JP4329339B2 - 食塩電解方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、含フッ素陽イオン交換膜および食塩電解方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
含フッ素陽イオン交換膜を隔膜として塩化アルカリ水溶液を電解し、水酸化アルカリと塩素とを製造するイオン交換膜法塩化アルカリ電解方法が知られている。この方法による食塩電解において、良好な運転性能を長期間維持するためには、陰極室内の陰極液濃度を一定範囲内かつ均一に調整、維持することが重要である。上記陰極液濃度は、通常30〜35質量%の範囲で95%以上の高い電流効率を発現する。
【0003】
上記陰極液濃度の一般的な濃度調整方法は、陰極室へ水を供給する方法である。ところが、この方法は以下のような問題を抱えている。まず、陰極室内の液循環が不十分な場合は、水を供給している付近の陰極液濃度が低下し、逆に希釈されにくい部分の陰極液濃度が高くなるため電流効率が低下する。また、何らかのトラブルにより陰極室への水の供給が止まると、陰極液濃度が急上昇し、電流効率が著しく低下する。一方、陽極室内の液循環が不十分な部分は電気浸透水が多くなるため陰極液濃度が局部的に低くなり、電流効率が低下する。
【0004】
含フッ素陽イオン交換膜として、陰極側に無機物と陽イオン交換樹脂からなる多孔体層を設けたものを用い、広い濃度範囲の水酸化アルカリを製造する方法が知られている(特許文献1参照。)。また、ベータ線等を照射して改質した膜を用いることにより、高濃度の水酸化アルカリを製造できることが知られている(特許文献2参照。)。しかし、これらの方法はいずれも電流効率が低く、多孔体層の形成またはベータ線の照射の工程が必要であり、膜の製造工程が複雑になるという問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平2−54791号公報(請求項1)
【特許文献2】
特開平6−16842号公報(請求項1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、塩化アルカリの電解において、幅広い陰極液濃度で高い電流効率を安定に発現できる含フッ素陽イオン交換膜の提供を課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、スルホン酸基を有する含フッ素重合体からなる第1層と、その陰極側に配置するカルボン酸基を有する含フッ素重合体からなる第2層の少なくとも2層を有する陽イオン交換膜であって、前記第2層の膜厚が15μmより大きく、50μm以下であり、かつ、前記第2層の、25質量%水酸化ナトリウム水溶液中の含水率と40質量%水酸化ナトリウム水溶液中の含水率の差が3.5%以下であり、前記第2層のX線回折パターンから得られる結晶化度が18〜22%であり、前記第2層のイオン交換容量が0.80〜1.10mmol/g乾燥樹脂であり、前記第2層が、該陽イオン交換膜において最も陰極側に近い一端に配置されてなる含フッ素陽イオン交換膜を、陽極室と陰極室の隔膜として用いることを特徴とする食塩電解方法を提供する。
【0008】
本発明は、水酸化ナトリウム濃度の変化に対して、カルボン酸基を有する前記第2層の含水率の変化が小さい含フッ素陽イオン交換膜を用いることにより、幅広い水酸化ナトリウム濃度の範囲で高い電流効率を発現できることを見出してなされたものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明において、含フッ素陽イオン交換膜を形成する第2層は、25質量%水酸化ナトリウム水溶液中の含水率と40質量%水酸化ナトリウム水溶液中の含水率の差が3.5%以下である。
【0010】
本発明における含水率の差Wは以下の式2で求められる。
W(%)=((W1−W2)/W2)×100・・・式2
式1において、W1は、第2層を構成するイオン交換樹脂からなるフィルムを、90℃にて25質量%または40質量%の水酸化ナトリウム水溶液中に16時間浸漬した後、取り出し、表面に付着した水酸化ナトリウム水溶液を拭き取り、常温で測定した重量である。W2は、W1を測定後のフィルムを90℃の水に16時間浸漬した後、130℃で16時間真空乾燥した後、取り出して常温で測定した値である。
