JP4332951B2 - 低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸との混合ガスの製造方法、及び該混合ガスを用いた低級脂肪族エステルの製造方法 - Google Patents

低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸との混合ガスの製造方法、及び該混合ガスを用いた低級脂肪族エステルの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は低級脂肪族カルボン酸を低温で気化し効率的に低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸との混合ガスを得る方法に関する。本方法による混合ガスは、特に気相にて低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とから酸性触媒の存在下、対応する低級脂肪族エステルを得ることを特徴とする低級脂肪族エステルの製造方法において有効であり、エネルギーコストに優れた低級脂肪族エステルの製造方法を提供することが出来る。
【0002】
【従来の技術】
従来から、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とをヘテロポリ酸等の酸性触媒の存在下に気相で反応させて対応する低級脂肪族エステルを得る方法が知られている。その具体例としては、例えば、特開平4−139149号公報、特開平5−170699号公報、特開平5−294894号公報、特開平9−118647号公報等を挙げることができる。これらの製法は、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とを気相で、酸性触媒上に流通させて反応させる方法である。
【0003】
中でも特開平5−294894号公報、及び特開平9−118647号公報記載の触媒では、触媒活性を高めるために触媒有効成分であるヘテロポリ酸及び/又はヘテロポリ酸塩を多孔質物質に担持する、いわゆる担持型触媒を提案している。しかし、一般にヘテロポリ酸のような酸触媒を固体触媒に担持した担持型触媒を用いた気相反応においては、反応基質が液滴状のいわゆるミスト状態で固体触媒に接した場合、担体から触媒成分が流出してしまう恐れがある。その結果、短時間のうちに触媒の失活を招いたり、生成物に触媒成分が混入し予想し得ない副反応を起こすなどの危険が存在する。
【0004】
これらの危険を避け、かつ長期に安定的に反応を行うには、該触媒での反応では常温で液体状の原料化合物は確実に気体状にして用いる必要がある。気相にて低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とから酸性触媒の存在下、対応する低級脂肪族エステルを得ることを特徴とする低級脂肪族エステルの製造方法においても同様である。
【0005】
一方、当該反応においては、低級オレフィンを過剰に用いたほうが低級脂肪族カルボン酸の転化率において有利なので、通常低級オレフィンのほうを過剰に用いることが一般的である。従って、工業的には過剰に用いた低級オレフィンをリサイクルして使用することが必須である。
【0006】
また、当該反応における圧力は、より高いほうが付加反応上有利になるので、この点からは出来るだけ高圧のほうがいい。この場合、前述の低級オレフィンのリサイクル系を含めて、反応系全体の圧力を高圧に維持したまま行うプロセス(以下、「加圧反応プロセス」と略。)を採用することが好ましいことは容易に考えられる。
【0007】
すでに述べたように、触媒からの有効成分の流出の危険を避けるためには反応系に導入する低級脂肪族カルボン酸を気体状にする必要である。しかし、加圧反応プロセスでは系内の圧力と少なくとも同等かそれ以上の圧力を持った気体状の低級脂肪族カルボン酸を発生させねばならない。
【0008】
だが、一般に低級脂肪族カルボン酸の蒸発熱は大きく、完全に気体にするには相当のエネルギーを要する。さらに高圧下においては、低級脂肪族カルボン酸の気化に要する蒸発熱はより大きく、この点において多量のエネルギーを要する問題点が加圧反応プロセスには存在する。
【0009】
また、当該反応における低級脂肪族カルボン酸においても、如何に大過剰の低級オレフィンを用いても、その転化率を100%にすることは困難である。従って、通常は未反応低級脂肪族カルボン酸もリサイクルするプロセスを構築する。
