JP4360048B2 - 内燃機関の排気浄化システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関(特にディーゼルエンジン)から排出される有害成分を効果的に低減するための内燃機関の排気浄化システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関から排出される排気中の有害成分を浄化する手段として、一般的に触媒が使われているが、触媒反応は化学反応であるため、温度が高く触媒が活性化していないと浄化できない。これに対し、車両走行時は加減速が繰り返されるため、加速あるいは高速走行により触媒温度が上がっても、その直後の減速時に触媒が冷えてしまい、走行全体では触媒が有効に働く時間が少なく、十分な排ガス浄化効果を得られないという問題があった。この問題は、比較的排気温度が低いディーゼルエンジンにおいて特に顕著となる。
【0003】
また、特開平5−133285号公報に記載された発明では、車両減速時に吸気量を絞ると共にEGR弁を全開にして排気温度を昇温することにより、排気管に設けた排気浄化装置を昇温させて排気を浄化する技術が開示されている。この方法によると、燃料噴射がカットされた後、排気浄化装置に流入する低温排気の量を減らすことで、排気浄化装置の温度低下をある程度抑制可能である。
【0004】
しかし、これは言い換えれば、温度低下の速度を遅らせるものであり、温度低下そのものを防止することは困難である。その結果、排気浄化手段として触媒を用いる場合、その活性状態を維持することはできない。従って、この技術を適用しても、やはり走行全体に対し触媒が有効に働く時間が少なくなり、十分な排ガス浄化効果が得られないという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、触媒の活性状態に応じて適度な後噴射を行うことにより、触媒を活性化させて排気中の有害成分を低減可能な内燃機関の排気浄化システムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
(請求項1の発明)
本発明は、車両が減速中であることを検出する減速検出手段と、内燃機関の排気管に設置され、内燃機関から排出される有害成分を浄化する排気浄化手段と、この排気浄化手段の活性状態を判定する活性状態判定手段と、排気浄化手段への炭化水素の吸着量(HC吸着量)を推定するHC吸着量推定手段と、内燃機関の膨張行程で少量の燃料を噴射することを後噴射と呼ぶ時に、この後噴射の実行及び停止を制御する後噴射制御手段とを備える。その後噴射制御手段は、車両減速中に活性状態判定手段で検出した排気浄化手段の活性状態及びHC吸着量推定手段で推定した排気浄化手段へのHC吸着量に応じて後噴射を実行するか否かを決定する。
【0007】
本発明は、車両減速中に後噴射を行って未燃炭化水素(未燃HC)を供給することで排気浄化手段をより有効に使うことを狙ったものである。そのため、排気浄化手段の活性状態とHC吸着量に応じて未燃HCの供給をコントロールしている。なお、排気浄化手段に未燃HCを供給する手段としては、内燃機関の膨張行程で少量の燃料を噴射する(後噴射)ことで行う。これにより、新たな装置を付加することなく、未燃HCの供給が可能となる。
【0008】
また、後噴射制御手段は、車両減速中かつ排気浄化手段の活性状態が高い場合、あるいは車両減速中かつ排気浄化手段の活性状態が低い場合でもHC吸着量推定手段で推定した排気浄化手段へのHC吸着量の積算量が所定値未満の場合には後噴射を連続して実行し、車両減速中かつ排気浄化手段の活性状態が低い場合にHC吸着量の積算量が所定値以上となった後は後噴射を中止することで、その後の加速時の排気浄化手段の活性に必要なHC吸着量を調節する。
【0009】
例えば、排気浄化手段として触媒を使用する場合、触媒温度が高く(例えば250℃以上)、活性状態が高いところへ未燃HCを供給すると、供給した未燃HCが触媒上で反応する。従って、車両減速時のように低温の排気が流入する場合でも、触媒は活性状態を維持することができる。こういう状況下では、後噴射を連続して行い、減速中でも触媒の活性状態を高く維持して、その後の加速の最初から触媒が有効に働くようにする。これにより、従来と比較して大幅に触媒を有効利用することができる。
