JP4332066B2 - 溶接部の靭性に優れた高強度液相拡散接合継手および液相拡散接合用高強度鋼材並びにその液相拡散接合方法 - Google Patents
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Description
一般に液相拡散接合とは、被接合材料の接合面すなわち開先間に、被接合材料に比較して低融点で、かつ、例えば、BまたはPの拡散元素を含有し、NiまたはFeの基材からなる多元系非晶質合金箔など(以下、インサートメタルと称する。)を介在させた後、低融点合金箔の融点以上の温度に加熱保持し、拡散律速の等温凝固過程を経た拡散接合によって継手を形成する技術である。なお、ここで、非晶質合金箔とは、少なくとも結晶構造の50%以上が非晶質からなる合金箔を意味する。この液相拡散接合法は、通常の溶接技術と異なり、接合部の熱膨張、収縮に伴う溶接残留応力が殆ど生じないこと、および溶接のような余盛りを発生しないことから接合表面が平滑かつ精密な継手を形成できるなどの特徴を有する。
このように液相拡散接合は従来の溶接法に比べて上述した接合部の品質や形状精度の点で優れた接合技術であるが、以下に示す技術的課題があった。
つまり、液相拡散接合法では、被接合材料の開先間に介在させた上記低融点の非晶質合金箔中に含有するBまたはPの拡散元素を被接合材中へ拡散させ、拡散律速の等温凝固過程を経て接合させるため、通常の厚さ10μm程度の低融点非晶質合金箔を用いた場合で、その融点以上の温度に相当する約900〜1300℃の加熱温度で、約60秒以上等温保持する必要がある。この加熱温度は、特にフェライト構造を有する鋼材の変態点、Ac1或いはAc3を超える温度に相当し、接合部以外の継手母材部もこの相変態点以上の温度に加熱されるため、母材部の組織は冷却過程での相変態により変質し、母材部の最終組織および機械的特性が決定されることになる。
液相拡散接合による継手作製時には、工業的には拡散律速の等温凝固を早く終了させ、接合時間の短縮化が求められるため、母材部の相変態、再結晶、粒成長が顕著に生じる場合があった。従って、液相拡散接合後に継手を熱処理して調質処理を実施する場合もある。
このような、液相拡散接合による継手母材部の組織および材質変化に伴う靭性低下など機械的特性の劣化を抑制するための方法として、例えば、特許文献1等では、液相拡散接合後、接合部に所定条件で加熱、冷却制御を行う熱処理を施す方法が開示されている。
この方法は、液相拡散接合後に、継手を熱処理する工程を必要とするために、生産性を低下させ、処理コストの増加を招くなどの工業的な問題がある。また、この方法を用いて継手の靭性などの機械的特性を改善するためには、被接合材料の化学組成と密接に関係した加熱、冷却条件を行う必要があるため、幅広い成分組成および組織の鋼材に対応した制御は難しく、液相拡散接合に適用できる被接合材料の成分組成の自由度を制約する結果を招くこととなる。
しかし、一方でこのインサートメタルの溶融、凝固プロセスでは、インサートメタルの化学成分と被接合材料の化学成分が混合するときに、液相拡散接合の等温凝固組織として好ましくない元素、例えばSに代表される不可避的不純物元素まで混入することを意味する。S以外の不可避的不純物元素も継手にとって機械的性質を劣化させるものは多いが、現在の銑鋼一環プロセスや、炉外二次精錬プロセスを適用する電気炉製鋼法での工業水準では非常に低く制御されているため、実質的に継手特性の劣化にはつながらない。
インサートメタルの溶融、凝固プロセスで溶融金属中に混入したSは、その後の等温凝固課程では、鋼材中に殆ど固溶することが出来ず、液相側へ排出されるため、等温凝固の進行と共に残留溶融金属相中に濃縮されることとなる。
