JP4331813B2 - 塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法及びそれにより得られた樹脂粒子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法及びそれにより得られた樹脂粒子に関する。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニル系樹脂(以下、PVCという)は、機械的強度、耐候性、耐薬品性に優れた材料として、多くの分野に用いられている。しかしながら、耐熱性に劣るため、PVCを塩素化することにより耐熱性を向上させた塩素化塩化ビニル系樹脂(以下、CPVCという)が開発されている。
【0003】
PVCは、熱変形温度が低く使用可能な上限温度が60〜70℃付近であるため、熱水に対して使用できないのに対し、CPVCは熱変形温度がPVCよりも20〜40℃も高いため、熱水に対しても使用可能であり、例えば、耐熱パイプ、耐熱継手、耐熱バルブ等に好適に使用されている。
【0004】
しかしながら、CPVCは熱変形温度が高いため、成形加工時にゲル化させるには高温と強い剪断力とを必要とし、成形加工時に分解して着色しやすいという傾向があった。従って、CPVCは成形加工幅が狭く、不充分なゲル化状態で製品化されることが多く、素材のもつ性能を充分発揮できているとはいえなかった。そのため、CPVCの成形時の熱安定性を改良し、成形加工性を向上させることが望まれている。
【0005】
このような問題点を解決するため、熱安定性の良好なCPVCを製造する方法が提案されている。例えば、特公昭45−30833号公報には、酸素濃度が0.05〜0.35容量%の塩素を特定の流速で供給して、55〜80℃の温度で塩素化すると、熱安定性の良好なCPVCが得られるとしている。しかし、酸素濃度が高く、低温での反応のため、熱安定性が格段に優れているわけでなく、長期の押出成形や射出成形に耐えられない。
【0006】
また、例えば、特開平9−328518号公報には、酸素濃度が200ppm以下の塩素を使用して紫外線照射下に塩素化する方法が提案されている。しかしながら、紫外線照射による低温での反応のために、熱安定性が格段に優れたCPVCは得られていない。
【0007】
ところで、特開平6−32822号公報には、10〜100ppmの酸素を含んだ塩素を供給して110〜135℃の温度で塩素化する方法が提案されている。熱塩素化による高温での塩素化のため、熱安定性に優れたCPVCを得ることが可能であり、塩素化反応も円滑に進行する。しかしながら、高温反応による熱エネルギーの影響のため、粒子内部の空隙の減少が起こり、成形加工時に十分なゲル化を発現しにくく、加工性を向上させるには、更に高温、高剪断による粒子内部からの発熱を発生させる必要がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、熱安定性とゲル化発現性に優れた塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法及びそれにより得られた樹脂粒子を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明(以下、本発明の製造方法という)は、塩化ビニル系樹脂粒子を塩素化してなる塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法であって、前記塩化ビニル系樹脂粒子は、BET比表面積値が1.3〜8m2 /gであり、ESCA分析(電子分光化学分析)による粒子表面分析において、炭素元素と塩素元素との1S結合エネルギー値(eV)におけるピーク比(塩素元素ピーク×2/炭素元素ピーク)が、0.6を超えるものであり、前記塩素化は、塩化ビニル系樹脂粒子を水性媒体中で懸濁状態となした状態で、反応器内に液体塩素又は気体塩素を導入し、反応温度を90〜135℃の範囲で熱エネルギーにより(水素置換する工程を含む場合を除く)塩素化することを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法である。
以下に、本発明を詳述する。
【0010】
本発明の製造方法で用いられるPVCとは、塩化ビニル単量体(以下、VCMという)単独、又は、VCM及びVCMと共重合可能な他の単量体の混合物を公知の方法で重合してなる樹脂である。上記VCMと共重合可能な他の単量体としては特に限定されず、例えば、酢酸ビニル等のアルキルビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のα−モノオレフィン類;塩化ビニリデン;スチレン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0011】
