JP4333606B2 - 電子楽器 - Google Patents

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Description

本発明は、楽音信号を合成する際に、プリセットされていない波形データを使用できる電子楽器に関するものである。
波形メモリ音源方式の電子楽器において、その音源回路は、指定された音色に対応した音色ファイル(ボイスファイル)に記録された設定データに従って楽音信号を合成し発音する。ボイスファイルには、従来、パラメータ群と、素材として使用する1又は複数のプリセット波形データの記録位置を指示するデータが記録されている。プリセット波形データ自体は、音源回路に直結されたプリセット波形メモリに記憶されている。
ユーザは、ボイスファイルに記録されたパラメータ群を編集することにより、新たな音色のボイスファイルを作成することができる(非特許文献1参照)。しかし、新たなプリセット波形データを追加することは不可能であった。
素材として使用する波形データを追加するために、CPUバス上のフラッシュメモリ(Flash ROM)に、多数の波形データを蓄積しておき、楽音信号を合成する際に必要となる波形データを、音源回路がCPUバスを経由して読み出す方法が考えられる。しかし、CPUバスのデータ転送能力が高くなければ実現がむずかしい。
そこで、音源回路が直接的に波形データを読み出すことができる波形メモリ(RAM)を設け、音源回路が新たに波形データを必要とするとき、その波形データを、上述したフラッシュメモリからCPUバスを経由して、波形メモリに書き込む構成を採用する。
ところが、1音色で楽音信号を合成するだけでも多数の波形データを用いるので、波形メモリの容量が大きくなる。しかし、この波形メモリは、波形合成処理の速度に見合う高速の読み書きが必要とされるので高価なRAMを用いる必要がある。そのため、記憶容量を大きくできないという問題がある。
"DIGITAL WORKSTATION TYROS OWNER'S MANUAL"、[online]ヤマハ株式会社、[平成17年2月14日検索]、インターネット、p.59,85-87,64,65<URL:http://www2.yamaha.co.jp/manual/pdf/emi/english/port/TYROSE1.PDF>
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、音源回路が楽音信号を合成する際に読み出す波形データを、ユーザが自由に追加でき、追加のために必要となる波形メモリの記憶容量を抑える電子楽器を提供することを目的とするものである。
本発明は、請求項1に記載の発明においては、音色に対応したボイスファイルに記録された設定データに従って楽音信号を合成し発音する音源回路を備えた電子楽器において、前記ボイスファイルは、前記設定データとして、識別コードが付されたユーザ波形データ、及び又は、プリセット波形データの記憶位置を指示するデータと、波形制御用のパラメータ群を記録したものであり、複数の前記ボイスファイルと、それぞれに前記識別コードが付された複数のユーザ波形データを蓄積する第1の記憶手段と、前記楽音信号を合成する際に前記音源回路が直接的に読み出す前記ユーザ波形データを記憶する第2の記憶手段と、前記楽音信号を合成する際に前記音源回路が直接的に読み出す前記プリセット波形データを記憶する第3の記憶手段と、音色が指定されたとき、前記第1の記憶手段に蓄積されている、指定された音色に対応するボイスファイルを読み出し、当該ボイスファイルに含まれた前記波形制御用のパラメータ群に従って前記音源回路に設定を加え、かつ、当該ボイスファイルにプリセット波形データの記憶位置を指示するデータがあれば、前記第3の記憶手段における、当該データで指示される記憶位置にあるプリセット波形データを楽音合成で使用するものとして前記音源回路に設定し、かつ、当該ボイスファイルに少なくとも1つのユーザ波形データが含まれている場合、含まれているそれぞれのユーザ波形データについて、当該ボイスファイルに含まれている当該ユーザ波形データの識別コードと同じ識別コードが、前記第2の記憶手段に書き込まれているユーザ波形データに付いていれば、当該識別コードが付いている前記第2の記憶手段に書き込まれているユーザ波形データを楽音