JP4334108B2 - 窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の窓、建築物の窓等のガラスに貼り合わせて使用される窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車の窓や建築物の窓等に、プライバシーの保護、意匠性、日照調整、ガラス飛散防止等の目的で張り合わされるフィルムには、透明性、耐光性、耐水性、耐熱性、耐薬品性、機械的強度に優れているポリエステルフィルムが良く用いられている。
【0003】
ところで、これらの窓貼り用フィルムは、通常ガラス内面に貼られるケースが多く、しかもその場合には日光(紫外線)は、ガラスと紫外線吸収剤が添加された糊剤を通過することで短波長紫外線はかなりの部分が遮断される。しかしながら、窓ガラスに一度貼られたフィルムは半永久的に使用され続けることが多い。この場合には遮光フィルム自体にも経時による色あせや変色が少ないことが求められるが、これらは完全に防げるものでなく、耐光性に堅牢な染料を使用しても、染料単独ではフィルムの変色・退色は避けられないものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであって、その解決課題は、長期間使用しても変色・退色することの少ない窓貼り用遮光フィルムを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ある特定の構成を持つポリエステルフィルムによれば、上記課題を高度に解決することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも3層のポリエステル層が共押出によって積層されたフィルムであって、その中間層に、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体および1,3,5−トリアジン誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収剤を0.1〜10.0重量%、実質的にポリエステルに溶解する染料をそれぞれ含有し、フィルム全体のヘーズが5.0%以下、可視光線透過率が3〜70%であることを特徴とする窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルムに存する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0008】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、少なくとも3層以上のポリエステル層が積層されたフィルムであることが必要で、さらに詳しくは、全ての層が押出口金から共に溶融押し出しされる、いわゆる共押出法により押し出されたフィルムである。
【0009】
また、フィルムは未延伸の状態や一軸延伸フィルムではなくて、縦方向および横方向の二軸方向に延伸して配向させ、その後に熱固定を施したフィルムであることが必要である。
【0010】
このような積層フィルムは、両面に表層を有し、その間には中間層を有するが、この中間層自体が積層構造となっていてもよい。
【0011】
ポリエステルフィルが単層構成である場合には、添加した紫外線吸収剤や染料がフィルム表面に湧き出す現象(ブリードアウト)、およびそれが昇華する現象が発生しやすく、これによってフィルム製膜機が汚染されるため、生産自体ができない場合が多く、仮に作成できたとしても、その表層にはブリードアウトによるフィルム内部からの湧出物が存在して、それによって後加工に悪影響を及ぼすことが多いため、好ましくない。
【0012】
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものである。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。これらの中でもPETは物性とコストのバランスが良好であり、最も良く用いられるポリエステルである。
【0013】
本発明で用いるポリエステルは、合計で通常10モル%以内、好ましくは5モル%以内であれば第三成分を含有した共重合体であってもよい。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0014】
本発明の窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルムは、その積層構造の中間層に、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体および1,3,5−トリアジン誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収剤を0.1〜10.0重量%、好ましくは0.2〜5.0重量%の範囲で含有する。本発明においては、中間層に紫外線吸収剤を添加し、同じく中間層に染料を共存させることにより、染料の変色・退色を防ぐことを目的としている。中間層に存在させる上記紫外線吸収剤が0.1重量%未満の場合には、ポリエステルフィルムを透過する紫外線によって、中間層に共存させた染料が経時的に変色・退色する結果となり、好ましくない。一方、10.0重量%を超える量の紫外線吸収剤を中間層に存在させても、もはや染料の変色・退色を防止する効果は飽和しており、逆に、中間層を覆う表層を貫通して表面に極微量が析出する、いわゆるブリードアウトの現象が生じやすくなるため、好ましくない。
