JP4326194B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は空気入りタイヤに関する。より詳細には、本発明は、良好な制動性能を発揮する空気入りタイヤに関し、特に、広い温度範囲において良好な制動性能を発揮する空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
タイヤ関連技術分野においては、タイヤに対して求められる本質的な要求特性として、制動性能の更なる向上が継続的に求められている。しかしながら、従来は、ゴムの物性値とタイヤの制動性能との関係が必ずしも明確に把握されておらず、タイヤにおいて所望の制動性能を達成するためにゴムの物性値を如何に制御すべきかが不明確であったために、多大な労力及び時間を費やして、いわば試行錯誤的に様々な配合処方(例えば、ゴム成分、充填材等)のゴム組成物を使用して、所望の制動性能を達成し得る配合処方を見出そうとする努力が払われてきたのが実状である。
【0003】
一方、学術的な見地からは、例えば、Grosch, K. A.; Rubber Chem. And Technol., 37, 386 (1964)、Ludema, K. C., Tabor, D.; Wear, 9, 329 (1966) 、及びMoore, D. F.; "The Friction and Lubrication of Elastomers", Pergamon Press Ltd., Oxford, p. 14 (1972) において記載されているように、ゴムの摩擦力には、ゴムの変形又はヒステリシスロスに起因するヒステリシスの項及びゴムと被接触面(例えば、路面)との間での相互作用によって生ずる凝着の項が寄与することが知られている。
【0004】
また、濡れた路面上でのタイヤと路面との間での摩擦等の、ウェットな環境におけるゴムと被接触面との間での摩擦においては、ゴムと被接触面との直接的な接触が、介在する水膜によって妨げられるために、上記凝着の項の寄与は小さく、相対的に、上記ヒステリシスの項の寄与が大きいと考えられてきた。
【0005】
しかしながら、例えば、日本ゴム協会誌、第74巻、第11号(2001年)の第443頁に掲載されている「シリカ配合およびカーボン配合SBRの摩擦機構に関する研究 第2報 ぬれ面との摩擦」と題された網野直也氏、内山吉隆氏、及び岩井智昭氏の研究論文をはじめとする近年の研究により、例えば、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)作動時等の、タイヤと路面との間での相対速度が比較的低い場合においては、タイヤと路面との間での摩擦力に上記凝着の項もある程度寄与しており、このような場合においては、上記凝着の項の寄与も無視することはできないことが判明してきた。
【0006】
以上より、ゴム製タイヤにおいて所望の制動性能を達成するためには、ゴムと被接触面との間での摩擦力における上記ヒステリシスの項及び上記凝着の項の寄与を適切に制御して、所望の摩擦力を達成することが肝要であるが、上記ヒステリシスの項及び上記凝着の項の寄与を如何に制御すべきか、並びに上記ヒステリシスの項及び上記凝着の項の寄与を適切に制御するためにはゴムの物性値を如何に制御すべきかという点については、当該技術分野において必ずしも具体的には明らかにされていない。
【0007】
従って、当該技術分野においては、上記ヒステリシスの項及び上記凝着の項の寄与を如何に制御すべきか、並びに上記ヒステリシスの項及び上記凝着の項の寄与を適切に制御するためにはゴムの物性値を如何に制御すべきかという点を具体的に明らかにして、良好な制動性能を発揮する空気入りタイヤを得ようとする要求が存在する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、広い温度範囲において良好な制動性能を発揮する空気入りタイヤを提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記本発明の目的は、温度t[℃]におけるゴム組成物の摩擦指数Ftを、以下の式(A):
【数2】
【0010】
【数2】
【0011】
