以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
本発明の第1の実施形態を図1〜図5により説明する。
図1は、本発明の適用対象となる建設機械の一例として大型油圧ショベルの全体構造を表す側面図である。
図1において、1は大型の油圧ショベルであり、2は走行手段である無限軌道履帯(クローラ)、3は履帯2を左・右両側に備えた走行体、4は走行体3上に旋回可能に設けられた旋回体、5は旋回体4の前部左側に設けられた運転室、6は旋回体4の前部中央に俯仰動可能に設けられた多関節型のフロント作業機(掘削作業装置)である。そして、左・右の履帯2は左・右の走行用油圧モータ(図示せず)、旋回体4は旋回用油圧モータ(図示せず)の回転駆動により動作するようになっている。
7は旋回体4に上下方向に回動可能に設けられたブーム、8はブーム7の先端に回動可能に設けられたアーム、9はアーム8の先端に回動可能に設けられたバケットであり、上記フロント作業機6は、これらブーム7、アーム8、及びバケット9で構成されている。そして、ブーム7、アーム8、及びバケット9は、それぞれブーム用油圧シリンダ10、アーム用油圧シリンダ11、及びバケット用油圧シリンダ12により動作するようになっている。
図2は、上記油圧ショベル1におけるエンジン冷却系統及び作動油冷却系統の概略構成を一例として表す図である。
この図2において、13は上記旋回体4に搭載されたエンジンであり、14はエンジン13によりトランスミッション15を介し駆動する例えば可変容量型の油圧ポンプ、16は油圧ポンプ14から吐出された作動油(圧油)によって駆動する油圧アクチュエータ(図2では代表して1つの油圧シリンダを図示、詳細には、上記左・右の走行用油圧モータ、旋回用油圧モータ、ブーム用油圧シリンダ10、アーム用油圧シリンダ11、及びバケット用油圧シリンダ12等)、17は油圧ポンプ14から油圧アクチュエータ16への作動油の流れ(方向及び流量)を制御する例えばパイロット操作式のコントロールバルブである。このコントロールバルブ17は、例えば操作レバー(図示せず)の操作に応じたパイロット圧が印加されて切り換えられ、これによって油圧アクチュエータ16への作動油の流れを制御するようになっている。
また、18はエンジン13をエンジン冷却水で冷却するエンジン冷却系統、19は上記作動油を冷却する作動油冷却系統であり、20はエンジン13の回転駆動軸に連結された冷却ファンである。この冷却ファン20は、エンジン13の駆動に伴い回転駆動して冷却風(図2中白抜き矢印で図示)を生起し、この冷却風によってエンジン冷却系統18のラジエータ21及び作動油冷却系統19のオイルクーラ22が冷却されるようになっている。
23はエンジン13の冷却流路(図示せず)とラジエータ21の入口側(図2中上側)との間に接続された入口配管、24はエンジン13の冷却流路とラジエータ21の出口側(図2中下側)との間に接続された出口配管、25は出口配管24に設けられエンジン冷却水を吐出する冷却水ポンプ、26は冷却水ポンプ25をバイパスするように出口配管24に接続されたバイパス配管、27は出口配管24とバイパス配管26の上流側分岐位置に設けられたサーモスタットである。
そして、サーモスタット27は、エンジン冷却水の温度が所定の設定温度以上になると、バイパス配管26側を遮断しつつ出口配管24におけるラジエータ21側と冷却水ポンプ25側とを連通し、またエンジン冷却水の温度が所定の設定温度未満になると、出口配管24のラジエータ21側を遮断しつつ出口配管24の冷却水ポンプ25側とバイパス配管26とを連通するようになっている。これにより、エンジン冷却水温度が上記所定の設定温度以上である場合は、冷却水ポンプ25から吐出されたエンジン冷却水がエンジン13の冷却流路及びラジエータ21を流通して循環し、またエンジン冷却水温度が上記所定の設定温度未満である場合は、エンジン冷却水がエンジン13の冷却流路及びラジエータ21を流通せず、バイパス配管26を流通して循環する。その結果、エンジン冷却水の過冷却(すなわち、エンジン13の過冷却)を防止するようになっている。
28は作動油を貯留する作動油タンク、29はコントロールバルブ17から作動油タンク28へ作動油を戻すための戻し配管であり、この戻し配管29に上記オイルクーラ22が設けられている。また、30はオイルクーラ22をバイパスするように戻し配管29に接続されたバイパス配管、31は戻し配管29に設けられたリリーフ弁である。そして、リリーフ弁31は、作動油の圧力が所定の設定圧力以上になると、遮断状態から連通状態に切り換えられ、作動油がバイパス配管30に流通するようになっている。
