本発明は、過冷却水方式の氷蓄熱装置において、過冷却水の生成における過剰な冷却を防止することを第一の課題とする。
また本発明は、過冷却水方式の氷蓄熱装置において、外気温度が低い場合でも過冷却前の水の予熱に用いられる前記冷媒の熱量を確保することを第二の課題とする。
本発明は、過冷却水方式の氷蓄熱装置において、複数の蓄熱サイクルのうちの一部の蓄熱サイクルで水の凍結が生じた場合に、複数の蓄熱サイクルに対して運転していた圧縮機の出力から、水の凍結が生じた蓄熱サイクルに対する出力を差し引くことにより、少なくとも前記第一の課題を解決しようとするものである。
すなわち、本発明の氷蓄熱装置は、冷媒の圧縮、凝縮、膨張、及び蒸発によって冷熱を生成する冷凍サイクルと、冷凍サイクルで生成する冷熱を蓄える蓄熱サイクルとを有し、冷凍サイクルは、冷媒の蒸気を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された冷媒を冷却水で冷却して凝縮させる凝縮器と、凝縮器で凝縮した冷媒を断熱膨張させる減圧手段と、減圧手段で断熱膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器とを有し、蓄熱サイクルは、冷凍サイクルの蒸発器で生成する冷熱によって水を0℃以下に過冷却して過冷却水を生成する過冷却器と、過冷却器で生成した過冷却水の過冷却状態を解除して氷水とする過冷却解除器と、過冷却解除器で生成した氷水を蓄える氷蓄熱槽とを有する氷蓄熱装置において、蓄熱サイクルを複数有するとともに、蓄熱サイクル中において水が凍結したことを検出する検出手段と、検出手段からの検出信号に応じて圧縮機の出力を制御する圧縮機制御手段とをさらに有し、圧縮機制御手段は、蓄熱サイクル中において水の凍結が発生したときに、全ての蓄熱サイクルに対する圧縮機の出力から水の凍結が生じた蓄熱サイクルに対する圧縮機の出力が引かれた値となるように、圧縮機の出力を制御する手段であることを特徴とする氷蓄熱装置(以下、この氷蓄熱装置を「第一の氷蓄熱装置」とも言う)である。
前記構成によれば、一部の蓄熱サイクルで水の凍結が発生したときに、残りの蓄熱サイクルへの過剰な冷熱の供給が抑制され、残りの蓄熱サイクルにおいて過冷却水を安定して生成し、かつ装置全体での省エネルギー運転を実現することが可能となる。
また、本発明は、過冷却水方式の氷蓄熱装置において、冷凍サイクルにおいて冷媒の温度を、その上限値である設定値に近づける方向に、冷媒の冷却用の動力源の出力を、冷却水の温度に応じて制御することにより、少なくとも前記第二の課題を解決しようとするものである。
すなわち、本発明の氷蓄熱装置は、冷媒の圧縮、凝縮、膨張、及び蒸発によって冷熱を生成する冷凍サイクルと、冷凍サイクルで生成する冷熱を蓄える蓄熱サイクルとを有し、冷凍サイクルは、冷媒の蒸気を圧縮する圧縮機と、圧縮機で圧縮された冷媒を冷却水で冷却して凝縮させる凝縮器と、凝縮器で凝縮した冷媒を断熱膨張させる減圧手段と、減圧手段で断熱膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器とを有し、蓄熱サイクルは、冷凍サイクルの蒸発器で生成する冷熱によって水を0℃以下に過冷却して過冷却水を生成する過冷却器と、過冷却器で生成した過冷却水の過冷却状態を解除して氷水とする過冷却解除器と、過冷却解除器で生成した氷水を蓄える氷蓄熱槽とを有する氷蓄熱装置において、凝縮器と減圧手段との間に設けられ、凝縮器で凝縮した冷媒と蓄熱サイクルの氷蓄熱槽から過冷却器に送られる水との間で熱交換を行う予熱器と、冷却水を冷却する冷却塔、及び凝縮器と冷却塔との間で冷却水を循環させる冷却水ポンプを有する冷却水サイクルと、冷媒を冷却する冷却水の温度を検出する温度検出手段と、冷却水サイクルにおける冷却用の動力源及び圧縮機の少なくともいずれか一方の出力を制御する出力制御手段とをさらに有し、出力制御手段は、温度検出手段によって検出される冷却水の温度に応じて、凝縮器における冷媒の温度が、所定の範囲内の温度となるように、冷却用の動力源及び圧縮機の少なくともいずれか一方の出力を制御する手段であり、所定の範囲は、冷却用の動力源の定格運転時に得られる冷却水が冷却水サイクル中において流れているときの凝縮器における冷媒の温度以上、凝縮器における冷媒の温度の設定値以下であることを特徴とする氷蓄熱装置(以下、この氷蓄熱装置を「第二の氷蓄熱装置」とも言う)である。
前記構成によれば、外気温度が低い場合に、定格条件よりも緩い条件で冷却用の動力源
を運転することにより、冷却塔で生成される冷却水の温度を高くしたり、凝縮器に送られる冷却水の流量を小さくし、冷却用の動力源を定格条件で運転した場合に比べて凝縮器における冷媒の温度を高くすることが可能である。したがって、凝縮後の冷媒は、冷却用の動力源を定格条件で運転した場合に比べて多くの熱を有するので、冷却水の温度が低い場合でも、過冷却水の予熱量を確保することが可能となる。
また、前記構成によれば、定格条件よりも緩い条件で冷却用の動力源を運転しても、予熱器において冷媒からは熱が奪われることから、この冷媒から、冷却用の動力源を定格条件で運転したときに得られる冷媒による冷熱と同等かそれ以上の冷熱を、冷凍サイクルにおいて得ることができる。したがって、前記構成によれば、冷凍サイクルにおいて、冷却用の動力源の出力が小さくても、多くの冷熱の生成が可能であるので、少なくとも冷却用の動力源の運転におけるさらなる省エネルギー化を実現することが可能となる。
以下、本発明の氷蓄熱装置についてより詳細に説明する。まず、本発明の氷蓄熱装置における主要な構成について説明する。
本発明の氷蓄熱装置は、冷凍サイクルと蓄熱サイクルとを有する。前記冷凍サイクルは、冷媒の圧縮、凝縮、膨張、及び蒸発によって冷熱を生成するサイクルであり、冷媒の蒸気を圧縮する圧縮機と、この圧縮機で圧縮された冷媒を冷却水で冷却して凝縮させる凝縮器と、この凝縮器で凝縮した冷媒を断熱膨張させる減圧手段と、この減圧手段で断熱膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器とを有する。前記冷凍サイクルは、公知の器具や装置等を用いて構成することができる。
前記冷凍サイクルは、前述した構成要素のほかにも、他の構成要素を有していても良い。このような他の構成要素としては、例えば凝縮器と減圧手段との間等に設けられる冷媒のバイパス流路、分配器、弁、及びポンプ等の、冷媒の流量を調整する流量調整手段や、前記冷凍サイクル中における冷媒の温度や圧力等の状態を検出する冷媒検出手段等が挙げられる。また、前記冷媒には、公知の冷媒を用いることができる。