合成で使用するものとして前記音源回路に設定し、当該ボイスファイルに含まれている当該ユーザ波形データの識別コードと同じ識別コードが、前記第2の記憶手段に書き込まれているユーザ波形データに付いていないときに限り、当該ボイスファイルに含まれている該ユーザ波形データを前記第2の記憶手段に書き込み、書き込んだユーザ波形データを楽音合成で使用するものとして前記音源回路に設定する音色設定手段と、前記第1の記憶手段に蓄積されている任意のボイスファイルに含まれているユーザ波形データを、当該ユーザ波形データに付された識別コードとともにコピーして新たな音色のボイスファイルを作成し、前記第1の記憶手段に蓄積するボイスファイル作成手段と、外部機器あるいは可搬型記録媒体から前記ユーザ波形データを入力し、入力したユーザ波形データに、前記第1の記憶手段に蓄積されたユーザ波形データの識別コードとは異なる識別コードを付した上で、前記入力したユーザ波形データを前記第1の記憶手段に追加する波形データ追加手段を有するものである。
従って、楽音信号を合成する際に読み出す波形データを第1の記憶手段に蓄積しておくことにより、ユーザはこの波形データを自由に追加できる。
波形データに付された識別コードを用いて、波形メモリに同じ波形データが重複して書き込まれないようにすることから、波形の中身を解析することなく、簡単に、波形メモリの記憶容量を抑えることができるとともに、不必要な書き込みがなくなるので処理能力が低下しない。
外部から波形データを追加入力するときは、安全サイドに立って、第1の記憶手段に蓄積された波形データの識別コードとは異なる識別コードを付けるので、第1の記憶手段に蓄積されている波形データと識別コードとの対応関係がくずれない。
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の電子楽器において、前記第2の記憶手段は、当該ボイスファイルに含まれている該ユーザ波形データに加えて、当該ユーザ波形データに付された識別コードを記憶するものであり、前記音色設定手段は、当該ボイスファイルに含まれている該ユーザ波形データを前記第2の記憶手段に書き込む際に、当該ユーザ波形データの識別コードを前記第2の記憶手段に書き込むものである。
本発明によれば、音源回路が楽音信号を合成する際に読み出す波形データとして、ユーザが追加したものを用いることができ、かつ、追加のために必要となる波形メモリの記憶容量を、簡単な方法で抑えることができるという効果がある。上述した波形データは、プリセットされた波形データとともに用いることができる。
図1は、本発明の実施の一形態を説明するためのハードウエア構成図である。
CPUバス1は、複数のハードウエアブロックの間でデータを転送する。4はROM(Read Only Memory)であり、電子楽器の機能を実現する処理プログラムや制御データが記憶されている。3はRAM(Random Access Memory)であり、ROM4から処理プログラムがロードされるとともに、編集バッファ(エディットバッファ)等の作業領域(ワークエリア)が設けられる。CPU2は、処理プログラムに従って、操作子5の操作イベント検出、表示部7に対する表示制御等の一般的な制御を行うとともに、入力された演奏データに応じて音源回路12が楽音信号を合成するために必要な制御をする。
ROM4に制御プログラムや設定データが記憶されていない場合、これらを後述する、ユーザ記憶装置11の、ハード磁気ディスク装置(HDD)等に記憶させてもよい。このハード磁気ディスク装置に、制御プログラムや設定データを、CD-ROMからインストールしたり、サーバ装置(外部機器9)からダウンロードしたりすればよい。
5は鍵盤、音色設定スイッチ等の操作子、6は検出回路である。7はディスプレイ、インジケータ等の表示部、8は表示回路である。
9は音色編集ソフトウエア等が実行されるパーソナルコンピュータ,電子楽器,サーバ等の外部機器である。10は外部機器9との間で演奏データ,ボイスファイル,波形ファイル等を転送する通信インタフェースであり、例えば、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)ケーブル、RS232C、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394等である。