(上式中、E’t及びtanδtは、それぞれ、温度t[℃]において、周波数20Hz、静歪み10%、動歪み±0.5%の条件下で粘弾性スペクトロメーターを使用して測定されるゴム組成物の貯蔵弾性率E’[MPa]及び損失正接tanδであり、Tbtは、温度t[℃]において、JIS K 6251に準拠して測定されるゴム組成物の破断引張強さTb[MPa]である)
によって定義し、想定される路面の平均温度をs[℃]として定義する場合に、
トレッド部において使用されるゴム組成物において、t=s−20の場合の前記摩擦指数FtであるFs−20が、以下の式(1):
Fs−20 ≧ 1.0 (1)
を満足すると共に、
t=s−10の場合及びt=s−30の場合の前記摩擦指数F t であるF s-10 及びF s-30 、並びに前記F s-20 が、以下の式(2):
F s−10 ≧F s−20 ≧F s−30 ≧0.65×F s−20 (2)
を満足することを特徴とする空気入りタイヤによって達成される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、ゴムの変形又はヒステリシスロスに起因するヒステリシスの項及びゴムと被接触面(例えば、路面)との間での相互作用によって生ずる凝着の項のゴムの摩擦力に対する寄与に関して鋭意研究を行ってきた結果、ゴムの特定の物性値を特定の条件を満たすように制御することによって、所望の摩擦力を有するゴム組成物を得ることができることを見出したことに因るものである。
【0014】
より具体的には、温度t[℃]におけるゴム組成物の摩擦指数Ft を、以下の式(A):
【0015】
【数3】
【0016】
(上式中、E't及びtanδt は、それぞれ、温度t[℃]において、周波数20Hz、静歪み10%、動歪み±0.5%の条件下で粘弾性スペクトロメーターを使用して測定されるゴム組成物の貯蔵弾性率E' [MPa ]及び損失正接tanδであり、Tbt は、温度t[℃]において、JIS K 6251に準拠して測定されるゴム組成物の破断引張強さTb[MPa ]である)
【0017】
によって定義し、想定される路面の平均温度をs[℃]として定義する場合に、トレッド部において使用されるゴム組成物において、t=s−20の場合の前記摩擦指数Ft であるFs-20が、以下の式(1):
Fs-20 ≧ 1.0 (1)
を満足するように、t=s−20の場合の上記貯蔵弾性率E's-20 、損失正接tanδs-20、及び破断引張強さTbs-20の各物性値を制御することによって、上記想定される路面の平均温度s[℃]において良好な制動性能を有する空気入りタイヤを得ることができることが見出された。
【0018】
因みに、上記式(A)の右辺の第1項、すなわち下式:
【0019】
【数4】
【0020】
の部分は、ゴム組成物のヒステリシスの摩擦力と関連する項であり、上記式(A)の右辺の第2項、すなわち下式:
【0021】
【数5】
【0022】
の部分は、ゴム組成物の凝着の摩擦力と関連する項である。これらの各摩擦力の和である上記式(A)の左辺、すなわちFt は、ゴム組成物の摩擦力と関連する摩擦指数であり、この値が大きいほど摩擦力が高いゴム組成物であることを表し、かかるゴム組成物をトレッド部に配置することにより、良好な制動性能を有する空気入りタイヤを提供することができる。
【0023】
尚、温度t[℃]におけるゴム組成物の摩擦指数Ft を増大させて、上記式(1)を満足させるには、式(A)の内容からも明らかであるように、温度t[℃]において測定されるゴム組成物の貯蔵弾性率E'tを小さく、損失正接tanδt 及び破断引張強さTbt を大きくする必要がある。
【0024】
ここで、上記式(1)を満足させるべく、ゴム組成物の貯蔵弾性率E' 、損失正接tanδ、及び破断引張強さTbを制御するための方法の一例を以下に例示するが、これらの方法はあくまでも一例として例示するものであり、本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部において使用されるゴム組成物の貯蔵弾性率E' 、損失正接tanδ、及び破断引張強さTbを制御するための方法がこれらに限定されるものと解されるべきではない。
【0025】