【0015】
本発明で使用する上記紫外線吸収剤は、1種類を単独で用いてもよいいが、2種類以上の紫外線吸収剤を組み合わせて使用することもできる。この場合にも中間層の紫外線吸収剤の総量が0.1〜10.0重量%の範囲内とすることが必要である。
【0016】
本発明で使用する上記紫外線吸収剤は、その分子量が350〜1000の範囲にあることが好ましい。分子量が350未満の場合には、ポリエステルの溶融成型時に昇華あるいは発煙等が生じて成型が困難となることがあったり、仮に本発明のような3層の層構成を持つフィルムの中間層に添加することができても、表層を貫通して表面にブリードアウトする場合がある。また、分子量が1000を超えるとポリエステルに溶解し難くなり、この結果、フィルムヘーズが高まることがある。
【0017】
本発明で使用するベンゾトリアゾール誘導体の例としては、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α’−ジメチル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾールや、ヒンダードフェノール抗酸化剤を結合させた6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−t−ブチル−6’−t−ブチル−4’−2,2’−メチレンビスフェノール、ベンゾトリアゾール基をオルト位に置換したフェノールをメチレン基で2個接続した形の2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3テトラメチルブチル)−6−〔(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕 〕、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1−ジメチルベンジル)−6−〔(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕 〕などや、イミド環を有した2−〔2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロキシフタルアミド−メチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0018】
本発明で使用するベンゾフェノン誘導体の例としては、2−ヒドロキシ−4−アルコキシベンゾフェノンをメチレン基で2個接続したものが好ましく、具体的には、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−ブトキシフェニル)メタンなどが挙げられる。
【0019】
本発明で使用する1,3,5−トリアジン誘導体の例としては、3つのベンゼン環のうち少なくとも1つはオルト位にフェノール性水酸基を置換基に有するトリフェニル−1,3,5−トリアジンが好ましく、具体的には、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕−フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(オクチル)オキシ〕−フェノールなどが挙げられる。
【0020】
本発明の窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルムは、その積層構造の中間層に、上記の紫外線吸収剤のほかに、ポリエステルに実質的に溶解する染料を添加して着色することが必要である。ここで言う実質的に溶解するとは、ポリエステルの溶融状態で混練りしたときに、凝集体などが残らずに均一に混ざることを意味し、これによって、後述するフィルムヘーズが5.0%以下、好ましくは3.5%以下となるように染料を選択する。
【0021】
さらに、用いる染料は、可視光領域(380〜780nm)に吸収を持つことが好ましい。この結果、フィルム全体の可視光線透過率を3〜70%の範囲とすることができ、可視光線透過率は、好ましくは5〜50%の範囲である。
【0022】
また、これらの染料は、ポリエステルの成型温度で分解が少ないものが好ましい。このような染料としては、化学構造的にはアントラキノン系、ペリノン系、ペリレン系、アゾメチン系、複素環系染料等が好ましく挙げられ、染色処方的には油溶性染料が好適である。これらの染料は、例えばグレー調やブラウン調に調色するために、適宜選択して数種混合して使用されるのが一般的であり、またこれら染料のポリエステル中の含有量は、例えば0.01〜10重量%の範囲から適宜選ぶことができる。
【0023】
本発明の窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム全体のヘーズが5.0%以下である必要があり、好ましくは3.5%以下である。フィルムヘーズが5.0%を超える場合には、フィルムに濁りがあることが目立ち、窓ガラスに貼り付けた場合に透明性が損なわれるため、好ましくない。
【0024】