【0010】
一方、触媒温度が低く(例えば250℃未満)、活性状態が低いところへ未燃HCを供給すると、その未燃HCが触媒上で反応することなく、触媒表面に吸着される。この吸着量が適度(例えば1g以下)であれば、その後の加速時に吸着していた未燃HCが脱離して反応することで大きな反応熱が得られる。その結果、反応熱で触媒が早く活性化温度に到達するため、加速初期(有害成分の排出量が多く触媒を働かせることで大きな効果が得られる)から触媒を有効に働かせることができる。
【0011】
ところが、触媒温度が低いところへ限度を超えた多量の未燃HCを供給すると、触媒で反応せずに吸着され、触媒表面を覆ってしまう。その結果、触媒と排気との間のガス交換が遮られ、触媒作用が大きく低下する「HC被毒」が起こる。触媒がHC被毒を起こすと、被毒したHCが反応して触媒活性が回復するまでに時間がかかるため、その後の加速時にも触媒を十分に働かせることができない。そこで、これを回避するために、触媒の活性状態が低い場合は、触媒へのHC吸着量が適量となるまで(所定値未満)は後噴射を行い、適量となった後(所定値以上)は後噴射を中止する。これにより、その後の加速初期から触媒を十分に働かせることができる。
【0012】
(請求項の発明)
請求項に記載した内燃機関の排気浄化システムにおいて、
活性状態判定手段は、排気浄化手段より下流の排気管に設置した排気温度検出手段を備え、この排気温度検出手段で検出した排気温度が所定値以上の場合に排気浄化手段の活性状態が高いと判定する。
この場合、排気浄化手段の温度を代表する触媒出ガス温度を検出することで、精度良く排気浄化手段の活性状態を判定することができる。
【0013】
(請求項の発明)
請求項に記載した内燃機関の排気浄化システムにおいて、
活性状態判定手段は、排気浄化手段より上流及び下流の排気管にそれぞれ設置した排気温度検出手段を備え、両排気温度検出手段の出力から排気浄化手段の温度を推定し、その推定温度が所定値以上の場合に排気浄化手段の活性状態が高いと判定する。
これにより、加減速時の触媒活性状態をより正確に判定することができる。
【0014】
(請求項の発明)
請求項1〜に記載した何れかの内燃機関の排気浄化システムにおいて、
HC吸着量推定手段は、車両減速開始後に活性状態判定手段で排気浄化手段の活性状態が低いと判定された後の後噴射量を積算し、その積算値を基にHC吸着量を推定する。
【0015】
車両減速中かつ排気浄化手段の活性状態が低い場合は、後噴射により未燃HCが触媒で反応することなく吸着し、さらに減速中は内燃機関のシリンダ内の温度が低く、後噴射燃料はシリンダ内で燃焼することなく、排気浄化手段へと到達するため、後噴射量を積算することで、排気浄化手段のHC吸着量を推定することができる。但し、排気浄化手段がフロースルータイプの場合等は、供給した未燃HCが100%吸着するわけではないため、例えば後噴射量の積算値に係数をかけて吸着量を推定することが望ましい。
【0016】
(請求項の発明)
請求項1〜に記載した何れかの内燃機関の排気浄化システムにおいて、
内燃機関は、排気の一部を吸気中に戻す排気還流手段と、この排気還流手段による排気還流量を制御する排気還流制御手段とを備え、この排気還流制御手段は、車両減速中には排気還流量を通常より増加する。
これにより、車両減速中に低温の排気が排気浄化手段へ多量に流入することを抑制でき、排気浄化手段が低温の排気によって冷却されるのを抑制できる。
【0017】
(請求項の発明)
請求項1〜に記載した何れかの内燃機関の排気浄化システムにおいて、
排気浄化手段は、酸化性能を有する触媒を担持している。これにより、排気中の有害成分を酸化触媒で容易に浄化可能である。これは、フロースルータイプの触媒、あるいはパティキュレートフィルタの何れにも適用可能である。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図2は4気筒ディーゼルエンジンに適用される排気浄化システムの全体構成図である。
