JP4324983B2 - 難燃性カーボネート化合物、その製造方法及びそれを配合してなる難燃性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な難燃性カーボネート化合物に関するものであり、本発明の化合物は各種電気機器などに多用される難燃樹脂用配合型難燃剤として使用可能である。
【0002】
【従来の技術】
従来の合成樹脂の難燃化方法としては、種々の樹脂に対して、様々な臭素系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、無機系難燃剤等が用いられ、用途により使い分けがなされている。代表的な難燃剤としては、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノール−A(以下TBAと略す)、TBA−エポキシオリゴマー、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このように様々な難燃剤の提案がなされ、様々な用途で使い分けがなされているものの、近年の難燃規制の強化、配合した難燃樹脂の性能のさらなる向上要求が高く、従来品の欠点を補完する剤の創製が望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、新規な臭素系剤について鋭意検討した結果、本発明の難燃性カーボネート化合物を見出し、さらにこれを配合した樹脂組成物は難燃性能が優れ、加えて耐光性にも優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0005】
すなわち本発明は、下記一般式(1)
【0006】
【化4】
【0007】
(式中、a1、a2は各々独立して1〜3の整数、b1、b2は各々独立して1〜2の整数を表す。)
で表される難燃性カーボネート化合物、その製造方法及びそれを配合してなる難燃性樹脂組成物である。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明の上記一般式(1)で表される難燃性カーボネート化合物は、ゲル浸透クロマトグラフィー分析において、a1+a2+b1+b2=4〜10の化合物の混合物であり、通常a1+a2+b1+b2=4〜5の化合物を0〜80モル%、a1+a2+b1+b2=6の化合物を80〜0モル%及びa1+a2+b1+b2=7〜10の化合物を0〜20モル%の範囲で含有し、臭素含量42〜64%、軟化点200〜280℃、熱天秤での重量5%減少温度が370℃以上の耐熱性を示す白色結晶である。
【0010】
尚、本発明において示す平均臭素化数とは、原料の臭素化p−クミルフェノールを元素分析することより得られた組成比を基に算出した一分子当たりの平均臭素化数をいい、2.5〜4.0の範囲で、本発明の化合物では5.0〜8.0の範囲である。
【0011】
本発明の難燃性カーボネート化合物は、通常脱ハロゲン化水素試剤存在下、下記一般式(2)
【0012】
【化5】
【0013】
(式中、aは1〜3の整数、bは1〜2の整数を表す。)
で示される臭素化p−クミルフェノールと、ホスゲン、トリクロロメチルクロロホーメート(以下TCFと略す)又はトリクロロメチルカーボネートに代表されるカーボネート化剤との反応により得ることができる。
【0014】
本発明で適用可能な脱ハロゲン化水素試剤としては、具体的にはトリエチルアミン、ジエチルアニリン、ピリジン、ジメチルアニリン、イソキノリン、キノリン等のアミン類、水酸化アンモニウム、水酸化亜鉛、炭酸水素化ナトリウム等の弱塩基性の無機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の強塩基性の無機塩基が挙げられる。中でも工業的に好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。
【0015】
脱ハロゲン化水素試剤の使用量としては、特に限定するものではないが、臭素化p−クミルフェノールに対して通常1〜1.3当量用いる。
【0016】
これら有機塩基は有機溶媒に溶解した溶液として、また無機塩基は水溶液として用いられる。
【0017】
ホスゲン、TCF又はトリクロロメチルカーボネートの使用量としては、特に規定はないが臭素化p−クミルフェノールに対して通常1〜1.5当量用いる。
【0018】
反応に使用する溶剤としては、反応に不活性であればあらゆるものが適用可能でありジクロロメタン、ジブロモメタン、クロロホルム、ブロモホルム、四塩化炭素、1、2−ジクロロエタン、1、1、2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0019】
溶剤の使用量としては、反応に具する原料の臭素化p−クミルフェノールに対してあらゆる量比で使用可能であるが、1重量倍量以下では反応終了後の反応液粘度が高くなるため好ましくなく、また100重量倍量以上では経済的ではない。従って好ましくは1〜100重量倍量の範囲で、さらに好ましくは2〜50重量倍量の範囲である。
【0020】
反応温度としては脱ハロゲン化水素試剤の種類、カーボネート化剤及び溶剤により異なり、通常−10℃〜60℃の範囲で実施するが、最適反応温度としては0℃〜30℃である。
【0021】
反応時間としては、脱ハロゲン化水素試剤の種類、カーボネート化剤及び反応温度により異なるが、通常1〜24時間の範囲で実施するが、最適反応時間としては5〜10時間である。
【0022】
反応終了後、常套の手段で処理した反応液を濃縮することにより目的とする難燃性カーボネート化合物を得る。さらに必要に応じて、精製のため再結晶等を行っても良い。
【0023】
