JP4163343B2 - 発光素子および発光素子モジュール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光素子およびその発光素子を含む発光素子モジュールに関するものである。本発明は光ファイバー増幅器用励起光源等のような半導体レーザに好適に利用することができる。また、LED、スーパールミネッセントダイオード等の発光素子への適応も可能である。
【0002】
【従来の技術】
近年における光情報処理技術、光通信技術の進展には目ざましいものがある。例えば、光ファイバーネットワークによる双方向通信を、高速に、しかも画像情報の様な情報量の大きい伝送において実現するには大容量の光ファイバー伝送路とともに、その伝送方式に対する柔軟性を持つ信号増幅用のアンプが不可欠である。この代表例として、Er3+等の希土類をドープした光ファイバー増幅器(EDFA)の研究が各方面で盛んに行なわれている。そして、EDFAのコンポーネントとして不可欠な要素である、優れた励起光源用の半導体レーザの開発が待たれている。
【0003】
EDFA応用に供することのできる励起光源の発振波長は、原理的に800nm、980nm、1480nmの3種類存在する。このうち増幅器の特性から見れば980nmでの励起が、利得やノイズ特性等を考慮すると最も望ましいことが知られている。このような980nm帯の発振波長を有するレーザは、主にGaAs基板上にInGaAsを活性層として用いることで実現されており、高出力でありながら長寿命であるという相反する要求を満たすことが求められている。さらにこの近傍の波長、例えば890〜1150nmにおいてはSHG光源等の要求もあり、その他種々の応用面においても優れた特性を有するレーザの開発が待たれている。
また、情報処理分野では高密度記録を目的として半導体レーザの短波長化が進んでいる。特に最近の青色レーザの進展は目覚しく、AlOx等の基板上に成長されたGaN系材料では、その信頼性も上昇しており、さらなる研究が続いている。
【0004】
たとえばGaAs基板上の980nm帯のレーザに求められる特性としては、前記のような高出力特性や高信頼性の他に、光出力の安定性、電流光出力の直線性、発振波長の安定性等も重要である。光出力の安定性が重要視されるのは石英ファイバー中にドープされたEr3+に対する励起の度合いが変動すると、これが光増幅器そのもののゲインの揺らぎになってしまうからであり、電流光出力特性の優れた直線性は、温度等の外部環境が変化したときでも一定出力を保持するような制御をレーザに施すために必要である。また石英ファイバー中にドープされたEr3+の吸収帯が狭いため、発振波長の安定性も重要である。
【0005】
ところが、半導体レーザではその縦モードの変動に起因した強度雑音、すなわち光出力の揺らぎが観測されるのが一般的である。この現象はモードホッピングノイズとして知られており、過去に多くの報告がある。基板が発振波長に対して吸収を持つ例として、例えばGaAs基板上のAlGaAsを活性層とする780nm帯のレーザ(Journal of quantum electronics, vol.21 No.8,pp1264-1270 August,1985)を挙げることができる。ここに示されているようにレーザの環境温度、あるいは注入電流を変動させた際に、複数の縦モードが競合していると比較的近接しているモード間、例えばレーザの共振器長で規定される隣接したファブリペローモード間で発振波長の飛びがおこる。上記文献の場合ではモードの飛びは0.2〜0.3nmであることが示されており、半導体レーザにおいては異なる発振波長間ではゲインが違うため、これが強度雑音の原因となる。これは横モードが安定化していることとは独立であって、レーザの電流光出力特性においては、その揺らぎ(非直線性)として観測される。
またこのモードホッピングにはヒステリシスが観測されており、一定の光出力で駆動している場合であっても、その温度履歴、注入電流履歴によって発振波長が異なってしまう問題も指摘されている。
【0006】
このようなモードホッピングに加えて、基板が発光している波長に対して透明である場合(例えばGaAs基板がInGaAs活性層から放出される光に対して透明な980nm近傍のレーザの場合)には、過去に報告されているレーザと比較して波長間隔の広い、大きな強度雑音が発生する。これは以下のような理由による(Journal of quantum electronics, vol.33 No.10,pp1801-1809 Octrber,1997)。
【0007】
活性層から、特にその下側にもれ出した光は基板に吸収されることなく基板中に導波される。このため、基板由来の導波モードが存在するようになる。特にその高次モードは、基板上に作り込んだレーザ構造中を導波される通常のファブリペローモードと結合するようになる。基板は一般に100〜150μm程度の厚みを有するが、この結果、発振スペクトルの構造中に2〜3nm程度の波長間隔で、強度変調が見られるようになる。すなわち、この2〜3nmの間隔で比較的発振しやすい縦モードが存在し、これらがモード競合を起こすこととなる。
【0008】
レーザのゲインは波長が離れているほど異なり、10nm程度と極端に離れたモード間ではモード競合は起こりにくい。しかし上記の2〜3nm離れたモード間では、ゲインの違いは比較的大きいものの、モード競合が起こらないほど離れてもいないため、隣接したファブリペローモード間のモードホップに比較すると、極端に大きな強度雑音が発生してしまう。すなわち、基板が発光している波長に対して透明である場合に確認される基板由来の導波モードが関わる発振スペクトル間の強度変調は、基板が発光している波長を吸収する場合にみられる通常のファブリペローモード間のモードホッピングよりも大きな強度雑音の原因となる。