【0010】
だが、上記未反応低級脂肪族カルボン酸には、好ましくない副生成物が含まれている場合が多い。これらの副生成物の具体例としては、例えば、低級オレフィン由来の炭化水素化合物や、更にその炭化水素化合物と低級脂肪族カルボン酸が反応したカルボン酸エステル類を挙げることができる。
【0011】
このような副生成物は、高温下で一般に不安定であり、加圧反応プロセスに必要な高圧の気体状の低級脂肪族カルボン酸を得るために気化器の温度を高温にすると、この熱により分解して気化器のファウリングを起こす原因になる恐れがある。さらに原料である低級カルボン酸がギ酸、酢酸のように腐食性を有する場合は高圧、高温下ではその腐食性が増大するため、気化器の腐食が問題となる。
【0012】
また、低級脂肪族カルボン酸がアクリル酸やメタクリル酸のような重合性を有する物である場合には、それ自身が高温に晒されること自体が好ましくないという問題点がある。
【0013】
以上のように、気相にて低級オレフィンと低級カルボン酸とから酸性触媒の存在下、対応する低級脂肪エステルを得ることを特徴とする低級脂肪族エステルの製造方法においては、反応基質が液滴状のいわゆるミスト状態で固体触媒に接した場合に生ずる、担体からの触媒成分の流出に伴う触媒の失活や、生成物に触媒成分が混入した結果発生する、予想し得ない副反応に起因する反応成績の低下など問題点が考えられる。
【0014】
これらの危険を避け、かつ長期に安定的に反応を行うには、該触媒での反応では常温で液体状の原料化合物、すなわち低級脂肪族カルボン酸は確実に気体状にして用いる必要がある。そのために低級脂肪族カルボン酸の気化器の温度を高くすることはエネルギーコスト的な点はもとより、循環した低級脂肪族カルボン酸中の不純物由来の副反応あるいは、反応性の高い低級脂肪族カルボン酸それ自体の安定性からいっても好ましくない。
【0015】
しかしながら、従来の技術においてこれらの問題点について検討した記述はない。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、一般に沸点が高く且つ蒸発熱が大きいために気化することが困難な低級脂肪族カルボン酸を比較的低温で気化することにより、効率的に低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸との混合ガスを得る方法の提供を目的とするものである。
【0017】
さらに、ヘテロポリ酸等の酸性触媒の存在下に気相にて低級オレフィンと低級カルボン酸とから酸性触媒の存在下、対応する低級脂肪エステルを得ることを特徴とする低級脂肪族エステルの製造方法において、特にエネルギーコストに優れた低級脂肪族エステルの製造方法の提供を目的とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために、特に低級オレフィンと低級カルボン酸とから酸性触媒の存在下、気相にて低級脂肪族エステルを得ることを特徴とする低級脂肪族エステルの製造方法における低級脂肪族カルボン酸の効率的な気化方法、ひいては効率的な低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸との混合ガスを得る方法について鋭意研究を行った。
【0019】
その結果、低級脂肪族カルボン酸を昇圧して低級オレフィンと混合した後に加熱して気化することにより、低級脂肪族カルボン酸を気化できる温度を大幅に低下でき、よって効率的に低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸との混合ガスを得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち本発明(I)は、0.2MPa〜2MPaの圧力で低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とを混合した後に加熱して50℃〜250℃で気化することを特徴とする、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸との混合ガスの製造方法であって、低級オレフィンがエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、iso−ブテン、又はブタジエンからなる群の少なくとも一種から選ばれ、低級脂肪族カルボン酸がギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、iso−酪酸、アクリル酸、又はメタクリル酸からなる群の少なくとも一種から選ばれることを特徴とする混合ガスの製造方法である
