JP5136973B2 - 圧電素子、その製造方法およびそれを備えた発電装置 - Google Patents

圧電素子、その製造方法およびそれを備えた発電装置 Download PDF

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Description

本発明は、外部からの圧力により電荷を発生する圧電素子、その製造方法およびそれを備えた発電装置に関するものである。
近年、電子機器の小型化にともない、その電子機器部品、例えば、電子機器に電荷を供給する電気供給装置(電源)もまた小型化が望まれている。
これに応えるものとして、フィルム状の基板に薄膜化した圧電体薄膜を形成した圧電素子を用いる試みが広く行われている(特許文献1参照)。圧電素子を用いた発電は、圧電材料に外部から機械的な力を加えることにより発生する電荷を利用し、機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換するものである。しかし、従来、圧電素子から発生する電荷量は非常に少なく(最大でも約2000〜3000pC)、圧電素子を用いた発電装置は、現在まで開発されていない。
また、圧電素子における発生電荷量を増加するためには、薄く、歪みやすい基板と、歪みにくい圧電体薄膜とを用いることが好ましいことが知られているが、実証した報告例は極めて少ない(例えば、非特許文献1、2参照)。これは、薄く、歪みやすい基板に好適な材質が高分子化合物であり、歪みにくい圧電体薄膜に好適な材質がセラミックスであるため、圧電素子における発生電荷量の増加のためには、熱に弱い高分子薄膜上に、高温で加熱する必要があるセラミックスを作製しなければならないからである。
さらに、圧電素子の小型化のためには、圧電体薄膜の膜厚を1μm程度にする必要がある。しかし、圧電体薄膜の膜厚を薄くすることによって、圧電体薄膜上に上部電極を形成する際に、上部電極と、圧電体薄膜の下に形成されている下部電極とが接触し、圧電素子が短絡(以下、ショートと称する)する可能性が非常に高くなる問題がある。
これらの問題に鑑みて、非特許文献3には、基板として比較的耐熱性に優れているポリイミド膜を用い、圧電体薄膜として比較的低温で作製可能な窒化アルミニウム薄膜を用いた圧電素子が開示されている。また、非特許文献3では、上部電極と下部電極との接触による圧電素子のショートを避けるために、圧電体薄膜および高分子薄膜を挟むように上部電極と下部電極とを形成している。すなわち、非特許文献3に記載の圧電素子は、圧電体薄膜および高分子薄膜を挟むように、上部電極と下部電極とが形成されている。
なお、本発明者らは、非特許文献1において報告されている発生電荷量の計算方法がどの程度有効であるかを、合金からなる厚さ50μmの金属箔を用いて検証している。その結果、金属箔の発生電荷量は723pCと、計算値とほぼ一致しており、非特許文献1に記載の計算方法が有効であることが示されている(非特許文献2参照)。
特公昭54−7960号公報(昭和54年(1979年)1月20日公開) S. Kim et al., J. Intel. Mater. Sys. Str. 16 (2005) p.847 I. Ohshima et al., J. Appl. Phys. 45 (2006) p.5169‐5173 M. Akiyama et al., J. Appl. Phys. 100 (2006) p.114318
しかし、非特許文献3に記載の圧電素子の発生電荷量は、30pCと非常に低い値である。これは、上部電極と下部電極との間に絶縁性の高い高分子薄膜が備えられていることに起因する。すなわち、上部電極と下部電極との間に絶縁物質が形成されていることによって、圧電体薄膜において発生した電荷を上部電極および下部電極において好適に取り出すことができないため、圧電素子の発生電荷量は、非常に小さいものとなってしまう。
したがって、非特許文献3に記載の圧電素子は、電子機器類を作動させるために非常に大きな力を加える必要がある。すなわち、非特許文献3に記載の圧電素子は、電子機器類の発電装置として好適に用いることはできない。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、主として、弱い力であっても多量の電荷を発生させることができる圧電素子を提供することを目的としている。
本発明の圧電素子は、上記課題を解決するために、単量体を重合してなる高分子化合物を主成分とする基板の少なくとも一方の面に、第1の電極層と第2の電極層との間に挟まれた、力学的な力が印加されることにより電荷を生じる圧電体を主成分とする圧電体薄膜が形成されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、本発明に係る圧電素子は、高分子化合物を主成分とする基板上に、基板側から第1の電極層と、圧電体薄膜と、第2の電極層とが形成されている。すなわち、圧電体薄膜のみが第1の電極層と第2の電極層との間に形成されるように構成されている。
一般的に、高分子化合物を主成分とする物質は、高い絶縁性を有することが知られている。したがって、高分子化合物を主成分とする基板が第1の電極層と第2の電極層との間に形成されている場合には、第1の電極層および/または第2の電極層において、圧電体薄膜から発生した電荷を十分に取り出すことができない。これによって、圧電素子の発生電荷量が減少してしまう。
本発明に係る圧電素子では、絶縁性の高い高分子化合物を主成分とする基板が第1の電極層と第2の電極層との間に形成されていないため、第1の電極層および第2の電極層において、圧電体薄膜から発生した電荷を失うことなく十分に取り出すことができる。したがって、圧電素子に加えられる力が弱い力であっても、多量の電荷を発生させることができる効果を奏する。すなわち、効率よく発電することができる圧電素子を提供することができる効果を奏する。