また本実施形態では、エンジン冷却系統18の例えばラジエータ21の出口(詳細には、出口配管24におけるサーモスタット27の上流側)に、エンジン冷却水の温度T1を検出する冷却水温度センサ32が設けられ、作動油冷却系統19の例えば作動油タンク28内に、作動油の温度T2を検出する作動油温度センサ33が設けられ、エンジン13等が収納された建屋の外の適宜位置に、外気温度T0を検出する空気温度センサ34が設けられている。
図3(a)は、上記エンジン13及び油圧ポンプ14等の定負荷時の外気温度T0に対するエンジン冷却水温度T1の変化を表す特性図であり、図3(b)は、定負荷時の外気温度T0に対する作動油温度T2の変化を表す特性図である。
図3(a)において、横軸は外気温度T0をとって表し、縦軸はエンジン冷却水温度T1をとって表している。エンジン冷却水温度が上述したサーモスタット27の設定温度T1a未満である場合(言い換えれば、外気温度T0が所定の温度T0a未満である場合)、上記サーモスタット27の切換えにより、エンジン冷却水がエンジン13によって加熱されず、ラジエータ21によって冷却されないため、冷却水温度センサ32で検出するエンジン冷却水温度T1はほとんど変化しない。一方、エンジン冷却水温度T1が所定の設定温度T1a以上である場合(言い換えれば、外気温度T0が所定の温度T0a以上である場合)、エンジン冷却水がエンジン13によって加熱されラジエータ21によって冷却されており、エンジン冷却水温度T1は外気温度T0の上昇(言い換えれば、冷却能力の低下)に従って上昇するようになっている。そして、外気温度T0b(但し、T0b>T0a)であるときに、最大値の冷却水温度T1bとなる。
図3(b)において、横軸は外気温度T0をとって表し、縦軸は作動油温度T2をとって表している。作動油温度が所定の設定温度T2a(上述したリリーフ弁31の設定圧力に相当する温度)未満である場合(言い換えれば、外気温度T0が所定の温度T0c未満である場合)、作動油センサ33で検出する作動油温度T2はほとんど変化しない。一方、作動油温度T2が所定の設定温度T2a以上である場合(言い換えれば、外気温度T0が所定の温度T0c以上である場合)、作動油温度T2は外気温度T0の上昇(言い換えれば、冷却能力の低下)に従って上昇するようになっている。そして、外気温度T0d(但し、T0d>T0c)であるときに、最大値である作動油温度T2bとなる。
以上のことから、エンジン冷却水温度T1が所定の設定温度T1a以上であり、作動油温度T2が所定の設定温度T2a以上である場合(言い換えれば、外気温度T0が所定の設定温度T0a以上であり、所定の設定温度T0c以上である場合)、エンジン冷却水温度T1及び作動油温度T2は外気温度T0の上昇に従ってそれぞれ上昇するようになっている。このとき、エンジン冷却系統18及び作動油冷却系統19がともに正常に作動する場合は、エンジン冷却水T1の温度上昇が作動油T2の温度上昇に追従するようになっている。そのため、エンジン冷却水温度T1から外気温度T0を減じた気水温度差と作動油温度T2から外気温度T0を減じた油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)は、外気温度T0の変化に拘わらず、所定の範囲内となる。また、気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)は、エンジン13及び油圧ポンプ14等の負荷変動に拘わらず、所定の範囲内となる。そこで、本実施形態による建設機械の冷却系統監視装置は、この気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)の特性に着目し、エンジン冷却系統18及び作動油冷却系統19の作動状態を監視するようになっている。以下その詳細を説明する。
図4は、本実施形態による建設機械の冷却系統監視装置の要部構成を表すブロック図である。
この図4において、上記冷却水温度センサ32と、上記作動油温度センサ33と、上記空気温度センサ34と、コントローラ35と、エンジン冷却系統18及び作動油冷却系統19の不具合発生をそれぞれ報知するための警告灯36,37とが備えられている。なお、これら警告灯36,37は、例えば運転室5内の適宜位置に設けられている。