【0021】
また、本発明(II)は、本発明(I)により低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸との混合ガスを得た後、当該混合ガスを、気相で酸点を含んだ固体触媒上を流通させ反応させることを特徴とする低級脂肪族エステルの製造方法である。
【0022】
本発明に原料として用いる低級オレフィンおよび低級カルボン酸は、反応系または精製系よりリサイクルされたものでもフレッシュのものでも構わない。
【0023】
低級カルボン酸を単体気化した後に加圧反応プロセスにフィードする場合、反応系の圧力と同等かそれ以上の圧力下での低級カルボン酸の沸点以上の温度で蒸発器を運転する必要がある。これに対し本発明(I)を利用した場合にはあらかじめガス状でフィードされる低級オレフィンと混合することにより、反応系の全圧に対してフィード組成として要求される低級カルボン酸の分圧と、低級カルボン酸の蒸気圧が等しくなる温度で蒸発器を運転することで必要量の低級カルボン酸を気化することができる。
【0024】
加圧反応プロセスにおいては前述のように低級カルボン酸の転化率を向上させるために原料である低級オレフィンを少なくとも原料カルボン酸と等モル以上用いることが望ましく、好ましくは2倍モル以上、より好ましくは10倍モル以上過剰に用いることが望ましい。
【0025】
この場合、本発明(I)においては低級カルボン酸の蒸気圧が反応系の全圧に対し少なくとも二分の一から数十分の一となるため、低級カルボン酸を気化させる温度を大幅に低下することができる。
【0026】
蒸発器に用いる材質としては、一般に使用されるステンレス鋼であるSAS304、316、316などやハステロイ−C、−D、もしくはチタンなどの中から低級カルボン酸を気化させる温度、圧力における低級カルボン酸の腐食性および、蒸発器の連続運転期間を考慮して任意のものを選ぶことができる。
【0027】
原料を気化するのに用いる蒸発装置としてはジャケット型、自然循環型、強制循環型、コイル型、プレート型、流下薄膜型、上昇膜型、フラッシュ蒸発型、遠心型等の中から使用する熱媒体、運転条件、スケールなどに応じて任意に選択することができるが、原料カルボン酸の熱安定性、および反応器に液状の低級カルボン酸、水を飛沫同伴させないことを考慮した場合には、一般に自然循環型、流下薄膜型、上昇膜型を用いるのが好ましい。また、飛沫同伴を防止するためには、蒸発装置の上部にデミスターを設置することや液状の原料酢酸を蒸発器上部より降らせて液状の水および低級脂肪族カルボン酸を吸収することが好ましい。
【0028】
蒸発させる温度、圧力は加圧反応プロセスでは反応が気相付加反応であることから高温、高圧であることが好ましい。また、供給原料が気体状に保たれなければならないため使用する原料により選択される温度は異なる。更にエネルギーコストとの兼ね合いもあり、一般的には蒸発させる温度としては50℃〜250℃、より好ましくは120℃〜220℃、圧力としては0.2MPaから3MPaより好ましくは0.2MPaから1MPaまでの圧力範囲から選ぶことが好ましい。
【0029】
本発明(II)に用いる酸点を有する固体触媒としては、通常の固体酸触媒であれば使用可能であるが、低級オレフィンへの低級脂肪族カルボン酸の付加を効率的に行うためにはブレンステッド酸点が多いものが好ましい。このような酸触媒としては例えばヘテロポリ酸やその塩そのもの、また前記ヘテロポリ酸及びその塩、或いは硫酸や燐酸のような鉱酸を適当な担体に担持した担持型触媒、フリーなスルホン酸を持ったイオン交換樹脂、アルミノシリケート骨格を有するゼオライト等が上げられる。
【0030】