また、本発明に係る圧電素子では、さらに、上記基板の弾性率は、50MPa〜100GPaであることが好ましい。
基板の弾性率を上記範囲内とすることによって、基板が受けた圧力を基板において吸収または拡散することなく、圧電体薄膜に伝えることができる。
したがって、圧電体薄膜において、外部から受けた圧力に応じた電荷量を発生させることができる効果を奏する。
また、本発明に係る圧電素子では、さらに、上記基板の膜厚は、1〜200μmであることが好ましい。
基板の膜厚を上記範囲内とすることによって、十分な可撓性を有した基板とすることができる。これによって、基板が受けた圧力を圧電体薄膜に好適に伝えることができるため、圧電素子における発生電荷量を増加させることができる効果を奏する。また、基板の膜厚が上記範囲内であれば、基板を容易に形成することができる効果も併せて奏する。
また、本発明に係る圧電素子では、さらに、上記高分子化合物は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルニトリル、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリアリレート、またはポリアミドであることが好ましい。
上記高分子化合物は、比較的耐熱性に優れた高分子化合物である。したがって、上記高分子化合物を主成分とする基板を用いることによって、圧電体薄膜を形成する際に加えられる熱によって基板が軟化し、変形することを防ぐことができる。これによって、高分子化合物を主成分とする基板を備えた圧電体素子を容易に製造することができる効果を奏する。
また、本発明に係る圧電素子では、さらに、上記第2の電極層は、スズ、アルミニウム、ニッケル、白金、金、銀、銅、クロム、鉄、マグネシウム、モリブデン、ニオブ、タンタル、チタン)、亜鉛、ジルコニウム、タングステン、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルビジウム、窒化チタン、窒化クロムおよび二珪化モリブデンから選択される少なくとも2種類を積層してなる積層体であることが好ましい。
第2の電極層を2層以上の積層体とすることによって、第2電極層を形成する際に、第1の電極層と第2の電極層とが接触することによる圧電素子のショートを防止することができる。これによって、圧電素子の信頼性を向上することができる効果を奏する。
また、本発明に係る圧電素子では、さらに、上記圧電体は、複合酸化物であることが好ましい。
また、本発明に係る圧電素子では、さらに、上記圧電体は、ウルツ鉱型の結晶構造を有する化合物であることが好ましい。
複合酸化物およびウルツ鉱型の結晶構造を有する化合物を圧電体として用いることによって、圧電体薄膜における発生電荷量をより一層増加することができる効果を奏する。
また、本発明に係る圧電素子では、さらに、上記複合酸化物は、チタン酸ビスマスナトリウム、マグネシウムニオブ酸チタン酸鉛、チタン酸ビスマス、チタン酸ビスマスバリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムまたはリラクサーであることが好ましい。
また、本発明に係る圧電素子では、さらに、上記化合物は、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化ガリウム、窒化インジウムまたは硫化亜鉛であることが好ましい。
上記複合酸化物および上記化合物を用いることによって、圧電体薄膜における発生電荷量をさらに一層増加することができる効果を奏する。
また、室温(25℃)程度の温度において圧電体薄膜を形成することができる。したがって、熱に弱い高分子化合物を主成分とする基板を変形させることなく、圧電体薄膜を形成することができる。
これによって、高分子化合物を主成分とする基板を備えた圧電素子を容易に製造することができる効果を奏する。
また、本発明に係る圧電素子の製造方法では、単量体を重合してなる高分子化合物を主成分とする基板を形成する基板形成工程と、上記基板上に、第1の電極層を形成する第1の電極層形成工程と、上記第1の電極層上に、力学的な力が印加されることにより電荷を生じる圧電体を主成分とする上記圧電体薄膜を形成する圧電体薄膜形成工程と、上記圧電体薄膜上に、第2の電極層を形成する第2の電極層形成工程と、を含み、上記圧電体薄膜形成工程における処理温度が、10〜100℃であることを特徴としている。
圧電体薄膜形成工程を上記範囲内とすることによって、圧電体薄膜形成工程において、熱に弱い高分子化合物を主成分とする基板が圧電体薄膜を形成するための熱により変形することを防止することができる。
これによって、高分子膜を主成分とする基板を備えた圧電素子を容易に製造することができる効果を奏する。
また、本発明に係る圧電素子の製造方法では、さらに、上記第2の電極層形成工程が、スズ、アルミニウム、ニッケル、白金、金、銀、銅、クロム、鉄、マグネシウム、モリブデン、ニオブ、タンタル、チタン、亜鉛、ジルコニウム、タングステン、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルビジウム、窒化チタン、窒化クロムおよび二珪化モリブデンから選択される少なくとも2種類を積層してなる積層体の形成工程であることが好ましい。
第2の電極層を上記材質からなる2層以上の積層体とすることによって、第2電極層を形成する際に、第1の電極層と第2の電極層とが接触することにより発生するショートを防止することができる。これによって、圧電素子の信頼性を向上させることができる効果を奏する。