前記蓄熱サイクルは、前記冷凍サイクルで生成する冷熱を蓄えるサイクルであり、前記冷凍サイクルで生成する冷熱によって水を0℃以下に過冷却して過冷却水を生成する過冷却器と、この過冷却器で生成した過冷却水の過冷却状態を解除して氷水とする過冷却解除器と、この過冷却解除器で生成した氷水を蓄える氷蓄熱槽とを有する。前記蓄熱サイクルは、公知の器具や装置等を用いて構成することができる。
前記蓄熱サイクルは、前述した構成要素のほかにも、他の構成要素を有していても良い。このような他の構成要素としては、例えば循環水のバイパス流路、分配器、弁、及びポンプ等の、蓄熱サイクル中における水又は過冷却水の流量を調整する流量調整手段や、前記蓄熱サイクル中における水又は過冷却水の温度や圧力等の状態を検出する冷水検出手段等が挙げられる。
前記過冷却器には、伝熱性の複数のチューブと、このチューブの外周面を包むシェルとを有するシェルアンドチューブ式の熱交換器や、伝熱性の板を複数枚積層させた構造を有するプレート式の熱交換器等の公知の熱交換器を用いることができる。前記過冷却器は、プレート式の熱交換器であることが、前記蓄熱サイクルにおいて水の凍結が生じたときの凍結箇所の特定及びこの凍結の解除への対応を容易にし、また熱交換における圧力損失を抑制する上で好ましい。
なお、前記冷凍サイクルから前記蓄熱サイクルへの冷熱の伝達は、前記過冷却器において直接行われても良いし、例えば前記蒸発器と前記過冷却器との間でブラインを循環させ
る伝熱サイクル等を用いて間接的に行われても良い。
前記過冷却解除器には、公知の過冷却解除器を用いることができる。このような過冷却解除器としては、例えば過冷却水が供給される開放形の容器であって、容器の内壁や容器内の衝突板等に衝突するように過冷却水が供給される開放形の過冷却解除器や、例えば特開2001−241705号公報に開示されているように、過冷却水が供給される密閉形の過冷却解除容器と、この過冷却解除容器内の過冷却水の過冷却状態の解除を誘発する解除誘発装置とを有する密閉形の過冷却解除器等が挙げられる。前記過冷却解除器は、設置に要する空間を小さくする上で、密閉形の過冷却解除器であることが好ましい。
前記密閉形の過冷却解除器における前記解除誘発装置は、過冷却解除器に供給された過冷却水の過冷却状態の解除を誘発ことができるものであれば特に限定されない。このような解除誘発装置としては、例えば過冷却状態の解除を誘発する衝撃を過冷却水に与える超音波振動子等が挙げられる。
前記密閉形の過冷却解除器を用いる場合では、前記過冷却器と前記過冷却解除器との間には、過冷却解除器から過冷却器への氷の伝播を防止する伝播防止器をさらに有することが、前記蓄熱サイクル中において水の凍結を防止する上で好ましい。前記伝播防止器には、公知の伝播防止器を用いることができる。
このような伝播防止器としては、例えば特開2003−106716号公報に開示されているように、管と、この管の外周面側に密閉された空間を形成するように前記管の外周面を覆う外殻部とを有し、前記管は、前記外殻部に覆われた前記管の周壁に、全周にわたって管内と外殻部で覆われた空間とを連通する隙間が形成されている伝播防止器であり、前記外殻部は、前記蓄熱サイクルにおける水の流れ方向において前記過冷却器より上流側の循環水の流路と前記外殻部とを接続する循環水バイパス流路が接続され、過冷却器と過冷却解除器とを接続する管の内壁の表面に、0℃よりも高い温度の水の層を形成する伝播防止器等が挙げられる。
次に、本発明における前記第一の氷蓄熱装置について説明する。
前記第一の氷蓄熱装置は、前述した主要な構成に加えて、前記蓄熱サイクルを複数有する。前記複数の蓄熱サイクルは、少なくとも過冷却水が複数箇所で生成されるサイクルであれば良い。このような複数の蓄熱サイクルとしては、例えばそれぞれのサイクルが完全に独立している複数の蓄熱サイクルや、複数の過冷却器が並列に接続されており、他の構成要素が共有される蓄熱サイクルや、複数の過冷却器とこれらに対応する複数の過冷却解除器とを有し、他の構成要素が供給される蓄熱サイクル等が挙げられる。なお、前記複数の過冷却器は、同じ種類の過冷却器であっても良いし、異なる種類の過冷却器であっても良い。
前記第一の氷蓄熱装置は、前記蓄熱サイクルにおいて水が凍結したことを検出する検出手段と、前記検出手段からの検出信号に応じて前記圧縮機の出力を制御する圧縮機制御手段とをさらに有する。
前記検出手段は、前記蓄熱サイクル中において水が凍結したことを検出することができる手段であれば特に限定されない。このような検出手段としては、例えば前記蓄熱サイクル中を流れる水の流量を検出する流量計や、前記水の圧力を検出する圧力計等が挙げられる。前記検出手段には、これらのうちの一種類を用いても良いし、複数種類を併用しても良い。また、前記検出手段は、前記蓄熱サイクル中において水が凍結したことを検出することができるのであれば、その設置数や設置箇所についは特に限定されない。前記検出手段は、水の凍結を検出する際の検出精度等の観点から流量計であることが好ましい。
前記圧縮機制御手段は、前記蓄熱サイクル中において水の凍結が発生したときに、全ての蓄熱サイクルに対する圧縮機の出力から水の凍結が生じた蓄熱サイクルに対する圧縮機の出力が引かれた値となるように、前記圧縮機の出力を制御する手段である。
水の凍結が生じた蓄熱サイクルに対する圧縮機の出力を引いた値の求め方は、水の凍結が生じた蓄熱サイクルに対する圧縮機の出力が全ての蓄熱サイクルに対する圧縮機の出力から差し引かれた値が求められる方法であれば特に限定されない。このような値の求め方としては、例えば、全ての蓄熱サイクルに対する圧縮機の出力から水の凍結が生じた蓄熱サイクルの分の出力を引く方法や、水が凍結していない蓄熱サイクルの数の割合を、蓄熱サイクルの総数に対して乗じる方法等が挙げられる。また、前記水の凍結が生じた蓄熱サイクルに体する圧縮機の出力は、所定の条件で予め測定された実測値であっても良いし、シミュレーション等で得られる理論値であっても良い。
なお、前記圧縮機はインバータを有し、前記圧縮機制御手段は前記インバータに制御信号を送信することが、第一の氷蓄熱装置の省エネルギー運転を実現する上で好ましい。
次に、本発明における前記第二の氷蓄熱装置について説明する。