通常、引張強さが600MPa以上の高強度鋼材では、コスト面から有利なMnを利用して鋼材強度を高めることが行なわれている。このため、このような高強度鋼材を液相拡散接合する場合には、等温凝固過程で残留溶融金属相中に濃縮されたSはMnと結合し、粗大でかつFe基材と整合性の低いMnSが必然的に晶出する。その結果、液相拡散接合継手の最終等温凝固位置においてMnSが連続生成する。
すなわち、既に述べた特許文献1で示すような継手の熱処理などの冷却速度制御による組織制御を用いた接合部の軟化は、粗大な粒界フェライト相の生成により等温凝固組織均一性が失われ、逆に、継手靭性が劣化することが新たな課題として知見された。
PS=12×(%C)+2.5×(%Mo)+2×(%Cr)+3×(%Mn)+(%Ni) ・・・(1)
ES=0.02×(%Ca)/(%S) ・・・(2)
なお、上記(%C)、(%Mo)、(%Cr)、(%Mn)、(%Ni)、(%Ca)、(%S)はそれぞれ鋼材中に含有するC、Mo、Cr、Mn、Ni、Ca、Sの質量%を示す。
ES=0.02×{0.2×(%Zr)+(%Ca)+0.5×(%Mg)+0.3×(%Ba)+0.3×(%Y)+0.6×(%Ce)+0.2×(%La)}/(%S)・ ・ ・ (3)
なお、上記(%Zr)、(%Ca)、(%Mg)、(%Ba)、(%Y)、(%Ce)、(%La)、(%S)はそれぞれ鋼材中に含有するZr、Ca、Mg、Ba、Y、Ce、La、Sの質量%を示す。
PS=12×(%C)+2.5×(%Mo)+2×(%Cr)+3×(%Mn)+(%Ni) ・・・(1)
ES=0.02×(%Ca)/(%S) ・・・(2)
なお、上記(%C)、(%Mo)、(%Cr)、(%Mn)、(%Ni)、(%Ca)、(%S)はそれぞれ鋼材中に含有するC、Mo、Cr、Mn、Ni、Ca、Sの質量%を示す。
ES=0.02×{0.2×(%Zr)+(%Ca)+0.5×(%Mg)+0.3×(%Ba)+0.3×(%Y)+0.6×(%Ce)+0.2×(%La)}/(%S)・ ・ ・ (3)
なお、上記(%Zr)、(%Ca)、(%Mg)、(%Ba)、(%Y)、(%Ce)、(%La)、(%S)はそれぞれ鋼材中に含有するZr、Ca、Mg、Ba、Y、Ce、La、Sの質量%を示す。
PS=12×(%C)+2.5×(%Mo)+2×(%Cr)+3×(%Mn)+(%Ni) ・・・(1)
ES=0.02×(%Ca)/(%S) ・・・(2)
なお、上記(%C)、(%Mo)、(%Cr)、(%Mn)、(%Ni)、(%Ca)、(%S)はそれぞれ鋼材中に含有するC、Mo、Cr、Mn、Ni、Ca、Sの質量%を示す。
ES=0.02×{0.2×(%Zr)+(%Ca)+0.5×(%Mg)+0.3×(%Ba)+0.3×(%Y)+0.6×(%Ce)+0.2×(%La)}/(%S)・ ・ ・ (3)
なお、上記(%Zr)、(%Ca)、(%Mg)、(%Ba)、(%Y)、(%Ce)、(%La)、(%S)はそれぞれ鋼材中に含有するZr、Ca、Mg、Ba、Y、Ce、La、Sの質量%を示す。
本発明で規定する液相拡散接合用鋼材の化学成分、継手強度および靭性等の性質を得るために必要な継手接合部の等温凝固組織の均一性、すなわち旧γ粒界または最終等温凝固位置でのフェライト相の生成を抑制し、かつ最終凝固位置界面に濃縮したSを起因とするMnS生成を抑制するための鋼材の成分指標:PS値について以下に説明する。
先ず、本発明の目的を達成するために、鋼材中に基本成分として含有する化学成分および不可避的不純物として制限すべき化学成分の限定理由について説明する。
なお、以下の説明において特に説明のない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
