JP4333133B2 - 帯電部材及び転写ロール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真複写機、プリンター、ファクシミリ、これらの複合OA機器等の電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置における帯電部材や転写ロールに関する。より詳しくは、被帯電体表面に押圧させて前記被帯電体を帯電させる帯電部材及び転写ロールに関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置では、静電潜像形成のため、露光前に感光体や誘電体等の静電潜像担持体(被帯電体)表面を帯電処理することが行われている。当該帯電処理を行なう方法としては、タングステンワイヤーに高電圧を印加して発生するコロナ放電により帯電を行なう非接触帯電方式が広く採用されている。しかし、この非接触帯電方式では、高電圧印加による大気中での放電により多量のオゾンが発生し、画像形成装置周辺の環境汚染を引き起こしていた。
【0003】
上記非接触帯電方式に対し、帯電部材を静電潜像担持体に接触させて帯電処理を行なう接触式帯電方法(例えば、特許文献1参照)がある。この接触帯電方式では、帯電部材に印加する電圧が低く、オゾンの発生量が非常に少ないという利点があり、近時、採用が進められている。
【0004】
しかしながら、従来の放電を利用した接触による帯電方法では、パッシェンの法則に従うため、静電潜像担持体表面に対し、放電開始電圧と所望する帯電電位とを加えた直流電流を印加する必要があり、帯電効率が極めて悪いという問題がある。また、使用環境によっては温湿度の影響を受けて帯電部材の抵抗が変化し、結果的に画像濃度が変動するという問題がある。
【0005】
このような不均一な帯電を改善する目的で、印加する直流電圧成分に交流電圧成分を重畳する方法(例えば、特許文献2参照)も提案されているが、十分に解決されるわけではない。しかも、これらの接触帯電方式は非接触帯電方法に比べ、大幅にオゾン発生量を低減できるものの、完全に抑えることはできないため、環境への問題は残る。さらに、放電により発生した窒素酸化物が静電潜像担持体を汚染し、画質欠陥を引き起こすという問題もある。
【0006】
一方、磁気ブラシやロール状の帯電部材等を使用し、さらに電荷注入層を備えた静電潜像担持体との組み合わせで注入帯電を行ない、帯電効率を向上させたり、オゾンによる環境汚染を防止させようという試みがある(例えば、特許文献3〜5参照)。しかしながら、上記のような注入帯電方法では、帯電部材と静電潜像担持体との接触が十分でないため、帯電効率の向上に限界があり、特に、高速で回転する静電潜像担持体を帯電させる時に、帯電効率の低下が顕著に観察される。
【0007】
また、スポンジに水を含浸させた帯電部材を使った提案(例えば、特許文献6、7参照)がなされているが、上記方法では、スポンジ中の含浸水を直接静電潜像担持体に接触させるため、静電潜像担持体表面への水の供給量が制御しづらく、信頼性と性能維持性に欠けるという問題がある。
【0008】
【特許文献1】
特開昭54−150131号公報
【特許文献2】
特開昭63−149668号公報
【特許文献3】
特開昭59−133569号公報
【特許文献4】
特開平6−3921号公報
【特許文献5】
特開平8−69165号公報
【特許文献6】
特開平7−140729号公報
【特許文献7】
特開平8−62932号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、所望の性能および信頼性を有し、上述したような問題を解決するための帯電部材及び転写ロールを提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、
【0015】
<1> 被帯電体表面に押圧させて前記被帯電体を帯電させる帯電部材において、 該帯電部材が、導電性支持体の表面に導電性弾性体層と表面層をこの順に設けた半導電性部材であり、前記表面層が、網目状高分子にイオン性液体が保持されたものであることを特徴とする帯電部材である。
<2> 前記イオン性液体が、エチルメチルイミダゾリウム塩であることを特徴とする<1>に記載の帯電部材である。
【0016】
<3> 像担持体に形成されたトナー像を、転写媒体に転写する転写ロールにおいて、該転写ロールが、導電性支持体の表面に導電性弾性体層と表面層をこの順に設けた半導電性部材であり、前記表面層が、網目状高分子にイオン性液体が保持されたものであることを特徴とする転写ロールである。