ヘテロポリ酸の例としては、中心元素と酸素が結合した周辺元素からなるものであり、中心元素は通常珪素または燐であるが、元素の周期表のI族〜VIII族の多種の原子の任意の1つからなることができる。これらは、例えば第二銅イオン;二価のベリリウム、亜鉛、コバルトまたはニッケルイオン;三価のホウ素、アルミニウム、ガリウム、鉄、セリウム、ヒ素、アンチモン、燐、ビスマス、クロムまたはロジウムイオン;四価の珪素、ゲルマニウム、錫、チタン、ジルコニウム、バナジウム、硫黄、テルル、マンガン、ニッケル、白金、トリウム、ハフニウム、セリウムイオンおよび他の希土類イオン;五価の燐、ヒ素、バナジウム、アンチモンイオン;六価のテルルイオン;および七価のヨウ素イオンが含まれる。また、周辺元素はタングステン、モリブデン、バナジウム、ニオブ、タンタルおよび他の金属である。これらのヘテロポリ酸は「ポリオキソアニオン」、「ポリオキソ金属塩」または「酸化金属クラスター」として呼ばれることがあり、そのアニオン類の幾つかの構造には、この分野の研究者本人にちなんで名前が付けられ、例えばケギン、ウエルス−ドーソンおよびアンダーソン−エバンス−ペアロフ構造として知られている。ヘテロポリ酸は、分子量の大きな単量体だけでなく、二量体錯体も含む。
【0031】
本発明において触媒として用いることができるヘテロポリ酸には特に制限はないが、具体的には好ましくは、
ケイタングステン酸 − H4 [SiW12 O40].xH2O
リンタングステン酸 − H3 [PW12O40].xH2O
リンモリブデン酸 − H3 [PMo12O40].xH2O
ケイモリブデン酸 − H4 [SiMo12O40].xH2O
リンバナドモリブデン酸 − H3+n[PVnMo12-nO40].xH2O
等が上げられ、またこれらのヘテロポリ酸とのリチウム塩、カリウム塩、セシウム塩、ルビジウム塩、タリウム塩、アンモニウム塩、銅塩、マグネシウム塩、ガリウム塩を始めとする中和塩を用いることも出来る。
【0032】
これらのヘテロポリ酸自身を必要に応じて球形、円柱状の押出形、顆粒、ペレット、粒形、打錠形に成形して用いることが出来る。
【0033】
また、前記ヘテロポリ酸触媒や硫酸、燐酸等を担体に担持した担持型触媒も触媒として使用することが可能である。担体として使用できるものはシリカ、チタニア、シリカ−アルミナ、アルミナのような無機質担体、活性炭や適当に成形したポリマーのような有機担体等を使用することが可能である。
【0034】
イオン交換樹脂としてはビニルベンゼンスルホン酸のような二重結合を有するスルホン酸とスチレンとジビニルベンゼンを共重合させて得られるイオン交換樹脂が上げられる。
【0035】
ゼオライトとしては、H型のアルミノシリケートなら使用することは可能だが、特にMFI骨格を持つものがその酸強度からいってより好ましい。
【0036】
気相反応の形態としては、固定床、流動床の何れも実施でき担体の形状も実施する形態に合わせて粉末から数mmの大きさに成形したものから選ぶことが出来る。
【0037】
原料の低級オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテンを挙げることができる。また、低級脂肪族カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、アクリル酸、メタクリル酸を挙げることができる。
【0038】
これらの酸触媒上に流通させる原料の使用割合としては、低級脂肪族カルボン酸に対して等モルもしくは過剰量の低級オレフィンを使用することが望ましい。その割合としては低級オレフィン対低級脂肪族カルボン酸のモル比として、1:1〜30:1の範囲にあるのが好ましく、より好ましくは5:1〜20:1であるのが好適である。
【0039】
また、原料に少量の水を混合することは触媒寿命の観点から好ましいが、混合量を増加することにより、エチレンに対するエタノール、ジエチルエーテル等、使用する原料低級オレフィンに対応するアルコール、エーテル類の副生物も増えてくる。そのために、水の使用量としては、低級脂肪族カルボン酸、低級オレフィン、水の全使用量中の1mol%〜15mol%、より好ましくは3mol%〜8mol%の範囲から選ぶことが好ましい。
【0040】
触媒に供給する原料の空間速度(以下、「GHSV」と略。)としては、一般には反応器および触媒量が一定の場合には、GHSVをある程度まで高くすることに伴ってカルボン酸エステルの生成量が増加する。しかし、あまりにGHSVを高くした場合、カルボン酸エステルの生成量の増加割合が低下し、原料転化率が低くなってしまう。さらにGHSVを高くすることにより、反応系の圧力損失が増加し、特に循環系の場合には圧力損失分を昇圧し、所定のGHSVとするガス量を循環するのに必要となるコンプレッサーの能力が増大する等の問題が生じる。その為反応のGHSVに対する依存性に応じて最適なGHSVを選択する必要があるが、一般にはGHSVとして100hr-1〜5000hr-1の範囲、より好ましくは300hr-1〜2000hr-1の範囲で触媒上を通すのが好適である。