本発明では、0.3%以上の炭素を含有し、かつ引張強さが600MPa以上の高強度鋼を被接合材料とする液相拡散接合継手の靭性など機械的特性を確保することを最大の課題とし、そのために、接合部の等温凝固組織中での粒界フェライト、あるいは最終等温凝固位置でのフェライト生成を抑制し、目標とするマルテンサイトまたはベイナイトの均一な低温変態組織とすることを技術思想とする。接合後に低温で相変態するマルテンサイトまたはベイナイトは、これらの組織を構成する旧γ粒界内部にパケット粒、ブロック粒、ラス構造を複相構造として内包し、結晶劈開面における不連続性の確保、あるいは粒界での亀裂伝播停止特性向上によって靭性靭性の確保に寄与している。一方、本発明者らの検討結果によれば、接合部の等温凝固組織中の粒界にフェライトが生成する場合には炭素の拡散を伴い、結晶は複相構造を持たず、劈開面の連続性、すなわち最小結晶単位が大きく、これが粒界に沿って連続して生成すると容易に脆性破壊しやすくなり、被接合材料の強度とは無関係に劈開破壊してしまう。液相拡散接合部の最終等温凝固位置での組織がフェライトになってしまう場合でも同様な現象が最終等温凝固位置で生起し、接合部位が構造体の内外表面を貫通して連続している場合には、継手の強度と靭性を著しく劣化させる場合がある。
そのために、本発明者らは、以下に示すような種々の鋼材による液相拡散接合実験を実施し、鋼材成分組成と継手の接合組織および機械的特性との関係を詳細に調査した。
その結果、以下の(1)式で規定するPS値と継手靭性との関係から、PS値が10.0以上であれば、本発明で規定する上記化学成分を有する鋼材を液相拡散接合する場合に、接合部の最終等温凝固位置におけるフェライト相、または等温凝固組織中の粒界フェライトを充分に抑制し、継手靭性を安定して確保できることを見出した。
なお、下記(1)式における各化学成分の係数は上記本発明の基本成分を有する0.3%以上の炭素を含有する高強度鋼の液相拡散接合継手の継手靭性との関係から重回帰分析で最適化することにより実験的に求めたものである。
なお、上記(%C)、(%Mo)、(%Cr)、(%Mn)、(%Ni)はそれぞれ鋼材中に含有するC、Mo、Cr、Mn、Niの質量%を示す。
以上の検討結果を踏まえ、本発明では、上記基本化学成分を有する被接合材を用いた液相拡散接合継手の良好な靭性(例えば、0℃におけるシャルピー吸収エネルギーが47J以上)を確保するために、上記基本化学成分の含有量の規定に加え、上記(1)式で定義されるPS値が10以上となるように被溶接材料中の成分を規定する。
なお、ES値に対するMn含有量の比(%Mn)/ESが10を超える場合には、上述した本発明鋼材の基本成分およびPS値の規定により液相拡散接合部の等温強固組織中の粒界フェライトまたは最終等温凝固位置でのフェライトを抑制できても、最終凝固位置に平均円相当径が5μm以上のMnSが生成する結果、本発明の目的とする安定した充分な継手靭性の向上は困難となる。
ES=0.02×(%Ca)/(%S) ・・・(2)
なお、上記(%Ca)、(%S)はそれぞれ鋼材中に含有するCa、Sの質量%を示す。
また、上記液相拡散接合部における最終等温凝固位置におけるMnSの生成を抑制し、継手靭性などの機械的特性をさらに安定して十分に高めるためには、上記Caと同様に硫化物形態制御元素として機能する以下の成分を適量含有させ、かつ下記(3)式で定義されるES値に対するMn含有量の比(%Mn)/ESを10以上とすることが好ましい。
Zr、Mg、Ba、Y、Ce、Laは、何れも鋼材中に含有させることで、硫化物形態制御元素として作用する元素である。本発明では、これらの元素を1種または2種以上鋼材中に含有させることにより、液相拡散接合時初期の接合箔と被接合材との溶融、凝固プロセスにおいて、鋼材中のSと硫化物を形成し、接合部の等温凝固過程において最終等温凝固位置でのSの濃化を抑制し、MnSの生成を防止することにより、継手靭性など機械的特性を安定して向上させることができる。これらの効果を十分に発揮させるためには、Zr、Y、Ce、Laの含有量の下限はいずれも0.001%とし、Mg、Baの含有量の下限はいずれも0.0005とするのが好ましい。