コントローラ35は、冷却水温度センサ32、作動油温度センサ33、及び空気温度センサ34からの検出信号(詳細には、エンジン冷却水温度T1、作動油温度T2、及び外気温度T0)を入力する入力部38と、後述する制御プログラム等を記憶する記憶部(例えばROM等)39と、この記憶部39に記憶された制御プログラムに基づいて演算処理を行う演算部(例えばCPU等)40と、この演算部40で生成した警告信号(制御信号)を警告灯36,37にそれぞれ出力する出力部41とで構成されている。
次に、上記コントローラ35の制御手順を説明する。図5は、コントローラ35の制御処理内容を表すフローチャートである。
この図5において、まずステップ100で、演算部40は冷却水温度センサ32から入力したエンジン冷却水温度T1が例えば記憶部39に予め設定記憶された第1の設定温度、例えば上記所定の設定温度T1a以上であるかどうかを判定する。エンジン冷却水温度T1が所定の設定温度T1a未満である場合は、ステップ100の判定が満たされず、この判定が繰り返される。一方、エンジン冷却水温度T1が所定の設定温度T1a以上である場合は、ステップ100の判定が満たされ、ステップ110に移る。ステップ110では、演算部40は作動油温度センサ33から入力した作動油温度T2が例えば記憶部39に予め設定記憶された第2の設定温度、例えば上記所定の設定温度T2a以上であるかどうかを判定する。作動油温度T2が所定の設定温度T2a未満である場合は、ステップ110の判定が満たされず、前述のステップ100に戻って上記同様の手順を繰り返す。一方、作動油温度T2が所定の設定温度T2a以上である場合は、ステップ110の判定が満たされ、ステップ120に移る。
ステップ120では、演算部40は冷却水温度センサ32、作動油温度センサ33、及び空気温度センサ34から入力したエンジン冷却水温度T1、作動油温度T2、及び外気温度T0により気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)を演算し、その後、ステップ130に進んで、記憶部39に記憶された気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)の所定のしきい値範囲(詳細には、エンジン冷却系統18及び作動油冷却系統19がともに正常に作動する場合の気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)を、エンジン13及び油圧ポンプ14の負荷変動や外気温度T0の変化等に対応するように演算した値又は実測した値の範囲、若しくはその演算値又は実測値の範囲の上限・下限に余裕幅を加えたもの)を読み込む。
そして、ステップ140に進んで、演算部40は気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)の演算値が所定のしきい値範囲より大きいかどうかを判断することにより、エンジン冷却系統18に不具合が生じているかどうかを判定する。エンジン冷却系統18に不具合が生じていると判定した場合(言い換えれば、気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)の演算値が所定のしきい値範囲より大きい場合)は、ステップ140の判定が満たされ、ステップ150に移る。ステップ150では、生成した警告信号をエンジン冷却系統18用の警告灯36に出力して、警告灯36を点灯表示させる。ステップ150が終了すると、前述のステップ100に戻って上記同様の手順を繰り返す。
一方、ステップ140においてエンジン冷却系統18に不具合が生じていないと判定した場合(言い換えれば、気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)の演算値が所定のしきい値範囲より大きくない場合)は、その判定が満たされず、ステップ160に移る。ステップ160では、演算部40は気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)の演算値が所定のしきい値範囲より小さいかどうかを判断することにより、作動油冷却系統19に不具合が生じているかどうかを判定する。作動油冷却系統19に不具合が生じていると判定した場合(言い換えれば、気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)の演算値が所定のしきい値範囲より小さい場合)は、ステップ160の判定が満たされ、ステップ170に移る。ステップ170では、生成した警告信号を作動油冷却系統用の警告灯37に出力して、警告灯37を点灯表示させる。ステップ170が終了すると、前述のステップ100に戻って上記同様の手順を繰り返す。