また、例えばEDFA用の励起光源等ではその波長安定性も重要であるが、このような基板由来の導波モードが関わる発振スペクトル間の強度変調を有するレーザにおいては、外部共振器、例えば波長安定化のために用いられるグレーティングファイバーとレーザを結合させた際に、その波長安定化効果が小さい等の問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の従来技術の問題点を解決することを課題とした。
具体的には、本発明は、基板が発光波長に対して透明である場合に確認される基板由来の導波モードが関わる発振波長の強度変調を抑制し、結果として優れた光出力直線性をもつ発光素子を実現し、さらには外部共振器との結合特性を改善することを解決すべき課題とした。さらに該発光素子用いた、広い温度範囲と広い出力範囲で安定して動作する発光素子モジュールを提供することも解決すべき課題とした。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、屈折率を特定条件下に制御した低屈折率層を形成することによって所期の効果を奏する優れた発光素子を製造しうることを見出し、本発明を提供するに至った。すなわち本発明は、発光波長に対して透明な基板、該基板上に形成され該基板と同じ導電型を示す第1導電型クラッド層、および該第1導電型クラッド層上に形成された活性層構造を有する発光素子であって、前記第1導電型クラッド層の厚みが0.5〜5μmであり、前記活性層がInを含む活性層であり、前記基板と前記第1導電型クラッド層の間に厚みが0.15〜0.75μmである第1導電型低屈折率層が形成されており、該第1導電型低屈折率層が前記基板に接するように形成されているか、該基板上に形成されたバッファ層上に該バッファ層と接するように形成されており、かつ、前記基板の発光波長に対する屈折率nsub、前記第1導電型クラッド層の発光波長に対する平均屈折率の実数部分nclad1、および前記第1導電型低屈折率層の発光波長に対する平均屈折率nLIL1が以下の関係式を満足することを特徴とする発光素子。
【数5】
(式1) nsub > nclad1 > nLIL1
【0011】
本発明の発光素子の好ましい態様として、前記第1導電型低屈折率層の厚みTLIL1と発光波長λが以下の関係式を満足する態様;
【数6】
(式2) TLIL1 > λ/20
前記活性層構造上に形成された第2導電型クラッド層、該第2導電型クラッド層上に形成された第2導電型低屈折率層、および該第2導電型低屈折率層上に形成されたコンタクト層を有し、かつ、前記第2導電型クラッド層の発光波長に対する屈折率nclad2、前記第2導電型低屈折率層の発光波長に対する屈折率nLIL2、および前記コンタクト層の発光波長に対する屈折率ncontが以下の関係式を満足する態様;
【数7】
(式3) ncont > nclad2 > nLIL2
前記第2導電型低屈折率層の厚みTLIL2と発光波長λが以下の関係式を満足する態様;
【数8】
(式4) TLIL2 > λ/20
前記基板が誘電体であって、その他の材料が半導体からなる態様;前記発光素子を構成する材料が全て半導体からなる態様;前記第1導電型クラッド層または前記第2導電型クラッド層の少なくとも一方が超格子構造を有する態様;前記第1導電型低屈折率層または前記第2導導電型低屈折率層の少なくとも一方が超格子構造を有する態様;レーザ素子である態様;GaAs基板上に構成元素としてIn、GaおよびAsを含む歪量子井戸活性層を有する半導体レーザである態様;前記GaAs基板の厚みが75μm以下である態様;前記活性層構造が、活性層、および光ガイドまたはバリアとして機能する層を有しており、かつ前記活性層構造の少なくとも一部がn型の不純物を含む態様;端面発光型である態様を挙げることができる。
【0012】
また本発明は、上記の発光素子、および該発光素子の光の出射方向に外部共振器を有することを特徴とする発光素子モジュールも提供する。本発明の発光素子モジュールは、外部共振器が、発光素子の光の出射方向に特定の波長を選択的に反射するグレーティングファイバーであることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の発光素子および発光素子モジュールについて詳細に説明する。本発明の発光素子は、発光波長に対して透明な基板、該基板上に形成され該基板と同じ導電型を示す第1導電型クラッド層、および該第1導電型クラッド層上に形成された活性層構造を少なくとも有する発光素子である。その特徴は、前記第1導電型クラッド層の厚みが0.5〜5μmであり、前記活性層がInを含む活性層であり、基板と第1導電型クラッド層の間に厚みが0.15〜0.75μmである第1導電型低屈折率層が形成され、該第1導電型低屈折率層が前記基板に接するように形成されているか、該基板上に形成されたバッファ層上に該バッファ層と接するように形成されている点と、基板の発光波長に対する屈折率nsub、第1導電型クラッド層の発光波長に対する平均屈折率の実数部分nclad1、および第1導電型低屈折率層の発光波長に対する平均屈折率nLIL1が上記式1を満足する点にある。このような条件を満たすものであれば、本発明の発光素子の構造の詳細や製造方法は特に制限されない。
【0014】
本明細書において「A層の上に形成されたB層」という表現は、A層の上面にB層の底面が接するようにB層が形成されている場合と、A層の上面に1以上の層が形成されさらにその層の上にB層が形成されている場合の両方を含むものである。また、A層の上面とB層の底面が部分的に接していて、その他の部分ではA層とB層の間に1以上の層が存在している場合も、上記表現に含まれる。具体的な態様については、以下の各層の説明と実施例の具体例から明らかである。