先ず、ゴム組成物の損失正接tanδt 及び破断引張強さTbt を大きくするには、補強性が高い、小粒径のカーボンブラックをゴム組成物に配合することが望ましい。具体的には、100〜300[m2/g]、好ましくは110〜250[m2/]gの窒素吸着比表面積(N2 SA)を有するカーボンブラックをゴム組成物に配合することが望ましい。カーボンブラックは、当該技術分野においてよく知られている好適な配合量で配合することができる(例えば、日本ゴム協会誌、第67巻(1994年)の第391頁に掲載されている曽根一祐氏の研究論文を参照されたい)。
【0026】
また、損失正接tanδt 及び破断引張強さTbt を大きくするために、上記ゴム組成物におけるゴム成分として高分子量のジエン系ゴムを使用してもよい。具体的には、本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部において使用されるゴム組成物のゴム成分100重量部のうち50重量部以上、好ましくは55重量部以上を、60万以上、好ましくは70万以上の重量平均分子量(Mw )を有するジエン系ゴムが占めているのが望ましい。
【0027】
一方、上記の如くカーボンブラックを配合することによってゴム組成物の損失正接tanδt 及び破断引張強さTbt を大きくする場合、一般に、当該ゴム組成物の貯蔵弾性率E'tが大きくなる傾向がある。大きい損失正接tanδt 及び破断引張強さTbt を維持しつつ、貯蔵弾性率E'tを低減させるには、ゴム組成物にシリカを配合することが望ましい。シリカは、ゴム組成物において一般的に配合される構成成分の1種であるカーボンブラックの一部を置き換えて配合してもよい。シリカもまた、当該技術分野においてよく知られている好適な配合量で配合することができる。
【0028】
上述の各種方法の1つ以上及び/又はその他の方法の1つ以上を利用して、空気入りタイヤのトレッド部において使用されるゴム組成物の貯蔵弾性率E' 、損失正接tanδ、及び破断引張強さTbを制御することによって、当該ゴム組成物において、t=s−20(sは、想定される路面の平均温度をs[℃])の場合の前記摩擦指数Ft であるFs-20に上記式(1)を満足させることにより、上記想定される路面の平均温度s[℃]において良好な制動性能を有する空気入りタイヤを得ることができる。
【0029】
ところで、摩擦指数Ft は、一般に、温度tの低下に伴って低下する傾向が認められるので、より広い温度範囲において良好な制動性能を有する空気入りタイヤを提供するためには、t=s−10の場合及びt=s−30の場合の前記摩擦指数Ft であるFs-10及びFs-30、並びに前記Fs-20が、以下の式(2):
Fs-10 ≧ Fs-20 ≧Fs-30 ≧ 0.65×Fs-20 (2)
を満足することが重要であることが見出された。
【0030】
因みに、温度tの低下に伴う摩擦指数Ft の低下は、温度tの低下に伴うゴム組成物の貯蔵弾性率E'tの増大に因るところが大きいと考えられる。従って、ゴム組成物において上記式(2)を満足させるためには、温度tの低下に伴うゴム組成物の貯蔵弾性率E'tの増大を抑制することが肝要である。この、温度の低下に伴うゴム組成物の貯蔵弾性率E'tの増大を抑制する目的のためにも、上述の如くゴム組成物にシリカを配合することは望ましい。
【0031】
また、ゴム組成物において上記式(2)を満足させるためには、ゴム組成物の損失正接tanδt を高いレベルで維持することも有効である。この目的を達成するためには、ゴム組成物におけるゴム成分のガラス転移温度Tg を適切な範囲内に制御するのが望ましい。望ましいTg の範囲は、平均で、s−50〜s−40[℃]、好ましくはs−48〜s−42[℃]である。
【0032】
上述の各種方法の1つ以上及び/又はその他の方法の1つ以上を利用して、空気入りタイヤのトレッド部において使用されるゴム組成物の貯蔵弾性率E' 、損失正接tanδ、及び破断引張強さTb、並びにをゴム組成物におけるゴム成分のガラス転移温度Tg を制御することによって、当該ゴム組成物において、t=s−30、s−20、及びs−10(sは、想定される路面の平均温度をs[℃])の場合の前記摩擦指数Ft であるFs-30、Fs-20、及びFs-10に上記式(1)及び(2)を満足させることにより、上記想定される路面の平均温度s[℃]を中心とする、より広い温度範囲において、良好な制動性能を有する空気入りタイヤを得ることができる。