一方、これらの元素は何れも、酸素との親和力が強く、Zr、Y、Ce、Laは0.05%を超えて過度に含有した場合、Mg、Baは0.005%を超えて過度に含有した場合には、その一部が酸化物として鋼材中に晶出し、その他はスラグ中に取り込まれて排出される。酸化物として鋼中に含有すると、その酸化物が分解する温度は極めて高き、液相拡散接合時初期の溶融、凝固プロセスにおいても液相中で分解固溶されないため、本発明の目的とする硫化物形態制御の効果が認められない。さらには、鋼中に粗大酸化物として存在することで継手の靭性などの機械的特性を劣化する原因となる。したがって、Zr、Y、Ce、Laの含有量の上限は0.05%とし、Mg、Baの含有量の上限は0.005%とするのが好ましい。
なお、以下の(2)および(3)式で定義されるES値は、液相拡散接合部の最終等温凝固位置における活性S量の指標を示す。このES値に対するMn含有量の比(%Mn)/ESを50以下とすることにより、C含有量が0.3%以上およびS含有量が0.005超〜0.01%で、かつ引張り強さが600MPa以上の高強度鋼材を液相拡散接合する際に、接合箔と被接合材との溶融、凝固プロセスにおいて、鋼材中のSと硫化物を形成し、接合部の等温凝固過程において最終等温凝固位置でのS濃化を抑制し、MnSの生成を防止することができ、その結果、目的とする継手靭性など機械的特性を安定して向上させることができる。
なお、上記(%Zr)、(%Ca)、(%Mg)、(%Ba)、(%Y)、(%Ce)、(%La)、(%S)はそれぞれ鋼材中に含有するZr、Ca、Mg、Ba、Y、Ce、La、Sの質量%を示す。
なお、使用した被溶接材は、上述した本発明で規定する基本成分の含有範囲およびPS値の規定範囲を満足した鋼材、この鋼材にさらに上記のZr、Mg、Ba、Y、Ce、Laの1種または2種以上を上記含有範囲で含有した鋼材を用いた。
図2から、上記(2)または(3)式で定義されるES値に対するMn含有量の比(%Mn)/ESが50以上の場合に、本発明が目標とする0℃におけるシャルピー吸収エネルギーが47J以上の継手靭性を達成することができる。
したがって、本発明では、上記高強度被接合材を用いた液相拡散接合継手の良好な靭性(例えば、0℃におけるシャルピー吸収エネルギーが47J以上)を確保するために、上記基本化学成分の含有量およびPS値の規定に加え、上記(2)または(3)式で定義されるES値に対するMn含有量の比(%Mn)/ESが50以上となるように被溶接材料中の成分を規定する。
また、本発明者らは、良好な靭性(例えば、0℃におけるシャルピー吸収エネルギーが47J以上)を有する高強度液相拡散接合継手の接合部断面について、特性X線分析装置を備えた走査型電子顕微鏡を用いて観察した結果、平均円相当径が5μm以上のMnSの存在は認められなかった。したがって、良好な靭性(例えば、0℃におけるシャルピー吸収エネルギーが47J以上)を有する高強度液相拡散接合継手を達成するためには、上記基本化学成分の含有量およびPS値の規定に加え、上記(2)または(3)式で定義されるES値に対するMn含有量の比(%Mn)/ESが50以上とすることにより、接合部断面で観察される平均円相当径が5μm以上のMnSをなくす必要がある。
なお、液相拡散接合継手接合部の等温凝固組織中のMnSは、特性X線分析装置を備えた走査型電子顕微鏡を用いて接合部断面を観察することで容易に検出できる。
本発明では、継手接合部の断面を電子顕微鏡観察にて画像解析手法によってMnSの占有面積を20個以上測定し、その測定値の平均値を基に析出物の断面形状が形態に拘わらず全て真円であると仮定して円相当径の平均値を求め、平均円相当径と定義した。