【0015】
以下において、本発明の発光素子の好ましい構成例およびその製造法について具体的に説明する。 本発明の発光素子の一態様として半導体レーザを例に挙げて以下に説明する。その構成としては、例えば屈折率導波構造を有し、基板と異なる導電型を有する第2導電型クラッド層が二層に分かれ、第2導電型第2クラッド層と電流ブロック層とで電流注入領域を形成し、さらに電極との接触抵抗を下げるためのコンタクト層を有するレーザをあげることができる。この例を始めとする様々なレーザの基本的エピタキシャル構造の製法については、例えば特開平8−130344号公報を参考にすることができる。この種のレーザは光通信に用いられる光ファイバー増幅器用の光源等に用いられ、層構成や使用材料等を適宜選択することによってさらに様々な用途へ応用することもできる。
【0016】
図1は、本発明の発光素子におけるエピタキシャル構造の一例としてグルーブ型の半導体レーザの構成を示した概略断面図である。
基板(1)としては、所望の発振波長、格子整合性、意図的に活性層等に導入される歪、ガイド層等に用いられる活性層の歪み補償等の点から、GaAsの単結晶基板を使用することが好ましい。GaAsは、V族としてAsやP等を含むIII−V族半導体レーザに対する格子整合性の観点から望ましい。なお、本明細書において元素の<族>の記述でローマ数字で記載されているものは旧来の表現方法にしたがっている。
【0017】
基板はいわゆるジャスト基板だけではなく、エピタキシャル成長の際の結晶性を向上させる観点から、いわゆるオフ基板(miss oriented substrate)の使用も可能である。オフ基板は、ステップフローモードでの結晶成長を促進する効果を有しており、広く使用されている。オフ基板は0.5〜2度程度の傾斜を持つものが広く用いられるが、量子井戸構造を構成する材料系によっては傾斜を10度前後にすることもある。
基板には、MBEあるいはMOCVD等の結晶成長技術を利用して半導体レーザを製造するために、あらかじめ化学エッチングや熱処理等を施しておいてもよい。
【0018】
本発明の発光素子に用いる基板は、発光波長に対して透明でなければならない。また一般にその厚みは機械的強度等も考えあわせると、100〜150μm程度である。しかし場合によっては、これより薄い基板も素子の光出力直線性を向上させる観点で望ましい。75μm以下の厚みはこの観点で好ましく、さらに50μm以下のものがより望ましい。これは基板が薄い場合、例えば50μm程度のものを考えると、基板由来の導波モードによって強度変調を受けた発振波長の間隔が極端に広がって7〜9nmとなる。このような極端に大きな間隔の場合には2つのモードのゲインはその片方が相当に小さくなり、結果として発振スペクトル間の強度変調の抑制に効果がある。
【0019】
バッファ層(2)は、基板バルク結晶の不完全性を緩和し、結晶軸を同一にしたエピタキシャル薄膜の形成を容易にするために設けることが好ましい。バッファ層(2)は、基板(1)と同一の化合物で構成するのが好ましく、基板がGaAsであるので通常はGaAsが使用される。しかし、超格子層をバッファ層に使用することも広く行われており、同一の化合物で形成されなくてもよい。一方、誘電体基板を用いた場合には必ずしも基板と同一の物質ではなく、その所望の発光波長、デバイス全体の構造から、適宜、基板と異なった材料が選ばれる場合もある。
【0020】
第1導電型低屈折率層(3)は基板と後述の第1導電型クラッド層(4)との間に配置され、後述の活性層から基板側への光のもれ出しを抑制する機能を有する。この目的のために第1導電型低屈折率層の発光波長に対する平均屈折率nLIL1は、前記基板の発光波長に対する屈折率nsub、後述の第1導電型クラッド層の発光波長に対する平均屈折率の実数部分nclad1とともに上記式1を満たすように適宜選択される。
nsubとnclad1との差(nsub−nclad1)は0.1より大きいことが好ましく、0.15より大きいことがより好ましい。また、nclad1とnLIL1との差(nclad1−nLIL1)は0.1より大きいことが好ましく、0.12より大きいことがより好ましい。なお、本明細書における屈折率はJournal of Applied Physics, Vol.58(3), 1985, R1-R29に記載される方法により計算された値である。
【0021】
第1導電型低屈折率層が存在しない場合には後述の第1導電型クラッド層よりも屈折率が高い基板によって、第1導電型クラッド層からの光のしみ出しが助長され、基板由来の縦モードを誘発する原因となるが、式1を満たす層を素子に内在させることで、実効的に第1導電型クラッド層側からみた基板側の屈折率を低下させ、基板側への光のしみ出しを解消することができる。
式1を満たすものならば第1導電型低屈折率層を構成する材料、構造等は特に制限されず、様々に選択が可能である。例えば基板がGaAs(980nmにおける屈折率nsub=3.5252)であり、第1導電型クラッド層がAl0.35Ga0.65As(980nmにおける屈折率nclad1=3.3346)である場合には、第1導電型低屈折率層としてAl0.7Ga0.3As(980nmにおける屈折率nLIL1=3.1387)等を用いることができる。また第1導電型低屈折率層には超格子構造等を採用することも可能であり、Al0.6Ga0.4As(10nm/n=3.1951)/Al0.4Ga0.6As(5nm/n=3.3069)の対からなる層を、例えば40対分積層し第1導電型低屈折率層とすることもできる。この場合にはその平均屈折率はnLIL1=(10×3.1951+5×3.3069)/(10+5)=3.2324である。
