JP4327882B1 - 青果長期保存方法及び青果長期保存装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】青果の長期保存を可能として、解凍後に冷凍前の状態に対する復元性が十分で、旨みや栄養素を保持することができる青果長期保存方法を提供する。
【解決手段】青果を糖液に浸漬する熟度調整工程12と、糖液から取り出した青果を減圧下で晒す劣化防止工程14と、熟度調整後の青果を冷凍する冷凍工程16と、冷凍した青果を凍結保存する保存工程18と、を備える。熟度調整工程12は、予め予備工程22によって決められた、青果の中心部の糖度が所定糖度値または所定糖度範囲に達し、且つ、青果の中心部と周辺部との糖度の差異が所定糖度差異以内に達することができる減圧力及び浸漬時間に従って、浸漬を行う。
【選択図】図1

Description

本発明は、果物、野菜といった青果を長期にわたり保存することができる青果長期保存方法及び青果長期保存装置に関する。
従来、青果の長期保存方法としては、青果の呼吸量のコントロールによる保存法として、エチレン制御、温度制御(氷温、低温貯蔵等)が開発されている。
しかしながら、完熟の状態、即ち最も美味しい時のままで、1年といった長期間にわたり、保存を可能にする技術は確立されていない。例えば、1月にサクランボや桃を生食として供給することはできていない。
このように従来の長期保存方法の発想は、青果に直接手をつけず、どれだけ延命を図るか、に的が絞られている。青果自体が持つ、「旨み」や「栄養素」は経過日が長くなればそれだけ、劣化が進む。つまり、青果自体に自己消化作用があるので、一ヶ月や二ヶ月の保存であっても、味覚の劣化を防ぐことができず、ただ形状のみ保持しており、旬を保つことはできない。
ところで、通常の食品の保存方法としては、被冷却物を−20℃〜−60℃にまで冷凍して、そのまま凍結保存し、必要に応じて解凍する、ということが一般的に行われている。しかしながら、この通常の冷凍方法を果物や野菜などの青果に適用すると、解凍後の状態は凍結前のそれとは異なり、ドリップ、軟化等が発生し、明らかに物性が異なってしまう。
このように、冷凍による生ものとしての青果の保存は不可能と考えられており、この問題に対しては、特許文献1ないし3に記載されたように、果実に糖液を含浸させて、青果中の水分を糖液に置換させた後、凍結する技術が、多数提案されている。これらの文献で提案される発明では、青果内の水分と糖液との置換を行うことによって、冷凍しても硬く凍結しないようにしている。
特開平2−16947号公報(特許請求の範囲) 特開平6−245692号公報 特開2007−53969号公報
以上の上記特許文献で提案される糖液との置換は、糖液を不凍液として用いて青果に耐冷凍性を持たせることを目的としている。不凍化された青果は、冷凍環境に置かれても凍結していないため、品質劣化は遅いながら進行してしまう。
長期保存を可能とし、解凍後に十分に復元させるためには、微細凍結を起こさせて細胞破壊を防ぐ必要があるが、従来、十分な復元性を持った長期保存方法は確立されていない。
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、青果の長期保存を可能として、解凍後に冷凍前の状態に対する復元性が十分で、旨みや栄養素を保持することができる青果長期保存方法及びその装置を提供することをその目的とする。
従来の解凍後の青果の復元が困難な理由として、発明者は次の点に着目している。
1.細胞の破壊
青果内の糖分布は、均質ではない。糖は、氷結晶温度を低下させる機能を持つため、1個の青果の内部の各点において、糖度の分布が均一ではないと、その個体をそのまま凍結させたときに、各部位の糖度が異なるために均一に凍結せず、膨張率の違いによる細胞の破壊を招く。解凍時にも不均一な解凍となり、細胞の破壊を招く。
2.自由水の存在