<4> 前記イオン性液体が、エチルメチルイミダゾリウム塩であることを特徴とする<3>に記載の転写ロールである。
【0017】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明の帯電部材及び転写ロールに係る半導電性部材について説明する。
−半導電性部材−
前記半導電性部材は、導電性支持体の表面に導電性弾性体層と表面層をこの順に設けたものであり、前記表面層が、網目状高分子にイオン性液体が保持されたものであることを特徴とする。本発明に係る半導電性部材は、電子写真方式の画像形成装置において、帯電部材及び転写ロールに用いられ、その形態は、ロール状、プレート状、ブロック状、球状、ブラシ状等、必要に応じて種々の形状とすることができるが、通常は、ロール状とすることが好ましい。
【0018】
また、本発明に用いられるイオン性液体は表面層に含まれるが、半導電性部材の全体に含まれていてもよい。特に帯電部材や、転写ロールのように、表面の電気的特性が所定の値に制御されることが要求されるような半導電性部材である場合には、少なくとも表面近傍に含まれていることが好ましい。
【0019】
また、本発明に用いられるイオン性液体は、イオン性液体としての一般的な物性、即ち、−100℃〜200℃程度の広い温度領域で液体状態である、イオン伝導性が高い、不揮発性である、引火性・可燃性が無い、高い熱安定性を持つ等(例えば、科学、Vol.56、No5(2001)、化学と工業、第54巻、第3号(2001)等)を有するものであれば如何なるものでも用いることができる。
【0020】
しかしながら、本発明においては、電子写真方式の画像形成装置が一般的に使用される温度領域、即ち、少なくとも10〜30℃の温度範囲内において液体状態であるイオン性液体であることが好ましい。イオン性液体が、10〜30℃の温度範囲内で液体状態が保てない場合には、半導電性部材として求められる十分な電気的特性が得られない場合がある。なお、イオン性液体が液体状態を保持する温度域は、0〜40℃の範囲内であることがより好ましい。
【0021】
また、半導電性部材が、−10〜50℃程度の温度変化に曝された場合において、半導電性部材としての機能の低下や、耐久性の低下等を引き起こさないようなイオン性液体であることが好ましい。半導電性部材が−10〜50℃程度の温度範囲内での温度変化に曝されることにより、機能の低下や、耐久性の低下等が起こるような場合には、半導電性部材や、これを用いた画像形成装置を、一般的に想定されるような環境下で保管したり輸送したりすることが困難になる場合がある。
【0022】
また、イオン性液体のイオン伝導特性は特に限定されるものではないが、10〜30℃の温度範囲内において、1.0×10-9S/cm以上であることが好ましく、1.0×10-5S/cm以上であることがより好ましい。
【0023】
本発明に用いられるイオン性液体の具体的な組成としては、一般的なイオン性液体としての物性を備えているものであれば特に限定されず、上記したようにイオン性液体が液体状態を保持できる温度や、イオン伝導特性等の物性が電子写真方式により適したものであることが好ましいが、具体的には、対を成すプラスイオンおよびマイナスイオンの少なくともいずれか一方が、通常の融点が数百度程度の無機塩を構成するイオンよりも分子サイズの大きいイオンであればよいが、両者共に分子サイズの大きいイオンからなることが好ましい。また、このような分子サイズの大きいイオンとしては、Al2Cl7 -等の金属イオンを含むようなものも用いることもできるが、一般的には多様な選択が可能な有機イオンを用いることが好適であり、有機カチオン(オニウム塩)や有機酸アニオンなどを用いることができる。さらに、少なくとも一方のイオンが十分に大きいサイズを持つ有機イオンである場合には、もう一方のイオンとしては硝酸イオンや塩素イオン等、通常の無機塩を構成する分子サイズの小さいイオンを用いることもできる。
【0024】
有機カチオニウム塩としてはアンモニウム塩、イミダゾリウム誘導体、ピリジニウム、ホスホニウムなどが挙げられ、有機酸アニオンとしてはBF4−、PF6−、CF3SO3−(Tf:トリフラート)、(CF3SO2)2N−(TFSI)などが挙げられる。その中でも、エチルメチルイミダゾリウム(EMI)やブチルメチルイミダゾリウム(BMI)の塩が好適に用いられる。またこれの組み合わせの中では、−16℃から400℃まで安定な液体状態を示すEMITFSIが特に好適に使用される。