11はユーザ記憶装置であり、複数の各音色に対応した複数のボイスファイル(図2(a)参照)や、複数のユーザ波形ファイル(図2(b)参照)が記憶されている。
電源オフでも記憶内容を保持し、読み出し書き込み可能な記憶装置を用いる。例えば、フラッシュメモリ及び/又はハード磁気ディスク装置(HDD)である。例えば、USBフラッシュメモリ、半導体メモリカード、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)等の、取り外しと挿入が自在な可搬型記憶媒体を用いる記憶装置を加えてもよい。
12は音源回路であり、楽音合成機能を有した集積回路(音源LSI:Large Scale Integrated Circuit)又はDSP(Digital Signal Processor)である。プリセットされた複数の波形データ(波形を再生するためのPCM形式のPCMサンプル)は、プリセット波形メモリ(ROM)13に蓄積されており、音源回路12は、CPUバス1を経由することなく波形メモリバスを経由して直接的にプリセットされた波形データ読み出す。プリセット波形メモリ13は、上述した音源LSIに内蔵されていてもよい。
14はユーザ波形メモリであり、読み出し書き込み可能なRAMである。音源回路12が楽音信号を合成する際に、CPUバス1を経由しないで、波形メモリバスを経由して、この音源回路12が直接的に読み出す波形データを記憶する。指定された音色で楽音合成するために必要なユーザ波形データが、このユーザ波形メモリ14に書き込まれていないときは、そのユーザ波形データを、ユーザ記憶装置11からCPUバス1を経由してユーザ波形メモリ14に書き込む。
このユーザ波形メモリ14には、既に書き込まれているユーザ波形データを再度書き込まないようにして、必要とする記憶容量を抑える。
既に指定されたことのある音色と同じ音色が再度指定されたときに、ユーザ波形データを再び書き込まないようにすれば、ユーザ波形データが重複書き込みされないはずである。しかし、この実施の形態の電子楽器では、ユーザが既存の音色設定データ(ボイスファイル)を編集して、新たな音色の設定データ(ボイスファイル)を作成する機能を備えている。そのため、異なる音色であっても、同じユーザ波形データを用いる場合がある。
例えば、既存のボイスファイルをコピーし、そのまま、又は、そのパラメータ群を変更し、新たな名前のボイスファイルとしてユーザ記憶装置11に蓄積する場合がある。
そのため、個々の波形データに、各波形データが、この電子楽器内で互いに識別できるように識別コード(以下、IDという)を付けるようにする。このIDは、それぞれの電子楽器内で1個しか付けられない、1つの電子楽器(自機)において各波形データに固有のものである。
図2(a)は、図1に示したユーザ記憶装置11に記憶されているボイスファイル21の一例を示すデータ構造図、図2(b)は、図1に示したユーザ記憶装置11に記憶されている単独でユーザ波形を蓄積するユーザ波形ファイル22の一例を示すデータ構造図である。
図2(a)において、ボイスファイル21のヘッダ21aには音色名、楽器タイプ、ファイル拡張子等が記録されている。パラメータ群21bは波形合成するときに音源回路12に設定する波形制御用のパラメータである。例えば、コモン(共通)パラメータ、コントローラ(制御操作子)パラメータ、サウンドパラメータ、エフェクト/イコライザを制御するパラメータ等が記録されている。
1又は複数のユーザ波形21c,21d,…、1又は複数のプリセット波形21e,21f,…は、音源回路12が楽音波形を合成する際に素材として使用する。ユーザ波形データのみ、プリセット波形データのみという場合もある。
上述した波形のうち、どの波形を合成し、つなぎ合わせるかなど、どのように用いて楽音波形を合成するかを決定する加工情報も、上述したパラメータ群21bに含まれている。
1音色は複数のエレメントを含む場合があり、その場合、それぞれのエレメントに異なる波形データを用いる。さらに、鍵域(音域)に応じて異なる波形データを用いる。鍵域が同じでも、キータッチに応じて複数の波形データを用い、その混合比を変えて合成する。一方、ドラムパートの音色であれば、ドラム楽器毎に異なる波形データが用いられる。このように、1音色であっても、多数の波形データが用いられるのが通常である。