第1導電型低屈折率層の厚みは実効的に第1導電型クラッド層側からみた基板側の屈折率を低下させ、基板側への光のしみ出しを解消する程度であれば特に制限されないが、この目的のために前記第1導電型低屈折率層の厚みTLIL1が発光波長λに対して上記式2の関係を満たすことが望ましい。TLIL1はλ/10よりも大きいことが好ましく、λ/7よりも大きいことがより好ましい。
【0022】
第1導電型クラッド層(4)は一般的には活性層構造(5)の平均屈折率より小さな屈折率を有する材料で構成され、所望の発振波長を実現するために準備される基板(1)、バッファ層(2)、第1導電型低屈折率層(3)、活性層構造(5)等により適宜材料が規定される。例えば基板(1)としてGaAsが使用され、バッファ層(2)にもGaAsが使用されているときには、第1導電型クラッド層(4)としてAlGaAs系材料、InGaAs系材料、AlGaInP系材料、InGaP系材料等が用いられる。
クラッド層全体またはその一部には、活性層側からの特定の帯域の光を反射する反射領域(反射ミラー)を内在させることもできる。この反射領域はクラッド層内部で光を活性層側に戻すもので、前記第1導電型低屈折率層とあわせて基板への光のしみ出しを抑制する効果がある。またクラッド層の一部または全てを超格子構造とすることも可能である。
【0023】
活性層構造(5)は、波長選択、デバイス特性等の観点から適宜選択されるが、その発振波長は基板に対して透明でなければならない。活性層そのものの材料選択の観点では基板(1)としてGaAsが使用されている場合には活性層としてInGaAs系材料、AlGaInAs系材料、InGaAsP系材料等が用いられる。活性層構造(5)はInを含む系である。最も好ましいのはInGaAsを含む系またはInGaNを含む系である。これは、一般に使用している基板、すなわちInGaAsの場合にはGaAs基板が、またInGaNの場合にはAl2O3が、それぞれの発振波長に対して透明であるからである。活性層の構造としては、バルク活性層、量子井戸活性層等様々な形態を用いることができる。しかし、活性層構造(5)の少なくとも一部にはn型の不純物が含まれていることが望ましい。これによって、特に外部共振器と本発明を適応したレーザを結合させた際には安定した動作が実現でき、広い温度範囲、さらには広い光出力領域で光出力直線性が確保されるからである。
【0024】
特に量子井戸を含む活性層構造を有する場合には、少なくとも光ガイドまたはバリアとして機能する層と活性層を有していて、活性層構造の一部にn型の不純物を含むことが望ましい。また、光ガイド層、バリア層、活性層の数と順序はそれぞれの層の機能を発揮しうるように任意に組み合わせることが可能であり、また、n型の不純物を含有させる部分についても任意に選択することが可能である。
また、活性層はレーザの特性改善のために歪量子井戸構造をとっていてもよい。さらに活性層全体としては歪が打ち消される様に、光ガイド層の材料等を量子井戸層の有する歪みと逆の歪みを持つ様に選択してもよい。光ガイド層の材料としてはAlGaAs系材料、InGaAs系材料、InGaP系材料、AlGaInP系材料、AlInGaAs系材料、InGaAsP系材料、GaAsP系材料等活性層にあわせて選択することができる。また、光ガイド層は前記材料を組み合わせた超格子とすることも可能である。さらに、量子井戸と光ガイド層の間に意図的にバンドギャップの大きな材料を挿入して、温度特性の改善を行うことも可能である。
【0025】
第2導電型第1クラッド層(6)および第2導電型第2クラッド層(7)は、第1導電型クラッド層(4)と同様に一般的には活性層構造(5)の平均屈折率より小さな屈折率を有する材料で構成され、基板(1)、バッファ層(2)、活性層構造(5)等により適宜材料が規定される。例えば基板(1)としてGaAsが使用され、バッファ層(2)にもGaAsが使用されているときには、AlGaAs系材料、InGaAs系材料、InGaP系材料、AlGaInP系材料、AlInGaAs系材料、InGaAsP系材料、GaAsP系材料等が用いられる。
これらの層の全体または一部には、後述のコンタクト層への光の染み出しを低減させる目的で、活性層側からの特定の帯域の光を反射する反射領域(反射ミラー)を設けることもできる。コンタクト層への光のしみ出しの抑制は特に10μmを越えるような厚いコンタクト層であって、コンタクト層の屈折率ncontが前述の第2導電型第1クラッド層と第2導電型第2クラッド層の発光波長に対する平均屈折率の実数部分nclad2よりも大きい場合に効果的である。また後述の電流ブロック層が発振波長に対して透明である場合も効果的である。
【0026】
電流ブロック層(8)は、文字通り電流をブロックして実質的に流さないようにすることが要求されるので、その導電型は第1導電型クラッド層(4)と同一かあるいはアンドープとすることが好ましい。また、例えばAlGaAs系で電流ブロック層(8)を形成する場合であれば、AlyGa1-yAs(0<y≦1)からなる第2導電型第2クラッド層(7)より屈折率が小さいことが好ましい。すなわち、電流ブロック層(8)がAlzGa1-zAs(0≦z≦1)であれば、混晶比としてはz>yになることが好ましい。また、yとzの関係において、本発明は、主に半導体レーザ、特にレーザ構造自体よる導波が基本モードのみであるものに好適に利用されるが、この観点では、電流ブロック層(8)と第2導電型第2クラッド層(7)の屈折率差によって主に規定される横方向の有効屈折率差は10-3のオーダであることが望ましい。電流ブロック層(8)の上にはキャップ層(9)を設けることが好ましい。
【0027】
