JP4323696B2 - 中空管の接合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼管などの中空管を軸方向に連ねて配管する際に、中空管の端面を突き合わせて接合する中空管の接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、中空管をその軸方向に連ねて端部同士を接合する方法として、圧接が知られている(例えば、特開昭55−57390号公報、特開昭55−94787号公報参照)。この圧接は、接合される中空管の軸方向の端面同士を突き合わせ、ガスなどにより、突合わせ部を約1300℃まで加熱する。そして、大きな力で軸方向に中空管を加圧して接合部分を塑性変形させて接合する方法である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、圧接では接合される管の芯がずれて接合部に目違いが生じ易い。これは、加熱による強度の低下が周方向において均一に起こらないことや、周方向に不均一に加熱された場合に周方向の線膨張も不均一になるためである。また、管自体の肉厚が均等ではない場合や真円度が低い場合も生じ易い。
【0004】
この目違いが生じると、図5に示すように、接合された管15,16の接合部に0.3〜1.5mm程度の段差Aが形成される。この段差は応力集中源となり、疲労強度を低下させるだけでなく、管15,16内を流れる流体の流動性をも低下させる。また、外観も悪い。その他、圧接では管の端面が半径方向に広がり、口が開くため接合しづらい。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたものであり、短時間で中空管の接合部に段差を生じさせずに高い接合強度を得られる中空管の接合方法を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明では、接合される中空管より融点の低いインサートメタルを前記中空管の軸方向の端部同士で挟み、前記中空管を軸方向に加圧しつつ、前記中空管の接合部を加熱手段で加熱して前記中空管を接合する、中空管の接合方法であって、前記インサートメタルを前記加熱手段で溶融させ、この溶融された溶融インサートメタルを接合界面に残留させることなく、加圧された前記中空管の接合面からその周辺部に排出させて、前記接合部の内周面および外周面にその全周に亘ってフィレットを形成することを特徴とする、中空管の接合方法により上記課題を解決する。
【0007】
本発明によれば、中空管より融点の低いインサートメタルが挟み込まれているため、インサートメタルのみが溶融する温度に接合部が加熱されると、インサートメタルが溶融する。ここで、加熱手段とは、高周波誘導装置、ガス加熱装置その他の加熱装置を意味するが、本発明に用いる加熱手段としては高周波誘導装置が最適である。
【0008】
中空管を軸方向に加圧しているので、溶融したインサートメタルが中空管の接合面から内外の周面に排出されて接合部の周辺部にフィレット(すみ肉)が形成される。このフィレット(すみ肉)が加圧により接合部に形成された段差を被覆して、段差の無い接合部を形成する。
【0009】
そのため、接合強度の高い接合部を得ることができ、しかも、段差をなだらかにしたことで、応力集中を生じさせず、疲労強度を向上させる。
【0010】
また、本発明では、上記課題を解決するために、請求項1に記載の、中空管の接合方法において、前記インサートメタルを80μm以上の厚さに設け、前記中空管をこれらの軸方向に少なくとも5MPaの圧力で加圧しつつ前記中空管の接合部を前記加熱手段で加熱して前記インサートメタル溶融させることによって、中空管を接合する。
【0011】
本発明によれば、中空管より融点の低いインサートメタルが挟み込まれているため、インサートメタルのみが溶融する温度に接合部が加熱されると、インサートメタルが溶融する。本発明についても、加熱手段として、高周波誘導装置、ガス加熱装置その他の加熱装置を採用できるが、高周波誘導装置が最適である。
【0012】
中空管を軸方向に5MPa以上の圧力で加圧しているので、溶融したインサートメタルが中空管の接合面から外周面に確実に排出されて外周面にフィレット(すみ肉)が形成される。このフィレット(すみ肉)が加圧により接合部に形成された段差を被覆して、段差の無い接合部を形成する。
【0013】
そのため、接合強度の高い接合部を得ることができ、しかも、段差をなだらかにしたことで、応力集中を生じさせず、疲労強度を向上させる。
【0014】
80μm以上の厚さにインサートメタルを設けて挟み込めば、中空管の外周面にフィレット(すみ肉)を形成させることができるが、厚さを120μm以上にすれば、外周面により多くの溶融されたインサートメタルを排出し、さらになだらかな勾配のフィレット(すみ肉)を形成できる。
【0015】
なお、本発明にかかる上記中空管の接合方法において、前記インサートメタルとしてFe−Si−B成分系メタル及びNi−Si−B成分系メタルの少なくとも一方を採用すれば、十分なフィレット(すみ肉)形成を行うことができ、高い結合強度を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明のかかる中空管の接合方法を実施する装置の概要を示しており、接合される中空管1,2はこれらの軸方向に連ねられ、軸方向の端面同士でインサートメタル3を挟み込んで配されている。