ユーザ波形21c,21dは、例えばPCMサンプルの波形データとともに、各ユーザ波形21c,21dのIDが記録されている。
これに対し、プリセット波形21e,21f,…は、プリセット波形メモリ13におけるプリセット波形の記録位置を指示するデータが記録されている。なお、プリセット波形データにもIDを付して、ユーザ波形データと共通に管理してもよい。
図2(b)に示すように、ユーザ波形そのものもユーザ波形ファイル22として単独でユーザ記憶装置11に蓄積してもよい。22aはヘッダであり、ユーザ波形の波形名、波形タイプ、ファイル拡張子等が記録される。22bは、図2(a)の1つのユーザ波形21cと同様な、ユーザ波形のID及び波形データである。
ヘッダ22aにユーザ波形のIDを含めるようにしてもよい。また、ヘッダ22aを設けずに、IDの付されたユーザ波形データ自体をユーザ波形ファイル22としてもよい。
一方、図2(a)のボイスファイル21に含まれたユーザ波形21c等にもヘッダを設け、図2(b)のユーザ波形ファイル22と同一形式にしてもよい。その際、ヘッダにユーザ波形のIDを含めてもよい。
図2(a)のボイスファイル21は、ユーザ波形21c,21d,…として、波形データそのものをIDとともに記録している。これに代えて、ユーザ波形21c,21dとして、そのIDを記録するが、ユーザ波形データそのものは記録しないようにしてもよい。ユーザ波形データそのものは、図2(b)のユーザ波形ファイル22として記録しておく。
指定された音色に対応するボイスファイル21からユーザ波形データのIDを読み出し、このIDにより特定されるユーザ波形ファイル22に含まれたユーザ波形データを読み出す。ボイスファイル21を外部から追加入力する際には、ボイスファイル21と、これに含まれたIDにより特定されるユーザ波形ファイル22とを組にして入力すればよい。
図3〜図6は、図1に示したCPU2が処理プログラムに従って実行する主要動作を説明するためのフローチャートである。
図3は、音源回路12に対する音色(ボイス)の設定が指示されたときに起動するフローチャートである。
鍵盤(操作子5)演奏の場合は、初期設定時に音源の鍵盤パートにデフォルトで設定されたボイスが指示される。また、ボイスを指定する操作子(操作子5)を操作したときにも、鍵盤パートの音色が指示される。
外部機器9から演奏データがリアルタイムで入力される場合は、ボイスメッセージが入力されたときに、外部入力パートの音色が指定される。
ROM4等に記憶されRAM3のワークエリアにロードされたソングデータを自動演奏する場合は、曲の再生開始時に、先頭に記録されたボイスメッセージ、あるいは曲の途中に記録されたボイスメッセージにより、自動演奏の各チャンネルに対応した各パートのボイスが指定される。以下、説明を簡単にするため、1つのパートにボイスが設定される動作を説明する。
S31において、指示されたボイスに対応したボイスファイル21をユーザ記憶装置11からRAM3のワークエリアに読み出し、以後の処理対象とする。S32において、パラメータ群21bに従って音源回路12に設定を加える。S33において、プリセット波形データ(記憶位置データ)があれば、その記録位置に記憶されたプリセット波形データを楽音合成(発音)で使用するものに設定する。
S34,S35において、ユーザ波形データが含まれていれば、S36において、ユーザ波形データの1つを処理対象とし、S37,S38,S39において、そのIDを読み出し、同じIDのユーザ波形データがユーザ波形メモリ14に書き込まれていれば、そのID及び波形データを新たに書き込むことなく、S40において、既に書き込まれていた、IDが同じユーザ波形データを、指定された音色の発音で使用するユーザ波形データとして設定する。
一方、同じIDのユーザ波形データが、ユーザ波形メモリ14に書き込まれていないときは、S41,S43において、ID及びユーザ波形データをユーザ波形メモリ14に書き込んで追加し、追加したものを発音で使用するものに設定する。
S40又はS43からS42に処理を進め、ボイスファイル21に含まれた全てのユーザ波形データを処理するまで、S36に処理を戻す。