本発明の製造方法で用いられるPVCとしては、特開平8−120007号公報、特開平8−295701号公報、特開平9−132612号公報又は特開平9−227607号公報に記載されている製造方法により得られるPVCが好ましい。
【0012】
上記PVCの平均重合度は特に限定されず、通常用いられる400〜3,000のものが使用できる。
【0013】
本発明の製造方法で用いられるPVC粒子のBET比表面積値は、1.3〜8m2 /gである。比表面積値が1.3m2 /g未満であると、PVC粒子内部に0.1μm以下の微細孔が少なくなるため、塩素化が均一になされなくなり、熱安定性が向上しない。また、ゲル化が遅く、成形加工上好ましくない。比表面積値が8m2 /gを超えると、塩素化前のPVC粒子自体の熱安定性が低下するため、得られるCPVC粒子の加工性が悪い。好ましくは、1.5〜5m2 /gである。
【0014】
上記PVC粒子は、ESCA分析(電子分光化学分析)による粒子表面分析において、炭素元素と塩素元素との1S結合エネルギー値(eV)におけるピーク比(塩素元素ピーク×2/炭素元素ピーク)が、0.6を超えるものである。0.6以下であると、PVC粒子表面に分散剤等の添加剤が吸着していると考えられるため、後工程での塩素化速度が遅くなるだけでなく、得られるCPVC粒子の成形加工性に問題を生じ、また、熱安定性が劣るようになる。好ましくは、上記ピーク比が0.7を超えるものである。
【0015】
上記ピーク比が0.6を超えるPVC粒子の中には、PVC粒子表面の表皮(以下、スキンという)面積が少なく、粒子内部の微細構造(1次粒子)が露出している粒子(スキンレスPVCという)が存在する。同じエネルギー比である場合は、スキンレスPVCを用いることが好ましい。
【0016】
上記PVCの化学的構造の原子存在比は、塩素原子:炭素原子=1:2であり(末端構造、分岐を考慮しないとき)、上記1S結合エネルギー値(eV)におけるピーク比(塩素元素ピーク×2/炭素元素ピーク)は0〜1の値となる。ピーク比が0の場合は、PVC粒子表面がPVC以外で、かつ、塩素を含まない他の物質により覆われていることを意味し、ピーク比が1の場合は、PVC粒子表面が、完全に塩化ビニル成分のみで覆われていることを意味する。
【0017】
上記に示したBET比表面積値及び1S結合エネルギー値(eV)におけるピーク比を有するPVC粒子は、例えば、分散剤として高ケン化度(60〜90モル%)若しくは低ケン化度(20〜60モル%)又はその両方のポリ酢酸ビニル、高級脂肪酸エステル類等を、乳化剤としてアニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤等を添加して水懸濁重合することにより得ることができる。
【0018】
本発明の製造方法で上記PVCを重合する際に用いることができる重合器(耐圧オートクレーブ)の形状及び構造としては特に限定されず、従来よりPVCの重合に使用されているもの等を用いることができる。また、攪拌翼としては特に限定されず、例えば、ファウドラー翼、パドル翼、タービン翼、ファンタービン翼、ブルマージン翼等の汎用的に用いられているもの等が挙げられるが、特にファウドラー翼が好適に用いられ、邪魔板(バッフル)との組み合わせも特に制限されない。
【0019】
上記PVCの塩素化には、PVCを水性媒体中で懸濁状態となした状態で、反応器内に液体塩素又は気体塩素を導入し、反応温度を90〜135℃の範囲で塩素化反応を行う方法を用いる。
【0020】
本発明の製造方法に使用する塩素化反応器の材質は、グラスライニングが施されたステンレス製反応器の他、チタン製反応器等、一般に使用されるものが適用できる。
【0021】
本発明の製造方法では、塩素化は、PVCを水性媒体により懸濁状態にして、液体塩素又は気体塩素を導入して、塩素源を塩素化反応器内に供給することにより行うが、液体塩素を導入することが工程上からも効率的である。反応途中の圧力調製の為、又、塩素化反応の進行に伴う塩素の補給については、液体塩素の他、気体塩素を適宜吹き込むこともできる。
【0022】
上記PVCを懸濁状態に調製する方法としては特に限定されないが、重合後のPVCを脱モノマー処理したケーキ状の樹脂を用いても、乾燥させたものを再度、水性媒体で懸濁化してもよく、あるいは、重合系中より、塩素化反応に好ましくない物質を除去した懸濁液を使用しても良いが、重合後のPVCを脱モノマー処理したケーキ状の樹脂を用いるのが好ましい。反応器内に仕込む水性媒体の量は、特に限定されないが、一般にPVCの重量1に対して2〜10倍(重量)量を仕込む。