前記第二の氷蓄熱装置は、前述した主要な構成に加えて、前記凝縮器と前記減圧手段との間に設けられ、前記凝縮器で凝縮した冷媒と前記氷蓄熱槽から前記過冷却器に送られる水との間で熱交換を行う予熱器をさらに有する。前記予熱器には、前述した公知の熱交換器を用いることができる。前記予熱器において熱交換に供される冷媒は、凝縮器から減圧手段に送られる冷媒の全量であっても良いし一部であっても良い。また、前記予熱器において熱交換に供される水は、氷蓄熱槽から過冷却器に送られる水の全量であっても良いし一部であっても良い。前記予熱器への冷媒や水の供給量は、前述したバイパス流路等の流量調整手段によって調整することが可能である。
前記第二の氷蓄熱装置は、前記冷凍サイクルで冷媒を凝縮させるための冷却水の冷熱を生成する冷却水サイクルをさらに有する。前記冷却水サイクルは、冷却水を冷却する冷却塔と、前記凝縮器と前記冷却塔との間で冷却水を循環させる冷却水ポンプとを有する。冷却水サイクルは、公知の器具や装置等を用いて構成することができる。
前記第二の氷蓄熱装置は、前記冷媒を冷却する冷却水の温度を検出する温度検出手段をさらに有する。前記温度検出手段は、検出結果を電気信号として送信可能な温度計であれば特に限定されない。このような温度検出手段には、公知の温度センサを用いることができる。前記冷媒を冷却する冷却水の温度は、冷却塔での冷却後であって凝縮器での冷媒の冷却に用いられる前の冷却水の温度であれば特に限定されないが、凝縮器入口における冷却水の温度であることが、制御における設定値と実際の値との差を小さくする上で好ましい。
前記第二の氷蓄熱装置は、前記冷却水サイクルにおける冷却用の動力源及び前記圧縮機の少なくともいずれか一方の出力を制御する出力制御手段をさらに有する。前記出力制御手段は、冷却用の動力源の出力のみを制御しても良いし、圧縮機の出力のみを制御しても良いし、これらの両方の出力を制御しても良い。なお、前記冷却用の動力源とは、冷却水サイクルにおいて冷却水の冷却に用いられる機器の一又は二以上を意味する。このような冷却用の動力源としては、例えば前記冷却塔において冷却水に接触させる外気を送風する冷却塔ファンや、前記冷却水ポンプ等が挙げられる。前記冷却用の動力源は、冷媒の冷却効果への寄与がより大きい冷却水ポンプであることが、前記出力制御を簡易に行う上で好ましい。
前記出力制御手段は、前記温度検出手段によって検出される冷却水の温度に応じて、前記凝縮器における冷媒の温度が、所定の範囲内の温度となるように、前記冷却用の動力源及び前記圧縮機の少なくともいずれか一方の出力を制御する。前記所定の範囲は、冷却用の動力源の定格運転時に得られる冷却水が流れているときの前記凝縮器における冷媒の温度以上であり、かつ凝縮器における冷媒の温度の設定値以下である範囲である。
前記冷却用の動力源の定格運転時に得られる冷却水が流れているときの前記凝縮器における冷媒の温度は、定格運転で冷却用の動力源を運転したときの冷却水の温度に対する凝縮器での冷媒の温度の実測値や、冷却用の動力源の運転条件を定格運転とし、冷却水の温度を変えたときの冷凍サイクルのシミュレーション等によって求めることが可能である。なお前記定格運転とは、指定された使用限度での運転を意味する。具体的には、冷却水ポンプの最大流量での運転や、冷却塔ファンの最大風速での運転が挙げられる。
前記凝縮器における冷媒の温度の設定値は、確保すべき予熱量を含みつつ、冷凍サイクルに求められる冷熱の生成を安定して実現するための値であり、圧縮機の性能や、冷凍サイクルに要求される冷熱の生成量、予熱器の伝熱面積やK値等の設計条件、蓄熱サイクルにおいて予熱器を流れる水の流量等に応じて任意に定められる。このような設定値としては、例えば圧縮機が正常に運転できる凝縮冷媒の温度の上限値や、前記蓄熱サイクルでの冷熱負荷を満足する冷熱の生成が可能な、凝縮器における冷媒の温度の上限値や、この上限値に、前記予熱器での水への予熱量を温度に換算した値をさらに加えた値等が挙げられる。
なお、本発明では、前記所定の範囲内の値であれば、制御の目的等の諸条件に応じて、適当な設定値を下限値及び上限値とする任意の範囲を設定することができる。このような任意の範囲としては、例えば、予熱量を確保するための凝縮器における冷媒の温度を下限とし、圧縮機が正常に運転できる、凝縮器における冷媒の温度を上限とする範囲等が挙げられる。
前記出力制御手段は、前記冷却用の動力源の消費電力と前記圧縮機の消費電力との和が最小になるように、冷却用の動力源及び圧縮機の少なくともいずれか一方の出力を制御することが、省エネルギー運転を実現し、かつ前記予熱器における水の予熱量を確保する上で好ましい。前記冷却用の動力源の消費電力と前記圧縮機の消費電力との和の最小値は、冷却水の水量と冷却水ポンプの出力との関係、凝縮器における冷媒の温度と圧縮機の出力との関係、冷却水と冷媒との凝縮器における伝熱特性等の諸条件から求めることが可能である。前記の諸条件は、冷却用の動力源の出力を変えて冷凍サイクルを実際に運転したときの実測値や、冷却用の動力源の出力を変えたときの冷凍サイクルのシミュレーション等によって求めることが可能である。
なお、前記冷却用の動力源及び圧縮機はインバータを有し、前記出力制御手段は前記インバータに制御信号を送信することが、第二の氷蓄熱装置の省エネルギー運転を実現する上で好ましい。
以上、本発明における第一の氷蓄熱装置と第二の氷蓄熱装置とを説明したが、本発明には、これらの氷蓄熱装置を合体させた氷蓄熱装置も含まれる。
本発明の氷蓄熱装置は、前記冷凍サイクルと前記蓄熱サイクルとを有する氷蓄熱装置において、蓄熱サイクルを複数有するとともに、蓄熱サイクル中において水が凍結したことを検出する検出手段と、検出手段からの検出信号に応じて圧縮機の出力を制御する圧縮機制御手段とをさらに有し、圧縮機制御手段は、蓄熱サイクル中において水の凍結が発生し
たときに、全ての蓄熱サイクルに対する圧縮機の出力から水の凍結が生じた蓄熱サイクルに対する圧縮機の出力が引かれた値となるように、圧縮機の出力を制御する手段であることから、過冷却水方式の氷蓄熱装置において、過冷却水の生成における過剰な冷却を防止することができる。
前記氷蓄熱装置は、前記検出手段が蓄熱サイクルにおける水の流量を検出する流量計であると、水の凍結を検出する際の検出精度を高める上でより一層効果的である。