一方、ステップ160において作動油冷却系統19に不具合が生じていないと判定した場合(言い換えれば、気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)の演算値が所定のしきい値範囲より小さくない場合)は、その判定が満たされず、前述のステップ100に戻って上記同様の手順を繰り返す。
なお、上記において、冷却水温度センサ32は、特許請求の範囲記載のエンジン冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段を構成し、作動油温度センサ33は、油圧駆動装置の作動油の温度を検出する作動油温度検出手段を構成し、空気温度センサ34は、周囲の空気温度を検出する空気温度検出手段を構成する。
また、コントローラ35の記憶部39は、気水温度差と油気温度差との比の所定のしきい値範囲を記憶する記憶手段を構成し、コントローラ35が行う図5のステップ120は、検出したエンジン冷却水温度から空気温度を減じた気水温度差と検出した作動油温度から空気温度を減じた油気温度差との比を演算する第1の演算手段を構成し、コントローラ35が行う図5のステップ140,160は、第1の演算手段で演算した気水温度差と油気温度差との比の演算値が記憶手段に記憶した所定のしきい値範囲内にあるか否かを判断し、所定のしきい値範囲内にない場合はエンジン冷却系統及び作動油冷却系統のうちいずれかに不具合が生じたと判定する不具合判定手段を構成し、コントローラ35が行う図5のステップ150,170は、不具合判定手段で不具合が生じたと判定したときに警告信号を出力する信号出力手段を構成する。
次に、本実施形態の動作及び作用効果を説明する。
例えば掘削作業等を行うために油圧ショベル1の油圧アクチュエータ16(詳細には、上記左・右の走行用油圧モータ、旋回用油圧モータ、ブーム用油圧シリンダ10、アーム用油圧シリンダ11、及びバケット用油圧シリンダ12等)を動作させるとき、オペレータが対応する操作レバーを操作すると、その操作に応じた操作パイロット圧がコントロールバルブ17に印加されてコントロールバルブ17を切り換え、油圧ポンプ14から吐出された作動油が油圧アクチュエータ16に導入されて、油圧アクチュエータ16を駆動する。
そして、油圧ショベル1の作業環境(例えば外気温度T0)や作業負荷(例えばエンジン13及び油圧ポンプ14等の負荷)に応じて、エンジン冷却水温度T1や作動油温度T2が変動する。このとき、コントローラ35は、冷却水温度センサ32、作動油温度センサ33、及び空気温度センサ34で検出したエンジン冷却水温度T1、作動油温度T2、及び外気温度T0を入力し、所定の演算処理を行う。そして、例えばエンジン冷却水温度T1が所定の設定温度T1a以上であり、作動油温度T2が所定の設定温度T2a以上である場合は、ステップ100及び110の判定が満たされ、ステップ120において気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)を演算し、ステップ130において、記憶部39に記憶された所定のしきい値範囲を読み込む。
そして、ステップ140及び160において、気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)の演算値が所定のしきい値範囲より大きいか又は小さいか(言い換えれば、所定のしきい値範囲内にあるかどうか)を判断する。例えば気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)の演算値が所定のしきい値範囲より大きい場合は、ステップ140の判定が満たされ、エンジン冷却系統18に不具合が生じたと判定し、ステップ150において、警告信号がエンジン冷却系統18用の警告灯36に出力され、警告灯36を点灯表示してオペレータに報知する。また、気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)の演算値が所定のしきい値範囲より小さい場合は、ステップ160の判定が満たされ、作動油冷却系統19に不具合が生じたと判定し、ステップ170において、制御信号が作動油冷却系統19用の警告灯37に出力され、警告灯37を点灯表示してオペレータに報知する。
