JP4329978B2 - 半導体レーザモジュールと、光帰還機能を有する半導体レーザ素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体レーザモジュールと、光帰還機能を有する半導体レーザ素子に関し、更に詳しくは、出力するレーザ光が940〜990nmの波長域にあり、かつそのレーザ光の光出力が時間的に安定している半導体レーザモジュールと光帰還機能を有する半導体レーザ素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)通信方式が複数の信号光を伝送する光通信システムとして発展している。このシステムでは、光線路の所定箇所に例えばErドープ光ファイバ増幅器(EDFA)を配置し、ここに半導体レーザ素子を励起用光源とするポンピングレーザモジュールを接続し、このレーザモジュールから励起用レーザ光を前記EDFAに入射して、信号光源から伝送されてきた信号光を光増幅することにより、光増幅した信号光が再び下流側へ伝送される。
【0003】
その場合、レーザモジュールに組み込まれている半導体レーザ素子に対しては、信号光源の光出力の変動に追随して注入電流値を変化させることにより、励起用レーザ光の光出力を制御するような処置が採られている。
発振波長が1480nm波長域にある半導体レーザ素子の場合はEDFAにおける利得帯域が広いので上記したような処置は有効である。しかしながら、発振波長が980nm波長域にある半導体レーザ素子の場合には、EDFAにおける利得帯域が狭いので、上記したような処置を採用することはできない。
【0004】
このようなことから、発振波長が980nm波長域にある半導体レーザ素子を用いてレーザモジュールを構成する場合には、そこからの励起用レーザ光の波長を、狭い利得帯域に対応する波長に特定することが必要になる。そのために、光源である半導体レーザ素子の出射端面(前端面)に、所定の反射帯域幅を有する例えばファイバブラッググレーティングのような、波長選択機能を備え、同時に光帰還機能を有する要素を光結合して光帰還構造を形成することにより、レーザモジュールから出射する励起用レーザ光の波長を例えばファイバブラッググレーティングの反射帯域幅内で特定し、かつ安定化させることが検討されている。
【0005】
しかしながら、発振波長が980nm波長域にある代表的な半導体レーザ素子であるGaAs系レーザ素子の場合、ファイバブラッググレーティングと光結合させてレーザモジュールを組み立てると、得られる励起用レーザ光の波長はファイバブラッググレーティングの反射帯域幅内にあるとはいえ、例えばレーザ素子への注入電流の変動や、レーザモジュールに加えられるわずかな機械的な振動や、またはレーザモジュールに対する光ファイバの配置が変化すると、そのレーザモジュールから得られる励起用レーザ光にはノイズが含まれてくるという問題がある。
【0006】
これは、GaAs系レーザ素子の場合、発振縦モードがシングルモードになりやすく、その光出力は数%のオーダで変動しやすいからであると考えられる。
レーザモジュールから出射する励起用レーザ光における光出力の変動は、通常、0.5%以下におさめることが規格化されていることを考えると、上記した問題は不都合である。
【0007】
したがって、上記したレーザモジュールにおいて、ファイバブラッググレーティングの反射帯域幅内で安定した励起用レーザ光を得ようとする場合には、光源であるGaAs系レーザ素子の発振レーザ光は、マルチモード化していることが必要であると考えられる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、発振波長が980nm波長域にあるGaAs系レーザ素子とファイバブラッググレーティングを光結合してレーザモジュールを組み立てたときにおける上記した問題を解決し、励起用レーザ光の波長はファイバブラッググレーティングの反射帯域幅内に存在すると同時に時間的に安定していて、ノイズの発生が抑制されている半導体レーザモジュールの提供を目的とする。具体的には、ファイバブラッググレーティングのような光帰還機能を有する要素の反射帯域幅内でマルチモード化した励起用レーザ光を発振し、励起用レーザ光の光出力が特定波長で時間的に安定しているレーザモジュールが提供される。また、それ自体で光帰還機能を有しているので励起用光源として使用可能な半導体レーザ素子が提供される。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明においては、少なくともGaとAsを含む半導体材料から成る井戸層とそれを囲む障壁層を形成した活性層を有する層構造がGaAs基板の上に形成され、前記基板に平行に光が共振する半導体レーザ素子と、光帰還機能を有する要素とを光結合した励起用光源に用いられる半導体レーザモジュールにおいて、
前記半導体レーザモジュールは、縦モードがマルチモードで発振し、かつ、前記活性層における井戸層の厚みが10nm以上であることを特徴とする半導体レーザモジュールが提供される。
【0010】
また、本発明においては、前記半導体レーザ素子の少なくとも前記活性層には、不純物、とりわけSiを好適とするn型不純物がドーピングされているか、または/および、前記層構造のn型クラッド層にはSiを好適とするn型不純物がドーピングされており、更には、前記量子井戸構造において、井戸層の厚みの方が障壁層の厚みよりも厚いことを好適とする半導体レーザモジュールが提供される。
【0011】
更に、本発明において、少なくともGaとAsを含む半導体材料から成る量子井戸構造の活性層を有する層構造がGaAs基板の上に形成されていて、
