JP4325511B2 - 内燃機関の過渡時燃料噴射制御方法 - Google Patents

内燃機関の過渡時燃料噴射制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、内燃機関の過渡時燃料噴射制御方法に関し、詳細には内燃機関に性状の異なる多種類の燃料を噴射する際の過渡時燃料噴射制御方法に関する。
性状の異なる2種類以上の燃料を任意の割合で機関に供給することが可能な内燃機関の燃料供給装置が知られている。例えば、燃料性状としてオクタン価の異なる2種類またはそれ以上の燃料を用いるような場合には、これら異なるオクタン価の燃料を予め定めた供給割合で供給することにより、機関に供給する燃料の全体としてのオクタン価を所望の値に調節することが可能となる。
このため、例えばノックが生じやすい運転状態ではオクタン価の高い燃料の供給割合を増大して、機関に供給する燃料のオクタン価を全体として高くすることによりノックを抑制したり、あるいは機関の冷間運転時にはオクタン価の低い燃料の供給割合を増大して燃焼を安定させる、等のように機関の運転状態に応じて燃料のオクタン価を最適な値に調整することが可能となる。
このように、性状の異なる2種類以上の燃料を機関に供給する場合には、例えばこれらの燃料のうち1種以上の燃料がポート燃料噴射弁から機関吸気ポートに噴射される構成では噴射された燃料のうち壁面に付着する燃料の量が燃料性状により異なるため問題が生じる場合がある。
吸気ポート壁面には吸気ポートに噴射された燃料が常時付着している。壁面に付着する燃料量は、機関の運転状態(燃料噴射量、壁面温度、吸入空気流速など)により変化する。従って、機関の運転状態が一定であれば壁面付着燃料量も一定となり変化しない。この場合には、吸気ポートに噴射される燃料量と吸気ポートから機関燃焼室に流入する燃料量とは等しくなる。
ところが、機関の加速や減速などが行われて機関運転状態が変化すると運転状態の変化に応じて壁面付着燃料量も変化する。例えば、機関加速時について考えると、加速時には燃料噴射量が負荷の増大に応じて増大する。ところが、燃料噴射量が増大するとそれに応じて壁面付着燃料量も増大するため、壁面付着燃料量が燃料噴射量に対応した量まで増大する間は、噴射した燃料の一部が壁面付着燃料量の増大に使われてしまい、燃料の増大量がそのまま機関燃焼室には供給されない状態が生じる。この状態は、壁面付着燃料量が燃料の増大に対応した量まで増大しそれ以上増大しなくなると解消し、吸気ポートに噴射された燃料量と燃焼室に供給される燃料量とは等しくなるものの、それまでの間は意図した量(増大後の燃料噴射量)の燃料を燃焼室に供給することができず、加速時に燃焼空燃比がリーン化する場合が生じ、機関排気性状が悪化したり加速性能が低下する問題が生じる。
通常、上述した壁面付着燃料量変化により実際に燃焼室に供給される燃料量が変動してしまうことを防止するため、機関の過渡運転時には吸気ポートへの燃料噴射量を壁面付着燃料量の変化量に相当する量だけ増減補正する、いわゆる燃料噴射量の壁面付着補正が行われている。
すなわち、例えば機関の加速時には壁面付着燃料量が増大して平衡状態に到達するまでの間、燃料噴射量は加速に要する燃料量に壁面付着燃料量の変化量(増大量)を加えた量に増量される。これにより、壁面付着燃料量の変化に影響を受けることなく実際に燃焼室に供給される燃料の量は意図した量に維持されるため、排気性状の悪化や加速性能の低下が生じることが防止される。
壁面に付着する燃料量は、吸気ポートに噴射される燃料の性状により異なってくる。例えば、沸点の低い燃料は壁面で気化しやすいため、同一の運転条件でも沸点の高い燃料より壁面に付着する燃料の量は少なくなる。
従って、使用する燃料の性状が異なる場合には、上述の機関加減速時の吸気ポート噴射燃料量の壁面付着補正における補正量も燃料性状に応じて変化させる必要がある。
例えば、沸点が高い燃料を使用している場合には壁面付着燃料量自体が大きいため加減速などの過渡運転時の壁面付着燃料量の変化量も沸点が低い燃料を使用している場合に較べて一般に大きくなる。このため、沸点が高い燃料を使用する場合には一般に燃料噴射量の壁面付着補正量を大きく設定する必要がある。
このように燃料の性状に応じて燃料噴射量の補正を行う燃料噴射装置の例としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
特許文献1の装置は、アルコール含有燃料を機関に供給する燃料供給制御に関するものであり、使用する燃料中のアルコール濃度に応じて、微粒化の程度や吸気通路内壁への付着量の相違を考慮した適正な燃料供給量制御を行うものである。
特開平5−5446号公報 特開2001−50070号公報 特開2003−129913号公報
特許文献1の装置は、アルコール含有燃料中のアルコール濃度の変化に応じて、例えば燃料噴射量の壁面付着補正量を変化させることにより燃料の性状変化にかかわらず機関への燃料供給量を適正に維持するようにしている。
ここで、特許文献1の装置では加減速などの機関運転状態の変化時(機関負荷が変化する過渡時、以下「負荷過渡変化時」と称する)の壁面付着燃料量変化に対する補正を燃料中のアルコール濃度の変化に応じて行っているものの、機関運転中にアルコール含有燃料中のアルコール濃度が変化することは考慮していない。
また、特許文献1の装置では燃料とアルコールとを所定の比率で予め混合したアルコール含有燃料(混合燃料)が使用されるため、壁面付着補正のための燃料噴射量の補正量も各成分(燃料及びアルコール)で一律の比率になり別々に設定することはできない。すなわち、壁面付着補正のために燃料供給量が全体として5パーセント増量される場合には、吸気ポートに供給される燃料もアルコールも一律に5パーセントずつ増量されることになる。
ところが、異なる性状の2種類以上の燃料を機関に供給する際に機関運転中に燃料の供給割合を変更すると、機関負荷に変化がない場合でも燃料供給割合変化に伴って壁面付着燃料量が変化する問題がある。
例えば、性状の異なる2種類の燃料AとBとを所定の供給割合で吸気ポートに噴射する機関の場合を考える。機関が負荷変化のない定常状態で運転されているときに上記所定の供給割合から燃料AとBとの供給割合が変更され、例えば燃料Aが増量されたとする。この場合には、機関負荷が変化しないように燃料Bの供給量は低減される。
ところが、前述したように機関負荷が変化していなければ、負荷過渡変化時の壁面付着補正は行われないため、燃料AとBとの供給量は直ちに増減されて変化後の供給量になる。
しかし、この場合でも実際には燃料Aの供給量(吸気ポートへの噴射量)は増大し、燃料Bの供給量は減少しているのであるから、燃料AとBとの壁面付着量はそれぞれの燃料噴射量の変化に応じて変化することになる。
このため負荷過渡変化時でない場合であっても燃料の供給割合変化時(以下、「燃料過渡変化時」という)には壁面付着燃料の変化が生じてしまう。すなわち、燃料過渡変化時には、燃料供給割合変化中及び変化後に壁面付着燃料量が平衡するまでは燃焼室に実際に供給される燃料Aの量は意図した量より少なくなり、燃料Bの量は意図した量より多くなり、正確に所望の供給割合(変更後の供給割合)の燃料を燃焼室に供給することができない。
このため実際には、特許文献1のように負荷過渡変化時だけでなく、定常運転中の燃料過渡変化時にも燃料噴射量の壁面付着補正を行う必要が生じるのである。
又、上記の例では燃料AとBとは性状が異なるため、燃料噴射量の変化に伴う壁面付着燃料の変化量も異なってくる。
このため、燃料噴射量変化に伴う壁面付着燃料量変化に対する各燃料噴射量の補正量も各燃料の性状に応じて異なる値にする必要があり、特許文献1の装置のように壁面付着補正量を一律に設定していると、正確な壁面付着補正を行うことができない問題がある。
また、負荷過渡変化時にも各燃料の噴射量が変更されるのであるから、燃料過渡変化時のみならず負荷過渡変化時にも各燃料の壁面付着補正を一律に行っていたのでは正確な壁面付着補正を行うことができない問題が生じるのである。
