JP4328928B2 - 黒色磁性トナー用黒色複合磁性粒子粉末及び該黒色複合磁性粒子粉末を用いた黒色磁性トナー - Google Patents
黒色磁性トナー用黒色複合磁性粒子粉末及び該黒色複合磁性粒子粉末を用いた黒色磁性トナー Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、流動性及び黒色度が優れているとともに、粒子表面から脱離するカーボンブラックが少ないことにより、結着剤樹脂中への分散性が優れている黒色磁性トナー用黒色複合磁性粒子粉末を提供するとともに、該黒色複合磁性粒子粉末を用いた流動性及び黒色度に優れた黒色磁性トナーを提供することを目的とする。
【0002】
【従来の技術】
従来、静電潜像現像法の一つとして、キャリアを使用せずに樹脂中にマグネタイト粒子粉末等の磁性粒子粉末を混合分散させた複合体粒子を現像剤として用いる、所謂、一成分系磁性トナーによる現像法が広く知られ、汎用されている。
【0003】
一成分系磁性トナーは、低抵抗の磁性トナーを用いるCPC方式と絶縁性乃至高抵抗の磁性トナーを用いるPPC方式とに大別される。
【0004】
前者は導電性を有しており、潜像電荷による静電誘導により磁性トナーを帯電させ現像するものであるが、現像から転写に至る間に磁性トナーの電荷を失ってしまうため、静電転写方式のPPCには不向きであった。この欠点を補うために、後者の体積固有抵抗値が1014Ω・cm以上の絶縁性乃至高抵抗の磁性トナーが開発された。
【0005】
この絶縁性乃至高抵抗の磁性トナーは、磁性トナーの表面から露出した磁性粒子等が、現像特性に影響をおよぼすことが知られている。
【0006】
近時、画像濃度や階調性等複写機の高画質化や高速化に伴って、現像剤である絶縁性乃至高抵抗の磁性トナーの特性向上、殊に、流動性の向上が強く要求されている。
【0007】
この事実については、特開昭53−94932号公報の「このような高抵抗磁性トナーは高抵抗であるが故に流動性が悪く、現像ムラを起し易い欠点を有していた。つまりPPC用の高抵抗磁性トナーは転写するのに必要な帯電を保持できる反面、トナーボトル中あるいは磁気ロール表面等、転写工程以外の帯電している必要のない工程に於いても摩擦帯電もしくは製造工程におけるメカノエレクトレット等により若干の帯電をしていることによる帯電凝集を起し易く、これが為に流動性の低下を招いている。」、「本発明の他の目的は流動性の改善されたPPC用高抵抗磁性トナーを提供することにより、現像ムラの無い、従って解像度、階調性の優れた良質の間接式複写を得んとするものである。」なる記載の通りである。
【0008】
そして、磁性トナーの上述した流動性の向上は近時における絶縁性乃至高抵抗の磁性トナーの小粒径化に伴って益々強く要求されている。
【0009】
この事実は、日本科学情報株式会社発行「トナー材料の開発・実用化総合技術資料集」の第121頁の「ICP等のプリンターが巾広く展開するにつれて、画質の高品位化が要求される。特に高解像力、高精細プリンターの出現が求められる。表−1に各種トナーを用いた時の解像力の関係を示したが、小径である湿式トナーは高解像力を出す事ができる。乾式トナーを用いて解像力を高める為にもトナーの小径化が必要である。……小径トナーを用いた報告としては、8.5μ〜11μのトナーを用いる事により、下地カブリ改良、さらに消費量の軽減をはかる、その他、6〜10μのポリエステル系トナーを採用すると、高画質化、及び帯電性の安定、現像剤寿命の改良提案もある。
しかし小径トナーを使用する際には、多くの問題を解決しなくてはならない。製造性、粒度分布のシャープさ、流動性改良、……等が存在する。」なる記載の通りである。
【0010】
更に、現在、広く使用されている黒色磁性トナーは、複写された線画像、ソリッドエリア画像の黒さ、濃さの程度が高いことが要求されている。
【0011】
この事実は、前出「トナー材料の開発・実用化総合技術資料等」の第272頁の「画像濃度が高いことは粉末現像の特徴であるが、後述のかぶり濃度と共に画像特性を大きく左右する事項である。」なる記載の通りである。
【0012】
磁性トナーの諸特性と磁性トナー中に混合分散されている磁性粒子粉末の諸特性とは密接な関係がある。
【0013】
即ち、磁性トナーの流動性は、磁性トナー表面に露出している磁性粒子の表面状態に大きく依存することから、磁性粒子粉末自体の流動性が優れていることが強く要求されている。
【0014】
磁性トナーの黒さ、濃さの程度も同様に、磁性トナーに含有されている黒色顔料である磁性粒子粉末の黒さ、濃さの程度に大きく依存している。
【0015】
黒色顔料としては、飽和磁化値や保磁力値などの磁気特性、価格及び色調等の点で実用性のあるマグネタイト粒子粉末が広く使用されている。上記マグネタイト粒子粉末以外にカーボンブラック微粒子粉末等が更に添加される場合もあるが、カーボンブラック微粒子粉末を多量に使用すると体積固有抵抗値が低下し、絶縁性乃至高抵抗磁性トナーとして使用できなくなる。
【0016】
そして、カーボンブラック微粒子粉末の多量の添加は、マグネタイト粒子粉末の結着剤樹脂中への分散性を阻害する要因となるので、結着剤樹脂中に添加するカーボンブラック微粒子粉末の量は、可及的に少ないことが強く要求されている。
【0017】
従来、黒色磁性トナーの流動性を改良するために黒色磁性トナー中に混合分散されているマグネタイト粒子粉末の流動性を向上させる試みが種々なされており、例えば▲1▼マグネタイト粒子粉末の粒子形状を球状にする方法(特開昭59−64852号公報等)、▲2▼マグネタイト粒子粉末の粒子表面にケイ素化合物を露出させる方法(特公平8−25747号公報)等がある。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
流動性及び黒色度が優れているとともに、結着剤樹脂中への分散性が優れている黒色磁性トナー用黒色磁性粒子粉末は、現在最も要求されているところであるが、このような特性を有する黒色磁性粒子粉末は未だ得られていない。
【0019】
即ち、前出公知の球状を呈したマグネタイト粒子粉末は、立方体状マグネタイト粒子粉末、八面体状マグネタイト粒子粉末等に比べ、流動性が優れたものであるが、未だ十分とは言い難いものであり、また黒色度が低いものである。
【0020】
前出公知の粒子表面にケイ素化合物が露出しているマグネタイト粒子粉末も同様に流動性が未だ十分とは言い難いものであり、また黒色度が低いものである。
【0021】
そして、これら公知のマグネタイト粒子粉末の黒色度を改良するためにカーボンブラック微粒子粉末を添加すると、上述した通り、マグネタイト粒子粉末の結着剤樹脂中への分散性を阻害することとなる。
【0022】
そこで、本発明は、流動性及び黒色度が優れているとともに、結着剤樹脂中への分散性が優れている黒色磁性トナー用黒色磁性粒子粉末を得ることを技術的課題とする。
【0023】
【課題を解決する為の手段】
前記技術的課題は次の通りの本発明によって達成できる。
【0024】
即ち、本発明は、磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面にポリシロキサンが被覆されており、該ポリシロキサン被覆の少なくとも1部に平均粒子径0.002〜0.05μmのカーボンブラックが付着している平均粒子径0.06〜1.0μmの黒色複合磁性粒子粉末であって、上記カーボンブラックの付着量が前記磁性酸化鉄粒子粉末100重量部に対して1〜25重量部であることを特徴とする黒色磁性トナー用黒色複合磁性粒子粉末、磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面に下層としてアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれた1種又は2種以上が被覆され、上層としてポリシロキサンが被覆されており、該ポリシロキサン被覆の少なくとも1部に平均粒子径0.002〜0.05μmのカーボンブラックが付着している平均粒子径0.06〜1.0μmの黒色複合磁性粒子粉末であって、上記カーボンブラックの付着量が前記磁性酸化鉄粒子粉末100重量部に対して1〜25重量部であることを特徴とする黒色磁性トナー用黒色複合磁性粒子粉末及び前記いずれかの黒色複合磁性粒子粉末を用いた黒色磁性トナーである。