【0033】
従って、例えば、想定される路面の平均温度が10℃である場合(s=10)には、上述の各種方法の1つ以上及び/又はその他の方法の1つ以上を利用して、空気入りタイヤのトレッド部において使用されるゴム組成物の貯蔵弾性率E' 、損失正接tanδ、及び破断引張強さTbを制御することによって、t=−10(t=s−20)の場合の前記摩擦指数Ft であるF-10 において、F-10 ≧1.0(上記式(1)に該当する)を満足させることにより、上記想定される路面の平均温度である10℃において良好な制動性能を有する空気入りタイヤを得ることができる。
【0034】
また、上記の如く、想定される路面の平均温度が10℃である場合(s=10)に、より広い温度範囲において良好な制動性能を有する空気入りタイヤを提供しようとする場合には、上記各物性値に加えて、空気入りタイヤのトレッド部において使用されるゴム組成物のゴム成分のTg をも制御することによって、t=−20、−10、及び0の場合の前記摩擦指数Ft であるF-20 、F-10 、及びF0 において、F0 ≧F-10 ≧F-20 ≧0.65×F-10 (上記式(2)に該当する)をも満足させることにより、上記想定される路面の平均温度である10℃を中心とする、より広い温度範囲において、良好な制動性能を有する空気入りタイヤを得ることができる。
【0035】
本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部において使用されるゴム組成物において使用されるゴム成分としては、上記規定を満足する限りにおいては特に限定されず、天然ゴム(NR)またはジエン系合成ゴムのいずれか、あるいはこれらの混合系を用いることができる。ジエン系合成ゴムとしては、例えば、各種ブタジエンゴム(BR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム等が挙げられる。特に好ましいゴム成分は、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)である。
【0036】
本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部において使用されるゴム組成物において使用されるカーボンブラックは、上記規定を満足する限りにおいては特に限定されず、当該技術分野において既知のものを、当該技術分野において知られている好適な配合量で配合することができる。
【0037】
本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部において使用されるゴム組成物において使用されるシリカもまた、本発明の目的に反しない限り、当該技術分野において既知のものを、当該技術分野において知られている好適な配合量で配合することができる。
【0038】
本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部において使用されるゴム組成物には、更に、充填材、プロセスオイル、可塑剤、軟化剤、加硫助剤、加硫促進剤、加硫活性化剤、老化防止剤等、及び/又はゴム配合技術分野において一般的に使用される他の各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0039】
本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部において使用されるゴム組成物は、公知のゴム用混練機械(例えば、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等)を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0040】
以下に記載する比較例及び実施例によって本発明を更に詳しく説明するけれども、本発明の技術的範囲は、これらの例に限定されるものではない。
【0041】
【実施例】
比較例1及び2並びに実施例1及び2
配合成分
後述する各種試験片及び各種試験タイヤのトレッド部を構成する各種ゴム組成物の調製において使用される各種配合成分を、以下に列記する。