前記半導体レーザ素子の前記活性層における井戸層の厚みが厚く、かつ、前記活性層近傍にグレーティングを形成することにより光帰還機能を有する要素を形成した半導体レーザモジュールが提供される。
【0012】
また、前記半導体レーザ素子における前記基板に平行に光が共振する共振器の長さをL(μm)としたとき、前記半導体レーザモジュールの光出力は、L×0.1mW/μm以上となる半導体レーザモジュールが提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の半導体レーザモジュールは、後述する半導体レーザ素子と光帰還機能を有する要素とを光結合して構成されるが、そのときに用いる要素は、波長選択機能を有し、かつ特定波長に対して特定の反射率を示すものであれば何であってもよく、例えば、ファイバブラッググレーティング(FBG)、誘電体多層膜フィルタ、分布ブラック反射鏡(DBR)などをあげることができる。
【0014】
本発明のレーザモジュールの1例Aを図1に示す。
このレーザモジュールAでは、パッケージ1の底板1aの上に後述するレーザ素子B1を冷却するためのペルチェモジュール2が配置され、更にペルチェモジュール2の上には例えばコバールから成るベース材3が配置されている。
ベース材3の上には、チップキャリア4を介してレーザ素子B1が配置され、このレーザ素子B1と光軸を一致させた状態で、ファイバブラッググレーティング5aを有する光ファイバ5が光結合されている。
【0015】
光ファイバ5はファイバ固定部材6でベース材3の上に固定され、また、その出射端側はパッケージ1の筒状孔部1b内に気密に取り付けられたスリーブ7を介してパッケージ1から引き出されている。
また、レーザ素子B1の背面側にはフォトダイオード8が配置され、レーザモジュールの光出力の大小をモニタできるようになっている。
【0016】
なお、レーザ素子と光ファイバとの光結合効率を高めるためには、光ファイバとしてその先端がレンズ形状になっているものを用いることが好ましいが、先端がレンズ形状でなくても、途中にレンズを介在させることにより両者間の光結合効率を高めることができる。
また、光ファイバとして楔形光ファイバを用いると、組み立てたレーザモジュールは、光結合効率が高く、また組み立てに要する部品点数も低減し、総合的な製造コストが低減する。
【0017】
このレーザモジュールAに組み込まれる本発明のレーザ素子の1例B1を図2に示す。
このレーザ素子B1は上部がリッジ導波路形状になっていて、全体は所定の共振器長(L)を有している。そして、n−GaAsから成る基板10の上に、後述する層構造Cが形成され、基板10の裏面には例えばAuGeNi/Auから成る下部電極12が形成され、前記層構造Cの上面には例えば窒化ケイ素(SiNx)から成る保護膜13を介して例えばTi/Pt/Auから成る上部電極14が形成されている。
【0018】
層構造Cは、少なくともGaとAsを含む半導体材料のエピタキシャル結晶成長層で構成されていて、共振器内における導波方向はn−GaAs基板10の表面と平行している。この層構造Cは、具体的には、例えばn−AlGaAsから成る下部クラッド層15、例えばi−AlGaAsから成る下部GRIN−SCH層16a、後述する活性層17、例えばi−AlGaAsから成る上部GRIN−SCH層16b、例えばp−AlGaAsから成る上部クラッド層18、および例えばp−GaAsから成るキャップ層19がこの順序で積層された構造になっている。
【0019】
なお、層構造Cの上部表面を被覆して形成される保護膜13は、リッジ導波路の上面の一部を被覆していない。そして保護膜13の非被覆箇所から表出するキャップ層19には、直接上部電極14が接触していて、ここから層構造Cの活性層17に注入電流が供給できるようになっている。
そして、出射端面(前端面)は例えば反射率が5%である誘電体膜(図示しない)で被覆され、他の端面(後端面)は例えば反射率が92%の誘電体膜(図示しない)で被覆されていて、共振器で発振したレーザ光の光出力を効率よく取り出せるようになっている。
【0020】
ここで、活性層17は、1個または複数の井戸層とそれを囲む障壁層で形成されている。とくに、レーザモジュールAからの励起用レーザ光の時間的安定性の点からすると、1個の井戸層とその両側にそれぞれ障壁層を有している量子井戸構造が好適である。
井戸層は通常例えば、発振波長が980nm波長域の場合はInGaAs,GaAsSb,InGaAsSb,InGaAsP,InGaAsSbP,GaAsSbPなどで形成されるが、発振波長が870nm波長域の場合はi−GaAsで形成されていてもよい。また、障壁層は発振波長が980nm波長域の場合は通常i−InGaAsで形成されるが、発振波長の関係で上記した他の半導体材料で形成されていてもよい。
【0021】
この半導体レーザ素子は、上記した層構造Cにおいて、下記の条件を満たしていることを特徴とする。
(1)第1の条件:
まず、井戸層が従来に比べて厚くなっていることである。具体的には、10nm以上になっている。これが基本的で必須な条件である。その場合、井戸層の厚みの上限は、当該井戸層の形成に用いる半導体材料の臨界膜厚で制限されることはいうまでもないが、その上限値は概ね20nm程度である。
【0022】
このような層構造Cを有する本発明のレーザ素子は、上部電極14からの注入電流がしきい値電流(Ith)以上である場合には940〜980nmの波長域のレーザ光を前端面から発振する。
そして、このレーザ素子が組み込まれているレーザモジュールからの励起用レーザ光は、後述する光帰還機能との相互作用により、所定のファブリ・ペロー間隔を置く複数本の縦モードで構成されるマルチモードになり、その時間的な変動は抑制されてそのスペクトルは時間的に安定化する。
【0023】