また、本発明に係る圧電素子の製造方法では、さらに、上記第2の電極層形成工程は、真空蒸着法を用いることが好ましい。
第2の電極層形成工程において真空蒸着法を用いることによって、第2の電極層を形成するための材質を、粒径の大きい粒子として蒸発させることができる効果を奏する。
また、上記の圧電素子を備えていることを特徴とする発電装置も、本発明に含まれる。
これによって、小型かつ軽量でありながら、多量の電力を供給することができる発電装置を提供することができる。
本発明に係る圧電素子は、以上のように、単量体を重合してなる高分子化合物を主成分とする基板の少なくとも一方の面に、第1の電極層と第2の電極層との間に挟まれた圧電体薄膜が形成されていることを特徴としている。
上記の構成によれば、本発明に係る圧電素子は、圧電体薄膜のみが第1の電極層と第2の電極層との間に形成されるように構成されている。すなわち、絶縁性の高い高分子化合物を主成分とする基板が第1の電極層と第2の電極層との間に形成されていないため、第1の電極層および第2の電極層において、圧電体薄膜から発生した電荷を十分に取り出すことができる。
したがって、圧電素子に加えられる力が弱い力であっても、多量の電荷を発生させることができる効果を奏する。すなわち、効率よく発電することができる圧電素子を提供することができる効果を奏する。
〔実施形態1〕
本発明に係る圧電素子の一実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、本明細書等における「圧電体」とは、力学的な力が印加されることにより電位差を生じる性質、すなわち圧電性を有する物質を指している。
また、本明細書等における「主成分」とは、組成物に含まれる全成分のうち、50質量%を越える成分であることを意味しており、70質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。
(圧電素子1aの構成)
圧電素子1aの構成について、図1(a)(b)を参照して以下に説明する。図1(a)(b)は、圧電素子1aの構成を示す概略図であり、特に、(a)は概略断面図であり、(b)は概略平面図である。
図1(a)(b)に示すように、圧電素子1aは、第1電極層2(第1の電極層)、圧電体薄膜3、第2電極層4(第2の電極層)、および高分子薄膜5(基板)によって構成されている。より詳細には、圧電素子1aは、高分子薄膜5の両面に第1電極層2が形成され、該第1電極層2上に圧電体薄膜3が形成されており、該圧電体薄膜3上に第2電極層4が形成されている。
(圧電体素子1aの作用効果)
以上説明したように、圧電素子1aは、第1電極層2と第2電極層4との間に圧電体薄膜3が形成されている構成を有している。すなわち、絶縁性の高い高分子薄膜5が第1電極層2と第2電極層4との間に形成されていないため、第1電極層2および第2電極層4において、圧電体薄膜3から発生した電荷を失うことなく十分に取り出すことができる。したがって、圧電素子1aに加えられる力が弱い力であっても、多量の電荷を発生させることができる。
以下、圧電素子1aを構成する構成要素について、それぞれ説明する。
(第1電極層2および第2電極層4)
第1電極層2および第2電極層4は、圧電素子1aにおける電極として作用するものである。図1(a)に示すように、第1電極層2および第2電極層4は、圧電体薄膜3を挟むように形成されている。第1電極層2および第2電極層4を圧電体薄膜3のみを挟むように形成することによって、圧電体薄膜3から発生した電荷を失うことなく、十分に取り出すことができる。
なお、高分子薄膜5側に形成されている電極層が第1電極層2であり、圧電体薄膜3を介して、その反対側に形成されている電極層が第2電極層4である。また、第1電極層2および第2電極層4のいずれを陰極とするかまたは陽極とするかは、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
第1電極層2の材質としては、圧電体薄膜3において発生した電荷を好適に取り出せる材質であれば、特に限定されるものではない。第1電極層2の材質として、具体的には、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)ルビジウム(Ru)、窒化チタン(TiN)、窒化クロム(CrN)および二珪化モリブデン(MoSi)を挙げることができる。なお、上記材質のいずれか1つを主体とした合金を用いてもよい。
第1電極層2の層厚は、特に限定されるものではないが、50nm〜1μmであることが好ましい。なお、第1電極層2は、上記範囲内の層厚であれば、上述の材質による単一層でなく、下記の第2電極層4と同様に積層体としてもよい。
第2電極層4は、少なくとも2層からなる積層体であることが好ましい。第2電極層4を積層体とすることによって、第2電極層4を形成する際に、第1電極層2と第2電極層4とが接触することによる圧電素子1aのショートを防止することができる。なお、第1電極層2との接触すによる圧電素子1aのショートを防止することができれば、第2電極層4の積層の仕方については、特に限定されるものではない。
また、第2電極層4の材質としては、第1電極層2の材質と同様に、特に限定されるものではない。第2電極層4の材質として、具体的には、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルビジウム(Ru)、窒化チタン(TiN)、窒化クロム(CrN)および二珪化モリブデン(MoSi)から少なくとも2種類を選択して用いることができる。これらの中でも、蒸発させる粒子の大きさの観点からアルミニウムおよび銅を用いることが好ましい。なお、第1電極層2と同様に、上記材質のいずれか1つを主体とした合金を用いてもよい。