本発明は上記問題に鑑み、性状の異なる2種以上の燃料を任意の供給割合で機関に供給し、しかもそのうちの少なくとも1種の燃料を吸気ポートに供給する際に、燃料過渡変化時や負荷過渡変化時などのように、吸気ポートに供給する燃料の供給量が変化する場合の壁面付着補正を正確に行うことが可能な、内燃機関の過渡時燃料噴射制御方法を提供することを目的としている。
請求項1に記載の発明によれば、異なる性状の少なくとも2種類の燃料を任意の供給割合で機関に供給可能であり、かつ前記燃料のうち少なくとも2種類の燃料を燃料噴射弁から機関吸気ポートに噴射する内燃機関において、機関運転中に前記各燃料の供給割合を変更する際に、変更前と変更後の各燃料の供給割合の変化程度に応じて変更直後の所定期間前記吸気ポートに噴射される各燃料の噴射量を個別に補正する、内燃機関の過渡時燃料噴射制御方法であって、前記補正は、供給割合変更前と変更後の各燃料の供給割合に基づいて燃料供給割合の変化程度を表す変化程度パラメータを算出し、前記算出した変化程度パラメータを用いて、予め定めた関係に基づいて前記吸気ポートに噴射される各燃料の供給割合変更により生じる壁面付着燃料量の変化を算出し、前記壁面付着燃料の変化量に相当する量だけ前記吸気ポートに噴射される各燃料の噴射量を増減することによって行う、内燃機関の過渡時燃料噴射制御方法が提供される。
すなわち、請求項1の過渡時燃料噴射制御方法では燃料の供給割合が変更されたときには、供給割合の変化程度に応じて供給割合変更後の所定期間規模に噴射される燃料の噴射量が個別に補正される。このため、吸気ポートに噴射される燃料のそれぞれについて燃料性状に応じた壁面付着補正を行うことができ、燃料噴射量の正確な壁面付着補正が可能となる
なお、本発明は2種以上の燃料を個別の燃料噴射弁から、または混合して1つの燃料噴射弁から吸気ポートに噴射する場合、或いは筒内燃料噴射と吸気ポート噴射とを併用して異なる種類の燃料を機関に供給する場合、のどちらにも適用可能である。
請求項2に記載の発明によれば、更に、機関負荷変化による機関への燃料供給量の変化時に、各燃料の供給割合に基づいて前記各燃料の壁面付着燃料の変化量に相当する量だけ前記吸気ポートに噴射される各燃料の噴射量を個別に増減補正する、請求項1に記載の内燃機関の過渡時燃料噴射制御方法が提供される。
請求項3に記載の発明によれば、異なる性状の少なくとも2種類の燃料を任意の供給割合で機関に供給可能であり、かつ前記燃料のうち少なくとも2種類の燃料を燃料噴射弁から機関吸気ポートに噴射する内燃機関において、機関運転中に前記各燃料の供給割合を変更する際に、変更前と変更後の各燃料の供給割合の変化程度に応じて変更直後の所定期間前記吸気ポートに噴射される各燃料の噴射量を個別に補正する、内燃機関の過渡時燃料噴射制御方法であって、前記補正は、供給割合変更前と変更後の各燃料の供給割合に基づいて燃料供給割合の変化程度を表す変化程度パラメータを算出し、前記算出した変化程度パラメータを用いて、予め定めた関係に基づいて前記吸気ポートに噴射される各燃料の供給割合変更により生じる壁面付着燃料量の変化を算出し、前記壁面付着燃料の変化量に相当する量だけ前記吸気ポートに噴射される各燃料の噴射量を増減することによって行い、更に、機関負荷変化による機関への燃料供給量の変化時に、各燃料の供給割合に基づいて前記各燃料の壁面付着燃料の変化量に相当する量だけ前記吸気ポートに噴射される各燃料の噴射量を個別に増減補正する、内燃機関の過渡時燃料噴射制御方法が提供される。
すなわち、請求項2及び3の過渡時燃料噴射制御方法では、燃料の供給割合が変更された場合(燃料過渡変化時)のみならず、機関負荷変動による燃料供給量の変化時(負荷過渡変化時)にも、吸気ポートに噴射される燃料量が個別に補正されるため正確な壁面付着燃料の補正が行われる。
請求項4に記載の発明によれば、異なる性状の少なくとも2種類の燃料を任意の供給割合で機関に供給可能であり、かつ前記燃料のうち少なくとも1種類の燃料を燃料噴射弁から機関吸気ポートに噴射する内燃機関の過渡時制御方法であって、前記異なる性状の少なくとも2種類の燃料のうち機関吸気ポートに噴射される燃料以外の燃料を気筒内に直接噴射し、機関が前記吸気ポートに供給される燃料の供給割合がゼロの状態で運転中に、燃料供給割合を所定の期間変化させて吸気ポートに燃料を噴射し、該吸気ポートへの燃料噴射時の排気性状の変化に基づいて、吸気ポートへの燃料噴射を停止した状態から吸気ポートへの燃料噴射を再開する際の壁面付着燃料量の変化に応じた燃料噴射量補正を行う、内燃機関の過渡時燃料噴射制御方法が提供される。
すなわち、請求項4の発明では吸気ポートへの燃料噴射割合がゼロとされ、燃料の全量が気筒内に噴射される運転状態が存在する。このような場合には、例えば運転状態が変化して吸気ポートへの燃料噴射が再開された場合には、壁面はドライな状態、または付着燃料があった場合でも付着量が少ない状態になっている。この状態で吸気ポート燃料噴射が再開されると、壁面付着燃料量は燃料噴射量や吸気流速等に応じた値まで急激に増大し壁面付着燃料量の変化が極めて大きくなる。
このため、吸気ポートに噴射される燃料のうち壁面に付着する燃料量が大きくなり、全量筒内噴射後の吸気ポート燃料噴射再開時には空燃比がリーン側に変動する問題が生じる。この場合、吸気ポート噴射再開時の壁面付着燃料量の変化が大きいため、燃料噴射量を補正して空燃比変動を完全に防止するためには吸気ポート燃料噴射再開時の壁面付着燃料量の変化を正確に検知する必要がある。
本発明では、吸気ポートへの燃料噴射割合がゼロの状態で機関が運転されている時、すなわち燃料全量が筒内に噴射されているときに、予め定めた期間燃料供給割合を変更して吸気ポートにも燃料を噴射する。そして、吸気ポート燃料噴射を行ったときの排気性状(例えば排気空燃比)の変化に基づいて壁面付着燃料量変化を補償するために必要な燃料噴射補正量を学習する。
これにより、燃料の全量が筒内噴射されている状態から吸気ポート燃料噴射が再開された場合にも、吸気ポート燃料噴射開始時から適切な燃料噴射補正を行い、空燃比変動が生じることが防止される。
また、燃料全量の筒内噴射がある期間続くと吸気ポートに付着していた燃料は気化し、完全に壁面がドライとなるが、全量筒内噴射運転中に上記の吸気ポート燃料噴射を一定期間毎に実行するようにすれば、より正確に燃料噴射補正量を学習すること可能となるとともに、全量筒内噴射運転中の壁面ドライが防止され、吸気ポート燃料噴射再開時の空燃比変動を更に効果的に防止することが可能となる。
更に、全量筒内噴射運転中には吸気ポートの燃料噴射弁からは燃料が噴射されないため、燃料噴射弁内に滞留した燃料が高温となりデポジットを形成し、デポジットの成長による流路抵抗の変化のために燃料噴射弁の燃料噴射特性が変化したりする場合があるが、上記のように全量筒内噴射運転中に吸気ポート燃料噴射を一定期間毎に繰り返すことにより、燃料噴射弁内部の燃料通路でのデポジット形成が防止される。
各請求項に記載の発明によれば、異なる2種類以上の燃料を使用する場合に燃料の供給割合を変更した場合にも吸気ポートに噴射される燃料の噴射量の壁面付着補正が正確に行われるため、燃料供給割合変更時の機関性能低下や排気性状の悪化を確実に防止することが可能となる共通の効果を奏する。
以下、添付図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の過渡時燃料噴射制御方法を実施する自動車用内燃機関の概略構成を説明する図である。
図1において、100は車両用内燃機関、110H、110Lは内燃機関1の各気筒吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴射弁を示す。本実施形態では、各気筒の吸気ポートに対して燃料噴射弁110Hと110Lとが1つずつ設けられている。すなわち、図1の例では4気筒ガソリン機関が使用されているため、燃料噴射弁110Hと110Lとがそれぞれ4つずつ、合計8つの燃料噴射弁が設けられている。