また、原料である低級オレフィンに対応して反応で生成するアルコールやエーテルはそのままオレフィンとともにリサイクルして使用することもできるし精製工程で分離した後に反応器へリサイクルすることもできる。
【0041】
本発明をさらに以下の実施例および比較例により説明する。
【0042】
【実施例】
(実験装置)
実施例は図1、比較例は図2に示すような構成の装置を用いた。なお、実施例、比較例とも反応器と蒸発器は共通であり、反応器は内径21.4mm触媒有効充填長325mmの縦型管状反応器である。蒸発器はステンレス二重管を用い、内部は内径21.4mm、長さ400mmの管に、外径2mmのガラスビーズ100cm3を詰めた。外部には熱媒として所定の温度に加熱したオイルバスを循環して、原料として供給する酢酸を蒸発させた。
【0043】
実施例1
(触媒)
この実施例に用いた触媒は、リンタングステン酸のセシウム塩からなる直径5mmの打錠型のものである。この触媒は次のようにして調製した。300mlフラスコ中、市販のリンタングステン酸試薬(和光純薬製)150g(約0.0438モル)と純水60mlとを混合し溶解した。別に、硝酸セシウム(CsNO3)21.5g(0.110モル)を水に溶解し、これを滴下ロートを用いて攪拌しながら、上記リンタングステン酸水溶液中に滴下した。滴下すると同時にリンタングステン酸セシウム塩の白色微粒結晶が析出した。このフラスコを湯浴に漬け、水分を蒸発させ、残留した塊状物をシャーレにとって乾燥器にいれ、空気中、150℃で6時間乾燥した。得られた乾燥物を粉砕し、打錠機を用いて直径5mmの錠剤とした。
【0044】
図1に示した反応装置を用い、圧力0.9MPaの条件下に、エチレン、窒素、酢酸、および水をそれぞれ80.0:10.3:6.7:3.0のモル比でそれぞれの供給口から空間速度が1500hr-1の割合で供給した。なお、窒素はエチレンとともに、水は酢酸とともに供給した。この場合に、酢酸−水混合物の蒸発する温度は92.4℃であった。なお、この場合の反応成績は、触媒層のピーク温度が165℃になるように加熱した場合に酢酸エチルの空時収率STYが200g/l-cat・h、酢酸エチル、エタノール、ジエチルエーテルの選択率はそれぞれ93.0、3.4、3.0%であった。
【0045】
実施例2
触媒は実施例1と同様のものを用いた。
図1に示した反応装置を用い、圧力0.9MPaの条件下に、エチレン、酢酸、および水をそれぞれ87.0:5.0:8.0のモル比でそれぞれの供給口から空間速度が1500hr-1の割合で供給した。なお、水は酢酸とともに供給した。この場合に、酢酸−水混合物の蒸発する温度は102.3℃であった。なお、この場合の反応成績は、触媒層のピーク温度が165℃になるように加熱した場合に酢酸エチルSTYで176g/l−cat・h、酢酸エチル、エタノール、ジエチルエーテルの選択率はそれぞれ91.5、4.3、3.7%であった。
【0046】
実施例3
触媒は実施例1と同様のものを用いた。
図1に示した反応装置を用い、圧力0.9MPaの条件下に、プロピレン、窒素、酢酸、および水をそれぞれ80.0:10.3:6.7:3.0のモル比でそれぞれの供給口から空間速度が1500hr-1の割合で供給した。なお、窒素はプロピレンとともに、水は酢酸とともに供給した。この場合に、酢酸−水混合物の蒸発する温度は105.6℃であった。なお、この場合の反応成績は、触媒層のピーク温度が165℃になるように加熱した場合に酢酸イソプロピルSTYで243g/l−cat・h、酢酸イソプロピル、イソプロパノール、ジイソプロピルエーテルの選択率はそれぞれ94.7、2.8、2.3%であった。
【0047】
実施例4
触媒は実施例1と同様のものを用いた。
図1に示した反応装置を用い、圧力0.3MPaの条件下に、エチレン、窒素、アクリル酸、および水をそれぞれ80.0:10.3:6.7:3.0のモル比でそれぞれの供給口から空間速度が1500hr-1の割合で供給した。なお、窒素はエチレンとともに、水はアクリル酸とともに供給した。この場合に、アクリル酸−水混合物の蒸発する温度は85.6℃であった。なお、この場合の反応成績は、触媒層のピーク温度が165℃になるように加熱した場合にアクリル酸エチルSTYで52g/l−cat・h、アクリル酸エチル、エタノール、ジエチルエーテルの選択率はそれぞれ91.8、4.3、3.5%であった。
