡筒側係合部と前記フード側係合部との間に、クリック機構が設けられていることを特徴としている。
【0020】
(4)本発明のカメラのレンズフード装置は、前記(1)又は(2)又は(3)に記載のレンズフードであって、
前記レンズフードにおける花びら形をなす先端部位の端面にエッジ部が形成され、このエッジ部を境界として前記レンズフードの外周面側に外装用塗装が施され内周面側に艶消し塗装が施されていることを特徴としている。
【0021】
(5)本発明のカメラのレンズフード装置は、前記(4)に記載のレンズフードであって、
前記エッジ部は、尖鋭部が前記レンズフードの内周面上に位置する如く、前記端面を傾斜面としたものであることを特徴としている。
【0022】
【発明の実施の形態】
「構成」
図1の(a)(b)は本発明の一実施形態に係るレンズフード装置を備えた電子カメラの外観を示す図で、(a)はレンズフード使用時においてレンズフードが電子カメラの撮影レンズ鏡筒に装着された状態を示す斜視図であり、(b)はレンズフード非使用時においてレンズフードが電子カメラの撮影レンズ鏡筒の外周面上に収納された状態を示す斜視図である。
【0023】
図2の(a)(b)は本発明の一実施形態に係るレンズフード装置におけるバヨネット機構BYの概略的構成を示す図で、(a)はレンズフード使用時においてレンズフードが電子カメラの撮影レンズ鏡筒に装着された状態を示す要部断面図であり、(b)はレンズフード非使用時においてレンズフードが電子カメラの撮影レンズ鏡筒に逆向きに収納された状態を示す示す要部断面図である。
【0024】
図1の(a)において、1はカメラ本体であり、レリーズボタン2,ポップアップストロボ3などを備えている。カメラ本体1の前面には撮影レンズ鏡筒10が取付けられている。この撮影レンズ鏡筒10は撮影レンズ11,フォーカスリング12,ズームリング13などを備えている。この撮影レンズ鏡筒10の先端部位10aには、後述するバヨネット機構BYを介してレンズフード20が着脱自在に装着されている。このレンズフード20は例えば合成樹脂等で一体成形されたものであり、先端部位20aが花びら形をなし、基端部位20bが円筒形をなしている。上記レンズフード20およびバヨネット機構BYは、本発明のレンズフード装置を構成している。
【0025】
図1の(a)および図2の(a)に示すように、レンズフード使用時においては、レンズフード20は撮影レンズ鏡筒10に対して基端側から嵌め込まれる。このとき撮影レンズ鏡筒10における先端部位10aの外周面に設けてある後述する鏡筒側係合部列K0(係合爪15,16,17)に対し、レンズフード20における基端部位20bの内周面に設けてある後述する第1のフード側係合部列K1(係合溝25,26,27)が係合する。
【0026】
図1の(b)および図2の(b)に示すように、レンズフード非使用時においては、レンズフード20は撮影レンズ鏡筒10に対して先端側から嵌め込まれる。このとき撮影レンズ鏡筒10における先端部位10aの外周面に設けてある後述する鏡筒側係合部列K0(係合爪15,16,17)に対し、レンズフード20における基端部位20bの内周面に設けてある後述する第2のフード側係合部列K2(係合溝25,26,27)が係合する。
【0027】
なお図2の(a)(b)に示すように、第1のフード側係合部列K1と第2のフード側係合部列K2との間を仕切っている仕切り壁Rの端面と、撮影レンズ鏡筒10における先端部位10aの外周面との間には、クリアランスCAが設けられている。このクリアランスCAは、後述するクリック機構の動作時において上記先端部位10aの弾性変形を許容するためのものである。
【0028】
図3はレンズフード20の具体的構造を示す図で、図3の(a)は図中上方の一部を破断して示す正面図であり、図3の(b)は上記(a)を矢印Bの方向から見た図であって図中左半面を切断して示す側面図である。
【0029】