また、本発明の氷蓄熱装置は、前記冷凍サイクルと前記蓄熱サイクルとを有する氷蓄熱装置において、凝縮器と減圧手段との間に設けられ、凝縮器で凝縮した冷媒と氷蓄熱槽から過冷却器に送られる水との間で熱交換を行う予熱器と、冷却水を冷却する冷却塔、及び凝縮器と冷却塔との間で冷却水を循環させる冷却水ポンプを有する冷却水サイクルと、冷媒を冷却する冷却水の温度を検出する温度検出手段と、冷却水サイクルにおける冷却用の動力源及び圧縮機の少なくともいずれか一方の出力を制御する出力制御手段とをさらに有し、出力制御手段は、温度検出手段によって検出される冷却水の温度に応じて、凝縮器における冷媒の温度が所定の範囲内の温度となるように、冷却用の動力源及び圧縮機の少なくともいずれか一方の出力を制御する手段であり、所定の範囲は、冷却用の動力源の定格運転時に得られる冷却水が前記冷却水サイクル中において流れているときの凝縮器における冷媒の温度以上、凝縮器における冷媒の温度の設定値以下であることから、過冷却水方式の氷蓄熱装置において、外気温度が低い場合でも過冷却前の水の予熱に用いられる前記冷媒の熱量を確保することができる。
前記氷蓄熱装置は、出力制御手段が、冷却用の動力源の消費電力と圧縮機の消費電力との和が最小になるように、冷却用の動力源及び圧縮機の少なくともいずれか一方の出力を制御する手段であると、蓄熱サイクル中を流れる過冷却前の水を予熱するための熱量の確保と、圧縮機及び冷却水ポンプの高効率運転とを実現する上で、より一層効果的である。
前記氷蓄熱装置は、冷却用の動力源が冷却水ポンプであると、前記予熱するための熱量の確保する運転を高い精度で、かつ簡易な制御によって行う上で、より一層効果的である。
本発明の氷蓄熱装置は、過冷却器がプレート式の熱交換器であると、過冷却器における圧力損失を低減させ、氷蓄熱装置の安定した運転を行う上でより一層効果的である。また、プレート式の熱交換器では、通常、過冷却器における水の凍結箇所を特定する必要がないことから、水の凍結の検出やこの凍結の解除等に関する氷蓄熱装置の運転の制御を簡素化する上でより一層効果的である。
本発明の氷蓄熱装置は、過冷却解除器が、過冷却水が供給される密閉形の過冷却解除容器と、過冷却解除容器内の過冷却水の過冷却状態の解除を誘発する解除誘発装置とを有し、過冷却器と過冷却解除器との間には、過冷却解除器から過冷却器への氷の伝播を防止する伝播防止器をさらに有すると、より小型の氷蓄熱装置を構成し、また安定した氷蓄熱運転を行う上でより一層効果的である。
以下に、本発明の一実施の形態である氷蓄熱装置を図1に示す。なお、図1では、過冷却器周辺のバルブや熱交換器等の凍結解除運転を行うための構成は省略されている。
本実施の形態の氷蓄熱装置は、図1に示すように、冷熱を生成する冷凍サイクルと、冷熱を蓄熱する蓄熱サイクルと、冷凍サイクルで消費される冷熱を生成する冷却水サイクルと、冷凍サイクルから蓄熱サイクルへ冷熱を伝達する伝熱サイクルとを有する。
前記冷凍サイクルは、冷媒の蒸気を圧縮する圧縮機1と、圧縮機1で圧縮された冷媒を冷却水で冷却して凝縮させる凝縮器2と、凝縮器2で凝縮した冷媒を断熱膨張させる減圧手段である二つの膨張弁3、4と、膨張弁3、4で断熱膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器5とを有する。圧縮機1、凝縮器2、膨張弁4、蒸発器5は、冷媒循環流路6によって、これらに冷媒が循環するように接続されている。凝縮器2と膨張弁4との間の冷媒循環流路6には予熱器7が接続されている。凝縮器2と予熱器7とを接続する冷媒循環流路6と、膨張弁4と蒸発器5をと接続する冷媒循環流路6とは、冷媒バイパス流路8によって接続されている。膨張弁3は、冷媒バイパス流路8に設けられている。圧縮機1は、インバータ9を有している。
前記蓄熱サイクルは、過冷却水を生成するための二つの過冷却器11、12と、それぞれの過冷却器に対応して設けられ、過冷却水の過冷却状態を解除して氷水を生成するための二つの密閉形の過冷却解除器13、14と、過冷却解除器13、14で生成した氷水を一括して蓄える氷蓄熱槽15と、これらに水が循環するようにこれらを接続する循環水流路16と、氷蓄熱槽15に蓄えられている水を循環させるための循環水ポンプ17と、循環水ポンプ17から予熱器7へ循環水流路16中の水の一部を送り、予熱器7に送られた水を氷蓄熱槽15と循環水ポンプ17とを接続する循環水流路16に送る予熱用循環流路18とを有する。過冷却器11、12は、蓄熱サイクルにおいて並列に接続されている。
過冷却器11、12と過冷却解除器13、14との間には、過冷却解除器13、14から過冷却器11、12への氷の伝播を防止する伝播防止器19、20が設けられている。過冷却解除器13、14には、過冷却水の過冷却状態の解除を誘発するための超音波振動子21、22が設けられている。循環水ポンプ17と過冷却器11とを接続する循環水流路16には、この流路を流れる水の流量を検出する流量計24bが設けられている。この循環水流路16と伝播防止器19とは、循環水バイパス流路23によって接続されており、循環水バイパス流路23には、この流路を流れる水の流量を検出する流量計24aが設けられている。
同様に、循環水ポンプ17と過冷却器12とを接続する循環水流路16には、この流路を流れる水の流量を検出する流量計26bが設けられている。この循環水流路16と伝播防止器20とは、循環水バイパス流路25によって接続されており、循環水バイパス流路25には、この流路を流れる水の流量を検出する流量計26aが設けられている。
前記冷却水サイクルは、冷却水を冷却する冷却塔31と、冷却塔31と凝縮器2とを接続する冷却水循環流路32と、冷却塔31と凝縮器2との間で冷却水を循環させる冷却水ポンプ33とを有する。冷却塔31には、冷却水を空冷するための冷却塔ファンが設けられている。冷却水ポンプ33にはインバータ34が設けられている。
前記伝熱サイクルは、蒸発器5と過冷却器11、12とを接続してこれらにブラインを循環させるためのブライン循環流路41と、蒸発器5と過冷却器11、12との間でブラインを循環させるブラインポンプ42とを有する。過冷却器11、12は、ブライン循環流路において並列に接続されている。
また、本実施の形態の氷蓄熱装置は、運転制御部50をさらに有する。運転制御部50は、本発明における圧縮機制御手段と出力制御手段とを兼ね備えた制御手段であり、かつ流量計からの信号に基づき、蓄熱サイクルにおける過冷却器周辺の凍結判定を行う手段である。運転制御部50には、圧縮機1のインバータ9、循環水バイパス流路23及び循環水流路16における流量計24a及び24b、循環水バイパス流路25及び循環水流路16における流量計26a及び26b、及び冷却水ポンプ33のインバータ34が、電気信
