JP4328854B2 - 圧電素子およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電素子およびその製造方法に関するものである。より詳しくは、基板上にニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上を高度に双極子配向させた薄膜からなる圧電素子およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、原子力発電所などのプラントにおける配管やバルブ、あるいは内燃機関のエンジンなどの高温雰囲気を生じる構造物の異常検知を行うために、構造物の内部にセンサを設置することが行われている。該センサとしては、例えば、亀裂や割れが生じる時に発生する弾性波であるアコースティックエミッションを検出するアコースティックエミッションセンサや、異常振動、加速度の情報を検出する圧電型の振動センサが用いられており、これらには、圧縮型、片持ち梁型、ダイアフラム型、せん断型等種々の形式のものが知られている。
【0003】
この中で、圧縮型の薄膜型圧電センサは、台座、台座側電極、圧電素子、荷重体側電極、及び荷重体を順次積層した積層体からなり、その台座の下面を被測定物にしっかりと取り付けて使用されるものである。被測定物に振動が発生すると、振動がセンサの台座に伝達される。センサの台座は被測定物とともに振動するが、荷重体は慣性力により振動に遅れが生じ、圧電素子に振動加速度に比例した圧縮、あるいは引っ張り応力が発生する。そして、その応力に比例した電荷あるいは電圧が、圧電素子の両面に発生し、圧電素子両側に配設された前記2枚の電極間に電流が流れ、その電流量を測定することによって被測定物の振動の大きさや加速度を検知することができる。
【0004】
従来、このような圧電型のセンサには、チタン酸ジルコン酸鉛やポリフッ化ビニリデン等の圧電材料からなる圧電素子が使用されているが、このような圧電材料からなる圧電素子は分極が消滅するキュリー温度が低く、その適用限界温度は最高でも300℃程度である。そこで、圧電素子を適した温度に保つために、特許文献1には、ペルチェ素子によって圧電素子を冷却するものが開示されている。しかし、ペルチェ素子は単に局所的な温度勾配を発生させる機能しかないため、外部に冷却機構が取り付けられず全体的に高温となる箇所への適用はできなかった。
【0005】
また、アコースティックエミッションのような振動は、途中の振動伝達物質の性質によって減衰したり、伝達経路途中において外部からの余計な振動の混入が発生したりするので、できるだけ発生箇所近傍で振動を計測することが望ましい。しかしながら、高温となる被測定物に関しては、上記のように、従来の薄膜型圧電センサは耐熱性に劣るため、振動を振動伝達棒などを介して遠隔の低温環境下まで誘導して計測している。しかしながら、この場合、振動の減衰、雑音の混入などが起こり、被測定物の振動を十分に正確に計測できない。
【0006】
そこで、耐熱性を有する薄膜型圧電センサとして、圧電層にニオブ酸リチウム等のキュリー温度の高い圧電材料を使用する方法が特許文献2に示されている。ニオブ酸リチウムは、キュリー温度が約1140℃であり、冷却手段なしで高温環境下での測定が可能である。また、ニオブ酸リチウム等からなる薄膜は、圧電素子に用いれば、圧電素子の小型化に貢献することができる材料である。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−203665号公報(公開日1993年8月10日)
【0008】
【特許文献2】
特開平5−34230号公報(公開日1993年2月9日)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ニオブ酸リチウム等のキュリー温度の高い材料を圧電素子として使用するためには、ニオブ酸リチウム等が双極子配向している薄膜を必要とし、また、圧電素子の圧電性を高めるためにはその双極子配向度を高める必要がある。しかしながら、ニオブ酸リチウム等からなる薄膜は、従来から様々な方法によって作製されているものの、いずれもニオブ酸リチウム等からなる薄膜の双極子配向度に関する研究はほとんど行われていないため、双極子配向度が制御された薄膜を作製することが困難であるという問題点を有している。
【0010】
また、上記ニオブ酸リチウム等は、薄膜化が困難であり、また単結晶体でなければ圧電特性が得られず、作製や加工が困難でコストがかかるなどの問題点を有している。さらに、ニオブ酸リチウム等からなる薄膜は、製膜した際に非常に大きな内部応力を有しているため、例えば、基板上に形成された電極上に薄膜を形成する場合、電極に亀裂(クラック)が生じたり、薄膜が電極ごと基板から剥がれたりするといった問題点を有している。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、単結晶体以外の基板上に高い双極子配向度を有するニオブ酸リチウム等からなる薄膜を形成し、高性能の圧電素子を提供すること、および高性能の圧電素子を容易かつ安価に製造することができる方法を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる圧電素子は、上記課題を解決するために、基板上に、第1電極層、圧電層、および第2電極層がこの順に積層された圧電素子であって、上記圧電層は、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなり、その双極子配向度が55%以上であることを特徴としている。
【0013】
上記構成によれば、圧電素子は、圧電層がニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなっている。上記各物質は、キュリー温度の高い物質である。「キュリー温度」とは、その温度以下では磁心が強磁性になり、その温度以上では常磁性になる温度のことであり、キュリー温度に達すると圧電特性を失ってしまう。しかしながら、上記各物質はキュリー温度の高い物質であるため、上記構成を有する圧電層は、耐熱性に優れ、高温でも圧電特性が劣化するようなことがなく、圧電素子に用いても冷却手段なしで高温環境下での測定が可能となる。
【0014】
上記「双極子配向度」とは、圧電素子表面の分極方向において、プラスまたはマイナスの占有率が高い方の割合を算出したものである。双極子配向度が50%の場合は、プラスとマイナスの量が等しくなり、信号が全く出ないこととなるため、プラスまたはマイナスの一方に偏った状態であることが理想的となる。したがって、圧電素子の双極子配向度を55%以上とすることにより、圧電素子の圧電性を良好に保つことができる。
【0015】
本発明にかかる圧電素子は、上記構成に加え、上記第1電極層は、TiN、MoSi2、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、Ta、Ti、Zn、Zr、W、Pt、Al、Ni、Cu、Pd、Rh、Ir、Ru、AuまたはAgのいずれか1つを用いてなることを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、第1電極層を上記いずれかの金属で製膜することにより、第1電極層上に高い双極子配向度を有するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を形成することができる。また、第1電極層を単層とすることにより、圧電素子の製造が容易になる。