【0025】
本発明の構成をより詳しく説明すれば、次の通りである。
【0026】
先ず、本発明に係る黒色複合磁性粒子粉末について述べる。
【0027】
本発明に係る黒色複合磁性粒子粉末は、芯粒子粉末である磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面にポリシロキサンが被覆されており、該ポリシロキサン被覆の少なくとも1部にカーボンブラックが付着している平均長軸径0.06〜1.0μmの黒色複合磁性粒子粉末からなる。
【0028】
磁性酸化鉄粒子粉末としては、マグネタイト粒子粉末(FeO x・Fe2O3 0<X≦1)、マグヘマイト粒子粉末(γ−Fe2O3)及びこれらの混合粒子粉末を用いることができる。得られる黒色複合磁性粒子粉末の黒色度を考慮すれば、マグネタイト粒子粉末が好ましい。
【0029】
磁性酸化鉄粒子粉末の粒子形状は、球状、粒状、六面体、八面体及び多面体状等の球形度(平均最長径と平均最短径の比)(以下、「球形度」という。)が2.0未満の等方性粒子や軸比(平均長軸径と平均短軸径の比)(以下、「軸比」という。)が2.0以上の針状、紡錘状、米粒状等の異方性粒子のいずれであってもよい。得られる黒色複合磁性粒子粉末の流動性を考慮すれば、磁性酸化鉄粒子粉末の粒子形状は等方性粒子が好ましく、より好ましくは球状又は粒状である。
【0030】
磁性酸化鉄粒子粉末の粒子サイズは、等方性粒子粉末の場合、平均粒子径が0.055〜0.95μm、好ましくは0.065〜0.75μm、より好ましくは0.065〜0.45μmであって、球形度が1.0以上2.0未満、好ましくは1.0〜1.8であり、異方性粒子粉末の場合、平均長軸径が0.055〜0.95μm、好ましくは0.065〜0.75μm、より好ましくは0.065〜0.45μmであって、軸比が2.0〜20.0、好ましくは2.0〜15.0、より好ましくは2.0〜10.0である。
【0031】
平均粒子径が0.95μmを超える場合には、得られる黒色複合磁性粒子粉末が粗大粒子となり着色力が低下する。0.055μm未満の場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすくなるので、磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面へのポリシロキサンによる均一な被覆処理及びカーボンブラックによる均一な付着処理が困難となる。
【0032】
異方性粒子の軸比が20.0を超える場合には、粒子の絡み合いが多くなり、磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面へのポリシロキサンによる均一な被覆処理及びカーボンブラックによる均一な付着処理が困難となる。
【0033】
磁性酸化鉄粒子粉末の粒子径(異方性粒子粉末の場合は長軸径)の幾何標準偏差値は2.0以下が好ましく、より好ましくは1.8以下であり、更に好ましくは1.6以下である。幾何標準偏差値が2.0を超える場合には、存在する粗大粒子によって均一な分散が阻害されるため、磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面へのポリシロキサンによる均一な被覆処理及びカーボンブラックによる均一な付着処理が困難となる。幾何標準偏差値の下限値は1.01であり、1.01未満のものは工業的に得られ難い。
【0034】
磁性酸化鉄粒子粉末のBET比表面積値は0.5m2/g以上である。BET比表面積値が0.5m2/g未満の場合には、磁性酸化鉄粒子粉末が粗大であったり、粒子及び粒子相互間で焼結が生じた粒子となっており、得られる黒色複合磁性粒子粉末が粗大粒子となり着色力が低下する。得られる黒色複合磁性粒子粉末の着色力を考慮すると、BET比表面積値は、好ましくは1.0m2/g以上、より好ましくは1.5m2/g以上である。磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面へのポリシロキサンによる均一な被覆処理及びカーボンブラックによる均一な付着処理を考慮すると、その上限値は95m2/gであり、好ましくは90m2/g以下、より好ましくは85m2/g以下である。
【0035】
磁性酸化鉄粒子粉末の流動性は、流動性指数が25〜43程度である。各種形状の磁性酸化鉄粒子粉末のうち、球状を呈した磁性酸化鉄粒子粉末は流動性が優れているものであるが、それでも流動性指数は30〜43程度である。
【0036】
磁性酸化鉄粒子粉末の黒色度は、マグネタイト粒子粉末の場合、通常L*値の下限値が18.0を超え、上限値は26.0、好ましくは25.0であり、マグヘマイト粒子粉末の場合、通常L*値の下限値が18.0を超え、上限値は34、好ましくは32である。L*値が上記上限値を超える場合には、明度が高くなり、十分な黒色度を有する黒色複合磁性粒子粉末を得ることができない。
【0037】
磁性酸化鉄粒子粉末の磁気特性は、保磁力値が0.8〜28.6kA/m(10〜360Oe)程度、好ましくは1.6〜27.9kA/m(20〜350Oe)程度であって、759.8kA/m(10kOe)の磁場中における飽和磁化値が50〜91Am2/kg(50〜91emu/g)程度、好ましくは、60〜90Am2/kg(60〜90emu/g)程度であって、759.8kA/m(10kOe)の磁場中における残留磁化値が1〜35Am2/kg(1〜35emu/g)程度、好ましくは3〜30Am2/kg(3〜30emu/g)程度である。
【0038】
本発明に係る黒色複合磁性粒子粉末の粒子形状や粒子サイズは、芯粒子である磁性酸化鉄粒子の粒子形状や粒子サイズに大きく依存し、磁性酸化鉄粒子に相似する粒子形態を有しているとともに、磁性酸化鉄粒子よりも若干大きい粒子サイズを有している。
【0039】
即ち、本発明に係る黒色複合磁性粒子粉末は、等方性の磁性酸化鉄粒子を芯粒子とした場合には、平均粒子径が0.06〜1.0μm、好ましくは、0.07〜0.8μm、より好ましくは0.07〜0.5μmであって、球形度は1.0以上2.0未満、好ましくは1.0〜1.8、より好ましくは1.0〜1.5であり、異方性の磁性酸化鉄粒子を芯粒子とした場合には、平均長軸径が0.06〜1.0μm、好ましくは0.07〜0.8μm、より好ましくは0.07〜0.5μmであり、軸比が2.0〜20.0、好ましくは2.0〜18.0、より好ましくは2.0〜15.0である。
【0040】
平均粒子径が1.0μmを超える場合には、黒色複合磁性粒子粉末が粗大粒子となり着色力が低下する。0.06μm未満の場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、磁性トナー製造時における結着剤樹脂への分散性が低下する。
【0041】
異方性粒子の軸比の上限値が20.0を超える場合には、結着剤樹脂中における粒子の絞み合いが多くなり分散性が低下しやすくなる。
【0042】
黒色複合磁性粒子粉末の幾何標準偏差値は、2.0以下が好ましく、その下限値は1.01であり、より好ましくは、1.01〜1.8の範囲であり、更に好ましくは1.01〜1.6である。幾何標準偏差値が2.0を超える場合には、存在する粗大粒子によって黒色複合磁性粒子粉末の着色力が低下しやすくなる。幾何標準偏差値が1.01未満のものは工業的に得られ難い。
【0043】
黒色複合磁性粒子粉末のBET比表面積値は、1.0〜100m2/g、好ましくは1.5〜95m2/g、より好ましくは2.0〜90m2/gである。BET比表面積値が1.0m2/g未満の場合には、粒子が粗大であったり、粒子及び粒子相互間で焼結が生じた粒子となっており、着色力が低下する。BET比表面積値が100m2/gを超える場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、磁性トナー製造時における結着剤樹脂への分散性が低下する。
【0044】