なお、GaAs系レーザ素子における従来からの研究動向は、レーザ素子における利得スペクトルを制御するために、井戸層の厚みを実質的に10nmより薄くすることが追求されていた。しかしながら、そのようなレーザ素子に例えばファイバブラッググレーティング(FBG)を光結合してレーザモジュールを組み立てても、ファイバブラッググレーティングからの帰還光はシングルモード化して、そのレーザモジュールから出力する励起用レーザ光のスペクトルは時間的に変動して不安定化する傾向を示していた。
【0024】
本発明者らは、上記した問題を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、従来とは全く逆に、レーザ素子における井戸層の厚みを10nm以上に厚くすると、それが組み込まれているFBG付きレーザモジュールからの励起用レーザ光は、マルチモード化し、その時間的安定性は向上するとの知見を得るに至り、更に研究を重ねた結果、層構造Cにおける上記した第1の条件を確定したのである。
【0025】
(2)第2の条件:
上記した第1の条件の充足を前提としたうえで、量子井戸構造の少なくとも1層には、不純物がドーピングされていることである。
その場合、不純物は井戸層または障壁層のいずれかにドーピングされていてもよく、また井戸層と障壁層の両方にドーピングされていてもよい。更には、複数の井戸層または複数の障壁層にドーピングされていてもよい。ドーピングは、均質に行われていてもよく、変化させて行われてもよい(例えば、傾斜ドーピング、またはあるドープ層とアンドープ層の組み合わせ)。いずれの場合であっても、井戸層にはキャリアが貯め込まれたことになる。
【0026】
活性層に、上記した態様のいずれかで不純物がドーピングされていると、そのレーザ素子が組み込まれているレーザモジュールからの励起用レーザ光は時間的な変動が少なくその安定化が更に向上する。
その場合の不純物としては、n型不純物、p型不純物のいずれをも用いることができる。n型不純物としては、例えば、Si,S,Seの1種または2種以上を用いることができ、またp型不純物としては、例えば、Be,Mg,Znの1種または2種以上を用いることができる。
【0027】
これら不純物のうち、n型不純物、その中でもとりわけSiを少なくとも1層にドーピングすると、そのレーザ素子からの発振レーザ光は確実にマルチモード化して、そのレーザ素子が組み込まれているレーザモジュールからの励起用レーザ光の時間的な変動は確実に抑制されて安定化するので好適である。その場合、Siの井戸層へのドーピング濃度を1×1016/cm3〜5×10 18 /cm 3 に設定すると、上記した効果が顕著に発現して有効である。Siのドーピング濃度が1×1016/cm3より低い場合は、上記した効果の発現が不充分であり、逆にドーピング濃度が5×10 18 /cm 3 より高濃度になると、井戸層や障壁層の純度低下をきたし、量子井戸層としての機能を喪失するようになる。
【0028】
(3)第3の条件:
上記した第1の条件の充足を前提とした上で、活性層の上または下に位置していて、活性層で生成したレーザ光を閉じ込める1層以上の層のいずれかに不純物がドーピングされていることである。これらの層は、光閉じ込め層(例えば、GRIN−SCH層)および/またはクラッド層であってもよい。
【0029】
図2で示したレーザ素子B1の場合、具体的には、n−AlGaAsから成る下部クラッド層15、i−AlGaAsから成る下部GRIN−SCH層16a、i−AlGaAsから成る上部GRIN−SCH層16b、p−AlGaAsから成る上部クラッド層18のいずれかまたは全部に不純物がドーピングされている。
【0030】
とくに、クラッド層、それもn型の下部クラッド層に、n型不純物であるSiがドーピングされていると、発振レーザ光のマルチモード化を確実に実現することができて好適である。その場合、Siのドーピング濃度は1×1017/cm3〜4×1017/cm3程度であることが好ましい。より好ましくは2×1017/cm3〜4×1017/cm3である。
【0031】
このレーザ素子B1の場合、上記した3つの条件のうち、第1の条件は必須条件として充足していなければならない。組み立てたレーザモジュールからの励起用レーザ光の時間的安定性を実現することができなくなるからである。
その上で、第2の条件、第3の条件のいずれか、または両方が充足していると、第1の条件のみの場合よりも励起用レーザ光の時間的安定性が向上するので好適である。とくに、両方の条件を充足している場合、すなわち、第1〜第3の条件を全て充足している場合は、励起用レーザ光の時間的安定性が顕著に向上するので更に好適である。
【0032】
また、このレーザ素子B1は次のような特性を備えている。それを以下に説明する。
その説明に先立ち、レーザ素子のしきい値電流(Ith)、自然放出(Amplified Spantaneous Emission :ASE)スペクトル、およびASEスペクトルのスペクトル幅(Δλ)について定義する。
【0033】
駆動電流(I)で作動するレーザ素子の光出力(LOPT)をプロットしてLOPT−Iのグラフを描くと、ある電流値(IA)より上では、光出力は電流値(I)とともに線形に増大していく。このグラフを図3に示す。
直線は、上記した線形特性のセグメントに適合している。そして、I軸(LOPT=0のとき)がこの直線を遮断している電流値をしきい値電流(Ith)と定義する。
【0034】