【0017】
本発明にかかる圧電素子は、上記構成に加え、上記第1電極層は、基板と密着する密着層と、該密着層上に1層以上の導電層とを備えた積層構造を有していることを特徴としている。
【0018】
上記構成によれば、第1電極層を密着層を有しない単層とした場合に、応力により第1電極層が基板から剥離してしまう、または第1電極層にクラックが発生してしまう可能性があるのに対して、第1電極層を密着層を有する積層体とすることにより、上述の剥離またはクラックの発生をより一層防止することができる。
【0019】
本発明にかかる圧電素子は、上記構成に加え、上記導電層の最表層は、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の(001)面の原子配列と同一配列を有し、かつ、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の(001)面の原子間隔とほぼ同じ原子間隔の結晶面を有する金属であって、上記結晶面が基板面に対して平行である配向性の金属からなることを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の(001)面の原子配列と同一配列を有し、かつ、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の(001)面の原子間隔とほぼ同じ原子間隔の結晶面を有する金属を第1電極層の最表層に用いることにより、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の結晶が歪みなく成長することができる。その結果、高い双極子配向度を有するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を容易に得ることができる。
【0021】
本発明にかかる圧電素子は、上記構成に加え、上記導電層の最表層は、電気陰性度が1.3以上1.5以下の範囲にある金属からなることを特徴としている。
【0022】
上記構成によれば、金属上に高い双極子配向度を有するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を形成することができる。
【0023】
本発明にかかる圧電素子は、上記構成に加え、上記導電層の最表層は、TiN、MoSi2、Si34、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、Ta、Ti、Zn、Zr、W、Pt、Al、Ni、Cu、Pd、Rh、Ir、Ru、AuまたはAgのいずれか1つを用いてなることを特徴としている。
【0024】
上記構成によれば、第1電極層の最表層を上記いずれかの金属で製膜することにより、第1電極層上に高い双極子配向度を有するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を形成することができる。
【0025】
本発明にかかる圧電素子は、上記構成に加え、上記導電層の最表層は、配向性W層、配向性Pt層、配向性Al層、配向性Ni層、配向性Cu層、配向性Pd層、配向性Rh層、配向性Ir層、配向性Ru層、配向性Au層または配向性Ag層のいずれか1つからなり、該最表層の(111)面が基板面に対して平行であることを特徴としている。
【0026】
上記構成によれば、上記配向性を有する各金属層は、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の(001)面と原子間隔が同じであるため、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の結晶が歪みなく成長することが可能となる。その結果、高い双極子配向度を有するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を得ることができる。
【0027】
本発明にかかる圧電素子は、上記構成に加え、上記導電層は、密着層上に形成されたTi、CrまたはTaのいずれか1つからなる第1層と、該第1層上に形成されたPt、AuまたはAgのいずれか1つからなる第2層とからなることを特徴としている。また、上記導電層は、密着層上に形成されたTiまたはCrのいずれか1つからなる第1層と、該第1層上に形成されたPtまたはNiのいずれか1つからなる第2層と、該第2層上に形成されたAuからなる第3層とからなることを特徴としている。また、本発明にかかる圧電素子は、上記構成に加え、上記第2電極層は、複数の導電層を備えた積層構造を有していることを特徴としている。
【0028】
本発明にかかる圧電素子は、上記構成に加え、上記基板は、ガラス、金属、プラスチックまたはセラミックス焼結体からなることを特徴としている。
【0029】
上記構成によれば、圧電素子の基板としてガラス、金属、プラスチックまたはセラミックス焼結体を使用している。これらは単結晶基板と比べて安価であり、入手が容易であるため、圧電素子のコストを抑えることができる。また、例えば、ガラスとして石英ガラスまたは金属としてステンレスを基板に使用した場合、他の材料と比較して高い双極子配向性を有するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を得ることができる。
【0030】
本発明にかかる圧電素子は、上記構成に加え、上記基板は、5〜100μmの厚さを有する金属またはプラスチックからなることを特徴としている。
【0031】
本発明にかかる圧電素子の製造方法は、上記課題を解決するために、基板上に第1電極層を形成する第1電極層形成工程と、該第1電極層上に圧電層を形成する圧電層形成工程と、該圧電層上に第2電極層を形成する第2電極層形成工程とを含む圧電素子の製造方法であって、上記圧電層形成工程では、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなり、その双極子配向度が55%以上である圧電層を形成することを特徴としている。
【0032】
上記方法によれば、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の双極子配向度が55%以上となるように圧電層を形成する。これにより、耐熱性を有することができ、圧電性の良好な圧電素子を製造することができる。
【0033】
本発明にかかる圧電素子の製造方法は、上記構成に加え、上記第1電極層形成工程は、基板と密着する密着層を形成する密着層形成工程と、該密着層上に1層以上の導電層を形成する導電層形成工程とを含むことを特徴としている。
【0034】
上記方法によれば、第1電極層が基板から剥離したり、第1電極層にクラックが発生したりすることのない安定した圧電素子を得ることができる。
【0035】