【0042】
スチレン−ブタジエン共重合体ゴム1(SBR−1):日本ゼオン株式会社製「Nipol 9528」(Tg =−35℃、Mw =80万)
スチレン−ブタジエン共重合体ゴム2(SBR−2):溶液重合SBR試作品(Tg =−30℃、Mw =100万)
スチレン−ブタジエン共重合体ゴム3(SBR−3):日本ゼオン株式会社製「Nipol 1502」(Tg =−51℃、Mw =52万)
スチレン−ブタジエン共重合体ゴム4(SBR−4):日本ゼオン株式会社製「Nipol 9529」(Tg =−20℃、Mw =65万)
スチレン−ブタジエン共重合体ゴム5(SBR−5):旭化成工業株式会社製「タフデン 1000」(Tg =−70℃、Mw =43万)
【0043】
上記各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴムの中で、溶液重合SBR試作品として記載されているSBR−2(Tg =−30℃、Mw =100万)は、以下の手順によって得られたものである。撹拌機能を備えたオートクレーブに、シクロヘキサン8000g、スチレン600g、ブタジエン1600g、及びテトラヒドロフラン700ミリモルを装填した後、n−ブチルリチウム12ミルモルを添加して、40℃において重合を開始させた。重合転化率が100%に達したことを確認の上、停止剤としてメタノールを20ミリモル添加し、更に2,6−ジ−t−ブチルフェノールを20g添加してから、水蒸気ストリッピング法(スチームストリッピング法)によって、所望の重合体を回収した。
【0044】
天然ゴム(NR):RSS 3号
カーボンブラック1(CB−1):三菱化学株式会社製「ダイアブラック H」(N2 SA=80m2/g)
カーボンブラック2(CB−2):三菱化学株式会社製「ダイアブラック A」(N2 SA=140m2/g)
シリカ:日本シリカ工業株式会社製「Nipsil AQ」
シランカップリング剤(Si−69):Degussa社製「Si−69」
プロセスオイル:昭和シェル石油株式会社製「デソレックス 3号」
【0045】
ワックス:大内新興化学工業株式会社製「サンノック」
老化防止剤(6PPD):Flexsys社製「SANTOFLEX 6PPD」(N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン)
亜鉛華:正同化学工業株式会社製「酸化亜鉛 3種」
ステアリン酸:日本油脂株式会社製「ビーズステアリン酸」
硫黄:株式会社軽井沢精錬所製「油処理硫黄」
加硫促進剤(CZ):Flexsys社製「SANTOCURE CZ」(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド)
【0046】
各種試験片及び各種試験タイヤの調製
以下の表Iに示す硫黄及び加硫促進剤以外の成分を、以下の表Iに示す配合量で、バンバリーミキサー及び練りロール機で混合混練し、165±5℃に達したときにマスターバッチを放出した。このマスターバッチに、以下の表Iに示す配合量の硫黄及び加硫促進剤を添加し、14インチのオープンロールで混練して、比較例1及び2並びに実施例1及び2のゴム組成物を得た。次に、各種ゴム組成物を、15×15×0.2cmの金型中で160℃において15分間プレス加硫して、目的とする各種試験片を調製した。
【0047】
更に、上記比較例1及び2並びに実施例1及び2のゴム組成物をトレッド部に使用して、当該技術分野において知られている従来の成形・加硫方法によって、205/65R15サイズの乗用車用タイヤを製造し、それぞれ、比較例1及び2並びに実施例1及び2の試験タイヤとした。
【0048】
【表1】
【0049】
各種試験片の加硫物性の測定
上記各種試験片の各種加硫物性を、以下の試験方法に従って測定した。
【0050】
1)貯蔵弾性率E' 及び損失正接tanδ:
上記各種試験片について、周波数20Hz、静歪み10%、動歪み±0.5%の条件下で粘弾性スペクトロメーターを使用して、貯蔵弾性率E' [MPa ]及び損失正接tanδを測定した。温度t[℃]における貯蔵弾性率E' [MPa ]及び損失正接tanδを、それぞれ、E't及びtanδt として表記する。