第2電極層4の層厚も、第1電極層2と同様に、特に限定されるものではないが、50nm〜1μmであることが好ましい。なお、第2電極層4の層厚が上記範囲内であれば、形成する層の数は特に限定されるものではないが、第2電極層4を形成する際の煩雑さを回避するため、2層程度であることが好ましい。
(圧電体薄膜3)
圧電体薄膜3は、圧電性を有する材質、すなわち圧電体を主成分とした薄膜であり、外部からの圧力を受けることによって、電荷を発生するものである。具体的には、外部からの圧力を受けることにより高分子薄膜5に生じた撓みが圧電体薄膜3に伝えられ、圧電体薄膜3においても撓みが発生する。そして、圧電体薄膜3に生じた撓みに応じて、圧電体薄膜3の内部に圧縮応力および引張応力などの内部応力が発生する。この内部応力の働きによって、圧電体薄膜3から電荷が発生する。
圧電体薄膜3に用いることができる圧電体としては、圧電性を有していれば特に限定されるものではないが、複合酸化物またはウルツ鉱型の結晶構造を有する化合物であることが好ましい。
複合酸化物の具体例としては、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸鉛(PT)、ジルコン酸鉛(ZT)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、チタン酸ビスマスナトリウム、マグネシウムニオブ酸チタン酸鉛、チタン酸ビスマス、チタン酸ビスマスバリウムまたはリラクサーなどを挙げることができる。
また、ウルツ鉱型の結晶構造を有する化合物の具体例としては、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)、または硫化亜鉛(ZnS)などを挙げることができる。これらの中でも、比較的低温で形成することができる窒化アルミニウム、または多量の電荷を発生することができるリラクサーを用いることがより好ましい。
圧電体薄膜3の膜厚は、通常、0.1〜100μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることがより好ましく、0.5〜5μmであることがさらに好ましい。圧電体薄膜3の膜厚を0.1〜100μmとすることによって、第2電極層4の形成の際に、第1電極層2と第2電極層4とが接触することによる圧電素子1aのショートを防止することができる。また、圧電体薄膜3を成膜する際の成膜時間が長時間に及ぶことを避けることができる。圧電体薄膜3の膜厚を0.5〜30μmとすることによって、圧電体薄膜3の成膜時間をより短時間にすると共に、圧電素子1aのショートをより一層防止することができる。圧電体薄膜3の膜厚を0.5〜5μmとすることによって、圧電体薄膜3の成膜時間をさらに短時間にすると共に、圧電素子1aのショートをさらに一層防止することができる。
また、圧電体薄膜3は、第1電極層2および高分子薄膜5上に好適に形成することができ、かつ第2電極層4を変形させることなく保持できれば、その形状は特に限定されるものではない。圧電体薄膜3の大きさもまた特に限定されるものではない。図1(a)(b)に示すように、圧電体薄膜3は、第1電極層2および第2電極層4より大きくてもよい。
(高分子薄膜5)
圧電素子1aにおける基板として用いられる高分子薄膜5は、単量体を重合してなる高分子化合物を主成分とする高分子膜である。すなわち、本明細書等における「高分子化合物」とは、1種類の単量体を重合してなる重合体、または2種類以上の単量体を共重合してなる共重合体のいずれも指している。
高分子薄膜5は、弾性率が50MPa〜100GPaであることが好ましく、0.1〜10GPaであることがより好ましい。弾性率を50MPa〜100GPaとすることによって、高分子薄膜5が受けた圧力を高分子薄膜5において吸収または拡散することなく、高分子薄膜5が受けた圧力を圧電体薄膜3に対して好適に伝えることができる。弾性率を0.1〜10GPaとすることによって、高分子薄膜5が受けた圧力を圧電体薄膜3に対してより好適に伝えることができる。
また、高分子薄膜5の膜厚は、1〜200μmであることが好ましく、3〜25μmであることがより好ましい。膜厚を1〜200μmとすることによって、高分子薄膜5において十分な可撓性を得ると共に、高分子薄膜5の形成を容易なものとすることができる。膜厚を3〜25μmとすることによって、高分子薄膜5の形成を容易でありつつ、より十分な可撓性を有する高分子薄膜5とすることができる。
なお、高分子薄膜5は、可撓性を有する以外にも軽量であること、取り扱いが容易であることがより好ましい。
このような特徴を有する高分子薄膜5を形成するために好ましい高分子化合物としては、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリアリレート、またはポリアミド(PA)を挙げることができる。これらの中でも耐熱性、機械的強度などに優れるポリイミドであることがより好ましい。
なお、高分子薄膜5は、高分子薄膜5上に第1電極層2および圧電体薄膜3を形成することができ、かつ変形させることなく保持できれば、その形状は特に限定されるものではない。
(圧電素子1aの変形例)
圧電素子1aの変形例を圧電素子1bとして、図2(a)(b)に示す。図2(a)(b)は、圧電素子1bを示す概略図であり、特に、(a)は概略断面図であり、(b)は概略平面図である。
本発明に係る圧電素子は、図2(a)(b)に示す圧電素子1bのように、高分子薄膜5の一方の面にのみ第1電極層2、圧電体薄膜3および第2電極層4が形成されている構成としてもよい。
圧電素子1bにおいても、第1電極層2、圧電体薄膜3、第2電極層4および高分子薄膜5は、圧電素子1aにおいて説明したものと同様である。