また、本発明においては、これら以外にもイオン性液体に溶解する成分を含むイオン性物質を用いてもよい。
【0025】
前記半導電性部材に含まれるイオン性液体は、網目状高分子(3次元的に架橋重合した重合体)に保持されている。イオン性液体が網目状高分子により保持されない場合には、イオン性液体を構成する個々の分子(イオン)が、半導電性部材の外部へと流出したり、半導電性部材の所望の部位(例えば、表面近傍など)に安定して保持できなくなる場合がある。
【0027】
なお、網目状高分子にイオン性液体を保持させるには公知の方法を用いて容易に形成することができ、また、イオン性液体を保持する網目状高分子マトリックス中には、必要に応じて種々の物質を添加してもよい。
【0028】
なお、本発明の半導電性部材の抵抗値は、一般的な半導電性の領域(2.0×102〜1.0×1012Ω・cm程度の範囲内)であれば特に限定されず、用途に応じて調整することができ、例えば、帯電部材として用いる場合には1.0×103〜1.0×108Ω・cmの範囲内であることが好ましく、転写ロールとして用いる場合には1.0×104〜1.0×1010Ω・cmの範囲内であることが好ましい。
また、半導電性部材に含まれるイオン性液体の含有量は特に限定されず、所望する抵抗値と、用いるイオン性液体のイオン伝導性とを考慮して決定することができる。
【0029】
−帯電部材−
次に、電子写真方式の画像形成装置に用いる帯電部材について詳細に説明する。
【0030】
図1に、本発明の帯電ロールの外観、図2及び図3に帯電ロールの断面の例を示す。図2に示す帯電ロールでは、中実の円柱状または中空円筒状の導電性支持体1aの表面に、導電性弾性体層1bが形成され、さらに該導電性弾性体層1b表面に表面層1dが形成される。また、図3に示す帯電ロールのように、導電性弾性層1bの表面に抵抗調整層1cを形成し、その表面に表面層1dを設けてもよい。
【0031】
導電性支持体1aは、帯電部材の電極及び支持部材として機能するもので、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金;クロム、ニッケル等で鍍金処理を施した鉄;導電性の樹脂;などの導電性の材質で構成される。
【0032】
導電性弾性体層1bは、帯電部材が適切なニップ圧で被帯電体表面に押圧され、被帯電体表面を均一に帯電できるよう、被帯電体との間にニップを形成し、さらに帯電部材を所定の抵抗値とするために設けられる。
【0033】
この導電性弾性体層1bは、例えばゴム材中に導電剤を分散させることによって形成される。ゴム材としては、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシド共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、天然ゴム等、及びこれらのブレンドゴムが挙げられる。中でも、イソプレンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴムが好ましく用いられる。これらのゴム材は発泡したものであっても無発泡のものであってもよい。
【0034】
導電剤としては、電子導電剤やイオン導電剤が用いられる。電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック;熱分解カーボン、グラファイト;アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼等の各種導電性金属または合金;酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化スズ−酸化アンチモン固溶体、酸化スズ−酸化インジウム固溶体等の各種導電性金属酸化物;絶縁物質の表面を導電化処理したもの;などの微粉末を挙げることができる。また、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩等;リチウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩等;を挙げることができる。
【0035】
