JP4322692B2 - 軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材とその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、軟質で加工硬化が小さく,高い加工率で冷間加工やプレス成形が可能で着磁性が小さく、表面の着色が見られない光沢に優れたMn含有オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材およびその製造方法に関するものである。
近年、コイン、メダル等の素材としてのステンレス鋼の需要が増大している。これらステンレス鋼は、打ち抜き,冷間圧造等のコイニング加工を容易にするために軟質である必要がある。また、コインは、着磁性が小さいことが好ましい。
上述の特性に加え、最近では、意匠性の観点から,コイン表面は光沢に優れることが要求されるようになっている。すなわち、これら成形用途においても、光輝焼鈍仕上げを施した黒光のする表面光沢に優れたステンレス鋼材の開発が切望されている。
オ−ステナイト系ステンレス鋼を軟質化する手段に関して、従来から多くの検討がなされている。例えば、特許文献1,特許文献2,特許文献3等に開示されているように、オ−ステナイト系ステンレス鋼の軟質化には、C,Nや不純物元素の低減に加えて,Ni,Cu,Cr,Mnの含有量を調整するのが重要であることが知られている。また、特許文献4には、C,Nを低減した軟質オ−ステナイト系ステンレス鋼において、加工誘起マルテンサイト生成量の指標γsを特定の範囲に制御することにより、打抜き後の加工性に優れるオ−ステナイト系ステンレス鋼が得られることが開示されている。
コイン用ステンレス鋼およびステンレス鋼製コインの製造方法に関して、例えば、特許文献5等には、C,Nを低減しSi,Ni,Mn,Cr,Cu,Moの含有量によりオ−ステナイト安定化指数とフェライト化率を調整した軟質かつ弱磁性のオ−ステナイト系ステンレス鋼と、同ステンレス鋼を加工率50%以上で冷間圧延,900〜1100℃の熱処理を施した後,15〜25%のコイニング加工を施すステンレス鋼製コインの製造方法が開示されている。また、特許文献6等には、Cuを積極的に添加した軟質オ−ステナイト系ステンレス鋼において、Cu%+Si%≧2.3%及びCu%≧1.5×Si%を満足することにより、抗菌性に優れたコイン用オ−ステナイト系ステンレス鋼が得られるとしている。
Mnは、Niと比較して安価であり,オ−ステナイト系ステンレス鋼の軟質化と加工性の改善に加え,着磁性を小さくするのに有効な元素である。他方、Mnの添加は、光輝焼鈍において表面の着色を生じやすく製品の意匠性を害する問題がある。しかし、上記の特許文献において、光輝焼鈍の着色問題を回避する製造方法については何ら言及されておらず,その対策に関して何ら示唆する記述もない。特許文献4において、光輝焼鈍による着色問題から、Mnの含有量を考慮する必要がある記載がなされているにすぎない。さらに、上記の特許文献における製造方法の開示には、最終製品を焼鈍後に酸洗を施して仕上げる旨の記述がある。
従って、従来、Mnを積極的に含有させた軟質オ−ステナイト系ステンレス鋼に、光輝焼鈍を施した表面着色のない光沢に優れた鋼材は未だ出現していないのが現状である。
特開平4−72038号公報 特開平6−279955号公報 特開平7−34203号公報 特開平10−121207号公報 特開平7−70714号公報 特開平8−53738号公報
本発明は、Mnを積極的に含有させた軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材を得るべく案出されたものであり、光輝焼鈍時の温度範囲に応じて滞留時間と雰囲気ガスの露点を制御することにより、表面着色の見られない光沢に優れた軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材を提供することを目的とする。
本発明の要旨は、下記(1)〜()に示す軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材および()〜()に示す軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材の製造方法にある。
(1)本発明の軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材は、その目的を達成するために、質量%で、C:0.03%以下,Si:2%以下,Mn:2.43〜5%,Cr:12〜20%,Ni:5〜10%,Cu:1〜4%,N:0.03%以下,残部Feおよび不可避的不純物からなり、皮膜表面に生成したMnを含有する酸化物粒子径が0.3μm未満であることを特徴とする。