後述するように、燃料噴射弁110Hは各気筒に高オクタン価燃料を噴射する高オクタン価燃料用噴射弁、110Lは各気筒に低オクタン価燃料を噴射する低オクタン価燃料用燃料噴射弁とされている。高オクタン価燃料用噴射弁110Hと低オクタン価燃料用噴射弁110Lは、それぞれ高オクタン価燃料用デリバリパイプ20Hと低オクタン価燃料用デリバリパイプ20Lに接続されており、デリバリパイプ20H、20L内の燃料を各気筒吸気ポートにそれぞれ噴射する。
図1において、11H、11Lで示すのは機関1の燃料タンクである。本実施形態では、性状の異なる2つの燃料油を燃料噴射弁110Hと110Lとから機関に噴射するために、それぞれの燃料タンクを別個に設けている。図1の例では高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリンとを使用する場合を示しているが、本実施形態では、性状の異なる2種類のガソリンの他、ガソリンと他の種類の液体燃料等を使用することが可能である。
図1において、燃料タンク11Hには高オクタンガソリンが、11Lには低オクタンガソリンがそれぞれ貯留されている。高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリンとは、それぞれ外部からタンク11Hと11Lとに別々に補給するようにしても良いし、例えば車両上で分離膜などの適宜な手段を用いて市販のガソリンを高オクタン価成分を多く含むガソリンと低オクタン価成分を多く含むガソリンとに分離することにより生成することも可能である。
燃料タンク11Hと11Lとに貯留された燃料は、燃料噴射ポンプ21H、21Lにより昇圧され、個別の燃料供給配管25H、25Lを介して燃料噴射弁110H、110Lに供給され、それぞれの燃料噴射弁から機関100の各気筒吸気ポートに噴射される。
すなわち、本実施形態では、高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリンとは、互いに独立した供給経路を通って吸気ポートに供給され、それぞれの燃料噴射弁の燃料噴射量を個別に制御することにより、機関に供給する高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリンとの供給割合を任意に設定することができる。
図1に30で示すのは機関100の電子制御ユニット(ECU)である。本実施形態では、ECU30は、リードオンリメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、演算ユニット(CPU)及び入出力ポートを双方向性バスで接続した公知の構成のマイクロコンピュータとして構成され、例えば機関の各気筒の点火時期、各気筒への燃料噴射量などの基本制御を行っている他、本実施形態では、後述するように機関負荷に応じて供給する高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリンとの比率(供給割合)を設定したり、燃料供給割合変更時のそれぞれの燃料供給量の壁面付着補正などの種々の制御を行う。
これらの制御のため、ECU30の出力ポートは、図示しない駆動回路を介して各気筒の燃料噴射弁110H、110Lに接続されそれぞれの燃料噴射弁の燃料噴射量を制御している他、図示しない点火回路を介して各気筒の点火プラグ(図示せず)に接続され、機関の点火時期を制御している。また、ECU30の入力ポートには、燃料タンク11H、11Lに設けられた燃料残量センサ12H、12Lから、それぞれタンク11H内の高オクタン価ガソリンの残量とタンク11L内の低オクタン価ガソリンの残量とが入力されているほか、回転数センサ33から機関1の回転数が、機関吸気通路に設けられたエアフローメータ35から機関の吸入空気量が、また、機関シリンダブロックに設けられたノックセンサ37からノック信号(ノックに関連する周波数の振動の振幅)が、それぞれ入力されている。
本実施形態では、ECU30は機関運転条件と機関負荷とに応じて予め定めた関係に基づいて機関に供給する高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリンとの合計量と供給割合とを設定する。例えば、機関冷間始動時などにはECU30は暖機後に較べて低オクタン価ガソリンの供給割合を増大させる。低オクタン価ガソリンは高オクタン価ガソリンに較べて着火性が良好であるため機関の冷間運転時に低オクタン価ガソリンの供給割合を増大することにより、冷間時の機関燃焼が安定するようになる。
又、例えば機関が高負荷で運転されるような場合には、ECU30は負荷が低い場合に較べて高オクタン価ガソリンの供給割合を増大させる。これにより、機関に供給される燃料の全体としてのオクタン価が上昇するため、点火時期を最大出力点火時期近くまで十分に進角させた運転を行い機関出力を増大させることが可能となる。
ところで、本実施形態では異なる性状の2種類のガソリンを吸気ポートに噴射しているが、性状が異なると例え同一の条件であっても吸気ポート壁面の付着燃料量が異なってくる。例えば、一般に高オクタン価ガソリンは低オクタン価ガソリンより高沸点成分を多く含む場合が多いが、高沸点成分を多く含むガソリンは、吸気ポート壁面に付着した場合に同一温度であっても気化しにくいため、例えば同一量の燃料を同一条件で噴射した場合であっても高オクタン価ガソリンの壁面付着燃料量は低オクタン価ガソリンより多くなる傾向がある。
一方、前述したように壁面に付着する燃料(ガソリン)の量は主に燃料噴射量、吸入空気流速、吸気ポート壁面温度などにより定まる量となるため、機関負荷の変動などによりこれらの条件が変化すると壁面付着燃料量もそれに応じて変化する。例えば、機関負荷が増大して燃料噴射量が増大すると壁面付着燃料量も燃料噴射量に対応する量まで増大する。このため、仮に燃料噴射量をステップ状に増大させても噴射した燃料の一部は壁面付着燃料量を増大させるために使われてしまい、噴射した燃料の一部分しか燃焼室に供給されない。燃料噴射量が変化した後壁面付着燃料量はわずかな時間で噴射量に対応した量まで増大しその後は壁面付着燃料量は変化しなくなるため、壁面付着燃料量が安定した後は吸気ポートに噴射した燃料は壁面付着燃料量の増大に使われることがなくなり、噴射した燃料の全量が燃焼室に供給されるようになる。しかし、壁面付着燃料量が増大している間は吸気ポートに噴射した燃料量より燃焼室に供給される燃料量が少ない状態が生じるようになり、燃焼室に供給される燃料量が意図した量より少なくなるため、空燃比のリーン化による排気性状の悪化や加速性能の低下などが生じる。
また、逆に負荷変動などにより燃料噴射量が低減される場合には、壁面付着燃料量が噴射量に対応した量に減少するまでの間は燃焼室には吸気ポートに噴射された燃料量に加えて壁面に付着した燃料の減少分が流入することとなり、意図した量より燃焼室に供給される燃料量が多くなるため空燃比のリッチ化などの問題が生じる。
そこで、負荷変動時などには上記壁面付着燃料の変化を考慮して燃料噴射量を補正する壁面付着補正が一般に行われる。負荷変動時の壁面付着補正は、上記の負荷変動時に、壁面付着燃料量が安定するまでの間壁面付着燃料量の変化量に相当する量だけ燃料噴射量を増減補正するものである。これにより、壁面付着燃料量の変化にかかわらず実際に燃焼室に供給される燃料量を意図した通りの値に維持することができるようになる。
ところが、本実施形態のように性状の異なる2種類以上の燃料を使用する場合には、燃料毎に壁面付着燃料量が異なってくるため、壁面付着補正の際に問題が生じる場合がある。
例えば、前述したように一般に高オクタン価ガソリンは低オクタン価ガソリンに比較して高沸点成分を多く含む場合が多いため、同一の条件でも高オクタン価ガソリンは低オクタン価ガソリンより壁面付着燃料量が多くなる。また、もともと壁面に付着している燃料量が多いため、条件が同一であっても高オクタン価ガソリンでは負荷変動時の壁面付着燃料量の変動量も低オクタン価ガソリンより多くなる。