【0018】
この装置は、中空管1,2の接合部の近傍を加熱するとともに、中空管1,2の軸方向に荷重を付加するもので、中空管1,2の接合部の近傍でこれらの外周に巻き付けられる加熱コイル4及びこの加熱コイルに接続された高周波発生装置6からなる高周波誘導装置と、各中空管1,2を保持してこれらの軸方向に荷重を付加するためのクランプ5,5とを備えている。このクランプ5,5は駆動源8から作動油が供給されて作動する。
【0019】
また、この装置は、コントローラ7を有しており、接合部の温度調整を行うことが可能となっている。コントローラ7には接合部の温度を検出する温度センサーが接続され、このセンサーからの信号によりコントローラ7が温度制御して、接合部が予め設定した温度以上に過熱されるのを防止している。一方、クランプ5,5にはコントローラ7に接続されたロードセルなどの荷重検出センサーが設けられていて、中空管1,2に付加される荷重を検出し、コントローラ7が中空管1,2に負荷される荷重を自在に調整できるようになっている。
【0020】
かかる装置により、先ず、駆動源8及びクランプ5,5を備えた加圧装置によって接合される中空管1,2をこれらの軸方向に加圧し、その後、加圧状態を保持しつつ接合部を加熱コイル4で加熱して中空管1,2を接合する。
【0021】
図2は、中空管1,2に挟み込まれるインサートメタル3を示している。このインサートメタル3は、接合する中空管の管径に応じて適切な大きさのリング状に切断されたもので、BやSiなどの融点降下元素を含有する金属が使用される。融点降下元素を含有する金属の中でも、ぬれ性の良好なFe−Si−B成分系の金属やNi−Si−B成分系の金属を使用するとよい。
【0022】
このようなインサートメタルを挟み込んで図1に示した装置に中空管1,2をセットした後、中空管1,2をその軸方向に5MPa以上の圧力で、好ましくは5MPa〜20MPaの範囲の圧力で、中空管の材質、管径又は肉厚等に応じて適切な圧力で加圧する。そして、この加圧状態を保持しつつ高周波誘導装置により接合部を、インサートメタルの溶融する1100℃以上に加熱する。この際、加熱する温度は、接合する中空管の種類や使用するインサートメタルの種類により適宜変更されるが、好ましくは、1200〜1300℃の範囲で加熱するとよい。
【0023】
以上の接合方法によれば、接合部を加熱すると挟み込まれたインサートメタルが溶融する。溶融したインサートメタルは中空管の接合面で中空管に作用して、その表面層を溶解し、汚染層を分解する。
【0024】
また、中空管は予め5MPa以上の圧力で加圧されているので、溶融したインサートメタルが接合部から中空管の内周面及び外周面に絞り出される。なお、高い圧力で加圧すると、溶融したインサートメタルが接合界面の肉厚の中央部分から内外の周縁部へ絞り出され、融液が接合界面に残留しない。このため、圧接と同様の状態で中空管1,2が接合され、さらに高い接合強度を得ることができる。そして、絞り出されたインサートメタルは、両中空管の突き合わせの境界に滞留する。その結果、図3に示すように接合部においてその内周面及び外周面には、その全周に亘りなだらかな傾斜を有するフィレット(すみ肉)10,10が形成される。
【0025】
中空管の接合部を加熱して、その軸方向に圧力を付加すると、周方向の不均一な線膨張や中空管自体の不均一な肉厚等の影響で目違いが生じ、接合部に段差が形成される。図3に示すフィレット(すみ肉)10,10はこの段差部分を被覆して急激な断面形状の変化が生ずることを防止しする。そのため、接合部に応力集中が生ずることが無く、疲労破壊の起点になることがなくなる。
【0026】
中空管の全周に亘り、十分なのど厚のフィレット(すみ肉)を形成するには絞り出されるインサートメタルの量がある程度必要である。そのため、中空管に挟み込まれるインサートメタルの厚さを80μm以上、好ましくは120μm以上の厚さで、接合する中空管の材質、管径肉厚等に応じて適切な厚さに設けるとよい。インサートメタルの厚さを120μm以上にすると図4に示すように、絞り出される溶融したインサートメタルの量が多くなり中空管1,2の間に生ずる段差をフィレット(すみ肉)11,11が完全に被覆するとともに、フィレット(すみ肉)11,11の脚長がより長くなり、その傾斜をいっそうなだらかに形成できる。なお、本実施形態では、板状のインサートメタルを1枚挟み込んで厚さLを上記の値以上に形成しているが(図2参照)、これには限定されず、フィレットを形成させるに足りる量であれば、板状以外に粒状(成形体を含む)、粉末状の形状であっても構わない。
【0027】
以上に説明した実施形態では、接合される中空管をその軸方向に加圧し、その後に加圧した状態を保持して接合部を加熱する手順による場合を示したが、本発明は、かかる手順には限定されず、加熱した後に、この加熱された温度を保持して中空管を加圧したり、加圧と加熱とを同じタイミングで行っても構わない。なお、加熱する手段についても高周波誘導装置の他、ガス加熱装置等その他の加熱装置で加熱しても構わない。また、インサートメタルについてもFe−Si−B成分系の金属やNi−Si−B成分系の金属以外のものを使用することを排除するものではない。
【0028】
【実施例】
実施例1