また本発明の難燃性カーボネート化合物は、塩化トリブチルすず等を触媒として用い、下記一般式(2)
【0024】
【化6】
【0025】
(式中、aは1〜3の整数、bは1〜2の整数を表す。)
で示される臭素化p−クミルフェノールとジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類やジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート類等の炭酸ジエステルとを反応させることによっても得ることができる。
【0026】
本発明の難燃性カーボネート化合物は、難燃剤として使用される。
【0027】
本発明の難燃性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂、本発明の難燃性カーボネート化合物及び難燃助剤等から構成され、さらに必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、無機充填剤等の添加剤を添加しても良い。
【0028】
本発明の難燃性カーボネート化合物が配合可能な樹脂としては、具体的には例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、発泡ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体(以下ABSと略す)、ポリプロピレン、石油樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂が挙げられ、さらに熱可塑性樹脂を2種以上混合したポリカーボネート−ABS、ポリフェニレンエーテル−ポリスチレン等に代表されるポリマーアロイ等も例示できる。これらのうち、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−ビニルアセテート共重合体、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、発泡ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体、ポリプロピレン、石油樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂が挙げられ、さらに熱可塑性樹脂を2種以上混合したポリカーボネート−ABS、ポリフェニレンエーテル−ポリスチレン等に代表されるポリマーアロイが好適な樹脂として例示される。
【0029】
本発明の難燃性カーボネート化合物の樹脂への配合量としては、配合する樹脂の種類や目的とする難燃性能により異なり、特に限定するものではないが、通常樹脂100重量部に対して5〜50重量部配合される。
【0030】
本発明の難燃性カーボネート化合物を樹脂に配合するにあたり、三酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等の難燃助剤を添加しても良く、この場合、本発明の難燃性カーボネート化合物100重量部に対して通常5〜80重量部添加される。さらに必要に応じて、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン誘導体の光安定剤、ヒンダードフェノール系の酸化防止剤等を添加しても良く、この場合本発明の難燃性樹脂組成物100重量部に対して通常0.05〜5重量部添加される。これらの他、必要に応じて帯電防止剤やタルク、グラスファイバー等の無機充填剤を添加しても良い。
【0031】
本発明の難燃性カーボネート化合物の樹脂への配合方法としては、熱硬化性樹脂に配合する場合には、例えば、予め本発明の難燃性カーボネート化合物を樹脂原料に分散させた後硬化させれば良く、熱可塑性樹脂に配合する場合には、例えばコニカルブレンダーやタンブラーミキサーを用いて必要な配合試剤を混合し、二軸押出機等を用いてペレット化しても良い。これらの方法で得られた難燃性樹脂組成物の加工方法は、特に限定されるものではなく、例えば押出成型、射出成型等を行い、目的とする成型品を得ることができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明の難燃性カーボネート化合物は、有能な難燃剤であり、特に熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂に配合した場合、樹脂の機械物性を低下させることなく高い難燃性能を発現できる。
【0033】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0034】
参考例1
撹拌機及び冷却ジャケット付き滴下ロートを備えた1リットルの四つ口丸底フラスコにp−クミルフェノール42.4g(0.2モル)、三塩化アンチモン2.1g(0.01モル)及びジクロロメタン382gを仕込み、冷却循環恒温装置を用いて−2℃に冷却した。
【0035】
次に、0.5リットルの四つ口丸底フラスコに臭素60.7g(0.38モル)及びジクロロメタン379gを仕込み、冷却循環恒温装置により0℃に冷却した後、塩素21.3g(0.3モル)を一時間かけて吹き込み、塩化臭素のジクロロメタン溶液を調製した。この塩化臭素のジクロロメタン溶液を先ほどの冷却ジャケット付き滴下ロートに仕込み、p−クミルフェノール溶液に6時間かけて滴下し、さらに30分間熟成を行った。
【0036】
反応後、反応液に5重量%ヒドラジン溶液を加えて残存する塩化臭素及び過剰分の臭素を除外した後、分液し、水洗を行って臭素化p−クミルフェノールの溶液を得た。
【0037】