以上のように本発明においては、気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)の演算値が所定のしきい値範囲内にあるかどうか、言い換えればエンジン冷却水温度T1と作動油温度T2との相対的な関係が正常であるかどうかを判断することにより、エンジン冷却系統18及び作動油冷却系統19の不具合発生を容易に検知することができる。また、エンジン冷却水温度T1、作動油温度T2、及び外気温度T0の検出値(実測値)から不具合の有無を判定するので、例えばエンジン負荷等の演算推定値を含めた関連データを用いて判定する場合に比べ、より的確に判定することができる。これにより、エンジン冷却系統18及び作動油冷却系統19の不具合発生を事前に検知することができ、例えばメンテナンス作業等の予防保全を行ったりして、建設機械の休止時間を低減することができる。
また本実施形態では、エンジン冷却系統18及び作動油冷却系統19のいずれに不具合が発生したかを特定し、これに応じてエンジン冷却系統18用の警告灯36又は作動油冷却系統19用の警告灯37を点灯表示するので、不具合診断の一助とすることができる。
なお、上記第1の実施形態においては、周囲の空気温度として外気温度T0を検出する空気温度センサ34を設け、コントローラ35は外気温度T0にもとづいた気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)を演算する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、周囲の空気温度として例えばエンジン13の吸気温度T0’又は排気温度T0”を検出するように空気温度センサを設け、コントローラ35は吸気温度T0’又は排気温度T0”にもとづいた気水温度差と油気温度差との比を演算してもよい。これらの場合も、上記同様の効果を得ることができる。
本発明の第2の実施形態を図6及び図7により説明する。本実施形態は、エンジン冷却水温度と作動油冷却温度との差を用いて、不具合の有無を判定する実施形態である。
図6は、本実施形態による建設機械の冷却系統監視装置の要部構成表すブロック図であり、図7は本実施形態によるコントローラの制御処理内容を表すフローチャートである。なお、これら図6及び図7において、上記第1の実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
エンジン冷却水温度T1と作動油冷却温度T2との差(T1−T2)は、上記第1の実施形態で説明した気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)同様、エンジン13及び油圧ポンプ14等の負荷変動や外気温度T0の変化に拘わらず、所定の範囲内となる。そこで本実施形態では、エンジン冷却水温度T1と作動油冷却温度T2との差(T1−T2)により、エンジン冷却系統18及び作動油冷却系統19の不具合の有無を判定するようになっている。
本実施形態によるコントローラ42は、上記冷却水温度センサ32及び作動油温度センサ33からの検出信号(詳細には、エンジン冷却水温度T1及び作動油温度T2)を入力する入力部43と、後述する制御プログラム等を記憶する記憶部(例えばROM等)44と、この記憶部44に記憶された制御プログラムに基づいて演算処理を行う演算部(例えばCPU等)45と、この演算部45で生成した警告信号(制御信号)を上記警告灯36,37にそれぞれ出力する出力部46とで構成されている。
そして、まずステップ200で、演算部45は冷却水温度センサ32から入力したエンジン冷却水温度T1が例えば記憶部44に予め設定記憶された第1の設定温度、例えば上記所定の設定温度T1a以上であるかどうかを判定する。エンジン冷却水温度T1が所定の設定温度T1a未満である場合は、ステップ200の判定が満たされず、この判定が繰り返される。一方、エンジン冷却水温度T1が所定の設定温度T1a以上である場合は、ステップ200の判定が満たされ、ステップ210に移る。ステップ210では、演算部45は作動油温度センサ33から入力した作動油温度T2が例えば記憶部44に予め設定記憶された第2の設定温度、例えば上記所定の設定温度T2a以上であるかどうかを判定する。作動油温度T2が所定の設定温度T2a未満である場合は、ステップ210の判定が満たされず、前述のステップ200に戻って上記同様の手順を繰り返す。一方、作動油温度T2が所定の設定温度T2a以上である場合は、ステップ210の判定が満たされ、ステップ220に移る。