第2導電型第2クラッド層(7)の屈折率は、通常、活性層構造(5)の屈折率以下である。また、第2導電型第2クラッド層(7)は通常第1導電型クラッド層(4)および第2導電型第1クラッド層(6)と同一の屈折率とされる。またこれらの層の一部または全部を反射ミラー層とする際にはそれぞれの層の平均屈折率は同一になるようにするのが望ましい。
第2導電型第2クラッド層(7)の上には、後述のコンタクト層(11)への光の染み出しを抑制する目的で、反射ミラー層を設けることもできる。
【0028】
第2導電型第2クラッド層(7)と後述のコンタクト層(11)の間には第2導電型低屈折率層(10)を設けることが望ましい。この層は前述のとおりコンタクト層への光のしみ出しの抑制を目的として配置され、得に10μmを越えるような厚いコンタクト層であって、コンタクト層の屈折率ncontが前述の第2導電型第1クラッド層と第2導電型第2クラッド層の発光波長に対する平均屈折率の実数部分より大きい場合に効果的である。
ここでは第2導電型のクラッド層が第1と第2の2つに分かれている態様について説明しているが、第2導電型クラッド層が単一の層である場合ではnclad2は単一の層における第2導電型クラッド層の屈折率に相当する。
【0029】
第2導電型低屈折率層(10)は、その目的のために第2導電型低屈折率層の発光波長に対する屈折率nLIL2、コンタクト層の発光波長に対する屈折率ncont、第2導電型クラッド層の発光波長に対する平均屈折率の実数部分nclad2が上記式3を満たすように適宜選択されることが好ましい。
ncontとnclad2との差(ncont−nclad2)は0.1より大きいことが好ましく、0.15より大きいことがより好ましい。また、nclad2とnLIL2との差(nclad2−nLIL2)は0.1より大きいことが好ましく、0.12より大きいことがより好ましい。
【0030】
第2導電型低屈折率層は第1導電型低屈折率層と同様にその構成材料、厚み、構造等を適宜選択することが可能である。特にその厚みTLIL2に関しては発振波長をλとして上記式4を満たすことが望ましい。TLIL2はλ/10よりも大きいことが好ましく、λ/7よりも大きいことがより好ましい。 第2導電型低屈折率層の上には、電極(12)との接触抵抗率を下げるため等の目的で、コンタクト層(11)を設けるのが好ましい。コンタクト層(11)は、通常、GaAs材料にて構成される。この層は、通常電極との接触抵抗率を低くするためにキャリア濃度を他の層より高くする。コンタクト層の厚みは適宜選択されるが、前記第2導電型低屈折率層はコンタクト層が厚い場合に効果的に作用する
【0031】
半導体レーザを構成する各層の厚さは、それぞれの層の機能を効果的に奏する範囲内で適宜選択される。通常、バッファ層(2)の厚さは0.1〜3μm、第1導電型クラッド層(4)の厚さは0.5〜5μm、活性層構造(5)の厚さは量子井戸構造の場合1層当たり0.0005〜0.02μm、第2導電型第1クラッド層(6)の厚さは0.05〜0.3μm、第2導電型第2クラッド層(7)の厚さは0.5〜5μm、電流ブロック層(8)の厚さは0.3〜2μm、キャップ層(9)の厚さは0.005〜0.5μm、コンタクト層(11)の厚さは1〜25μmの範囲から選択される。
【0032】
図1に示す半導体レーザは、さらに電極(12)および(13)を形成することにより作製される。エピタキシャル層側電極(12)は、p型の場合、コンタクト層(11)表面に例えばTi/Pt/Auを順次に蒸着した後、合金化処理することによって形成される。一方、基板側電極(13)は基板(1)の表面に形成され、n型電極の場合、例えばAuGe/Ni/Auを基板表面に順に蒸着した後、合金化処理することによって形成される。
【0033】
製造した半導体ウエハーには、光の出射面である端面を形成する。本発明では光の出射は端面出射とは限らないが、端面出射型のデバイスに好適に用いられる。端面は半導体レーザの場合には共振器を構成する鏡となる。好ましくは、劈開により端面を形成する。劈開は広く用いられる方法であり、劈開によって形成される端面は使用する基板の方位によって異なる。例えば、好適に利用されるnominally(100)と結晶学的に等価な面をもつ基板を使用して端面発光型レーザ等の素子を形成する際には、(110)もしくはこれと結晶学的に等価な面が共振器を形成する面となる。一方、オフ基板を使用するときには、傾斜させた方向と共振器方向の関係によっては端面が共振器方向と90度にならない場合もある。例えば(100)基板から、(1−10)方向に向けて角度を2度傾けた基板を使用した場合には端面も2度傾くことになる。
【0034】
本発明では、露出した半導体端面上に、誘電体、または誘電体および半導体の組合せからなるコーティング層(15)および(16)を形成するのが好ましい(図2)。コーティング層は、主に半導体レーザからの光の取り出し効率を上げる目的と、端面の保護するという2つの目的のために形成する。また、後述の外部共振器との結合を高めるために、発振波長に対して低反射率(反射率10%以下)のコーティング層を前端面に施し、発振波長に対して高反射率(例えば80%以上)のコーティング層を後端面に施す非対称コーティングを行うのが望ましい。これはさらなる波長安定化のために使用される外部共振器から戻ってくる光を積極的にレーザ内部に取り込み、波長の安定化を促進する点で非常に重要である。特にこの目的のためには前端面の反射率は5%、より望ましくは2.5%以下であることが好ましい。
【0035】