この臭素化p−クミルフェノールの溶液に水蒸気を吹き込み、まず溶媒を蒸留留去した後、続いて低沸点の不純物を同様に留去させた。水蒸気蒸留後、その温度を保ちながら、臭素化p−クミルフェノールの溶液層を分液した。次いで、この溶液を減圧下、90℃で乾燥の後、微黄色を帯びた粘調状態の臭素化p−クミルフェノール80.1gを得た。この得られた臭素化p−クミルフェノールについて、元素分析、核磁気共鳴スペクトル、ガスクロマトグラフィー及び赤外吸収スペクトルを測定した結果を以下に示す。
【0038】
この元素分析結果より算出した一分子当たりの平均臭素化数は2.61であった。
【0039】
(2)核磁気共鳴スペクトル(CDCl3、1H、ppm):δ1.4〜1.8(m、6H)、5.7〜5.8(s、1H)、6.9〜7.6(m、6.4H)。
【0040】
(3)ガスクロマトグラフィー(DB−1、0.25mm×15m)ジブロモ体;39.59wt%、ジブロモクロロ体;2.16wt%、トリブロモ体;53.28wt%、テトラブロモ体;4.68wt%、ペンタブロモ体;0.01wt%、低沸点物;0.28wt%。
【0041】
(4)赤外吸収スペクトル(KBr、cm-1):3495、2970、1763、1648、1589、1559、1475、1396、1364、1320、1271、1246、1200、1170、1141、1092、1009、930、876、863、825、788、737、716。
【0042】
実施例1
撹拌機及び滴下ロートを備えた0.3リットルの4つ口丸底フラスコに参考例1で得られた平均臭素化数2.61の臭素化p−クミルフェノール34.16g(0.080モル)、ジクロロメタン100g及びトリエチルアミン8.10g(0.080モル)を仕込み、冷却循環恒温装置を用いて10℃に冷却した。
【0043】
次いでTCF3.96g(0.020モル)及びジクロロメタン50gを臭素化p−クミルフェノール溶液に30分間かけて滴下し、10℃で2時間熟成を行った。
【0044】
反応後、反応液に1%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを12にした後、塩酸を添加して中和し、分液を行った。
【0045】
貧溶媒としてn−ヘキサン200gを用いて、分液後のジクロロメタン溶液を滴下して難燃性カーボネート化合物17.79gの白色結晶を得た。この得られた難燃性カーボネート化合物について、元素分析、融点、核磁気共鳴スペクトル、赤外吸収スペクトル及び熱天秤を測定した結果を以下に示す。
【0046】
この元素分析結果より算出した一分子当たりの平均臭素化数は5.22であった。
【0047】
(2)融点:231−234℃。
【0048】
(3)核磁気共鳴スペクトル(CDCl3、1H、ppm):δ1.6〜1.7(s、12H)、7.0〜7.5(m、12.8H)。
【0049】
(4)赤外吸収スペクトル(KBr、cm-1):2972、1788、1583、1556、1455、1391、1229、1092、1008、825、744、721。
【0050】
(5)熱天秤(℃):5%重量減少(390)、10%重量減少(408)、50%重量減少(455)。
【0051】
実施例2
ABS(東レ製#10)100重量部に対して、実施例1と同様の製法で得られた臭素含量48.3重量%の難燃性カーボネート化合物30重量部、三酸化アンチモン10重量部を添加し、210℃でロール混練りを行い、210℃でプレス成型し試料片を作製した。得られた試料片について、燃焼性試験及び耐光性経時変化(色差計によるΔE値)の測定を下記試験法で実施した。
【0052】
(1)燃焼性試験
得られた試料片を、JIS K 7201に規格されている酸素指数測定法及びUL94V垂直燃焼性試験方法に準拠して燃焼性の評価を行った。
【0053】
(2)耐光性経時変化(色差計によるΔE値)
得られた試料片をアイスーパーUVテスター(33mW/cm2)を用い65℃での耐光性経時変化(色差計によるΔE値)を測定した。
【0054】
ΔE値={(L−L0)2+(a−a0)2+(b−b0)2}1/2
L0、a0、b0:耐光性試験前の試料片測定値
L、a、b :耐光性試験後の試料片測定値
結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
比較例1、比較例2
ABS(東レ製#10)100重量部に対して、市販のトリス(トリブロモフェノキシ)−s−トリアジン(比較例1:第一製薬製、SR−245)又は参考例1で得られた臭素化p−クミルフェノール(比較例2)を表1に示す配合量で配合し、実施例2と同様の方法により試料片を作製し、さらに燃焼性試験及び耐光性経時変化(色差計によるΔE値)の測定を行った。結果を表1にあわせて示す。
【0057】
表1から明らかなように本発明の難燃性カーボネート化合物は市販剤と同等の難燃性能を示し、さらに高い耐光性を示した。
Claims (6)
- 一般式(1)において、a1+a2+b1+b2=4〜5の化合物を0〜80モル%、a1+a2+b1+b2=6の化合物を80〜0モル%及びa1+a2+b1+b2=7〜10の化合物を0〜20モル%含有することを特徴とする請求項1に記載の難燃性カーボネート化合物の組成物(但し、a1+a2+b1+b2=4〜5の化合物、a1+a2+b1+b2=6の化合物、及びa1+a2+b1+b2=7〜10の化合物のいずれもが0モル%になることはない。)。
- 請求項1又は請求項2に記載の難燃性カーボネート化合物を樹脂に配合することを特徴とする難燃性樹脂組成物。
- 樹脂100重量部に対して難燃性カーボネート化合物を5〜50重量部配合することを特徴とする請求項5に記載の難燃性樹脂組成物。
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