まず、このレーザ素子にしきい値電流(Ith)より小さい値(I)の電流を注入するとレーザ素子は自然放出光を出射する。自然放出光としてASE(Amplified Spontaneous Emmision:ASE)に基づく出射端面(前端面)からの自然放出光を選択し、縦軸に光出力、横軸に波長をとり、各モードの光出力の包絡線から上記した自然放出光のスペクトル曲線を描く。得られたスペクトル曲線は、通常、図4で示したように、光出力の最大出力(PO)を有する非対称曲線になり、そしてこの曲線の中には複数本のファブリ・ペロー型の縦モードが包含されている。
【0035】
このスペクトル曲線において、まず、最大出力(PO)よりも3dB低い光出力(P1)を示すスペクトル曲線上の点(S1,S2)をそれぞれ把握し、ついで、各点S1,S2に相当する自然放出光の波長(λ1,λ2,単位はnm)をそれぞれ把握する。
点S1から点S2までの自然放出光のスペクトル幅をここではΔλと定義する。そして、それは、スペクトル曲線の最大出力(PO)とそれよりも3dB低い両脇の出力(P1,P2)の範囲を含んでいる。図から明らかなように、Δλは(λ2−λ1)と等価である。
【0036】
このレーザ素子B1が第1の条件を充足し、また、注入電流(I)が0.2≦I/Ith≦0.8の関係を満足する場合には、レーザ素子B1には、そのI値の全てにおいて、上記したΔλ値が15nm以上となるような自然放出光を出射するという特性を備えている。
ここで、上記Δλ値が15nmより小さい場合には、そのレーザ素子をIth値以上の注入電流で駆動してレーザ光を発振させると、そのΔλ値内に包含されている縦モード(F−Pモード)の本数は少なくなる。そして、そのレーザ素子に例えばファイバブラッググレーティングを光結合してレーザモジュールを組み立ててそれを駆動すると、そこからの励起用レーザ光はシングルモードまたはシングルモードとマルチモードが時間的に交替する状態となり、その光出力は不安定化してノイズが発生する。
【0037】
しかしながら、Δλ値が15nmより大きい場合には、レーザ素子B1から発振するレーザ光のスペクトル曲線において、Δλ値内に包含されている縦モードの本数が多く、発振レーザ光は常にマルチモード化している。そのため、上記したレーザモジュールから得られる励起用レーザ光は、モジュール運転時に例えば光ファイバを動かしたり、またはモジュールの機械的な振動などの多少の外乱を受けても、ファイバブラッググレーティングの反射帯域幅内で安定な状態を保持する。すなわち、励起用レーザ光の不安定化は大幅に抑制される。
【0038】
ここで、レーザ素子B1の発振レーザ光が上記した特性を示す理由は、基本的には、井戸層の厚みが10nm以上(第1の条件)に設定されているからである。すなわち、井戸層の厚みは、前記したΔλ値の大小に影響を与え、またそれを律速する因子と規定することができると考えてよい。
この厚みを10nmより薄くすると、ASE時におけるΔλ値は15nmより小さくなって発振レーザ光のマルチモード化は実現されにくくなり、その結果、レーザモジュールからの励起用レーザ光は変動してその時間的安定性が低下する。
【0039】
なお、レーザ素子B1の場合、ASE時における自然放出光のスペクトル曲線の形状は、前記した第1の条件〜第3の条件の関係で様々に変化するが、その変化する形状は便宜的に次のように区別立てすることができる。それを以下に説明する。
▲1▼まず、第1の条件〜第3の条件のいずれをも充足しない従来のレーザ素子の場合、ASE時における自然放出光のスペクトル曲線は、傾向的に、図5で示したような形状になりやすい。
すなわち、光出力の最大強度付近におけるスペクトル曲線の形状が、図中の⇔印で示したように若干凹形状になりやすい。このような傾向を示すスペクトル曲線のタイプを、以後、タイプ1という。
【0040】
▲2▼第1の条件と第2の条件を充足せず、第3の条件のみを充足しているレーザ素子の場合のASE時における自然放出光のスペクトル曲線は、傾向的に、図6で示したような形状になりやすい。
すなわち、光出力の最大強度付近におけるスペクトル曲線の形状が、図中の丸印で示したように若干の凸形状になりやすい。このような傾向を示すスペクトル曲線のタイプを、以後、タイプ2という。
【0041】
▲3▼第1の条件を必ず充足していて、第2の条件と第3の条件のいずれか一方のみを充足しているか、または第2の条件と第3の条件のいずれをも充足していないレーザ素子B1の場合、そのASE時における自然放出光のスペクトル曲線は、傾向的に、図7で示したような形状になりやすい。
すなわち、光出力の最大強度付近におけるスペクトル曲線の形状は、図の⇔印で示したように、最大強度の箇所を跨いで全体が丸みを帯びた凸形状になりやすい。このような傾向を示すスペクトル曲線のタイプを、以後、タイプ3という。
【0042】
▲4▼第1の条件〜第3の条件を同時に充足しているレーザ素子B1の場合、そのASE時における自然放出光のスペクトル曲線は、傾向的に図8で示したような形状になりやすい。
すなわち、タイプ2とタイプ3を合成したような形状になっていて、最大強度の箇所を跨いで全体が丸みを帯びた凸形状になっていると同時に、最大強度付近におけるスペクトル曲線の形状は凸形状になりやすい。このような傾向を示すスペクトル曲線のタイプを、以後、タイプ4という。
【0043】
すなわち、レーザ素子B1は、ASE時における自然放出光のスペクトル曲線を描くと、そのスペクトル曲線はタイプ3またはタイプ4のいずれかの形状を示すという特性を備えているのである。
観点を変えれば、ASE時における自然放出光のスペクトル曲線を描き、それがタイプ3またはタイプ4の形状を示すレーザ素子は、少なくとも前記した第1の条件を充足したレーザ素子B1になっている。したがって、それを用いて組み立てたレーザモジュールからの励起用レーザ光は時間的安定性が良好であることになる。すなわち、ASE時における自然放出光のスペクトル曲線から、そのレーザ素子が励起用レーザ光の時間的安定性にとって有効か否かを判定することができる。