これらの導電剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その添加量は特に制限はないが、上記電子導電剤の場合は、ゴム材100質量部に対して、1〜50質量部の範囲であることが好ましく、5〜35質量部の範囲であることがより好ましい。一方、上記イオン導電剤の場合は、ゴム材100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲であることが好ましく、0.1〜4質量部の範囲であることがより好ましい。
これにより、導電性弾性層1bの体積抵抗値を2×102〜5×109Ωcmの範囲に調整することが好ましい。この体積抵抗値は、後述する抵抗調整層1cの体積抵抗値と密接に関連する。
また、前記導電性弾性層1bの硬度は、アスカーC硬度で70°以下であることが好ましい。
【0036】
本発明においては、上記導電性弾性層1bの表面に直接表面層1dを形成してもよいが、帯電部材の抵抗調整のために抵抗調整層1cが、さらに被帯電体表面の汚染防止等の観点から保護層が設けられる場合は、抵抗調整層1cあるいは保護層の表面に表面層1dを形成してもよい。但し、表面層1dが保護層を兼ねることもできる。また、必要に応じて、導電性弾性層1bと抵抗調整層1cとの間に電極層を設けてもよい。
なお、上記電極層とは、導電性弾性体層1b中の導電性粒子の不均一分散による電流の集中を分散させるために設けられるものであり、導電性無機物質のみから構成される。
【0037】
抵抗調整層1cは、帯電部材を所定の抵抗値に調整するために設けられるものであり、樹脂中に前記した導電性粒子を分散させた薄膜から構成される。用いられる樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、アクリル樹脂等の多少柔らかい部類に属する樹脂が好適である。また、導電剤としては、前記導電性弾性層1bに用いたものが好ましく用いられる。
【0038】
上記導電剤の添加量は特に制限はないが、例えば電子導電剤の場合は、用いられる樹脂100質量部に対し、1〜50質量部の範囲であることが好ましく、5〜35質量部の範囲であることがより好ましい。
こうして抵抗調整層1cの体積抵抗値は3×103〜5×1010Ωcmの範囲に調整されることが好ましい。また、抵抗調整層の膜厚は、1〜500μmの範囲、さらには、5〜400μmの範囲にあることが好ましい。膜厚が1μmより薄くなると、抵抗調整層としての機能を十分に発揮することができないだけでなく、リークが発生しやすくなり被帯電体表面を損傷する場合がある。一方、膜厚が500μmより厚いと、帯電部材の抵抗値及び硬度が必要以上に上昇する場合がある。
【0039】
本発明においては、抵抗調整層1cの表面にさらに保護層を設けることができる。この保護層は、帯電部材が被帯電体表面に固着するのを防止するための層として機能する。さらに、被帯電体表面に残留したトナー及びその外添剤による帯電部材の汚染や、被帯電体表面への紙粉等の付着や固着を防止して、帯電性能の低下やそれに起因する画質欠陥の発生を防止するために設けられる。
【0040】
上記保護層を構成する材料は、特に制限されるものではなく、被帯電体に対する汚染性が少なく、比較的柔軟である樹脂やゴム等を用いることができる。また、抵抗調整層1cの表面にUV照射、熱処理、カップリング剤等による化学処理を施す等により、抵抗調整層1cと物性、組成が異なる層を形成し保護層としてもよい。
【0041】
以上に説明したような構成からなる帯電ロールにおいて、イオン性液体は、表面層に含まれている。表面層がイオン性液体を含み、これにより表面層を形成する塗膜表面のイオン密度が大きくなることにより、電荷注入点と注入電荷量が増大し、帯電均一性と注入帯電効率とが向上する。
【0042】
また、イオン性液体を帯電部材表面に保持させるには、イオン性液体中に網目状高分子膜を形成することのできるモノマーを加えたコーティング液を、弾性体上などにコートし、その後に重合すればよい。この場合の網目状高分子の重合に用いるモノマーとしては、ビニルモノマーとジビニルモノマー、及び、メタクルル酸メチルとエチレングリコールジメタクリラートなどが挙げられる。
また、上記コーティング液には、カーボンブラック、金属酸化物などの導電剤や界面活性剤、カップリング剤の分散剤などを添加することもできる。
【0043】
コーティング方法としては、スプレー法、ディッピング法、スピンコート法、など通常のコーティング方法を用いることができる。なお、上記コーティングの前に、密着性向上のためのプライマー層を形成させても良い。加熱乾燥後の表面層の層厚は、1〜50μmの範囲であることが好ましい。
【0044】