号の送受が可能なようにそれぞれ接続されている。
予熱器7及び過冷却器11、12は、プレート式の熱交換器である。プレート式の熱交換器は、伝熱性の板を、適当な間隔を有して複数枚水密に積層した構造によって複数の水路を構成している。複数の流路は一つおきに連結することで二つの流路群を構成しており、二つの流路群は互いに水密な構成を有している。一方の流路群に高温の流体を流し、他方の流路群に低温の流体を流すことで熱交換を行うが、どちらの流路群に低温あるいは高温の液体を流すかは任意である。
過冷却解除器13(14)は、図2及び図3に示されるように、密閉形の略円筒形状の過冷却解除容器13a(14a)と、過冷却解除容器13a(14a)に過冷却水を導入するための入口部13b(14b)と、過冷却解除容器13a(14a)から氷水を排出するための出口部13c(14c)とを有する。
過冷却解除容器13a(14a)は、その横断面の形状は略円形である。この略円形を円に見立てて四分割したときに、中心を挟んで対向する二つの部分のそれぞれは円周の四分の一の弧であり、中心を挟んで対向するもう二つの部分のそれぞれは、八角形の二辺である。入口部13b(14b)は、過冷却解除容器13a(14a)の上部であって、一方の前記弧の部分であって、この弧の接線方向に沿って過冷却水を導入する位置に設けられている。出口部13c(14c)は、過冷却解除容器13a(14a)の下部であって、他方の前記弧の部分であって、この弧の接線方向に沿って氷水を排出する位置に設けられている。
伝播防止器19(20)は、図4に示されるように、管19a(20a)と、管19a(20a)の外周面側に密閉された空間を形成するように管19a(20a)の外周面を覆う外殻部19b(20b)とを有する。外殻部19b(20b)に覆われた管19a(20a)の周壁には、全周にわたって管19a(20a)内と外殻部19b(20b)で覆われた空間とを連通する隙間19c(20c)が形成されている。外殻部19b(20b)には、循環水バイパス流路23(25)が接続されている。
次に、本実施の形態の氷蓄熱装置の氷蓄熱運転について説明する。まず本実施の形態の氷蓄熱装置による氷蓄熱運転の概要を説明する。
前記冷却水サイクルでは、凝縮器2と冷却塔31との間で冷却水が循環する。これにより、凝縮器2で熱を吸収して温められた冷却水が冷却塔31で冷却され、冷却塔31で熱を放出して冷却された冷却水が凝縮器2に送られる。運転制御部50による冷却水ポンプ33の制御については、後に詳述する。
前記冷凍サイクルでは、圧縮機1で圧縮された冷媒が凝縮器2で冷却水によって冷却されて凝縮する。凝縮した冷媒は、予熱器7を通って膨張弁4に至る場合と、冷媒バイパス流路8を通って膨張弁3に至る場合とがあるが、ここでは冷媒が予熱器7を通って膨張弁4に至るものとして説明する。凝縮器2で凝縮した冷媒は、予熱器7において、後述する循環水に熱を放出し、膨張弁4で断熱膨張される。膨張弁4で断熱膨張した冷媒は、蒸発器5で蒸発し、ブラインから熱を奪う。冷媒の蒸気は圧縮機1に送られる。運転制御部50による圧縮機1の制御については、後に詳述する。
前記伝熱サイクルでは、蒸発器5と過冷却器11、12のそれぞれとの間でブラインが循環する。これにより、蒸発器5で熱を放出して冷却されたブラインが過冷却器11、12のそれぞれで温められ、過冷却器11、12のそれぞれで熱を吸収して温められたブラインが蒸発器5に送られる。
前記蓄熱サイクルでは、氷蓄熱槽15に収容されている水が、循環水ポンプ17によって循環する。氷蓄熱槽15から供給される水の一部は、予熱用循環流路18に送られ、予熱器7で例えば10℃程度に予熱され、氷蓄熱槽15から供給される水に合流する。予熱された一部の循環水と氷蓄熱槽15から送られる循環水とが混合されることにより、過冷却前の循環水の温度は、循環水中の氷の粒が融解する温度(例えば0.5℃)に調整される。このように温度調整された循環水は、過冷却器11、12のそれぞれに向けて送られる。
過冷却器11、12のそれぞれに向けて送られた循環水は、一部は過冷却器11、12のそれぞれに送られ、他の一部は循環水バイパス流路23、25にそれぞれ送られる。過冷却器11、12に送られた循環水は、過冷却器11、12においてブラインによって冷却され、例えば−2℃の過冷却水となる。過冷却器11、12のそれぞれで生成した過冷却水は、伝播防止器19、20の管19a、20aに適度な流量でそれぞれ送られる。
一方で、伝播防止器19、20の管19a、20aには、前記温度調整された循環水が、外殻部19b、20b及び隙間19c、20cを介して循環水バイパス流路23、25からそれぞれ供給される。伝播防止器19、20における過冷却水の流れ方向において、隙間19c、20cから下流側の管19a、20aには、管19a、20aの内周面側に前記温度調整された循環水の層が形成された過冷却水の流れが形成される。前記循環水の層とともに流れる過冷却水は、過冷却解除器13、14に適度な流量でそれぞれ送られる。
過冷却解除器13、14に送られた過冷却水は、過冷却解除容器13a、14aの内周面に沿って、過冷却器解除容器13a、14aの上部から下部に向けてらせん状に流れる。過冷却解除器13、14に送られた過冷却水は、過冷却解除容器13a、14aの底部及び周壁部を伝わる超音波振動子21、22による振動や、過冷却解除容器13a、14aの周壁部を流れる際の衝撃等によって、過冷却状態が解除され、氷水となる。
なお、前記適度な流量とは、伝播防止器19、20における隙間19c、20cから下流側の管19a、20aにおいて、温度調整された循環水の層を管19a、20aの内周面上に形成でき、過冷却解除容器13a、14aの周面に沿ってらせん状に過冷却水を流すことができる流量であり、過冷却器11、12による過冷却の効率や、過冷却解除容器13a、14aの形状、径、大きさ等によって異なるが、例えば伝播防止器19、20内における隙間19c、20cによって囲まれる配管断面内の平均流速が1m/s以上となる流量である。管19a、20aや入口部13a、14aの径は、前記適度な流量を実現するように、冷凍サイクルの冷凍能力や過冷却器11、12の能力や形態等に応じて適当な径にされている。