このため、高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリンとの燃料噴射量が同一の割合だけ(例えば30%)増大したような場合であっても、高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリンとの壁面付着補正を一律に設定(例えば一律に5パーセント増量)したのでは正確な壁面付着補正が行えない。
このため、負荷変動時の壁面付着補正は各燃料毎に個別に(例えば高オクタン価ガソリンを5パーセント増量、低オクタン価ガソリンを3パーセント増量など)行う必要が生じるのである。
また、上記は負荷過渡変動時の壁面付着補正について説明したが、機関が定常状態で運転されている場合でも、燃料の供給割合を変更する場合には壁面付着補正が必要となる。
本来機関が一定の運転条件で運転されている場合には、燃料の供給割合を変更する必要はないのであるが、本実施形態では、例えば燃料タンク11Hと11L内の高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリンとの残量にアンバランスが生じたような場合に、燃料消費のバランスをとるために、機関負荷が変化しない場合でも残量が多い方のガソリンの供給割合を増大させる場合がある。
また、機関運転中にノックセンサ37でノックが検出されたような場合には負荷が変化しない場合でも機関に供給する高オクタン価ガソリンの供給割合を増大してノックを抑制する場合がある。
このような場合には、負荷変動がなくても吸気ポートへの燃料供給量が変化するため壁面付着燃料量の変化が生じる。
例えば、ノックを抑制するために高オクタン価ガソリンの供給割合を増大させたような場合には、高オクタン価ガソリンの壁面付着燃料量が増大するため、供給割合変更直後は噴射した高オクタン価ガソリンの一部は壁面付着燃料の増大に使われてしまい、燃焼室に実際に供給される高オクタン価ガソリンの量は意図した量より少なくなる。このため、ノックを抑制するために高オクタン価ガソリンの供給割合を増大したにもかかわらずノックが発生してしまうような問題が生じる。
従って、このように燃料供給割合が変更された場合にも壁面付着燃料量の変化が終了するまでの間は壁面付着補正が必要となるのである。また、このような燃料過渡変化時の壁面付着補正も各燃料を一律に補正するのではなく各燃料毎に個別に設定する必要がある。
また、本実施形態では燃料の供給割合は機関回転数と負荷(例えば機関1回転当たりの吸入空気量)とに応じて予め設定されているため、負荷が変化すると燃料の供給割合もそれに応じて変更される場合が多いことから、通常、上述した負荷変化による各燃料の噴射量の変化と、燃料供給割合変化による各燃料の噴射量の変化とが同時に起きる場合が多い。
そこで、本実施形態では負荷過渡変化時のみならず、燃料過渡変化時にも高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリンの燃料噴射量について個別に壁面付着補正を行う。
以下、本実施形態の壁面付着補正について説明する。
本実施形態では、実際に機関を運転して、予め吸気ポートに噴射する各燃料毎に燃料の供給割合FRと負荷LDとを変化させた場合の壁面付着燃料量の変化量を実測し、壁面付着補正量QMW(図2では、高オクタン価ガソリンに対する値にはHを、低オクタン価ガソリンに対する値にはLを最後に付して示している。例えばQMWHは高オクタン価ガソリンの壁面付着補正量、QMWLは低オクタン価ガソリンの壁面付着補正量を、それぞれ示している)として、後述する供給割合変化程度パラメータFRMPと負荷変動量予測値LDESTとを用いて、図2に示すように高オクタン価ガソリン用と低オクタン価ガソリン用の2つの二次元数値マップの形に表してECU30のROMに格納してある。
ここで、負荷変動量予測値LDESTは負荷変化開始時から終了時までの間の負荷変化量であり、負荷変化開始時の負荷(例えば機関1回転当たりの吸入空気量)と変化開始時のスロットル弁開度変化速度とを用いて所定の関係に基づいて算出される。例えば、負荷変動量予測値LDESTは、負荷変化開始時の負荷が高いほど、また負荷変化開始時のスロットル弁開度変化速度が大きいほど大きな値となる。
また、図2の供給割合変化程度パラメータFRMPは、燃料の供給割合が変化するときの、各燃料の供給量変化程度を表すパラメータである。
変化程度パラメータFRMPは、各燃料(本実施形態では高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリン)毎に求められ、例えば本実施形態では各成分の変化前後の供給割合の比として以下の計算式を用いて算出される。
FRMPH=FRHFINAL/FRHBASE ……(1)
FRMPL=FRLFINAL/FRLBASE ……(2)
ここで、FRMPH、FRMPLは、それぞれ高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリンの供給割合変化程度パラメータ、FRHBASE、FRLBASEは変化前の高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリンの供給割合(パーセント)、FRHFINAL,FRLFINALは、変化後の高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリンの供給割合(パーセント)である。
なお、本実施形態では通常の運転中は各燃料の供給割合は機関負荷(機関1回転当たりの吸入空気量)と回転数とに応じて予め定められた値に設定されている。このため、前述したノック抑制や燃料消費量バランス調整を行う場合以外はFRHFINAL,FRLFINAL及びFRHBASE、FRLBASEの各値は変化前後の機関負荷と回転数とにより定まる値となる。
又、ノック抑制や燃料消費量バランス調整のために燃料供給割合を変更する場合には、FRHFINAL,FRLFINAL及びFRHBASE、FRLBASEは変化前後の実際の値が使用される。
なお、供給割合変化程度パラメータFRMPH、FRMPLは、各燃料の供給割合の変化の程度を正確に表すものであれば、他の値も使用することができ、例えば、
FRMPH=FRHFINAL−FRHBASE ……(3)
FRMPL=FRLFINAL−FRLBASE ……(4)
のように、各成分の変化前後の供給割合の差を用いても良い。
図2の二次元マップを用いて壁面付着補正量を求めると、例えば燃料供給割合変化がない場合(前述の変化程度パラメータFRMPH、FRMPLの値が(1)、(2)式で算出される場合には1、(3)、(4)式で算出される場合に0となる場合)は、負荷過渡変化のみの壁面付着補正が行われ、負荷変動がない場合(LDEST=0の場合)には、燃料過渡変化のみに対する壁面付着補正が行われるようになる。
図3は本実施形態の上述した壁面付着補正操作を説明するフローチャートである。本操作はECU30により一定時間毎に実行される。
図3の操作では、ステップ301で現在の各燃料の供給割合の設定値FRHFINAL、FRLFINALが読み込まれる。前述したように、燃料供給割合は通常時は機関回転数と負荷とに応じて予め定めた関係に基づいて決定されるが、ノック抑制のために燃料のトータルオクタン価を変更する必要がある場合や、各燃料の消費バランスを調整する必要がある場合などには、予め定めた関係に基づいて通常とは異なる値に設定される。
次いでステップ303では、前回本操作実行時の燃料供給割合FRHBASE、FRLBASEが読み込まれる。なお、本実施形態では、ECU30は図3の操作終了毎に、現在の各燃料の供給割合FRHFINAL、FRLFINALを次回の操作に備えてFRHBASE、FRLBASEとして記憶している。
ステップ305では、ステップ301、303で読み込んだ、FRHFINAL、FRLFINAL、FRHBASE、FRLBASEの各値を用いて、燃料毎に(高オクタン価ガソリン、低オクタン価ガソリン個別に)供給割合変化程度パラメータFRMPH、FRMPLを(1)、(2)式または(3)、(4)式に基づいて算出する。