(2)このMnを含有する軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材は、耐食性の改善のために、Moを0.05〜2質量%を含むことができる。
(3)このMnを含有する軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材は、コイン又はメダルの素材として用いることを特徴とする。
)このMnを含有する軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材は、冷延鋼材を、露点−45℃以下に調整した還元性雰囲気ガス中で常温から800℃の温度範囲における滞留時間を5〜60秒とし、次いで800〜1150℃の温度範囲において露点−40℃以下に調整した還元性雰囲気ガス中での滞留時間を30〜180秒とする光輝焼鈍を行うことを特徴とする。
)この光輝焼鈍において、還元性雰囲気ガスの組成を、水素ガスが70%以上,残部が実質的に窒素ガスとする。
)この光輝焼鈍に先立ち,常温から200℃の範囲で不活性ガス雰囲気からなるシ−ル設備を1〜180秒間通過する工程を含むことを特徴とする。
)このシ−ル設備の雰囲気ガスは実質的に窒素ガスとする。
なお、皮膜表面に生成した酸化物粒子は抽出レプリカ法で電子顕微鏡観察されたものを指し,酸化物粒子の元素は「EDX」により検出される。「EDX」とは、エネルギ−分散型X線分光法をいう。
以下、上記(1)〜(2)の軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材に係わる発明及び(3)〜(6)の製造方法に係わる発明をそれぞれ本発明という。合わせて、本発明ということがある。
以上に説明したように、本発明は、Mnを積極的に含有した軟質オ−ステナイト系ステンレス鋼において、光輝焼鈍時の温度範囲に応じた滞留時間,雰囲気ガスの露点を制御することにより、Mnを含有する酸化物粒子の生成を抑制して表面着色の見られない光沢に優れた軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材を工業的に安定して提供するものである。従って、表面着色の問題から、従来,光輝焼鈍が困難であったMnを含有する軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材の製造が可能となり、表面光沢が要求されるコイン用途等へ最適である。さらに、表面の光沢が要求される成形加工用の材料として広範囲な分野で適用可能である。
本発明者らは、前記した課題を解決するために、光輝焼鈍材の表面性状(色調,光沢)に及ぼす酸化皮膜の組成や形態および酸化皮膜を制御する光輝焼鈍条件について種々検討を行い、下記の知見を得た。
(a)Mnを2質量%以上含有するオ−ステナイト系ステンレス鋼は、光輝焼鈍を施すと鋼表面に青白っぽいテンパ−カラ−が発生しやすくなり、これら着色により表面の色調と光沢を著しく害する。これらテンパ−カラ−が発生した鋼表面の皮膜は、MnやSiの含有量が高く,Crの含有量が小さい。さらに、皮膜表面にはMnを主構成元素とするスピネル型酸化物粒子が生成・分散する特徴を持つ。色調変化を生じず,光沢に優れた表面を得るためには、皮膜表面に生成した酸化物粒子径を規定する必要がある。
(b)皮膜表面のMnを主構成元素とするスピネル型酸化物粒子は電子顕微鏡により観察することができ,その粒子径は0.3μm以下とする必要がある。これにより、着色の見られない光沢に優れた表面を得ることができる。
(c)鋼表面のスピネル型酸化物粒子径は、冷延鋼材を仕上げる光輝焼鈍の条件等を制御することによって工業的に安定して製造することができる。
(d)上記のスピネル型酸化物は、通常、露点−30℃以下,900℃を越えるオ−ステナイト系ステンレス鋼の光輝焼鈍において還元領域にある。他方、このスピネル型酸化物は、800℃以下において露点−40℃以上で生成しうることが知られている。例えば、文献「熱処理,28(1988),360」。
(e)光輝焼鈍に使用される雰囲気ガスは、通常、露点−40℃以下である。しかしながら、実製造においては、鋼材表面に付着残存した酸素や水分が炉内へ持ち越される,大気が炉内に侵入する,炉壁から水分が放出される等により鋼材表面近傍の露点は、鋼材の昇温過程(800℃未満)においてスピネル型酸化物を還元する領域まで下がりきっていない場合があると推察する。