【0011】
前記第2層の含水率の差を3.5%以下とする方法としては、カルボン酸基を有する含フッ素重合体の架橋度を制御する方法が挙げられる。また、前記第2層のX線回折パターンから得られる結晶化度を18〜22%とすることによっても達成できる。結晶化度が22%を超える場合は、水酸化アルカリの濃度変化による含水率の変化が大きくなるおそれがあり、18%に満たない場合は、電解時の電流効率が低下するおそれがある。
【0012】
ここで、結晶化度とは、イオン交換基の対イオンがNaイオンである乾燥した膜についてのX線回折パターンから得られる、結晶性ピークの面積(Ic)および非晶性ハローの面積(Ia)に基づいて下記式3から定義されるものである。
Xc=(Ic/(Ic+0.661×Ia))×100・・・式3
膜のX線回折パターンの例を図1に3つ示す。図に示すように、結晶質の部分に起因する18°付近のピーク(結晶性ピーク)と、非晶質の部分に起因する16°付近を頂点とする幅広いピーク(非晶性ハロー)が認められる。そこで、回折パターンの2θが11〜24°の範囲において、この2種のピークのみが存在するものとしてピーク分離を行い、IcおよびIaを求める。図1においては、上から下になるほど結晶化度が低くなるものを示している。また、式中の0.661は経験的に知られた定数である。
【0013】
本発明において、第2層の厚さは15μmより大きい。厚さが15μm以下である場合は、陽極側から透過する陰極中の塩化アルカリの濃度が増加し、製品である水酸化アルカリの品質を損なうので好ましくない。また、第2層の厚さが大きすぎる場合は膜の抵抗が高くなるため、第2層の厚さは50μm以下であるのが好ましい。第2層のより好ましい厚さは、17〜30μmである。
【0014】
第2層を構成する含フッ素重合体としては、式1で示される単量体に基づく繰り返し単位を有する重合体であって、カルボン酸基の前駆体基をカルボン酸に転換したものを用いるのが好ましい。
CF2=CFO(CF2)mY ・・・式1
式1において、mは2〜5の整数、Yはアルカリ性溶媒中で加水分解され、カルボン酸基(−COOMで示され、Mは水素またはアルカリ金属原子を表す。)に転換し得る前駆体基を表す。この前駆体基としては、−COOR(カルボン酸エステル基であって、Rは炭素数1〜4の低級アルキル基)、−CN(シアノ基)、および、−COZ(酸ハライド、Zはハロゲン原子)が挙げられる。
【0015】
式1で示される単量体に基づく繰り返し単位を有する重合体を用いることにより、結晶化度が高くなり、水酸化ナトリウム濃度による含水率の変化を小さくすることができる。
【0016】
第2層が、長い側鎖や分岐構造を有する側鎖、2つ以上のエーテル結合を有する側鎖を数多く含む重合体からなる場合、例えば、CF2=CF(OCF2CF(CF3))nOCF2CF2CO2CH3(nは1以上)のような単量体を多く含む場合は結晶化度が低下し、水酸化アルカリの濃度変化に対する含水率の変化が大きくなるおそれがある。また、CF2=CFOCF2CF2CF3のような官能基を有さない単量体を数多く含む3元共重合体の場合も、結晶化度が低下しやすい。
【0017】
式1で示される単量体に基づく繰り返し単位を有する重合体としては、特には、式1で示される単量体とCF2=CF2との共重合体が好ましく、特には、CF2=CF2とCF2=CFO(CF2)3CO2CH3との共重合体、またはCF2=CF2とCF2=CFO(CF2)2CO2CH3との共重合体が好ましい。
【0018】
第2層に用いる重合体のイオン交換容量は、側鎖の構造にもよるが、0.80〜1.10mmol/g乾燥樹脂であることが好ましい。イオン交換容量が上記範囲を超える場合は、水酸化アルカリの濃度変化に対する含水率変化が大きくなりやすく、上記範囲に満たない場合は、膜抵抗が高くなり、電流効率が低くなるおそれがある。上記イオン交換容量は特には0.85〜1.05mmol/gであるのが好ましい。
【0019】
また、含フッ素陽イオン交換膜を形成する第1層は、スルホン酸基を有する含フッ素重合体からなる。第1層は、それ自体がスルホン酸基を有する含フッ素重合体層の2層以上の積層体であってもよい。
【0020】
スルホン酸基を有する含フッ素重合体としては、下記式4で示される単量体の少なくとも一種と、下記式5で示される単量体の少なくとも一種との共重合体からなり、スルホン酸基の前駆体基をスルホン酸基に転換したものが挙げられる。