ステップ220では、演算部45は冷却水温度センサ32及び作動油温度センサ33から入力したエンジン冷却水温度T1及び作動油温度T2によりエンジン冷却水温度T1と作動油冷却温度T2との差(T1−T2)を演算し、その後、ステップ230に進んで、記憶部44に記憶されたエンジン冷却水温度T1と作動油冷却温度T2との差(T1−T2)の所定のしきい値範囲(詳細には、エンジン冷却系統18及び作動油冷却系統19がともに正常に作動する場合のエンジン冷却水温度T1と作動油冷却温度T2との差(T1−T2)を、エンジン13及び油圧ポンプ14の負荷変動や外気温度T0の変化等に対応するように演算した値又は実測した値の範囲、若しくはその演算値又は実測値の範囲の上限・下限に余裕幅を加えたもの)を読み込む。
そして、ステップ240に進んで、演算部45はエンジン冷却水温度T1と作動油冷却温度T2との差(T1−T2)の演算値が所定のしきい値範囲より大きいかどうかを判断することにより、エンジン冷却系統18に不具合が生じているかどうかを判定する。エンジン冷却系統18に不具合が生じていると判定した場合(言い換えれば、エンジン冷却水温度T1と作動油冷却温度T2との差(T1−T2)の演算値が所定のしきい値範囲より大きい場合)は、ステップ240の判定が満たされ、ステップ250に移る。ステップ250では、生成した警告信号をエンジン冷却系統用の警告灯36に出力して、警告灯36を点灯表示させる。ステップ250が終了すると、前述のステップ200に戻って上記同様の手順を繰り返す。
一方、ステップ240においてエンジン冷却系統18に不具合が生じていないと判定した場合(言い換えれば、エンジン冷却水温度T1と作動油冷却温度T2との差(T1−T2)の演算値が所定のしきい値範囲より大きくない場合)は、その判定が満たされず、ステップ260に移る。ステップ260では、演算部45はエンジン冷却水温度T1と作動油冷却温度T2との差(T1−T2)の演算値が所定のしきい値範囲より小さいかどうかを判断することにより、作動油冷却系統19に不具合が生じているかどうかを判定する。作動油冷却系統19に不具合が生じていると判定した場合(言い換えれば、エンジン冷却水温度T1と作動油冷却温度T2との差(T1−T2)の演算値が所定のしきい値範囲より小さい場合)は、ステップ260の判定が満たされ、ステップ270に移る。ステップ270では、生成した警告信号を作動油冷却系統用の警告灯37に出力して、警告灯37を点灯表示させる。ステップ270が終了すると、前述のステップ200に戻って上記同様の手順を繰り返す。
なお、上記において、コントローラ42の記憶部44は、特許請求の範囲記載のエンジン冷却水温度と作動油温度との差の所定のしきい値範囲を記憶する記憶手段を構成し、コントローラ42が行う図7のステップ220は、検出したエンジン冷却水温度と作動油温度との差を演算する第2の演算手段を構成し、コントローラ42が行う図7のステップ240,260は、第2の演算手段で演算したエンジン冷却水温度と作動油温度との差の演算値が記記憶手段に記憶した所定のしきい値範囲内にあるか否かを判断し、所定のしきい値範囲内にない場合はエンジン冷却系統及び作動油冷却系統のうちいずれかに不具合が生じたと判定する不具合判定手段を構成し、コントローラ42が行う図7のステップ250,270は、不具合判定手段で不具合が生じたと判定したときに警告信号を出力する信号出力手段を構成する。
以上のように構成された本実施形態においては、エンジン冷却水温度T1と作動油温度T2との差(T1−T2)の演算値が所定のしきい値範囲内にあるかどうかを判断することにより、上記第1の実施形態同様、エンジン冷却系統18及び作動油冷却系統19の不具合発生を容易に検知することができる。また、エンジン冷却水温度T1及び作動油温度T2の検出値(実測値)から不具合の有無を判定するので、例えばエンジン負荷等の演算推定値を含めた関連データを用いて判定する場合に比べ、より的確に判定することができる。これにより、エンジン冷却系統18及び作動油冷却系統19の不具合発生を事前に検知することができ、例えばメンテナンス作業等の予防保全を行ったりして、建設機械の休止時間を低減することができる。