黒色複合磁性粒子粉末の流動性は、流動性指数が44〜80の範囲が好ましく、より好ましくは45〜80、更により好ましくは46〜80である。流動性指数が44未満の場合には流動性が十分とは言い難く、得られる磁性トナーの流動性を改善することが困難である。また、製造工程内でホッパー詰まり等の不具合を生じやすく、ハンドリングしにくくなる。
【0045】
黒色複合磁性粒子粉末の黒色度は、芯粒子としてマグネタイト粒子を用いた場合、上限値がL*値で20.0であり、好ましくは19.0、より好ましくは18.0である。芯粒子としてマグヘマイト粒子を用いた場合は、上限値がL*値で20.0であり、好ましくは19.5、より好ましくは19.0である。L*値が20.0を超える場合には、明度が高くなり、黒色度が十分とはいえない。黒色度の下限値はL*値が15である。
【0046】
黒色複合磁性粒子粉末の結着剤樹脂への分散性は、後述する分散性の評価方法に基づいて、4又は5が好ましく、より好ましくは5である。
【0047】
黒色複合磁性粒子粉末のカーボンブラックの脱離率は20%以下が好ましく、より好ましくは10%以下である。カーボンブラックの脱離率が20%を超える場合には、磁性トナーの製造時において、脱離したカーボンブラックにより結着剤樹脂中での均一な分散が阻害される場合がある。
【0048】
黒色複合磁性粒子粉末の磁気特性は、磁性酸化鉄粒子粉末の種類や粒子形状を選ぶことにより制御することができ、磁性トナー用に通常使用される磁性粒子粉末と同様に、保磁力値が0.8〜28.6kA/m(10〜360Oe)程度、好ましくは1.6〜27.9kA/m(20〜350Oe)程度であって、759.8kA/m(10kOe)の磁場中における飽和磁化値が50〜91Am2/kg(50〜91emu/g)程度、好ましくは、60〜90Am2/kg(60〜90emu/g)程度であって、759.8kA/m(10kOe)の磁場中における残留磁化値が1〜35Am2/kg(1〜35emu/g)程度、好ましくは3〜30Am2/kg(3〜30emu/g)程度のものを使用することができる。
【0049】
本発明に係る黒色複合磁性粒子粉末におけるポリシロキサンは、化1で表わされるポリシロキサン、化2で表わされる変成ポリシロキサン、化3で表わされる末端変成ポリシロキサンまたはこれらの混合物を用いることができる。
【0050】
【化1】
【0051】
【化2】
【0052】
【化3】
【0053】
カーボンブラックの付着効果及び脱離率を考慮すると、メチルハイドロジェンシロキサン単位を有するポリシロキサン、ポリエーテル変成ポリシロキサン及び末端がカルボン酸で変成された末端カルボン酸変成ポリシロキサンが好ましい。
【0054】
ポリシロキサンの被覆量は、ポリシロキサン被覆磁性酸化鉄粒子粉末に対し、Si換算で0.02〜5.0重量%であることが好ましい。より好ましくは、0.03〜4.0重量%、更により好ましくは0.05〜3.0重量%である。
【0055】
0.02重量%未満の場合には、優れた流動性や黒色度を有する黒色複合磁性粒子粉末を得ることが困難である。
【0056】
5.0重量%を超える場合には、磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面に十分な黒色度及び流動性を付与できるだけのカーボンブラックを付着させることができるため、必要以上に被覆する意味がない。
【0057】
カーボンブラックの付着量は、磁性酸化鉄粒子粉末100重量部に対して1〜25重量部である。
【0058】
1重量部未満の場合には、カーボンブラックの付着量が不十分であるため、十分な流動性及び黒色度を有する黒色複合磁性粒子粉末を得ることが困難である。
【0059】
25重量部を超える場合には、得られる黒色複合磁性粒子粉末は十分な流動性及び黒色度を有しているが、カーボンブラックの付着量が多いため、カーボンブラックが脱離しやすくなり、その結果、磁性トナー製造時における結着剤樹脂への分散性が低下する場合がある。
【0060】
カーボンブラックの付着厚みは、0.04μm以下が好ましく、より好ましくは0.03μm以下、更に好ましくは0.02μm以下である。
【0061】
本発明に係る黒色複合磁性粒子粉末は、必要により、磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面をあらかじめ、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれた1種又は2種以上(以下、「アルミニウムの水酸化物等による被覆」という。)で被覆しておいてもよく、アルミニウムの水酸化物等で被覆しない場合に比べ、カーボンブラックの脱離率をより低減することができるため、磁性トナー製造時における結着剤樹脂中への分散性がより向上する。
【0062】
アルミニウムの水酸化物等による被覆量は、アルミニウムの水酸化物等が被覆された磁性酸化鉄粒子粉末に対してAl換算、SiO2換算又はAl換算量とSiO2換算量との総和で0.01〜50重量%が好ましい。
【0063】
0.01重量%未満である場合には、黒色複合磁性粒子粉末のカーボンブラックの脱離率低減効果が得られないため、磁性トナー製造時における結着剤樹脂への分散性改良効果が得られない。
【0064】
50重量%を超える場合には、黒色複合磁性粒子粉末のカーボンブラックの脱離率低減による磁性トナー製造時における結着剤樹脂への分散性改良効果が得られるが、必要以上に被覆する意味がない。
【0065】
磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面がアルミニウムの水酸化物等で被覆されている本発明に係る黒色複合磁性粒子粉末は、磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面がアルミニウムの水酸化物等で被覆されていない本発明に係る黒色複合磁性粒子粉末の場合とほぼ同程度の粒子サイズ、幾何標準偏差値、BET比表面積値、流動性、黒色度L*値及び磁気特性を有するとともに、より改善されたカーボンブラックの脱離率を有している。
【0066】
次に、本発明に係る黒色磁性トナーについて述べる。
【0067】
本発明に係る黒色磁性トナーは、前記黒色磁性トナー用黒色複合磁性粒子粉末及び結着剤樹脂から構成されており、必要に応じて離型剤、着色剤、荷電制御剤、その他の添加剤等を含有してもよい。
【0068】
本発明に係る黒色磁性トナーは、平均粒子径が3〜15μm、好ましくは5〜12μmである。
【0069】
結着剤樹脂と黒色複合磁性粒子粉末との割合は、黒色複合磁性粒子粉末100重量部に対して結着剤樹脂50〜900重量部、好ましくは50〜400重量部である。
【0070】
結着剤樹脂としては、スチレン、アクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステル等のビニル系単量体を重合又は共重合したビニル系重合体が使用できる。上記スチレン単量体としては、例えばスチレン及びその置換体がある。上記アクリル酸アルキルエステル単量体としては、例えばアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等がある。
【0071】
上記共重合体は、スチレン系成分を50〜95重量%含むことが好ましい。
【0072】
結着剤樹脂は、必要により、上記ビニル系重合体とともにポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂等を併用することができる。
【0073】
本発明に係る黒色磁性トナーの流動性は、流動性指数が70〜100であり、好ましくは71〜100、より好ましくは72〜100である。70未満の場合には流動性が十分とはいえない。
【0074】
本発明に係る黒色磁性トナーの黒色度は、L*値が20以下であり、好ましくは19.8以下、より好ましくは19.5以下である。20を超える場合には、明度が高くなり、黒色度が十分とはいえない。下限値はL*値が15程度である。
【0075】