この排気浄化システムが適用されるディーゼルエンジン1は、図2に示す様に、コモンレール式の燃料噴射装置を搭載し、図示しない高圧ポンプから圧送された高圧燃料が常時コモンレール2に蓄えられ、所望の圧力、噴射量、噴射時期でインジェクタ3から噴射される。
【0019】
本排気浄化システムは、エンジン1の排気管4と吸気管5とを接続する排気還流管6、この排気還流管6内に設けられるEGR量制御弁7、排気還流管6の途中に設けられるEGR冷却装置8、吸気管5内に設けられる吸気絞り弁9、ターボ10の下流に設置される排気浄化装置11、エンジン1の運転状態を検出する各種センサ(後述する)、この各種センサで検出された情報に基づき、本システムの作動を制御する電子制御装置(以下ECU12と呼ぶ)等より構成される。
【0020】
EGR量制御弁7と吸気絞り弁9は、例えば空気圧(負圧)あるいは電気モータ等で直接駆動され、両者を所定の開度に設定することで所定量の排気が吸気側へ還流される。
EGR冷却装置8は、図示しない冷却水が導入され、その冷却水との熱交換によってEGRガス(排気還流管6を通って吸気中に還流する排気ガス)を冷却するもので、例えば冷却効率の高い積層フィンタイプが用いられる。
【0021】
従って、EGRガスは、高温で膨張した状態ではなく、冷却されて高密度に収縮した状態でエンジン1のシリンダ内へ導入される。その結果、シリンダ内へ吸入する酸素量をさほど低減することなく、シリンダ内の不活性ガス量を増加することが可能となるため、スモークを増加させることなく、より多量のEGRを実施できる。
排気浄化装置11は、例えばコージェライト等の多孔質セラミックあるいは金属から成る担体上にPtやPd等の貴金属を主成分とする酸化触媒が担持されている。この触媒作用により、排気中の有害成分である炭化水素、一酸化炭素、パティキュレート(特にSOF分)を酸化浄化できる。
【0022】
ECU12は、エンジン回転数センサ13、アクセル開度センサ14、噴射圧力センサ15、排気温度センサ16等の各種センサで検出された情報を入力し、これらの情報に基づいて各気筒のインジェクタ3を駆動する電磁弁3a、及び吸気絞り弁9、EGR量制御弁7等の各種アクチュエータを電気的に制御する。
また、車両減速中には、ピストンの上死点近傍で噴射される主噴射に加えて、排気浄化装置11の触媒を活性化するために、膨張行程で少量の燃料を追加噴射する後噴射(ポスト噴射)を実行する。
【0023】
エンジン回転数センサ13は、エンジン1のクランクシャフト(図示しない)に配置されて、エンジン回転速度を検出する。
アクセル開度センサ14は、図示しないアクセルペダルの踏み込み量からアクセル開度を検出する。
噴射圧力センサ15は、コモンレール2に取り付けられ、コモンレール2内の燃料圧力を検出する。
排気温度センサ16は、排気浄化装置11より下流の排気管4に配置され、排気浄化装置11へ流入した排気が触媒との間で熱交換を行った後の排気温度を検出する。
【0024】
次に、本排気浄化システムの作動(ECU12の処理手順)を図1に示すフローチャートに基づいて説明する。
Step100 (本発明の減速検出手段)…現在車両が減速中か否かを判定する。これは、例えばエンジン回転数の変化やアクセル開度、主噴射による燃料噴射量を基に判定される。ここで、減速中と判定された時はStep101 へ進み、減速中でないと判定された時はStep100 を繰り返す。
【0025】
Step101 …排気浄化装置11の触媒を保温するために、吸気絞り弁9を絞ると共にEGR量制御弁7を全開にする。これにより、減速中に排気浄化装置11へ低温の排気が流入することを防止でき、触媒の温度低下を防ぐことができる。
Step102 …排気温度センサ16の出力から排気温度を読み込む。この排気温度センサ16で検出される排気温度は、排気浄化装置11へ流入した排気が触媒との間で熱交換を行った後の温度であり、触媒床温(触媒の中心温度)を良く代表しているため、触媒の活性状態を判定する際に用いる。
【0026】