本発明にかかる圧電素子の製造方法は、上記構成に加え、上記第1電極層形成工程では、金属を、室温以上150℃以下の範囲にある温度にて製膜することを特徴としている。
【0036】
上記方法によれば、第1電極層を構成する金属粒子の粒子間に隙間が生じることを防止することができる。これにより、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を双極子配向させるのに適した第1電極層を形成することができる。また、基板と第1電極層との熱膨張差がなくなることにより応力が下がり、第1電極層にクラックまたは剥離が生じやすくなるのを防止することができる。さらに、第1電極層と第2電極層とが短絡することを防止することができる。
【0037】
本発明にかかる圧電素子の製造方法は、上記構成に加え、物理気相成長法を用いて上記第1電極形成工程を行うことを特徴としている。
【0038】
上記方法によれば、第1電極層を容易に製膜することができる。「物理気相成長法」とは、物理的方法で物質を蒸発させ、成膜する部材上で凝縮させて薄膜を形成する方法であり、主に、スパッタリング法、イオンプレーティング法や真空蒸着法などを指す。この方法によれば、圧電材料の針状の結晶柱が霜柱状に成長するため、圧電材料が単結晶状態の薄膜を形成することができる。
【0039】
【発明の実施の形態】
〔実施の形態1〕
本発明の第1の実施の形態について以下に説明する。
【0040】
本実施の形態にかかる圧電素子は、基板上に下部電極(第1電極層)、圧電体薄膜(圧電層)および上部電極(第2電極層)を順次備えた積層構造を有している。基板上に圧電体薄膜が形成された圧電素子であることから、圧力センサ、振動センサ、加速度センサまたは表面弾性波フィルタ等として使用することができ、しかも高感度とすることが可能である。
【0041】
上記基板は、サファイアまたはシリコン等の単結晶からなる単結晶基板のみならず、ガラス基板、多結晶セラミック基板、金属基板または樹脂基板等の単結晶基板以外の基板を使用することができる。本実施の形態の圧電素子が有する圧電体薄膜は、後述するように、単結晶基板以外の基板上において双極子配向したニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を形成することが可能となっているため、この場合、単結晶基板を用いた場合よりも圧電素子を安価に製造することができる。
【0042】
下部電極を形成する金属は、電気陰性度が1.3以上1.5以下の範囲にある金属であることがより好ましく、1.4付近であることがさらに好ましい。下部電極は圧電体薄膜と接しており、下部電極を電気陰性度が上記範囲外にある金属を用いて形成した場合、下部電極上に形成される圧電体薄膜の双極子配向度が著しく減少してしまうのに対して、上記範囲内にある金属を用いて下部電極を形成することにより、高い双極子配向度を有する圧電体薄膜を形成することができる。また、下部電極を形成する金属は、その原子配列が圧電体薄膜を形成しているニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の(001)面の原子配列と同一配列であって、原子間隔がほぼ同じとなっている結晶面を有する金属であることがより好ましい。このような金属の結晶面と圧電体薄膜を形成するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の(001)面とでは格子定数の差がないことから、圧電体薄膜を形成する際に、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛が歪むことなく成長することができ、高い双極子配向度を有するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を形成することができるからである。
【0043】
また、下部電極を形成する金属は、その結晶面が基板に対して平行であって、配向性を有する金属によって形成することがより好ましい。例えば、TiN、MoSi2、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、Ta、Ti、Zn、Zr、W、Pt、Al、Ni、Cu、Pd、Rh、Ir、Ru、AuまたはAgのいずれか1つを用いて形成することができる。なお、W、Pt、Al、Ni、Cu、Pd、Rh、Ir、Ru、AuまたはAgの(111)面は、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の(001)面と格子定数の差がない。このため、W、Pt、Al、Ni、Cu、Pd、Rh、Ir、Ru、AuまたはAgの(111)面が基板面に対して平行である配向性W層、配向性Pt層、配向性Al層、配向性Ni層、配向性Cu層、配向性Pd層、配向性Rh層、配向性Ir層、配向性Ru層、配向性Au層または配向性Ag層のいずれかを下部電極として形成することがより好ましい。これら配向性を有する金属層は、製膜条件によって制御された環境により、配向性を示す結晶成長が起こることによって配向性を有するようになっている。
【0044】
圧電体薄膜は、双極子配向性を有するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上を用いて形成され、その双極子配向度が55%以上となっている。すなわち、圧電体薄膜は、双極子配向性ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上を用いて形成され、その双極子配向度が55%以上となるように形成されている。ここで、双極子配向度とは、圧電体薄膜表面の分極方向において、プラスまたはマイナスの占有率が高い方の割合を算出したものである。双極子配向度が50%の場合は、プラスとマイナスの量が等しくなり、信号が全く出ないこととなるため、プラスまたはマイナスの一方に偏った状態であることが理想的となる。図1に示すように、双極子配向度と圧電素子に溜まる電荷量とには相関があることが分かる。すなわち、双極子配向度が高いほど、圧電素子は高電圧を蓄積することが可能となり、その結果高性能となる。なお、理論上は、例えば50.1%等の僅かな差があれば信号は出ることになるものの、双極子配向度の偏りによる信号の有無について測定をした結果、55%以上の偏りがない場合には測定上困難であるため、双極子配向度が55%以上の薄膜を圧電体薄膜としている。
【0045】
上部電極は、Al、Pt、Au、Ag、Cu等の金属またはこれらの金属を主体とした合金、ITO、二酸化イリジウム、二酸化ルテニウム、三酸化レニウムまたはLSCO(La0.5Sr0.5CoO3)等の導電性酸化物、若しくは窒化ケイ素等の窒化物により形成することができる。なお、上記物質以外にも、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜との密着性がよく、応力が生じにくい導電物質であれば同様に使用することができる。
【0046】