過冷却解除器13、14で生成した氷水は、氷蓄熱槽15に送られ、シャーベット状の氷が氷蓄熱槽15に蓄えられる。氷蓄熱槽15に送られた氷水のうち、水は、循環水ポンプ17によって予熱器7や過冷却器11、12に向けて再び送られる。
次に、本実施の形態の氷蓄熱装置において、前記氷蓄熱運転時に蓄熱サイクルで循環水の凍結が生じた場合の運転を説明する。このような場合では、運転制御部50は、流量計24a及び24b、26a及び26bの検出信号に応じて循環水の凍結を判定し、圧縮機1の出力を制御する。流量計24a及び24b、26a及び26bの検出信号から循環水の凍結の発生を判断する基準については、特に限定されないが、本実施の形態では、循環水バイパス流路23、25での所定時間当たりの循環水の流量の増加減少量とする。
より詳しくは、運転制御部50は、所定時間、例えば10秒毎に流量計からの検出信号を受信し、所定量の流量の増減の有無によって流量の増減を判断する。流量の増減の有無を決める所定量とは、特に限定されないが、例えば分解能1%の流量計を用いる場合ではフルスケールの1/100程度である。例えば、前記流量の増減の判断から、運転制御部50は、流量計24a(26a)の流量が増加し、流量計24b(26b)の流量が減少したときは、凍結と判定する。
なお、流量計24a(26a)の流量が増加し、流量計24b(26b)の流量が増加したとき、及び流量計24a(26a)の流量が減少し、流量計24b(26b)の流量が減少したときは、運転制御部50は、凍結以外の流量変動と判定する。また、流量計24a(26a)の流量が減少し、流量計24b(26b)の流量が増加したときは、運転制御部50は、循環水バイパス流路23(25)の詰まりと判定する。
まず、運転制御部50は、図8に示されるように、流量計24a及び24b、26a及び26bの検出信号を受信して凍結の有無を判定する(ステップ101)。運転制御部50は、循環水の凍結の判定数を調べる(ステップ102及び107)。
前記判定数が一の場合には、運転制御部50は、全過冷却器数に対して運転していた圧縮機1の出力から、一つの過冷却器に対する圧縮機1の出力を差し引いた値の出力(50%の出力)で圧縮機1が運転するように、圧縮機1のインバータ9に制御信号を送る(ステップ103)。
次いで運転制御部50は、凍結判定の基となった検出信号を送った流量計を特定し、いずれの過冷却器又はその周辺で循環水の凍結が生じたかを特定する(ステップ104)。例えば凍結を知らせる検出信号を送った流量計が流量計24a及び24bであれば、運転制御部50は、過冷却器11及びその周辺において、不図示の弁や熱交換器によって凍結解除運転を行う(ステップ105)。凍結を知らせる検出信号を送った流量計が流量計24a及び24bでなければ、運転制御部50は、過冷却器12及びその周辺において同様に凍結解除運転を行う(ステップ106)。そして運転制御部50は、所定時間後に、流量計24a及び24b、26a及び26bの検出信号を再び受信する。
前記判定数が二の場合には、運転制御部50は、圧縮機1の運転を停止する制御信号をインバータ9に送り(ステップ108)、過冷却器11、12及びその周辺において前述したように凍結解除運転を行う(ステップ109)。凍結解除運転後、運転制御部50は、圧縮機1の運転を再開する制御信号をインバータ9に送る(ステップ110)。そして運転制御部50は、所定時間後に流量計24a及び24b、26a及び26bの検出信号を再び受信する。
前記判定数が一でも二でもない場合は、運転制御部50は、所定時間後に流量計24a及び24b、26a及び26bの検出信号を再び受信する。
次に、本実施の形態の氷蓄熱装置において、前記氷蓄熱運転時に予熱器7での予熱量を確保するための運転を説明する。まず、前記氷蓄熱運転時に予熱器7での予熱量の確保を優先する運転について説明する。このような運転は、凝縮器における冷媒の温度が前記設定値未満となるように、冷却水ポンプ33と圧縮機1との出力を運転制御部50が制御することによって行われる。
まず、前記予熱量を確保するための運転における設定条件を説明する。
前記設定条件としては、圧縮機1と冷却用の動力源との消費電力の割合が挙げられる。本実施の形態では、冷却用の動力源を冷却水ポンプ33とする。また、本実施の形態では、定格の圧縮機1の消費電力が580kWであり、定格の冷却水ポンプ33の消費電力が102kWであり、定格の圧縮機1と定格の冷却水ポンプ33との消費電力の割合は、圧縮機1が0.85で冷却水ポンプ33が0.15とする。
また、凝縮器2での冷媒の温度や冷却水の温度の上限値を設定する。凝縮器2での冷媒の温度の設定値(上限値)は、圧縮機1の保護の観点から40℃とする。冷却水ポンプ3
3の定格運転時に凝縮器2での冷媒の温度が前記設定値になるとして、定格時の冷却水ポンプ33により得られる冷却水の凝縮器2の入口での温度の上限値は32℃とする。冷却水ポンプ33が定格条件で運転している場合では、凝縮器2での冷媒の温度は、冷却水の温度、すなわち凝縮器2入口での冷却水の温度に比例して変化する。これらの関係を図5に示す。
また、冷却水の消費電力と冷却水の流量との関係、及び凝縮器2における冷却水から冷媒の伝熱特性を設定する。冷却水ポンプ33の消費電力は、冷却水の流量の3乗に比例して変化する。また、凝縮器2での伝熱特性(総括伝熱係数K)は、冷却水の流量に応じて変化する。したがって、凝縮器2での冷却水と冷媒との温度差(ΔT)は、冷却水の流量に応じて変化する。冷却水の流量に対する冷却水ポンプ33の消費電力の割合(定格時を0.15とする)、及び冷却水の流量に対するΔT((冷媒の温度)−(冷却水の温度))を以下の表1に示す。
一方で、氷蓄熱運転では、前述したように、冷熱負荷が一定であることから、蒸発器5での冷媒の蒸発温度が一定であるので、圧縮機1の消費電力は、凝縮器2における冷媒の温度によって変化する。このような圧縮機1の消費電力と、凝縮器2における冷媒の温度との関係は、冷凍サイクルのシミュレーションや、用いる圧縮機1のカタログデータ等から求められる。凝縮器2における冷媒の温度と圧縮機1の消費電力の割合(定格時の圧縮機1の消費電力の割合を0.85とする)を図6に示す。
前述したように設定された条件において、予熱器7での予熱量の確保を優先する氷蓄熱運転を行う場合について説明する。凝縮器での冷媒温度(下限値)は、予熱器の設計によるが、ここでは予熱量確保のために32℃とする。運転制御部50は、図9に示されるように、凝縮器2の入口の冷却水の温度(冷却水入口温度)を検出する不図示の温度センサからの検出信号を受信する(ステップ201)。温度センサからの検出信号を受信した運転制御部50は、冷却水入口温度とそのときの冷却水の流量におけるΔTとの和と、凝縮器2での冷媒の温度の設定値である40℃との関係を、40℃未満の場合、及び40℃以