Step103 …触媒の活性状態を表す指標を算出する。この指標は、触媒下流の排気温度から求める。最も簡単な方法としては、Step102 で検出した排気温度そのものを指標とする方法がある。その他、車両減速中の触媒の温度変化をより正確に推定するために、触媒の熱容量を考慮して、触媒の温度変化に時間遅れを持たせる等の方法を用いても良い。
【0027】
Step104 (本発明の活性状態判定手段)…排気浄化装置11の触媒が活性状態にあるか否かを判定する。例えば、触媒下流の排気温度が所定値(250℃)以上であれば、触媒が活性状態にあると判定する。ここで、触媒が活性状態ではないと判定された時はStep105 へ進み、活性状態にあると判定された時はStep107 へ進む。
【0028】
Step105 (本発明のHC吸着量推定手段)…触媒が活性状態でない時の触媒表面へのHC吸着量を算出し、そのHC吸着量が所定値未満であるか否かを判定する。HC吸着量の算出は、例えば車両減速中に触媒が不活性状態になった(触媒下流の排気温度が250℃未満になった)後の後噴射量の積算値を基に算出することができる。但し、後噴射により供給された未燃HCが100%触媒表面上に吸着するわけではないので、例えば後噴射量の積算値に係数(例えば0.8等の1以下の数)を掛けてHC吸着量を推定しても良い。ここで、HC吸着量が所定値以上と判定された時はStep106 へ進み、所定値未満と判定された時はStep107 へ進む。
【0029】
Step106 …後噴射を中止する。すなわち、排気浄化装置11の触媒が活性状態になく、触媒表面へのHC吸着量が所定値以上の場合は、触媒のHC被毒を回避するために後噴射を中止する。
Step107 …後噴射を実行して本ルーチンを終了する。
触媒が活性状態にある場合(Step104 の判定結果がYES の時)は、後噴射を実行して排気浄化装置11に未燃HCを供給する。これにより、車両減速中であっても、触媒へ供給される未燃HCの反応熱により触媒を活性状態に維持することができる。その結果、その後の車両加速時において、有害成分の排出量が多い加速初期から触媒を十分に働かせることができる。
【0030】
また、触媒が活性状態になくても、触媒表面へのHC吸着量が所定値に満たない場合(Step105 の判定結果がYES の時)は、後噴射を実行して触媒表面に所定量の未燃HCを吸着させる。この未燃HCは、その後の車両加速時に触媒で反応し、その反応熱により速やかに触媒を昇温させて活性化することが可能となる。その結果、車両加速時において、有害成分の排出量が多い加速初期から触媒を十分に働かせることができる。
【0031】
続いて、本実施形態の効果について図3及び図4を基に説明する。
図3は車両減速前に排気浄化装置11の触媒が活性化している場合の触媒温度と浄化特性を表すタイムチャートである。
a)触媒保温制御及び減速時の後噴射無し(図中:制御なし)
排気浄化装置11の触媒は、減速時(時間A〜Bの間)の排気温度の低下とともに急速に活性温度Ta以下に冷却される。触媒の熱容量があるため、一旦冷えると加速後(時間C以降)も昇温が遅く、触媒が活性化しない(働かない)。
【0032】
b)触媒保温制御のみ実行(図中:従来)
例えば、吸気絞り弁9を絞ると共にEGR量制御弁7を全開にして排気浄化装置11へ流入する低温排気の量を低減することで、上記の触媒保温制御及び後噴射を実行しない場合と比較して、触媒の温度低下を遅延させることが可能である。しかし、触媒の温度低下を阻止することはできない。触媒が一旦、活性温度Ta以下まで冷えてしまうと、加速時の触媒昇温が遅く、触媒がなかなか活性化しない(働かない)ため、有害成分(図ではHCを例に記述)の浄化ができない。
【0033】
c)触媒保温制御及び減速時の後噴射有り(図中:本発明)
減速時に触媒が活性温度Ta以上であることを検出し、後噴射を実行する。これにより、未燃HCが排気浄化装置11へ供給され、その反応熱により触媒温度が活性温度Ta以上に維持される。その結果、有害成分の排出量が多い加速の最初(時間C)から触媒が活性化されて有効に働くことができる。
【0034】
図4は車両減速前に排気浄化装置11の触媒が活性化していない場合の触媒温度と浄化特性を表すタイムチャートである。
a)触媒保温制御及び減速時の後噴射無し(図中:制御なし)