ただし、本発明では、上述した基本成分中のCa、さらには、選択的に、Zr、Mg、Ba、Y、Ce、Laを鋼材中に含有させ、液相拡散接合時初期の接合箔と被接合材との溶融、凝固プロセスにおいて、鋼材中のSと硫化物を形成し、等温凝固過程における最終等温凝固位置でのS濃化の抑制、MnS生成防止を行う、つまり、硫化物形態制御を行うため、液相拡散接合時における雰囲気中の酸素濃度による硫化物形態制御への影響は無視できない。
液相拡散接合時に雰囲気中の酸素濃度が高い場合は、液相拡散接合時初期の接合箔と被接合材との溶融、凝固プロセスにおいて、溶融金属に固溶して、脱硫反応による硫化物形態制御を抑制し、最終等温凝固位置でのS濃化、MnSの生成を促進させてしまう。さらには、鋼中のCと結合してCOまたはCO2等の気体となり、溶融金属中のC含有量を低減させて接合部の焼き入れ性を低くするため、接合部の等温凝固過程において最終等温凝固位置でのフェライト相または粒界フェライト相の生成を促進してしまう。これらの結果、液相拡散接合継手の靭性など機械的特性の劣化を招くこととなる。
液相拡散接合時に真空または不活性ガスにより酸素濃度が十分に低減された雰囲気とする場合には、上記問題は生じないが、大気中または酸素濃度が高い雰囲気下で液相拡散を行う場合は、鋼材中のCaなど硫化物形態制御元素の機能を発揮させ、目的とする継手靭性など機械的特性を確保するためにさらに以下の条件を規定することが好ましい。
つまり、本発明では、接合時の雰囲気中酸素濃度が0.1%以上の条件、例えば低純度の窒素ガス雰囲気や、ロータリーポンプで圧力を下げた簡易気密構造での接合条件を前提とし、本発明が目的とする良好な継手靭性(例えば、0℃におけるシャルピー吸収エネルギーが47J以上)を達成するために、液相拡散接合用合金箔として、Vを0.1%以上含有するFe基の非晶質合金箔を用いることがこのましい。
液相拡散接合用合金箔中のVは、液相拡散接合時初期の合金箔と被接合材との溶融、凝固プロセスにおいて溶融金属に雰囲気ガスから侵入する酸素、あるいは、合金箔が溶融する前に鋼材開先表面の酸化物層から供給される酸素、と結合して酸化物を形成し、さらには、鋼材中のその他の脱酸元素と複合酸化物を形成し、接合開先部における溶融金属の融点を下げ、液体状の溶融酸化物として、接合加圧時に溶融金属と一緒に開先部から排出させる作用がある。これらのVによる作用、効果を高め、Caなど硫化物形態制御元素の機能を発揮させ、目的とする継手靭性など機械的特性を確保するためには、液相拡散接合用合金箔中のV含有量を0.1%以上とすることが好ましい。
液相拡散接合用合金箔として、Vを0.1%以上含有するFe基の非晶質合金箔を用いることにより、接合時の雰囲気中の酸素濃度を極端に低下させなくとも、例えば低純度の窒素ガス雰囲気や、ロータリーポンプで圧力を下げた簡易気密構造を液相拡散接合差装置に付与することで、本発明の目的とする継手靭性の向上を実現することが可能となる。
特に、接合構造体が大きいような場合、あるいは構造が複雑で接合部の雰囲気を制御できない場合には、上記本発明の形態により、継手特性の向上効果は顕著である。
なお、接合条件は、被接合材料を1200℃で10分間、等温凝固させ、接合応力を終始5MPaに保持した。
図3から、雰囲気中の酸素濃度が10%を超える条件は、継手靭性が47J未満に低下するものの、雰囲気中の酸素濃度が10%以下の条件では、継手靭性が本発明が目標とする0℃でのシャルピーが47J以上を満足する継手を達成できることが判る。
したがって、本発明の上述した基本成分の含有量、PS値の規定、ES値に対するMn含有量比の規定を満足する高強度鋼材を液相拡散する場合の実施形態として、鋼材開先間に介在する液相拡散接合用合金箔として、Vを0.1%以上含有するFe基の非晶質合金箔を用い、雰囲気中の酸素含有量を0.00001〜10%として等温加熱することが好ましい。
この実施形態により、低純度窒素ガスの充填した気密装置により実現できる最低酸素濃度雰囲気、すなわち雰囲気中酸素濃度が10%以下の条件で、0℃におけるシャルピー吸収エネルギーが47Jを超える、接合部靭性に優れた高強度液相拡散接合継手を達成することができる。