【0044】
また、レーザ素子B1は次のような特性も備えていることが好ましい。それを図9に則して説明する。
まず、レーザ素子B1からレーザ光を発振させる。ここで、レーザ素子B1の長手方向(レーザ光の出射方向)をx軸方向、厚み方向、すなわち層構造Cにおける積層方向をz軸方向、幅方向をy軸方向とする3次元座標軸を仮定して、出射光のz軸方向成分に着目して説明する。
【0045】
出射光はレーザ素子B1から出射し、光軸との直交面に遠視野像(Far-Feild Pattern:FFP)が生ずる。この遠視野像(FFP)のz軸成分は、最大出力P0を有する光出力分布曲線となっている。
このとき、半分の出力水準(1/2P0)のところに遠視野像FFPの垂直(z軸)方向に沿って2個の点が認められ、また、レーザ素子の前端面から出射した光の上記2個の点のそれぞれに対する広がり角度θが認められる。
【0046】
角度θは、半値幅角度(full-width half maximum angle)としても知られている。なぜならば、この角度は、前端面と、半分の出力水準である垂直軸上の2点間の全体の幅との間に形成されているからである。
レーザ素子B1は、上記した広がり角度θが25°以下であることが好ましい。この広がり角度θが25°以下になっていることにより、レーザ素子B1は光ファイバとの結合効率が充分に高くなり、ファイバ端光出力を高めることができるだけではなく、活性層への光閉じ込め係数が充分に小さくなっているため高効率になっている。
【0047】
なお、以上の説明はリッジ導波路型レーザ素子の場合で行ったが、レーザ素子B1はそのような構造に限定されるものではなく、前記した第1の条件を満足する層構造を有するものであれば、自己整合型(SAS型)の構造のものであってもよい。
上記したように、レーザ素子B1は、当該素子B1が形成されている半導体チップにとっては外在物である光帰還機能を有する要素5aとともに、パッケージの中に組み込まれる。しかしながら、本発明は、光帰還機能を有する要素がレーザ共振器としての半導体チップ上に集積されている場合のレーザ素子に対しても等しく適用される。
【0048】
そのような、集積された光帰還機能を有する要素を備えた本発明のレーザ素子について説明する。このレーザ素子の1例B2を部分切欠斜視図として図10に示す。
このレーザ素子B2は、図2で示したレーザ素子B1の層構造Cにおいて、上部GRIN−SCH層16bと上部クラッド層18の間にスペーサ層20を介装し、このスペーサ層20の中に所定周期のグレーティング21を配置し、あわせて活性層17の両側にp型層22aとn型層22bを積層して成る電流ブロッキング層22を形成したものである。
【0049】
このレーザ素子B2は、活性層17の近傍に、光帰還機能と波長選択特性を有する要素としてのグレーティング21が配置されているので、それ自体として光帰還機能を備えており、グレーティング21の反射帯域幅で規定される特定波長のレーザ光を出力する。
その場合、活性層17は少なくとも前記した第1の条件を充足しており、また、第2の条件、第3の条件も充足させることにより、レーザ素子B2からのレーザ光は、図1で示した本発明のレーザモジュールの場合と同様に、マルチモード化していて、その光出力が時間的変動の少ない状態になる。
【0050】
すなわち、このレーザ素子B2は、それ自体で図1で示したレーザモジュールAと同等の機能を発揮することができる。
もち論、このレーザ素子B2を光源にして図1で示したレーザモジュールを組み立てることもできる。
なお、本発明における半導体レーザモジュールの最大光出力はL×0.1mW/μm以上であり、より好ましくはL×0.25mW/μm以上である。ここで、Lは本発明において使用される半導体レーザ素子の共振器の長さ(単位:μm)である。以上の関係により、本発明における半導体レーザモジュールの最大光出力は、共振器長が800μmのときは80mW、より好ましくは200mWとなる。また、共振器長が1200μmのときの最大光出力は120mW、より好ましくは300mWとなり、共振器長(L)が1800μmのときの最大光出力は180mW、より好ましくは450mWとなる。
【0051】
【実施例】
1.レーザ素子B1の製造
n−GaAsから成る基板の上に、表1、表2で示した各層を成膜して図2の層構造Cを形成した。
形成された層構造の上面に、フォトリソグラフィー技術とエッチング技術を適用して幅4μm、高さ1.2μmのリッジ導波路を形成したのち、その上にSiNから成る保護膜13を形成した。
【0052】
ついで、基板10の裏面を研磨してそこにAuGeNi/Auから成る下部電極12を形成し、またキャップ層19の上面の保護膜の一部を除去したのち層構造の上面全体にTi/Pt/Auから成る上部電極14を形成した。
そして、基板を劈開して共振器長(L)が800μmであるバーにしたのち、一方の端面にSiNから成る反射率0.8%の低反射膜を成膜して前端面を形成し、他方の端面にSiO2/Siから成る反射率92%の高反射膜を成膜して後端面を形成した。そして最後に、このバーを加工してチップとし、図2で示したレーザ素子B1を製造した。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
なお、レーザ素子1の伝導帯バンド模式図を図11に、またレーザ素子4の伝導帯バンド模式図を図12にそれぞれ示す。図中の数字はいずれも図2で示した各層を示している。
【0056】
2.レーザ素子の特性
表1、表2で示したレーザ素子に対し、AQ6317(ANDO社製のOptical Spectrum Analyzer)を用いてASE自然放出光を出射させ、それぞれのスペクトル曲線を求め、その形状を観察した。その結果を表3に示した。