細胞膜内や細胞間にある水のうち細胞間にある水を自由水と言い、青果は多量の自由水を含んでいる。この自由水と細胞間内液とには糖濃度の違いがあるので、自由水と細胞間内液とで凍結温度が異なる結果、自由水が凍結時に氷結晶となって、細胞膜を破る原因となる。また、解凍時も、凍結と逆の解凍温度のばらつきが発生し、細胞内液と解凍温度差があるため、解凍時に解凍した自由水が細胞間から遊離する。この破壊された細胞膜内からの液体及び細胞間から遊離した自由水自身が、ドリップとして外部に漏れ出ると考えられる。
3.エチレンガスの除去
青果は生の状態にあって呼吸をしており、生きている故に、その老化ホルモンであるエチレンガスを放出している。個体内のエチレンガスの含有量も部位により残留エチレン量は異なっている。エチレンガスは気体であるから、凍結したときに、個体内に存在するエチレンガスがガス層となり不凍化物質となりまた断熱材として作用するために、凍結時の不均一の一要因となると考えられる。
以上の考察から、発明者は、糖度、自由水及び/またはエチレンガスを制御することで、これらを原因とする個体内の糖度及びガス量のばらつきを極力低減し、青果の復元が可能になるということに想到し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、請求項1記載の本発明では、青果を糖液に浸漬する熟度調整工程と、熟度調整後の青果を冷凍する冷凍工程と、冷凍した青果を凍結保存する保存工程と、を備える青果長期保存方法において、
前記熟度調整工程と前記冷凍工程との間に、糖液から取り出した青果を糖液外で、減圧下で晒す劣化防止工程を設け
前記熟度調整工程では、減圧下で青果を糖液に浸漬すると共に、前記劣化防止工程では、前記熟度調整工程における圧力よりもさらに圧力が低い減圧下で青果を晒すことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の前記熟度調整工程が、予め予備工程によって決められた、青果の中心部の糖度が所定糖度値または所定糖度範囲内に達し、且つ、青果の中心部と周辺部との糖度の差異が所定糖度差異値または所定糖度差異範囲内に達することができる減圧力及び浸漬時間に従って、浸漬を行うことを特徴とする
請求項3記載の発明は、請求項2記載の前記熟度調整工程が、予め予備工程によって決められた温度に糖液の温度を維持することを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1項に記載の熟度調整工程を行うための青果長期保存装置において、
前記熟度調整工程中に糖液を内部に保持する容器と、
前記熟度調整工程後で劣化防止工程前に容器内部の糖液を排出する糖液排出手段と、
前記熟度調整工程中及び前記劣化防止工程中に容器内部を減圧する真空化手段と、
を備え
前記真空化手段は、熟度調整工程よりも劣化防止工程において容器内部をより低い圧力に減圧することを特徴とする。
請求項記載の発明は、請求項1ないしのいずれか1項に記載の熟度調整工程及び劣化防止工程を行うための、青果長期保存装置において、
前記熟度調整工程中に糖液を内部に保持する容器と、
前記熟度調整工程後で劣化防止工程前に容器内部の糖液内に浸漬された青果を糖液上方に上昇させる昇降手段と、
前記熟度調整工程中及び前記劣化防止工程中に容器内部を減圧する真空化手段と、
を備え
前記真空化手段は、熟度調整工程よりも劣化防止工程において容器内部をより低い圧力に減圧することを特徴とする。
請求項1記載の本発明によれば、熟度調整工程と冷凍工程との間に劣化防止工程を設けることによって、減圧下で青果内のエチレンガス及び自由水を除去して、熟度調整工程で調整された熟度の固定を図ることができ、さらには、青果の表面を乾燥させることができるのでその後の劣化スピードを大幅に遅延させることができる。また、真空中で気化潜熱を奪い、青果を冷却させることができるので、冷却効果によっても劣化スピードを大幅に遅延させることができ、その後の冷凍工程における冷却処理負担を軽減させることができる。また、減圧下で浸漬することによって、青果内の自由水を排出させて糖液との置換を促進し上記で指摘した自由水に起因する細胞の破壊を防止することができる。同時に青果内のエチレンガスの排出を促進することができ、これによってエチレンガスに起因する凍結時の不均一を防ぎ、また、青果の劣化を防止することができる。また熟度調整工程において、エチレンガス及び自由水の排出を行うと共に、劣化防止工程で、さらなるエチレンガス及び自由水の排出促進を行うことができる。
