JP4320995B2 - 太陽電池出力の昇圧回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽電池出力の昇圧回路に係り、太陽電池をエネルギー源として利用する電源、充電器及び、各種電気・電子機器や、太陽電池と昇圧回路を一体化した太陽電池モジュールに用いるための太陽電池出力の昇圧回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
太陽電池は、排気ガスや騒音を出さないクリーンなエネルギーであり、また、軽量・薄型な特徴を持ち、携帯機器への搭載に優れている。しかし、一般的な太陽電池単セルの出力電圧は、0.5V程度と低いため、電気・電子機器を動作させたり、ニッカド電池やニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池を充電することはできない。このため、太陽電池を直列化して電圧を上げることが一般的に行なわれている。しかし、この直列接続には3つの大きな問題がある。
1つ目は、電気的な問題であり、構成する太陽電池の何割かが影になると、太陽電池モジュール全体の何割かが影になったのと同じ影響が発生し、出力が大幅に低下することである。特に、携帯機器に搭載した場合、太陽電池モジュール全体が光を受光するのは難しく、また、太陽電池モジュール全体が光を受光するように強いるのは、利用者にとって使いづらい印象を与えることとなる。この現象を避けるためには、太陽電池と並列にバイパスダイオードを挿入しなければならない。
【0003】
2つ目は、コストの問題である。直列接続された太陽電池モジュールを作成するには、バイパスダイオードの付加に加え、直列接続するための太陽電池表面と隣接する太陽電池裏面を繋ぐ配線やセル間の絶縁対策が必要である。モジュール効率を高めるために、各太陽電池セルは配線のための隙間やセル間絶縁のための隙間を小さくする必要があり、精度良くセルを配置する技術が要求される。これが太陽電池モジュールのコスト上昇の一因になっている。
【0004】
3つ目は、太陽電池モジュールの形状が制約される点である。モジュール効率を高めるため、セル形状は四角形で、各セルの面積は同一となり、意匠的な工夫を凝らし難いという問題がある。
【0005】
上記の1つ目と3つ目の問題を解決する従来の技術として、出力電圧が2V弱と高いタンデム型太陽電池を使うことで、直列接続を回避し、昇圧回路を使い二次電池を充電する方法が特許3025106号に開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のタンデム型太陽電池を用いて二次電池を充電する方法は、太陽電池を多層化し、セル内で各層を直列接続することで出力電圧を上げるタンデム型太陽電池を用いることで、初めて発現し得たものである。タンデム型太陽電池は通常の太陽電池と比べ、製造工程が多く複雑なため、製造コストが高く、その使用は特殊な用途に限られている。言い換えれば、タンデム型太陽電池以外の通常の太陽電池では、出力電圧が0.5Vと低く、動作開始に0.7V以上必要な昇圧回路が機能しないため、上記方法は適用できず、太陽電池利用にかかるコストを低減できない問題がある。
【0007】
直列接続の問題として、さらに、ウェアラブル機器へのエネルギー源として太陽電池を衣服表面に設置することを考えた場合、太陽電池の発電環境として極めて厳しい条件に置かれる。太陽電池は肩や背中、胸、足、頭部などあらゆる部位に装着可能であるが、人の移動に伴い、太陽光の入射方向は目まぐるしく変化すること、また、人体の形状に由来して単一の平面が得られないため、全ての太陽電池セルが均一に発電することはできない。このため、上記の課題の1つ目で記載したように、発電量の少ないセルに全体の発電量が影響されて、大幅に発電量が低下する問題がある。発電量の解決策としては、人体に装着した太陽電池セルを全て並列接続すればよく、発電電力は各セルの発電量の合計値にほぼ等しくなるが、出力電圧が0.5V程度と低く、電気・電子機器の電源や二次電池の充電源としては電圧が低過ぎて利用できない。公知の昇圧回路の起動・動作電圧の下限は0.7Vであり、直列接続していない太陽電池から昇圧できないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、直列接続していない通常の太陽電池を電気・電子機器の電源及び二次電池の充電用の電源として用いることを可能とする太陽電池出力の昇圧回路を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
図1は、本発明の原理構成図である。
【0010】
本発明(請求項1)は、太陽電池をエネルギー源として利用する電源、充電器及び各種電気・電子機器に用いられる太陽電池出力の昇圧回路であって、