〔実施形態2〕
実施形態1に係る圧電素子1aを製造する製造方法について、実施形態2として以下に説明する。なお、実施の形態1と同様の部材に関しては、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、本実施の形態において、実施形態1と同一の用語は、同一の意味として用いられている。
圧電素子1aを製造する製造方法は、以下の4つの工程を包含している;(1)高分子薄膜5形成工程(基板形成工程);(2)第1電極層2形成工程(第1の電極層形成工程);(3)圧電体薄膜3形成工程;(4)第2電極層4形成工程(第2の電極層形成工程)。各工程について、以下に詳述する。
(高分子薄膜5形成工程)
高分子薄膜5形成工程は、50MPa〜100GPaの弾性率、および1〜200μmの膜厚を有する高分子薄膜5を形成することができる工程であれば、特に限定されるものではないく、従来公知の高分子薄膜の形成方法を用いることができる。本発明においては、高分子薄膜5の形状が比較的単純であるため、圧延方法によって形成することが好ましい。
すなわち、高分子薄膜5は、高分子薄膜材料を加熱ローラーによって溶かしつつ圧延し、圧延した高分子薄膜を冷却ローラーによってさらに圧延することによって形成されることが好ましい。
(第1電極層2形成工程)
次に、形成した高分子薄膜5上に第1電極層2を形成する第1電極層2形成工程を行う。
第1電極層2形成工程も、高分子薄膜5形成工程と同様に、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、第1電極層2は、実施形態1にて列挙した材質を物理気相成長法(PVD法)を用いて蒸着することにより形成することが好ましい。
物理気相成長法としては、具体的には、抵抗加熱蒸着または電子ビーム加熱蒸着などの真空蒸着法、直流スパッタリング、高周波スパッタリング、RFプラズマ支援スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、ECRスパッタリングまたはイオンビームスパッタリングなどの各種スパッタリング法、高周波イオンプレーティング、活性化蒸着またはアークイオンプレーティングなどの各種イオンプレーティング法、分子線エピタキシー法、レーザアプレーション法、イオン化クラスタビーム蒸着法、ならびにイオンビーム蒸着法などを挙げることができる。
第1電極層2形成工程に用いる方法は、第1電極層2に用いる材質によって適宜選択することができるが、これらのうちでも、スパッタリング法を用いることがより好ましく、RFプラズマ支援スパッタリング法を用いることがさらに好ましい。
また、第1電極層2形成工程における温度は、特に限定されるものではないが、300℃を超える場合には高分子薄膜5が軟化し、変形してしまうため、10〜100℃であることが好ましく、室温(25℃)程度であることがより好ましい。第1電極層2形成工程におけるその他の条件は、用いる方法および材質に応じて適宜設定することができる。
(圧電体薄膜3形成工程)
次に、第1電極層2上に圧電体薄膜3を形成する圧電体薄膜3形成工程を行う。圧電体薄膜3形成工程は、用いた圧電体の種類により形成方法を適宜選択することができるが、PVD法を用いて形成することが好ましく、スパッタリング法を用いて形成することがより好ましい。
スパッタリング法では、例えば、高周波マグネトロンスパッタリング装置を用いることができる。圧電体薄膜3を形成するための高周波マグネトロンスパッタリング装置の条件は、用いる圧電体の種類によって適宜変更することができる。本実施の形態では、高周波マグネトロンスパッタリング装置を用いて窒化アルミニウムの圧電体薄膜3を形成した場合を例に挙げて説明する。
まず、スパッタリングチャンバーにおいて5×10−4Pa以下となるように真空吸引を行い、高純度アルゴンガス(純度99.999%)と、高純度窒素ガス(99.999%)または高純度酸素ガス(純度99.999%)とを導入する。蒸着を行う前に、高周波マグネトロンスパッタリング装置のシャッターを閉じたままで、ターゲットとしてのアルミニウムまたは窒化アルミニウムのプレスパッタリングを5分間行う。そして、例えば、スパッタリング圧力を0.3Pa、窒素ガス分圧比を50%、ターゲット投入電荷を400W、スパッタリング時間を4時間とした条件において高分子薄膜5の形成を行う。
このとき、スパッタリングにおける基板温度が300℃以上であると、高分子薄膜5が軟化し、変形してしまうため、10〜100℃であることが好ましく、室温(25℃)程度であることがより好ましい。
(第2電極層4形成工程)
次に、圧電体薄膜3に第2電極層4を形成する第2電極層4形成工程を行う。第2電極層4形成工程は、実施形態1において列挙した材質をPVD法を用いて蒸着することにより形成することが好ましい。PVD法の中でも、抵抗加熱蒸着または電子ビーム加熱蒸着などの真空蒸着法を用いることがよりより好ましい。
また、実施形態1において詳述したように、第2電極層4は、少なくとも2層からなる積層体であることが好ましい。
真空蒸着法を用いた積層体の形成は、従来公知の方法によって行うことができる。
また、第2電極層4形成工程における温度は、特に限定されるものではないが、300℃を超える場合には高分子薄膜5が軟化し、変形してしまうため、10〜100℃であることが好ましく、室温(25℃)程度であることがより好ましい。
(付記事項)
上述した第1電極層2形成工程、圧電体薄膜3形成工程および第2電極層4形成工程を高分子薄膜5の両面に施すことによって、高分子薄膜5の両面に第1電極層2、圧電体薄膜3および第2電極層4がこの順に形成された圧電素子1aを形成することができる。