本発明の窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルムは、前述したように中間層に紫外線吸収剤および染料を添加して共存させているが、これらが実質的にポリエステルに溶解して濁りを生じることなく、本来ポリエステルが有する透明性を維持する必要がある。したがって、染料あるいは紫外線吸収剤がそれ自体単独ではポリエステルに溶解するものであっても、両者が反応して凝集体を形成するような組み合わせは好ましくない。
【0025】
本発明の窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルムにおいては、フィルム全体のヘーズが5.0%以下、好ましくは3.0%以下である透明性と、可視光線透過率が3〜70%、好ましくは5〜50%を満たす遮光性の両方を併せ持つ必要がある。
【0026】
本発明における紫外線吸収剤および染料をポリエステルに添加する方法は、フィルムを溶融成型する際に、これらを粉体やペーストあるいは液体などとして添加する方法でもよいが、装置の汚染の問題や銘柄切り替えのしやすさを考慮すると、あらかじめ紫外線吸収剤や染料のマスターバッチを作成しておき、フィルムの溶融成型時にこれらのマスターバッチをクリアーレジンで希釈しながら添加することが好ましい。また、これらの溶融成型の際には、ポリエステルに分散良く混練りしながら行うために、特に二軸押出機を用いることが好ましい。
【0027】
本発明のポリエステルフィルムは、表面の滑り性を確保するために、その積層構成の両表層面に微細な突起を形成させ得るに十分な粒子径と添加量の微粒子を含有させることができる。この目的で使用できる微粒子は、例えば、平均粒径が0.02〜3.0μmの酸化ケイ素、炭酸カルシウム、カオリン、架橋有機高分子微粉体などの一種または二種以上を挙げることができ、添加量は通常0.001〜0.5重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%から適宜選択することが、フィルムヘーズを上昇させないで、かつ必要最小限の滑り性を確保することができて好ましい。上記微粒子を適宜選択することにより、フィルムの平均表面粗さRaを、0.005〜0.050μmの範囲内とすることが好ましい。
【0028】
さらにこの表層を構成するポリエステルには、赤外線吸収剤、帯電防止剤等、公知の添加剤を公知の量だけ添加することも可能である。
【0029】
また、表層と中間層の積層厚み構成に関しては、フィルム全体の濁り(フィルムヘーズ)を抑えるために、微粒子の添加された表層はできるだけ薄いことが好ましい。一方で、中間層に存在する近赤外吸収剤や染料がブリードアウトするのを防止するためには、表層はむしろ厚い方が好ましい。これらを勘案して、フィルム全体の厚みに関わらず、表層厚みは通常片側0.5〜4.0μmの範囲が好適に用いられる。
【0030】
次に本発明の積層ポリエステルフィルムの製造方法について具体的に説明するが、本発明のフィルムは以下の製造例に何ら限定されるものではない。
【0031】
まず、先に述べたポリエステル原料を使用し、複数台の押出機、複数層のマルチマニホールドダイまたはフィ−ドブロックを用い、それぞれのポリエステルを積層して口金から複数層の溶融シートを押出し、冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法を採用することが好ましい。
【0032】
次いで、得られた未延伸フィルムは二軸方向に延伸して二軸配向させる。すなわち、前記の未延伸シートを縦方向にロール延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は、通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、横方向に延伸を行う。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜115℃であり、延伸倍率は、通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸延伸フィルムを得る。
【0033】
上記の延伸においては、1回の延伸操作で所定倍率まで延伸する方法のほか、延伸を2段階以上に振り分けて所定の延伸倍率とする方法を用いることもできる。その場合にも、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。また、前記の未延伸シートを面積倍率が10〜40倍になるように縦横同時二軸延伸を行うことも可能である。さらに、必要に応じて熱処理を行う前または後に再度縦および/または横方向に延伸してもよい。
【0034】
上記のフィルムの表面には必要に応じてコーティングを施すことができる。例えば接着性向上、帯電防止性付与、表面の傷付き防止性能を付与することなどを目的として、インラインあるいはオフラインあるいはそれらを両方組み合わせたコーティングを行うことができる。特にインラインで行うコーティングでは、上記のフィルムの製造方法において、縦延伸が終了した段階で、主として水を媒体とする塗布液を塗布した後、テンター内で乾燥・予熱・横延伸を行い、さらに熱固定を行う一連のプロセスを用いることができる。
【0035】