(f)上記の推察に基づいて、スピネル型酸化物の生成抑制について検討した結果、800℃未満の温度域の滞留時間を短くする,800℃を越える温度域の滞留時間を長めにする,光輝焼鈍に先立ち鋼材表面に不活性ガスを吹き付ける工程を含むことが極めて有効に作用することを知見した。
前記(1)〜(6)の本発明は、上記の(a)〜(f)に至る知見に基づいて完成されたものである。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
(A)化学組成
本発明のオ−ステナイト系ステンレス鋼は、軟質で加工硬化が小さく,高い加工率で冷間加工やプレス成形が可能で着磁性を小さくするために、Mnを積極的に含有することにより成分設計したものである。以下、本発明のMnを含有する軟質オ−ステナイト系ステンレス鋼の成分設計に関する作用効果とその限定理由を説明する。
C,N:0.03%以下
C,Nは添加しなくてもよい。添加すればオ−ステナイト相の安定化やδフェライト相の生成抑制に有効である。これら効果を得るには、C,Nの含有量をそれぞれ0.005%以上とすることが好ましい。しかし、C,Nの含有量が過度になると、鋼が硬化し、本鋼の特徴である軟質,成形性が損なわれる。従って、C,Nの含有量は、それぞれ0.03%以下とした。好ましくは、C,Nの含有量をそれぞれ0.02%以下とする。
Si:2%以下
Siは添加しなくてもよい。添加すれば溶製時の脱酸剤として有効に作用する。これら効果を得るためには、0.1%以上添加するのが好ましい。しかし、Siの含有量が過度になると、鋼が硬化して成形性が低下する。また、鋼表面の着色の原因となる酸化粒子の構成元素となりうる。従って、Siの含有量は2%以下とした。好ましくは、1%未満である。
Mn:2〜5%
Mnは、オ−ステナイト系ステンレス鋼の軟質化と加工硬化の抑制に加え,オ−ステナイト相の安定化による着磁性の低減に有効な元素である。さらに、Mnは同効果が得られるNiと比較して安価でありNi量の低減に寄与する。また、溶製時の脱酸剤としても有効に作用する。本発明では、これら作用を有効に得るためにMnを2%以上添加する。他方、Mnの含有量が過度になるとS系介在物の増加をもたらし,耐食性や成形性を阻害するという問題がある。さらに、本発明の目的とする光輝焼鈍鋼材の製造が困難となる。従って、Mnの含有量は5%以下とした。好ましくは、4%未満である。
Cr:12〜20%
Crは、ステンレス鋼の構成元素であり、ステンレス鋼の耐食性を確保するために必須の合金元素であるため、12%以上含有させる必要がある。好ましくは、15%以上である。しかし、Crはフェライト安定化元素であるため、過度に含有させると鋼中にフェライトが残存する。また、Crは固溶強化と加工硬化を助長する元素である。従って、Crの含有量は20%以下とした。好ましくは、19%以下である。
Ni:5〜10%
Niは、オ−ステナイト安定化元素として、室温においてオ−ステナイト組織を得るために必須の合金元素である。さらに、加工硬化の抑制にも有効に作用する。本発明では、これら作用を得るためにNiを5%以上添加する。しかし、Niは高価な元素であり,過度に含有すると合金コストの著しい上昇を招く。従って、Niの含有量は10%以下とした。好ましくは9%未満である。
Cu:1〜4%
Cuは、MnやNiと同様のオ−ステナイト安定化元素であり、加工硬化の抑制にも有効に作用する。本発明では、これら作用を得るためにCuを1%以上添加する。しかし、Cuは過度に含有すると製鋼時のCu汚染や熱間脆性,Cu析出に伴う表面の着色問題を誘発する恐れがある。従って、Cuの含有量は4%以下とした。好ましくは3%以下である。
Mo:0.05〜2%
Moは添加すれば、耐食性を一層高める作用を有する。これら作用を得るためにはMoを0.05%以上添加することが好ましい。しかし、Moは過度に含有するとδフェライトの生成による磁性の発現や固溶強化による強度上昇を招く。従って、Moの含有量は2%以下とした。
(B)鋼材表面の酸化皮膜
本発明のオ−ステナイト系ステンレス鋼は、(A)項で述べたMnを積極的に含有する化学組成を有し,光輝焼鈍仕様において着色を生じず,光沢に優れた表面を得るために、皮膜表面の酸化物粒子径を規定したものである。以下、酸化皮膜の限定理由を説明する。
前述した通り、表面の着色を生じて光沢を害する主因は、皮膜表面に分散するMnを主構成元素とするスピネル型酸化物である。このスピネル型酸化物の粒子径が0.3μmを越えると、表面に青白っぽいテンパ−色が確認され,表面の着色により光沢を害することになる。従って、Mnを含有する酸化物粒子径は0.3μm以下とする。好ましくは0.2μm未満である。
