JP4319732B2 - 柱状構造物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポール、ポールライト、ボラード、車止め、電柱、交通信号、道路標識、表示板や看板もしくは広告板などの支柱、アプローチライトの支柱、パーゴラ(公園などの四阿)の支柱、金網フェンスなど各種フェンスの支柱、ガレージの支柱、ガードレールの支柱、郵便ポストの支柱、あるいは電話ボックスの支柱などの柱状構造物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、上記のような柱状構造物を据付ける場合には、これらの基礎としてコンクリートまたは鉄筋コンクリートが使用されている。具体的には、前記柱状構造物における支柱の下部をコンクリートで固めて地中に埋設するか、あるいはアンカーを立てたコンクリートの基礎を予め地中に設け、それに立てられたアンカーボルトへ支柱の下端部を接続固定する工法が採用されている。
【0003】
前者の工法は、柱状構造物の支柱下部を予め工場内でコンクリートで固めた形態として現場に持ち込み、地面を掘削して穴の中に前記コンクリート部分を設置し、土を埋め戻すのである。この工法は、現場での施工は簡略化され、工期も短縮されるものの、支柱下部の埋設部を固めたコンクリートに所定の強度および硬度を確保するためには通常約4週間程度の養生期間が必要であり、また、工場などにおいて養生するための場所も必要となる。さらに、この場合、コンクリート自体の重量が非常に大きく、輸送の問題が大きな障害となるだけでなく、現場でこのような重量物を設置するための作業は大変である。
【0004】
一方、後者の工法は、柱状構造物のみを現場に持ち込み、基礎は現場で構築するので、前記のような重量物の運搬や、設置作業の困難性の問題はないが、現場ではコンクリート型枠の作製作業が必要となり、また、コンクリート硬化後、型枠取り外し作業なども必要であり、工期が長期化することによる弊害や経費の増加が避けられない。
【0005】
これらの問題点を解決する折衷案的な工法として、柱状構造物の支柱を挿入したのちにコンクリートを打設する中空部を設けたコンクリート2次製品が、いわゆる埋め殺しタイプの型枠として用いられている。これは、予め工場などで作製した前記コンクリート製型枠を現場に持ち込み、地面を掘削して穴の中に前記型枠を設置し、支柱下部を挿入した状態で該型枠の中空部にコンクリートを打設するというものである。この工法の場合には、予め支柱の下部をコンクリートで固めたものに較べて型枠重量を4割程度に抑えることができ、また現場でコンクリート硬化後、型枠を除去する必要がないことなどから広く普及している。しかし、この工法の場合にも、コンクリート製であることから工場などにおける型枠の養生期間が長いうえに養生のための保管場所を要することに変わりはなく、また、軽量化されているとはいえ、重量も、例えば一般的な30×30×40cmの形状でも約30kg程度もあり、人力作業ではやはり負担が大きい。
【0006】
更に、上記のような従来工法では、いずれも重量の大きなコンクリート製基礎を用いるものであることから、例えば埋め立て地などの地盤の脆弱な場所においては沈下の問題が避けられない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような柱状構造物の従来工法における重量物運搬、設置工事の困難性、コンクリートの現場打ち作業に伴う問題点などに鑑み、基礎を極めて軽量な素材に変更することにより、工期が短く、運搬や施工も容易で、また地盤の脆弱な場所にも良好に施工することができ、しかも工費も安価な柱状構造物を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、土木工事で地中に埋設した発泡ポリスチレン成形体が、大きな力がかかる状態で長期間使用された場合にも優れた力学的性質を示し、且つ殆ど脆化していないことを見出し、その点に着目し、この性質を利用して、公園、道路、広場などに設置されているポールなどの各種柱状構造物を支える基礎として、従来のコンクリートに代えて前記発泡ポリスチレンなどの発泡合成樹脂成形体を使用する着想を得た。これは、柱状構造物を保持する際に必要な荷重その他力学的な力を発泡合成樹脂成形体に負荷させるもので、従来にない斬新な着想に基づく発明である。
【0009】
さらに、前記の場合に、柱状構造物への風荷重などを負荷させるための発泡合成樹脂成形体における受圧面積が小さいと、発泡合成樹脂成形体の一部にその強度を超えた過大な荷重がかかり発泡合成樹脂成形体がその部分で破壊するおそれがあることから、発泡合成樹脂成形体の上面、下面、側面などの外面を補強したり、成形体の内部に補強構造を設けたりしなければならない場合もあるが、そのような補強構造とするとコストが上昇する。