このようにして得られたフィルムを窓ガラス等に貼り合わせるには、フィルムとガラスとの間に粘着材または接着剤等を介して貼り合わせる方法を用いればよい。またその際には、使用する粘着剤または接着剤に公知の紫外線吸収剤を配合して併用したり、あるいは赤外線吸収剤を公知の配合量で添加できる。また、この粘着剤あるいは接着剤には、公知の離型処理を施された公知のプラスチックフィルムを、いわゆるセパレーターフィルムをして用いることができる。
【0036】
さらにガラス面に貼り付けるのとは反対の面には、スリ傷防止等の目的で公知のハードコート層を設けることができる。例えばこのハードコート層には、透明性と耐擦傷性を兼ね備えた熱硬化性あるいはUV硬化性のアクリル樹脂で構成されたものなどが良く用いられる。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。
【0038】
また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
(1)可視光線透過率
分光式測色計SE−2000(日本電色(株)製)を用いてD65光源で各波長の光線透過率を測定し、JIS−S3107に従って可視光線透過率を算出した。
(2)フィルムの濁度(フィルムヘーズ)
JIS−K6714に準じ、濁度計NDH300A(日本電色(株)製)を用いてフィルムの濁度(ヘーズ)を測定した。
(3)フィルムの表面粗さ(Ra)
中心線平均粗さRa(μm)を持って表面粗さとした。小坂研究所社(株)製表面粗さ測定機(SE−3F)を用いて次のように求めた。すなわち、フィルム断面曲線からその中心線の方向に基準長さL(2.5cm)の部分を切り取り、この切り取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸として粗さ曲線Y=f(X)で表したとき、次の式で与えられた値をμm単位で表す。中心線平均粗さは、試料フィルム表面から10本の断面曲線を求め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の中心線粗さの平均値で表した。なお、触針の先端半径は2μm、荷重は30mgとし、カットオフ値は0.08mmとした。
【0039】
Ra=(1/L)∫L 0|f(X)|dX
(4)フィルムの変色・退色の評価(促進試験)
フィルムをガラス板に張り付け、フィルム面に直接紫外線が当たるように配置し、紫外線照射条件をJIS S3107に準じて行った。すなわち、サンシャインカーボンアーク灯(1灯)で、光フィルターとして分光透過率が、275nmで2%以下、400nmで90%以上のフィルターを用いた。紫外線の照射条件は、50V、60Aで、ブラックパネル温度計が示す温度は63±3℃とした。また、相対湿度は50±5%に維持し、試験片表面の放射照度は255±45W/m2(300〜700nmにおいて)として、水の噴射は行わずに、200時間の紫外線照射を行った。
【0040】
フィルムの変色・退色の評価は、サンプルの色調(L*、a*、b*)を紫外線照射の前後で測定して比較して行った。色調の測定には、(1)で使用した分光式測色計SE−2000を使用した。また色調の変化は、次式を用いて色差ΔE*abを求めた。
【0041】
ΔE*ab=((ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2)1/2
以下の実施例および比較例で用いたポリエステル原料の製造方法は次のとおりである。
<ポリエステルA>
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール60部および酢酸マグネシウム・4水塩0.09部を反応器にとり、加熱昇温するとともにメタノールを留去し、エステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次いで、エチルアシッドフォスフェート0.04部、三酸化アンチモン0.04部を添加した後、100分で温度を280℃、圧力を15mmHgとし、以後も徐々に圧力を減じ、最終的に0.3mmHgとした。4時間後、系内を常圧に戻し、実質的に微粒子を含まないポリエステルAを得た。このポリエステルの固有粘度は0.70であった。
<ポリエステルB>
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール60部および酢酸マグネシウム・4水塩0.09部を反応器にとり、加熱昇温するとともにメタノールを留去し、エステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次いで、平均粒径1.4μmのシリカ粒子を2.0部含有するエチレングリコールスラリーを反応系に添加し、さらにエチルアシッドフォスフェート0.04部、三酸化アンチモン0.04部を添加した後、100分で温度を280℃、圧力を15mmHgとし、以後も徐々に圧力を減じ、最終的に0.3mmHgとした。4時間後、系内を常圧に戻し、ポリエステルBを得た。得られたポリエステルBのシリカ粒子含有量は1.0重量%であった。また、このポリエステルの固有粘度は0.70であった。
<ポリエステルC>
ポリエステルAをベント付き二軸押出機に供して、紫外線吸収剤として2−〔2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロキシフタルアミド−メチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール(住友化学工業(株)社製 Sumisorb 250 分子量389 ベンゾトリアゾール系)を20重量%濃度となるように供給して溶融混練りしてチップ化を行い、紫外線吸収剤マスターバッチポリエステルCを作成した。