上記の粒子径に制御された場合、皮膜組成は、Cr,Mn,Si,Oにおいて「ESCA分析」で定量される含有量が原子%でCr:5%以上,Mn:5%以下,Si:4%以下となる。従って、Cr含有量の高い酸化皮膜(不働態皮膜)が形成されて鋼材表面の耐食性は向上する。なお、「ESCA分析」とはX線光電子分光法をいう。
(C)製造方法
前記(A)項に記載の化学組成を有するオ−ステナイト系ステンレス鋼において、鋼材表面の酸化物粒子径を前記(B)項の記載とするためには、冷延鋼材を仕上げる光輝焼鈍の条件を以下のように制御するのが好ましい。
先ず、常温から800℃の温度域は、露点−45℃以下の還元性雰囲気ガス中で鋼材の滞留時間を5〜60秒とするのが好ましい。露点−45℃を越えるあるいはおよび鋼材の滞留時間が60秒を越える場合は、表面の着色の原因となるMnを含有するスピネル型酸化物粒子が鋼材表面に生成し成長する。常温から800℃における鋼材の滞留時間を5秒未満とする,すなわち5秒未満で800℃以上に加熱することは、工業炉において実用上不可能である。従って、滞留時間の下限は5秒とした。
次いで、800〜1150℃の温度域は、露点−40℃以下の還元性雰囲気ガス中で鋼材の滞留時間を30〜180秒とするのが好ましい。露点−40℃を越えるあるいはおよび鋼材の滞留時間が30秒未満の場合は、上記スピネル型酸化物粒子が還元されず,光輝焼鈍後の鋼材表面に残存する場合がある。800〜1150℃における鋼材の滞留時間が180秒を越える場合は、生産性を阻害することに加え,結晶粒が粗大化して成形品表面の肌荒れが生じる場合がある。従って、滞留時間の上限は180秒とした。
上記光輝焼鈍時の還元性雰囲気ガスは、水素ガスが70%以上,残部が実質的に窒素ガスであることが好ましい。水素ガスは、光輝焼鈍時のスピネル酸化物の還元作用を有するために、より好ましくは80%以上とする。残部は鋼材の酸化に寄与しない不活性ガス,例えばアルゴンガスなどでもよいが、コスト面で窒素ガスとすることが好ましい。
上記光輝焼鈍条件の制御に加え,より効率的にスピネル酸化物の生成を防止するためには、光輝焼鈍に先立ち常温から200℃の範囲で不活性ガスを鋼材表面に吹き付けるシ−ル設備を1〜180秒間通過する工程を含むことが好ましい。スピネル酸化物を生成する酸素源は、鋼材表面に付着している場合が多く,不活性ガスを鋼材表面に吹き付けることによりこれを効率的に除去することができる。さらに、上記のシ−ル設備を有することにより、炉内への大気侵入も防止される。温度の上限を200℃としたのは、これを越えると逆に酸化が助長されるためである。通過時間が1秒未満では、鋼材表面に付着残存する酸素源を除去する効果が得られない,180秒を越えるとシ−ル設備の増強によるコスト増や生産性を損ねる恐れがあるためである。従って、不活性ガスを吹き付ける温度を常温から200℃以下,時間を1〜180秒とした。なお、不活性ガスはコスト面から窒素ガスとすることが好ましい。
以下、本発明が鋼板の場合について、実施例により更に詳しく説明する。
表1の化学組成を有するステンレス鋼を溶製し、加熱温度1200℃の熱間圧延を行い板厚4.0mmの熱延鋼板を製造した。熱延鋼板を1050℃,均熱時間1分で焼鈍し、酸洗後に板厚0.7mmまで冷間圧延し、仕上げの光輝焼鈍に供した。仕上げの光輝焼鈍は、表2に示す本発明で規定する範囲とそれ以外の条件でも実施した。
Figure 0004322692
Figure 0004322692
上記のようにして得た厚さ0.7mmの冷延鋼板について、表面の色調を目視で判定した。また、各種試験片を採取して、鋼板表面の色差,光沢度の測定,皮膜表面の酸化物粒子の観察,ビッカ−ス硬さの測定,機械的性質,コイニング加工を想定した20%冷間加工後の磁性(透磁率μ)を測定した。
色差の測定は、鋼板の切り板サンプル表面において、JISZ8730に規定する色差表示方法(L*a*b*表色系)により評価した。表面の色調が青白っぽくなると、着色がない黒光する表面と比較してa*とb*の数値が高くなる。
光沢度の測定は、鋼板の切り板サンプル表面において、JISZ8741に規定する鏡面光沢度測定方法(60度鏡面光沢)により評価した。光の入射方向は、鋼板の圧延方向と垂直方法にした。粒子による光の乱反射が生じて光沢度の数値が低くなる。
皮膜表面に生成した酸化物粒子は、抽出レプリカ法により作製したサンプルを透過型電子顕微鏡観察して粒子径を求めた。さらに、酸化物は、電子回折像を撮影して結晶構造を同定し,EDXを用いて金属元素の検出とその定量値を算出した。
ビッカ−ス硬さは、マイクロビッカ−ス硬度計を用いて鋼板表面のHv硬さを測定した。なお、試験荷重は98Nとし,5箇所測定した場合の平均値で評価した。