【0021】
CF2=CX1X2 ・・・式4
(式4において、X1、X2はそれぞれ独立にフッ素原子、塩素原子、水素原子またはトリフルオロメチル基を表す。)
CF2=CF(OCF2CFX3)sO(CF2)t−A ・・・式5
(式5において、X3はフッ素原子またはトリフルオロメチル基を表し、tは1〜3の整数、sは0、1または2であり、Aはアルカリ性溶媒中で加水分解されるスルホン酸基(−SO3Mで示され、Mは水素またはアルカリ金属原子を表す。)に転換し得る前駆体基。)
式4で示される単量体としては、CF2=CF2、CF2=CF(CF3)、CF2=CH2、CF2=CFH、CF2=CFClが好ましく、式5で示される単量体としては、以下のものが好ましい。
【0022】
【化1】
【0023】
第1層の厚さは、20〜300μmであることが好ましい。厚さが20μmに満たない場合は、膜の強度が低下するおそれがあり、300μmを超える場合は、膜の抵抗が大きくなる。第1層のより好ましい厚さは、30〜100μmである。また、第1層に用いる重合体のイオン交換容量は、0.8〜1.2mmol/g乾燥樹脂であることが好ましい。
【0024】
本発明の含フッ素陽イオン交換膜は、そのままでも使用できるが、好ましくは、陽イオン交換膜の少なくとも一表面に、特に好ましくは少なくとも陽イオン交換膜の陽極側表面に塩素ガス開放のための処理を施すことにより、電流効率の長期安定性をさらに改良できる。
【0025】
陽イオン交換膜の表面にガス開放のための処理を施す方法としては、膜表面に微細な凹凸を施す方法(特公昭60−26495号公報)、電解槽に鉄化合物、酸化ジルコニウムなどを含む液を供給して膜表面に親水性無機粒子を含むガス開放被覆層を付着する方法(特開昭56−152980号公報)、ガスおよび液透過性の電極活性を有しない粒子を含む多孔質層を設ける方法(特開昭56−75583号公報および特開昭57−39185号公報)などが例示される。陽イオン交換膜の表面のガス解放被覆層は電流効率の長期安定性を改良する効果のほかに電解下における電圧をさらに低減することができる。
【0026】
本発明の含フッ素陽イオン交換膜は、必要に応じ、好ましくはポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素重合体からなる織布、不織布フィブリル、多孔体等と積層することにより補強できる。
【0027】
本発明の含フッ素陽イオン交換膜は、例えば以下の方法により製造できる。まず、カルボン酸基の前駆体基を有する含フッ素重合体と、スルホン酸基の前駆体基を有する含フッ素重合体とを各々合成し、これらの重合体を共押し出し法により成形してフィルムを得る。次いで、得られたフィルムに、必要に応じて補強用の織布、スルホン酸基の前駆体基を有する含フッ素重合体からなる別のフィルム等をロールプレスにより積層させて積層膜を得る。そして、得られた積層膜をアルカリ性溶媒中に浸漬し、カルボン酸基の前駆体基およびスルホン酸基の前駆体基を加水分解させることにより、含フッ素陽イオン交換膜が得られる。
【0028】
本発明の含フッ素陽イオン交換膜を、陽極室と陰極室の隔膜として用いることにより長期間安定して食塩電解を行うことができる。このときの電解槽は、単極型でも複極型でもよい。また電解槽を構成する材料は、陽極室の場合には食塩水および塩素に耐性があるもの、例えばチタンが使用され、陰極室の場合には水酸化ナトリウムおよび水素に耐性があるステンレスまたはニッケルなどが使用される。本発明において電極を配置する場合、陰極はイオン交換膜に接触させて配置しても、また適宜の間隔を置いて配置してもよい。
【0029】
また、本発明の含フッ素陽イオン交換膜を用いた食塩電解は既知の条件で行うことができ、例えば温度50〜120℃、電流密度1〜6kA/m2で運転することにより、濃度20〜40質量%の水酸化ナトリウム水溶液を製造できる。
【0030】
【実施例】
以下に本発明の実施例(例1〜3)および比較例(例4、例5)を説明する。
【0031】
[例1]