また、高分子薄膜5の一方の面にのみ、第1電極層2形成工程、圧電体薄膜3形成工程および第2電極層4形成工程を施すことにより、高分子薄膜5の一方の面に第1電極層2、圧電体薄膜3および第2電極層4がこの順に形成された圧電素子1bを形成することができる。
〔実施形態3〕
(発電マット100の構成)
圧電素子を備えた発電装置について、図3(a)(b)を参照して以下に説明する。図3(a)(b)は、発電マット100の構成を示す概略図であり、特に(a)は概略平面図であり、(b)は概略断面図である。なお、実施の形態1および2と同様の部材に関しては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
図3(a)(b)に示すように、発電マット100は、マット本体30内部に圧電発電ユニット20が備えられている。
また、図3(b)に示すように、マット本体30内部には、空洞部が設けられており、空洞部の上部には、金属または合成樹脂からなる可動板21が設けられている。可動板21の下部には、可動板21から5〜数10mm程度の空間を空けて、圧電素子1aと圧電素子1aを支持する支持体22とからなる圧電発電素子23が備えられている。すなわち、圧電発電ユニット20は、可動板21と複数の圧電発電素子23とから構成されている。
(マット本体30)
マット本体30の材質としては、弾力性を有したものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ゴムなどを用いることができる。また、マット本体30の厚み、すなわち発電マット100の厚みも、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜設定することができる。一般的には、マット本体30の厚みは、10〜数10mm程度であることが好ましい。
(発電マット100の作用)
人または車などによって発電マット100に圧力が加わると、可動板21が押し下げられて圧電発電ユニット20に接触し、これに圧力が加えられる。圧電発電ユニット20において、圧電素子1aは、その下部に空間を有しているため、圧電素子1aが撓むことによって、圧電素子1aの出力端子に電圧を生じる。このとき、押し下げられた可動板21は、人または車などが通過した後、マット本体30の有する弾力性により元の位置に回復する。
これによって、例えば、発電マット100にLEDなどの発光部(図示しない)を設けた場合には、夜間などの暗闇においても容易に視認できるマットとすることができる。
(付記事項)
なお、本実施形態では、図3(a)(b)に示すように、マット本体30内部に圧電発電ユニット20を設けた場合について説明したが、図4に示すように、マット本体30内部に圧電素子1aのみを備えていてもよい。また、図5に示すように、マット本体30内部に突起部24を設け、突起部24上に圧電素子1aを備えていてもよい。
また、本実施形態において、圧電素子として圧電素子1aを用いているが、もちろんこれに限定されるものではなく、圧電素子は、請求項に示した範囲において種々の変更が可能である。
〔実施形態4〕
(発電シューズ200の構成)
圧電素子を備えた発電装置の他の実施形態について、図6を参照して以下に説明する。図6は、発電シューズ200の構成を示す概略側面図である。なお、実施の形態1〜3と同様の部材に関しては、同一の符号を付し、その説明を省略する。
圧電素子1aを備えた発電装置は、上述した発電マット100に限定されるものではなく、例えば、シューズ内に圧電発電ユニットを備えた発電シューズとすることもできる。
図6に示すように、発電シューズ200には、ソール部30とアッパー部31との間に圧電発電ユニット20が備えられている。
(発電シューズ200の作用)
発電シューズ200は、人の歩行などによって加えられた圧力によって圧電発電ユニット20において、電圧を発生させることができる。圧電発電ユニットにおいて発生した電圧は、例えば、発電シューズ200に設けられたLEDなどの発光部(図示しない)などの電源とすることができる。これによって、夜間などの暗闇においても容易に視認できるシューズとすることができ、高齢者や子供などの安全性を高めるほか、発光部をデザインとして用いて、ファッション性を高めることもできる。
また、圧電発電ユニット20において発生した電圧を熱に変換する抵抗部(図示しない)を発電シューズ200に設けることによって、保温性に優れたシューズとすることができる。
なお、圧電発電ユニット20を備えることができる靴の形状は、特に限定されるものではない。オックスフォード、パンプス、モカシン、サンダル、カッター・シューズ、スリップオン、サドル・シューズ、ブーツなど様々な形状の靴を発電シューズとすることができる。
また、本実施の形態においては、ソール部30とアッパー部31との間に圧電発電ユニット20を設けているが、圧電発電ユニット20を設ける位置はこれに限定されるものではない。例えば、圧電発電ユニットを靴の中敷きに備えていてもよい。
(付記事項)
発電シューズ200の場合も、発電マット100の場合と同様に、図7に示すように、ソール部30とアッパー部31との間に圧電素子1aのみを備えていてもよい。また、図8に示すように、ソール部20に突起部32を設け、突起部32上に圧電素子1aを備えていてもよい。なお、図8における突起部32は、ソール部30に溝を形成することによって形成してもよいし、ソール部30上に凹凸形状を有するシートを設けることによって形成してもよい。
また、本実施形態において、圧電素子として圧電素子1aを用いているが、もちろんこれに限定されるものではなく、圧電素子は、請求項に示した範囲において種々の変更が可能である。