【0051】
2)破断引張強さTb:
上記各種試験片(ダンベル状3号型とした)について、JIS K 6251に準拠して、破断引張強さTb[MPa ]を測定した。温度t[℃]における破断引張強さTb[MPa ]を、Tbt として表記する。
【0052】
3)摩擦指数F:
上記各種試験片について、上記の如く測定される貯蔵弾性率E' 、損失正接tanδ、及び破断引張強さTbを、上述の式(A)に当てはめることによって、摩擦指数Fを算出した。温度t[℃]における摩擦指数Fを、Ft として表記する。
【0053】
尚、比較例1及び2並びに実施例1及び2については、路面の平均温度sを10℃と想定し、上記貯蔵弾性率E' 、損失正接tanδ、及び破断引張強さTbを、0℃、−10℃、及び−20℃において測定して、それぞれの温度において測定された貯蔵弾性率E' 、損失正接tanδ、及び破断引張強さTbから、それぞれ、摩擦指数F0 、F-10 、及びF-20 を算出した。
【0054】
各種試験タイヤの制動性能の測定
上記各種試験タイヤの制動性能を、以下の試験方法に従って測定した。
【0055】
4)制動距離:
上記の如く製造した比較例1及び2並びに実施例1及び2の各試験タイヤを、それぞれ、正規空気圧で、正規リムに組み込み、2500ccの乗用車に装着し、水深3mmの路面(ウェット環境)において、初速100km/hからABSを作動させて急制動し、ブレーキを踏んでから停止するまでの距離[m]を測定して、比較例1における制動距離を100とした指数によって表示した。この指数が大きいほど、制動距離が短く、制動性能が良好であることを意味する。
【0056】
尚、以下の表IIにおいては、12℃及び28℃の平均路面温度における上記制動距離を、それぞれ、「BD12」及び「BD28」と略記する。
【0057】
上記各種試験片及び各種試験タイヤについての、上記1)〜4)の各加硫物性及び制動性能の測定結果を、以下の表IIに示す。
【0058】
【表2】
【0059】
各加硫物性及び制動性能の測定結果の評価
比較例1の試験片は、ゴム成分100重量部のうち、80重量部をSBR−1が、20重量部をNRが占める、トレッド部用ゴム組成物として一般的な組成を有する比較用のゴム組成物を使用して調製した試験片である。
【0060】
この比較例1のゴム組成物は、ゴム成分の重量平均分子量(Mw )及びガラス転移温度(Tg )に関しては本発明の好ましい態様に係る規定を満足しているものの、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2 SA)が本発明の好ましい態様に係る規定を下回っている。結果的に、F-10 の値が0.935と、式(1)の関係を満足しておらず、比較例1のゴム組成物をトレッド部において使用した比較例1の試験タイヤの制動距離は、更なる改良が必要なレベルであった。
【0061】
比較例2の試験片は、ゴム成分として、ゴム成分100重量部のうち、50重量部をSBR−4が、50重量部をSBR−2が占めるものを使用し、かつ、プロセスオイルの配合量を、ゴム成分100重量部に対して25重量部から35重量部に増量したことを除き、上記比較例1のゴム組成物と同じ組成を有する比較用のゴム組成物を使用して調製した試験片である。
【0062】
この比較例2のゴム組成物は、ゴム成分の重量平均分子量(Mw )に関しては本発明の好ましい態様に係る規定を満足しているものの、ガラス転移温度(Tg )に関しては本発明の好ましい態様に係る規定を満足しておらず、また、上記比較例1と同様に、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2 SA)についても本発明の好ましい態様に係る規定を下回っている。結果的に、F-10 及びF-20 の値がいずれも大幅に低下し、式(1)の関係を満足しておらず、比較例2のゴム組成物をトレッド部において使用した比較例2の試験タイヤの制動距離は、高い路面温度(28℃)においては改良されたものの、低い路面温度(12℃)においては、逆に悪化してしまった。
【0063】