【0023】
上記懸濁した状態で塩素化する方法としては、熱により樹脂の結合や塩素を励起させて塩素化を促進する方法(以下、熱塩素化という)を用いる。熱エネルギーにより塩素化する際、加熱方法としては特に限定されず、例えば、反応器壁からの外部ジャケット方式の他、内部ジャケット方式、スチーム吹き込み方式等が挙げられ、通常は、外部ジャケット方式又は内部ジャケット方式が効果的である。
【0024】
上記塩素化反応温度は、90〜135℃であり、好ましくは90〜125℃である。反応温度が90℃未満では塩素化反応速度が低いため、反応を進行させるには、過酸化物に代表される反応触媒を多量に添加する必要があり、その結果、得られる樹脂の熱安定性が劣る。反応温度が135℃を超えると、熱エネルギーによって樹脂が劣化し、得られるCPVCが着色する。
【0025】
本発明の製造方法により得られるCPVC粒子では、吸光度の値により、塩素化反応時の分子鎖中の異種構造を定量化し、熱安定性の指標とする。吸光度は、紫外吸収スペクトルを測定し、CPVC中の異種構造である、−CH=CH−C(=O)−、−CH=CH−CH=CH−が吸収をもつ、波長235nmの吸光度(セル長1cm、測定温度23℃)の値を読み取る方法で測定される。二重結合した炭素の隣の炭素に付いた塩素原子は不安定であることから、そこを起点として、脱塩酸が起こる、つまり、吸光度の値が大きいほど、脱塩酸が起こり易く、熱安定性が低いことになる。吸光度の値が0.8を超えると、分子鎖中の異種構造の影響が大きくなるため、その結果、熱安定性に劣るようになる。
【0026】
1g/kgテトラヒドロフラン溶液の吸光度を0〜0.8にする塩素化方法としては、高温での塩素化方法が挙げられる。高温反応による高い熱安定性発現は、塩素化反応中の酸化(カルボニル基に代表される異種構造生成)が高温ほど起こりにくい(高温程、反応の平衡が生成を抑制する方向に移動する)ことに起因する。具体的には、反応温度90〜135℃、より好ましくは、90〜125℃の範囲で行う。
【0027】
本発明の製造方法で使用する塩素としては特に限定されないが、特開平6−32822号公報に記載されているような、ボンベ塩素の5〜10重量%をパージした後の塩素を用いるのが好ましい。
【0028】
上記反応器内のゲージ圧力は、特に限定されないが、塩素圧力が高いほど塩素がPVC粒子の内部に浸透し易いため、0.3〜2MPaの範囲が好ましい。
【0029】
請求項5、6記載の発明のCPVC粒子の塩素含有率は60重量%以上72重量%未満である。塩素含有率が60重量%未満であると耐熱性の向上が不十分であり、72重量%以上であると成形加工が困難となりゲル化が不十分となる。好ましくは63〜70重量%である。
【0030】
請求項5、6記載の発明のCPVC粒子の空隙率は、30〜40容量%である。上記空隙率は、水銀圧入法により圧力2000kg/cm2 で測定されるものを言う。空隙率が30容量%未満になると、成形加工時のゲル化が遅くなり成形加工上好ましくなく、40容量%を超えると、成形時にスクリューへの食い込みが悪くなり、ゲル化性が劣る。好ましくは、31〜38容量%である。
【0031】
請求項5、6記載の発明のCPVC粒子の1g/kgテトラヒドロフラン溶液の吸光度(セル長1cm、測定温度23℃)は、波長235nmにおいて0.2以下である塩素化塩化ビニル系樹脂である。
【0032】
CPVC粒子では、吸光度の値により、塩素化反応時の分子鎖中の異種構造を定量化し、熱安定性の指標とする。吸光度の値が0.2以下であると、熱安定性に特に優れる。
【0033】
請求項5に記載の発明のCPVC粒子は、水銀圧入法により圧力が0〜2000kg/cm2 で測定した細孔容積分布において、0.001〜0.1μmの空隙容積が、全空隙容積の2〜15容積%である。樹脂粒子内の空隙細孔径は、樹脂の空隙細孔部に圧入される水銀の圧力との関数になっているため、圧入圧力と水銀重量を連続的に測定すれば、細孔径の分布が測定できることになる。0.001〜0.1μmの範囲の空隙容積が、全空隙容積中の2容積%未満であると、粒子内部の微細孔の割合が少ないため成形加工時のゲル化性に劣り、15容積%を超えると、塩素化時の塩素の拡散がバランスよく行われておらず、粒子内の塩素化度分布が大きくなりすぎて、熱安定性がよくない。好ましくは、0.001〜0.1μmの範囲の空隙容積が、全空隙容積中の3〜13容積%である。