図4はレンズフード20の具体的構造を示す図で、図4の(a)は図3の(a)を矢印Aの方向から見た図であって図中上半面を切断して示す側面図であり、図4の(b)は図4の(a)の一部を切欠し且つ拡大して示す断面図である。
【0030】
図3の(a)(b)及び図4の(a)(b)に示すように、レンズフード20は、前記撮影レンズ11を含む光学系を介して得られる横長の画面に対応する効率のよい遮光領域が得られるように、同一形状を有する上下一対の花びら部片21,22と、同一形状を有する左右一対の花びら部片23,24との形状およびサイズが、大きく異なったものとなっている。
【0031】
すなわち上下に対向して形成された一対の花びら部片21,22は、比較的広い範囲の遮光領域が得られるように、その長さLaおよび幅Waが比較的大きく設定されている。これに対し左右に対向して形成された一対の花びら部片23,24は、比較的狭い範囲の遮光領域が得られるように、その長さLbおよび幅Wbが比較的小さく設定されている。
【0032】
前記レンズフード20における花びら部片21,22,23,24の端面にはエッジ部Eが形成されている。このエッジ部Eは、図4の(b)に示す如く、例えばレンズフード20の外周面側の面取り加工のみを行うことにより、尖鋭部Pが前記レンズフード20の内周面Iの近傍に位置するように、前記花びら部片21,22,23,24の端面を傾斜面Tとしたものである。
【0033】
このエッジ部Eを境界として、図4の(a)(b)に示す如く、前記レンズフード20の外周面側には外面処理層TAが形成されており、内周面側には内面処理層TBが形成されている。上記外面処理層TAは、フード外周面に適した例えば滑らかな表面加工を行なった上に、所要の光沢および色彩を有する塗料を用いて外装用塗装を施したものである。また上記内面処理層TBは、フード内周面に適した艶消し加工(例えば波状の凹凸加工)を行なった上に、艶消し用の塗料を用いて艶消し塗装を施したものである。
【0034】
したがって、前記外面処理層TAにおける外装用塗料と内面処理層TBにおける艶消し用の塗料とは、エッジ部Eの尖鋭部Pによって分離され、塗料どうしの重なり合いが防止される。このため、塗装むらなどの発生を最小限に抑制することができる。しかも尖鋭部Pが前記レンズフード20の内周面I上に位置していることから、エッジ部Eの存在によってレンズフード20の遮光機能が損なわれるおそれはない。
【0035】
図3の(a)(b)及び図4の(a)に示すように、レンズフード20の基端部位20bの内周面上には、バヨネット機構BYの一方の構成要素である第1のフード側係合部列K1及び第2のフード側係合部列K2とが隣接して平行に設けられている。上記第1のフード側係合部列K1及び第2のフード側係合部列K2を構成する各係合溝は、図3の(a)に示すように、クリック機構CLの構成要素である突起M,係合の深さを制限するためのストッパーST,終端部を延長して形成したスペーサSPをそれぞれ有している。これらにつき以下詳述する。
【0036】
図5の(a)(b)はバヨネット機構BYの構成を示す図で、(a)は第1のフード側係合部列K1及び第2のフード側係合部列K2と、鏡筒側係合部列K0との関係を示す展開図であり、(b)はフード側係合部である係合溝の一つ27と鏡筒側係合部である係合爪の一つ17とが互いに係合し合った状態を正面側からみた部分断面図である。
【0037】
図5の(a)(b)に示すように、前記撮影レンズ鏡筒10の先端部位10aの外周面には円周方向に沿って鏡筒側係合部列K0の構成要素である長さVの複数(本実施形態では3個)の係合爪15,16,17が120°間隔で形成されている。これらの係合爪15,16,17とそれぞれ係合可能な如く、前記レンズフード20の基端部位20bの内周面には円周方向に沿って第1のフード側係合部列K1の構成要素である複数(本実施形態では3個)の係合溝25,26,27が120°間隔で形成されている。これら係合溝25,26,27の相互間には長さSの空きスペースが存在している。