実施例5
触媒としてリンタングステン酸のリチウム塩を直径5mmのシリカ担体(Sudchemie Gmbh製)に担持したものを用いた。この触媒は次のようにして調製した。
【0048】
担体を110℃の熱風式乾燥器で4hr乾燥し、残留水分を7%以下とした。500mlフラスコ中、市販のケイタングステン酸試薬(和光純薬製)298g(約0.104モル)と純水120mlとを混合し加熱溶解した。別に、硝酸リチウム(LiNO3)0.076g(0.0011モル)を純水に溶解し、これを滴下ロートを用いて攪拌しながら、上記ケイタングステン酸水溶液中に滴下した。室温で30分撹拌を続け、均一溶液としたのち、得られた溶液に担体の飽和吸水液量の95%の体積となるまで純水を加え含浸液とした。この含浸液に担体1Lを加え、均一に担持されるようによくかき混ぜて完全に含浸させた。その後、1hr風乾した後150℃の熱風乾燥器で5時間乾燥し担持型触媒を得た。
【0049】
図1に示した反応装置に上記の触媒を充填し、圧力0.9MPaの条件下に、エチレン、窒素、酢酸、および水をそれぞれ78.5:9.0:8.0:4.5のモル比でそれぞれの供給口から空間速度が1500hr-1の割合で供給した。なお、窒素はエチレンとともに、水は酢酸とともに供給した。この場合に、酢酸−水混合物の蒸発する温度は102.2℃であった。なお、この場合の反応成績は、触媒層のピーク温度が165℃になるように加熱した場合に酢酸エチルの空時収率STYが215g/l-cat・h、酢酸エチル、エタノール、ジエチルエーテルの選択率はそれぞれ90.8、5.0、4.2%であった。
【0050】
実施例6
実施例5と同様の触媒調整法で、硝酸リチウムの使用量を0.007g(0.0001モル)とした触媒を調製した。
図1に示した反応装置に上記の触媒を充填し、圧力0.9MPaの条件下に、エチレン、窒素、酢酸、および水をそれぞれ78.5:9.0:8.0:4.5のモル比でそれぞれの供給口から空間速度が1500hr-1の割合で供給した。なお、窒素はエチレンとともに、水は酢酸とともに供給した。この場合に、酢酸−水混合物の蒸発する温度は102.2℃であった。なお、この場合の反応成績は、触媒層のピーク温度が165℃になるように加熱した場合に酢酸エチルの空時収率STYが174g/l-cat・h、酢酸エチル、エタノール、ジエチルエーテルの選択率はそれぞれ92.1、5.7、2.2%であった。
【0051】
実施例7
実施例5と同様の触媒調整法で、ケイタングステン酸、硝酸リチウムの使用量をそれぞれ345g(0.120モル)、0.083g(0.0012モル)とした触媒を調製した。
図1に示した反応装置に上記の触媒を充填し、圧力0.9MPaの条件下に、エチレン、窒素、酢酸、および水をそれぞれ78.5:9.0:8.0:4.5のモル比でそれぞれの供給口から空間速度が1500hr-1の割合で供給した。なお、窒素はエチレンとともに、水は酢酸とともに供給した。この場合に、酢酸−水混合物の蒸発する温度は102.2℃であった。なお、この場合の反応成績は、触媒層のピーク温度が165℃になるように加熱した場合に酢酸エチルの空時収率STYが254g/l-cat・h、酢酸エチル、エタノール、ジエチルエーテルの選択率はそれぞれ87.7、7.6、4.7%であった。
【0052】
実施例8
実施例5と同様の触媒調整法で、ヘテロポリ酸としてリンタングステン酸を使用し、リンタングステン酸と硝酸リチウムの使用量をそれぞれ541g(0.194モル)、1.323g(0.0012モル)とした触媒を調製した。
図1に示した反応装置に上記の触媒を充填し、圧力0.9MPaの条件下に、エチレン、窒素、酢酸、および水をそれぞれ78.5:9.0:8.0:4.5のモル比でそれぞれの供給口から空間速度が1500hr-1の割合で供給した。なお、窒素はエチレンとともに、水は酢酸とともに供給した。この場合に、酢酸−水混合物の蒸発する温度は102.2℃であった。なお、この場合の反応成績は、触媒層のピーク温度が165℃になるように加熱した場合に酢酸エチルの空時収率STYが196g/l-cat・h、酢酸エチル、エタノール、ジエチルエーテルの選択率はそれぞれ90.1、6.6、3.3%であった。
【0053】
比較例1
触媒は実施例1と同様のものを用いた。