また、各レーザ素子をレーザ発振させ、その発振レーザ光の遠視野像を、フォトダイオードを用いて測定し、スペクトル曲線の半値幅に対応する垂直方向の広がり角度θを求めた。その結果も表3に示した。
【0057】
【表3】
【0058】
また、レーザ素子1、レーザ素子3、レーザ素子4については、注入電流(I)を変化させて自然放出光を出射させてそれぞれのスペクトル曲線を描き、その最大出力(P0)よりも3dB低い出力の場合の2個の波長間で示されるスペクトル幅(Δλ値)を求めた。そして、I/Ith値とスペクトル幅(Δλ値)をプロットした。結果を図13に示した。
【0059】
以上の結果から次のことが明らかである。
(1)まず、図13から明らかなように、レーザ素子1,3,4は、いずれも、I/Ith値が1以上、すなわち、注入電流がしきい値電流以上になればレーザ発振する。
しかしながら、自然放出光が出射するI値の注入電流の領域において、レーザ素子1の場合は、I値がIth値に向かって増加するにつれて実質的に線形をなして減少している自然放出光におけるスペクトル幅(Δλ値)を有している。
【0060】
これに反し、レーザ素子4のスペクトル幅(Δλ値)は、0.2と0.6の間のI/Ith値では概ね実質的に同じ値のままであり、そして、I/Ith値が0.6から約1.0に増加していくと、大きな傾きでゼロに向かって減少していく。
レーザ素子3の場合も、レーザ素子4の場合と略同じ挙動を示しているが、スペクトル幅(Δλ値)は減少する2つの顕著なステージを有し、そのステージ間には平坦領域がある。第1の減少ステージは比較的小さく、I/Ith値が0.2から約0.4までに増加する間で起こっている。第2の減少ステージは大きく、そしてI/Ith値が0.8から約1.05に増加する間で起こっている。平坦領域はI/Ith値が約0.4と約0.8の間で起こっており、その場合のスペクトル幅Δλは実質的に一定である。
【0061】
(2)いずれにしても、レーザ素子3とレーザ素子4の場合、I/Ith値の広い範囲(0.4と0.8の間)において、Δλ値は安定した値を示している。このことは、この範囲内でI値が変動しても、自然放出光のスペクトル曲線の形状はわずかに変化するのみであり、安定しているということを意味している。これは、しきい値よりも大きい注入電流(I)で駆動させたときの発振レーザ光の安定性を予告する指標であると考えられる。
【0062】
そして、レーザ素子3とレーザ素子4のΔλ値を対比すると、I/Ith値が0.2と0.9の間(すなわち平坦領域)に対してはレーザ素子4の場合の方が大きい値を示しているが、このことは、レーザ素子4の方が駆動安定性に優れていることを示唆しているものと考えられる。
【0063】
(3)ここで、表1、表2および表3を参照すると、井戸層の厚みが7nmで2層構造の量子井戸構造になっているレーザ素子1の場合、その自然放出光におけるスペクトル曲線の形状はタイプ1であり、そのΔλ値は図13で示したように変化しているが、井戸層の厚みを12nmと厚くして第1の条件を充足させ、また量子井戸構造を単層構造にしたレーザ素子3では、スペクトル曲線の形状はタイプ3に変化し、またΔλ値も安定している。
【0064】
そして、第1の条件を満たすと同時に、第2の条件と第3の条件のいずれをも満たしているレーザ素子4の場合は、スペクトル曲線の形状はタイプ4となり、かつΔλ値も高位水準で安定化している。
【0065】
(4)すなわち、井戸層の厚みを厚くすると、自然放出光のスペクトル曲線の形状はタイプ3に変化し、同時にΔλ値はI/Ith値の広い範囲で安定化する。そして、上記した第1の条件の充足を前提として、更に井戸層にSiドーピングを行い(第2の条件の充足)、またn型クラッド層に3×1017/cm3の高濃度でSiドーピングを行う(第3の条件の充足)と、自然放出光のスペクトル曲線の形状は、タイプ2とタイプ3を合体した形状、すなわちタイプ4へと変化し、同時に、Δλ値はI/Ith値の広い範囲において高位水準で安定化するということが明らかとなった。
【0066】
なお、上記した説明は、前端面の反射率が0.8%であるレーザ素子の場合についてであるが、この前端面の反射率を0.5〜15%の範囲内で変化させた場合でも、それぞれのレーザ素子はいずれも上記したと同様の特性を示すことが確認された。
また、実施例では基板としてn型のものを用いたが、p型であっても同様の特性が得られる。ただし、その場合、層構造Cにおける各層の導電型は実施例と逆にする。
【0067】
3.レーザモジュールの組立て
表1および表2で示した各レーザ素子のうち、レーザ素子1とレーザ素子4を選択し、それぞれを、ファイバブラッググレーティングが形成されている光ファイバとレンズを介して光結合し、図1で示したレーザモジュールAを組み立てた。
【0068】
レーザ素子1が組み込まれている装置を装置A1(従来装置)、レーザ素子4が組み込まれている装置を装置A2(実施例装置)とする。
なお、レーザ素子1に光結合されたファイバブラッググレーティングは、反射率7%、反射帯域幅1.5nm、中心波長979nmの波長選択特性を有するように設計されており、また、レーザ素子4に光結合されたファイバブラッググレーティングは、反射率7%、反射帯域幅1.5nm、中心波長976nmの波長選択特性を有するように設計されている。
【0069】
4.レーザモジュールの性能
(1)励起用レーザ光の時間安定性