【0038】
仕切り壁Rを隔てた反対側には、第1のフード側係合部列K1と全く同じ構造に形成された第2のフード側係合部列K2が、上記K1とは点対称な位置に設けられている。したがってレンズフード20の前後の向きを180°反転させればK1とK2とが入れ替わった状態を呈する。なお説明を簡単化するために、以下の係合溝25,26,27に関する説明では、専らK1に例を取って説明することにする。
【0039】
互いに緊密に係合し合う係合爪15,16,17と係合溝25,26,27とのペアのうちの一つのペア、例えば係合爪17と係合溝27のペアにおける撮影レンズ鏡筒10の光軸方向の係合寸法t1(図5の(a)では係合爪17の厚み寸法を図示)が、他のペアにおける当該光軸方向の係合寸法t2(図5の(a)では係合爪16の厚み寸法を図示)とは異なる値に設定されている。図5の例では、t1<t2に設定されている。
【0040】
従って係合爪と係合溝とのペアを、15と25、16と26,17と27との組み合わせにしたときに限り、係合爪と係合溝とは係合可能となる。このためレンズフード20が正しい姿勢で装着されたときにのみ、上記の如く係合が可能となるように予め係合寸法を設定しておけば、レンズフード20は、常に正しい態様で撮影レンズ鏡筒10に装着されることになる。なおこの点に関しては動作説明の項でさらに詳しく説明する。
【0041】
前記係合爪15,16,17と係合溝25,26,27との間には、クリック機構CLが設けられている。このクリック機構CLは、図5の(b)に示されているように撮影レンズ鏡筒10の係合爪15,16,17の側に窪みNを設け、レンズフード20の係合溝25,26,27の側に突起Mを設けたものである。かくして、係合爪15,16,17と係合溝25,26,27とが係合完了したとき、突起Mが窪みNに対し衝撃的に「カチッ」と嵌まり込むことになる。このためユーザは係合爪15,16,17と係合溝25,26,27とが係止状態となったことを確認できる。また係合爪15,16,17と係合溝25,26,27との係合が解除されるときは、突起Mが窪みNから衝撃的に離脱することになる。このためユーザは、係合爪15,16,17と係合溝25,26,27との係合解除が開始されたことを確認できる。
【0042】
「動作」
まずレンズフード20を使用するために、レンズフード20をカメラの撮影レンズ鏡筒10に装着する場合の動作を説明する。レンズフード20の花びら部片21,22が上下に対向する角度よりも所定角度だけ左回転させた状態で、基端部位20bを撮影レンズ鏡筒10の先端部位10aに対向させ、図5の(a)に実線矢印aで示すようにレンズ光軸方向Oに沿ってカメラ本体側(図中下方側)へ押し進める。そうすると、レンズフード20の基端部位20bに設けられている第1のフード側係合部列K1における各係合溝25,26,27の相互間に存在している長さSの空きスペースが、撮影レンズ鏡筒10の鏡筒側係合部列K0における長さV(S>V)の各係合爪15,16,17に嵌り込む。そこでレンズフード20を右回転させて係合溝と係合爪との係合を試みる。
【0043】
このとき図6の(a)におけるケースXに示すように、係合溝25と係合爪15とが対応し、係合溝26と係合爪16とが対応し、係合溝27と係合爪17とが対応している場合には、各ペアとも係合寸法が一致しているため、全ペアが係合可能である。
【0044】
しかるに図6の(a)におけるケースYに示すように、係合溝25,26,27がケースXの場合に比べて図中右方へ120°ずれた状態になっている場合、すなわち係合溝27と係合爪15とが対応し、係合溝25と係合爪16とが対応し、係合溝26と係合爪17とが対応している場合には、図中中央のペアは係合寸法が一致しており、図中右端のペアは係合寸法そのものは不一致であるが、係合溝側が大きいためそれぞれ係合可能である。しかし図中左端のペアは係合寸法が不一致で且つ係合溝側が小さいため係合不能である。したがって、このケースYではレンズフード20を撮影レンズ鏡筒10に装着することはできない。換言すればケースYのような態様での装着は禁止される。