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、エンジン直動式の冷却ファン20を設け、この冷却ファン20によってエンジン冷却系統18のラジエータ21及び作動油冷却系統19のオイルクーラ22を冷却する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば油圧モータ駆動式の冷却ファンを設け、この冷却ファンによってラジエータ21及びオイルクーラ22を冷却するようにしてもよい。このような変形例を図8及び図9により説明する。
図8は、本変形例におけるエンジン冷却系統及び作動油冷却系統の概略構成を表す図であり、図9は、本変形例における定負荷時の外気温度に対する作動油温度の変化を表す特性図である。なお、これら図8及び図9において、上記第1及び第2の実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
本変形例において、47はエンジン13によって駆動する第1のファン用油圧ポンプ、48は第1のファン用油圧ポンプ47から吐出された作動油によって駆動する例えば2つの第1のファン用油圧モータ、49は第1のファン用油圧モータ48によって駆動され、ラジエータ21を冷却する冷却風を生起する例えば2つの冷却ファンである。そして、図示しないが、冷却水温度センサ32からの検出信号が入力されて所定の演算処理を行う第1のコントローラが設けられている。
第1のコントローラは、冷却水温度センサ32で検出したエンジン冷却水温度T1が予め設定記憶された所定の制御設定温度未満である場合、例えば駆動リレー等(図示せず)への制御信号をOFF状態として第1のファン用油圧ポンプ47を停止させる。また、エンジン冷却水温度T1が所定の制御設定温度以上である場合、例えば駆動リレー等への制御信号をON状態として第1のファン用油圧ポンプ47を駆動させる。その結果、第1のファン用油圧ポンプ47からの作動油が供給されて第1のファン用油圧モータ48が駆動し、冷却ファン49が回転駆動し、この冷却ファン49で生起した冷却風によってエンジン冷却系統18’のラジエータ21が冷却されるようになっている。
そして、例えば第1のコントローラにおける上記所定の制御設定温度が上述したサーモスタッド27の設定温度T1aと同じである場合は、定負荷時の外気温度T0に対するエンジン冷却水温度T1の変化は、上述の図3(a)に示す特性とほぼ同じになる。
また、50はエンジン13によって駆動する第2のファン用油圧ポンプ、51は第2のファン用油圧ポンプ50から吐出された作動油によって駆動する第2のファン用油圧モータ、52は第2のファン用油圧モータ51によって駆動され、オイルクーラ22を冷却する冷却風を生起する冷却ファンである。そして、図示しないが、作動油温度センサ33からの検出信号が入力されて所定の演算処理を行う第2のコントローラが設けられている。
第2のコントローラは、作動油温度センサ33で検出した作動油温度T2が予め設定記憶された第1の制御設定温度T2c(但し、T2c≧T2a)未満である場合、駆動リレー等(図示せず)への制御信号をOFF状態として第2のファン用油圧ポンプ50を停止させる。また、作動油温度T2が第1の制御設定温度T2c以上、かつ第2の制御設定温度T2d(但し、T2b>T2d>T2c)未満である場合、駆動リレー等への制御信号をON状態として第2のファン用油圧ポンプ50を駆動させ、さらに例えば第2のファン用油圧ポンプ50から第2のファン用油圧モータ51への作動油流量を制御する流量制御弁(図示せず)に制御信号を出力する。その結果、第2のファン用油圧ポンプ50からの作動油が小流量で供給されて第2のファン用油圧モータ51が駆動し、冷却ファン52が低速回転で駆動し、この冷却ファン52で生起した冷却風によって作動油冷却系統19’のオイルクーラ22が冷却されるようになっている。また、作動油温度T2が第2の設定温度T2d以上である場合、駆動リレー等への制御信号をON状態として第2のファン用油圧ポンプ50を駆動させ、さらに上記流量制御弁に制御信号を出力する。その結果、第2のファン用油圧ポンプ50からの作動油が大流量で供給されて第2のファン用油圧モータ51が駆動し、冷却ファン52が高速回転で駆動する。
