JP4324790B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents
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Description
ところで、近年、燃焼空燃比をリーン空燃比として燃焼を行うリーンバーンエンジンが開発され実用化されており、当該リーンバーンエンジンにおいては、リーン空燃比での運転(高酸素濃度運転)を長期間に亘り行った後、リッチ空燃比或いはストイキ(理論空燃比)での運転(低酸素濃度運転)に切り換えると、上記触媒の存在によってもNOxが十分に浄化されず、所謂NOxスパイクが発生するという問題がある。
このようなNOxスパイクを防止するためには、リーン空燃比での運転直後或いは燃料カットからの燃料復帰時において短期的な空燃比のリッチ化を行い、触媒を低酸素濃度雰囲気(還元雰囲気)にすることが効果的である。
かかるNOxスパイクが残存する問題は、特に燃料カット実施直後において、吸気系及び排気系に酸素が多量に存在しているために起こると考えられ、例えば、燃料カット復帰後において排気管内の酸素濃度が低下するまで空燃比のリッチ化を禁止することが考えられている(特許文献1等参照)。
ある種の触媒は、酸素濃度の高い高酸素濃度雰囲気(酸化雰囲気)にあるときに貴金属等の周りに酸素を捕捉(吸着、吸蔵等を含む)し、酸素濃度の低い低酸素濃度雰囲気(還元雰囲気)にあるときに低酸素濃度或いは還元剤により当該捕捉した酸素を放出する性質を有しており、酸化雰囲気下における当該酸素の貴金属等への捕捉量が多いと、触媒の浄化能力が低下し、主として排気中のNOxを十分に浄化できないという特性を有している(これを酸素被毒を含む概念として酸素被爆という)。さらに、このように貴金属等に捕捉された酸素を還元雰囲気下で放出しようとしても、酸素の放出にはある程度の時間を要し、触媒におけるNOxの浄化性能を直ぐには最適な状態に復活させることができないという特性を有している。
しかしながら、図7にO2吸着量とO2パージ速度と還元剤流入速度との関係を示すように、一定の排気圧のもとではO2吸着量とO2パージ速度との間には一定の関係があり、空燃比のリッチ化度合いを高めたとしてもO2パージ速度(還元剤によるO2放出速度)に対して還元剤流入速度が速すぎると、余剰の還元剤が生じ、NOxスパイクはある程度抑制されるとしても、前記一定の排気圧下でのO2パージ速度以上の速度でO2が放出されることはなく、却ってHC・COスパイク等を発生させるという新たな問題が発生する。
ところが、低酸素濃度運転への切り換え直後に空燃比をリッチ化して低酸素濃度運転に切り換えると同時に触媒を含む排気系の排気圧を上昇させると、実際には排気系容積があることから排気圧は瞬時には上昇せず、当該排気圧が十分に上昇するまでの間、依然としてO2パージ速度は遅いままであり、やはり余剰の還元剤が生じ、HC・COスパイク等の発生を確実に抑えることができないという問題がある。また、余剰の還元剤が生じることは、燃費の悪化にも繋がり好ましいことではない。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、燃料カット等の高酸素濃度運転後においてHC・COスパイク等の発生や燃費の悪化を最小限に抑えつつ触媒を最適な状態に早期に復活させてNOxスパイクを効果的に抑制可能な内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
即ち、例えば排気中の酸素濃度が高酸素濃度となる空燃比での運転終了後には、触媒の貴金属には多量の酸素が捕捉されて触媒の浄化能力が低下する傾向にあるため、浄化能力低下判定手段により酸素の捕捉による触媒の浄化能力低下が判定されると、触媒の雰囲気が還元雰囲気側になるよう排気空燃比をリッチ空燃比側に調整する。
先ず、第1実施例について説明する。
図1を参照すると、車両に搭載された本発明に係る排気浄化装置を含む内燃機関のシステム構成図が概略的に示されている。
同図に示すように、内燃機関であるエンジン本体(以下、単にエンジンという)1としては、吸気管噴射型(Multi Point Injection:MPI)リーンバーンガソリンエンジンが採用される。
シリンダヘッド2には、各気筒毎に吸気ポート9が形成されており、各吸気ポート9の燃焼室5側には、エンジン回転に応じて回転するカムシャフト12のカムに倣って開閉作動し、各吸気ポート9と燃焼室5との連通と遮断とを行う吸気弁11がそれぞれ設けられている。そして、各吸気ポート9には吸気マニホールド10の一端がそれぞれ接続されている。吸気マニホールド10には、電磁式の燃料噴射弁6が取り付けられており、燃料噴射弁6には、燃料パイプ7を介して燃料タンクを擁した燃料供給装置(図示せず)が接続されている。