黒色磁性トナーの体積固有抵抗値は、1.0×1013Ω・cm以上であり、好ましくは3.0×1013Ω・cm以上、より好ましくは5.0×1013Ω・cm以上である。1.0×1013Ω・cm未満である場合は、トナーの使用環境によって帯電量が変化しやすく特性が不安定となりやすい。上限値は1.0×1016Ω・cm未満である。
【0076】
黒色磁性トナーの磁気特性は、通常、静電潜像現像に使用されている磁性トナーと同様に保磁力値が0.8〜28.6kA/m(10〜360Oe)、好ましくは1.6〜27.9kA/m(20〜350Oe)であって795.8kA/m(10kOe)の磁場中における飽和磁化値が10〜85Am2/kg(10〜85emu/g)、好ましくは20〜80Am2/kg(20〜80emu/g)、残留磁化値が、1〜20Am2/kg(1〜20emu/g)、好ましくは2〜15Am2/kg(2〜15emu/g)であって、79.6kA/m(1kOe)の磁場中における飽和磁化値が7.5〜65Am2/kg(7.5〜65emu/g)、好ましくは10〜60Am2/kg(10〜60emu/g)、残留磁化値が0.5〜15Am2/kg(0.5〜15emu/g)、好ましくは1.0〜13Am2/kg(1.0〜13emu/g)である。
【0077】
本発明に係る黒色複合磁性粒子粉末は、下記の製造法により得ることができる。
【0078】
まず、本発明における磁性酸化鉄粒子粉末の製造法について述べる。
【0079】
等方性マグネタイト粒子粉末は、▲1▼第一鉄塩水溶液と該第一鉄塩水溶液中のFe2+に対して当量以上のアルカリ性水溶液とを反応して得られるpH値10以上の水酸化第一鉄コロイドを含む懸濁液に、酸素含有ガスを通気することにより八面体マグネタイト粒子粉末を生成する方法(特公昭44−668号公報)。▲2▼第一鉄塩水溶液と該第一鉄塩水溶液中のFe2+に対して当量以下のアルカリ性水溶液とを反応して得られるpH値6.0〜7.5の範囲の水酸化第一鉄コロイドを含む懸濁液に、酸素含有ガスを通気することによりマグネタイト核粒子を生成させ、該マグネタイト核粒子及び水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩反応水溶液にpH値8.0〜9.5の範囲において酸素含有ガスを通気することにより六面体状マグネタイト粒子粉末を生成する方法(特開平3−201509公報)。▲3▼第一鉄塩水溶液と該第一鉄塩水溶液中のFe2+に対して当量以下のアルカリ性水溶液とを反応して得られるpH値6.0〜7.5の範囲の水酸化第一鉄コロイドを含む懸濁液に、酸素含有ガスを通気することによりマグネタイト核粒子を生成させ、残存Fe2+に対して当量以上の水酸化アルカリ水溶液を添加してpH値10以上で加熱酸化することにより球状マグネタイト粒子粉末を生成する方法(特公昭62−51208号公報)により得ることができる。
【0080】
等方性マグヘマイト粒子粉末は、上記等方性マグネタイト粒子粉末を、空気中300〜600℃の範囲で加熱することにより得ることができる。
【0081】
異方性マグネタイト粒子粉末は、第一鉄塩水溶液と水酸化アルカリ水溶液、炭酸アルカリ水溶液又は水酸化アルカリ水溶液・炭酸アルカリ水溶液とを反応して得られる水酸化第一鉄コロイド、炭酸鉄及び鉄含有沈殿物のいずれかを含む懸濁液のpH値や温度を制御しながら、該懸濁液中に酸素含有ガスを通気して酸化することにより針状、紡錘状又は米粒状ゲータイト粒子粉末を生成し、該異方性ゲータイト粒子粉末を濾別、水洗、乾燥した後、還元性ガス中300〜800℃で加熱還元処理することにより得ることができる。
【0082】
異方性マグヘマイト粒子粉末は、上記異方性マグネタイト粒子粉末を酸化性ガス中300〜600℃の範囲で加熱酸化処理することにより得ることができる。
【0083】
次に、本発明に係る黒色複合磁性粒子粉末の製造法について述べる。
【0084】
磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面のポリシロキサンによる被覆は、磁性酸化鉄粒子粉末とポリシロキサンとを機械的に混合攪拌したり、磁性酸化鉄粒子粉末にポリシロキサンを噴霧しながら機械的に混合攪拌すればよい。添加したポリシロキサンは、ほぼ全量が磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面に被覆される。
【0085】
ポリシロキサンを均一に磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面に被覆するためには、磁性酸化鉄粒子粉末の凝集をあらかじめ粉砕機を用いて解きほぐしておくことが好ましい。
【0086】
磁性酸化鉄粒子粉末とポリシロキサンとの混合攪拌やカーボンブラック微粒子粉末と粒子表面にポリシロキサンが被覆されている磁性酸化鉄粒子粉末との混合攪拌をするための機器としては、粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、殊に、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール形混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機、ロール型混練機を用いることができる。本発明の実施にあたっては、ホイール型混練機がより効果的に使用できる。
【0087】
上記ホイール型混練機としては、具体的に、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、好ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーであり、より好ましくはエッジランナーである。上記ボール型混練機としては、具体的に、振動ミル等がある。上記ブレード型混練機としては、具体的に、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウタミキサー等がある。上記ロール型混練機としては、具体的に、エクストルーダー等がある。
【0088】
混合攪拌時における条件は、磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面にポリシロキサンができるだけ均一に被覆されるように、線荷重は19.6〜1960N/cm(2〜200Kg/cm)、好ましくは98〜1470N/cm(10〜150Kg/cm)、より好ましくは147〜980N/cm(15〜100Kg/cm)、処理時間は5〜120分、好ましくは10〜90分の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。なお、撹拌速度は2〜2000rpm、好ましくは5〜1000rpm、より好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
【0089】
マグネタイト粒子粉末等の酸化されやすい磁性粒子粉末は、酸化による磁気特性劣化を防止するために、混合機器にN2などの不活性ガスをパージして処理を行うことが好ましい。
【0090】
ポリシロキサンの添加量は、磁性酸化鉄粒子粉末100重量部に対して0.15〜45重量部が好ましい。0.15重量部未満の場合には、黒色度及び流動性を改良できる程度にカーボンブラックを十分付着させることが困難である。45重量部を超える場合には、磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面に十分な黒色度及び流動性を付与できるだけのカーボンブラックを付着させることができるが、必要以上に被覆する意味がない。
【0091】
粒子表面にポリシロキサンが被覆されている磁性酸化鉄粒子粉末にカーボンブラック微粒子粉末を添加し、混合攪拌してポリシロキサン被覆にカーボンブラックを付着させる。必要により更に、乾燥を行ってもよい。
【0092】