以上のようにして作製した帯電部材の硬度は、アスカーC硬度で70°以下であることが好ましい。アスカーC硬度が70°より高くなると、被帯電体とのニップ均一性が損なわれ、画質欠陥が発生するようになるだけでなく、長期間の使用により例えば被帯電体表面が次第に摩耗する場合がある。
なお、アスカーC硬度の測定は、帯電部材の表面にアスカーC型硬度計(高分子計器社製)の押針を当接し、1000g荷重の条件で行った。
【0045】
また、上記帯電部材の抵抗値は、2×104〜5×1010Ωの範囲であることが好ましい。これは、前述した導電性弾性体層の体積抵抗値と抵抗調整層の体積抵抗値、および膜厚とを適宜調整することによって、上記範囲内に調整すること可能である。抵抗値が2×104Ω未満であると、被帯電体表面に過剰電流が流れ、被帯電体表面にピンホールリークが発生しやすい場合がある。一方、抵抗値が5×1010Ωより大きくなると、低電圧での被帯電体への帯電が困難となり、帯電電位の不足により画質欠陥が生じるようになる。
【0046】
なお、既述の体積抵抗値の測定は、各種組成物をシート状とし、測定治具(R12702A/Bレジスティビティ・チェンバ:アドバンテスト社製)と高抵抗測定器(R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計:アドバンテスト社製)とを用い、電場(印加電圧/組成物シート厚)が1000V/cmになるよう調節した電圧を30秒印加後の電流値より、下記式(1)を用いて算出した。
体積抵抗率(Ω・cm)=(19.63×印加電圧(V))/(電流値(A)×組成物シート厚(cm)) ・・・ 式(1)
【0047】
また、抵抗値は、例えば帯電部材が帯電ロールである場合、金属板上にロールを置き、ロールの両端部に500gずつ荷重し、高抵抗測定器(R8340Aデジタル高抵抗/微小電流計:アドバンテスト社製)を用いて、ロールの芯金と金属板との間に100Vの電圧を10秒印加後、得られた電流値を測定しロール抵抗値を求めた。
【0048】
次に、転写ロールについて簡潔に説明すれば、転写ロールの表面にイオン性液体が含まれ、その他については、従来の転写ロールと同様とすることができる。また、転写ロールが図2に示すような断面構成を有する場合には、表面層1dにイオン性液体が含まれる。
【0049】
−画像形成装置−
次に、以上に説明したような、表面にイオン性液体を含む帯電ロールを用いた画像形成装置について説明する。
図4は、前記半導電性部材が帯電ロールとして組み込まれた画像形成装置の全体断面図である。図4において、画像形成装置本体Uの内部には、矢印方向に回転する円筒状の感光体ドラム(被帯電体)11が配置されていて、静電潜像担持体として機能する。画像形成装置本体Uの内部の図面右側部には、感光体ドラム11表面に静電潜像を書き込むレーザ書き込み装置12が配置されている。円筒状の感光体ドラム11の周囲には、その回転方向に沿って、順次感光体ドラム11表面を一様に帯電する帯電器(帯電装置)13、上記静電潜像を顕像化する現像器14、顕像化されたトナー画像を用紙(転写材)に転写させる転写器15、および感光体ドラム11表面の残留トナーを除去するクリーニング装置16が、それぞれ配置されている。
【0050】
前記現像器14は、トナーを収納する容器14aを備えている。この容器14a内には、トナーを攪拌する攪拌部材14bと、回転可能な現像剤担持体14cと、該現像剤担持体14cにトナーを供給するトナー供給ローラ14dとが設けられている。現像剤担持体14cは、感光体ドラム11表面と僅かな間隙を介して容器14aに支持されている。また、前記クリーニング装置16はケーシング16aを備えている。このケーシング16aには金属製のブレードホルダー16bが固定されていて、その先端部にはシート状のクリーニングブレード16cが固定されている。クリーニングブレード16cはその先端のエッジ部が感光体ドラム11表面に当接している。
【0051】
画像形成装置U本体の図面下部には、用紙を収容する給紙トレイ17が配置されている。給紙トレイ17の上面端部には、給紙トレイ17から用紙を一枚ずつ取り出す用紙取り出しローラ18が配置されている。用紙取り出しローラ18の左側部上方には、一対の用紙搬送ローラ19によって搬送される用紙をガイドする一対の用紙ガイド20が配置されている。画像形成装置本体Uの内部の図面左側上部には、加熱ローラ21a及び加圧ローラ21bを有する定着装置21が配置されていて、当該定着装置21と前記転写器15との間には、トナー画像が転写された用紙を搬送する搬送路22が設けられている。また、定着装置21の上方には、一対の排出ローラ23と、トナー画像が定着された用紙を定着装置21から排出ローラ23までガイドする搬送路24が設けられている。そして、画像形成装置U本体の図面上部には上記排出ローラ23から排出される用紙を載置する排出トレイ25が形成されている。