<ポリエステルD>
ポリエステルAをベント付き二軸押出機に供して、紫外線吸収剤としてビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン(旭電化工業(株)社製 アデカスタブLA−51 分子量469 ベンゾフェノン系)を20重量%濃度となるように供給して溶融混練りしてチップ化を行い、紫外線吸収剤マスターバッチポリエステルDを作成した。
<ポリエステルE>
ポリエステルAをベント付き二軸押出機に供して、紫外線吸収剤として2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−〔(ヘキシル)オキシ〕−フェノール(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(株)社製 TINUVIN577FF 分子量425 1,3,5−トリアジン系)を20重量%濃度となるように供給して溶融混練りしてチップ化を行い、紫外線吸収剤マスターバッチポリエステルEを作成した。
<ポリエステルF>
ポリエステルAを180℃で4時間乾燥した後、ベント付き二軸押出機に供して、ただしベント引きをせずに、紫外線吸収剤として2−ヒドロキシ−4−n−オクチルベンゾフェノン(住友化学工業(株)社製 Sumisorb 130分子量326 ベンゾフェノン系)を10重量%濃度となるように供給して溶融混練りしてチップ化を行い、紫外線吸収剤マスターバッチポリエステルFを作成した。
<ポリエステルG>
ポリエステルAをベント付き二軸押出機に供して、三菱化学(株)製ダイアレジンレッドHS 3.0重量%、同ブルーH3G 5.5重量%、および同イエローF 1.5重量%の各濃度となるように混合して添加し、溶融混練りを行ってチップ化を行い、染料マスターバッチポリエステルGを作成した。
【0042】
実施例1〜3
ポリエステルA、C、Gの各チップを91.5:0.5:8.0の割合(実施例1)、87:5:8の割合(実施例2)、42:50:8の割合(実施例3)で、それぞれ中間層用レジンとして中間層用押出機に投入した。これとは別にポリエステルA、Bの各チップを93:7の割合で表層用レジンとして表層用押出機に投入した。それぞれの押出機はいずれもベント付きの異方向二軸押出機であり、レジンは乾燥せずに290℃の溶融温度で押出しを行い、その後、溶融ポリマーをフィードブロック内で合流して積層した。次いで、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して3層構成の積層未延伸シートを得た。得られたシートを85℃で3.5倍縦方向に延伸した。縦延伸後、フィルムをテンターに導き105℃で3.7倍横方向に延伸した後、230℃にて熱固定を行い、さらに幅方向に200℃で5%弛緩処理を行って、二軸配向フィルムを作成した。このフィルムの各層の厚みは2/21/2μmの構成で、総厚みは25μmであった。このフィルムの特性を下記表1に示すが、紫外線吸収剤を0.1〜10重量%の範囲で中間層に添加することで、紫外線照射による色差ΔE*ab値が小さくなっており、改善効果が認められる。
【0043】
実施例4〜6
実施例1〜3において、中間層用レジンとしてポリエステルA、D、Gの各チップを91.5:0.5:8.0の割合(実施例4)、87:5:8の割合(実施例5)、42:50:8の割合(実施例6)で、それぞれ中間層用押出機に投入した。これとは別にポリエステルA、Bの各チップを93:7の割合で表層用レジンとして表層用押出機に投入した。この後実施例1〜3と全く同様に製膜を行って、二軸配向フィルムを作成した。このフィルムの各層の厚みは2/21/2μmの構成で、総厚みは25μmであった。このフィルムの特性を表1に示すが、紫外線吸収剤を0.1〜10重量%の範囲で中間層に添加することで、紫外線照射による色差ΔE*ab値が小さくなっており、改善効果が認められる。
【0044】
実施例7〜9
実施例1〜3において、中間層用レジンとしてポリエステルA、E、Gの各チップを91.5:0.5:8.0の割合(実施例7)、87:5:8の割合(実施例8)、42:50:8の割合(実施例9)で、それぞれ中間層用押出機に投入した。これとは別にポリエステルA、Bの各チップを93:7の割合で表層用レジンとして表層用押出機に投入した。この後、実施例1〜3と全く同様に製膜を行って、二軸配向フィルムを作成した。このフィルムの各層の厚みは2/21/2μmの構成で、総厚みは25μmであった。このフィルムの特性を表1に示すが、紫外線吸収剤を0.1〜10重量%の範囲で中間層に添加することで、紫外線照射による色差ΔE*ab値が小さくなっており、改善効果が認められる。
【0045】
実施例10、11
実施例1〜3において、中間層用レジンとしてポリエステルA、E、Gの各チップを93.5:5.0:1.5の割合(実施例10)、67:5:28の割合(実施例11)で、それぞれ中間層用押出機に投入した。これとは別にポリエステルA、Bの各チップを93:7の割合でブレンドしたものを表層用レジンとして表層用押出機に投入した。この後、実施例1〜3と全く同様に製膜を行って、二軸配向フィルムを作成した。このフィルムの各層の厚みは2/21/2μmの構成で、総厚みは25μmであった。このフィルムの特性を表1に示すが、紫外線吸収剤が添加されているため、可視光線透過率が高い場合(実施例10)でも低い場合(実施例11)でも、紫外線照射による色差ΔE*ab値が小さくなっており、改善効果が認められる。