請求項2記載の発明によれば、予め予備工程によって決められた、青果の中心部の糖度が所定糖度値または所定糖度範囲内に達し、且つ、青果の中心部と周辺部との糖度の差異が所定糖度差異値または所定糖度差異範囲内に達することができる減圧力及び浸漬時間に従って、浸漬を行うことによって、上記で指摘した青果内の糖分布が不均一であることに起因する細胞の破壊を防止することができる。このように、予備工程によって正確な浸漬時間を決定することによって、確実に青果内の糖度を均一に制御することができる。
請求項記載の発明によれば、糖液の温度を維持することで、青果の熟度の調整を行う
ことができる。
請求項及び記載の発明によれば、熟度調整工程の終了後、容器から青果を取り出さずに、劣化防止工程を行うことができるので、劣化防止工程で表面の乾燥を行う迄の青果の酸化を防ぐことができる。
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。尚、以下の実施形態は本発明を限定するものではない。
図1は、本発明による青果長期保存処理の手順を表すフローチャートである。
本発明の方法は、熟度調整工程12、好ましくは劣化防止工程14、冷凍工程16、保存工程18及び解凍工程20からなる。
まず、熟度調整工程12において、熟度が不揃いな被処理物に対して熟度が一律になるように調整する。被対象物の中心部(中心部に種がある場合には種の近傍)の糖度が所定糖度値または所定糖度範囲内に達するようにすれば、熟度を適切なものとすることができる。所定糖度値または所定糖度範囲は、その被処理物に適した熟度における糖度の値または範囲とすることができ、例えば完熟時における糖度の値または範囲である。同時に、被処理物の中心部(中心部に種がある場合には種の近傍)と被処理物の周辺部との糖度の差異が所定糖度差異値または所定糖度差異範囲内になるようにすれば、被処理物の内部において、ほぼ均一の糖度分布となっていると予想できる。ここで、所定糖度差異値または所定糖度差異範囲とは、十分に差異が小さいと認められる値または0を含む範囲であり、被対象物の種類によって任意に決めることができる。
そのために、図3に示すように、容器32内に糖液34を保持し、被処理物Fを糖液34の中に浸漬し、糖液34の温度または容器32内の温度及び容器内圧力等のパラメータを調整する。この工程の際に、容器内圧力を減圧状態とすることで、被処理物の内部の自由水を排出促進して、自由水と糖液との置換を行い、被処理物内部での細胞間と細胞内とでの糖度の均質化を図る。同時に、被処理物からのエチレンガスの排出促進も行い、エチレンガスを糖液中または容器内に排出する。
調整パラメータとしては、糖液の糖度、糖液の温度、容器内の温度、容器内圧力、浸漬時間が挙げられる。
糖液の糖度としては、初期値として被処理物の目標糖度(所定糖度値)の1.2〜4倍、好ましくは2倍〜2.5倍程度の範囲に設定するとよい。糖液の糖度は、容器内圧力に応じて水分の蒸発により変化する。糖液としては、グラニュー糖、黒砂糖、ぶとう糖、ショ糖、果糖、トレハロース、セルロース等の糖を単独でまたは混合したものを使用することができる。
糖液の温度は、青果を生ものとして保つために、酵素が死滅する温度(通常48℃程度)以下に保持する必要がある。具体的には、2〜42℃の範囲、好ましくは30±5℃で設定するとよい。また、糖液の温度は、容器内圧力が減少すれば、それに応じて低くなるので、適宜加熱等により一定に保持する。
圧力は、真空度を高めれば、前記自由水及びエチレンガスの排出効果を高めることができ、且つ、被処理物への糖液の浸透を高めるので浸漬時間を短縮することができ、好ましいが、あまり強い真空度とすると、青果物の細胞膜を破壊し被処理物の軟化につながり形状保持性を悪化させることになる。よって、被処理物の形状を保持する範囲で高い真空度とするとよい。具体的には、ゲージ圧で−0.003MPa〜−0.098MPa程度の真空度とするとよい。