直列接続されておらず、タンデム型太陽電池以外の太陽電池単セルまたは、単セルを複数並列接続した太陽電池モジュールである第1の太陽電池101からの出力電圧を昇圧対象とし、
第1の太陽電池101からの出力電圧を昇圧する昇圧手段102と、
昇圧手段102の起動及び動作に必要な電力を供給するアモルファス太陽電池または、太陽電池モジュールを含む第2の太陽電池104と、を有する。
【0011】
本発明(請求項2)は、太陽電池をエネルギー源として利用する電源、充電器及び各種電気・電子機器に用いられる太陽電池出力の昇圧回路であって、
直列接続されておらず、タンデム型太陽電池以外の太陽電池単セルまたは、単セルを複数並列接続した太陽電池モジュールである第1の太陽電池の出力電圧を昇圧対象とし、
第1の太陽電池からの出力電圧を昇圧する昇圧手段と、
昇圧手段の起動及び動作に必要な電力を供給するアモルファス太陽電池または、太陽電池モジュールを含む第2の太陽電池と、
昇圧手段に起動及び動作に必要な電力を供給する方向を順方向とする整流特性を有する第1、第2の整流素子と、
を有し、
第2の太陽電池で発電されて第1の整流素子を介した電力と、第1の太陽電池で発電されて昇圧手段により出力された電力の一部であり、第2の整流素子を介した電力とのオア出力を、該昇圧手段に起動及び動作に必要な電力として供給するように構成される。
【0012】
本発明(請求項3)は、昇圧手段の後段に設けられ、該昇圧手段により得られた昇圧電力の一部が供給されると、定電圧や定電流のための出力制御を行なう出力制御回路を更に有する。
【0013】
本発明(請求項4)は、昇圧手段において、出力制御回路の制御出力を受けて昇圧能力を制御する手段を有する。
上記のように、本発明では、昇圧回路を本電源である第1の太陽電池とは異なる第2の太陽電池で駆動する構成とすることにより、本電源の出力電圧が0.5V以下であっても高効率に昇圧した電圧を得ることができ、本電源として直列接続した複数の太陽電池を用いる必要がないため、出力電圧の不安定を解消でき、また、コスト的にも低減を図ることが可能となる。
【0014】
また、本発明では、第2の太陽電池からの発電電圧と昇圧対象である第1の太陽電池から得られた昇圧出力の一部とダイオイードオア出力または、同等の整流特性を有する整流素子(バイポーラトランジスタのベース・エミッタ間等)を用いたオア出力から昇圧回路の起動及び動作に必要な電力を供給することで、昇圧回路(手段)の昇圧能力を向上させることが可能となる。
【0015】
また、本発明では、出力制御回路を用いることにより、昇圧回路(手段)の起動時には、昇圧回路(手段)の動作が当該出力制御回路の制御出力の影響を受けず、安定した起動特性を得ることが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面と共に、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
[第1の実施の形態]
図2は、第1の実施の形態を示す。
【0018】
図2に示す太陽電池出力の昇圧回路は、太陽電池101の出力を昇圧対象とし、太陽電池104、昇圧回路102から構成され、負荷としての二次電池103に電力を供給する。
【0019】
昇圧対象である直列接続されていない太陽電池101に光が入射すると起電力が生じる。太陽電池101としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、化合物半導体を用いたものなど、一般に広く普及しているものが使用できる。これらの太陽電池の単一セルの出力電圧は、最大で0.5V強である。太陽電池101で発電された電力は、昇圧回路102により昇圧されて負荷(二次電池)103に供給される。負荷103としては、電気・電子回路や二次電池が接続される。昇圧回路102は、0.6V未満の電圧では動作することはできないので、太陽電池101にて駆動することができないが、アモルファス太陽電池もしくは、同等のコストで作成可能な直列接続された太陽電池104から電力の供給を受ける構成にする。太陽電池104の面積は、昇圧回路102の消費電力を賄うだけでよく、1〜3.3平方センチメートル程度の小さな素子を用いることができる。
【0020】
昇圧回路102の電源としては、直列接続したアモルファス太陽電池104を用いることが有効である。アモルファス太陽電池は、半導体プロセスにおいて、直列接続できる特徴があり、上記の従来の技術で課題となっていた種々の課題を解決することができる。
【0021】
昇圧回路102は、ブースト型の昇圧回路構成が有効で、スイッチ素子には駆動電力が極めて小さい特徴をもつMOSFETを用いる。このMOSFETの駆動部には、CMOSロジックICによるマルチバイブレータ発振回路を用いる。マルチバイブレータの発振周波数は、発振回路の消費電力とブーストコンバータのコイルのインダクタンスや定格電流から決定する。マルチバイブレータの発振周波数とブーストコンバータのコイルのインダクタンス値とコイルの定格電流値は昇圧対象である太陽電池101の発電能力によって決まる設計上の項目であり、公知の技術であるので説明は省略する。