【0045】
また図6の(a)におけるケースZに示すように、係合溝25,26,27がケースYの場合に比べて更に120°図中右方へずれた状態になっている場合、すなわち係合溝26と係合爪15とが対応し、係合溝27と係合爪16とが対応し、係合溝25と係合爪17とが対応している場合には、図中左端のペアは係合寸法が一致しており、図中右端のペアは係合寸法そのものは不一致であるが、係合溝側が大きいためそれぞれ係合可能である。しかし図中中央のペアは係合寸法が不一致で且つ係合溝側が小さいため係合不能である。したがって、このケースZではレンズフード20を撮影レンズ鏡筒10に装着することはできない。換言すればケースZのような態様での装着は禁止される。
【0046】
なお図6の(a)のように、複数のペアのうち特定の1ペア(本例では27−17の組み合わせ)のみの係合寸法を小さく設定した場合には、ケースY,Zで示したように、係合寸法の小さい係合溝(本例では27)が係合を禁止する要素(符号*で表示)として働く。
【0047】
図6の(b)は、複数のペアのうち特定の1ペア(本例では25−15の組み合わせ)のみの係合寸法を大きく設定した場合を示している。この場合にはケースy,zで示すように、係合寸法の大きな係合爪(本例では15)が係合を禁止する要素(符号*で表示)として働く。この点以外は図6の(a)の場合と同様であるので詳しい説明は省略する。
【0048】
かくして図5の(a)の場合においては、実線矢印bで示すように、第1のフード側係合部列K1の各係合溝25,26,27が、鏡筒側係合部列K0の各係合爪15,16,17に係合することになる。相対的には、図5の(a)に波線矢印で示すように、鏡筒側係合部列K0の各係合爪15,16,17が、第1のフード側係合部列K1の各係合溝25,26,27の内部に挿入され、爪の先端(図中左端)が溝内のストッパSTに突き当たったところで停止する。かくして各係合爪15,16,17と各係合溝25,26,27とは、図中破断斜線で示す如く係合状態となる。各係合爪15,16,17と各係合溝25,26,27とが係合完了すると、クリック機構Mが働く。このためユーザは係合が完了したことを確認できる。
【0049】
なお突起Mが窪みNに陥入するまでの間、撮影レンズ鏡筒10とレンズフード20との間には突起Mの高さに対応する変形歪が生じる。この変形歪は、第1のフード側係合部列K1と第2のフード側係合部列K2との間を仕切っている仕切壁Rの端面と、撮影レンズ鏡筒10の外周面との間に存在しているクリアランスCAにより、レンズフード20の弾性変形が許容されることによって実質的に吸収される。
【0050】
次に、レンズフード20の使用が終了したのに伴い、レンズフード20を撮影レンズ鏡筒10から取り外す場合の動作を説明する。装着状態となっているレンズフード20を左回転させると、各係合溝25,26,27は、図5の(a)に実線矢印bで示す方向とは反対の方向へ回動する。このため係合爪15,16,17との係合解除が開始される。各係合爪15,16,17と各係合溝25,26,27との係合解除が始まると同時にクリック機構Mが働く。このためユーザは係合解除が開始されたことを確認できる。
【0051】
第1のフード側係合部列K1における各係合溝25,26,27の間に存在している空きスペースが、撮影レンズ鏡筒10の鏡筒側係合部列K0における各係合爪15,16,17の位置にほぼ一致したところで、図5の(a)において実線矢印aで示す方向とは反対の方向へ、レンズ光軸方向Oに沿ってレンズフード20をカメラ本体から離れる方向へ引っ張って後退させる。こうすることによりレンズフード20の基端部位20bは、撮影レンズ鏡筒10の先端部位10aから離脱する。
【0052】