機械的性質は、各鋼板から圧延方向に平行にJIS13号引張試験片を採取し、常温で引張試験を行い,引張強さ,伸び,加工硬化指数であるn値を測定した。なお、n値は25〜35%の伸びの範囲(つまり、高い加工率)で測定した。
磁性は、コイニング加工を想定した20%冷間圧延を施した鋼板を用いて、振動試料型磁力計(VSM)を用いて、設定磁化力1000Oeにて透磁率(μ)を測定した。磁性がない場合(オ−ステナイト単相組織)のμは1.01,μが1.05未満のものにおいて着磁性が小さいと判定した。
表3に各試験結果をまとめて示す。着色判定欄の「○」印は、表面の着色が見られないことを、「×」印は青白いテンパ−カラ−を発生し表面に着色が認められたことを示す。
Figure 0004322692
表3から、試験番号1〜6の本発明の規定を満たすMn含有オ−ステナイト系ステンレス鋼板は、表面の着色が見られず比較のSUS304と同等の優れた光沢を有する。また、SUS304(試験番号16)と比較して軟質で加工硬化が小さく,高い加工率で冷間加工やプレス成形が可能であり,着磁性が小さいことも明らかである。
これに対して、試験番号7〜15のMn含有オ−ステナイト系ステンレス鋼板は、皮膜表面の酸化物粒子が本発明で規定する範囲を外れるため、表面に着色が生じ,色差のa*,b*において大きな値となった。
本発明のMn含有オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材は、表面着色のない優れた光沢を有しており、軟質で加工硬化が小さく,高い加工率で冷間加工やプレス成形が可能であり,着磁性が小さい。このため、表面光沢が要求されるコインやメダル等をはじめとする成形加工用の素材として利用することができる。更に、本発明のMn含有オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材は、本発明の方法により工業的に安定して製造することができる。

Claims (8)

  1. 質量%で、C:0.03%以下,Si:2%以下,Mn:2.43〜5%,Cr:12〜20%,Ni:5〜10%,Cu:1〜4%,N:0.03%以下,残部Feおよび不可避的不純物からなり、皮膜表面に生成したMnを含有する酸化物粒子径が0.3μm未満であることを特徴とする軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材。
  2. Feの一部に代えて、質量%で、Moを0.05〜2%を含むことを特徴とする請求項1に記載の軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材。
  3. コイン又はメダルの素材として用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材。
  4. 質量%で、C:0.03%以下,Si:2%以下,Mn:2.43〜5%,Cr:12〜20%,Ni:5〜10%,Cu:1〜4%,N:0.03%以下,残部Feおよび不可避的不純物からなるステンレス冷延鋼材を、露点−45℃以下に調整した還元性雰囲気ガス中で常温から800℃の温度範囲における滞留時間を5〜60秒とし、次いで800〜1150℃の温度範囲において露点−40℃以下に調整した還元性雰囲気ガス中での滞留時間を30〜180秒とする光輝焼鈍を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材の製造方法。
  5. 前記ステンレス冷延鋼材は、Feの一部に代えて、質量%で、Moを0.05〜2%を含むことを特徴とする請求項4に記載の軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材の製造方法。
  6. 光輝焼鈍において還元性雰囲気ガスの組成を、水素ガスが70%以上,残部が実質的に窒素ガスからなることを特徴とする請求項4又は5に記載の軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材の製造方法。
  7. 光輝焼鈍に先立ち,常温から200℃の範囲で不活性ガスを鋼材表面に吹き付けるシ−ル設備を1〜180秒間通過する工程を含むことを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材の製造方法。
  8. シ−ル設備の不活性ガスが実質的に窒素ガスであることを特徴とする請求項からのいずれかに記載の軟質オ−ステナイト系ステンレス光輝焼鈍鋼材の製造方法。
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