従って、本発明の実施の一形態が備える音色設定機能は、音色が指定されたとき、ユーザ記憶装置11に蓄積されている、指定された音色に対応するボイスファイル21に含まれたパラメータ群21bを音源回路12に設定するとともに、ユーザ波形メモリ14に書き込まれている、このボイスファイル21に含まれたユーザ波形21c,21d,…内のユーザ波形データと同じユーザ波形データ、及び、プリセット波形21e,21fの記録位置を指示するデータにより指示されるプリセット波形データを、音源回路12が楽音信号を合成するときに読み出す波形データとして設定する。
かつ、上述した音色設定機能は、指定された音色に対応するボイスファイル21に含まれたユーザ波形21c,21d,…内のユーザ波形データのIDと同じIDが、ユーザ波形メモリ14に書き込まれている波形データに付いていないときに限り、上述したユーザ波形21c,21d,…内のユーザ波形データを、ユーザ波形メモリ14に書き込む。
CPU2は、鍵盤(操作子5)の操作等に応じた入力演奏データ(ノートメッセージ)に基づいて制御パラメータを作成し、音源回路12に出力する。
音源回路12は、指定された音色に対応して設定されたパラメータ群21bに従って、設定されたプリセット波形データをプリセット波形メモリ13から、設定されたユーザ波形データをユーザ波形メモリ14から読み出し、ノートメッセージに応じた楽音信号を合成し、アナログ信号に変換してサウンドシステム15に出力する。
なお、ユーザ波形メモリ14に書き込まれている波形データに付されたIDは、RAM3にユーザ波形データ管理領域を設けて記憶しておけば、上述したS38では、この波形データ管理領域を参照するだけでよい。IDは必ずしもユーザ波形メモリ14に書き込まなくてもよい。
図4は、ユーザ記憶装置11内に蓄積されたボイスファイル21のコピーを作成する指示を受け付けたときに起動するフローチャートである。
S51において、ユーザ記憶装置11に蓄積されていたボイスファイル21をコピー元としてRAM3の編集バッファに読み出し、そのファイル名のみを変更したコピーを作成し、そのまま、あるいはさらにパラメータ群21bを変更するなどして、新たなボイスファイル21を作成して、ユーザ記憶装置11に記憶する。
あるいは、ユーザ記憶装置11に蓄積されている1つのボイスファイル21を指定し、これに含まれているユーザ波形データやプリセット波形データを、ユーザ記憶装置11に蓄積された全てのユーザ波形データ、及び、全てのプリセット波形データのリスト中から選択した波形データに置き換えたり、波形データを追加削除したりすることにより、ボイスファイル21を編集することもできる。
編集完了時に、選択されたユーザ波形データ又はプリセット波形データのコピーがRAM3に読み出され、新しいボイスファイル21を作成し、ユーザ記憶装置11に蓄積する。ユーザ波形データのコピーに際しては、そのIDもコピーする。
従って、この電子楽器は、ユーザ記憶装置11に蓄積されている任意のユーザ波形データがそのユーザ波形データに付されたIDとともにコピーされたり、任意のプリセット波形データ(ただし、その記録位置を指示するデータ)がコピーされたりした音色ファイルを、ユーザ記憶装置11に蓄積する音色ファイル編集機能を備えている。
電子楽器内部でのユーザ波形データのコピーによって新たに作成されたユーザ波形データは、その波形の中身を解析するまでもなく、コピー元と同一であることは明確であるから、IDについてもそのままコピーする。
本発明の実施の一形態では、音源回路12が素材として使用する波形データを追加する機能を有している。
図2(a)のボイスファイル21、図2(b)のユーザ波形ファイル22は、外部機器9(パーソナルコンピュータ、他の電子楽器、又は、サーバ装置)において作成あるいは蓄積されたものを、ユーザ記憶装置11に追加できるようにする。加えて、図示しないCD-ROM等の可搬型記憶媒体からも、それらの提供を受けて、ユーザ記憶装置11に追加できるようにする。
その結果、ユーザは自由に波形データを追加することができ、電子楽器をユーザの好みに合った多様な音色で演奏できるようになる。
しかし、ユーザ波形データにIDが付されていても、IDは個々の電子楽器において独自に付されているから、IDの比較のみによっては、追加されるユーザ波形データが、既にユーザ記憶装置11に蓄積されたものと同一か否かを正確に判定できる保証はない。