【0022】
必要最小限で構成されたこの昇圧回路102の消費電力は極めて少なく10kHz動作時に10μW以下の電力で動作できる。CMOSロジックIC74HC14をマルチバイブレータ回路に用いた昇圧回路の起動及び動作電圧の最低電圧は1.2Vであった。大きさ33mm×10mm、5セルが内部で直列接続されたアモルファス太陽電池を太陽電池104に用いた場合、1100ルクス程度の明るさ以上で昇圧動作が確認できた。
【0023】
この基本構成では、昇圧電圧の昇圧能力を向上する目的でスイッチ素子として大型のMOSFETを用いたり、複数のMOSFETを並列接続すると、昇圧回路102の消費電力が増加して昇圧回路102の起動する最低照度を上昇させる原因となる。
【0024】
[第2の実施の形態]
図3は、本発明の第2の実施の形態を示す。
【0025】
図3に示す昇圧回路は、昇圧回路の昇圧能力の向上を実現すると共に、昇圧回路の起動する最低照度の上昇を招かない構成である。
【0026】
同図の構成では、前述の第1の実施の形態における図2の構成にダイオード107、108を付加している。
【0027】
同図に示す昇圧回路は、起動時は、太陽電池104の電力を用い、昇圧動作が開始された後は、昇圧された電力の一部を昇圧回路102に供給することで昇圧能力を飛躍的に向上させている。太陽電池104の電力と昇圧出力の一部とのダイオードオア出力を昇圧回路に供給しているので、太陽電池104の電力は昇圧回路のみに供給されるため、起動照度の低下を防ぐことができる。昇圧回路102は太陽電池104から電力の供給を受けると起動し、昇圧動作が始まると、昇圧出力からダイオード108を通じて、昇圧回路102に電力を供給する。この結果、昇圧回路102の昇圧能力が増加する。太陽電池101による発電電力が大きくなればなるほど、昇圧される電力が増加し、ダイオード108を通じて昇圧回路102に供給される電力も増えるので、昇圧回路の昇圧能力が増強されることとなり、好循環が生まれる。なお、ダイオード107、108に替えて同等の整流特性を有する整流素子(バイポーラトランジスタのベース・エミッタ間等)を用いてもよい。
【0028】
[第3の実施の形態]
図4は、本発明の第3の実施の形態を示す。
【0029】
図4では、出力制御回路を設けた太陽電池出力の昇圧回路の構成を示しており、前述の第2の実施の形態における図3の昇圧回路に出力制御回路105を付加した構成である。
【0030】
昇圧対象である太陽電池101にて発電した電力は、昇圧回路102により昇圧され、出力制御回路105により定電圧や定電流や充電のための出力制御を受けた後にダイオード109を通じて電気・電子回路あるいは、二次電池である負荷103に供給される。昇圧された電力の一部は出力制御回路105と昇圧回路102に供給される。昇圧回路102を起動するための太陽電池104の電力は、ダイオード108の働きにより昇圧回路102にのみ供給されるため、起動照度の低下を防ぐことができる。ダイオード109により負荷103から出力制御回路105の方向に電流が逆流することはないので、負荷103に二次電池を用いた場合は、二次電池の不要な放電を防ぐことができる。負荷103が二次電池でない場合は、ダイオード109を省略してもよい。また、出力制御回路105は、3端子シリーズレギュレータを用いてもよいし、定電圧ダイオードを用いた簡単な構成でもよい。
【0031】
[第4の実施の形態]
図5は、本発明の第4の実施の形態における昇圧能力を可変にするための太陽電池出力の昇圧回路の構成を示しており、前述の第3の実施の形態における図4の昇圧回路において、出力制御回路105から昇圧回路102に制御信号を送り、昇圧能力を可変とすることで、制御目標を達成する構成について説明するための図である。
【0032】
同図に示す太陽電池出力の昇圧回路は、昇圧回路102の起動時に太陽電池104から電力を受けて起動する。この時点では、昇圧出力が発生していないか、出力制御回路105の最低動作電圧に達していないため、出力制御回路105からの制御信号は存在しなかったり、不定な動作をする。このため、不本意な制御信号状態により起動し始めた昇圧回路が停止して、正常な動作が行なわれない恐れがある。この問題を解決するには、以下の特徴を有する回路構成にする必要がある。
【0033】
・起動時に出力制御回路105から昇圧回路102に不定な制御出力を与えないこと:
・起動時に出力制御回路105の制御信号出力端子はハイインピーダンスであること:
出力制御回路105が不定な制御信号を出力しないようにするためには、制御信号出力段にハイポーラトランジスタなどの電流駆動素子を用いることが有効である。当該素子では、オンするのに電流が必要であり、昇圧回路起動時は、出力制御回路105は、電流駆動素子を駆動するだけの能力を持っていない。また、出力端子をハイインピーダンスにすることで、昇圧回路102から出力制御回路105に電流が流れ、昇圧回路の起動特性が劣化するのを防止することができる。従って、出力制御回路105の制御信号出力段には、オープンコレクタやゲート・ソース間に抵抗を並列接続して電流駆動型にしたオープンドレイン構成をとるのが有効である。回路構成の詳細については、実施例において後述する。
【0034】
【実施例】
以下、図面と共に本発明の実施例を説明する。
【0035】
[第1の実施例]
本実施例では、ブーストコンバータ構成の昇圧回路について説明する。
【0036】
図6は、本発明の第1の実施例のブーストコンバータ構成の太陽電池出力の昇圧回路の構成を示す。
【0037】
昇圧回路202の昇圧対象は、直列接続されていない太陽電池201であり、また、昇圧回路202の出力端子217には、負荷203として定電流・定電圧制御が可能な電子負荷(富士通伝送EULαXL150)を接続した。太陽電池201は、36平方センチメートルのシリコン多結晶でAM1.5の状況下にて開放端出力電圧が0.56V発生するものを用いた。昇圧回路202には、コイル206として、直流抵抗20ミリオーム、定格電流2A、インダクタンス値22マイクロヘンリーのものを用いた。スイッチ素子208には、MOSFETとしてシリコニクス製Si9948DYを用いた。ダイオード207には、ショトキーバリアダイオード東芝製CMS06を用いた。コンデンサ209には、三洋製電解コンデンサでESRが20ミリオーム、キャパシタンス220マイクロファラドのものを用いた。発振回路224は、汎用CMOSロジックゲートであるシュミットトリガ型インバータ74HC14によるマルチバイブレータ発振回路と出力電流強化のためのドライブ回路から構成した。
【0038】
マルチバイブレータ回路は、発振時定数を決定するキャパシタ210と抵抗211とシュミットトリガ型インバータ213から構成したが、ここには、一般的な低消費電力型の矩形波発振回路を用いることができる。
【0039】
ドライバ回路は、シュミットトリガ型インバータ212及び214を並列にして用いた。ここでは、一般的な低消費電力型のインバータやバッファタイプのロジックゲートを用いることができる。並列数は、電流駆動能力と負荷の重さから決定すればよい。昇圧回路202の電源として、前述の発振回路224のシュミットトリガ型インバータ74HC14の電源端子215への電力供給が必要であるので、ここに直列接続された太陽電池204とコンデンサ216を接続した。太陽電池204には、三洋製アモルファス太陽電池で5セル構成の定格出力3.0V、3.2mA、型番AM1156を用いた。コンデンサ216には三洋製OS電解コンデンサ220マイクロファラドのものを用いた。太陽電池201と太陽電池204は近接し、かつ、平面上に配置した。
【0040】
照度の測定は、照度計横河電機製510−02を用い、光源から太陽電池表面までの距離と光源から照度計の受光球までの距離が等しくなるようにして行なった。
【0041】
実験の結果、照度が1100ルクスから昇圧動作が始まることが確認された。発振回路224の発振周波数を調整することで昇圧開始電圧が変化し、発振周波数が1〜30kHz程度で昇圧開始電圧が最も高感度であった。昇圧回路の駆動源に用いた太陽電池204の出力電圧が1.1Vを超えると発振回路224は、発振を始めるが、スイッチ素子208の駆動には至らない。太陽電池204の出力電圧が1.4Vを超えると昇圧動作が始まることがわかった。照度が1100ルクスのときに太陽電池204の出力電圧が1.4Vに達していた。窓際または、太陽光下では、十分な昇圧動作が得られ、出力端子217には、20V以上の電圧が得られるが太陽電池204の出力電圧は1.9V程度であり、定格の3.0Vには到達しないため、次に、昇圧回路起動後の昇圧回路へのエネルギー供給の補強を行なった。
【0042】
なお、上記の74HC14は、インバータロジック6個と当該ロジックへの電源供給端子をひとまとめにした標準パッケージである。また、発振回路224は、74HC14の3個のインバータロジック212、213、214と抵抗211とコンデンサ210を使用して構成されている。
【0043】
[第2の実施例]
本実施例では、前述の第1の実施例とは異なるブーストコンバータ構成の昇圧回路について説明する。
【0044】
図7は、本発明の第2の実施例のブーストコンバータ構成の太陽電池出力の昇圧回路の構成を示す。
【0045】
同図に示す構成は、前述の第1の実施例の回路構成における、シュミットトリガ型インタバータ74HC14の電源端子215に、太陽電池204と昇圧回路の昇圧出力とをショットキーダイオード218とショットキーダイオード219によるオア回路を介して印加する構成とした。