【0052】
上記画像形成装置Uの画像形成プロセスを簡単に説明すると、以下の通りである。
まず、直流電圧が印加された帯電ロール1によって、矢印方向に回転する感光体ドラム11は、その表面が一様に注入帯電される。帯電された感光体ドラム11はレーザ書き込み装置12により静電潜像が書き込まれる。感光体ドラム11表面の静電潜像は、現像器14によりトナー画像に現像される。そして、トナー画像は転写器15により給紙トレイ17から搬送されてくる用紙に転写される。転写されたトナー画像が定着装置21により用紙に定着された後、該用紙は排出ローラ23により排出トレイ25上に排出される。また、上記トナー画像が用紙に転写された後、感光体ドラム11表面に残留していたトナーはクリーニング装置のブレード16cにより除去され、次の画像形成プロセスに備える。
【0053】
−帯電装置、帯電方法−
図5は、図4中の前記帯電器(帯電装置)13の拡大図である。図5において、帯電器13は前記帯電ロール1を備えている。当該帯電ロール1は、導電性支持体1aの表面に導電性弾性体層1b、抵抗調整層1c及びイオン性液体を含有する表面層1dが順次積層された構造となっている。
【0054】
帯電ロール1は、その導電性支持体1aの両端部が、クリーニング装置16の前記ケーシング16aに固定された支持部材31により支承されている。また、一端が支持部材31に、他端が導電性支持体1aの端部にそれぞれ固定された、2つの加圧スプリング32の付勢力によって、帯電ロール1は感光体ドラム11表面に押圧され接触している。
【0055】
さらに、帯電ロール1の導電性支持体1aには、直流電源35から直流電圧が印加される。したがって、帯電ロール1は、導電性支持体1a、導電性弾性体層1b、抵抗調整層1c、イオン性液体を含有する表面層1d、さらにその表面に均一に形成された水の薄層によって、接触しながら所定の方向に回転する感光体ドラム11表面を一様に注入帯電処理することができる。
【0056】
【実施例】
以下、本発明の帯電ロールについて具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0057】
<実施例1>
(弾性層の調合と作成)
Φ6mmのSUSシャフトに導電性シリコーンゴム(東レダウコーニング社製:X−34−2048AB)を厚さ3mmになるよう射出成形し、体積抵抗5×103Ωcm、ASKER−C硬度55度、Φ12mmの弾性ローラを得た。
【0058】
(抵抗層の調合と作成)
下記組成物をボールミルで混合して樹脂中にカーボンブラックが均一に分散した分散液を調整した。得られた分散液を上記弾性ローラにディップ塗布した後、加熱・乾燥して、ポリウレタン膜で構成された膜厚20μmの抵抗調整層を形成した。
・一液型ウレタン樹脂(DF−407:大日本インキ化学工業社製):100重量部
・カーボンブラック(Regal 660R:Cabot社製):5重量部
・2−ブタノン:100重量部
【0059】
(表面層の調合と作製)
下記組成物を混合して塗布液を作製した。
・EMITFSI:30重量部
・ビニルモノマー:10重量部
・ジビニルモノマー:10重量部
得られた溶液を上記ローラにディップ塗布した後、その場重合して、膜厚10μmの表面層を形成し、帯電ロールAを作製した。
【0060】
−帯電電位評価試験−
上記帯電ロールAを、画像形成装置(Able3221:富士ゼロックス社製)における帯電器に含水パッドを押し当てた状態で装着し、さらに、感光体表面の電位が測定できるように前記画像形成装置の改造を行った。−420Vの直流電圧を帯電ロールの導電性支持体に印加し、当該帯電ロールと接触する外径30mmの感光体表面に電荷を注入し、上記画像形成装置を作動させ、現像剤担持体の位置で感光体表面の電位を連続して測定した。この時の、感光体一周分の電位の平均値、一周中の最大電位と最低電位との差(電位ばらつき)を表1に示す。
【0061】
−画質評価試験−
前記帯電電位評価試験に用いたものと同一の画像形成装置に、通常の現像器を装てんし、ハーフトーン画像を出力し、濃度ムラを確認した。なお、濃度ムラの判断は以下の基準により行った。