付着処理に用いるカーボンブラック微粒子粉末は、市販のファーネスブラック、チャンネルブラック等を使用することができ、具体的には、#3050、#3150、#3250、#3750、#3950、MA100、MA7、#1000、#2400B、#30、MA77、MA8、#650、MA11、#50、#52、#45、#2200B、MA600等(商品名:三菱化学株式会社(製))シースト9H、シースト7H、シースト6、シースト3H、シースト300、シーストFM等(商品名、東海カーボン株式会社(製))、Raven 1250、Raven 860、Raven 1000、Raven 1190ULTRA(商品名:コロンビヤン・ケミカルズ・カンパニー(製))、ケッチェンブラックEC、ケッチェンブラックEC600JD(商品名:ケッチェンブラック・インターナショナル株式会社(製))、BLACK PEARLS−L、BLACK PEARLS 1000、BLACK PEARLS 4630、VULCAN XC72、REGAL 660、REGAL 400(商品名:キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク(製))等が使用できる。
【0093】
ポリシロキサンとの親和性を考慮すれば、MA−100、MA7、#1000、#2400B、#30、BLACK PEARLS−L及びBLACK PEARLS 4630が好ましい。
【0094】
付着処理に用いるカーボンブラック微粒子粉末の平均粒子径は0.002〜0.05μm程度、より好ましくは0.002〜0.035μm程度である。
【0095】
0.002μm未満の場合には、カーボンブラック微粒子粉末があまりに微細となるため、取扱いが困難となる。
【0096】
0.05μmを超える場合には、カーボンブラック微粒子粉末の粒子サイズが大きいため、ポリシロキサン被覆へ均一に付着させるために非常に大きな機械的せん断力が必要となり、工業的に不利となる。
【0097】
カーボンブラック微粒子粉末は、少量ずつを時間をかけながら、殊に5〜60分程度をかけて添加するのが好ましい。
【0098】
混合攪拌時における条件は、カーボンブラック微粒子粉末が均一に付着するように、線荷重は19.6〜1960N/cm(2〜200Kg/cm)、好ましくは98〜1470N/cm(10〜150Kg/cm)、より好ましくは147〜980N/cm(15〜100Kg/cm)、処理時間は5〜120分、好ましくは10〜90分の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。なお、撹拌速度は2〜2000rpm、好ましくは5〜1000rpm、より好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
【0099】
カーボンブラック微粒子粉末の添加量は、磁性酸化鉄粒子粉末100重量部に対して1〜25重量部である。1重量部未満の場合には、カーボンブラックの付着量が不十分であり、十分な黒色度及び流動性を有する黒色複合磁性粒子粉末が得られない。25重量部を超える場合には、十分な黒色度及び流動性は得られるが、カーボンブラックの付着量が多くなるため粒子表面からカーボンブラックが脱離しやすくなり、その結果、磁性トナー製造時における結着剤樹脂への分散性が低下する。
【0100】
乾燥を行う場合の加熱温度は、通常40〜200℃が好ましく、より好ましくは60〜150℃であり、加熱時間は、10分〜12時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましい。
【0101】
磁性酸化鉄粒子粉末は、必要により、ポリシロキサンとの混合攪拌に先立ってあらかじめ、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる1種又は2種以上で被覆しておいてもよい。
【0102】
アルミニウムの水酸化物等による被覆は、磁性酸化鉄粒子粉末を分散して得られる水懸濁液に、アルミニウム化合物、ケイ素化合物又は当該両化合物を添加して混合攪拌することにより、又は、必要により、混合攪拌後にpH値を調整することにより、前記磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面を、アルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれる1種又は2種以上で被覆し、次いで、濾別、水洗、乾燥、粉砕する。必要により、更に、脱気・圧密処理等を施してもよい。
【0103】
アルミニウム化合物としては、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩及びアルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリ塩等が使用できる。
【0104】
アルミニウム化合物の添加量は、磁性酸化鉄粒子粉末に対してAl換算で0.01〜50重量%である。0.01重量%未満である場合には、粒子表面に十分な量のアルミニウムの水酸化物等を被覆することが困難であり、カーボンブラックの脱離率低減による磁性トナー製造時における結着剤樹脂への分散性改良効果が得られない。50重量%を超える場合には、被覆効果が飽和するため、必要以上に添加する意味がない。
【0105】
ケイ素化合物としては、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、コロイダルシリカ等が使用できる。
【0106】
ケイ素化合物の添加量は、磁性酸化鉄粒子粉末に対してSiO2換算で0.01〜50重量%である。0.01重量%未満である場合には、粒子表面に十分な量のケイ素の酸化物等を被覆することが困難であり、カーボンブラックの脱離率低減による磁性トナー製造時における結着剤樹脂への分散性改良効果が得られない。50重量%を超える場合には、被覆効果が飽和するため、必要以上に添加する意味がない。
【0107】
アルミニウム化合物とケイ素化合物とを併せて使用する場合の添加量は、磁性酸化鉄粒子粉末に対し、Al換算量とSiO2換算量との総和で0.01〜50重量%が好ましい。
【0108】
次に、本発明に係る黒色トナーの製造法について述べる。
【0109】
本発明に係る黒色磁性トナーの製造法としては、所定量の結着剤樹脂と所定量の黒色複合磁性粒子粉末とを混合、混練、粉砕による公知の方法によって行うことができる。具体的には、黒色複合磁性粒子粉末と結着剤樹脂とを、必要により更に離型剤、着色剤、荷電制御剤、その他の添加剤等を添加した混合物を混合機により十分に混合した後、加熱混練機によって結着剤樹脂中に黒色複合磁性粒子粉末等を分散させ、次いで、冷却固化して樹脂混練物を得、該樹脂混練物を粉砕及び分級を行って所望の粒子サイズを有する黒色磁性トナーを得ることができる。
【0110】
前記混合機としては、ヘンシェルミキサー、ボールミルなどの混合機を使用することができる。前記加熱混練機としては、ロールミル、ニーダー、二軸エクストルーダー等を使用することができる。前記粉砕は、カッターミル、ジェットミル等の粉砕機によって行うことができ、前記分級も特許第2683142号公報等に記載の通り、公知の風力分級等により行うことができる。
【0111】
黒色磁性トナーを得る他の方法として、懸濁重合法又は乳化重合法がある。懸濁重合法においては、重合性単量体と黒色複合磁性粒子粉末とを、必要により更に、着色剤、重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤を添加した混合物を溶解又は分散させた単量体組成物を、懸濁安定剤を含む水相中に攪拌しながら添加して造粒し、重合させて所望の粒子サイズを有する黒色磁性トナー粒子を形成することができる。
【0112】
乳化重合法においては、単量体と黒色複合磁性粒子粉末とを、必要により更に着色剤、重合開始剤などを水中に分散させて重合を行う過程に乳化剤を添加することによって所望の粒子サイズを有する黒色磁性トナー粒子を形成することができる。
【0113】
【発明の実施の形態】
本発明の代表的な実施の形態は、次の通りである。
【0114】