装置A1、装置A2に250mAの電流を注入して、励起用レーザ光を出射させた。そして、そのレーザ光の光出力(Pf)を、Lightwave multimeter 8153A(アジレント社製), Power Sensor Module 81533B(アジレント社製), およびOptical Head 81525Aから成るシステムで測定し、またモニタ光強度(Im)を、ADVANTEST Digital Electrometer R8240(アドバンテスト社製)とILX Lightwave Laser Diode Controller LDC-3744B(ILX ライトウェーブ社製)から成るシステムで測定した。ついで、約1分間の時間間隔を超えて、PfとImの測定値の変化率(%)を0.4秒間隔で算出した。
【0070】
装置A1の場合の結果を図14に、装置A2の場合の結果を図15にそれぞれ示す。
図14と図15を対比して明らかなように、装置A2は装置A1に比べて発振レーザ光の時間的安定性が著しく優れている。
【0071】
(2)駆動電流値に対する発振レーザ光の安定性
装置A1と装置A2への駆動電流をしきい値Ithから5mA間隔で増加させていき、その都度、(1)で用いた測定システムにより、励起用レーザ光の光出力(Pf)とモニタ光強度(Im)の変化率(%)を算出した。
装置A1の場合の結果を図16に、装置A2の場合の結果を図17に示した。
図16と図17を対比して明らかなように、装置A1の場合は駆動電流が変化するとPf,Imはいずれも大きく変動しているが、装置A2の場合は全く変動しておらず、この装置は駆動電流が変化したとしても極めて安定な励起用レーザ光を発振している。図16と図17から、許容できる最大変化率は0.5%であることがわかる。
【0072】
(3)励起用レーザ光のスペクトルの時間安定性
装置A1と装置A2に250mAの駆動電流を注入して励起用レーザ光を出射させた。そして、駆動開始時点と、それから10秒後、20秒後、30秒後、40秒後におけるスペクトルを観察した。
その結果を、装置A1の場合は図18〜図22に、装置A2の場合は図23〜図27に示した。
【0073】
以上の結果から次のことが明らかである。
▲1▼装置A1と装置A2の駆動開始直後における励起用レーザ光のスペクトル図(図18と図23)を対比すると、装置A1の場合は、その中心波長がファイバブラッググレーティングの中心波長(979nm)付近でシングル縦モードで発振している。これに反し、装置A2の場合は、ファイバブラッググレーティングの中心波長(976nm)付近でマルチ縦モードが発振している。
【0074】
▲2▼また、装置A1の励起用レーザ光は、時間が経過するにつれて、その発振スペクトルが変動している。しかしながら、装置A2の場合は、駆動時間が経過しても、その発振スペクトルは駆動開始時点(図18)の場合と実質的に同じである。
▲3▼すなわち、装置A2は、時間安定性に優れた励起用レーザ光を出射している。
【0075】
(4)光出力と光ファイバの状態との関係
装置A2において、光ファイバを直径約100mmで3ターンした状態にしてレーザ発振させた。そのときの発振スペクトルを図28に示す。
ついで、光ファイバを前記した巻回状態から直径約100mmで3ターンの巻回状態に巻き直し、同じ条件でレーザ発振させた。そのときの発振スペクトルを図29に示す。
【0076】
図28と図29から明らかなように、光ファイバの巻回状態が変化しても、装置A2からの励起用レーザ光の発振スペクトルの変動は起こっていない。
一方、装置A1において、光ファイバを直径100mmで5ターンした状態にしてレーザ発振させた。そのときの発振スペクトルは図30で示すようにマルチモードの発振になっていた。
【0077】
ついで、光ファイバを上記した巻回状態から直径100mmで4ターンの巻回状態に巻き直し、同じ条件でレーザ発振させた。そのときの発振スペクトルを図31に示した。
図30と図31を対比して明らかなように、装置A1の場合、光ファイバの巻回状態が変化すると、励起用レーザ光の発振スペクトルが変化してしまう。
【0078】
このように、装置A2は、光ファイバの巻回状態、より一般化していえば、光ファイバがどのような状態になっていても、出射するその励起用レーザ光は安定していることが判明した。
【0079】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明のレーザモジュールは、井戸層の厚みを10nm以上と従来に比べて厚くし、更には井戸層に不純物をドーピングしており、またクラッド層にn型不純物をドーピングしていることにより、発振レーザ光はマルチモード化するレーザ素子とファイバブラッググレーティングを光結合して組み立てられているので、まず、出射する励起用レーザ光の時間安定性に優れている。また、レーザ素子の駆動電流が変動しても出射する励起用レーザ光は安定している。更には、光ファイバの例えば巻回状態を変えても出射する励起用レーザ光は安定していて実用的な信頼性が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体レーザモジュールの1例Aを示す断面図である。
【図2】本発明のレーザ素子の1例B1を示す斜視図である。
【図3】レーザ素子のしきい値電流を定義するためのグラフである。
【図4】自然放出光のスペクトル曲線を示すグラフである。
【図5】レーザ素子の自然放出光におけるタイプ1のスペクトル曲線図である。
【図6】レーザ素子の自然放出光におけるタイプ2のスペクトル曲線図である。
【図7】レーザ素子の自然放出光におけるタイプ3のスペクトル曲線図である。
【図8】レーザ素子の自然放出光におけるタイプ4のスペクトル曲線図である。
【図9】遠視野像の広がり角度θを説明するための説明図である。
【図10】本発明の半導体レーザ素子の1例B2を示す部分切欠斜視図である。
【図11】レーザ素子1,2の伝導帯バンド模式図である。
【図12】レーザ素子4の伝導帯バンド模式図である。