CF2=CF2とCF2=CFO(CF2)3CO2CH3との共重合体からなる加水分解後のイオン交換容量0.95mmol/gの樹脂A、および、CF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2SO2Fとの共重合体からなる加水分解後のイオン交換容量1.10mmol/gの樹脂Bを合成した。次に、樹脂Aと樹脂Bとを共押し出し法により成形し、樹脂A層の厚さ25μm、樹脂B層の厚さ65μmの2層構成のフィルムAを得た。また、樹脂Bを溶融押し出し法により成形し、厚さ20μmフィルムBを得た。
【0032】
一方、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムを急速延伸した後、100デニールの太さにスリットして得たモノフィラメントのPTFE糸と、5デニールのポリエチレンテレフタレート(PET)繊維を6本引きそろえて撚ったマルチフィラメントのPET糸とを、PTFE糸1本に対し、PET糸2本の交互配列で平織りし、糸密度30本/cmの補強織布を得た。この織布をロールプレス機を用い、織布厚さが約80μmとなるように扁平化した。
【0033】
得られた織布とフィルムを、フィルムB、織布、フィルムA(樹脂A層が離型用PETフィルム側になるように)、離型用PETフィルム(厚さ100μm)の順に重ね、ロールを用いて積層した。そして離型用PETフィルムを剥がし、補強された積層膜を得た。
【0034】
次に、平均粒子径1μmの酸化ジルコニウムを29.0質量%、メチルセルロース1.3質量%、シクロヘキサノール4.6質量%、シクロヘキサン1.5質量%、水63.6質量%からなるペーストを、ロールプレスにより積層膜のフィルムBの側に転写し、ガス開放性被覆層を付着させた。このときの酸化ジルコニウムの付着量は20g/m2であった。
【0035】
次に、得られた膜を、ジメチルスルホキシド30質量%、水酸化カリウム15質量%の水溶液に90℃、30分間浸漬し、−CO2CH3基および−SO2F基を加水分解して、イオン交換基に転換した。
【0036】
さらに、樹脂Bの酸型ポリマーを2.5質量%含有するエタノール溶液に、平均粒子径5μmの酸化ジルコニウムを13質量%分散させた分散液を調合し、この分散液を上記積層膜のフィルムA側へ噴霧し、ガス開放性被覆層を付着させた。このときの酸化ジルコニウムの付着量は10g/m2であった。
【0037】
また、上記とは別に、樹脂Aをフィルム成形して上記と同様に加水分解処理し、結晶化度、25質量%水酸化ナトリウム中の含水率、40質量%水酸化ナトリウム中の含水率を測定したところ、結晶化度は19.3%、25質量%水酸化ナトリウム中の含水率は5.7%、40質量%水酸化ナトリウム中の含水率は2.5%であり、含水率の差は3.2%であった。
【0038】
このようにして得た含フッ素陽イオン交換膜を、電解槽内でフィルムAが陰極に面するように配置して、塩化ナトリウム水溶液の電解を行った。電解は陰極液が循環しにくい場所が陰極室枠内に生じるように、有効通電面積1.5dm2の電解槽(高さ5cm、幅30cm)を用い陰極室の供給水入り口を陰極室下部、生成する水酸化ナトリウム水溶液出口を陰極室上部に配した。陽極としてはチタンのパンチドメタル(短径4mm、長径8mm)に酸化ルテニウムと酸化イリジウムと酸化チタンの固溶体を被覆したものを用い、陰極としてはSUS304製パンチドメタル(短径5mm、長径10mm)にルテニウム入りラネーニッケルを電着したものを用いた。
【0039】
また、電解は陽極と膜とが接触するように陰極側を加圧状態にし、290g/Lの塩化ナトリウム水溶液を陽極室に、水を陰極室に供給し、陽極室から排出される塩化ナトリウム濃度を200g/L、陰極室から排出される水酸化ナトリウム濃度を32質量%に保ちながら、温度90℃、電流密度4kA/m2の条件で1週間電解を行ったところ、電流効率は97.3%でほぼ一定に保たれていた。その後、水酸化ナトリウム濃度を25質量%に保ちながら上記と同じ条件で1週間電解を行ったところ、電流効率は95.8%でほぼ一定に保たれた。さらに水酸化ナトリウム濃度を40質量%に保ちながら上記と同じ条件で1週間電解を行ったところ、電流効率は96.3%でほぼ一定に保たれた。このように水酸化ナトリウム濃度が25〜40質量%の広い範囲で、95.5%以上の高い電流効率を発現した。
【0040】
[例2]
樹脂Aのイオン交換容量を0.90mmol/gとした以外は、例1と同様にして含フッ素陽イオン交換膜を得、例1と同条件で塩化ナトリウムの電解を行った。樹脂Aをフィルム成形したものの結晶化度は21.0%、25質量%水酸化ナトリウム中の含水率は5.0%、40質量%水酸化ナトリウム中の含水率は2.2%であり、含水率の差は2.8%であった。