なお、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、これよりも低い酸素分圧雰囲気で液相拡散接合する場合には、より優れた継手靭性が得られる。
Claims (9)
- 質量%で、C:0.3〜0.6%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.01〜3%、Ca:0.0005〜0.005%、N:0.001〜0.01%、S:0.005超〜0.01%を含有し、P:0.03%以下、O:0.01%以下に制限し、さらに、Ni:0〜4%、Cr:0〜2%、Mo:0〜0.7%、および、B:0〜0.005%の1種または2種以上を含有し、下記(1)式で定められるPS値が10以上であり、かつ下記(2)式で定められるES値に対するMn含有量の比(%Mn)/ESが50以下であり、残部がFe及び不可避的不純物からなる母材部と、等温凝固組織中の粒界または最終等温凝固位置にフェライト相を含有せず、かつ平均円相当径が5μm以上のMnSを含有しない接合部とからなることを特徴とする接合部の靭性に優れた高強度液相拡散接合継手。
PS=12×(%C)+2.5×(%Mo)+2×(%Cr)+3×(%Mn)+(%Ni) ・・・(1)
ES=0.02×(%Ca)/(%S) ・・・(2)
なお、上記(%C)、(%Mo)、(%Cr)、(%Mn)、(%Ni)、(%Ca)、(%S)はそれぞれ鋼材中に含有するC、Mo、Cr、Mn、Ni、Ca、Sの質量%を示す。 - 前記母材部が、さらに、質量%で、Zr:0.001〜0.05%、Mg:0.0005〜0.005%、Ba:0.0005〜0.005%、Y:0.001〜0.05%、Ce:0.001〜0.05%、La:0.001〜0.05%の1種または2種以上を含有し、かつ下記(3)式で定められるES値に対するMn含有量の比(%Mn)/ESが50以下であることを特徴とする請求項1に記載の接合部の靭性に優れた高強度液相拡散接合継手。
ES=0.02×{0.2×(%Zr)+(%Ca)+0.5×(%Mg)+0.3×(%Ba)+0.3×(%Y)+0.6×(%Ce)+0.2×(%La)}/(%S) ・・・(3)
なお、上記(%Zr)、(%Ca)、(%Mg)、(%Ba)、(%Y)、(%Ce)、(%La)、(%S)はそれぞれ鋼材中に含有するZr、Ca、Mg、Ba、Y、Ce、La、Sの質量%を示す。 - 前記母材部及び接合部の引張強さが600MPa以上であることを特徴とする請求項1または2の何れかに記載の接合部の靭性に優れた高強度液相拡散接合継手。
- 質量%で、C:0.3〜0.6%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.01〜3%、Ca:0.0005〜0.005%、N:0.001〜0.01%、S:0.005超〜0.01%を含有し、P:0.03%以下、O:0.01%以下に制限し、さらに、Ni:0〜4%、Cr:0〜2%、Mo:0〜0.7%、および、B:0〜0.005%の1種または2種以上を含有し、下記(1)式で定められるPS値が10以上であり、かつ下記(2)式で定められるES値に対するMn含有量の比(%Mn)/ESが50以下であり、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする液相拡散接合用高強度鋼材。
PS=12×(%C)+2.5×(%Mo)+2×(%Cr)+3×(%Mn)+(%Ni) ・・・(1)
ES=0.02×(%Ca)/(%S) ・・・(2)