次に、圧電素子の製造方法の一例について以下に説明する。なお、本実施の形態においては、一例としてニオブ酸リチウム薄膜からなる圧電体薄膜を有する圧電素子について説明する。ただし、本発明はこれに限定されることはなく、圧電体薄膜としてニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を有する圧電素子においても同様である。
【0047】
上述のように基板は、単結晶基板、多結晶基板またはアモルファス基板等の様々な基板を選択することが可能である。双極子配向性を有するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜は、基板の種類によらずに形成することが可能となっていることから、本実施の形態においては、多結晶基板またはアモルファス基板とする。多結晶基板またはアモルファス基板は、単結晶基板よりも安価であって入手が容易であるからである。具体的には、基板としてガラス基板または金属基板、特に石英ガラス基板またはステンレス基板を選択することがより好ましい。石英ガラス基板またはステンレス基板は、他の材料と比較して高い双極子配向性を得ることができるため、圧電素子の基板として最適である。なお、上記石英ガラス基板またはステンレス基板の他に、例えば5〜100μmの厚さを有する金属またはプラスチックを用いてもよい。
【0048】
そして、上記基板上に下部電極を製膜する第1電極層形成工程を行う。下部電極は、導電体を電極材料として用いることから、所定の金属または合金を物理気相成長法(PVD(Physical Vapor Deposition)法)を用いて蒸着することにより形成する。物理気相成長法としては、抵抗加熱蒸着または電子ビーム加熱蒸着等の真空蒸着法、直流スパッタリング、高周波スパッタリング、RFプラズマ支援スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、ECRスパッタリングまたはイオンビームスパッタリング等の各種スパッタリング法、高周波イオンプレーティング、活性化蒸着またはアークイオンプレーティング等の各種イオンプレーティング法、分子線エピタキシー法、レーザアプレーション法、イオン化クラスタビーム蒸着法、並びにイオンビーム蒸着法等の製膜方法を用いることができる。このうち、スパッタリング法、特にRFプラズマ支援スパッタリング法を用いることがより好ましい。RFプラズマ支援スパッタリング法を用いると、比較的高い真空下にてスパッタリングができるため、より高品質のニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上の薄膜からなる下部電極を形成することが可能となるためである。ただし、上記蒸着方法は、蒸着する物質によって適宜選択することができる。
【0049】
また、薄膜状の下部電極は、室温(25℃)以上150℃以下の範囲にある温度にて製膜することがより好ましい。上記範囲内にある温度にて下部電極を製膜することにより、下部電極を構成する金属粒子の粒子間に隙間が生じることを防止することができる。これにより、亀裂(クラック)、丘状の隆起(ヒロック)または剥離の発生をより抑制することができるとともに、上部電極と下部電極とのショート(短絡)をより抑制することができる。
【0050】
なお、下部電極を製膜する温度が、粒子間に隙間が生じる温度を超えた場合、金属粒子が製膜時に粒成長し、この粒成長によって下部電極の微構造が滑らかになることがある。下部電極の微構造が滑らかになると、上部電極と下部電極とのショートのおそれが少なくなる。したがって、粒子間に隙間が生じる製膜温度を超えた温度であって、粒成長により粒子間の隙間が消滅し、電極の微構造が滑らかになる温度であれば下部電極を製膜することができる。
【0051】
製膜条件は、例えば、圧力を1.0×10-1Pa、窒素ガス分圧比を0%、基板温度を無加熱、ターゲット投入電力を200Wとすることができる。また、製膜する膜厚は材料により変化させて行うことができる。ただし、上記条件は適宜変更することができる。
【0052】
そして、上記製膜条件および蒸着方法を用いて、後に形成するニオブ酸リチウムの(001)面とマッチングのよい下部電極を形成する。下部電極は、例えばW、Pt、Al、Ni、Cu、Pd、Rh、Ir、Ru、AuまたはAgの(111)面が基板面に対して平行である配向性W層、配向性Pt層、配向性Al層、配向性Ni層、配向性Cu層、配向性Pd層、配向性Rh層、配向性Ir層、配向性Ru層、配向性Au層または配向性Ag層をスパッタリングにより製膜することによって形成することができる。
【0053】
下部電極を上記温度範囲にて製膜することにより、双極子配向したニオブ酸リチウムの薄膜を形成するのに適した下部電極を形成することができる。また、基板と下部電極との熱膨張差が無くなるため、下部電極の応力を下げることが可能となり、下部電極にクラックやヒロックが生じること、および下部電極が基板から剥離することを防止することができる。
【0054】
次に、下部電極上に圧電体薄膜を形成する圧電層形成工程を行う。下部電極上に、55%以上の双極子配向度を有するニオブ酸リチウムの薄膜からなる圧電体薄膜を形成する。圧電体薄膜の形成は、PVD法、中でもスパッタリング法を用いて製膜することがより好ましい。上述のように、下部電極を形成する金属は、ニオブ酸リチウムの(001)面の原子配列と同一配列であって、ニオブ酸リチウムの(001)面の原子間隔とほぼ同じ原子間隔である結晶面が、基板に対して平行に配向していることがより好ましい。このような金属は、その結晶面がサファイア等の単結晶と同等の下地表面を形成するため、PVD法を用いてニオブ酸リチウムをターゲットとして下部電極上に薄膜を形成することにより、双極子配向したニオブ酸リチウムからなる圧電体薄膜を得ることができる。
【0055】
スパッタリングは、例えば高周波マグネトロンスパッタリング装置を用いて行うことができる。この場合、スパッタリングチャンバーにて5×10-4Pa以下となるように真空引きを行い、高純度アルゴンガス(純度99.999%)と高純度窒素ガス(純度99.999%)または高純度酸素ガス(純度99.999%)とを導入する。蒸着を行う前に、高周波マグネトロンスパッタリング装置のシャッターを閉じたままで、ターゲットとしてのニオブ酸リチウムのプレスパッタリングを10分間行う。そして、例えば、スパッタリング圧力を0.25Pa、基板温度を650℃、酸素ガス分圧比を10%、ターゲット投入電力を200W、スパッタリング時間を20時間、とした製膜条件にてスパッタリングを行い、ニオブ酸リチウム薄膜を形成することができる。
【0056】
また、上記製膜条件は適宜変更することが可能であり、例えば、2000nmの膜厚を有するニオブ酸リチウム薄膜を形成する場合は、スパッタリング圧力を1.3×10-1Pa、酸素ガス分圧比を60%、基板温度を300℃、ターゲット投入電力を200W、スパッタリング時間を12時間としても同様にニオブ酸リチウムを形成することができる。
【0057】
次に、圧電体薄膜上に上部電極を形成する第2電極層形成工程を行う。PVD法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法の蒸着方法を用いて、上述した上部電極に用いられる物質のうちのいずれかからなる上部電極を形成する。また、上記上部電極に用いられる物質のうちの複数の物質を用いて積層構造を有する上部電極を形成することもできる。なお、上部電極を形成するための蒸着方法および形成条件は、蒸着物質により適宜変更することができる。