【0034】
請求項6に記載の発明のCPVC粒子は、BET比表面積値が2〜12m2 /gである。BET比表面積が2m2 /g未満になると、粒子内部の微細孔の割合が少ないため、成形加工時に、粒子内溶融が起こりにくくなりゲル化性に劣る。BET比表面積値が12m2 /gを超えると、内部からの摩擦熱の発生が急激に起こり成形時の熱安定性が劣る。好ましいBET比表面積値は3〜10m2 /gである。
【0035】
本発明の製造方法では、まず、PVCの粒子構造が特徴を有する。すなわち、表面状態及び内部多孔状態を規定することにより成形加工時の易ゲル化性が発現する。次に、特定の反応温度で高温熱塩素化することにより高熱安定性が発現する。この高温反応による高熱安定性の発現は、塩素化反応中の酸化(カルボニル基に代表される異種構造生成)が高温ほど起こりにくい(高温程、反応の平衡が生成を抑制する方向に移動する)ことに基づいている。こうして、本発明によると、高熱安定性と易ゲル化性を併せ持つ樹脂を製造することが可能となる。
請求項5、6に記載の発明のCPVCでは、まず、CPVCの粒子構造が特徴を有する。すなわち、内部多孔状態を規定することにより成形加工時の易ゲル化性が発現する。次に、CPVC分子鎖中の異種構造量を規定することにより高熱安定性が発現する。こうして、本発明により、高熱安定性と易ゲル化性を併せ持つ樹脂が提供される。
【0036】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみであるものではない。
【0037】
実施例1
PVCの調製
内容積100リットルの重合器(耐圧オートクレーブ)に脱イオン水50kg、塩化ビニル単量体に対して、平均ケン化度72モル%及び重合度700の部分ケン化ポリ酢酸ビニル400ppm、ソルビタンモノラウレート(HLB8.6)1,600ppm、ラウリン酸1,500ppm、ポリアクリルアミド(20℃、1atmで0.1重量%水溶液のブルックフィールズ粘度が51cps)100ppm並びにt−ブチルパーオキシネオデカノエート500ppmを投入した。次いで、重合器内を45mmHgまで脱気した後、塩化ビニル単量体33kgを仕込み攪拌を開始した。重合器を57℃に昇温して重合を開始し、重合反応終了までこの温度を保った。
【0038】
重合転化率が90%になった時点で反応を終了し、重合器内の未反応単量体を回収した後、重合体をスラリー状で系外へ取り出し、脱水乾燥してPVCを得た。得られたPVC粒子のBET比表面積値は3.7m2 /gであった。また、スキン層の存在程度を示すESCA分析値は、0.80であった。なお、BET比表面積、及び、ESCA分析の測定は、下記方法により実施した。
【0039】
CPVCの調製
内容積300リットルのグラスライニング製耐圧反応槽に脱イオン水150kgと上記で得たPVC40kgとを入れ、攪拌してPVCを水中に分散させ、真空ポンプにて内部空気を吸引し、ゲージ圧が−0.8kgf/cm2 になるまで減圧した。窒素ガスで圧戻し(ゲージ圧が0になるまで戻すこと)を行い、再び真空ポンプで吸引して反応槽内の酸素を除去した。この間、加熱したオイルをジャケットに通して反応槽内を加温した。
【0040】
反応槽内の温度が90℃に達したとき、塩素ガスを供給し始め、110℃定温で反応を進行させた。反応槽内の発生塩化水素濃度から塩素化度を計算し、塩素化度63重量%の時点で濃度100ppmの過酸化水素水を0.5kg/hrで連続添加しながら反応を継続した。塩素化度が66.5重量%に達した時点で塩素ガスの供給を停止し、塩素化反応を終了した。反応中添加した過酸化水素の量は、仕込み樹脂量に対し4ppmであった。
【0041】
更に、反応槽内に窒素ガスを吹き込んで未反応塩素を除去し、得られた樹脂を水で洗浄し脱水、乾燥して粉末状のCPVCを得た。得られたCPVCの塩素含有率は、66.5重量%であった。
【0042】
得られたCPVC粒子の空隙率は34.6容量%、比表面積値は6.4m2 /g、0.001〜0.1μmの範囲の空隙容積(以下、空隙容積という)は、7.8容積%であった。
【0043】
実施例3
PVCの調製は、実施例1と同様に行った。
CPVCの調製
内容積300リットルのグラスライニング製耐圧反応槽に脱イオン水150kgと上記で得たPVC40kgとを入れ、攪拌してPVCを水中に分散させ、真空ポンプにて内部空気を吸引し、ゲージ圧が−0.8kgf/cm2 になるまで減圧した。窒素ガスで圧戻しを行い、再び真空ポンプで吸引して反応槽内の酸素を除去した。この間、加熱したオイルをジャケットに通して反応槽内を加温した。