そして、ステップ307では現在の機関負荷とスロットル弁開度変化速度とに基づいて負荷変動量予測値LDESTを算出する。
次いで、ステップ309では、図2の二次元数値マップを用いて、負荷変動量予測値LDESTと、供給割合変化程度パラメータFRMPH、FRMPLとに基づいて、高オクタン価ガソリン用と低オクタン価ガソリン用の壁面付着補正量(基本値)QMWH、QMWLが、それぞれ個別に算出される。
更に、ステップ311ではステップ309で算出された壁面付着補正量(基本値)を実際の燃料噴射に反映させるための、即時係数K1、テーリング係数K2、回転数補正係数K3、が高オクタン価ガソリン、低オクタン価ガソリン個別に算出される。
即時係数K1、テーリング係数K2は壁面付着補正量(基本値)を何回かの燃料噴射に配分して噴射する際の配分を規定する値であり、即時係数K1は基本値のうち1回目の噴射に配分すべき量を、テーリング係数K2は基本値の残りの部分を何回の噴射に分けて供給するかを規定する係数である。また、回転数補正係数K3は吸気ポートにおける吸気流速、負圧の影響を壁面付着補正に反映させるための係数である。
即時係数K1、テーリング係数K2及び回転数補正係数K3は、それぞれ機関回転数と供給割合変化パラメータとを用いた図2と同様な形式の二次元数値マップとして予め実験に基づいて高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリン個別に作成され、ECU30のROMに格納されている。
次いで、ステップ313では上記壁面付着補正量(基本値)とステップ311で求めた各係数とを用いて、実際の高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリンの噴射量が補正される。
すなわち、例えば過渡変化(負荷過渡変化、燃料過渡変化)における高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリンとの壁面付着補正のため燃料増量値ΔQH、ΔQLは、上記基本値QMWH、QMWL、及び即時係数K1、テーリング係数K2、回転数補正係数K3を用いて次のように表される。
変化直後の第1回燃料噴射:
ΔQH=QMWH×K1×K3
ΔQL=QMWL×K1×K3
変化後2回目からK2回目の燃料噴射:
ΔQH=QMWH×(1−K1)×(1/K2)×K3
ΔQL=QMWL×(1−K1)×(1/K2)×K3
これにより、本実施形態によれば燃料供給割合の変化にかかわらず正確な燃料噴射量の壁面付着補正が行われる。
なお、前述したように、燃料供給割合が変化していない場合(ステップ305で供給割合変化程度パラメータFRMPH、FRMPLが1((1)、(2)式を用いる場合)または0((3)、(4)式を用いる場合)の場合)には、図3の操作は負荷過渡変化のみに対する壁面付着補正となり、ステップ307で負荷変動がない場合(LDEST=0の場合)には、図3の操作は燃料供給割合の変化(燃料過渡変化)のみに対する壁面付着補正になる。
また、本実施形態では吸気ポートに高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリンとの2種類の燃料を供給する場合を例にとって説明したが、本発明は3種類以上の燃料を吸気ポートに供給する場合、あるいは一方の燃料(例えば低オクタン価ガソリン)を直接燃焼室内に噴射する場合にも適用することができる。
更に、本実施形態では高オクタン価ガソリンと低オクタン価ガソリンとは別個の燃料噴射弁から吸気ポートに噴射しているが、本発明は任意の供給割合の2種類以上の燃料を予め混合して単一の燃料噴射弁から吸気ポートに噴射する場合にも適用することが可能である。
次に、本発明の別の実施形態について説明する。
本実施形態では、図1において低オクタン価ガソリン用燃料噴射弁110Lが各気筒内に直接燃料を噴射する筒内燃料噴射弁とされている点、及び機関100の排気マニホルドに排気空燃比を検出する空燃比センサが設けられている点のみが上記実施形態と相違しているため、図1を用いて説明する。
前述の実施形態では、高オクタン価ガソリン用燃料噴射弁110H、低オクタン価ガソリン用燃料噴射弁110Lの両方が吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁とされていたため、機関運転中は燃料供給割合にかかわらず常に吸気ポートに燃料が噴射されており、常に壁面に燃料が付着していた。
ところが、本実施形態では低オクタン価ガソリン燃料噴射弁110Lは筒内燃料噴射弁とされているため、例えば低負荷運転などで低オクタン価ガソリンの供給割合が100パーセント(高オクタン価ガソリンの供給割合が0パーセント)になると、吸気ポートには高オクタン価ガソリンが全く噴射されない状態になる。
この場合には、吸気ポート壁面に付着していた燃料は蒸発などにより時間とともに減少する。このため、例えば負荷が増大して高オクタン価ガソリンの噴射が再開された場合には、燃料噴射量の壁面付着補正量が大きくなり、壁面付着燃料の変化量に誤差があると正確な補正ができず、高オクタン価ガソリン噴射開始時に空燃比が大きく変動する場合がある。
また、ポート噴射終了後ある時間が経過すると壁面には全く燃料が付着していない状態(ポートドライ状態)になるが、この場合には壁面付着燃料の変化量が更に大きくなるため、空燃比変動が生じやすくなる。
本実施形態では、低オクタン価ガソリン供給割合が100パーセント(高オクタン価ガソリン供給割合が0パーセント)のときに、一定時間毎に所定の期間だけ高オクタン価ガソリン用燃料噴射弁110Hから吸気ポート燃料噴射を行うと共に、噴射時に壁面付着補正を行う。そして、高オクタン価ガソリン噴射時に排気空燃比センサで検出した排気空燃比の変化に基づいて、高オクタン価ガソリンの(吸気ポート噴射燃料の)壁面付着補正量を学習補正することにより、精密に高オクタン価ガソリン噴射開始時の空燃比変動を防止している。
図4(A)から(D)は、低オクタン価ガソリン供給割合100パーセント運転中に行う定期的な高オクタン価ガソリン噴射(壁面付着補正量を学習補正することを主な目的として行う噴射であるため、以下、高オクタン価ガソリンの「学習補正噴射」と呼ぶ)の詳細を示すタイミング図である。
図4(B)は学習補正噴射実行時の高オクタン価ガソリン燃料噴射量の変化を示す。学習補正噴射は各気筒で所定の期間行われ、その期間内で高オクタン価ガソリン燃料噴射量は燃料噴射毎に変更される。すなわち、学習補正噴射中高オクタン価ガソリンの燃料噴射量設定値(基本燃料噴射量)QHINTは図4(B)に示すようにゼロから燃料噴射毎に一定量ずつ増大され、所定値QHINTmaxに到達後燃料噴射毎に一定量ずつゼロになるまで低減される。
また、この学習補正噴射中、低オクタン価ガソリンの燃料噴射量QLは図4(A)に示すように、供給割合100パーセントに対応する量Q0から、高オクタン価ガソリンの基本燃料噴射量分QHINTだけ低減され低オクタン価ガソリンと高オクタン価ガソリンとの合計の燃料噴射量は学習補正噴射の有無にかかわらず同一に維持される。
ところが、高オクタン価ガソリンの学習補正噴射開始時には、吸気ポート壁面に付着した燃料(高オクタン価ガソリン)の量は減少しており、学習補正噴射の時間間隔が長い場合には吸気ポート壁面はドライ状態になっている。
このため、学習補正噴射開始時には噴射した燃料のかなりの部分が壁面に付着してしまい、筒内に供給されない。このため、高オクタン価ガソリン噴射量を図4(B)の量のみに設定したのでは、実際に筒内に供給される高オクタン価ガソリンの量は図4(B)に示す量より少なくなってしまい、学習補正噴射開始時には筒内に供給される燃料の合計が学習補正噴射開始前より低下するため、機関運転空燃比がリーン側に変位してしまう。
また、逆に学習補正噴射の終了時には高オクタン価ガソリンの噴射量を低減すると、それに応じて高オクタン価ガソリンの壁面付着燃料量が低下するため、壁面に付着した燃料の一部が筒内に流入することになり、実際に筒内に供給される高オクタン価ガソリン量は図4(B)に示す量より多くなってしまう。このため、燃料噴射量の低減時には機関空燃比がリッチ側に変位してしまう。