【0046】
太陽電池204の出力は、昇圧回路202にのみ供給され、ダイオード219により負荷203に供給されることはないので、前述の第1の実施例に比べ、起動照度が劣化することはない。
【0047】
実験では、1200ルクス以上の光照射により昇圧回路が起動し、太陽電池201からの昇圧出力が得られた。昇圧出力は、負荷203に供給されると同時に出力の一部を電流制限抵抗220とダイオード219を介して昇圧回路202に供給する。すなわち、発振回路を構成するシュミットトリガ型インバータ74HC14の電源端子215に供給した。昇圧出力からのエネルギー供給が昇圧回路202に開始されると、74HC14の電源端子215の電圧が上昇し、発振回路224の動作が安定すると同時に、昇圧回路202のスイッチ素子208及び221を十分な駆動能力で駆動し始めるため、スイッチ素子208及び221のオン抵抗を低くすることができる。この実験では、スイッチ素子208及び221としてSi9948DYを用いたがオン抵抗の合成値は10ミリオームを得た。これは、コイル206の直流抵抗が20ミリオームの場合、昇圧回路の直流的な抵抗値は30ミリオーム程度となり、太陽電池201の発電電圧が0.3Vの時に最大10Aまでの発電電流を太陽電池201から昇圧回路202に取り込めることを意味している。
【0048】
本実施例の昇圧回路では、一旦、昇圧回路202が起動すると、昇圧出力の一部を昇圧回路202に供給するため、起動に用いた太陽電池204は不要となる。
【0049】
5000ルクス程度の光照射において、昇圧出力は7Vを超えるため、負荷203に富士通電装電子負荷EULαXL150を接続し、定電圧動作に設定した。
【0050】
以下に示す表1は、照度を変えて、昇圧対象である直列接続されていない太陽電池201の出力電圧Vinを変化させたときの実験結果の一例である。
【0051】
【表1】
Figure 0004320995
この実験では、負荷203として用いた電子負荷は、定電圧動作の5.00Vに設定した。昇圧回路の出力端子217における出力電圧と出力電流から昇圧出力を測定した。この結果から、太陽電池201の出力電圧が0.1Vでも昇圧出力が得られること、8割台の高い変換効率が得られることがわかる。実験に用いたマルチバイブレータによる矩形発振回路は、ディユーティ比を変化させる構成としなかったので、例えば、太陽電池201の出力電圧Vinが0.5Vのときの太陽電池201からの供給電流Iinが330ミリアンペアとなっている。しかし、ディユーティ比を調節できる別な矩形波発振回路による実験において、ディユーティ比を増加させることで、太陽電池201からの出力電流Iinが1500ミリアンペアを超えても昇圧回路202が取り込めることを確認した。 なお、上記の74HC14は、インバータロジック6個と当該ロジックへの電源供給端子をひとまとめにした標準パッケージである。また、発振回路224は、74HC14の3個のインバータロジック212、213、214と抵抗211とコンデンサ210を使用して構成されている。
【0052】
[第3の実施例]
本実施例では、出力制御機能を有するブーストコンバータ構成の昇圧回路について説明する。
【0053】
図8は、本発明の第3の実施例における太陽電池出力の昇圧回路の構成を示す。
【0054】
昇圧回路244内の矩形波発振回路は、汎用CMOSロジックゲートであるシュミットトリガ型2入力NAND(74HC132)によるマルチバイブレータ発振回路と出力電流強化のためのドライブ回路から構成した。マルチバイブレータ回路は、発振時定数を決定するキャパシタ233と抵抗232とシュミットトリガ型2入力NAND234から構成したが、この他にも、発振回路外部から発振状態の制御が可能な低消費電力型の矩形波発振回路を用いることができる。ドライブ回路は、シュミットトリガ型2入力NANDゲート235、236及び237を並列にして用いた。ここには、電流駆動能力の優れた低消費電力型のインバータタイプのロジックゲートを用いるとよい。並列数は負荷の重さに応じて決定すればよい。昇圧回路244の電源としてシュミットトリガ型2入力NAND74HC132の電源端子230への電力供給が必要であるので、ここに直列接続された太陽電池204をダイオード218を介して接続した。太陽電池204には、三洋製アモルファス太陽電池で大きさが3.3平方センチメートル、5セル構成の定格出力3.0V、3.2mA、型番AM1156を用いた。コンデンサ216には、三洋製低ESR型電解コンデンサ220マイクロファラドのものを用いた。前述の電源端子230には、前述の第2の実施例と同様に太陽電池204の発電出力と昇圧回路244の昇圧出力とをダイオード218及び219によるOR構成として接続した。