マグネタイト粒子粉末、マグヘマイト粒子粉末、黒色複合磁性粒子粉末及びカーボンブラック微粒子粉末の平均粒子径又は平均長軸径及び平均短軸径は、電子顕微鏡写真(×20000)を縦方向及び横方向にそれぞれ4倍に拡大した写真に示される粒子約350個について定方向径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0115】
球形度は、等方性粒子粉末の最長径と最短径の比で、軸比は、異方性粒子粉末の平均長軸径と平均短軸径との比で示した。
【0116】
粒子の幾何標準偏差値は、下記の方法により求めた値で示した。即ち、上記拡大写真に示される粒子の粒子径(長軸径)を測定した値を、その測定値から計算して求めた粒子の実際の粒子径(長軸径)と個数から統計学的手法に従って対数正規確率紙上に横軸に粒子の粒子径(長軸径)を、縦軸に所定の粒子径(長軸径)区間のそれぞれに属する粒子の累積個数(積算フルイ下)を百分率でプロットする。
【0117】
そして、このグラフから粒子の個数が50%及び84.13%のそれぞれに相当する粒子径(長軸径)の値を読みとり、幾何標準偏差値=積算フルイ下84.13%における粒子径(長軸径)/積算フルイ下50%における粒子径(長軸径)(幾何平均径)に従って算出した値で示した。幾何標準偏差値が1に近いほど、粒度分布が優れていることを意味する。
【0118】
比表面積値はBET法により測定した値で示した。
【0119】
黒色複合磁性粒子粉末の粒子内部や粒子表面に存在するAl量及びSi量並びに黒色複合磁性粒子粉末に被覆されているポリシロキサンが含有するSi量のそれぞれは、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0120】
黒色複合磁性粒子粉末に付着しているカーボンブラック量は、「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて炭素量を測定することにより求めた。
【0121】
黒色複合磁性粒子粉末に付着しているカーボンブラックの付着厚みは、「透過型電子顕微鏡JEM−2010」(日本電子株式会社(製))を用いて加速電圧200kVの条件下で撮影した電子顕微鏡写真を10倍に拡大した写真(×5,000,000)に写っている粒子の表面に付着しているカーボンブラックの平均的な厚み部分を測定することにより求めた。
【0122】
磁性酸化鉄粒子粉末、黒色複合磁性粒子粉末及び黒色磁性トナーの流動性は、パウダテスタ(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて、安息角(度)、圧縮度(%)、スパチュラ角(度)、凝集度の各粉体特性値を測定し、該各測定値を同一基準の数値に置き換えた各々の指数を求め、各々の指数を合計した流動性指数で示した。流動性指数が100に近いほど、流動性が優れていることを意味する。
【0123】
磁性酸化鉄粒子粉末、黒色複合磁性粒子粉末及び黒色磁性トナーの黒色度は、試料0.5gとヒマシ油1.5mlとをフーバー式マーラーで練ってペースト状とし、このペーストにクリアラッカー4.5gを加え、混練、塗料化してキャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布した塗布片(塗膜厚み:約30μm)を作製し、 該塗料片について、多光源分光測色計MSC−IS−2D(スガ試験機株式会社製)を用いて測定を行い、JIS Z 8729に定めるところに従って表色指数L*値で示した。
【0124】
ここでL*値は、明度を表わし、L*値が小さいほど黒色度が優れていることを示す。
【0125】
黒色複合磁性粒子粉末に付着しているカーボンブラックの脱離率(%)は、下記の方法により求めた値で示した。脱離率が0%に近いほど、粒子表面からのカーボンブラックの脱離量が少ないことを示す。
【0126】
黒色複合磁性粒子粉末3gとエタノール40mlを50mlの沈降管に入れ、20分間超音波分散を行った後、120分静置し、比重差によって黒色複合磁性粒子粉末と脱離したカーボンブラックを分離した。次いで、この黒色複合磁性粒子粉末に再度エタノール40mlを加え、更に20分間超音波分散を行った後120分静置し、黒色複合磁性粒子粉末と脱離したカーボンブラックを分離した。この黒色複合磁性粒子粉末を100℃で1時間乾燥させ、前述の「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて炭素量を測定し、下記式に従って求めた値をカーボンブラックの脱離率とした。
【0127】
カーボンブラックの脱離率(%)=[(Wa−We)/Wa]×100
Wa:黒色複合磁性粒子粉末のカーボンブラック付着量
We:脱離テスト後の黒色複合磁性粒子粉末のカーボンブラック付着量
【0128】
黒色複合磁性粒子粉末の結着剤樹脂への分散性は、得られた黒色磁性トナー粒子の断面を光学顕微鏡(オリンパス光学工業社製、BH−2)を用いて撮影し、得られた顕微鏡写真(×200倍)における未分散の凝集粒子の個数を計数することで判定し、5段階で評価した。5が最も分散状態が良い事を示す。
1:0.25mm2当たりに50個以上
2:0.25mm2当たりに10個以上50個未満
3:0.25mm2当たりに5個以上10個未満
4:0.25mm2当たりに1個以上5個未満
5:未分散物認められず
【0129】
黒色磁性トナーの平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(model HELOSLA/KA、SYMPATEC社製)を用いて測定した。
【0130】
黒色磁性トナーの体積固有抵抗値は、まず、被測定試料0.5gを測り取り、KBr錠剤成形器(株式会社島津製作所製)を用いて、1.37×107kPa(140Kg/cm2)の圧力で加圧成形を行い、円柱状の被測定試料を作製した。
【0131】
次いで、被測定試料を温度25℃、相対湿度60%環境下に12時間以上暴露した後、この被測定試料をステンレス電極の間にセットし、ホイートストンブリッジ(TYPE2768 横河北辰電気株式会社製)で15Vの電圧を印加して抵抗値R(Ω)を測定した。
【0132】
次いで、被測定(円柱状)試料の上面の面積A(cm2)と厚みt(cm)を測定し、次式にそれぞれの測定値を挿入して、体積固有抵抗値X(Ω・cm)を求めた。
X(Ω・cm)=R×(A/t)
【0133】
磁性酸化鉄粒子粉末及び黒色複合磁性粒子粉末の磁気特性は、「振動試料型磁力計VSM−3S−15」(東英工業株式会社製)を使用し、外部磁場795.8kA/m(10kOe)までかけて測定した。黒色磁性トナーの磁気特性は外部磁場79.6kA/m(1kOe)及び795.8kA/m(10kOe)までかけて測定した。
【0134】
<黒色複合磁性粒子粉末の製造>
図1の電子顕微鏡写真(×20000)に示す球状マグネタイト粒子粉末(球形度:1.2、平均粒子径0.23μm、幾何標準偏差値1.42、BET比表面積値9.2m2/g、黒色度L*値20.6、流動性指数35、保磁力値4.9kA/m(61Oe)、795.8kA/m(10kOe)における飽和磁化値84.9Am2/kg(84.9emu/g)、795.8kA/m(10kOe)における残留磁化値7.8Am2/kg(7.8emu/g))20kgを、凝集を解きほぐすために、純水150lに攪拌機を用いて邂逅し、更に、「TKパイプラインホモミクサー」(製品名、特殊機化工業株式会社製)を3回通して球状マグネタイト粒子粉末を含むスラリーを得た。
【0135】
次いで、この球状マグネタイト粒子粉末を含むスラリーを横型サンドグラインダー「マイティーミルMHG−1.5L」(製品名、井上製作所株式会社製)を用いて、軸回転数2000rpmにおいて5回パスさせて、球状マグネタイト粒子粉末を含む分散スラリーを得た。
【0136】
得られた分散スラリーの325mesh(目開き44μm)における篩残分は、0%であった。この分散スラリーを濾別、水洗して、球状マグネタイト粒子粉末のケーキを得た。この球状マグネタイト粒子粉末のケーキを120℃で乾燥した後、乾燥粉末11.0kgをエッジランナー「MPUV−2型」(製品名、株式会社松本鋳造鉄工所製)に投入して、毎分2lの窒素を吹き込みながら、294N/cm(30Kg/cm)で30分間混合攪拌を行い、粒子粉末の凝集を軽く解きほぐした。