このような空燃比変動を防止するためには、高オクタン価ガソリン燃料噴射開始時には壁面付着燃料の増大に消費される燃料の量だけ燃料噴射量を増量し、燃料噴射終了時には壁面付着燃料の低下により筒内に供給される燃料の量だけ高オクタン価ガソリンの噴射量を低減することが必要となる。
そこで、本実施形態では学習補正噴射開始時には、図4(C)にQHPWで示した量だけ燃料噴射量を増量し、学習補正噴射終了時にはQHPWで示した量だけ燃料噴射量を原料する壁面付着補正を行う。
壁面付着補正による増量は、図4(C)に示すように学習補正噴射開始時の最初の燃料噴射時にPWPだけ初期増量を行い、その後噴射毎に増量値をゼロになるまで一定量ずつ低減する。
また、学習補正噴射終了時には、図4(B)の燃料噴射量の低減が開始されてから所定時間経過後の燃料噴射時にPWMだけ初期減量を行い、その後燃料噴射毎に減量値を一定量ずつゼロになるまで低減する。
これにより、実際に高オクタン価ガソリン用燃料噴射弁から噴射される燃料量は図4(D)のように変化する。
このように、燃料噴射量を補正することにより、燃料噴射開始及び終了時の壁面付着燃料による空燃比の変動を防止することが可能となる。
この場合、正確に燃料噴射量の壁面付着補正を行うためには、最初の燃料噴射時の増量値(図4(C)、PWP、すなわち増量初期値)を正確に予測する必要がある。
ところが、実際には壁面付着燃料は燃料噴射量や吸気流速、吸気ポート温度や燃料の沸点、吸気ポートに残存している付着燃料量などに応じて変化するため、正確に把握することが難しく、特に燃料噴射開始時の急激な壁面付着燃料の増大変化、すなわち増量初期値PWPについては予測が難しい。
また、上記は、学習補正噴射を行った場合について述べたが、低オクタン価ガソリン供給割合100パーセントの状態(機関低負荷運転)から機関負荷が増大し、継続的に高オクタン価ガソリンの噴射が行われるようになる場合も同様である。特に、低オクタン価ガソリン供給割合100パーセントでの運転中に高オクタン価ガソリンの学習補正噴射を行っていない場合には、吸気ポート壁面は完全にドライになってしまっているため、高オクタン価ガソリン噴射再開時に比較的多量の燃料が壁面付着燃料形成のために消費される。
このような場合には、燃料噴射開始時の壁面付着燃料量の変化は更に急激となるため、正確に壁面付着燃料量(増量初期値FWP)を予測して燃料噴射量を補正することは困難であり、低オクタン価ガソリン供給割合100パーセントの運転状態から高オクタン価ガソリン噴射を再開する場合には、空燃比の変動を完全に防止することは困難であった。
これに対して、本実施形態では低オクタン価ガソリン供給割合100パーセントの運転中に、図4(A)から(D)に示した高オクタン価ガソリンの学習補正噴射を行い、学習補正噴射の開始及び終了時の排気空燃比の変化を排気空燃比センサで検出し、排気空燃比の変化に基づいて増量初期値PWP(図4(C))を学習補正することにより上記の問題を解決している。
図5から図7は、本実施形態の壁面付着補正操作を説明するフローチャートであり、図5、図6は吸気ポートへの燃料噴射停止後の再開時の壁面付着燃料量の学習補正操作の詳細を、図7は、図5、図6の学習補正により得られた壁面付着燃料量を用いた吸気ポートへの燃料噴射再開時の燃料噴射量補正操作の詳細を、それぞれ示している。
まず、図5、図6の壁面付着燃料量の学習補正操作について説明する。図5、図6の学習補正操作では、機関が低オクタン価ガソリン供給割合が100パーセントの状態で定常運転されているときに、図4に示したように所定期間高オクタン価ガソリンを吸気ポートに噴射し、そのときの排気空燃比の変化に基づいて壁面付着燃料量の補正量を学習する。 本操作はECU30により一定時間毎に実行されるルーチンとして行われる。
操作がスタートすると、まず図5、ステップ501では学習補正実行条件が成立しているか否かが判定される。本実施形態では、学習補正実行条件として、(1)機関が低オクタン価ガソリン供給割合100パーセント(すなわち高オクタン価ガソリン供給割合0パーセント)の状態で運転されていること、(2)機関が定常運転またはそれに近い状態で運転されていること(具体的には、例えばスロットル弁開度の変化速度が所定値より小さいこと、等)、(3)高オクタン価ガソリン用燃料タンク11Hの燃料残量が所定量以上であること、等が判定され、ステップ501ではこれらの条件が全て満たされた場合に壁面付着燃料量の学習補正実行条件が成立していると判定される。
ステップ501で実行条件が成立していない場合には、図5、図6の操作は直ちに終了する。また、ステップ501で実行条件が成立していた場合には、次にステップ503に進み、現在、前回学習補正噴射を実行してから所定の時間が経過しているか否かを判断する。
前回学習補正噴射を終了してから所定時間が経過していない場合には、ステップ507以下の学習補正噴射は実行せずに、ステップ505で後述するカウンタCINTの値を0にセットし、低オクタン価ガソリンの噴射量QLをQ0に、学習補正噴射時の高オクタン価ガソリンの基本燃料噴射量QHINTと壁面付着補正量QHPWとの値をそれぞれ0にセットして今回の操作を終了する。
0は機関運転状態(機関負荷、回転数)に基づいて予め定めた関係から求められる燃料噴射量であり、ECU30により別途実行される図示しない燃料噴射量演算操作により設定される。QHINT、QHPWについては後に詳述する。
ステップ503で、前回学習補正噴射を終了してから所定時間が経過していない場合には次の学習補正噴射を実行しないのは、学習補正噴射を頻繁に実行することによる高オクタン価ガソリンの消費量増大を防止するためである。
ステップ503で前回学習補正噴射を終了してから所定時間が経過していた場合には、学習補正噴射を実行するためにステップ507に進み、学習補正噴射における基本燃料噴射量QHINTを算出する。
ここで、学習補正噴射における基本燃料噴射量QHINTは図4(B)に示すように時間とともに増減するように設定される。
具体的には、QHINTは、増減値ΔQHINTを用いて以下の式で算出される。
1)CINT>0かつCINTD=0のとき
QHINT=QHINT+ΔQHINT
2)CINT>0かつCINTD>0のとき
QHINT=QHINT−ΔQHINT
すなわち、上記1)の場合にはQHINTの値は図5の操作実行毎(燃料噴射実行毎)にΔQHINTずつ増大され、上記2)の場合にはΔQHINTずつ減少される。
ここで、CINTは別途実行されるカウンタ演算操作により一定時間毎に一定量ずつ増大されるカウンタである。本実施形態では、学習補正噴射実行前はCINTの値はステップ505で常にゼロにリセットされているため、ステップ507におけるCINTの値は学習補正噴射を開始してからの経過時間に対応している。
このため、QHINTの値は図4(B)に示すように、学習補正噴射開始後、時間と共に増大して行く。
また、CINTDはCINTと同様に別途実行されるカウンタ演算操作により一定時間毎に一定量ずつ増大されるカウンタである。但し、CINTDの値は、上記1)により増大されたQHINTの値が、最大値QHINTmax=Q0×α(αは0<α<1の定数)に到達するまでは0にリセットされており、QHINTの値がQHINTmaxに到達後増大を開始する。
従って、カウンタCINTDの値はQHINTが最大値QHINTmaxに到達してから(減少を開始してから)の経過時間に対応している。
このため、QHINTの値は、最大値QHINTmaxに到達後は上記2)により演算されるようになり、図4(B)に示すように最大値到達後は時間とともに一様に減少して行く。
また、QHINTの値は0でガードされ、2)の計算によるQHINTの値がQHINT<0になる場合にはQHINT=0とされる。
上記により、基本燃料噴射量QHINTを算出後、ステップ509では学習補正噴射における壁面付着補正量QHPWが算出される。