【0044】
反応槽内の温度が85℃に達したとき、塩素ガスを供給し始め、90℃定温で反応を進行させた。反応槽内の発生塩化水素濃度から塩素化度を計算し、塩素化度62重量%の時点で濃度100ppmの過酸化水素水を0.5kg/hrで連続添加しながら反応を継続した。塩素化度が66.5重量%に達した時点で塩素ガスの供給を停止し、塩素化反応を終了した。反応中添加した過酸化水素の量は、仕込み樹脂量に対し8ppmであった。
【0045】
得られたCPVC粒子の空隙率は35.0容量%、比表面積値は6.6m2 /g、空隙容積は8.0容積%であった。
【0046】
実施例4
PVCの調製は、実施例1と同様に行った。CPVCの調製は、反応温度を130℃にしたこと、及び、過酸化水素を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0047】
更に、反応槽内に窒素ガスを吹き込んで未反応塩素を除去し、得られた樹脂を水で洗浄し脱水、乾燥して粉末状のCPVCを得た。得られたCPVCの塩素含有率は、66.5重量%であった。
【0048】
得られたCPVC粒子の空隙率は33.9容量%、比表面積値は6.1m2 /g、空隙容積は7.6容積%であった。
【0049】
実施例5
PVCの調製は、実施例1使用の部分ケン化ポリ酢酸ビニルを550ppmにしたこと以外は、実施例1と同様に行った。CPVCの調製は、実施例1と同様に行った。
【0050】
得られたCPVC粒子の空隙率は33.8容量%、比表面積値は5.2m2 /g、空隙容積は6.3容積%であった。
【0051】
実施例6
PVCの調製は、実施例1と同様に行った。CPVCの調製は、CPVCの塩素化度を64.0重量%としたこと、及び、過酸化水素を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0052】
得られたCPVC粒子の空隙率は34.1容量%、比表面積値は6.3m2 /g、空隙容積は7.6容積%であった。
【0053】
実施例7
PVCの調製は、実施例1と同様に行った。CPVCの調製は、CPVCの塩素化度を70.0重量%としたこと以外は、実施例1と同様に行った。添加した過酸化水素の量は仕込み樹脂量に対して10ppmであった。
【0054】
得られたCPVC粒子の空隙率は35.3容量%、比表面積値は6.7m2 /g、空隙容積は8.1容積%であった。
【0055】
比較例1
PVCの調製
内容積100リットルの重合器(耐圧オートクレーブ)に脱イオン水50kg、塩化ビニル単量体に対して、平均ケン化度72モル%及び重合度750の部分ケン化ポリ酢酸ビニル1,300ppmを懸濁分散剤として添加後、t−ブチルパーオキシネオデカノエート550ppmを投入した。次いで、重合器内を45mmHgまで脱気した後、塩化ビニル単量体33kgを仕込み攪拌を開始した。重合器を57℃に昇温して重合を開始し、重合反応終了までこの温度を保った。
【0056】
重合転化率が90%になった時点で反応を終了し、重合器内の未反応単量体を回収した後、重合体をスラリー状で系外へ取り出し、脱水乾燥してPVCを得た。得られたPVC粒子のBET比表面積値は0.7m2 /gであった。また、スキン層の存在程度を示すESCA分析値は、0.20であった。なお、BET比表面積、及び、ESCA分析の測定は下記方法により実施した。CPVCの調製は、実施例1と同様に行った。
【0057】
得られたCPVC粒子の空隙率は27.3容量%、比表面積値は1.8m2 /g、空隙容積は1.1容積%であった。
【0058】
比較例2
PVCの調製は比較例1と同様に行った。
CPVCの調製
内容積300リットルのグラスライニング製耐圧反応槽に脱イオン水150kgと上記で得たPVC40kgとを入れ、攪拌してPVCを水中に分散させ、真空ポンプにて内部空気を吸引し、ゲージ圧が−0.8kgf/cm2 になるまで減圧した。窒素ガスで圧戻しを行い、再び真空ポンプで吸引して反応槽内の酸素を除去した。この間、加熱したオイルをジャケットに通して反応槽内を加温した。
【0059】
反応槽内の温度が70℃に達したとき、水銀ランプにより槽内を紫外線で照射しながら反応を進行させた。反応槽内の発生塩化水素濃度から塩素化度を計算し、塩素化度が66.5重量%に達した時点で塩素化反応を終了した。(表1、2中 光塩素化と記す)更に、反応槽内に窒素ガスを吹き込んで未反応塩素を除去し、得られた樹脂を水で洗浄し脱水、乾燥して粉末状のCPVCを得た。得られたCPVCの塩素化度は66.5重量%であった。
【0060】