浸漬時間は、被処理物によって異なり、被処理物の本来持っている保有糖度、果肉強度、外皮強度、耐熱温度、外皮から中心までの距離等に依存する。
そのために、事前準備として図2に示す予備工程22を行って、最適な浸漬時間及びそれ以外の調整パラメータを決定する。予備工程では、被処理物と同じ種類でほぼ同じ物性(産地、質量、等級、収穫時期等)を持つテスト品に対して、同じ容器32を用いて、中心部の糖度と周辺部の糖度とをそれぞれ測定するセンサ94、96を設け、中心部の糖度と周辺部の糖度との差異が所定値または所定範囲内に到達し(ステップS14)、且つ中心部の糖度が所定値または所定範囲内に到達する(ステップS16)までの浸漬時間を測定し、記憶する(ステップS18)。浸漬時間は、糖液34の糖度、糖液34の温度または容器32内の温度及び容器内圧力にも依存するので、これらの調整パラメータの値も適宜調整し(ステップS12)、記憶しながら(ステップS18)、浸漬時間を求めるとよい。そして、最終的に、最短の浸漬時間及び調整パラメータの値を決定、記憶する(ステップS22)。このステップS22の判定においては、浸漬時間が最短であることに優先して、被処理物に異常な軟化、形状保持性の悪化などが発生していないこと、被処理物の中心温度が所定温度以上に上昇して酵素の死滅が発生していないこと、を判定要素に加えるとよい。
一度、予備工程を行った後には、予備工程で得られた浸漬時間及びその他の調整パラメータを用いて、同じ種類のほぼ同じ物性を持つ被処理物について、熟度調整処理を行う。
次に、劣化防止工程14において、熟度調整工程後の被処理物を減圧下に晒すことによって、エチレンガスを最終除去して、熟度調整工程で調整された熟度の固定を図る。同時に、まだ残存する自由水の除去も図る。さらには、被処理物の表面を乾燥させ、真空中で気化潜熱を奪い、被処理物を冷却させる。表面を乾燥させることによって、容器から取り出した後も劣化スピードを大幅に遅延させることができる。また、冷却効果によっても劣化スピードを大幅に遅延させることができる。
そのために、糖液を容器から排出するか、または、図6に示すように被処理物を糖液から上方に取り出して、被処理物を減圧下で気体中に裸のまま露出させる。こうして同じ容器32内で、熟度調整処理に引き続き処理を行うことができるので、被処理物を外気と接触させることがなく、酸化防止を図ることができる。
この劣化防止工程14における圧力は、熟度調整工程12と比較して、被処理物の軟化防止または形状保持を保てる範囲で、さらに減圧して真空度を高めるとよい。これによって、被処理物内にさらに残存するエチレンガス及び自由水の排出を促進することができる。
処理時間は、高真空化によって、被処理物表面から水分を蒸発させ、被処理物全体の温度を低下させると共に表面に薄い乾燥膜が形成される程度の時間とするとよい。
被処理物の冷却温度は、0〜10℃程度、好ましくは、3〜6℃までとするとよい。この冷却効果によって、次の工程である冷凍工程16の凍結時間も短縮することができる。例えば、常温20℃から−35℃まで冷凍すると仮定すると、温度差ΔT=55℃分の熱量を必要とするが、この劣化防止工程14で、+5℃まで冷却すると仮定すると、温度差ΔT=40℃となり、大幅に必要熱量を低減させることができる。
次に、冷凍工程16において、劣化防止処理後の被処理物を冷凍する。そのために被処理物を冷却器を内部に有する冷却装置内に設置する。
この冷凍にあたっては、好ましくは、予め得られた、被処理物の中心温度と、冷却装置内の空間の温度、被処理物の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度のいずれかの温度との関係に基づき、被処理物の冷却過程において、被処理物の中心温度と、前記空間の温度、被処理物の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差を一定に保持しつつ被処理物の中心温度を低下させる過程を持つように、冷媒の温度及び/又は冷媒の流量を時間的に変化させながら、被冷却物の冷却を行うようにするとよい。