【0058】
以上により、単結晶基板以外の基板上に下部電極、双極子配向したニオブ酸リチウムからなる圧電体薄膜、および上部電極が形成された圧電素子を製造することができる。また、圧電体薄膜を下部電極との配向性、面配列および原子配列を考慮して形成することにより、高い双極子配向度を有し、剥離、クラックおよびヒロックの原因となる応力の発生が抑制された圧電素子を製造することができる。
【0059】
〔実施の形態2〕
本発明の第2の実施の形態について以下に説明する。
【0060】
本実施の形態における圧電素子は、下部電極が、基板との密着性を高めるための密着層と、電極としての電極層(導電層)とを有する積層体となっている。他の構成については、上記実施の形態1にて説明した圧電素子と同様である。
【0061】
積層体である下部電極の最表層は、圧電体薄膜と密着している。圧電体薄膜を形成しているニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛は、上記実施の形態1と同様に、例えば電気陰性度が1.3以上1.5以下の範囲にある金属上において高い双極子配向度を有することができるため、下部電極の最表層を形成する金属を電気陰性度が1.3以上1.5以下の範囲にある金属とすることがより好ましい。また、下部電極の最表層の金属は、その原子配列がニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の(001)面の原子配列と同一配列であって、原子間隔がほぼ同じとなっている結晶面を有する金属であることがより好ましい。このような金属の結晶面と圧電体薄膜を形成するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の(001)面とでは格子定数の差がないことから、圧電体薄膜を形成する際に、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の結晶が歪むことなく成長することができ、高い双極子配向度を有するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を形成することができるからである。
【0062】
また、下部電極の最表層は、その結晶面が基板に対して平行であって、配向性を有する金属によって形成することがより好ましい。例えば、TiN、MoSi2、Si34、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、Ta、Ti、Zn、Zr、W、Pt、Al、Ni、Cu、Pd、Rh、Ir、Ru、AuまたはAgのいずれか1つを用いて形成することができる。なお、W、Pt、Al、Ni、Cu、Pd、Rh、Ir、Ru、AuまたはAgの(111)面は、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の(001)面と格子定数の差がない。このため、W、Pt、Al、Ni、Cu、Pd、Rh、Ir、Ru、AuまたはAgの(111)面が基板面に対して平行である配向性W層、配向性Pt層、配向性Al層、配向性Ni層、配向性Cu層、配向性Pd層、配向性Rh層、配向性Ir層、配向性Ru層、配向性Au層または配向性Ag層のいずれかを最表層に形成することがより好ましい。
【0063】
また、下部電極が2層の積層体である場合、基板上に形成する第1層をTiまたはCrとし、第1層上に形成する第2層をPtとした2層体に形成することができる(以下、基板上に形成する第1層/第1層上に形成する第2層、と記載する。すなわち、前述の場合Ti/PtまたはCr/Ptとなる。3層体においても同じ)。また、下部電極が3層の積層体である場合、Ti/Pt/Au、Ti/Ni/AuまたはCr/Ni/Auの3層体に形成することができる。
【0064】
なお、下部電極が上記実施の形態1のように密着層を有しない単層とした場合、例えば基板上にPt、Au、RuまたはAgを下部電極として形成した単層とした場合に、応力が発生することがある。これにより、下部電極が基板から剥離してしまう、または下部電極にクラックが発生してしまうといった可能性があるのに対して、下部電極を密着層を有する積層体とすることにより、剥離またはクラックの発生をより一層抑制することができる。
【0065】
次に、圧電素子の製造方法の一例について以下に説明する。なお、本実施の形態においては、一例としてニオブ酸リチウムからなる圧電体薄膜を有する圧電素子について説明する。ただし、本発明はこれに限定されることはなく、圧電体薄膜としてニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を有する圧電素子においても同様である。
【0066】
上記実施の形態1と同様に、基板として石英ガラス基板またはステンレス基板を用いて、基板上に下部電極を形成する第1電極層形成工程を行う。第1電極層形成工程として、まず基板上に密着層を形成する密着層形成工程を行う。そして、密着層上に電極層を形成する導電層形成工程を行う。密着層および電極層は、上記実施の形態1と同様の製膜条件および蒸着方法を用いて形成され、これにより下部電極が形成される。
【0067】
そして、後に形成する圧電体薄膜であるニオブ酸リチウムの(001)面とマッチングのよい電極層を形成する。上記電極層の最表層、すなわち圧電体薄膜と接する層は、例えば、TiN、MoSi2、Si34、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、Ta、Ti、Zn、Zr、W、Pt、Al、Ni、Cu、Pd、Rh、Ir、Ru、AuまたはAgのいずれか1つを用いることがより好ましい。
【0068】
また、上記電極層の最表層は、W、Pt、Al、Ni、Cu、Pd、Rh、Ir、Ru、AuまたはAgの(111)面が基板面に対して平行である配向性W層、配向性Pt層、配向性Al層、配向性Ni層、配向性Cu層、配向性Pd層、配向性Rh層、配向性Ir層、配向性Ru層、配向性Au層または配向性Ag層を用いて形成することもできる。
【0069】
下部電極を室温(25℃)以上150℃以下の範囲にある温度にて製膜することにより、双極子配向したニオブ酸リチウムの薄膜を形成するのに適した下部電極を形成することができる。また、基板、密着層および下部電極の熱膨張差が無くなるため、下部電極の応力を下げることが可能となり、下部電極にクラックやヒロックが生じること、および下部電極が基板から剥離することを防止することができる。
【0070】