得られたCPVC粒子の空隙率は27.9容量%、比表面積値は2.0m2 /g、空隙容積は1.4容積%であった。
【0061】
比較例3
PVCの調製は、実施例1と同様に行った。CPVCの調製は、反応温度を140℃にしたこと、及び、過酸化水素を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行った。
【0062】
得られたCPVC粒子の空隙率は28.8容量%、比表面積値は1.9m2 /g、空隙容積は1.3容積%であった。
【0063】
比較例4
PVCの調製は、実施例1と同様に行った。CPVCの調製は、CPVCの塩素化度を73.0重量%としたこと以外は実施例1と同様に行った。添加した過酸化水素の量は仕込み樹脂量に対して40ppmであった。
【0064】
得られたCPVC粒子の空隙率は36.8容量%、比表面積値は10.0m2 /g、空隙容積は12.1容積%であった。
【0065】
比較例11
PVCの調製は実施例1と同様に行った。
CPVCの調製は比較例2と同様に行った。
【0066】
得られたCPVC粒子の空隙率は35.2容量%、比表面積値は6.6m2 /g、空隙容積は8.1容積%であった。
【0067】
上記実施例1〜7、及び、比較例1〜4及び11で得られたCPVC粒子について性能評価を行い、その結果を表1にした。
【0068】
【表1】
【0069】
実施例8
PVCの調製、CPVCの調製とも、実施例1と同様に行った。得られたCPVCをテトラヒドロフランに溶解し、濃度1g/kgの溶液を調製した。この溶液の、波長235nmでの吸光度を、セル長1cm、測定温度23℃で測定したところ、0.13であった。
【0070】
実施例10
PVCの調製は、実施例1と同様に行った。CPVCの調製は、実施例3と同様に行った。得られたCPVCをテトラヒドロフランに溶解し、濃度1g/kgの溶液を調製した。この溶液の、波長235nmでの吸光度を、セル長1cm、測定温度23℃で測定したところ、0.12であった。
【0071】
実施例11
PVCの調製は、実施例1と同様に行った。CPVCの調製は、実施例4と同様に行った。得られたCPVCをテトラヒドロフランに溶解し、濃度1g/kgの溶液を調製した。この溶液の、波長235nmでの吸光度を、セル長1cm、測定温度23℃で測定したところ、0.32であった。
【0072】
実施例12
PVCの調製、CPVCの調製とも、実施例5と同様に行った。得られたCPVCをテトラヒドロフランに溶解し、濃度1g/kgの溶液を調製した。この溶液の、波長235nmでの吸光度を、セル長1cm、測定温度23℃で測定したところ、0.14であった。
【0073】
実施例13
PVCの調製は、実施例1と同様に行った。CPVCの調製は、実施例6と同様に行った。得られたCPVCをテトラヒドロフランに溶解し、濃度1g/kgの溶液を調製した。この溶液の、波長235nmでの吸光度を、セル長1cm、測定温度23℃で測定したところ、0.10であった。
【0074】
実施例14
PVCの調製は、実施例1と同様に行った。CPVCの調製は、実施例7と同様に行った。得られたCPVCをテトラヒドロフランに溶解し、濃度1g/kgの溶液を調製した。この溶液の、波長235nmでの吸光度を、セル長1cm、測定温度23℃で測定したところ、0.29であった。
【0075】
比較例5
PVCの調製、CPVCの調製とも、比較例1と同様に行った。得られたCPVCをテトラヒドロフランに溶解し、濃度1g/kgの溶液を調製した。この溶液の、波長235nmでの吸光度を、セル長1cm、測定温度23℃で測定したところ、0.27であった。
【0076】
比較例6
PVCの調製は、比較例1と同様に行った。CPVCの調製は、比較例2と同様に行った。得られたCPVCをテトラヒドロフランに溶解し、濃度1g/kgの溶液を調製した。この溶液の、波長235nmでの吸光度を、セル長1cm、測定温度23℃で測定したところ、0.85であった。
【0077】
比較例7
PVCの調製は、実施例1と同様に行った。
CPVCの調製
内容積300リットルのグラスライニング製耐圧反応槽に脱イオン水150kgと上記で得たPVC40kgとを入れ、攪拌してPVCを水中に分散させ、真空ポンプにて内部空気を吸引し、ゲージ圧が−0.8kgf/cm2 になるまで減圧した。窒素ガスで圧戻しを行い、再び真空ポンプで吸引して反応槽内の酸素を除去した。この間、加熱したオイルをジャケットに通して反応槽内を加温した。
【0078】