・全くムラがないレベル ・・・ ○
・わずかにムラがあるが、品質上問題ないレベル ・・・ △
・品質上問題となるムラのレベル ・・・ ×
結果を表1に示す。
【0062】
<実施例2>
実施例1の表面層の調合と作製において、EMITFSIの代わりにEMITfに変更した以外は実施例1と同等な操作を行ない、帯電ロールBを作成した。
【0063】
<実施例3>
実施例1の表面層の調合と作製において、EMITFSIの代わりにBMITFSIに変更した以外は実施例1と同等な操作を行ない、帯電ロールCを作成した。
【0064】
<実施例4>
実施例1の表面層の調合と作製において、ビニルモノマーの代わりにメタクリル酸メチル、ジビニルモノマーの代わりにエチレングリコールジメタクリレートに変更した以外は実施例1と同等な操作を行ない、帯電ロールDを作成した。
【0065】
<比較例1>
下記組成物を混合して塗布液を作製した。
・一液型ウレタン樹脂(DF−407:大日本インキ化学工業社製):100重量部
・トリメチルオクタデシルアンモニウム:5重量部
・2−ブタノン:100重量部
得られた溶液を実施例1記載の弾性ロール上にディップ塗布した後、加熱・乾燥して膜厚10μmの表面層を形成し、帯電ロールをE作製した。
【0066】
<比較例2>
下記組成物を混合して塗布液を作製した。
・一液型ウレタン樹脂(DF−407:大日本インキ化学工業社製):100重量部
・ジアミノウンデシルイミダゾリルエチルトリアジン:5重量部
・2−ブタノン:100重量部
得られた溶液を実施例1記載の弾性ロール上にディップ塗布した後、乾燥、架橋して膜厚10μmの表面層を形成し、帯電ロールをF作製した。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示す結果からわかるように、本発明の帯電ロールを用いた場合には、帯電電位が安定している。これは、実施例で用いたイオン性液体が水に不溶である為、帯電部材の電気抵抗が使用環境に依存しないためである。
また、カーボンブラックや4級アンモニウム塩などをバインダーポリマーなどに分散した帯電部材と比べて、帯電ロールとして前記半導電性部材を用いた場合には、電流集中が起こらず、リークに強い。これは、実施例で用いたイオン性液体が100%イオン材料からなる為である。
【0069】
このように、本発明の帯電ロールを用いた場合には、高効率で、かつ、均一な帯電を行なうことが可能であり、有害なオゾンの発生と画質欠陥を引き起こす窒素酸化物の発生を防止でき、しかも、信頼性の高い帯電部材、帯電装置及び帯電方法を提供することが可能となる。
【0070】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の帯電部材及び転写ロールは、所望の性能および信頼性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 帯電ロール(帯電部材)の外観図
【図2】 帯電ロール(帯電部材)の断面図
【図3】 他の帯電ロール(帯電部材)の断面図
【図4】 画像形成装置の断面図
【図5】 帯電器(帯電装置)の拡大図
【符号の説明】
1 帯電ロール(帯電部材)
11 感光体ドラム(被帯電体)
12 レーザ書込装置
13 帯電器(帯電装置)
14 現像器
15 転写器
16 クリーニング装置
17 給紙トレイ
18 用紙取出ロール
19 用紙搬送ロール
20 用紙ガイド
21 定着装置
22、24 搬送路
23 排出ロール
25 排出トレイ
Claims (4)
- 被帯電体表面に押圧させて前記被帯電体を帯電させる帯電部材において、
該帯電部材が、導電性支持体の表面に導電性弾性体層と表面層をこの順に設けた半導電性部材であり、前記表面層が、網目状高分子にイオン性液体が保持されたものであることを特徴とする帯電部材。 - 前記イオン性液体が、エチルメチルイミダゾリウム塩であることを特徴とする請求項1に記載の帯電部材。
- 像担持体に形成されたトナー像を、転写媒体に転写する転写ロールにおいて、
該転写ロールが、導電性支持体の表面に導電性弾性体層と表面層をこの順に設けた半導電性部材であり、前記表面層が、網目状高分子にイオン性液体が保持されたものであることを特徴とする転写ロール。 - 前記イオン性液体が、エチルメチルイミダゾリウム塩であることを特徴とする請求項3に記載の転写ロール。
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