上の場合の順で調べる(ステップ202及び207)。
冷却水入口温度とΔTとの和が40℃未満である場合では、運転制御部50は、冷却水入口温度とΔTとの和が32℃以上であるかを調べる(ステップ203)。運転制御部50は、冷却水入口温度とΔTとの和が32℃以上であれば、冷却水の流量を所定の値(例えば1%)大きくする制御信号を冷却水ポンプ33のインバータ34に送信する(ステップ204)。運転制御部50は、冷却水入口温度とΔTとの和が32℃未満であれば、冷却水の流量を所定の値(例えば1%)小さくする制御信号を冷却水ポンプ33のインバータ34に送信する(ステップ205)。インバータ34への制御信号を送信した運転制御部50は、新たに変わった冷却水の流量から、この冷却水の流量における新たにΔTを求め、このΔTと冷却水入口温度の和の温度における圧縮機1の消費電力の割合を求め、この割合に圧縮機1の出力を制御する信号を圧縮機1のインバータ9に送信する(ステップ206)。制御信号を送信した運転制御部50は、前記温度センサからの検出信号を受信するステップに戻る。
冷却水入口温度とΔTとの和が40℃以上の場合では、運転制御部50は、冷却水の流量が最大値であるか、すなわち冷却水ポンプ33が定格条件で運転しているかを調べる(ステップ208)。冷却水の流量が最大値ではない場合では、冷却水の流量を所定の値(前述の値よりも大きな、例えば2%)大きくする制御信号をインバータ34に送信し(ステップ209)、前記温度センサからの検出信号を受信するステップに戻る。
冷却水の流量が最大値である場合では、運転制御部50は、前記冷却水の流量が最大値であることを調べるステップに連続して到達しているか、及びこのステップに到達する回数(n)が所定の回数(例えば三回)以上であるかを調べる(ステップ210)。前記ステップへの到達回数が連続して三回以上である場合では、運転制御部50は、冷媒バイパス流路8の閉鎖、予熱用バイパス流路18における循環水の流量の増加、一方の過冷却器への循環水の供給停止等の他の制御の実行を、他の制御手段に指示するか、又は他の制御を行う(ステップ211)。
また、冷却水入口温度とΔTとの和と40℃との関係が、40℃未満でなく、かつ40℃以上でもないとの結論が得られる場合では、運転制御部50は、40℃以上であるかを調べるステップに連続して到達しているか、及びこのステップに到達する回数(n)が所定の回数(例えば三回)以上であるかを調べる(ステップ212)。前記ステップへの到達回数が連続して三回以上である場合では、運転制御部50は、圧縮機1の運転を停止し、圧縮機1の運転の停止を管理者に通報する(ステップ213)。
予熱量確保のための冷却水入口温度と冷却水の流量との組み合わせを表2に示す。前述したような制御では、凝縮器2での冷媒の温度については32℃以上の温度が確保され、予熱量が確保される。
次に、前述したように設定された条件において、予熱器7での予熱量を確保するとともに省エネルギー運転を優先する氷蓄熱運転を行う場合を説明する。
運転制御部50は、予熱量の確保を優先する運転と同様に、凝縮器2の入口の冷却水の温度(冷却水入口温度)を検出する不図示の温度センサからの検出信号を受信する。温度センサからの検出信号を受信した運転制御部50は、冷却水入口温度とそのときの冷却水の流量におけるΔTとの和と、凝縮器2での冷媒の温度の設定値である40℃との関係を、40℃未満の場合、及び40℃以上の場合の順で調べる。
冷却水入口温度とΔTとの和が40℃未満である場合では、運転制御部50は、図10に示されるように、許容される冷却水の流量の範囲を求める(ステップ301)。冷却水の流量の範囲が求められたら、運転制御部50は、求められた冷却水の流量におけるΔTを求め、これらのそれぞれのΔTと冷却水入口温度との和(凝縮器における冷媒の温度)を求め、許容される冷却水の流量の範囲における圧縮機1の消費電力の割合を求める(ステップ302)。一方で、運転制御部50は、求められた冷却水の流量の範囲に対応する冷却水ポンプ33の消費電力の範囲を求める(ステップ303)。
冷却水の流量の値に対応して、圧縮機1の消費電力の割合と冷却水ポンプ33の消費電力の割合とが求められたら、運転制御部50は、冷却水の流量の値に対応する圧縮機1の消費電力の割合と冷却水ポンプ33の消費電力の割合との和を求める(ステップ304)。そして運転制御部50は、前記和が、前記求められた冷却水の流量の範囲において最も小さい値となる圧縮機1の消費電力の割合と冷却水ポンプ33の消費電力の割合との組み合わせを選択し、選択された冷却水ポンプ33の消費電力の割合に冷却水ポンプ33の出力を制御する信号をインバータ34に送信する(ステップ305)。この信号を送信した運転制御部50は、選択された圧縮機1の消費電力の割合で圧縮機1が運転していることを確認する(ステップ306)。運転制御部50は、前記温度センサからの検出信号を受信するステップに戻る。
冷却水入口温度とΔTとの和が40℃以上の場合以降のステップについては、予熱器7
での予熱量の確保を優先する運転と同じである。
このような省エネルギー運転を優先する制御を行った場合に得られる、冷却水入口温度と圧縮機1及び冷却水ポンプ33の消費電力割合の和との関係を図7及び表3に示す。図7及び表3には、圧縮機1及び冷却水ポンプ33の消費電力の割合の和の最小値は、冷却水の流量が所定の割合のときに決まるのではなく、冷却水入口温度と冷却水の流量との組み合わせによって決まることが示されている。
また、前記最小値が得られる冷却水入口温度と冷却水の流量との組み合わせと、凝縮器2における冷媒の温度との関係を図5に示す。図5に示されるように、前述した制御によれば、冷却水入口温度が27℃以下では、凝縮器2における冷媒の温度が、定格条件での冷却水ポンプの運転時に比べて4℃以上高くなる。
前述した制御を行ったときに得られる数値を、冷却水入口温度が28℃である場合を例に以下の表4に示す。表4から明らかなように、冷却水入口温度が28℃の場合では、圧縮機1の消費電力の割合には0.801が選択され、冷却水ポンプ33の消費電力の割合には0.051が選択される。