反応槽内の温度が60℃に達したとき、塩素ガスを供給し始め、65℃定温で反応を進行させた。反応槽内の発生塩化水素濃度から塩素化度を計算し、塩素化度63重量%の時点で濃度500ppmの過酸化水素水を0.5kg/hrで連続添加しながら反応を継続した。塩素化度が66.5重量%に達した時点で塩素ガスの供給を停止し、塩素化反応を終了した。反応中添加した過酸化水素の量は、仕込み樹脂量に対し500ppmであった。
【0079】
更に、反応槽内に窒素ガスを吹き込んで未反応塩素を除去し、得られた樹脂を水で洗浄し脱水、乾燥して粉末状のCPVCを得た。得られたCPVCの塩素含有率は、66.5重量%であった。
【0080】
得られたCPVCをテトラヒドロフランに溶解し、濃度1g/kgの溶液を調製した。この溶液の、波長235nmでの吸光度を、セル長1cm、測定温度23℃で測定したところ、1.32であった。また、得られたCPVC粒子の空隙率は35.9容量%、比表面積値は6.9m2 /g、空隙容積は8.3容積%であった。
【0081】
比較例8
PVCの調製は、実施例1と同様に行った。CPVCの調製は、反応温度を60℃にしたこと以外は比較例2と同様に行った。
【0082】
得られたCPVCをテトラヒドロフランに溶解し、濃度1g/kgの溶液を調製した。この溶液の、波長235nmでの吸光度を、セル長1cm、測定温度23℃で測定したところ、0.92であった。また、得られたCPVC粒子の空隙率は36.0容量%、比表面積値は7.0m2 /g、空隙容積は8.5容積%であった。
【0083】
比較例9
PVCの調製は、実施例1と同様に行った。CPVCの調製は、比較例3と同様に行った。
【0084】
得られたCPVCをテトラヒドロフランに溶解し、濃度1g/kgの溶液を調製した。この溶液の、波長235nmでの吸光度を、セル長1cm、測定温度23℃で測定したところ、0.41であった。
【0085】
比較例10
PVCの調製は、実施例1と同様に行った。CPVCの調製は、比較例4と同様に行った。
【0086】
得られたCPVCをテトラヒドロフランに溶解し、濃度1g/kgの溶液を調製した。この溶液の、波長235nmでの吸光度を、セル長1cm、測定温度23℃で測定したところ、0.52であった。
【0087】
比較例12
PVCの調製は、実施例1と同様に行った。CPVCの調製は、比較例2と同様に行った。得られたCPVCをテトラヒドロフランに溶解し、濃度1g/kgの溶液を調製した。この溶液の、波長235nmでの吸光度を、セル長1cm、測定温度23℃で測定したところ、0.70であった。
【0088】
上記実施例8〜14、及び、比較例5〜10及び12で得られたCPVC粒子について性能評価を行い、その結果を表2にした。
【0089】
【表2】
【0090】
PVC評価
上記実施例1〜14、比較例1〜12で用いたPVC粒子のBET比表面積値の測定及びESCA分析の方法は以下の通りである。
(1)BET比表面積値の測定
試料管に測定サンプル約2gを投入し、前処理として70℃で3時間サンプルを真空脱気した後、サンプル重量を正確に測定した。前処理の終了したサンプルを測定部(40℃恒温槽)に取り付けて測定を開始した。測定終了後、吸着等温線の吸着側のデータからBETプロットを行い、比表面積を算出した。なお、測定装置として比表面積測定装置「BELSORP 28SA」(日本ベル社製)を使用し、測定ガスとして窒素ガスを使用した。
【0091】
(2)ESCA分析
PVC粒子の表面をESCA(Electron Spectroscopyfor Chemical Analysis:電子分光化学分析)でスキャンし、C1S(炭素)、Cl1S(塩素)、O1S(酸素)の各ピーク面積より塩素量を基準に粒子表面の塩化ビニル樹脂成分を定量分析した。
・使用機器:日本電子社製「JPS−90FX」
・使用条件:X線源(Mg Kα線)、12kV−15mA
・スキャン速度:200ms/0.1eV/scan
・パスエネルギー:30eV
【0092】
CPVC評価
上記実施例1〜14、比較例1〜12で得られたCPVCの性能評価は以下のとおりである。
【0093】
評価方法
(1)塩素含有率測定
JIS K 7229に準拠して行った。
(2)空隙率、細孔分布測定
水銀圧入ポロシメーターを用いて、2000kg/cm2 でCPVC100gに圧入される水銀の容量を測定して空隙率を求めた。空隙率とは樹脂粒子体積に占める空隙の容積である。細孔分布は、空隙率を測定するために0〜2000kg/cm2 まで圧力を上げるが、その際に水銀圧入量を連続的に測定し、細孔径の分布を測定した。
【0094】
(3)BET比表面積値の測定
上記PVC粒子のBET比表面積値の測定方法と同様である。
【0095】
(4)吸光度測定