なおレンズフード20の前後の向きを反対にして撮影レンズ鏡筒10に装着すれば、レンズフード20は図1の(b),図2の(b)に示す如く収納状態となる。この場合の動作は、前述した動作と全く同じであるので、その説明は省略する。
【0053】
(実施形態における特徴点)
[1]実施形態に示されたレンズフード装置は、
基端部位20bが円筒形をなし先端部位20aが花びら形をなすレンズフード20を、カメラにおける撮影レンズ鏡筒10に対し、バヨネット機構BYを介して着脱自在に装着可能な如く設けられたカメラのレンズフード装置であって、
前記バヨネット機構BYは、前記撮影レンズ鏡筒10の先端部位10aに円周方向に沿って形成された複数の鏡筒側係合部15,16,17と、これらの鏡筒側係合部15,16,17とそれぞれ係合可能な如く、前記レンズフード20の基端部位20bに円周方向に沿って形成された複数のフード側係合部25,26,27とからなり、互いに緊密に係合し合う前記鏡筒側係合部15,16,17と前記フード側係合部25,26,27とのペアのうち、一つのペアにおける前記撮影レンズ鏡筒10の光軸方向Oの係合寸法が、他のペアにおける当該光軸方向Oの係合寸法とは異なる値に設定されていることを特徴としている。
【0054】
[2]実施形態に示されたカメラのレンズフード装置は、前記[1]に記載のレンズフード装置であって、
前記鏡筒側係合部15,16,17と前記フード側係合部25,26,27とのペアは、係合爪と係合溝との組み合わせにより構成されていることを特徴としている。
【0055】
[3]実施形態に示されたカメラのレンズフード装置は、前記[1]又は[2]に記載のレンズフード装置であって、
前記鏡筒側係合部15,16,17と前記フード側係合部25,26,27との間に、クリック機構CLが設けられていることを特徴としている。
【0056】
[4]実施形態に示されたカメラのレンズフード装置は、前記[1]又は[2]または[3]に記載のレンズフード装置であって、
前記レンズフード20における花びら形をなす先端部位20aの端面にエッジ部Eが形成され、このエッジ部Eを境界として前記レンズフード20の外周面側に外装用塗装(TA)が施され内周面側に艶消し塗装(TB)が施されていることを特徴としている。
【0057】
[5]実施形態に示されたカメラのレンズフード装置は、前記[4]に記載のレンズフード装置であって、
前記エッジ部Eは、尖鋭部Pが前記レンズフード20の内周面I上に位置する如く、前記端面を傾斜面Tとしたものであることを特徴としている。
【0058】
(変形例)
前述の一実施形態に示されたカメラのレンズフード装置は、下記の変形例を含んでいる。
【0059】
・鏡筒側係合部を係合溝とし,フード側係合部を係合爪としたもの。
【0060】
・レンズフードを合成樹脂以外の材料たとえば軽金属等で形成したもの。
【0061】
【発明の効果】
本発明によれば、下記のような利点を有するカメラのレンズフード装置を提供できる。
【0062】
(a)係合爪のサイズが小さく、カメラの外観不良をきたすおそれがない。
【0063】
(b)撮影レンズ鏡筒に対するレンズフードの装着ミスを未然に防止できる。その結果、レンズフードが間違った態様で装着されたまま撮影が行なわれるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るレンズフード装置を備えた電子カメラの外観を示す図で、(a)はレンズフードが電子カメラの撮影レンズ鏡筒に装着された状態を示す斜視図、(b)はレンズフードが電子カメラの撮影レンズ鏡筒の外周面上に収納された状態を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係るレンズフード装置におけるバヨネット機構BYの概略的構成を示す図で、(a)はレンズフードが電子カメラの撮影レンズ鏡筒に装着された状態を示す要部断面図、(b)はレンズフードが電子カメラの撮影レンズ鏡筒に逆向きに収納された状態を示す示す要部断面図。