基本燃料噴射量QHINTを図4(B)のように変化させた場合には、噴射開始時から或る時間が経過するまでは壁面付着燃料の量が増大し、燃料噴射量QHINTが最大値に到達して減少を開始すると壁面付着燃料の量が減少する。
このため、噴射開始時から所定の時間が経過するまでは壁面付着燃料量の増大に消費される燃料分だけ燃料噴射量を増量しないと実際に燃焼室に供給される燃料の合計量はQ0より小さくなってしまう。
また、逆に高オクタン価ガソリンの噴射量が最大値QHINTmaxに到達して燃料噴射量が低下を始めると、壁面付着燃料量は減少し、減少分だけの燃料が燃焼室に流入する。このため、燃料噴射量減少時には燃料噴射量を低減しないと実際に燃焼室に供給される燃料の合計量はQ0より大きくなってしまう。
そこで、本実施形態では壁面付着補正量QHPWは以下のように設定される。
1)CINT≧0かつCINTD=0のとき、
QHPW=PWP−CINT×PD
(但し、QHPW<0になるときはQHPW=0。)
2)CINT≧0かつCINTD≧TDのとき、
QHPW=PWM+CINTD×MD
(但し、QHPW>0になるときはQHPW=0。)
上記において、PWPは増量初期値で正の値、PDは増量減衰値で正の定数、また、PWMは減量初期値で負の値、MDは減量減衰値で正の定数である。
上記1)は、噴射開始後基本燃料噴射量QHINT増大時の壁面付着補正量の設定を示す。この場合、図4(C)に示すように、補正量QHPWは噴射開始時に増量初期値PWPだけ一挙に増大され、その後時間(CINT)の経過とともに一定量PDずつ、QHPWがゼロになるまで低減される。CINTは燃料噴射開始後の経過時間を表すカウンタである。
また、上記2)は基本燃料噴射量QHINTが最大値QHINTmaxに到達後(図4(B))の低下開始時の補正量QHPWの設定を示す。この場合、図4(C)に示すように補正量QHPWはマイナスの値となり、QHINTの減少開始後所定時間経過時に(CINTDがTDまで増大したときに)にPWMだけ一挙に減量され、その後時間(CINTD)の経過とともに一定量MDずつ、QHPWがゼロになるまで増大される。CINTDは、基本燃料噴射量QHINTが最大値に到達してからの経過時間を表すカウンタである。
上記により、壁面付着補正量QHPWを算出後、ステップ511では、最終的な高オクタン価ガソリンの吸気ポート噴射量が、
QH=QHINT+QHPW
として算出される。
このため、学習補正噴射時の高オクタン価ガソリンの噴射量は、図4(D)に示すように変化することになる。
また、ステップ513では低オクタン価ガソリンの筒内噴射量QLが、
QL=Q0−QHINT
として算出される。
すなわち、学習補正噴射時の低オクタン価ガソリンの噴射量は図4(A)に示すようになり、高オクタン価ガソリンの基本燃料噴射量QHINTと低オクタン価ガソリンの燃料噴射量QLとの合計は常に機関運転状態から算出される値Q0に維持される。
上記のように吸気ポート噴射時の壁面付着燃料量の変化に応じた量QHPWだけ高オクタン価ガソリンの噴射量を補正することにより、燃焼室に供給される燃料量は、吸気ポート噴射の有無にかかわらず一定値Q0に維持されるようになり、空燃比変動が防止される。
図6のステップ515から537は、図5の燃料噴射量設定後に行われる壁面付着補正量の学習補正操作を示すステップである。
ステップ515から537では、噴射開始(CINT=0)から所定時間経過後(すなわち、学習噴射により噴射された燃料が燃焼室で燃焼し、その排気が排気通路の空燃比センサに到達するまでの輸送遅れ時間経過後)の空燃比が理論空燃比(例えば14.5)に近づくように、噴射開始時の増量初期値PWPの値が学習補正される。また、、同様に基本燃料噴射量(QHINT)減量時の壁面付着補正が開始された時点(CINT=TD)から輸送遅れ時間相当の時間が経過後の排気空燃比が理論空燃比になるように減量初期値PWMの値が学習補正される。
すなわち、図6ステップ515ではカウンタCINTの値が所定値T1とT2の間にあるか否かが判定される。T1、T2は吸気ポートに噴射された燃料が燃焼室内で燃焼して生成される排気が、気筒から排出されて排気通路に配置した排気空燃比センサで排気の空燃比を検出可能となる時間(期間)である。
すなわち、ステップ515では、燃料噴射開始時に増量初期値PWPだけ増量されて噴射された燃料が燃焼して生成された排気の空燃比を検出可能な時期であるか否かが判定される。
ステップ515で判定可能でない場合は、ステップ517から525は実行されることなく、ステップ527が実行される。
ステップ515でPWP増量時の排気空燃比が検出可能な時期であった場合には、ステップ517から525で初期増量値PWPの値が適切であるか否かが判断され、不適切であった場合には適切な値に補正される。
すなわち、ステップ517では、まず排気空燃比A/Fが所定値AとBとの間にあるか否かが判断され(例えばA=12、B=17)、空燃比A/FがAからBの範囲から外れている場合には空燃比のずれが過大であるため、燃料噴射系に何らかの異常があると判断し、ステップ539に進み、異常発生を示すフラグXFの値を1にセットして操作を終了する。
一方、ステップ515で排気空燃比A/Fが正常範囲内(A〜B)にあった場合には、次にステップ519で空燃比が所定値C(例えばC=13)より低いか否か、すなわち排気空燃比が許容範囲を越えてリッチになっているか否かが判定される。
ステップ519でA/F<13であった場合には、すなわちPWPだけ燃料噴射量を増量した場合には排気空燃比が過剰にリッチになっていること、すなわち増量初期値PWPが過大であることを意味する。そこで、この場合にはステップ521に進み、増量初期値PWPを一定量Iだけ減量する。
また、ステップ523、525では上記とは逆に、空燃比が過剰にリーン(A/F>16)になっているか否かが判定され、過剰にリーンである場合にはステップ525で増量初期値PWPを一定量Jだけ増量する。
また、ステップ527から537では上記と同様な操作で、PWMだけ燃料噴射量を減量した場合の排気空燃比の値に基づいて、減量初期値PWMの値がKだけ減量(PWM<0)またはLだけ増量される。ここで、K、Lは正の一定値であり、期間T3〜T4は、CINT=DでPWM+CINTD×MDだけ減量噴射された燃料により生成された排気が空燃比センサの位置に到達し、その空燃比を空燃比センサで検出可能な期間である。
これにより、図5、図6の操作を繰り返すうちに、増量初期値PWP及び減量初期値PWMの値は、それぞれ適切な値(吸気ポート噴射開始時及び終了時の空燃比変動が許容範囲内になる値)に収束するようになる。
次に、図7は上記により学習した増量初期値PWPの値を用いた吸気ポート噴射開始時の燃料噴射量補正操作を説明するフローチャートである。本操作は、ECU30により、別途行われる図示しない燃料噴射量演算操作とともに行われる。
本操作では、低オクタン価ガソリンの供給割合100パーセント(高オクタン価ガソリンの噴射量ゼロ)での運転から、負荷の増大などにより高オクタン価ガソリンの吸気ポート噴射が開始される際の壁面付着燃料量の補正のために高オクタン価ガソリン噴射量を増量補正する操作を行う。
図7の操作では、まずステップ701で高オクタン価ガソリンの供給割合FRHが読み込まれる。FRHは、機関に供給される燃料の合計量に占める高オクタン価ガソリンの割合で有り、別途実行される図示しない燃料噴射量演算操作において、機関運転状態(負荷、回転数)に基づいて予め定めた関係から求められる。
次いで、ステップ703では、ステップ701で読み込んだFRHの値が0であるか否かが判定される。
ステップ703でFRH=0であった場合は、今回高オクタン価ガソリンの噴射は行われないため高オクタン価ガソリンの噴射量を補正する必要もない。従って、この場合はステップ705で壁面付着補正量QHPWの値を0にセットするとともに、ステップ707でフラグDWの値1にセットして今回の操作を終了する。DWは、吸気ポート噴射が行われておらず、吸気ポート壁面に付着燃料が形成されていないか、或いは付着燃料量が減少している状態(ポートドライ状態)であることを表すフラグであり、DW=1はポートドライ状態であることを示している。