次に、下部電極上に圧電体薄膜を形成する圧電層形成工程を行う。下部電極上に、55%以上の双極子配向度を有するニオブ酸リチウムの薄膜からなる圧電体薄膜を形成する。圧電体薄膜の形成は、上記実施の形態1と同様にPVD法、中でもスパッタリング法を用いて製膜することがより好ましい。また、下部電極の最表層を形成する金属は、ニオブ酸リチウムの(001)面の原子配列と同一配列であって、ニオブ酸リチウムの(001)面の原子間隔とほぼ同じ原子間隔である結晶面が、基板に対して平行に配向していることがより好ましい。このような金属は、その結晶面がサファイア等の単結晶と同等の下地表面を形成するため、PVD法を用いてニオブ酸リチウムをターゲットとして下部電極の最表層上に薄膜を形成することにより、双極子配向したニオブ酸リチウムからなる圧電体薄膜を得ることができる。また、ニオブ酸リチウムの薄膜は、実施の形態1と同様の条件を用いて製膜することができる。
【0071】
次に、圧電体薄膜上に上部電極を形成する第2電極層形成工程を行う。PVD法またはCVD法の蒸着方法を用いて、上述した上部電極に用いられる物質のうちのいずれかからなる上部電極を形成する。また、上記上部電極に用いられる物質のうちの複数の物質を用いて積層構造を有する上部電極を形成することもできる。なお、上部電極を形成するための蒸着方法および形成条件は、蒸着物質により適宜変更することができる。
【0072】
以上により、単結晶基板以外の基板上に密着層を有する下部電極、双極子配向したニオブ酸リチウム薄膜からなる圧電体薄膜、および上部電極が形成された圧電素子を製造することができる。また、圧電体薄膜を下部電極との配向性、面配列および原子配列を考慮して形成することにより、高い双極子配向度を有し、剥離、クラックおよびヒロックの原因となる応力の発生が抑制された圧電素子を製造することができる。
【0073】
〔実施例〕
圧電素子の電気機械結合係数などの電気的な特性は、圧電体薄膜の双極子配向度に大きく依存することが知られている。このため、圧電素子がより高い双極子配向度を有する圧電体薄膜を備えるために、下部電極が圧電体薄膜の形成に及ぼす影響、および下部電極を積層体とすることによる圧電体薄膜の形成に及ぼす効果を検討した。以下、その内容について説明する。
【0074】
(下部電極の影響)
これまでにニオブ酸リチウムを導電体上に作製した主な研究としては、表面弾性波(SAW(surface acoustic wave))フィルタ用のアルミニウム電極上に作製した研究がある。その他の導電体上にニオブ酸リチウムを作製した研究は僅かしか行われていない。そこで、下部電極上に高い双極子配向度を有するニオブ酸リチウム薄膜を形成するために、20種類の導電体を用いて20種類の下部電極を製膜し、各下部電極上にニオブ酸リチウム薄膜を作製することにより、下部電極がニオブ酸リチウム薄膜の双極子配向度に及ぼす影響について調べた。なお、20種類の下部電極は、室温下にて主にスパッタリング法を用いて作製し、基板にはガラス基板を使用した。
【0075】
具体的には、基板として20mm×20mm×1.1mmの石英ガラス基板を使用して、石英ガラス基板上に下部電極を製膜した。下部電極の製膜条件は、圧力を1.0×10-1Pa、窒素ガス分圧比を0%、基板温度を無加熱、ターゲット投入電力を200Wとした。また、下部電極の膜厚は材料により変化させた。そして、各下部電極上にニオブ酸リチウム薄膜を製膜した。ニオブ酸リチウム薄膜の製膜条件は、圧力を1.3×10-1Pa、酸素ガス分圧比を60%、基板温度を300℃、ターゲット投入電力を200Wとし、膜厚を2000nmとした。
【0076】
なお、例えばAl−Si、Ni、Cr等は半導体によく使われる材料であるため、これらの材料を下部電極として使用することができれば、半導体とニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を有する圧電素子との集積が容易となる。しかしながら、これらの材料ではニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜の双極子配向度を高めることができず、またクラックも多数発生した。また、下部電極としてPt、Au、Ruを石英ガラス基板上に直接形成した場合、下部電極と石英ガラス基板との密着性が悪く、下部電極は石英ガラス基板から剥離した。このため、石英ガラス基板上にTiまたはCr等からなる密着層を形成した。そして、下部電極の最表層としてTiN薄膜を形成し、TiN薄膜上にニオブ酸リチウム薄膜を形成した場合、双極子配向度が90%を示す超高双極子配向度および高結晶化度を有するニオブ酸リチウム薄膜を得ることができた。なお、TiN薄膜上にニオブ酸リチウム薄膜を形成した例は、これまでに報告されていない。また、下部電極の最表層としてのW、Ti/Pt、Ti/AuおよびTi/Ag上にニオブ酸リチウム薄膜を形成した場合にも同様に、双極子配向度が90%前後の超高双極子配向度を有するニオブ酸リチウム薄膜を得ることができた。
【0077】
次に、形成したニオブ酸リチウム薄膜の結晶構造が、部分的に(ミクロ的に)優れていたとしても、全体的に(マクロ的に)クラックや剥離が生じる場合には、圧電素子を量産することは困難である。このため、光学顕微鏡を用いてそれぞれのニオブ酸リチウム薄膜の表面観察を行った。TiN上に形成したニオブ酸リチウム薄膜の表面には、ヒロックが観察されたものの、クラックや剥離は全く観察されなかった。また、WおよびTi/Pt上に形成したニオブ酸リチウム薄膜の表面は滑らか、かつ均一であり、クラックおよび剥離は全く観察されなかった。
【0078】
一方、Ti/AuまたはTi/Ag上に形成したニオブ酸リチウム薄膜の表面には、ヒロックと大きなクラックとが観察された。また、上述のように、Al−Si薄膜を使用することにより、既存の半導体技術を生かすことが可能となるものの、Al−Si薄膜上には高い双極子配向度を有するニオブ酸リチウム薄膜を形成することができず、激しいクラックの発生も確認された。さらに、CrまたはNiからなる薄膜上に形成したニオブ酸リチウム薄膜の表面には、無数のクラックが発生し、所々にピンホールのような部分も観察された。
【0079】
以上の結果より、WおよびTi/Pt上に形成したニオブ酸リチウム薄膜は、高双極子配向度および高結晶化度を有しており、さらにヒロック、クラックおよび剥離が生じないことが分かった。したがって、下部電極の最表層を形成する薄膜としては、WまたはTi/Ptからなる薄膜が優れていることが分かった。
【0080】
(下部電極の積層効果)
ニオブ酸リチウム薄膜からなる圧電体薄膜を有する圧電素子における下部電極を積層させることによる効果については、今までに報告がない。このため、下部電極として金属薄膜を2重または3重に積層させ、この下部電極上にニオブ酸リチウム薄膜を形成した場合における、ニオブ酸リチウム薄膜の双極子配向度および結晶化度等の結晶構造への影響について調べた。
【0081】
まず、上記(下部電極の影響)にて調べた結果、高双極子配向度および高結晶化度を示したTi/PtまたはCr/Pt等のPt系を最表層に形成した積層構造を有する下部電極について調べた。基板は、20mm×20mm×1.1mmの石英ガラス基板を使用し、下部電極の製膜条件は、圧力を1.0×10-1Pa、酸素ガス分圧比を0%、基板温度を無加熱、ターゲット投入電力を200Wとして、膜厚は材料によって変化させた。また、ニオブ酸リチウム薄膜の製膜条件は、圧力を1.3×10-1Pa、酸素ガス分圧比を60%、基板温度を300℃、ターゲット投入電力を200Wとして、膜厚を2000nmとした。