このように、被処理物の中心温度と、空間の温度、被処理物の表面温度及び冷却器を通過する冷媒の温度の中から選択されるいずれかの温度との差が広がらないようにすることによって、被処理物の中心部温度と表面温度との間での温度差の大きさに比例する熱移動と同時に発生する水分の移動を防ぐ。また、被処理物の冷却を促進して冷却にかかる時間を短縮することができる。
次いで、冷凍工程で所望の温度、例えば、−35℃まで冷却した後は、保存工程18で凍結保存し、任意の使用時に解凍工程20で解凍する。
図3は、熟度調整工程と劣化防止工程とを行うことができる本発明の青果長期保存処理装置30である。装置30は、糖液34を保持可能で開閉可能となり気密的に密閉可能となった容器32を備える。容器32内には、被処理物を載置可能な保持棚36が配置可能となっている。
容器32には、容器内部を減圧するための真空化手段40と、容器内部の糖液34の温度を一定に保持するための糖液温度保持手段42と、容器32内の糖液を供給するための糖液供給手段44と、容器32内の糖液を回収するための糖液排出手段46とが接続される。
真空化手段40は、凝集器50と、真空発生器52と、真空発生器52を駆動するインバータ54とを備える。糖液温度保持手段42は、ポンプ60と、ポンプ60を駆動するインバータ62と、開閉弁64と、熱交換器66と、を備える。糖液供給手段44は、糖液タンク70と、タンク70内の糖液を保温するヒータ72と、ポンプ74と、を備える。また、糖液排出手段46は、糖液温度保持手段42のポンプ60と、開閉弁76と、糖液供給手段44の糖液タンク70によって構成される。
さらに容器32には、容器32内の圧力を検出する真空計80と、糖液の温度を検出する糖液温度センサ82(または容器内温度を測定する温度センサ)と、糖液の糖度を検出する糖度計84とが接続されており、各センサからの信号は制御器90へと送られて、制御器90からはインバータ54及び62への制御信号が出力される。
作業にあたっては、予め糖液タンク70内で、前記糖度調整工程に適した設定温度にヒータ72によって保温され十分に攪拌されて均一濃度となった糖液34を、ポンプ74を作動して容器32内に供給し、所定の液面高さまで注入する。次いで、容器32を開けて、被処理物に載置した保持棚36をそのまま糖液34内へと沈める。好ましくは、液面から5mm以上、被処理物が埋没するようにするとよい。次いで、容器32を密閉して、熟度調整工程を開始する。
真空化手段40は、容器32内の圧力を前記糖度調整工程に適した設定圧力になるように真空引きしており、真空計80からの信号に基づく制御器90からの制御信号によってインバータ54を制御し、真空発生器52を作動する。
また、糖液温度保持手段42は、容器32内の糖液の温度が前記糖度調整工程に適した設定温度を維持するように、開閉弁64を開けて、容器32内の糖液と熱交換器66との間を循環させており、糖液温度センサ82からの信号に基づく制御器90からの制御信号によってインバータ62を制御しポンプ60を作動して、循環流量を調整する。尚、糖液温度保持手段42としては、糖液を循環させる代わりに、直接容器30にヒータを設けて直接容器30内の糖液をヒータによって加熱するようにしてもよい。
また、糖度計84からの信号によって制御部90は、検出された糖度が予め決められた範囲内にあるかどうかを監視する。糖度が範囲を超える場合には、ポンプ74を作動して、糖液タンク70からの糖液の補充を行う。
こうして、保持棚36に載置される被処理物Fを予め決められた浸漬時間、そのままに維持した後、開閉弁64を閉じ開閉弁76を開けてポンプ60を駆動して、容器32内の糖液を糖液タンク70へと戻す。
次いで、真空化手段40でさらに減圧して、劣化防止工程に連続的に移行する。所定時間、減圧下に晒した後、容器32を開けて被処理物を取り出せば、次の冷凍工程に供することができる。尚、真空化手段40による真空度の調整は、インバータ54による制御の他に、容器32内部と真空発生器52との間の流量の調整によって行うこともできる。