以上、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲において種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、実施例を示し、本発明の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、細部については様々な様態が可能である。
〔実施例1〕
実施形態1において示した圧電素子1aにおいて、圧電素子1aに加えられる圧力に対して圧電素子1aから発生する発生電荷量を測定した。
(圧電素子1aの構成)
本実施例に用いた圧電素子1aについて以下に説明する。本実施例には、ポリイミド膜(高分子薄膜5)の両面に、銅からなる下部電極層(第1電極層2)、窒化アルミニウム膜(圧電体薄膜3)、およびアルミニウム層上に銅層を積層してなるアルミニウム/銅電極層(第2電極層4)を形成した圧電素子を用いた。
なお、本実施例における圧電素子1aでは、高分子薄膜5の膜厚を25μm、圧電体薄膜3の膜厚を1μm、ならびに第1電極層2および第2電極層4の層厚を200nmとした。
(測定装置の構成)
圧電素子1aから発生する電圧の測定には図9に示す測定装置を用いた。測定装置の詳細について以下に説明する。
圧電素子1aに圧力を付加する圧力付加装置は、Piezotest社製のPM100を用いた。上記圧力付加装置のエアーチャンバー7内には、圧電素子を戴置する円筒状のガラスシリンダー6が備えられている。また、上記圧力付加装置には、エアーチャンバー7内の圧力を制御するための窒素ガス導入口および窒素ガス排気口、ならびにエアーチャンバー7内の圧力を減圧するための歪みゲージ8(PG−10KU、Kyowa社製)が備えられている。
また、圧電素子1aから発生する電荷を測定するために、圧電素子1aの第1電極層2および第2電極層4と、アンプ9(AG2101、NEC社製)とをローノイズ同軸ケーブルによって接続し、アンプ9は、オシロスコープ11(DL1640L、Yokogawa社製)に接続した。また、圧力付加装置に備えられた歪みゲージ8は、電気抵抗変化を圧電信号に変換するシグナルコンディショナ−10に接続し、シグナルコンディショナー10は、オシロスコープ11に接続した。
(測定方法)
圧電素子1aから発生する電圧の測定について以下に説明する。まず、圧電素子1aをガラスシリンダ6上に接着し、ガラスシリンダ6内を大気圧と等しい密封空間とした。その後、歪みゲージ8を用いてエアーチャンバー7内の圧力を急減圧させた。
これによって、圧電素子1aのポリイミド膜が密封空間側に力を受け、撓みを生じる。ポリイミド膜が撓むことにより窒化アルミニウム膜も撓むため、その内部に応力が発生し、発生した応力により窒化アルミニウム膜から電荷が発生する。このとき発生した電荷を、アンプ9において増強した後、オシロスコープ11によって測定した。
(測定結果)
測定結果を図10に示した。図10は、圧力変化に対する圧電素子1aの発電挙動を示すグラフである。図10から、エアーチャンバー7内を急減圧することにより生じた圧力(25kPa)を加えることによって、圧電素子1aは約2Vの電圧を生じることが示された。
また、圧電素子1aに加える荷重を様々変化させた場合の発生電荷量を図11に示した。図11は、圧電素子1aに加えられる荷重と発生電荷量との関係を示したグラフである。
図11の結果から、圧電素子1aに加えられる荷重と発生電荷量とは、比例関係を示すことが示された。ここで、この比例関係を示す直線の傾きは、見かけ上の圧電定数d33(pC/N)、すなわち圧電素子1aの圧電定数を示している。
本実施例において、換算した圧電素子1aの圧電応答性は、30800pC/Nである。これは、従来の圧電素子における圧電応答性(2000〜3000pC/N)の約10〜15倍である。また、本実施例における圧電素子の発生電荷量は、基板として高分子薄膜を用いた非特許文献3の圧電素子の約1000倍となる。
このように、本発明に係る圧電素子1aは、従来の圧電素子よりも非常に優れた効果を奏することが示された。
〔実施例2〕
ポリイミド膜(高分子薄膜5)の一方の面にのみ銅からなる下部電極層(第1電極層2)と、窒化アルミニウム膜(圧電体薄膜3)と、アルミニウム層上に銅層を積層してなるアルミニウム/銅電極層(第2電極層4)とを形成した圧電素子1bを用いた以外は、実施例1と同様に圧電素子1bの発生電荷量を測定した。
実施例2における測定結果を図11に示した。本実施例において換算した圧電素子1bの圧電応答性は、17300pC/Nである。これは、従来の圧電素子における圧電応答性(2000〜3000pC/N)の約6〜8倍である。また、本実施例における圧電素子の発生電荷量は、基板として高分子薄膜を用いた非特許文献3の圧電素子の約600倍となる。
このように、本発明に係る圧電素子1bは、従来の圧電素子よりも非常に優れた効果を奏することが示された。
本発明に係る圧電素子は、小型であり、発生電荷量も多いため、ノートパソコンおよび携帯電話などの小型化が要求されるモバイル機器の電気供給源に応用することができる。また、人通りの多い、駅改札口の床に埋め込むことによって、自動改札における電気供給源としても応用することができる。
本発明に係る圧電素子を靴の中敷きに備える場合には、発電した起電力により発熱することによって、保温力に優れた靴とすることができる。このような靴の中敷きは、スキー、スノーボードなどのウィンタースポーツ用ブーツ、および冬山登山用の登山靴などに好適に用いることができる。