【0137】
次に、メチルハイドロジェンポリシロキサン(商品名:TSF484:東芝シリコーン(株)製)110gを、エッジランナーを稼動させながら粒子粉末の凝集を解きほぐした上記球状マグネタイト粒子粉末に添加し、588N/cm(60Kg/cm)の線荷重で60分間混合攪拌を行い、球状マグネタイト粒子粉末の粒子表面にメチルハイドロジェンポリシロキサン被覆を形成させた。なお、この時の攪拌速度は22rpmであった。
【0138】
次に、図2の電子顕微鏡写真(×20000)に示すカーボンブラック微粒子粉末(粒子形状:粒状、平均粒子径0.022μm、幾何標準偏差値1.68、BET比表面積値134m2/g、黒色度L*値16.6)990gを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加し、更に588N/cm(60Kg/cm)の線荷重で60分間混合攪拌を行い、メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆にカーボンブラックを付着させた後、乾燥機を用いて105℃で60分間乾燥を行い黒色複合磁性粒子粉末を得た。なお、この時の攪拌速度は22rpmであった。
【0139】
得られた黒色複合磁性粒子粉末は、図3の電子顕微鏡写真(×20000)に示す通り、平均粒子径が0.24μmであった。そして、この黒色複合磁性粒子粉末は、球形度が1.2、幾何標準偏差値が1.42、BET比表面積値が9.8m2/g、流動性指数が48、黒色度L*値が17.8、カーボンブラック脱離率が6.5%であって、磁気特性は、保磁力値が4.7kA/m(59Oe)、795.8kA/m(10kOe)における飽和磁化値が76.8Am2/kg(76.8emu/g)、795.8kA/m(10kOe)における残留磁化値が7.08Am2/kg(7.0emu/g)であって、メチルハイドロジェンポリシロキサンの被覆量はSi換算で0.44重量%であった。付着しているカーボンブラック量はC換算で8.21重量%(球状マグネタイト粒子粉末100重量部に対して9重量部に相当する)であり、粒子表面のカーボンブラックの付着厚みは0.0024μmであった。図3に示す電子顕微鏡写真からも、カーボンブラックがほとんど認められないことから、カーボンブラックのほぼ全量がメチルハイドロジェンポリシロキサン被覆に付着していることが認められた。
【0140】
比較のため、メチルハイドロジェンポリシロキサンを被覆することなく、球状マグネタイト粒子粉末とカーボンブラック微粒子粉末とをエッジランナーで混合攪拌して得られた混合粒子粉末の電子顕微鏡写真(×20000)を図4に示す。図4の電子顕微鏡写真に示される通り、カーボンブラックが球状マグネタイト粒子粉末の粒子表面に付着しておらず、両粒子粉末がバラバラに混在していることが認められた。
【0141】
<黒色複合磁性粒子粉末を含む黒色磁性トナーの製造>
上記黒色複合磁性粒子粉末400g、スチレン−ブチルアクリレート−メチルメタクリレート共重合樹脂540g(分子量130,000、スチレン/ブチルアクリレート/メチルメタクリレート=82.0/16.5/1.5)、ポリプロピレンワックス60g(分子量3,000)及び帯電制御剤15gをヘンシェルミキサーに投入し、槽内温度60℃において15分間攪拌混合を行った。得られた混合粉体を連続型二軸混練機(T−1)で140℃において溶融混練を行い、得られた混練物を空気中で冷却、粗粉砕、微粉砕した後、分級し、黒色磁性トナーを得た。
【0142】
得られた黒色磁性トナーは、平均粒子径が9.7μm、分散性が5、流動性指数が75、黒色度L*値が18.1、体積固有抵抗値が1.2×1014Ω・cm、保磁力値が4.7kA/m(59Oe)、795.8kA/m(10kOe)における飽和磁化値が32.4Am2/kg(32.4emu/g)、795.8kA/m(10kOe)における残留磁化値が4.1Am2/kg(4.1emu/g)、79.6kA/m(1kOe)における飽和磁化値が25.7Am2/kg(25.7emu/g)、79.6kA/m(1kOe)における残留磁化値が3.4Am2/kg(3.4emu/g)であった。
【0143】
【作用】
本発明において最も重要な点は、磁性酸化鉄粒子粉末、必要により、該磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面にアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれた1種又は2種以上が被覆されている磁性酸化鉄粒子粉末のいずれかの粒子粉末の粒子表面にポリシロキサンが被覆されており、該ポリシロキサン被覆の少なくとも1部にカーボンブラックが付着している平均粒子径0.06〜1.0μmの黒色複合磁性粒子粉末であって、上記カーボンブラックの付着量が磁性酸化鉄粒子粉末100重量部に対して1〜25重量部である黒色複合磁性粒子粉末は、流動性及び黒色度が優れているとともに、粒子表面から脱離するカーボンブラックが少ないという事実である。そして、この黒色複合磁性粒子粉末は、黒色磁性トナー製造時における結着剤樹脂への分散性に優れているという事実である。
【0144】
黒色複合磁性粒子粉末の流動性が優れている理由について、本発明者は、微粒子であることに起因して通常は凝集体として挙動するカーボンブラックが、本発明に係る黒色複合磁性粒子粉末の場合は磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面に均一且つ緻密に付着されていることによって、磁性酸化鉄粒子表面に多数の微細な凹凸を形成することによるものと考えている。
【0145】
黒色複合磁性粒子粉末の黒色度が優れている理由について、本発明者は、磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面に均一且つ緻密に付着されているカーボンブラックによって磁性酸化鉄粒子粉末の色が打ち消され、カーボンブラック本来の色が発揮されることによるものと考えている。
【0146】
黒色複合磁性粒子粉末の粒子表面から脱離するカーボンブラックが少ない理由について、本発明者は、カーボンブラックが付着しているポリシロキサンが有している各種官能基が、磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面へ強固に結合するためと考えている。
【0147】
磁性トナー製造時における黒色複合磁性粒子粉末の結着剤樹脂への分散性が優れている理由について、本発明者は、黒色複合磁性粒子粉末の粒子表面から脱離するカーボンブラックが少ないことに起因して、カーボンブラックによって系内の分散が阻害されないとともに、黒色複合磁性粒子粉末の粒子表面にカーボンブラックが付着していることにより粒子表面に凹凸が生じ、粒子相互間の接触が抑制されるためと考えている。
【0148】
そして、上記黒色複合磁性粒子粉末を用いて得られた本発明に係る黒色磁性トナーは、流動性及び黒色度が優れているという事実である。
【0149】
黒色磁性トナーの流動性が優れている理由について、本発明者は、カーボンブラックが均一、且つ、多量に存在している黒色複合磁性粒子粉末が、黒色磁性トナーの表面に露出して、多数の微細な凹凸を形成していることによるものと考えている。
【0150】
黒色磁性トナーの黒色度が優れている理由について、本発明者は、黒色度の優れた黒色複合磁性粒子粉末を黒色磁性トナー中に配合させたことによるものと考えている。
【0151】
【実施例】
次に、実施例並びに比較例を挙げる。
【0152】
磁性酸化鉄粒子1〜4
公知の製造方法で得られた各種の磁性酸化鉄粒子粉末を準備し、上記発明の実施の形態と同様にして凝集が解きほぐされた磁性酸化鉄粒子粉末を得た。
【0153】
磁性酸化鉄粒子粉末の諸特性を表1に示す。
【0154】
【表1】
【0155】
磁性酸化鉄粒子5