【図13】レーザ素子におけるI/Ith値とスペクトル幅(Δλ)との関係を示すグラフである。
【図14】装置AのPf変化率とIm変化率を示すグラフである。
【図15】装置BのPf変化率とIm変化率を示すグラフである。
【図16】装置Aの駆動電流に対するPfとIm変化率を示すグラフである。
【図17】装置Bの駆動電流に対するPfとIm変化率を示すグラフである。
【図18】装置Aの駆動開始時における励起用レーザ光のスペクトル図である。
【図19】装置Aの駆動開始後10秒経過時における励起用レーザ光のスペクトル図である。
【図20】装置Aの駆動開始後20秒経過時における励起用レーザ光のスペクトル図である。
【図21】装置Aの駆動開始後30秒経過時における励起用レーザ光のスペクトル図である。
【図22】装置Aの駆動開始後40秒経過時における励起用レーザ光のスペクトル図である。
【図23】装置Bの駆動開始時における励起用レーザ光のスペクトル図である。
【図24】装置Bの駆動開始後10秒経過時における励起用レーザ光のスペクトル図である。
【図25】装置Bの駆動開始後20秒経過時における励起用レーザ光のスペクトル図である。
【図26】装置Bの駆動開始後30秒経過時における励起用レーザ光のスペクトル図である。
【図27】装置Bの駆動開始後40秒経過時における励起用レーザ光のスペクトル図である。
【図28】光ファイバを直径100mmで3ターンの巻回状態にしたときにおける装置Aの励起用レーザ光のスペクトル図である。
【図29】光ファイバを直径100mmで3ターンの巻回状態に変えたときにおける装置Aの励起用レーザ光のスペクトル図である。
【図30】光ファイバを直径100mmで5ターンの巻回状態にしたときにおける装置Bの励起用レーザ光のスペクトル図である。
【図31】光ファイバを直径100mmで5ターンから4ターンの巻回状態に変えたときにおける装置Bの励起用レーザ光のスペクトル図である。
【符号の説明】
1 パッケージ
1a パッケージ10の底板
1b パッケージ10の筒状孔部
2 ペルチェモジュール
3 ベース材
4 チップキャリア
5 光ファイバ
5a ファイバブラッググレーティング
6 ファイバ固定部材
7 スリーブ
10 基板
12 下部電極
13 保護膜
14 上部電極
C 層構造
15 下部クラッド層
16a 下部GRIN−SCH層
17 量子井戸構造の活性層
16b 上部GRIN−SCH層
18 上部クラッド層
19 キャップ層
20 スペーサ層
21 グレーティング
22 電流ブロッキング層
Claims (17)
- 少なくともGaとAsを含む半導体材料から成る井戸層とそれを囲む障壁層を形成した活性層を有する層構造がGaAs基板の上に形成され、前記基板に平行に光が共振する半導体レーザ素子と、光帰還機能を有する要素とを光結合した励起用光源に用いられる半導体レーザモジュールにおいて、
前記半導体レーザモジュールは、縦モードがマルチモードで発振し、かつ、前記活性層における井戸層の厚みが10nm以上であることを特徴とする半導体レーザモジュール。 - 少なくとも前記活性層には、不純物がドーピングされている請求項1の半導体レーザモジュール。
- 前記不純物がn型不純物である請求項2の半導体レーザモジュール。
- 前記n型不純物がSiである請求項3の半導体レーザモジュール。
- 前記Siのドーピング濃度が1×1016/cm3〜5×1018/cm3である請求項4の半導体レーザモジュール。
- 前記層構造のn型クラッド層には、少なくともSiがドーピングされている請求項1〜5のいずれかの半導体レーザモジュール。
- 前記活性層における井戸層の数が1つである請求項1〜6のいずれかの半導体レーザモジュール。
- 前記井戸層の厚みは、前記障壁層の厚みよりも厚くなっている請求項1〜7のいずれかの半導体レーザモジュール。
- 前記活性層を構成する半導体材料が、GaAs,InGaAs,GaAsSb、またはInGaAsSbである請求項1〜8のいずれかの半導体レーザモジュール。
- 前記半導体レーザ素子の発振レーザ光の発振波長が940〜990nmである請求項1〜9のいずれかの半導体レーザモジュール。
- 前記半導体レーザ素子が、リッジ導波路型、または自己整合型のいずれかである請求項1〜10のいずれかの半導体レーザモジュール。
- 前記半導体レーザ素子の発振レーザ光の光出力分布曲線の半値幅における垂直方向の広がり角度が25°以下である請求項1〜11のいずれかの半導体レーザモジュール。
- 前記半導体レーザ素子が、
次式:0.2≦I/Ith≦0.8
(式中、Iは注入電流、Ithはレーザ発振を開始するときの注入電流を表す)の関係を満たす電流を注入したときに出射する自然放出光のスペクトル曲線において、その最大強度から3dB低い強度を示す箇所のスペクトル幅が15nm以上になる請求項1〜12のいずれかの半導体レーザモジュール。 - 前記光帰還機能を有する要素が、ファイバブラッググレーティング、誘電体多層膜フィルタ、または分布ブラッグ反射鏡のいずれかである請求項1〜13のいずれかの半導体レーザモジュール。
- 前記光帰還機能を有する要素が、楔形光ファイバに形成されたファイバブラッググレーティングである請求項1〜14の半導体レーザモジュール。
- 前記半導体レーザ素子における前記活性層近傍にグレーティングを形成することにより前記光帰還機能を有する要素を形成した請求項1〜13のいずれかの半導体レーザモジュール。
- 前記半導体レーザ素子における前記基板に平行に光が共振する共振器の長さをL(μm)としたとき、前記半導体レーザモジュールの光出力は、L×0.1mW/μm以上となる請求項1〜16のいずれかの半導体レーザモジュール。
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