冷却水の温度は、外気温度の低下によって低くなる。もし、氷蓄熱運転のように冷凍能力が一定であり、かつ冷却水の流量が一定である場合には、凝縮器2における冷媒の温度及び予熱量は、図11に示されるように、外気温度の低下によって低下する。
前記予熱器7での予熱量の確保を優先する運転では、許容範囲内において冷却水ポンプ33の出力を小さくする方向に氷蓄熱装置の運転が制御されるので、この運転時における冷凍サイクルは、外気温度が低い場合でも、図11中の「外気温度:高」か、又はこれに近い形で通常表される。
前記予熱器7での予熱量を確保するとともに省エネルギー運転を優先する運転では、許容範囲内において冷却水ポンプ33の出力を小さくするが、これに伴う圧縮機1の出力の増加を考慮し、ある外気温度において圧縮機1と冷却水ポンプ33との出力の和が最小になるように氷蓄熱装置の運転が制御されるので、この運転時における冷凍サイクルは、外気温度が低い場合でも、図11中の「外気温度:中」か、又はこれに近い形で通常表される。
なお、本実施の形態における氷蓄熱装置は、膨張弁3、4及び冷媒バイパス流路8を有することから、膨張弁3、4の開度を調整することによって、予熱器7を通る冷媒の流量を調整することが可能である。これにより、前記蓄熱サイクルの循環水の温度や、凝縮後(断熱膨張前)の冷媒の温度等を調整することが可能となる。
また、本実施の形態における氷蓄熱装置には、本実施の形態における氷蓄熱運転に支障を来さない範囲で、種々の適当な改造を施すことが可能である。例えば、本実施の形態における氷蓄熱装置では、予熱用循環流路18に循環水の流量を調整するための弁を設けると、前記蓄熱サイクルにおける過冷却前の循環水の温度を調整することが可能となり、外気温度が高く、冷却水の温度が高く、予熱器7において冷媒が有する予熱量が大き過ぎる場合に、予熱される循環水の流量を制御し、循環水の温度を適切に制御することが可能となる。
また、本実施の形態における氷蓄熱装置では、過冷却器11、12よりも上流側のそれぞれの循環水流路16に流量計を設けると、これらの流量計で検出される流量に対する流量計24、26で検出される流量の変化量を検出することが可能となり、蓄熱サイクルにおける循環水の凍結の検出精度をより一層高めることが可能となる。
また、本実施の形態では、前記冷却用の動力源が冷却水ポンプ33である場合を示したが、前記冷却用の動力源が冷却塔31に設けられる冷却塔ファン場合や、前記冷却用の動力源が冷却水ポンプ33と前記冷却塔ファンとである場合であっても良い。このような場合では、定格時における前記冷却塔ファンの出力の割合を設定し、冷却塔31における冷却塔ファンの出力と、そのときの冷却水の温度との関係を実測によって、又はシミュレーションによって求め、この結果を冷却水入口温度に反映させれば良い。
また、本実施の形態では、運転制御部50による制御については、前記圧縮機制御手段及び前記出力制御手段としての制御の形態しか示していないが、運転制御部50はこの形態に限定されるものではなく、膨張弁3、4や循環水ポンプ17等の本実施の形態で示された構成の制御をさらに行うものであっても良いし、また、前述した種々の適当な改造によって付加される他の構成の制御をさらに行うものであっても良い。このような場合、弁は自動弁であることが好ましく、また出力の制御にはインバータを用いることが好ましい。
また、本実施の形態では、過冷却器周辺での水の凍結を流量計で検出する形態を示したが、流量計に代えて、過冷却器11、12の入口側及び出口側のそれぞれの循環水流路16に圧力計を設けても、過冷却器周辺での水の凍結を検出することが可能である。このような形態では、過冷却器の入口側の圧力計をA、出口側の圧力計をBとしたときに、運転制御部50は、圧力計Aの圧力が上昇し、圧力計Bの圧力が低下したときに、凍結と判定する。
なお、圧力計Aの圧力が上昇し、圧力計Bの圧力が上昇したとき、及び圧力計Aの圧力が低下し、圧力計Bの圧力が低下したときは、運転制御部50は、凍結以外の圧力変動と判定する。また、圧力計Aの圧力が低下し、圧力計Bの圧力が上昇したときは、運転制御部50は、圧力計の異常又は逆流と判定する。運転制御部50が圧力計からの検出信号を受ける間隔や、圧力の増減の判断基準は、圧力計の種類等に応じて適宜設定すればよい。
本実施の形態の氷蓄熱装置によれば、複数の過冷却器11、12が並列に接続されてなる複数の蓄熱サイクルと、循環水バイパス流路23、25と、流量計24a及び24b、26a及び24bと、運転制御部50とを有することから、個々の蓄熱サイクル中を流れる水の凍結を検出することができ、また前記水の凍結が検出されたときに、水の凍結が生じた蓄熱サイクルに対する圧縮機1の出力が引かれた値で圧縮機1の出力が制御されるので、過冷却水の生成における過剰な冷却を防止することができる。
また、本実施の形態の氷蓄熱装置によれば、圧縮機1及びインバータ9と、冷却水ポンプ33及びインバータ34と、運転制御部50と、予熱器7とを有することから、外気温度に応じて冷却水の流量、及びこれに伴う圧縮機1の出力を制御することにより、凝縮器2における冷媒の温度を高い温度が維持され、かつ蓄熱サイクル中を流れる循環水の所定の予熱熱量が維持されるので、外気温度が低い場合でも過冷却前の水の予熱に用いられる冷媒の熱量を確保することができる。
また、本実施の形態の氷蓄熱装置は、インバータ9及びインバータ34を有し、また予熱量を確保する条件での省エネルギー優先運転を行うことが可能であることから、過冷却水方式の氷蓄熱装置において、蓄熱サイクルにおける循環水の予熱量を確保できる最も小さな出力で、前記予熱量を確保する運転を行うことができる。
また、本実施の形態の氷蓄熱装置は、過冷却器解除器として密閉形の過冷却器解除器13、14を有することから、開放形の過冷却解除器を有する場合に比べて、過冷却解除器の設置に要する空間を小さくすることができるので、氷蓄熱装置を小型化することができ
る。
また、本実施の形態の氷蓄熱装置は、伝播防止器19、20を有することから、過冷却状態の解除の過冷却器への伝播が防止されるので、蓄熱サイクル中を流れる水の凍結を防止し、安定した氷蓄熱運転を行うことができる。
また、本実施の形態の氷蓄熱装置は、過冷却器としてプレート式の過冷却器11、12を有することから、シェルアンドチューブ型の過冷却器を有する場合に比べて、循環水又はブラインの通液による圧力損失を小さくすることができる。また、過冷却器11、12での部分的な水の凍結が生じないので、凍結の検出やその解除の制御を容易にすることができる。