【0055】
本構成により、太陽電池204の発電出力は電源端子230にのみ供給でき、また、昇圧出力から太陽電池204に逆流することなく電源端子230に昇圧出力の一部を供給することができる。昇圧出力から電源端子230に昇圧出力の一部を供給する際に、電流制限抵抗220を挿入することで電源端子230に過大な電力が供給されるのを防ぎ、昇圧回路の変換効率を向上することができる。
【0056】
ダイオード218とダイオード219とダイオード207とダイオード238には、順方向降下電圧が小さい特徴を持つショットキーバリアダイオードを用いるとよい。本実施例では、東芝製CMS06を用いた。
【0057】
次に、出力制御回路について説明する。
【0058】
本実施例は、直列接続していない太陽電池出力を昇圧回路244により昇圧する際に昇圧出力を定電圧化するための回路構成例である。昇圧出力を一定電圧に制御するか、あるいは、一定電流に制御するかは、この昇圧回路の本質ではなく、公知の出力制御技術が利用可能である。ここで、必要なのは、これら出力制御回路が必要とする電力をどこから得ているかということと制御信号のインタフェース方法である。昇圧対象である太陽電池201の出力電圧は、0.4V程度、最大でも0.5V強である。このような低電圧で一般的な出力制御回路を構成するコンパレータや基準電圧源を駆動することは不可能である。もう一つのエネルギー源である太陽電池204は、昇圧回路244の起動動作に必要なエネルギーを供給するためのものであり、ごく小面積の太陽電池の利用を前提にしている。仮に、太陽電池204からエネルギーを流用すると、太陽電池204の出力電圧低下を招き、本昇圧回路の低照度動作の特性を著しく低下させるか、昇圧回路244の起動ができない事態を招くこととなる。出力制御回路は、昇圧回路244から昇圧出力が発生している時のみ機能すれば良い。従って、図8のように、直列接続されていない太陽電池201の昇圧出力から電圧を得るように接続することで、本昇圧回路の低照度動作の特性を全く劣化させることなく、公知の出力制御手段を利用することができる。
【0059】
次に、制御信号のインタフェース方法について説明する。定電圧制御や定電流制御などの出力制御は、昇圧回路244の昇圧動作に働きかけて昇圧能力を調節することで実現する。ここで、出力制御手段が昇圧回路244の昇圧出力から電力を得て動作している場合、昇圧回路244から昇圧出力が得られるまでは、出力制御手段は動作することができない。昇圧回路内の発振回路がこの出力制御手段からゼロボルトでない発振許可信号を受けて発振し、昇圧動作を実現する場合以下の問題が発生する。
【0060】
昇圧回路244は、発振制御端子260をロジックのハイレベルに相当する発振許可信号を受信することで、発振を開始し昇圧動作が行なわれる。昇圧回路244が起動する際には、昇圧出力はまだ発生していないため、出力制御手段から発振許可信号を得ることができないので、発振回路は発振することができない。従って、昇圧動作ができず昇圧出力が得られない。そこで、図8のように、発振制御端子260を電源端子230に抵抗231とコンデンサ245による積分回路を介して接続する。また、発振許可信号出力時以外の出力制御回路の出力端子のインピーダンスを高くするため、制御信号の出力端子の回路構成をオープンドレインかオープンコレクタ構成になるようにする。この回路構成では、起動時の発振制御端子260の電圧は、電源端子230の電源電圧とほぼ等しいため、ロジックハイレベルを安定して得られる特徴を持つ。
【0061】
また、本昇圧回路の低照度特性を劣化させる電力消費要因は存在しない。上記の問題を克服する直列接続されていない太陽電池出力の昇圧手段のための出力制御方法として、定電圧出力制御の例を本実施例において示し、定電圧制御動作について説明する。
【0062】
定電圧制御回路は、オープンドレイン出力構成のコンパレータ241と基準電圧源242とバイアス抵抗239及び出力電圧値設定のための出力電圧抵抗240及び243から構成され、図8のように結線した。コンパレータ241は、オープンドレイン出力もしくは、オープンコレクタ構成以外の場合でもコンパレータ出力端子にN型MOSFETかNPN型バイポーラトランジスタを介して発振制御端子260に接続することも可能である。
【0063】
次に、動作について説明する。
【0064】
太陽光照射による起動時は、昇圧出力が得られていないため、コンパレータ241の出力段のN型MOSFETあるいは、NPNトランジスタはオフ状態にあり、発振制御端子260の電圧が上昇して、昇圧回路内のマルチバイブレータが発振を開始し、昇圧出力が得られる。分割抵抗240と243による昇圧電圧の分割電圧が基準電圧源242の電圧より高くなると、コンパレータの出力は電流を引き込むので発振制御端子260は、ロジックローレベルになり、発振を停止し、昇圧動作が停止する。出力電圧が前述の分割抵抗240と243による設定値以下になるとコンパレータのオープンドレイン出力回路はオフし、昇圧発振制御端子260の電圧が積分回路を介して電圧を上昇し、ロジックハイレベルになると、昇圧回路244が発振を再開して昇圧動作を行い、出力電圧が一定になるように制御される。