【0082】
下部電極の基板側の層をTiからCrに変えることによって、形成されたニオブ酸リチウム薄膜の双極子配向度は90%から95%に増加した。また、ニオブ酸リチウム薄膜の(002)面のピークの積分強度も約2倍向上した。この結果、Cr薄膜は僅か数十nmしかないにもかかわらず、その上に形成されるニオブ酸リチウム薄膜の双極子配向度および結晶化度に大きく影響することが分かった。
【0083】
次に、Ti/Au、Ti/Pt/Au、Ti/Ni/AuまたはCr/Ni/Au等のAu系を最表層に形成した積層構造を有する下部電極について調べた。その結果、双極子配向度は全てほぼ90%以上であり、各層での大きな差は見られなかった。また、形成されたニオブ酸リチウム薄膜の(002)面のピークの積分強度にも大きな差は見られなかった。したがって、Au系薄膜を最表層に用いた場合、Pt系薄膜を最表層に用いた場合と異なり、下部電極の積層効果によるニオブ酸リチウム薄膜の双極子配向度および結晶化度に対する影響は観察されなかった。
【0084】
上記(下部電極の影響)および(下部電極の積層効果)にて、高い双極子配向度を有するニオブ酸リチウム薄膜を得るために、ニオブ酸リチウム薄膜を形成する際の、下部電極の影響および下部電極の積層効果について検討した。その結果、下部電極に用いる金属の種類および下部電極の積層構造によって、下部電極上に形成されるニオブ酸リチウム薄膜の双極子配向度および結晶化度などが大きく変化することが分かった。すなわち、下部電極の影響を調べた結果からは、TiN、W、Ti/Au、Ti/AgおよびTi/Ptからなる下部電極上にニオブ酸リチウム薄膜を製膜したときに、高い双極子配向度を有するニオブ酸リチウム薄膜を得ることができた。しかしながら、TiN、Ti/AuおよびTi/Agからなる下部電極上に製膜されたニオブ酸リチウム薄膜は、その表面にヒロックや大きなクラックが観察されたため、下部電極の材料には適していないことが分かった。一方、WおよびTi/Ptからなる下部電極上に製膜されたニオブ酸リチウム薄膜は、その表面が均一でありクラックや剥離はほとんど観察されず、下部電極の材料として適していることが分かった。また、製膜された下部電極の双極子配向度および結晶化度が高いほど、下部電極上に製膜されるニオブ酸リチウム薄膜の双極子配向度および結晶化度も向上することが分かった。さらに、下部電極の最表層に用いられる材料として、電気陰性度が1.3以上1.5以下の範囲にある金属が適していることが分かった。
【0085】
また、本発明は、ガラス基板等の安価な基板を用いたにもかかわらず、高い双極子配向度を有する高性能の圧電素子を提供することを可能としている。さらに、本発明の圧電素子は、高性能であることに加えて、ヒロックやクラック、剥離がない高品質であることも両立することを可能としている。このように、本発明は、安価なガラス、金属、プラスチックまたはセラミックス焼結体基板を用いて、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる圧電体薄膜を有する高性能かつ高品質な圧電素子を提供可能としたことに意義がある。また、本発明は、下部電極がW等の単層である場合のみならず、密着層を有する積層体とした場合に、下部電極の最表層に用いる材料を適切に選択することにより、さらに高性能かつ高品質な圧電素子の提供を可能としている。また、本発明は、下部電極を製膜する際に、下部電極に用いられる材料の粒子形状を制御し、RFスパッタリング法等の物理気相成長法を用いることにより、ヒロック、クラックおよび剥離を生じさせることなく、高性能かつ高品質な圧電素子の製造方法を提供することを可能としている。
【0086】
なお、上記実施の形態1および2並びに実施例における圧電素子の製造条件は、一例を示したにすぎず、本発明は、当然にこの数値に限定されるものではない。
【0087】
【発明の効果】
以上のように、本発明にかかる圧電素子は、基板上に、第1電極層、圧電層、および第2電極層がこの順に積層された圧電素子であって、上記圧電層は、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなり、その双極子配向度が55%以上である構成である。
【0088】
上記構成によれば、圧電素子は、キュリー温度の高い物質からなっているため、耐熱性に優れ、高温でも圧電特性が劣化するようなことがなく、圧電素子に用いても冷却手段なしで高温環境下での測定が可能となる。また、圧電素子の双極子配向度を55%以上とすることにより、圧電素子の圧電性を良好に保つことができるという効果を奏する。
【0089】
上記の圧電素子において、上記第1電極層は、TiN、MoSi2、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、Ta、Ti、Zn、Zr、W、Pt、Al、Ni、Cu、Pd、Rh、Ir、Ru、AuまたはAgのいずれか1つを用いてなる構成としてもよい。
【0090】
上記構成によれば、第1電極層上に高い双極子配向度を有するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を形成することができる。また、第1電極層を単層とすることにより、圧電素子の製造が容易になるという効果を奏する。
【0091】
上記の圧電素子において、上記第1電極層は、基板と密着する密着層と、該密着層上に1層以上の導電層とを備えた積層構造を有している構成としてもよい。
【0092】
上記構成によれば、第1電極層を密着層を有する積層体とすることにより、上述の剥離またはクラックの発生をより一層防止することができるという効果を奏する。
【0093】
上記の圧電素子において、上記導電層の最表層は、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の(001)面の原子配列と同一配列を有し、かつ、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の(001)面の原子間隔とほぼ同じ原子間隔の結晶面を有する金属であって、上記結晶面が基板面に対して平行である配向性の金属からなる構成としてもよい。
【0094】
上記構成によれば、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の結晶が歪みなく成長することができる。その結果、高い双極子配向度を有するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を容易に得ることができるという効果を奏する。
【0095】
上記の圧電素子において、上記導電層の最表層は、電気陰性度が1.3以上1.5以下の範囲にある金属からなる構成としてもよい。
【0096】
上記構成によれば、金属上に高い双極子配向度を有するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を形成することができるという効果を奏する。
【0097】