CPVCをテトラヒドロフランに溶解し、濃度1g/kgの溶液を調製。分光光度計により、セル長1cm、測定温度23℃で、波長235nmでの吸光度を測定した。なお、使用機器は日立製作所社製「U−3300」である。
【0096】
(5)加工性(ゲル化温度の測定)
Haake社製プラストミル「レオコード90」を使用して、下記樹脂組成物55gを、回転数40rpmで、温度を150℃から毎分5℃の昇温速度で上昇させながら混練し、混練トルクが最大になる時の温度を測定した。なお、樹脂組成物としては、CPVC100重量部に対して、三塩基性硫酸鉛3重量部、二塩基性ステアリン酸鉛1重量部及びMBS樹脂10重量部からなるものを使用した。
【0097】
(6)熱安定性試験
上記樹脂組成物を、8インチロール2本からなる混練機に供給してロール表面温度205℃で混練し、混練物をロールに巻き付けてから30秒毎に巻き付いたCPVC樹脂シートを切り返しながら、3分毎に少量のシートを切り出して、シートの着色度を比較し、黒褐色に変わる時間で熱安定性を判定した。
【発明の効果】
本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の構成は、上記の通りであり、本発明によると、熱安定性とゲル化発現性に優れた塩素化塩化ビニル系樹脂粒子が提供される。本発明の塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法の構成は、上記の通りであり、本発明によると、熱安定性とゲル化発現性に優れた塩素化塩化ビニル系樹脂粒子を製造することができる。
Claims (6)
- 塩化ビニル系樹脂粒子を塩素化してなる塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法であって、前記塩化ビニル系樹脂粒子は、BET比表面積値が1.3〜8m2 /gであり、ESCA分析(電子分光化学分析)による粒子表面分析において、炭素元素と塩素元素との1S結合エネルギー値(eV)におけるピーク比(塩素元素ピーク×2/炭素元素ピーク)が、0.6を超えるものであり、前記塩素化は、塩化ビニル系樹脂粒子を水性媒体中で懸濁状態となした状態で、反応器内に液体塩素又は気体塩素を導入し、反応温度を90〜135℃の範囲で熱エネルギーにより(水素置換する工程を含む場合を除く)塩素化することを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法。
- 塩化ビニル系樹脂粒子のBET比表面積値が1.5〜5m2 /gである請求項1記載の塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法。
- 塩化ビニル系樹脂粒子のESCA分析による粒子表面分析における上記ピーク比が、0.7を超えるものである請求項1又は2記載の塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法。
- 前記反応温度が90〜125℃であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の塩素化塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法。
- 請求項1〜4いずれかに記載の製造方法により得られた塩素化塩化ビニル系樹脂粒子であって、塩素含有率は60重量%以上72重量%未満であり、水銀圧入法により圧力2000kg/cm2 で測定した空隙率は30〜40容量%であり、水銀圧入法により圧力が0〜2000kg/cm2 で測定した細孔容積分布において、0.001〜0.1μmの空隙容積は、全空隙容積の2〜15容積%であり、1g/kgテトラヒドロフラン溶液の吸光度(セル長1cm、測定温度23℃)は、波長235nmにおいて0.2以下であることを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂粒子。
- 請求項1〜4いずれかに記載の製造方法により得られた塩素化塩化ビニル系樹脂粒子であって、塩素含有率は60重量%以上72重量%未満であり、水銀圧入法により圧力2000kg/cm2 で測定した空隙率は30〜40容量%であり、BET比表面積値は2〜12m2 /gであり、1g/kgテトラヒドロフラン溶液の吸光度(セル長1cm、測定温度23℃)は、波長235nmにおいて0.2以下であることを特徴とする塩素化塩化ビニル系樹脂粒子。
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