磁性酸化鉄粒子1の凝集が解きほぐされた八面体状マグネタイト粒子粉末20kgと水150lとを用いて、前記発明の実施の形態と同様にして八面体状マグネタイト粒子粉末を含むスラリーを得た。得られた八面体状マグネタイト粒子粉末を含む再分散スラリーのpH値を4.0とした。次に、該スラリーに水を加えスラリー濃度を98g/lに調整した。このスラリー150lを加熱して60℃とし、このスラリー中に1.0mol/lの硫酸アルミニウム溶液2722ml(八面体状マグネタイト粒子粉末に対してAl換算で1.0重量%に相当する)を加え、30分間保持した後、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH値を7.5に調整した。続いてこのスラリー中に3号水ガラス254g(八面体状マグネタイト粒子に対してSiO2換算で0.5重量%に相当する)を加え30分間熟成した後、酢酸を用いてpH値を7.5に調整した。この状態で30分間保持した後、濾過、水洗、乾燥、粉砕して粒子表面がアルミニウムの水酸化物及びケイ素の酸化物により被覆されている八面体状マグネタイト粒子粉末を得た。
【0156】
この時の主要製造条件を表2に、得られた八面体状マグネタイト粒子粉末の諸特性を表3に示す。
【0157】
尚、表面処理工程における被覆物の種類のAはアルミニウムの水酸化物を表わし、Sはケイ素の酸化物を表わす。
【0158】
【表2】
【0159】
【表3】
【0160】
磁性酸化鉄粒子6〜8
磁性酸化鉄粒子の種類、表面処理工程における添加物の種類及び添加量を種々変えた以外は磁性酸化鉄粒子5と同様にして表面処理済磁性酸化鉄粒子粉末を得た。
【0161】
この時の主要処理条件を表2に、得られた表面処理済磁性酸化鉄粒子粉末の諸特性を表3に示す。
【0162】
実施例1〜8、比較例1〜5
磁性酸化鉄粒子の種類、ポリシロキサンによる被覆工程におけるポリシロキサンの有無、種類及び添加量、エッジランナー処理条件、カーボンブラックの付着工程におけるカーボンブラック微粒子粉末の種類及び添加量、エッジランナーによる処理条件を種々変えた以外は、前記発明の実施の形態と同様にして黒色複合磁性粒子粉末を得た。実施例1〜8の各実施例で得られた黒色複合磁性粒子粉末は、電子顕微鏡観察の結果、カーボンブラックがほとんど認められないことから、カーボンブラックのほぼ全量が、ポリシロキサン被覆に付着していることが確認された。
【0163】
尚、使用したカーボンブラック微粒子粉末A乃至Cの諸特性を表4に示す。
【0164】
【表4】
【0165】
この時の主要処理条件を表5に、得られた黒色複合磁性粒子粉末の諸特性を表6に示す。
【0166】
【表5】
【0167】
【表6】
【0168】
実施例9〜16、比較例6〜8
磁性酸化鉄粒子の種類、変性ポリシロキサンによる被覆工程における変性ポリシロキサンの有無、種類及び添加量、エッジランナー処理条件、カーボンブラックの付着工程におけるカーボンブラック微粒子粉末の種類及び添加量、エッジランナーによる処理条件を種々変えた以外は、前記発明の実施の形態と同様にして黒色複合磁性粒子粉末を得た。実施例9〜16の各実施例で得られた黒色複合磁性粒子粉末は、電子顕微鏡観察の結果、カーボンブラックがほとんど認められないことから、カーボンブラックのほぼ全量が、変性ポリシロキサン被覆に付着していることが確認された。
【0169】
【表7】
【0170】
【表8】
【0171】
実施例17〜24、比較例9〜11
磁性酸化鉄粒子の種類、末端変性ポリシロキサンによる被覆工程における末端変性ポリシロキサンの有無、種類及び添加量、エッジランナー処理条件、カーボンブラックの付着工程におけるカーボンブラック微粒子粉末の種類及び添加量、エッジランナーによる処理条件を種々変えた以外は、前記発明の実施の形態と同様にして黒色複合磁性粒子粉末を得た。実施例17〜24の各実施例で得られた黒色複合磁性粒子粉末は、電子顕微鏡観察の結果、カーボンブラックがほとんど認められないことから、カーボンブラックのほぼ全量が、末端変性ポリシロキサン被覆に付着していることが確認された。
【0172】
【表9】
【0173】
【表10】
【0174】
<黒色磁性トナーの製造>
実施例25〜48及び比較例12〜26
黒色磁性トナーを構成する黒色磁性粒子粉末として、実施例1〜24の黒色複合磁性粒子粉末、磁性酸化鉄粒子粉末1〜4、比較例1の磁性酸化鉄粒子粉末とカーボンブラック微粒子粉末との混合粒子粉末及び比較例2〜11の黒色磁性粒子粉末を用いて、黒色磁性粒子粉末と結着剤樹脂の配合量を種々変えた以外は前記発明の実施の形態と同様にして黒色磁性トナーを得た。
【0175】
この時の主要製造条件を表11に、得られた黒色磁性トナーの諸特性を表12乃至表15に示す。
【0176】
【表11】
【0177】
【表12】
【0178】
【表13】
【0179】
【表14】
【0180】
【表15】
【0181】
【発明の効果】
本発明に係る黒色複合磁性粒子粉末は、流動性及び黒色度が優れているとともに、粒子表面から脱離するカーボンブラックが少ないことにより、結着剤樹脂中への分散性が優れているので、高画質及び高速の黒色磁性トナー用黒色磁性粒子粉末として好適である。
【0182】
また、本発明に係る黒色複合磁性粒子粉末は、分散性が優れているので、取り扱いやすく作業性に優れており、工業的に好ましいものである。
【0183】
そして、上記流動性が優れているとともに黒色度が優れている黒色複合磁性粒子粉末を用いた黒色磁性トナーもまた流動性が優れているとともに黒色度が優れているので、高画質及び高速の黒色磁性トナーとして好ましいものである。
【0184】
また、本発明に係る黒色磁性トナーは、黒色複合磁性粒子粉末の分散性が優れていることに起因して、磁性トナー粒子表面に露出している黒色複合磁性粒子粉末の個々が分離、独立して存在しているので、カーボンブラックが存在することによる体積固有抵抗値の低下がなく、高抵抗乃至絶縁性磁性トナーとして好適である。
【0185】
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】 発明の実施の形態で使用した球状マグネタイト粒子粉末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×20000)である。
【0182】
【図2】 発明の実施の形態で使用したカーボンブラック微粒子粉末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×20000)である。
【0183】
【図3】 発明の実施の形態で得られた黒色複合磁性粒子粉末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×20000)である。
【0184】
【図4】 比較のために示した球状マグネタイト粒子粉末とカーボンブラック微粒子粉末との混合粒子粉末の粒子構造を示す電子顕微鏡写真(×20000)である。
Claims (3)
- 磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面にポリシロキサンが被覆されており、該ポリシロキサン被覆の少なくとも1部に平均粒子径0.002〜0.05μmのカーボンブラックが付着している平均粒子径0.06〜1.0μmの黒色複合磁性粒子粉末であって、上記カーボンブラックの付着量が前記磁性酸化鉄粒子粉末100重量部に対して1〜25重量部であることを特徴とする黒色磁性トナー用黒色複合磁性粒子粉末。
- 磁性酸化鉄粒子粉末の粒子表面に下層としてアルミニウムの水酸化物、アルミニウムの酸化物、ケイ素の水酸化物及びケイ素の酸化物から選ばれた1種又は2種以上が被覆され、上層としてポリシロキサンが被覆されており、該ポリシロキサン被覆の少なくとも1部に平均粒子径0.002〜0.05μmのカーボンブラックが付着している平均粒子径0.06〜1.0μmの黒色複合磁性粒子粉末であって、上記カーボンブラックの付着量が前記磁性酸化鉄粒子粉末100重量部に対して1〜25重量部であることを特徴とする黒色磁性トナー用黒色複合磁性粒子粉末。
- 請求項1又は請求項2記載の黒色複合磁性粒子粉末を用いた黒色磁性トナー。
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