図2に示した反応装置を用い、圧力0.9MPaの条件下に、エチレン、窒素、酢酸、および水をそれぞれ80.0:10.3:6.7:3.0のモル比でそれぞれの供給口から空間速度が1500hr-1の割合で供給した。なお、窒素はエチレンとともに、水は酢酸とともに供給した。蒸発器の温度を実施例1と同一(92.4℃)にした場合、酢酸−水混合物は蒸発せずに反応器にエチレンのみが供給され、反応器内の触媒上でエチレンの重合反応が起こり、触媒が失活した。
【0054】
そこで蒸発器の温度を酢酸−水混合物の蒸発する温度まで上げた時、その温度は194.4℃であった。なお、この場合の反応成績は、触媒層のピーク温度が165℃になるようにした場合に酢酸エチルSTYで198g/l−cat・h、酢酸エチル、エタノール、ジエチルエーテルの選択率はそれぞれ92.7、3.6、3.2%であった。
【0055】
比較例2
触媒は実施例1と同様のものを用いた。
図2に示した反応装置を用い、圧力0.3MPaの条件下に、エチレン、窒素、アクリル酸、および水をそれぞれ80.0:10.3:6.7:3.0のモル比でそれぞれの供給口から空間速度が1500hr-1の割合で供給した。なお、窒素はエチレンとともに、水はアクリル酸とともに供給した。蒸発器の温度を実施例4と同一(85.6℃)とした場合、アクリル酸−水の混合物は蒸発せずに反応器にエチレンのみが供給され、反応器内の触媒上でエチレンの重合反応が起こり、触媒が失活した。
【0056】
そこで蒸発器の温度をアクリル酸−水混合物の蒸発する温度まで上げた時、その温度は163.8℃であった。この温度で実施した場合、蒸発器内でアクリル酸の重合反応によるファウリングを起こした。その為蒸発器でアクリル酸−水混合物が気化されなくなり、反応器内にエチレンのみが供給される状態となり、反応器内でのエチレンの重合により触媒が失活した。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、低級脂肪族カルボン酸を昇圧して低級オレフィンと混合した後に加熱して気化することにより、低級脂肪族カルボン酸を気化できる温度を大幅に低下でき、よって効率的に低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸との混合ガスを得ることが出来ることは明らかである。これにより、気化に要するエネルギーコストを削減でき、また、気化液の安定性を増すことで蒸発器の安定運転が可能になる。
【0058】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様を示すフローシートである。
【図2】従来の方法を示すフローシートである。

Claims (5)

  1. 0.2MPa〜2MPaの圧力で低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸とを混合した後に加熱して50℃〜250℃で気化することを特徴とする、低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸との混合ガスの製造方法であって、低級オレフィンがエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、iso−ブテン、又はブタジエンからなる群の少なくとも一種から選ばれ、低級脂肪族カルボン酸がギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、iso−酪酸、アクリル酸、又はメタクリル酸からなる群の少なくとも一種から選ばれることを特徴とする混合ガスの製造方法
  2. 請求項1の方法で低級オレフィンと低級脂肪族カルボン酸との混合ガスを得た後、当該混合ガスを、気相で酸点を含んだ固体触媒上を流通させ反応させることを特徴とする低級脂肪族エステルの製造方法。
  3. 酸点を含んだ固体触媒がヘテロポリ酸及び/又はその塩であることを特徴とする請求項記載の低級脂肪族エステルの製造方法。
  4. ヘテロポリ酸及び/又はその塩が担体に担持されていることを特徴とする請求項のいずれかに記載の低級脂肪族エステルの製造方法。
  5. 水の存在下に反応させることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の低級脂肪族エステルの製造方法。
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