そこで、外部からボイスファイル21又はユーザ波形ファイル22を入力したときは、安全サイドに立って、これらに含まれたユーザ波形データに、既にユーザ記憶装置11に蓄積されているユーザ波形データのIDとは異なるIDを付した上で、このボイスファイル21又はユーザ波形ファイル22をユーザ記憶装置11に追加する。追加入力されるユーザ波形データにIDが付されていたか否かにかかわらない。
その結果、ユーザ波形データとIDとの対応関係がくずれるおそれが回避され、ユーザ波形メモリ14に書き込むユーザ波形データの管理が正確に実行される。以下、具体的に説明する。
図5は、電子楽器の外部からユーザ波形データが入力されたときに起動するフローチャートである。
S61,S62において、入力されたユーザ波形ファイル22に含まれたユーザ波形データ22bにIDが付いていれば、さらに、S63,S65において、入力されたユーザ波形データのIDと同じIDが、ユーザ記憶装置11に蓄積されているユーザ波形データに付いていないときに、S66において、入力されたユーザ波形ファイル22をユーザ記憶装置11に蓄積する。ユーザ波形データのIDは変更されない。
入力されたユーザ波形データに同じIDが付いているときは、S67,S69において、各波形データに固有の新たなID(すなわち、ユーザ記憶装置11に、現在記憶されているユーザ波形データのIDとは異なるID)を作成し、入力されたユーザ波形データのIDを、作成したIDに変更した上で、入力されたユーザ波形ファイルをユーザ記憶装置11に蓄積する。
入力されたユーザ波形データにIDが付いていなければ、S64,S68において、各波形データに固有の新たなIDを作成し、ユーザ波形データに作成したIDを付した上で、入力されたユーザ波形ファイル22をユーザ記憶装置11に蓄積する。
なお、この電子楽器内で統一した基準(例えば、順番に番号を割り当てる)でIDを付す場合には、S63から直ちにS67,S69と処理を進めてもよい。
図6は、電子楽器の外部からボイスファイル21が入力されたときに起動するフローチャートである。ボイスファイル21に含まれている波形データは、いつでもIDが付されているものとして説明する。
S71,S72において、入力されたボイスファイル21にユーザ波形データが含まれていないときは、ボイスファイル21をユーザ記憶装置11に蓄積する。
一方、ユーザ波形データが含まれているときは、S74,S75において、各波形データに固有の新たなIDを作成し、各ユーザ波形データのIDを、作成したIDに変更した上で、このボイスファイル21をユーザ記憶装置11に蓄積する。なお、ボイスファイル21に、複数のユーザ波形データが含まれているときは、各ユーザ波形データにIDを作成し、IDを変更する。
なお、外部機器9から、図2に示したボイスファイル21やユーザ波形ファイル22を入力する際に、RAM3のワークエリアにロードし、必要なときは直ちに、ユーザ波形メモリ14に書き込んで音源回路12で読み出せるようにしてもよい。この場合、RAM3のワークエリアに書き込む際に、このRAM3のワークエリアをユーザ記憶装置11と同等に取扱い、同様に、ユーザ記憶装置11に蓄積されている波形データに付されたIDとは異なるIDを付すようにする。
また、録音された楽音信号、外部から入力された楽音信号を基に、この電子楽器において新たに波形データを作成した場合は、ユーザ記憶装置11に蓄積されている波形データのIDとは異なるIDを付ける。
ここで、ユーザ波形メモリ14に、必要とする記録容量が残っていない場合を説明する。ユーザ波形メモリ14は、演奏が終了しても電源を切るまでは、既に書き込まれているユーザ波形データを自動消去しないで、これを再び利用する場合に備えている。
新たなユーザ波形データを書き込むための記録容量が残っていないことが検出されたときは、新たなユーザ波形データを追加できない旨の警告を表示部7で提示する。ユーザは、ユーザ波形メモリ14に書き込まれているユーザ波形データのリストを表示部7に表示させ、その中から優先度の低いものを選択して消去する。その結果、再度利用される可能性の高いユーザ波形データを残しておくことができる。
上述した波形データ追加機能においては、外部から追加するユーザ波形データに付されたIDと同じIDがユーザ記憶装置11に蓄積されていた場合でも、図5のS67,S69又は図6のS74,S75において、そのIDが付け替えられた上で、ユーザ記憶装置11に追加していた。