このように本装置30によれば、熟度調整工程と劣化防止工程とを連続して行うことができる。
また、同じ本装置30を使用して予備工程を行うこともできる。図4は、予備工程を行なう際の状態を示す説明図である。この予備工程では、被処理物の中心部の糖度を測定する中心部糖度計94、被処理物の周辺部の糖度を測定する周辺部糖度計96、被処理部の中心部の温度を測定する中心部温度計98を備えると共にこれらのセンサの信号は、マイクロコンピュータで構成される解析器92へと送られる。
解析器92では、圧力、糖液温度を適宜変更しながら、前記中心部糖度計94、96で検出される糖度及び中心部温度計98で検出される温度を測定して、前述の図2の予備工程を行うことができる。決定された浸漬時間を含む調整パラメータは解析器92に格納された後、制御器90に設定される。
図5及び図6は、本発明の青果長期保存処理装置30の変形例を表す主要部の図である。図示を省略した部分は、図3の構成と同じであるので、説明も省略する。
この例では、容器32内外部を貫通して昇降手段100が設けられている。該昇降手段100は、シリンダ等の駆動手段を有し、保持棚36を糖液内と糖液外との間で昇降可能としている。この実施形態では、熟度調整工程が終了した時点で、昇降手段100が作動して、保持棚36を上昇させることで、劣化防止工程に移行することができる。
柿をサンプルに用いて以下の実験を行った。柿の標準的な糖度は、Brix16以上で、Brix25で完熟とされており、一般的に糖度がBrix20を越えると、甘さを強く感じる。平均的な水分含有量は84%前後である。細胞強度は、若い未完熟のものは硬く、完熟になる程、軟化する。
1. サンプルは以下の3個(以下、サンプルA,B,Cという)を用意した。
・「富有柿」中型
・糖度Brix15.4
・質量(皮ヘタ付き):サンプルA:210g、B:212g、C:213g
2. 手順
サンプルCは、糖度、熟度の判定に使用し、サンプルAに対しては熟度調整工程、冷凍工程及び解凍工程を行い、サンプルBに対しては熟度調整工程、劣化防止処理工程、冷凍工程及び解凍工程を行った。
3. 熟度調整工程
サンプルA、B共に、同一の処理容器内に入れて以下の条件で熟度調整処理を行った。
・設定圧力(ゲージ圧):−0.085MPa
・糖液温度:20±1℃
・糖液糖度:Brix36.0
以上の糖液中にサンプルA,B,Cを保持棚に載せて保持棚毎、埋没させた。時間経過と共にその果実中心の糖度はサンプルCにおいて次のように変化した。
Figure 0004327882
4.劣化防止工程
サンプルBに対して以下の条件で劣化防止処理を行った。
・処理容器から糖液を排出した後、棚中に露出放置し、真空度が−0.098MPa(ゲージ圧)に到達後、6分保持した。
サンプルCについて時間の経過と共に果実中心温度と果実中心糖度の変化を観察した。
Figure 0004327882
5.冷凍処理
サンプルAは、前記熟度調整処理終了後、そのまま急速凍結を実施した。
冷凍条件
・+19.9℃から−35℃まで冷却(Δt=54.9℃)
・冷凍時間:78分30秒
サンプルBは、前記劣化防止処理終了後、急速凍結を実施した。
冷凍条件
・+5.1℃から−35℃まで冷却(Δt=40.1℃)
・冷凍時間:57分40秒
6.解凍処理
以下の条件でサンプルA及びBに対して解凍を実施した。
・外気温15.8℃、湿度44%
・大気放置、裸による解凍
解凍時の時間経過による質量変化を観察した。
Figure 0004327882
・観察結果
サンプルAについては、50分後位からドリップが発生しはじめた。サンプルBについては、ドリップ及び質量変化は全くなく、元の状態に戻った。
味覚、外観共に、旬の完熟柿と同じであった。
・考察結果