そして、定負荷時の外気温度T0に対する作動油温度T2の変化は、図9に示すように、作動油温度が第1の制御設定温度T2c未満である場合(言い換えれば、対応する外気温度T0が所定の設定温度T0e未満である場合)、作動油センサ33で検出する作動油温度T2はほとんど変化しない。また、作動油温度T2が第1の制御設定温度T2c以上である場合(言い換えれば、外気温度T0が所定の温度T0e以上である場合)、上記冷却ファンが駆動し、作動油がオイルクーラ22によって冷却されており、作動油温度T2は外気温度T0の上昇(言い換えれば、冷却能力の低下)に従って上昇するようになっている。ただし、図9に示す作動油温度T2の範囲T2c≦T2<T2dと範囲T2d≦T2≦T2b(言い換えれば、外気温度T0の範囲T0e≦T0<T0fと範囲T0f≦T0≦T0d)では、冷却ファン52の回転数が異なるため、その温度上昇率が異なっている。
以上のように構成された本変形例においても、上記第1の実施形態同様、気水温度差と油気温度差との比(T1−T0)/(T2−T0)は、エンジン13及び油圧ポンプ14等の負荷変動や外気温度T0の変化に拘わらず、所定の範囲内となる。また、上記第2の実施形態同様、エンジン冷却水温度T1と作動油冷却温度T2との差(T1−T2)は、エンジン13及び油圧ポンプ14等の負荷変動や外気温度T0の変化に拘わらず、所定の範囲内となる。したがって本変形例においても、上記第1又は第2の実施形態と同様の構成及び方法により、エンジン冷却系統18及び作動油冷却系統19の不具合発生を容易に検知することができる。なお、本変形例におけるコントローラでは、上述の図5に示すステップ110(又は図7に示すステップ210)における作動油冷却温度の第2の設定温度を上記第1の制御設定温度T2cとすることが好ましい。
なお、上記第1及び第2の実施形態や変形例においては、コントローラ35,42は、エンジン冷却水温度T1が第1の設定温度T1a以上であり、作動油温度T2が第2の設定温度T2a(又はT2c)以上であるときに、不具合の有無の判定を行うような制御を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えばエンジン冷却水温度T1が第1の設定温度T1a以上であるかどうか、若しくは作動油温度T2が第2の設定温度T2a(又はT2c)以上であるかどうかのいずれか一方のみを判定することとし、その判定が満たされるときに不具合の有無の判定を行うように制御してもよい。また、エンジン冷却水温度T1や作動油温度T2に代えて、例えば空気温度センサ34で検出した外気温度T0が所定の設定温度(例えば前述の図3(a)に示す温度T0a、前述の図3(b)に示す温度T0c、または前述の図9に示すT0e等)以上であるがどうかを判定し、その判定が満たされるときに不具合の有無の判定を行うように制御してもよい。これらの場合も、上記同様の効果を得ることができる。
また、例えば燃料消費量又はエンジン回転数等を検出する状態量検出手段を設け、この状態量検出手段からの検出信号がコントローラに入力され、コントローラは所定の演算処理を行ってエンジン負荷を演算し、このエンジン負荷が予め記憶された所定の設定値以上であるかどうかを判断し、その判定が満たされるときに不具合の有無の判定を行うように制御してもよい。また、例えばコントローラは、予めエンジン負荷に対し段階的に設定された複数のしきい値範囲を記憶し、前述の演算したエンジン負荷に対応するしきい値範囲を読み込み、これに基づいて不具合の有無を判定するように制御してもよい。これらの場合には、不具合の判定精度を高めることができる。
また、上記第1及び第2の実施形態や変形例においては、コントローラ35,47からの警告信号が油圧ショベル1の運転室5内の警告灯36,37に出力される場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば警告信号(警告情報を含む信号)が通信手段を介し油圧ショベル1の外部の情報端末等に送信されるような構成としてもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
なお、以上においては、建設機械として油圧ショベル1を例にとって説明したが、これに限られず、他の建設機械、例えばクローラクレーン、ホイールローダ等に対しても適用でき、この場合も同様の効果を得る。