実施形態1に係る圧電素子の構成を示す概略図であり、(a)は概略断面図であり、(b)は概略平面図である。 実施形態1に係る圧電素子の変形例を示す概略図であり、(a)は概略断面図であり、(b)は概略平面図である。 実施形態3に係る発電マットの構成を示す概略図であり、(a)は概略平面図であり、(b)は概略断面図である。 実施形態3に係る発電マットの変形例を示す概略断面図である。 実施形態3に係る発電マットの他の変形例を示す概略断面図である。 実施形態4に係る発電シューズの構成を示す概略側面図である。 実施形態4に係る発電シューズの変形例を示す概略側面図である。 実施形態4に係る発電シューズの他の変形例を示す概略側面図である。 実施例1において用いた、圧電素子に加えられる圧力に対して圧電素子から発生する電圧を測定するための測定装置の概略断面図である。 実施例1において測定した圧力変化に対する圧電素子の発電挙動を示すグラフである。 実施例1および2において測定した圧電素子に加えられる荷重と発生電荷量との関係を示すグラフである。
符号の説明
1a、1b 圧電素子
2 第1電極層(第1の電極層)
3 圧電体薄膜
4 第2電極層(第2の電極層)
5 高分子薄膜(基板)
6 ガラスシリンダ
7 エアーチャンバー
8 歪みゲージ
9 アンプ
10 シグナルコンディショナー
11 オシロスコープ
20 圧電発電ユニット
21 可動板
22 支持体
23 圧電発電素子
24 突起部
30 マット本体
31 ソール部
32 アッパー部
100 発電マット(発電装置)
200 発電シューズ(発電装置)

Claims (12)

  1. 単量体を重合してなる高分子化合物を主成分とする高分子薄膜の少なくとも一方の面に、
    第1の電極層と第2の電極層との間に挟まれた、力学的な力が印加されることにより電荷を生じる圧電体を主成分とする圧電体薄膜が形成されており、
    上記高分子薄膜の弾性率は、0.1GPa以上、10GPa以下であることを特徴とする圧電素子。
  2. 上記高分子薄膜の膜厚は、1μm以上、200μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子。
  3. 上記高分子化合物は、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリサルホン、ポリアリレート、ポリエーテルニトリルまたはポリアミドであることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子。
  4. 上記第2の電極層は、スズ、アルミニウム、ニッケル、白金、金、銀、銅、クロム、鉄、マグネシウム、モリブデン、ニオブ、タンタル、チタン、亜鉛、ジルコニウム、タングステン、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルビジウム、窒化チタン、窒化クロムおよび二珪化モリブデンから選択される少なくとも2種類を積層してなる積層体であることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子。
  5. 上記圧電体は、複合酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子。
  6. 上記複合酸化物は、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸鉛、チタン酸ビスマスナトリウム、マグネシウムニオブ酸チタン酸鉛、チタン酸ビスマス、チタン酸ビスマスバリウム、ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムまたはリラクサーであることを特徴とする請求項5に記載の圧電素子。
  7. 上記圧電体は、ウルツ鉱型の結晶構造を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子。
  8. 上記化合物は、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、窒化ガリウム、窒化インジウムまたは硫化亜鉛であることを特徴とする請求項7に記載の圧電素子。
  9. 単量体を重合してなる高分子化合物を主成分とする高分子薄膜を形成する高分子薄膜形成工程と、
    上記高分子薄膜上に、第1の電極層を形成する第1の電極層形成工程と、
    上記第1の電極層上に、力学的な力が印加されることにより電荷を生じる圧電体を主成分とする圧電体薄膜を形成する圧電体薄膜形成工程と、
    上記圧電体薄膜上に、第2の電極層を形成する第2の電極層形成工程と、を含み、
    上記圧電体薄膜形成工程における処理温度が、10℃以上、100℃以下であり、
    上記高分子薄膜の弾性率が、0.1GPa以上、10GPa以下であることを特徴とする圧電体素子の製造方法。
  10. 上記第2の電極層形成工程が、スズ、アルミニウム、ニッケル、白金、金、銀、銅、クロム、鉄、マグネシウム、モリブデン、ニオブ、タンタル、チタン、亜鉛、ジルコニウム、タングステン、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルビジウム、窒化チタン、窒化クロムおよび二珪化モリブデンから選択される少なくとも2種類を積層してなる積層体の形成工程であることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
  11. 上記第2の電極層形成工程は、真空蒸着法を用いることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
  12. 請求項1から8のいずれか1項に記載の圧電素子を備えていることを特徴とする発電装置。
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