また、シリンダヘッド2には、各気筒毎に略水平方向に排気ポート13が形成されており、各排気ポート13の燃焼室5側には、エンジン回転に応じて回転するカムシャフト16のカムに倣って開閉作動し、各排気ポート13と燃焼室5との連通と遮断とを行う排気弁15がそれぞれ設けられている。そして、各排気ポート13には排気マニホールド14の一端がそれぞれ接続されている。
排気マニホールド14の他端には排気管(排気通路)20が接続されており、当該排気管20には、排気浄化触媒装置として三元触媒30が介装されている。
三元触媒30は、貴金属として銅(Cu),コバルト(Co),銀(Ag),白金(Pt),ロジウム(Rh),パラジウム(Pd)の少なくともいずれか或いは酸素ストレージ材としてセリア(Ce),ジルコニア(Zr)の少なくともいずれかを有している。貴金属等は、酸素捕捉機能を有しており、排気空燃比(排気A/F)がリーン空燃比(リーンA/F)である高酸素濃度雰囲気(酸化雰囲気)中において酸素(O2)を捕捉(吸着、吸蔵等)すると、排気A/Fがリッチ空燃比(リッチA/F)となり低酸素濃度雰囲気(還元雰囲気)となるまでその捕捉O2を解離Oの状態で保持し、還元雰囲気中において当該捕捉O2を脱離し放出する特性を有している。また、貴金属等はNOxやSOx等の酸化物をも一時的に捕捉する機能を有している。
さらに、排気管20の三元触媒30よりも下流側には、排気圧上昇弁ユニット(排気圧上昇手段)40が介装されている。
バイパス通路25はバタフライ弁42を迂回するように構成されており、排気圧調整弁44は排気管20とバイパス通路25の上流側との分岐部に設けられている。
ECU50は、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM等)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えており、当該ECU50により、排気浄化装置を含めたエンジン1等の総合的な制御が行われる。
また、当該エンジン1は、車両の減速走行時において燃料供給を停止し、燃料カットを実施することが可能に構成されている(燃料カット手段)。つまり、当該エンジン1では、運転者がアクセルペダル(図示せず)の踏み込みを中止し且つエンジン回転速度Neが所定回転速度以上の場合において、燃料噴射弁6からの燃料噴射を停止して適宜燃料カットを行うようにしている。そして、当該エンジン1では、燃料カット復帰条件が成立し、燃料カットを終了して燃料供給を復帰させた直後、即ち燃料復帰直後には、十分なエンジン出力を得るべく、また燃料カットによって触媒30に多量に吸着された捕捉O2を放出すべく、目標A/FをリッチA/Fに設定するようにしている。なお、燃料カットは、全気筒について実施するようにしてもよいし、一部気筒についてのみ実施するようにしてもよい。
かかるNOxスパイクは、目標A/Fひいては排気A/FをリッチA/Fにしても、酸素被爆により、三元触媒機能が求められている貴金属等に捕捉された捕捉O2が直ぐには放出されないために障害となり、リーンA/FからリッチA/Fへの遷移中に発生する排気中のNOxを十分に浄化しきれないために発生すると考えられる。
図2を参照すると、本発明の第1実施例に係る酸素被爆復活制御の制御ルーチンがフローチャートで示されており、以下同フローチャートに沿い説明する。
・燃料カット継続時間>所定時間
・燃料カット中の触媒に流入する排気流量の積算値>所定値
ここに、所定時間、所定値は、定数でもよいし、予め運転条件(エンジン回転速度Ne、体積効率、排気流量、吸入空気流量、吸気管圧、触媒温度、排気温度、冷却水温度のうちの少なくとも一つ以上)に応じて最適化された値を記憶しておき、種々運転条件に応じて記憶した設定期間を読み出すようにしてもよい。
これにより、酸素被爆状態にあるか否かをより確実に判定することができる。
このように三元触媒30を含む排気系の排気圧を上昇させると、上述したようにO2パージ速度が促進される(図7に破線で示す)。
この際、排気の風切り音が問題となるような場合には、例えばバタフライ弁42を徐々に開弁させ、上昇した排気圧を徐々に低下させるようにするのがよい。
このようにすれば、目標A/Fのリッチ化を行うことにより還元剤(HC、CO等)の三元触媒30への流入速度が上昇しても、その時点ではO2パージ速度は還元剤流入速度を上回るほど速くなっており(図7参照)、HC・COスパイク等の発生が十分に抑制される。また、排気圧を上昇させている間、即ちO2パージ速度が十分に速くなるまでの間は不必要に目標A/Fがリッチ化されることがなく、燃費の悪化も抑制される。そして、O2パージ速度が速くなることでO2パージ時間が短縮され、比較的早期に三元触媒30が最適な状態に復活してNOx吸着速度がNOx流入速度を上回り(図6の許容値以上)、NOxスパイクが良好に防止される。