一方、ステップ703で、FRH≠0であった場合には今回高オクタン価ガソリンの吸気ポート噴射が行われることを意味している。この場合には、続いてステップ709で現在吸気ポート壁面がドライ状態であるか否か(すなわち、今回の噴射が吸気ポート噴射停止後再開時の第1回目の噴射であるか否か)がフラグDWの値に基づいて判定される。
ステップ709で、今回が再開時第1回の噴射であった場合(すなわち、DW=1であった場合)には、ステップ711でフラグDWの値を0にセットして、ステップ713でカウンタCTの値を0にリセットした後ステップ715に進む。また、今回が再開時第1回の噴射でなかった場合には、ステップ709からステップ715に進む。すなわち、ステップ713(カウンタCTのリセット)は噴射再開時のみに行われる。
ステップ715では、高オクタン価ガソリンの噴射量QHが読み込まれる。高オクタン価ガソリン噴射量QHは、ECU30により別途実行される燃料噴射量演算操作で、機関運転状態(機関負荷、回転数)と高オクタン価ガソリン供給割合FRHとに基づいて算出される。
また、ステップ717では、壁面付着補正量QHPWが、図5、図6の操作で求めた増量初期値PWPとカウンタCTとを用いて、
QHPW=PWP−CT×PD
として算出される。
算出された補正量QHPWは、ステップ719と721とで負の値にならないように制限され、ステップ723では高オクタン価ガソリンの噴射量QHがQHPWだけ増量される。
上記のように、壁面付着補正量QHPWは学習補正噴射開始時と同様に、噴射再開後第1回目の噴射時に一挙にPWPだけ増量され、その後時間の経過とともにPDずつ一様に低減される。
本実施形態では、吸気ポート噴射停止中に図5、図6の操作で吸気ポート噴射再開時の壁面付着補正量の増量初期値PWPを学習補正し、その結果得られたPWPの値を用いて吸気ポート噴射再開時の燃料噴射量補正を行うようにしているため、吸気ポート噴射を停止後再開する際に極めて精密な壁面付着補正を行うことができ、吸気ポート噴射再開時の空燃比変動を防止することが可能となっている。
なお、図5、図6のように吸気ポート噴射停止中に定期的に学習補正噴射を行うことは、壁面付着補正量の学習補正以外にも、ポートドライの緩和とポート噴射弁の保護の効果をも奏している。
すなわち、吸気ポート噴射を停止して或る時間が経過すると壁面に付着していた燃料は蒸発し、吸気ポート壁面は完全にドライの状態になってしまう。この完全ドライの状態からポート噴射を再開すると壁面付着燃料量の補正量が大きくなり、空燃比変動を完全に防止することが困難になる場合がある。
これに対して、本実施形態では吸気ポート噴射停止中にも一定期間毎に吸気ポート噴射を行うようにしているため、常時ある程度の付着燃料を吸気ポート壁面に保持することができ、吸気ポート噴射再開時の壁面付着補正量が過大になることが防止される。
また、吸気ポート噴射停止中は、ポート噴射弁内に残留した燃料が吸気ポートの高熱に曝されるため、燃料噴射弁内に燃料の炭化などによるデポジットが生成されやすくなる。このため、長期間吸気ポート噴射を停止していると、燃料噴射弁内の燃料通路に生成されたデポジットが成長し、流路抵抗の増大により燃料噴射弁の噴射特性が変化してしまう場合がある。
これに対して、本実施形態では吸気ポート噴射停止中にも一定期間毎に吸気ポート噴射を行っているため、燃料噴射弁内の燃料通路が燃料噴射を行う毎に新しい燃料で洗浄されることになり、デポジットが成長しないため燃料噴射弁の噴射特性に影響が生じることが防止される。
本発明を自動車用内燃機関に適用した実施形態の概略構成を示す図である。 図1の実施形態の壁面付着補正に用いる数値テーブルの形式を説明する図である。 図1の実施形態における、壁面付着補正操作を説明するフローチャートである。 図2、図3とは別の壁面付着補正操作の実施形態を説明するタイミング図である。 図4の壁面付着補正操作における補正量の学習補正を説明するフローチャートの一部である。 図4の壁面付着補正操作における補正量の学習補正を説明するフローチャートの一部である。 図5、図6で学習した補正量を用いた壁面付着補正操作を説明するフローチャートである。
符号の説明
11H 高オクタン価ガソリン用燃料タンク
11L 低オクタン価ガソリン用燃料タンク
30 電子制御ユニット(ECU)
100 内燃機関本体
110H 高オクタン価ガソリン用燃料噴射弁
110L 低オクタン価ガソリン用燃料噴射弁

Claims (4)

  1. 異なる性状の少なくとも2種類の燃料を任意の供給割合で機関に供給可能であり、かつ前記燃料のうち少なくとも2種類の燃料を燃料噴射弁から機関吸気ポートに噴射する内燃機関において、
    機関運転中に前記各燃料の供給割合を変更する際に、変更前と変更後の各燃料の供給割合の変化程度に応じて変更直後の所定期間前記吸気ポートに噴射される各燃料の噴射量を個別に補正する、内燃機関の過渡時燃料噴射制御方法であって、
    前記補正は、供給割合変更前と変更後の各燃料の供給割合に基づいて燃料供給割合の変化程度を表す変化程度パラメータを算出し、
    前記算出した変化程度パラメータを用いて、予め定めた関係に基づいて前記吸気ポートに噴射される各燃料の供給割合変更により生じる壁面付着燃料量の変化を算出し、
    前記壁面付着燃料の変化量に相当する量だけ前記吸気ポートに噴射される各燃料の噴射量を増減することによって行う、内燃機関の過渡時燃料噴射制御方法。
  2. 更に、機関負荷変化による機関への燃料供給量の変化時に、各燃料の供給割合に基づいて前記各燃料の壁面付着燃料の変化量に相当する量だけ前記吸気ポートに噴射される各燃料の噴射量を個別に増減補正する、請求項1に記載の内燃機関の過渡時燃料噴射制御方法。
  3. 異なる性状の少なくとも2種類の燃料を任意の供給割合で機関に供給可能であり、かつ前記燃料のうち少なくとも2種類の燃料を燃料噴射弁から機関吸気ポートに噴射する内燃機関において、
    機関運転中に前記各燃料の供給割合を変更する際に、変更前と変更後の各燃料の供給割合の変化程度に応じて変更直後の所定期間前記吸気ポートに噴射される各燃料の噴射量を個別に補正する、内燃機関の過渡時燃料噴射制御方法であって、
    前記補正は、供給割合変更前と変更後の各燃料の供給割合に基づいて燃料供給割合の変化程度を表す変化程度パラメータを算出し、
    前記算出した変化程度パラメータを用いて、予め定めた関係に基づいて前記吸気ポートに噴射される各燃料の供給割合変更により生じる壁面付着燃料量の変化を算出し、
    前記壁面付着燃料の変化量に相当する量だけ前記吸気ポートに噴射される各燃料の噴射量を増減することによって行い、
    更に、機関負荷変化による機関への燃料供給量の変化時に、各燃料の供給割合に基づいて前記各燃料の壁面付着燃料の変化量に相当する量だけ前記吸気ポートに噴射される各燃料の噴射量を個別に増減補正する、内燃機関の過渡時燃料噴射制御方法。
  4. 異なる性状の少なくとも2種類の燃料を任意の供給割合で機関に供給可能であり、かつ前記燃料のうち少なくとも1種類の燃料を燃料噴射弁から機関吸気ポートに噴射する内燃機関の過渡時制御方法であって、
    前記異なる性状の少なくとも2種類の燃料のうち機関吸気ポートに噴射される燃料以外の燃料を気筒内に直接噴射し、
    機関が前記吸気ポートに供給される燃料の供給割合がゼロの状態で運転中に、燃料供給割合を所定の期間変化させて吸気ポートに燃料を噴射し、該吸気ポートへの燃料噴射時の排気性状の変化に基づいて、吸気ポートへの燃料噴射を停止した状態から吸気ポートへの燃料噴射を再開する際の壁面付着燃料量の変化に応じた燃料噴射量補正を行う、内燃機関の過渡時燃料噴射制御方法。
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