なお、上記(%C)、(%Mo)、(%Cr)、(%Mn)、(%Ni)、(%Ca)、(%S)はそれぞれ鋼材中に含有するC、Mo、Cr、Mn、Ni、Ca、Sの質量%を示す。 - さらに、質量%で、Zr:0.001〜0.05%、Mg:0.0005〜0.005%、Ba:0.0005〜0.005%、Y:0.001〜0.05%、Ce:0.001〜0.05%、La:0.001〜0.05%の1種または2種以上を含有し、かつ下記(3)式で定められるES値に対するMn含有量の比(%Mn)/ESが50以下であることを特徴とする請求項4に記載の液相拡散接合用高強度鋼材。
ES=0.02×{0.2×(%Zr)+(%Ca)+0.5×(%Mg)+0.3×(%Ba)+0.3×(%Y)+0.6×(%Ce)+0.2×(%La)}/(%S) ・・・(3)
なお、上記(%Zr)、(%Ca)、(%Mg)、(%Ba)、(%Y)、(%Ce)、(%La)、(%S)はそれぞれ鋼材中に含有するZr、Ca、Mg、Ba、Y、Ce、La、Sの質量%を示す。 - 引張強さが600MPa以上であることを特徴とする請求項4または5の何れかに記載の液相拡散接合用高強度鋼材。
- 質量%で、C:0.3〜0.6%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.01〜3%、Ca:0.0005〜0.005%、N:0.001〜0.01%、S:0.005超〜0.01%を含有し、P:0.03%以下、O:0.01%以下に制限し、さらに、Ni:0〜4%、Cr:0〜2%、Mo:0〜0.7%、および、B:0〜0.005%の1種または2種以上を含有し、下記(1)式で定められるPS値が10以上であり、かつ下記(2)式で定められるES値に対するMn含有量の比(%Mn)/ESが50以下であり、残部がFe及び不可避的不純物からなる高強度鋼材を液相拡散接合する際に、Vを0.1%以上含有するFe基の非晶質合金箔を前記鋼材開先間に介在し、雰囲気中の酸素含有量を0.00001〜10%として等温加熱することを特徴とする接合部の靭性に優れた高強度鋼材の液相拡散接合方法。
PS=12×(%C)+2.5×(%Mo)+2×(%Cr)+3×(%Mn)+(%Ni) ・・・(1)
ES=0.02×(%Ca)/(%S) ・・・(2)
なお、上記(%C)、(%Mo)、(%Cr)、(%Mn)、(%Ni)、(%Ca)、(%S)はそれぞれ鋼材中に含有するC、Mo、Cr、Mn、Ni、Ca、Sの質量%を示す。 - 前記母材部が、さらに、質量%で、Zr:0.001〜0.05%、Mg:0.0005〜0.005%、Ba:0.0005〜0.005%、Y:0.001〜0.05%、Ce:0.001〜0.05%、La:0.001〜0.05%の1種または2種以上を含有し、かつ下記(3)式で定められるES値に対するMn含有量の比(%Mn)/ESが50以下であることを特徴とする請求項7に記載の接合部の靭性に優れた高強度鋼材の液相拡散接合方法。
ES=0.02×{0.2×(%Zr)+(%Ca)+0.5×(%Mg)+0.3×(%Ba)+0.3×(%Y)+0.6×(%Ce)+0.2×(%La)}/(%S) ・・・(3)
なお、上記(%Zr)、(%Ca)、(%Mg)、(%Ba)、(%Y)、(%Ce)、(%La)、(%S)はそれぞれ鋼材中に含有するZr、Ca、Mg、Ba、Y、Ce、La、Sの質量%を示す。 - 前記鋼材の引張強さが600MPa以上であることを特徴とする請求項7または8の何れかに記載の接合部の靭性に優れた高強度鋼材の液相拡散接合方法。
Priority Applications (1)
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JP2004153918A JP4332066B2 (ja) | 2004-05-24 | 2004-05-24 | 溶接部の靭性に優れた高強度液相拡散接合継手および液相拡散接合用高強度鋼材並びにその液相拡散接合方法 |
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