本発明にかかる中空管の接合方法効果を調査するため、外径が60.7mm、肉厚が3.9mmの鋼管SGP50Aを本発明にかかる中空管の接合方法で接合し、接合部の引張り試験を行った。試験は、インサートメタルの厚さと、加圧する圧力とを変化させて接合した数種類の試験片について行った。
【0029】
接合時の条件は、共に、アルゴンガスにより接合部の周囲をシールドし、加圧したまま高周波誘導装置で1300℃まで加熱し、この状態を2分間保持した。なお、使用した鋼管の化学組織を表1の記号R1に、インサートメタルの化学組織を表2のM1にそれぞれ示す。
【0030】
試験結果を表3に示す。この表から明らかなように、本発明の接合方法で定めた範囲からインサートメタルの厚さ又は加圧する圧力のいずれかが外れた場合には、鋼管の接合面から破断し、また、破断したときの応力も低く十分な強度を得ることができなかった。
【0031】
インサートメタルの厚さを45μmとして結合した試験片W1では、接合部に段差が生じており、フィレット(すみ肉)も十分に形成されていなかった。また、1MPaと低い圧力で加圧して接合した試験片W2にあっては、破断面に脆いNiB3が残留していた。
【0032】
これに対し、インサートメタルの厚さ及び加圧する際の圧力を本発明にかかる接合方法で定めた範囲で接合したものは、接合面では破断せず、母材たる鋼管の部分が破断した。このことから、本発明にかかる接合方法で鋼管を接合すると母材の引張強度以上の接合強度を得ることがわかる。
【0033】
実施例2
本発明にかかる中空管の接合方法効果を調査するため、外径が114.1mm、肉厚が4.6mmの鋼管SGP100Aについても本発明にかかる中空管の接合方法で接合し、接合部の引張り試験を行った。この試験についても、インサートメタルの厚さと、加圧する圧力とを変化させて接合した数種類の試験片について行った。
【0034】
接合条件は、いずれも、アルゴンガスにより接合部の周囲をシールドし、加圧したまま高周波誘導装置で1250℃まで加熱し、この状態を2分間保持した。使用した鋼管の化学組織を表1の記号R2に、挟み込んだインサートメタルの化学組織を表2のM2にそれぞれ示す。
【0035】
試験結果を表4に示す。この試験の場合にも、本発明の接合方法で定めた範囲からインサートメタルの厚さ又は加圧する圧力の少なくといずれかが外れた場合には、鋼管の接合面から破断し、また、破断したときの応力も低い。
【0036】
厚さが50μmと本発明の接合方法で定めた範囲外の厚さのインサートメタルで接合した試験片W11では、接合部に段差が残っており、フィレット(すみ肉)も十分に形成されていなかった。また、2MPaと低い圧力で加圧して接合した試験片W12にあっては、破断面に脆いNiB3が残留していた。
【0037】
これに対し、インサートメタルの厚さ及び加圧する際の圧力を本発明にかかる接合方法で定めた範囲で接合したものは、接合面では破断せず、母材たる鋼管の部分が破断した。本試験からも本発明にかかる接合方法で鋼管を接合すると母材の引張強度以上の接合強度を得ることがわかる。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、中空管を長手方向に連ね、これらの端部を突き合わせて接合する場合、短時間で段差の無いしかも高い強度の接合部を得ることができる。また、段差が生じないので疲労強さも向上する。さらに、当該接合方法で接合された中空管を配管として使用する場合、内周面に形成されたフィレット(すみ肉)により段差がなだらかになっているので、内部の流体が円滑に流れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する1実施形態にかかる装置の系統図。
【図2】中空管でインサートメタルを挟み込む様子を示す図。
【図3】本発明にかかる方法により中空管の接合部に形成されたフィレット(すみ肉)の1態様を示す図。
【図4】図3に示すフィレット(すみ肉)を形成したインサートメタルより厚いものを使用した場合に形成されたフィレット(すみ肉)の1態様を示す図。
【図5】圧接により生じる接合部の段差を示す図。
【符号の説明】
1,2 中空管
3 インサートメタル
4 加熱コイル
5 クランプ
6 高周波発生装置
7 コントローラ
8 駆動源
10,11 フィレット(すみ肉)
Claims (3)
- 接合される中空管より融点の低いインサートメタルを前記中空管の軸方向の端部同士で挟み、前記中空管を軸方向に加圧しつつ、前記中空管の接合部を加熱手段で加熱して前記中空管を接合する、中空管の接合方法であって、
前記インサートメタルを前記加熱手段で溶融させ、この溶融された溶融インサートメタルを接合界面に残留させることなく、加圧された前記中空管の接合面からその周辺部に排出させて、前記接合部の内周面および外周面にその全周に亘ってフィレットを形成することを特徴とする、中空管の接合方法。 - 前記インサートメタルを80μm以上の厚さに設け、前記中空管をこれらの軸方向に少なくとも5MPaの圧力で加圧しつつ前記中空管の接合部を前記加熱手段で加熱して前記インサートメタルを溶融させることを特徴とする、請求項1に記載の、中空管の接合方法。
- 前記インサートメタルを120μm以上の厚さに設けたことを特徴とする、請求項2記載の、中空管の接合方法。
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