【図3】本発明の一実施形態に係るレンズフード装置におけるレンズフードの具体的構造を示す図で、(a)は図中上方の一部を破断して示す正面図、(b)は上記(a)を矢印Bの方向から見た図であって図中左半面を切断して示す側面図。
【図4】本発明の一実施形態に係るレンズフード装置におけるレンズフードの具体的構造を示す図で、(a)は図3の(a)を矢印Aの方向から見た図であって図中上半面を切断して示す側面図、(b)は図4の(a)の一部を切欠し且つ拡大して示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るレンズフード装置におけるバヨネット機構の構成を示す図で、(a)は第1のフード側係合部列及び第2のフード側係合部列と、鏡筒側係合部との関係を示す展開図、(b)はフード側係合部である係合溝の一つと鏡筒側係合部である係合爪の一つとが互いに係合し合った状態を正面からみた部分断面図。
【図6】本発明の一実施形態に係るレンズフード装置におけるバヨネット機構の作用説明図で、(a)は係合溝と係合爪とからなる複数のペアのうち、特定の1ペアのみの係合寸法を小さく設定した場合の例を示す図、(b)は係合溝と係合爪とからなる複数のペアのうち、特定の1ペアのみの係合寸法を大きく設定した場合の例を示す図。
【符号の説明】
1…カメラ本体
10…撮影レンズ鏡筒
15,16,17…係合爪
20…レンズフード
20a…レンズフードの先端部位
20b…レンズフードの基端部位
21,22,23,24…花びら部片
25,26,27…係合溝
BY…バヨネット機構
K0…鏡筒側係合部列
K1,K2…第1,第2のフード側係合部列
R…仕切り壁
CL…クリック機構
M…突起
N…窪み
ST…ストッパ
SP…スペーサ
TA…外面処理層
TB…内面処理層
E…エッジ部
P…尖鋭部
T…傾斜面
O…撮影レンズ光軸
V…係合爪の長さ
S…空きスペースの長さ
t1,t2…係合爪の厚み寸法(係合寸法)

Claims (5)

  1. 基端部位が円筒形をなし先端部位が花びら形をなすレンズフードを、カメラにおける撮影レンズ鏡筒に対し、バヨネット機構を介して着脱自在に装着可能な如く設けられたカメラのレンズフード装置であって、
    前記バヨネット機構は、前記撮影レンズ鏡筒の先端部位に円周方向に沿って形成された複数の鏡筒側係合部と、
    これらの鏡筒側係合部とそれぞれ係合可能な如く、前記レンズフードの基端部位に円周方向に沿って形成された複数のフード側係合部とからなり、
    互いに緊密に係合し合う前記鏡筒側係合部と前記フード側係合部とのペアのうち、一つのペアにおける前記撮影レンズ鏡筒の光軸方向の係合寸法が、他のペアにおける当該光軸方向の係合寸法とは異なる値に設定されていることを特徴とするカメラのレンズフード装置。
  2. 前記鏡筒側係合部と前記フード側係合部とのペアは、係合爪と係合溝との組み合わせにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラのレンズフード装置。
  3. 前記鏡筒側係合部と前記フード側係合部との間に、クリック機構が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラのレンズフード装置。
  4. 前記レンズフードにおける花びら形をなす先端部位の端面にエッジ部が形成され、このエッジ部を境界として前記レンズフードの外周面側に外装用塗装が施され内周面側に艶消し塗装が施されていることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載のカメラのレンズフード装置。
  5. 前記エッジ部は、尖鋭部が前記レンズフードの内周面上に位置する如く、前記端面を傾斜面としたものであることを特徴とする請求項4に記載のカメラのレンズフード装置。
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