コーティング層(15)および(16)には、さまざまな材料を用いることができる。例えば、AlOx、TiOx、SiOx、SiN、SiおよびZnSからなる群から選ばれる1種または2種以上の組合せを用いることが好ましい。低反射率のコーティング層としてはAlOx、TiOx、SiOx等が、また高反射率のコーティング層としてはAlOx/Siの多層膜、TiOx/SiOxの多層膜等が用いられる。それぞれの膜厚を調節することによって、所望の反射率を実現することができる。しかし、一般に低反射率のコーティング層とするAlOx、TiOx、SiOx等の膜厚は、その波長λでの屈折率の実数部分をnとしてλ/4n近傍になるように調整するのが一般的である。また、高反射多層膜の場合も、膜を構成する各材料がλ/4n近傍になるように調整するのが一般的である。
【0036】
本発明の半導体レーザに対して波長安定化を図るためにレーザ外部に波長選択性のある鏡を準備し、外部共振器と本発明のレーザを結合させることが望ましい。特にファイバーグレーティングを用いて外部共振器を形成すること望ましい。ファイバーグレーティングは、その目的に応じて中心波長、反射あるいは透過帯域、ファイバーグレーティングが有するレーザ側への光の反射率等を適宜選択可能である。特にファイバーグレーティングのレーザ側への光の反射率がレーザの発振波長において2〜15%、好ましくは5〜10%であり、かつ、その反射帯域が中心波長に対して0.1〜5.0nm、好ましくは0.5〜1.5nmであることが望ましい。
【0037】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、濃度、厚さ、操作手順等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下の実施例に示す具体例に制限されるものではない。
【0038】
(実施例1)
図1および図2のグルーブ型の半導体レーザを以下の手順にしたがって製造した。
キャリア濃度1×1018cm-3のn型GaAs基板(980nmにおける屈折率3.5252、厚さ350μm)(1)の(100)面上に、MBE法にて、バッファ層(2)として厚さ1μmでキャリア濃度1×1018cm-3のn型GaAs層(980nmにおける屈折率3.5252);第1導電型低屈折率層として厚さ0.15μmでキャリア濃度1×1018cm-3のn型Al0.7Ga0.3As層(980nmにおける屈折率3.1387);第1導電型クラッド層(4)として厚さ1.5μmでキャリア濃度1×1018cm-3のn型Al0.35Ga0.65As層(980nmにおける屈折率3.3346);次いで、厚さ35nmでキャリア濃度1×1018cm-3のn型GaAs光ガイド層上に、厚さ6nmのアンドープIn0.16Ga0.84As歪量子井戸層、さらにその上に厚さ35nmでキャリア濃度1×1018cm-3のn型GaAs光ガイド層を有する歪単一量子井戸活性層構造(5);第2導電型第1クラッド層(6)として厚さ0.1μmでキャリア濃度1×1018cm-3のp型Al0.35Ga0.65As層(980nmにおける屈折率3.3346);電流ブロック層(8)として厚さ0.5μmでキャリア濃度5×1017cm-3のn型Al0.39Ga0.61As層(980nmにおける屈折率3.3069);キャップ層(9)として厚さ10nmでキャリア濃度1×1018cm-3のn型GaAs層を順次積層した。ここでn型の不純物としてはSiを用い、p型の不純物としてはBeを用いた。
【0039】
最上層の電流注入領域部分を除く部分に窒化シリコンのマスクを設けた。このとき、窒化シリコンマスクのストライプ状開口部の幅は1.5μmとした。ついで硫酸(98重量%)、過酸化水素(30重量%水溶液)および水を体積比で1:1:5で混合した混合液を用いて、25℃でキャップ層と電流ブロック層のエッチングを27秒かけて、第2導電型第1クラッド層に到達するまで行った。次いでHF(49%)とNH4F(40%)を1:6で混合した混合液に2分30秒浸漬して窒化シリコン層を除去した。
【0040】
その後、MOCVD法にて第2導電型第2クラッド層(7)として、キャリア濃度1×1018cm-3のp型Al0.35Ga0.65As層(980nmにおける屈折率3.3346)を埋め込み部分(電流注入領域部分)の厚さが1.5μmになるように成長させ、
連続して第2導電型低屈折層(10)として厚さ0.15μmでキャリア濃度1×1018cm-3のp型Al0.7Ga0.3As層(980nmにおける屈折率3.1387);
さらに、電極との接触を保つためのコンタクト層(11)として、厚さ7μmでキャリア濃度1×1019cm-3のp型GaAs層(980nmにおける屈折率3.5252)を成長させた。ここでのp型不純物としてはZnを用いた。電流注入領域の幅W(第2導電型第1クラッド層との界面における第2導電型第2クラッド層の幅)は2.2μmであった。
【0041】
上記の電流ブロック層(8)と第2導電型第2クラッド層(7)の屈折率の差、およびWの幅は、導波モードが基本モードのみになるように設計し、クラッド層、電流ブロック層等のAl混晶比を決定した。
基板の厚みを100μmになるようにポリッシングし、さらに、基板側電極(13)であるn型電極としてAuGeNi/Auを、またエピタキシャル層側電極(12)であるp型電極としてTi/Pt/Auを蒸着させ、400℃で合金化を5分間行って半導体ウエハーを完成させた。
【0042】
続いて、大気中で、共振器長700μmのレーザバーの状態に劈開して(110)面を露出させた。次いで、AlOx膜を発振波長980nmにおいて前端面の反射率が2.5%になるように真空中で165nm製膜し、コーティング層(15)を形成した。
さらに後端面側の処理を行うために、一度レーザバーを真空層から取り出した。後端面側には、厚さ170nmのAlOx層/厚さ60nmのアモルファスSi層/厚さ170nmのAlOx層/厚さ60nmのアモルファスSi層の4層からなるコーティング層(16)を形成し、反射率92%の後端面を作製した。