【0065】
実験では、太陽電池201と太陽電池204は近接し、かつ、平面上に配置した。照度の測定は、照度計に横河電機製510−02を用い、光源から太陽電池表面までの距離と光源から照度計の受光球までの距離が等しくなるようにして行なった。実験の結果、照度が800ルクスから発振動作が始まることが確認された。発振回路の発振周波数を調整することで昇圧開始電圧が変化し、発振周波数が1〜30kHz程度で昇圧開始電圧が最も高感度であった。昇圧回路の駆動源に用いた太陽電池204の出力電圧が0.95Vを超えると発振回路は発振を始めるが、スイッチ素子208の駆動には至らない。照度が1100ルクスのときに太陽電池204の出力電圧が1.2Vに達し、昇圧動作が始まることがわかった。窓際や太陽光下では十分な昇圧動作が得られ、分割抵抗240と243で設定した出力電圧が出力端子217から得られた。
【0066】
[第4の実施例]
本実施例では、出力制御機能を有するブーストコンバータ構成の昇圧回路について説明する。
【0067】
図9は、本発明の第4の実施例の出力制御機能を有するブーストコンバータ構成の直列接続されていない太陽電池出力の昇圧回路の構成を示す。
【0068】
本実施例では、図8に示す第3の実施例の回路構成同様に出力制御回路の制御出力により、昇圧回路244の発振制御端子260を介して昇圧能力を調節して定電圧出力動作を実現するものである。前述の第3の実施例との差異は、昇圧回路244の発振制御端子260がロジックローレベルの時に発振回路が動作し、昇圧回路を動作させることで、第3の実施例では必要であった電源端子230からのバイアス回路を不要とするものである。
【0069】
また、発振制御端子260がロジックハイレベルの時に発振回路の動作が停止するので、コンパレータ出力の後にPNPトランジスタ272或いは、P型MOSFETによるレベルシフト回路を付加する。抵抗273と274は、PNPトランジスタ272のバイアス抵抗である。
【0070】
抵抗270は、発振制御端子260のプルダウン抵抗、抵抗271は、PNPトランジスタ272からの過電流防止と発振回路制御端子への過電圧印加によるラッチアップを防止するものである。コンデンサ275は、発振回路制御端子の耐ノイズ特性を向上するためのものである。
【0071】
次に、上記の構成における動作を説明する。
【0072】
太陽電池に光が照射され、太陽電池204から出力電圧が発生すると、電源端子230の電圧が上昇し、シュミットトリガ型2入力NANDロジックゲート74HC132が動作可能な状態となる。昇圧出力はないので、発振回路制御端子260は、プルダウン抵抗270によりロジックローレベルにあり、発振回路は発振を開始し、昇圧回路が起動し昇圧出力が発生する。昇圧出力電圧が分割抵抗240と243により分割された電圧と基準電圧源242の電圧とをコンパレータ241にて比較し、昇圧出力電圧の方が高圧電圧であるときは、コンパレータ241は、後段のPNPトランジスタ272をオンするように正入力端子と負入力端子を接続する。トランジスタ272が、オンすると昇圧出力からプルダウン抵抗270に電流が流れ、発振回路制御端子がロジックハイレベルとなり、発振動作が停止して昇圧動作が停止する。
【0073】
また、出力電圧が設定電圧以下になると、コンパレータ出力はオフとなり、PNPトランジスタ272は、オフするので発振回路制御端子260は、ロジックローレベルとなる。このため、発振回路が動作して昇圧動作が再開されるので出力電圧は一定電圧に制御される。
【0074】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されることなく、特許請求の範囲内において種々変更・応用が可能である。
【0075】
【発明の効果】
上述のように、本発明の直列接続されていない太陽電池の昇圧回路によれば、直列接続されていない太陽電池の出力電圧が0.5V以下であっても何等問題なく、高効率に昇圧した電圧を得ることができるので、従来の直列接続した太陽電池で問題であった、構成する太陽電池の何割かが影になると、太陽電池モジュール全体の何割かが影になったのと同じ効果が発生し、出力が大幅に低下する問題を解決することができる。
【0076】
また、従来、直列接続された太陽電池モジュールを作成するには、バイパスダイオードの付加に加え、太陽電池表面と隣接する太陽電池裏面を繋ぐ配線やセル間の絶縁対策が必要であり、モジュール効率を高めるためには、各太陽電池セルにおいて、配線のための隙間やセル間絶縁のための隙間を小さくし、かつ、精度よくセルを配置する技術が要求されるため、コスト高の太陽電池モジュールとなっていた。これに対し、本発明を適用することで、直列接続する必要がないので、太陽電池モジュールのコストを低減できる。