排気浄化装置11の触媒は、定速走行時(時間A以前)に活性温度Ta以下まで冷却されており、その後、減速時(時間A〜Bの間)の排気温度の低下とともに更に冷却される。触媒の熱容量があるため、一旦冷えると加速後(時間C以降)も昇温が遅く、触媒が活性化しない(働かない)。
【0035】
b)触媒保温制御のみ(従来)
例えば、吸気絞り弁9を絞ると共にEGR量制御弁7を全開にして排気浄化装置11へ流入する低温排気の量を低減することで、上記の触媒保温制御及び後噴射を実行しない場合と比較して、触媒の温度低下を遅延させることが可能である。しかし、触媒の温度低下を阻止することはできない。触媒が一旦冷えてしまうと、加速開始後の昇温が遅く、触媒がなかなか活性化しない(働かない)ため、有害成分の浄化ができない。
【0036】
c)触媒保温制御、減速時後噴射有り
減速時に触媒が活性温度Ta以下である場合には、所定量だけ後噴射を実施する(時間AからDまで)。これにより、未燃HCを触媒表面へ所定量だけ吸着させることができる。その際、触媒入ガスHCは増加するが、HCが触媒表面に吸着するため、触媒出ガスHCは増加せず、エミッションの悪化はない。その結果、触媒はHC被毒を生じることなく、さらに吸着HCが加速時に触媒から脱離して酸化反応を起こすため、速やかに触媒温度が上昇し、有害成分の排出量が多い加速初期(時間E以降)から触媒が活性化されて有効に働くことができる。
【0037】
以上、排気浄化装置11として酸化触媒を用いた場合を例に説明したが、その他、NOx触媒や酸化触媒を担持したパティキュレートフィルタ、あるいはこれらの組み合わせの何れでも良い。
また、内燃機関の中でもコモンレール式の噴射系を持つディーゼルエンジンでは、エンジン運転条件に応じて燃料の噴射圧が可変制御されるが、これは通常車両速度が高く、エンジン負荷が大きいほど高圧に設定されている。
【0038】
しかし、その一方で、噴射圧を高くすると燃焼速度が早くなるため、燃焼騒音が急激に増大する。これを防ぐため、もともとスモークが出にくい低速走行時には、速やかに噴射圧を低下して騒音低減を優先する必要がある。このためには、コモンレール内に蓄えられている高圧燃料を逃がして速やかに噴射圧を下げる必要がある。これを行うために、普通コモンレール内の燃料圧を下げるための減圧機構(例えば減圧弁など)を新たに設けて対処する。
【0039】
これに対し、本発明を適用することで、高速走行後の減速時に後噴射を行うことでコモンレール内の燃料圧を急速に低下することが可能となる。これにより、その後の低速走行時の燃料圧を下げることができる。従って、減圧弁を新設することなく、あるいは従来よりも減圧弁の作動回数を大幅に低減できるため、簡素な構成にできるという効果をも合わせ持つものである。
【0040】
(第2の実施形態)
図5は4気筒ディーゼルエンジン1に適用される排気浄化システムの全体構成図である。
本実施形態の構成は、第1の実施形態で説明したシステムに加えて、排気浄化装置11より上流の排気管4にも排気温度センサ17(図5参照)を設置した点が異なるのみで、その他のシステム上の構成は同じであり、その説明は省略する。
排気温度センサ17は、触媒へ流入する排気の温度を検出するもので、センサ出力がECU12に入力される。
【0041】
本実施形態の作動(ECU12の処理手順)について図1に示すフローチャートを基に説明する。
なお、本実施形態の作動は、図1に示すフローチャートの処理内容を一部変更しただけであり、ここでは、第1の実施形態との変更点(Step102 〜Step103 )についてのみ説明する。
Step102 …排気温度センサ16、17の出力から触媒上流の排気温度と触媒下流の排気温度を読み込む。
【0042】
Step103 …触媒の活性状態を表す指標を算出する。ここでは、最も簡単な方法として、Step102 で読み込んだ触媒上流の排気温度と触媒下流の排気温度との平均温度から求める。あるいは、触媒下流の排気温度の方が触媒の活性状態をより反映することから、例えば触媒下流の排気温度の方により大きな重み付け係数を掛けて平均温度を求めても良い。これにより、加速中及び減速中などの触媒温度が刻々と変化する中でも正確に触媒の活性状態を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係わるECUの処理手順を示すフローチャートである。