これに代えて、電子楽器の製造者あるいは製造者団体によって、同じユーザ波形データには同じIDを付すように統一化した場合など、IDが共通化されている場合は、同じIDがユーザ記憶装置11に蓄積されていたとき、このユーザ波形データをユーザ記憶装置11に保存しないようにしてもよい。
本発明の実施の一形態を説明するためのハードウエア構成図である。 図1のユーザ記憶装置に記憶されているボイスファイル及びユーザ波形ファイルの一例を示すデータ構造図である。 図1のCPUが実行する動作を説明するための第1フローチャートである。 図1のCPUが実行する動作を説明するための第2フローチャートである。 図1のCPUが実行する動作を説明するための第3フローチャートである。 図1のCPUが実行する動作を説明するための第4フローチャートである。
符号の説明
2…CPU、3…RAM、9…外部機器、11…ユーザ記憶装置、12…音源回路、13…ユーザ波形メモリ、14…プリセット波形メモリ

Claims (2)

  1. 音色に対応したボイスファイルに記録された設定データに従って楽音信号を合成し発音する音源回路を備えた電子楽器において、
    前記ボイスファイルは、前記設定データとして、識別コードが付されたユーザ波形データ、及び又は、プリセット波形データの記憶位置を指示するデータと、波形制御用のパラメータ群を記録したものであり、
    複数の前記ボイスファイルと、それぞれに前記識別コードが付された複数のユーザ波形データを蓄積する第1の記憶手段と、
    前記楽音信号を合成する際に前記音源回路が直接的に読み出す前記ユーザ波形データを記憶する第2の記憶手段と、
    前記楽音信号を合成する際に前記音源回路が直接的に読み出す前記プリセット波形データを記憶する第3の記憶手段と、
    音色が指定されたとき、前記第1の記憶手段に蓄積されている、指定された音色に対応するボイスファイルを読み出し、当該ボイスファイルに含まれた前記波形制御用のパラメータ群に従って前記音源回路に設定を加え、かつ、当該ボイスファイルにプリセット波形データの記憶位置を指示するデータがあれば、前記第3の記憶手段における、当該データで指示される記憶位置にあるプリセット波形データを楽音合成で使用するものとして前記音源回路に設定し、かつ、当該ボイスファイルに少なくとも1つのユーザ波形データが含まれている場合、含まれているそれぞれのユーザ波形データについて、
    当該ボイスファイルに含まれている当該ユーザ波形データの識別コードと同じ識別コードが、前記第2の記憶手段に書き込まれているユーザ波形データに付いていれば、当該識別コードが付いている前記第2の記憶手段に書き込まれているユーザ波形データを楽音合成で使用するものとして前記音源回路に設定し、
    当該ボイスファイルに含まれている当該ユーザ波形データの識別コードと同じ識別コードが、前記第2の記憶手段に書き込まれているユーザ波形データに付いていないときに限り、当該ボイスファイルに含まれている該ユーザ波形データを前記第2の記憶手段に書き込み、書き込んだユーザ波形データを楽音合成で使用するものとして前記音源回路に設定する音色設定手段と、
    前記第1の記憶手段に蓄積されている任意のボイスファイルに含まれているユーザ波形データを、当該ユーザ波形データに付された識別コードとともにコピーして新たな音色のボイスファイルを作成し、前記第1の記憶手段に蓄積するボイスファイル作成手段と、
    外部機器あるいは可搬型記録媒体から前記ユーザ波形データを入力し、入力したユーザ波形データに、前記第1の記憶手段に蓄積されたユーザ波形データの識別コードとは異なる識別コードを付した上で、前記入力したユーザ波形データを前記第1の記憶手段に追加する波形データ追加手段、
    を有することを特徴とする電子楽器。
  2. 前記第2の記憶手段は、当該ボイスファイルに含まれている該ユーザ波形データに加えて、当該ユーザ波形データに付された識別コードを記憶するものであり、
    前記音色設定手段は、当該ボイスファイルに含まれている該ユーザ波形データを前記第2の記憶手段に書き込む際に、当該ユーザ波形データの識別コードを前記第2の記憶手段に書き込む、
    ことを特徴とする請求項1に記載の電子楽器。
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