上記の圧電素子において、上記導電層の最表層は、TiN、MoSi2、Si34、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、Ta、Ti、Zn、Zr、W、Pt、Al、Ni、Cu、Pd、Rh、Ir、Ru、AuまたはAgのいずれか1つを用いてなる構成としてもよい。
【0098】
上記構成によれば、第1電極層上に高い双極子配向度を有するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を形成することができるという効果を奏する。
【0099】
上記の圧電素子において、上記導電層の最表層は、配向性W層、配向性Pt層、配向性Al層、配向性Ni層、配向性Cu層、配向性Pd層、配向性Rh層、配向性Ir層、配向性Ru層、配向性Au層または配向性Ag層のいずれか1つからなり、該最表層の(111)面が基板面に対して平行である構成としてもよい。
【0100】
上記構成によれば、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の結晶が歪みなく成長することが可能となる。その結果、高い双極子配向度を有するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を得ることができるという効果を奏する。
【0101】
上記の圧電素子において、上記導電層は、密着層上に形成されたTi、CrまたはTaのいずれか1つからなる第1層と、該第1層上に形成されたPt、AuまたはAgのいずれか1つからなる第2層とからなる構成としてもよい。また、上記導電層は、密着層上に形成されたTiまたはCrのいずれか1つからなる第1層と、該第1層上に形成されたPtまたはNiのいずれか1つからなる第2層と、該第2層上に形成されたAuからなる第3層とからなる構成としてもよい。また、上記第2電極層は、複数の導電層を備えた積層構造を有している構成としてもよい。
【0102】
上記の圧電素子において、上記基板は、ガラス、金属、プラスチックまたはセラミックス焼結体からなる構成としてもよい。
【0103】
上記構成によれば、単結晶基板と比べて安価であり、入手が容易であるため、圧電素子のコストを抑えることができる。また、例えば、ガラスとして石英ガラスまたは金属としてステンレスを基板に使用した場合、他の材料と比較して高い双極子配向性を有するニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を得ることができるという効果を奏する。
【0104】
上記の圧電素子において、上記基板は、5〜100μmの厚さを有する金属またはプラスチックからなる構成としてもよい。
【0105】
以上のように、本発明にかかる圧電素子の製造方法は、基板上に第1電極層を形成する第1電極層形成工程と、該第1電極層上に圧電層を形成する圧電層形成工程と、該圧電層上に第2電極層を形成する第2電極層形成工程とを含む圧電素子の製造方法であって、上記圧電層形成工程では、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなり、その双極子配向度が55%以上である圧電層を形成する構成である。
【0106】
上記構成によれば、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛の双極子配向度が55%以上となるように圧電層を形成する。これにより、耐熱性を有することができ、圧電性の良好な圧電素子を製造することができるという効果を奏する。
【0107】
上記の圧電素子の製造方法において、上記第1電極層形成工程は、基板と密着する密着層を形成する密着層形成工程と、該密着層上に1層以上の導電層を形成する導電層形成工程とを含む構成としてもよい。
【0108】
上記構成によれば、第1電極層が基板から剥離したり、第1電極層にクラックが発生したりすることのない安定した圧電素子を得ることができるという効果を奏する。
【0109】
上記の圧電素子の製造方法において、上記第1電極層形成工程では、金属を、室温以上150℃以下の範囲にある温度にて製膜する構成としてもよい。
【0110】
上記構成によれば、第1電極層を構成する金属粒子の粒子間に隙間が生じることを防止することができる。これにより、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸タンタル、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛およびチタン酸ジルコン酸鉛のいずれか1つ以上からなる薄膜を双極子配向させるのに適した第1電極層を形成することができる。また、基板と第1電極層との熱膨張差がなくなることにより応力が下がり、第1電極層にクラックまたは剥離が生じやすくなるのを防止することができる。さらに、第1電極層と第2電極層とが短絡することを防止することができるという効果を奏する。
【0111】
上記の圧電素子の製造方法において、物理気相成長法を用いて上記第1電極形成工程を行う構成としてもよい。
【0112】
上記構成によれば、第1電極層を容易に製膜することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧電素子に負荷する圧力と圧電素子に溜まる電荷との相関を示す相関図である。

Claims (6)

  1. 基板上に、第1電極層、圧電層、および第2電極層がこの順に積層された圧電素子であって、
    上記圧電層は、ニオブ酸リチウムからなり、その双極子配向度が55%以上であり、
    上記第1電極層は、上記基板と密着する密着層と、該密着層上に1層以上の導電層とを備えた積層構造を有しており、
    上記密着層はTi薄膜又はCrの薄膜であり、また上記導電層の最表層はTiN,W又はTi/Pt薄膜であることを特徴とする圧電素子。
  2. 上記基板は、ガラスであることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子。
  3. 請求項1または2に記載の圧電素子の製造方法であって、
    基板上に第1電極層を形成する第1電極層形成工程と、該第1電極層上に圧電層を形成する圧電層形成工程と、該圧電層上に第2電極層を形成する第2電極層形成工程とを含む圧電素子の製造方法であり、
    上記圧電層形成工程では、ニオブ酸リチウムからなり、その双極子配向度が55%以上である圧電層を形成することを特徴とする圧電素子の製造方法。
  4. 上記第1電極層形成工程は、基板と密着する密着層を形成する密着層形成工程と、該密着層上に1層以上の導電層を形成する導電層形成工程とを含むことを特徴とする請求項3に記載の圧電素子の製造方法。
  5. 上記第1電極層形成工程では、金属を、室温以上150℃以下の範囲にある温度にて製膜することを特徴とする請求項3または4に記載の圧電素子の製造方法。
  6. 物理気相成長法を用いて上記第1電極層形成工程を行うことを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載の圧電素子の製造方法。
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