【0046】
比較例1
実施例1において、中間層用レジンとしてポリエステルA、Gの各チップを92:8の割合で中間層用押出機に投入した。これ以外は実施例1〜3と全く同様に製膜を行って、二軸配向フィルムを作成した。このフィルムの各層の厚みは2/21/2μmの構成で、総厚みは25μmであった。このフィルムの特性を表1に示すが、紫外線吸収剤が添加されていないため、紫外線照射による色差ΔE*ab値が著しく大きい。
【0047】
比較例2〜4
実施例1〜3において、中間層用レジンとしてポリエステルA、C、Gの組み合わせ(比較例2)、ポリエステルA、D、Gの組み合わせ(比較例3)、ポリエステルA、E、Gの組み合わせ(比較例4)で、それぞれ各チップを91.75:0.25:8.00の割合で中間層用押出機に投入した。これとは別にポリエステルA、Bの各チップを93:7の割合で表層用レジンとして表層用押出機に投入した。この後実施例1〜3と全く同様に製膜を行って、二軸配向フィルムを作成した。このフィルムの各層の厚みは2/21/2μmの構成で、総厚みは25μmであった。このフィルムの特性を表1に示す。紫外線照射後の色差ΔE*abの色差は、何れの場合も比較例1よりも若干小さくはなっているが、紫外線吸収剤の量が少ないため、改善効果としては不足である。
【0048】
比較例5〜7
実施例1〜3において、中間層用レジンとしてポリエステルA、C、Gの組み合わせ(比較例5)、ポリエステルA、D、Gの組み合わせ(比較例6)、ポリエステルA、E、Gの組み合わせ(比較例7)で、それぞれ各チップを17:75:8の割合で中間層用押出機に投入した。これとは別にポリエステルA、Bの各チップを93:7の割合で表層用レジンとして表層用押出機に投入した。この後、実施例1〜3と全く同様に製膜を行って、二軸配向フィルムを作成した。このフィルムの各層の厚みは2/21/2μmの構成で、総厚みは25μmであった。このフィルムの特性を表1に示す。紫外線吸収剤の効果としては、実施例3、6、9で対応する同じ紫外線吸収剤を中間層に10%添加したものと較べても差がほとんどなく、もはや飽和状態であることが分かる。
【0049】
比較例8
実施例1〜3において、中間層用レジンとしてポリエステルA、Gの各チップを92:8の割合で中間層用押出機に投入した。これとは別にポリエステルA、B、Cの各チップを88:7:5の割合で表層用レジンとして表層用押出機に投入した。この後、実施例1〜3と全く同様に製膜を行って、二軸配向フィルムを作成した。このフィルムの各層の厚みは2/21/2μmの構成で、総厚みは25μmであった。このフィルムは長時間製膜を継続すると、溶融シート作成する際に、表層に配合した紫外線吸収剤が冷却ドラム上に昇華物が徐々に付着して行く現象が観察され、1日に何度か製膜を中断して冷却ドラムを洗浄する必要があった。
【0050】
比較例9
実施例1〜3において、中間層用レジンとしてポリエステルA、F、Gの各チップを82:10:8の割合で中間層用押出機に投入した。これとは別にポリエステルA、Bの各チップを93:7の割合で表層用レジンとして表層用押出機に投入した。この後、中間層用押出機をベントから真空引きをして溶融押出を開始したところ、しばらくしてベント口から溶融ポリエステルが上昇する現象(いわゆるベントアップ)が発生して、溶融押出しをすることができなかった。
【0051】
以上、得られた結果をまとめて、下記表1および2に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、自動車の窓、建築物の窓等のガラスに貼り合わせをして使用される窓貼り用ポリエステルフィルとして、染料で着色されて遮光性を有するものであるが、日光や蛍光灯などによる紫外線で染料が劣化・分解されるのを防ぎ、フィルム全体の変色・退色を抑えるものである。しかもフィルムに濁りが少なく透明性が良好である特徴を有している。また、フィルムの生産機を汚染することも少ないため、その工業的価値は高い。
Claims (2)
- 少なくとも3層のポリエステル層が共押出によって積層されたフィルムであって、その中間層に、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体および1,3,5−トリアジン誘導体からなる群から選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収剤を0.1〜10.0重量%、実質的にポリエステルに溶解する染料をそれぞれ含有し、フィルム全体のヘーズが5.0%以下、可視光線透過率が3〜70%であることを特徴とする窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルム。
- 紫外線吸収剤の分子量が350〜1000であることを特徴とする請求項1記載の窓貼り用二軸配向ポリエステルフィルム。
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