つまり、ステップS10’において燃料カット復帰条件が成立して所定期間内か否かを判別し、判別結果が真(Yes)で燃料カット復帰条件が成立して所定期間内と判定されると、ステップS12において排気圧を上昇させ、ステップS14の判別が真(Yes)の場合に、ステップS16’において燃料カットを復帰させるとともに目標A/Fをリッチ化し、一方、ステップS14の判別が偽(No)の場合に、ステップS18’において燃料カットを継続するようにしてもよい。
第2実施例においても排気浄化装置のシステム構成は上記第1実施例の場合と同様であり、ここでは上記第1実施例と異なる部分についてのみ説明する。
図4を参照すると、第2実施例に係る酸素被爆復活制御の制御ルーチンがフローチャートで示されており、以下同フローチャートに沿い説明する。なお、当該フローチャートにおいても、上記図2と同一のステップについては説明を省略する。
そして、ステップS22において、上記推定された排気圧に応じて目標A/Fをリッチ化する。
このようにすれば、排気圧の上昇途中或いは排気圧が変動する場合等においても排気圧に応じて、即ちO2パージ速度に応じてO2パージが実施されることになり、HC・COスパイク等の発生を抑制しながら、三元触媒30が効率よく速やかに最適な状態に復活してNOx吸着速度がNOx流入速度を上回り(図6の許容値以上)、NOxスパイクが良好に防止される。
第3実施例においても排気浄化装置のシステム構成は上記第1実施例の場合と同様であり、ここでも上記第1実施例と異なる部分についてのみ説明する。
図5を参照すると、第3実施例に係る燃料カット復帰制御の制御ルーチンがフローチャートで示されており、以下同フローチャートに沿い説明する。なお、当該フローチャートは上記図3の燃料カット復帰制御の制御ルーチンに対応しており、上記図3と同一のステップについては説明を省略する。
ステップS4では、排気圧上昇手段を作動状態とし、即ち排気圧上昇弁ユニット40のバタフライ弁42及び排気圧調整弁44をそれぞれ閉弁制御し、三元触媒30を含む排気系の排気圧を上昇させる。つまり、当該第3実施例では、燃料カットを実施中から排気圧を上昇させるようにする。
ステップS11では、空気量を増量する。具体的には、スロットル弁17を開弁側に制御して吸入空気量を増量させる。このようにすると、排気圧上昇手段については既に作動状態であることから、スロットル弁17の開弁操作によって排気圧を比較的瞬時に上昇させることができる。
以上で本発明に係る内燃機関の排気浄化装置の実施形態の説明を終えるが、実施形態は上記に限られるものではない。
また、上記実施形態では、排気浄化触媒装置が三元触媒30である場合を例に説明したが、本発明はNOx触媒、HCトラップ触媒、その他の種々の触媒を用いた触媒システムにも適用可能である。
また、上記実施形態では、酸素被爆を例に説明したが、始動リッチ運転解除後や高負荷運転時におけるHC被爆やCO被爆からの復活の際においても、排気圧を上昇させた後にリーン化することで、不必要なリーン化を行わず、NOxの排出を抑制することができる。
6 燃料噴射弁
17 スロットル弁
22 排気センサ
24 排気圧センサ(排気圧上昇判定手段、排気圧検出手段)
30 三元触媒
40 排気圧上昇弁ユニット(排気圧上昇手段)
42 バタフライ弁
44 排気圧調整弁
50 ECU(電子コントロールユニット)
Claims (2)
- 排気系に設けられ、排気中の所定の排気成分を捕捉及び放出可能な触媒と、
排気空燃比を調整することにより前記触媒の雰囲気を酸化雰囲気と還元雰囲気との間で切換可能な排気空燃比調整手段と、
前記所定の排気成分の捕捉による前記触媒の浄化能力低下を判定する浄化能力低下判定手段と、
前記触媒を含む排気系内の排気圧を上昇させる排気圧上昇手段と、
前記排気圧上昇手段により排気系内の排気圧が上昇したか否かを判定する排気圧上昇判定手段とを備え、
前記排気圧上昇判定手段は、排気圧を検出する排気圧検出手段を含み、前記排気空燃比調整手段は、前記排気圧検出手段により検出される排気圧に応じて前記触媒の雰囲気が捕捉された所定の排気成分を放出させる雰囲気側になるよう排気空燃比を調整することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。 - 前記浄化能力低下判定手段は酸素の捕捉による前記触媒の浄化能力低下を判定するものであって、
前記排気空燃比調整手段は、前記浄化能力低下判定手段により酸素の捕捉による前記触媒の浄化能力低下が判定されたとき、排気空燃比をリッチ空燃比側に調整することを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
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