【図2】排気浄化システムの全体構成図である(第1の実施形態)。
【図3】車両減速前に触媒が活性化している場合の触媒温度と浄化特性を表すタイムチャートである。
【図4】車両減速前に触媒が活性化していない場合の触媒温度と浄化特性を表すタイムチャートである。
【図5】排気浄化システムの全体構成図である(第2の実施形態)。
【符号の説明】
1 エンジン(内燃機関)
4 排気管
6 排気還流管(排気還流手段)
7 EGR量制御弁(排気還流制御手段)
11 排気浄化装置(排気浄化手段)
12 ECU(後噴射制御手段、排気還流制御手段)
16 排気温度センサ(排気温度検出手段)
17 排気温度センサ(排気温度検出手段)

Claims (6)

  1. 車両が減速中であることを検出する減速検出手段と、
    内燃機関の排気管に設置され、前記内燃機関から排出される有害成分を浄化する排気浄化手段と、
    この排気浄化手段の活性状態を判定する活性状態判定手段と、
    前記排気浄化手段への炭化水素の吸着量(HC吸着量)を推定するHC吸着量推定手段と、
    前記内燃機関の膨張行程で少量の燃料を噴射することを後噴射と呼ぶ時に、この後噴射の実行及び停止を制御する後噴射制御手段とを備え
    前記後噴射制御手段は、車両減速中に前記活性状態判定手段で検出した前記排気浄化手段の活性状態及び前記HC吸着量推定手段で推定した前記排気浄化手段へのHC吸着量に応じて前記後噴射を実行するか否かを決定する内燃機関の排気浄化システムであって、
    前記後噴射制御手段は、
    車両減速中かつ前記排気浄化手段の活性状態が高い場合、あるいは車両減速中かつ前記排気浄化手段の活性状態が低い場合でも前記HC吸着量推定手段で推定した前記排気浄化手段へのHC吸着量の積算量が所定値未満の場合には前記後噴射を連続して実行し、
    車両減速中かつ前記排気浄化手段の活性状態が低い場合に前記HC吸着量の積算量が所定値以上となった後は前記後噴射を中止することで、
    その後の加速時の前記排気浄化手段の活性に必要なHC吸着量を調節することを特徴とする内燃機関の排気浄化システム。
  2. 請求項1に記載した内燃機関の排気浄化システムにおいて、
    前記活性状態判定手段は、前記排気浄化手段より下流の排気管に設置した排気温度検出手段を備え、この排気温度検出手段で検出した排気温度が所定値以上の場合に前記排気浄化手段の活性状態が高いと判定することを特徴とする内燃機関の排気浄化システム。
  3. 請求項1に記載した内燃機関の排気浄化システムにおいて、
    前記活性状態判定手段は、前記排気浄化手段より上流及び下流の排気管にそれぞれ設置した排気温度検出手段を備え、両排気温度検出手段の出力から前記排気浄化手段の温度を推定し、その推定温度が所定値以上の場合に前記排気浄化手段の活性状態が高いと判定することを特徴とする内燃機関の排気浄化システム。
  4. 請求項1〜3に記載した何れかの内燃機関の排気浄化システムにおいて、
    前記HC吸着量推定手段は、車両減速開始後に前記活性状態判定手段で前記排気浄化手段の活性状態が低いと判定された後の後噴射量を積算し、その積算値を基にHC吸着量を推定することを特徴とする内燃機関の排気浄化システム。
  5. 請求項1〜4に記載した何れかの内燃機関の排気浄化システムにおいて、
    前記内燃機関は、排気の一部を吸気中に戻す排気還流手段と、この排気還流手段による排気還流量を制御する排気還流制御手段とを備え、
    この排気還流制御手段は、車両減速中には排気還流量を通常より増加することを特徴とする内燃機関の排気浄化システム。
  6. 請求項1〜5に記載した何れかの内燃機関の排気浄化システムにおいて、
    前記排気浄化手段は、酸化性能を有する触媒を担持していることを特徴とする内燃機関の排気浄化システム
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