また、各々の水酸化ナトリウムの濃度での電流効率は、32質量%の場合は97.5%、25質量%の場合は96.3%、40質量%の場合は95.8%であり、いずれも95.5%以上の高い電流効率を発現した。
【0041】
[例3]
樹脂Aをイオン交換容量1.05mmol/gのCF2=CF2とCF2=CFO(CF2)2CO2CH3との共重合体とした以外は、例1と同様にして含フッ素陽イオン交換膜を得、例1と同条件で電解を行った。樹脂Aをフィルム成形したものの結晶化度は21.7%、25質量%水酸化ナトリウム中の含水率は4.9%、40質量%水酸化ナトリウム中の含水率は2.4%であり、含水率の差は2.5%であった。
また、各々の水酸化ナトリウムの濃度での電流効率は、32質量%の場合は96.8%、25質量%の場合は96.5%、40質量%の場合は95.5%であり、いずれも95.5%以上の高い電流効率を発現した。
【0042】
[例4(比較例)]
樹脂Aをイオン交換容量0.95mmol/gのCF2=CF2とCF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CO2CH3との共重合体とした以外は、例1と同様にして含フッ素陽イオン交換膜を得、例1と同条件で電解を行った。樹脂Aをフィルム成形したものの結晶化度は14.8%、25質量%水酸化ナトリウム中の含水率は8.0%、40質量%水酸化ナトリウム中の含水率は2.6%であり、含水率の差は5.4%であった。
また、各々の水酸化ナトリウムの濃度での電流効率は、32質量%の場合は96.8%、25質量%の場合は92.3%、40質量%の場合は94.8%であった。
【0043】
[例5(比較例)]
樹脂Aをイオン交換容量1.00mmol/gのCF2=CF2とCF2=CFO(CF2)2CO2CH3、CF2=CFOC3F7の3元共重合体(CF2=CFO(CF2)2CO2CH3/CF2=CFOC3F7=21/79モル比)とした以外は、例1と同様に含フッ素陽イオン交換膜を得、例1と同条件で電解を行った。樹脂Aをフィルム成形したものの結晶化度は6.5%、25質量%水酸化ナトリウム中の含水率は8.0%、40質量%水酸化ナトリウム中の含水率は2.8%であり、含水率の差は5.2%であった。
また、各々の水酸化ナトリウムの濃度での電流効率は、32質量%の場合は96.2%、25質量%の場合は87.6%、40質量%の場合は88.2%であった。
【0044】
【発明の効果】
本発明の含フッ素陽イオン交換膜を食塩電解に用いることにより、幅広い水酸化ナトリウム濃度の範囲で高い電流効率を安定に発現できるため、低濃度から高濃度まで水酸化ナトリウム水溶液を効率よく安定に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】含フッ素陽イオン交換膜のX線回折パターンの例
Claims (3)
- スルホン酸基を有する含フッ素重合体からなる第1層と、その陰極側に配置するカルボン酸基を有する含フッ素重合体からなる第2層の少なくとも2層を有する陽イオン交換膜であって、
前記第2層の厚さが15μmより大きく、50μm以下であり、
かつ、前記第2層の、25質量%水酸化ナトリウム水溶液中の含水率と40質量%水酸化ナトリウム水溶液中の含水率の差が3.5%以下であり、
前記第2層のX線回折パターンから得られる結晶化度が18〜22%であり、
前記第2層のイオン交換容量が0.80〜1.10mmol/g乾燥樹脂であり、
前記第2層が、陽イオン交換膜において最も陰極側に近い一端に配置されてなる
含フッ素陽イオン交換膜を、陽極室と陰極室の隔膜として用いることを特徴とする食塩電解方法。 - 前記第2層の厚さが17〜30μmである請求項1に記載の食塩電解方法。
- 前記第2層が、式1で示される単量体に基づく繰り返し単位を有する重合体からなる請求項1または2に記載の食塩電解方法。
CF2=CFO(CF2)mY ・・・ 式1
式1において、mは2〜5の整数、Yはアルカリ性溶媒中で加水分解され、カルボン酸基(−COOMで示され、Mは水素またはアルカリ金属原子を表す。)に転換し得る前駆体基を表す。
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