熟度調整処理によって、原形に近い形で復元することができるものの、完全にドリップを無くすことはできない。このドリップとしては、1.熟度調整中に果実表面に付着した水分、2.果肉中から遊離した自由水、3.自由水が完全に除去できずに凍結時に自由水によって細胞膜が破壊された細胞内からの水分、が考えられる。熟度調整処理によって果実内の糖度の均質化を図ることはできるものの、熟度を固定させるためには、劣化防止処理の工程を行うことがより望ましいことが分かる。つまり、劣化防止によって、外皮をわずかに乾燥させながら、真空冷却を行い、同時にエチレンガスを除去することが望ましい。
柿以外に実施可能な青果として、ぶどう、みかん、西洋ナシ(ラフランス)、イチゴその他ベリー類(ブルーベリー等)、栗、さくらんぼ(チェリー)、柑橘類(レモン(スライスレモン含む)、すだち、かぼす、ゆず、きんかん、温州みかん等)、ライチ、龍眼、メロン、パイナップル、マンゴ、パパイア、辛味大根、チェリートマト等、で、実施可能であることが確認された。各青果によって、調整パラメータを適宜、変更する必要はあるが、いずれも調整された熟度で復元されることが確認された。
本発明の青果長期保存処理の手順を表すフローチャートである。 本発明の予備工程を表すフローチャートである。 本発明の青果長期保存処理装置の全体構成を表す図である。 本発明の青果長期保存処理装置で予備工程を行うときの図である。 本発明の青果長期保存処理装置の変形例を表す主要部の図であり、熟度調整工程を行っているときの図である。 図5の青果長期保存処理装置の劣化防止工程を行っているときの図である。
符号の説明
12 熟度調整工程
14 劣化防止工程
16 冷凍工程
18 保存工程
22 予備工程
30 青果長期保存処理装置
32 容器
34 糖液
40 真空化手段
42 糖液温度保持手段
46 糖液排出手段
100 昇降手段

Claims (5)

  1. 青果を糖液に浸漬する熟度調整工程と、熟度調整後の青果を冷凍する冷凍工程と、冷凍した青果を凍結保存する保存工程と、を備える青果長期保存方法において、
    前記熟度調整工程と前記冷凍工程との間に、糖液から取り出した青果を糖液外で、減圧下で晒す劣化防止工程を設け
    前記熟度調整工程では、減圧下で青果を糖液に浸漬すると共に、前記劣化防止工程では、前記熟度調整工程における圧力よりもさらに圧力が低い減圧下で青果を晒すことを特徴とする青果長期保存方法。
  2. 前記熟度調整工程は、予め予備工程によって決められた、青果の中心部の糖度が所定糖度値または所定糖度範囲内に達し、且つ、青果の中心部と周辺部との糖度の差異が所定糖度差異値または所定糖度差異範囲内に達することができる減圧力及び浸漬時間に従って、浸漬を行うことを特徴とする請求項1記載の青果長期保存方法。
  3. 前記熟度調整工程は、予め予備工程によって決められた温度に糖液の温度を維持することを特徴とする請求項2記載の青果長期保存方法。
  4. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の熟度調整工程及び劣化防止工程を行うための、青果長期保存装置において、
    前記熟度調整工程中に糖液を内部に保持する容器と、
    前記熟度調整工程後で劣化防止工程前に容器内部の糖液を排出する糖液排出手段と、
    前記熟度調整工程中及び前記劣化防止工程中に容器内部を減圧する真空化手段と、
    を備え
    前記真空化手段は、熟度調整工程よりも劣化防止工程において容器内部をより低い圧力に減圧することを特徴とする青果長期保存装置。
  5. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の熟度調整工程及び劣化防止工程を行うための、青果長期保存装置において、
    前記熟度調整工程中に糖液を内部に保持する容器と、
    前記熟度調整工程後で劣化防止工程前に容器内部の糖液内に浸漬された青果を糖液上方に上昇させる昇降手段と、
    前記熟度調整工程中及び前記劣化防止工程中に容器内部を減圧する真空化手段と、
    を備え
    前記真空化手段は、熟度調整工程よりも劣化防止工程において容器内部をより低い圧力に減圧することを特徴とする青果長期保存装置。
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