【0043】
作製した半導体レーザの電流光出力特性を25℃の環境で200mA〜300mAの範囲で詳細に調べた結果を図3に示す。図4はこれを微分したもの(スロープ効率(W/A))である。図3に示されているように注入電流に対して光出力が直線的に上昇していることが確認された。またこの場合のスロープ効率の変動は±0.05(W/A)以内と小さいことが確認された。
また同様の範囲でピーク波長λpと中心波長λcの変化を調べた。この結果を図5と図6にそれぞれ示す。ここでピーク波長λpとは最大の相対強度を示す波長であり、中心波長λcとは発振波長全体の重心である。λp、λcとも比較的直線的なレッドシフト傾向を示し、最大の波長飛びが1nm以下であることが確認された。また、基板由来の広い波長間隔での発振波長に対する強度変調は観測されなかった。
【0044】
さらにレーザ前端面に981nmでの反射率が6.5%、反射帯域が1nmのグレーティングファイバーを配置した半導体レーザモジュールを作製した。半導体レーザモジュールの環境温度を変化させながら、グレーティングファイバーからの光出力をパラメータとしてモジュール全体のトラッキングエラーを測定した。トラッキングエラーとは内臓されているフォトダイオードで光出力を一定にするような制御をした際のファイバーからの光出力の変動であり、外部共振器との結合特性の指標となるものである。
光出力をファイバー端出力として100mW、140mW、180mWとなるように内蔵フォトダイオードで制御し、温度を5℃から40℃まで変化させた際のトラッキングエラーは±0.3dB以内と良好であることが確認された。
【0045】
(実施例2)
第2導電型低屈折率層(10)を設けず、またコンタクト層(11)の厚みを3.5μmとした以外は実施例1と同様にして半導体レーザを作製した。
作製した半導体レーザの電流光出力特性を25℃の環境で200mA〜300mAの範囲で詳細に調べた結果、注入電流に対して光出力が直線的に上昇していることが確認された。またこの場合のスロープ効率の変動は±0.06(W/A)以内と小さいことが確認された。
また同様の範囲でピーク波長λpと中心波長λcの変化を調べた。λp、λcとも比較的直線的なレッドシフト傾向を示し、最大の波長飛びが0.7nm以下であることが確認された。また、基板由来の広い波長間隔での発振波長に対する強度変調は観測されなかった。
【0046】
さらに実施例1と同様の半導体レーザモジュールを作製し、トラッキングエラーを測定した。
光出力をファイバー端出力として100mW、140mW、180mWとなるように内蔵フォトダイオードで制御し、温度を5℃から40℃まで変化させた際のトラッキングエラーは±0.35dB以内と良好であることが確認された。
【0047】
(実施例3)
第2導電型低屈折率層(10)を設けず、また、第1導電型低屈折率層(3)をAl0.6Ga0.4As(10nm/n=3.1951)/Al0.4Ga0.6As(5nm/n=3.3069)の対からなる層を50対層分積層してその平均屈折率nLIL1を3.2324とした以外は実施例1と同様にして半導体レーザを作製した。
作製した半導体レーザの電流光出力特性を25℃の環境で200mA〜300mAの範囲で詳細に調べた結果、注入電流に対して光出力が直線的に上昇していることが確認された。またこの場合のスロープ効率の変動は±0.05(W/A)以内と小さいことが確認された。
また同様の範囲でピーク波長λpと中心波長λcの変化を調べた。λp、λcとも比較的直線的なレッドシフト傾向を示し、最大の波長飛びが0.6nm以下であることが確認された。また、基板由来の広い波長間隔でのモードホッピングが観測されなかった。
【0048】
さらに実施例1と同様の半導体レーザモジュールを作製し、トラッキングエラーを測定した。
光出力をファイバー端出力として100mW、140mW、180mWとなるように内蔵フォトダイオードで制御し、温度を5℃から40℃まで変化させた際のトラッキングエラーは±0.32dB以内と良好であることが確認された。
【0049】
(実施例4)
基板(1)の厚みを50μmとした以外は実施例1と同様にして半導体レーザを作製した。
作製した半導体レーザの電流光出力特性を25℃の環境で200mA〜300mAの範囲で詳細に調べた結果、注入電流に対して光出力が直線的に上昇していることが確認された。またこの場合のスロープ効率の変動は±0.035(W/A)以内と小さいことが確認された。
また同様の範囲でピーク波長λpと中心波長λcの変化を調べた。λp、λcとも比較的直線的なレッドシフト傾向を示し、最大の波長飛びが0.4nm以下であることが確認された。また、基板由来の広い波長間隔でのモードホッピングは観測されなかった。
【0050】
さらに実施例1と同様の半導体レーザモジュールを作製し、トラッキングエラーを測定した。
光出力をファイバー端出力として100mW、140mW、180mWとなるように内蔵フォトダイオードで制御し、温度を5℃から40℃まで変化させた際のトラッキングエラーは±0.28dB以内と良好であることが確認された。
【0051】
(比較例)
第1導電型低屈折率層(3)と第2導電型低屈折率層(10)を設けなかった以外は実施例1と同様にして半導体レーザを作製した。
作製した半導体レーザの電流光出力特性を25℃の環境で200mA〜300mAの範囲で詳細に調べた結果を図7に示す。図8はこれを微分したもの(スロープ効率(W/A))である。図7では、特に280mA近傍に示されているように、注入電流に対して光出力が直線的でない部分が存在することが確認された。またこの場合のスロープ効率の変動は全体にわたって大きく、最大では1.15W/Aを越え、最小では0.75W/Aよりも小さかった。