【0077】
さらに、従来はモジュール効率を高めるため、セル形状は四角形となり、意匠的な工夫を凝らすことが困難であったが、発電対象である太陽電池を直列接続する必要がないので、本発明により、様々な形状の太陽電池を並列接続して用いることができ、太陽電池モジュールの形状の制約から開放される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態を示す図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態を示す図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施例のブーストコンバータ構成の太陽電池出力の昇圧回路の構成図である。
【図7】本発明の第2の実施例のブーストコンバータ構成の太陽電池出力の昇圧回路の構成図である。
【図8】本発明の第3の実施例の太陽電池出力の昇圧回路の構成図である。
【図9】本発明の第4の実施例の出力制御機能を有するブーストコンバータ構成の直列接続されていない太陽電池出力の昇圧回路の構成図である。
【符号の説明】
101 第1の太陽電池、太陽電池
102 昇圧手段、昇圧回路
103 電源・充電器・各種電気・電子機器、負荷、二次電池
104 第2の太陽電池、太陽電池
107,108,109 ダイオード
201 昇圧対象である直列接続れていない太陽電池
202 昇圧回路
203 負荷
204 太陽電池
205 コンデンサ
206 コイル
207 ダイオード
208 N型MOSFET
209,210 コンデンサ
211 抵抗
212,213,214 シュミットトリガ型インバータゲート
215 シュミットトリガ型インバータゲートIC74HC14の電源端子
216 コンデンサ
217 出力端子
218,219 ダイオード
220 抵抗
221 N型MOSFET
224 発振回路
230 シュミットトリガ型2入力NANDゲートロジックIC74HC132
231,232 抵抗
233 コンデンサ
234,235,236,237 シュミットトリガ型2入力NANDゲート
238 ダイオード
239,240 抵抗
241 コンパレータ
242 基準電圧源
243 抵抗
244 昇圧回路
245 コンデンサ
260 制御端子
270,271 抵抗
272 PNPトランジスタ
273,274 抵抗

Claims (4)

  1. 太陽電池をエネルギー源として利用する電源、充電器及び各種電気・電子機器に用いられる太陽電池出力の昇圧回路であって、
    直列接続されておらず、タンデム型太陽電池以外の太陽電池単セルまたは、単セルを複数並列接続した太陽電池モジュールである第1の太陽電池からの出力電圧を昇圧対象とし、
    前記第1の太陽電池からの出力電圧を昇圧する昇圧手段と、
    前記昇圧手段の起動及び動作に必要な電力を供給するアモルファス太陽電池または、太陽電池モジュールを含む第2の太陽電池と、を有することを特徴とする太陽電池出力の昇圧回路。
  2. 太陽電池をエネルギー源として利用する電源、充電器及び各種電気・電子機器に用いられる太陽電池出力の昇圧回路であって、
    直列接続されておらず、タンデム型太陽電池以外の太陽電池単セルまたは、単セルを複数並列接続した太陽電池モジュールである第1の太陽電池の出力電圧を昇圧対象とし、
    前記第1の太陽電池からの出力電圧を昇圧する昇圧手段と、
    前記昇圧手段の起動及び動作に必要な電力を供給するアモルファス太陽電池または、太陽電池モジュールを含む第2の太陽電池と、
    前記昇圧手段に起動及び動作に必要な電力を供給する方向を順方向とする整流特性を有する第1、第2の整流素子と、
    を有し、
    前記第2の太陽電池で発電されて前記第1の整流素子を介した電力と、前記第1の太陽電池で発電されて前記昇圧手段により出力された電力の一部であり、前記第2の整流素子を介した電力とのオア出力を、該昇圧手段に起動及び動作に必要な電力として供給するように構成されたことを特徴とする太陽電池出力の昇圧回路。
  3. 前記昇圧手段の後段に設けられ、該昇圧手段により得られた昇圧電力の一部が供給されると、定電圧や定電流のための出力制御を行なう出力制御回路を更に有する請求項2記載の太陽電池出力の昇圧回路。
  4. 前記昇圧手段は、
    前記出力制御回路の制御出力を受けて昇圧能力を制御する手段を有する請求項3記載の太陽電池出力の昇圧回路。
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