一方、実施例1の試験片は、比較例1のゴム組成物と比較して、ゴム成分を、ゴム成分100重量部のうち、65重量部をSBR−2が、35重量部をSBR−3が占めるものに変更、かつ、カーボンブラックをより小粒径のものに変更して、その配合量を低減する代わりに、シリカ及びシランカップリング剤(Si−69)の配合量を倍増させた、本発明に係るゴム組成物を使用して調製した試験片である。
【0064】
この実施例1のゴム組成物は、ゴム成分の重量平均分子量(Mw )及びガラス転移温度(Tg )、並びにカーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2 SA)が本発明の好ましい態様に係る規定を満足しており、更に、シリカの配合量も倍増されている。結果として、実施例1の試験片のF0 、F-10 、及びF-20 の値はいずれも式(1)及び式(2)の関係を満足し、実施例1のゴム組成物をトレッド部において使用した実施例1の試験タイヤの制動距離は、高い路面温度(28℃)及び低い路面温度(12℃)の両方において大幅に改良された(制動距離が短くなった)。
【0065】
更に、実施例2の試験片は、ゴム成分として、ゴム成分100重量部のうち、70重量部をSBR−2が、30重量部をSBR−5が占めるものを使用したことを除き、上記実施例1のゴム組成物と同じ組成を有する、本発明に係るゴム組成物を使用して調製した試験片である。
【0066】
この実施例2のゴム組成物もまた、ゴム成分の重量平均分子量(Mw )及びガラス転移温度(Tg )、並びにカーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2 SA)が本発明の好ましい態様に係る規定を満足しており、更に、シリカの配合量も比較例1と比較して倍増されている。結果として、実施例2の試験片においても、F0 、F-10 、及びF-20 の値はいずれも式(1)及び式(2)の関係を満足し、実施例2のゴム組成物をトレッド部において使用した実施例2の試験タイヤの制動距離もまた、比較例1と比較して、高い路面温度(28℃)及び低い路面温度(12℃)の両方において大幅に改良された(制動距離が短くなった)。
【0067】
以上より、路面の平均温度がs[℃]として想定される場合に、上記の式(A)によって定義される温度t[℃]におけるゴム組成物の摩擦指数Ft が、上記の式(1)及び(2)を満足するように、s−10、s−20、及びs−30[℃]の各温度におけるゴム組成物の貯蔵弾性率E' [MPa ]及び損失正接tanδ、並びに破断引張強さTb[MPa ]を制御することによって、当該ゴム組成物がトレッド部において使用される空気入りタイヤにおいて、所望の制動性能を発揮させることができることが明らかとなった。
【0068】
尚、上記の例においては、トレッド部に使用されるゴム組成物を構成するゴム成分の重量平均分子量及びガラス転移温度、カーボンブラックの窒素吸着比表面積、並びにシリカの配合量を適切に調整することによって、当該ゴム組成物の貯蔵弾性率E' [MPa ]及び損失正接tanδ、並びに破断引張強さTb[MPa ]を制御したが、これらの物性値を制御するための手段がこれらに限定されるものではないことは既に述べた通りである。
【0069】
【発明の効果】
本発明により、良好な制動性能を発揮する空気入りタイヤ、特に、広い温度範囲において良好な制動性能を発揮する空気入りタイヤが提供される。
Claims (2)
- 温度t[℃]におけるゴム組成物の摩擦指数Ft を、以下の式(A):
によって定義し、想定される路面の平均温度をs[℃]として定義する場合に、
トレッド部において使用されるゴム組成物において、t=s−20の場合の前記摩擦指数Ft であるFs-20が、以下の式(1):
Fs-20 ≧ 1.0 (1)
を満足し、かつ、t=s−10の場合及びt=s−30の場合の前記摩擦指数F t であるF s-10 及びF s-30 、並びに前記F s-20 が、以下の式(2):
F s-10 ≧ F s-20 ≧F s-30 ≧ 0.65×F s-20 (2)
を満足することを特徴とする、空気入りタイヤ。 - s=10であることを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
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