また同様の範囲でピーク波長λpと中心波長λcの変化を調べた。この結果を図9と図10にそれぞれ示す。λp、λcともに、階段状の変化を示し、基板由来の広い波長間隔での発振波長に対する強度変調が観測された。最大の波長飛びは2.8nm程度であることが確認された。
【0052】
実施例1と同様の半導体レーザモジュールを作製し、モジュール全体のトラッキングエラーを測定した。
光出力をファイバー端出力として100mW、140mW、180mWとし、温度を5℃から40℃まで変化させた際のトラッキングエラーは±0.6dBと大きいことが確認された。
【0053】
【発明の効果】
本発明の発光素子は、基板が発光波長に対して透明である場合に確認される基板由来の導波モードが関わる発振波長に対する強度変調を抑制し、優れた光出力直線性と外部共振器との結合特性を示す。また、本発明の発光素子モジュールは、広い温度範囲と広い出力範囲で安定して動作する。このため、本発明の発光素子と発光素子モジュールの応用範囲は極めて多岐にわたる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の発光素子の一態様である半導体レーザの断面図である。
【図2】 本発明の発光素子の一態様である半導体レーザの斜視図である。
【図3】 実施例1の半導体レーザの電流光出力特性を示すグラフである。
【図4】 実施例1の半導体レーザの電流とスロープ効率の関係を示すグラフである。
【図5】 実施例1の半導体レーザのピーク波長λpの変化を示すグラフである。
【図6】 実施例1の半導体レーザの中心波長λcの変化を示すグラフである。
【図7】 比較例の半導体レーザの電流光出力特性を示すグラフである。
【図8】 比較例の半導体レーザの電流とスロープ効率の関係を示すグラフである。
【図9】 比較例の半導体レーザのピーク波長λpの変化を示すグラフである。
【図10】 比較例の半導体レーザの中心波長λcの変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1: 基板
2: バッファ層
3: 第1導電型低屈折率層
4: 第1導電型クラッド層
5: 活性層構造
6: 第2導電型第1クラッド層
7: 第2導電型第2クラッド層
8: 電流ブロック層
9: キャップ層
10: 第2導電型低屈折率層
11: コンタクト層
12: エピタキシャル層側電極
13: 基板側電極
15: コーティング層
16: コーティング層
Claims (16)
- 発光波長に対して透明な基板、該基板上に形成され該基板と同じ導電型を示す第1導電型クラッド層、および該第1導電型クラッド層上に形成された活性層構造を有する発光素子であって、
前記第1導電型クラッド層の厚みが0.5〜5μmであり、
前記活性層がInを含む活性層であり、
前記基板と前記第1導電型クラッド層の間に厚みが0.15〜0.75μmである第1導電型低屈折率層が形成されており、該第1導電型低屈折率層が前記基板に接するように形成されているか、該基板上に形成されたバッファ層上に該バッファ層と接するように形成されており、かつ、
前記基板の発光波長に対する屈折率nsub、前記第1導電型クラッド層の発光波長に対する平均屈折率の実数部分nclad1、および前記第1導電型低屈折率層の発光波長に対する平均屈折率nLIL1が以下の関係式を満足することを特徴とする発光素子。
- 前記第1導電型クラッド層上に、前記活性層構造の最下層を構成する光ガイド層が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の発光素子。
- 前記基板が誘電体であって、その他の材料が半導体からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の発光素子。
- 前記発光素子を構成する材料が全て半導体からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の発光素子。
- 前記第1導電型クラッド層または前記第2導電型クラッド層の少なくとも一方が超格子構造を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の発光素子。
- 前記第1導電型低屈折率層または前記第2導電型低屈折率層の少なくとも一方が超格子構造を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の発光素子。
- レーザ素子であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の発光素子。
- GaAs基板上に構成元素としてIn、GaおよびAsを含む歪量子井戸活性層を有する半導体レーザであることを特徴とする請求項10に記載の発光素子。
- 前記GaAs基板の厚みが75μm以下であることを特徴とする請求項11に記載の発光素子。
- 前記活性層構造が、活性層、および光ガイドまたはバリアとして機能する層を有しており、かつ前記活性層構造の少なくとも一部がn型の不純物を含むことを特徴とする請求項11または12に記載の発光素子。
- 端面発光型であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の発光素子。
- 請求項1〜14のいずれか一項に記載の発光素子、および該発光素子の光の出射方向に外部共振器を有することを特徴とする発光素子モジュール。
- 前記外部共振器が、前記発光素子の光の出射方向に特定の波長を選択的に反射するグレーティングファイバーであることを特徴とする請求項15に記載の発光素子モジュール。
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