これらの強度やコストの点なども考慮して、従来のコンクリート製基礎を単に発泡合成樹脂成形体とするだけではなく、該発泡合成樹脂成形体における受圧面積を増大することを検討した結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明にかかる柱状構造物は、地面を掘削して地中に埋設された発泡合成樹脂成形体からなる基礎であって、柱状構造物の支柱の直径の1.5倍〜5倍で該基礎の幅の20〜50%の大きさの支柱挿入孔を設けた基礎の前記支柱挿入孔に、地中に埋設される支柱下部を遊嵌状態に挿入するとともに、前記支柱挿入孔内面と支柱との間に形成される間隙に充填、硬化させたモルタルまたはコンクリートにより、前記発泡合成樹脂成形体からなる基礎に対して支柱を固着してなり、柱状構造物を保持する際に必要な荷重その他の力学的力を前記発泡合成樹脂成形体からなる基礎に負荷させてなることを特徴とする。また、本発明に係る柱状構造物の据え付け方法は、前記柱状構造物の据え付け方法であって、発泡合成樹脂成形体からなる基礎であって、柱状構造物の支柱の直径の1.5倍〜5倍で該基礎の幅の20〜50%の大きさの支柱挿入孔を設けた基礎を、地面を掘削して設置し、前記発泡合成樹脂成形体からなる基礎の支柱挿入孔に前記柱状構造物の支柱を遊嵌状態に挿入し、前記支柱挿入孔内面と支柱との間に形成される間隙部分にモルタルまたはコンクリートを充填し、硬化させて固着することで、柱状構造物を保持する際に必要な荷重その他の力学的力を前記発泡合成樹脂成形体からなる基礎に負荷させてなることを特徴とする。更に、本発明に係る他の柱状構造物の据え付け方法は、前記柱状構造物の据え付け方法であって、発泡合成樹脂成形体からなる基礎であって、柱状構造物の支柱の直径の1.5倍〜5倍で該基礎の幅の20〜50%の大きさの支柱挿入孔を設けた基礎を、前記支柱挿入孔に前記柱状構造物の支柱を遊嵌状態に挿入し、前記支柱挿入孔内面と柱状構造物の支柱との間に形成される間隙部分にモルタルまたはコンクリートを充填し、硬化させて固着し、この柱状構造物に固着した発泡合成樹脂成形体からなる基礎を、地面を掘削して地中に埋設することで、柱状構造物を保持する際に必要な荷重その他の力学的力を前記発泡合成樹脂成形体からなる基礎に負荷させてなることを特徴とする。
【0011】
上記のような本発明にかかる柱状構造物においては、支柱を支える基礎が極めて軽量な発泡合成樹脂成形体よりなることから、従来のコンクリート製基礎に較べて運搬および現場での施工作業が格段に容易となるだけでなく、例えば埋め立て地などの地盤の脆弱な場所であって従来のコンクリート製基礎では沈下のおそれがあるような場所においても施工可能となる。しかも、柱状構造物に作用する風荷重などによる圧縮荷重を、前記間隙部分に充填、硬化させた充填材を介して発泡合成樹脂成形体からなる基礎に負荷させるようにしたことから、基礎における受圧面積が支柱断面に較べて大きくなり、発泡合成樹脂成形体の単位面積当たりに作用する荷重が低減されて基礎の破損を防止することができる。すなわち、前記支柱挿入孔内面と支柱との間の間隙の大きさは、該間隙に充填、硬化した充填材を介して圧縮荷重を負荷される発泡合成樹脂成形体の受圧面積が、構造物に作用する風荷重などにより前記充填材を介して負荷される圧縮荷重により発泡合成樹脂成形体が破損しない程度の面積となるような大きさとするのである。また、前記硬化した充填材が支柱と基礎との間を接着することで、支柱の回転も防止される。しかも、発泡合成樹脂成形体は工業的に大量生産が可能であり、従来のコンクリート製基礎に較べて安価に、しかも品質の均一な製品を安定供給することが可能である。
【0012】
ここで、前記硬化性充填材としては、モルタルまたはコンクリートを用いることが好ましいが、強度上問題がなければ、気泡や発泡合成樹脂粒子などを混入した軽量化モルタル又は軽量コンクリートを用いることができる。
【0013】
また、前記支柱と基礎の支柱挿入孔内面との間に形成される間隙部分は、必ずしもその全体に硬化性充填材を充填する必要はなく、前記硬化性充填材の一部を土砂などの他の充填材に置き換えててもよい。
【0014】
さらに、前記支柱を挿入した基礎の上面を前記硬化性充填材にて被覆してもよい。この場合には、前記基礎の上面に前記硬化性充填材を充填するための枠を設けることが好ましく、この枠は基礎と一体に設けることもできる。
【0015】
また、前記基礎の支柱挿入孔の内面に、該支柱挿入孔に挿入する支柱を立起状態に支持する支持凸部を突設しておけば、支柱と基礎との間に充填した硬化性充填材が硬化するまでの間、支柱を確実に立起状態に支持しておくことができる。
【0016】
上記のような本発明にかかる柱状構造物は、ポール、ポールライト、ボラード、車止め、道路標識、表示板や看板もしくは広告板などの支柱、アプローチライトの支柱、パーゴラの支柱、金網フェンスなど各種フェンスの支柱、ガレージの支柱、ガードレールの支柱、郵便ポストの支柱、あるいは電話ボックスの支柱などの、比較的高さの低い柱状構造物に好適に適用されるが、これらの構造物のみ限定されるわけではない。なお、前記アプローチライトとは、公園内の通路に沿った芝生の上などに設置される低い照明灯およびそれに類似した構造物をいう。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳しく説明する。図1は本発明にかかる柱状構造物の1実施例を示すものである。この柱状構造物1は、発泡合成樹脂成形体からなる基礎3を上下に貫通して設けた支柱挿入孔4に、地中に埋設される支柱2の下部を遊嵌状態に挿通するとともに、前記支柱挿入孔4の内面と支柱2との間に形成される間隙aに基礎3を構成する発泡合成樹脂成形体よりも硬質となる硬化性充填材5を充填、硬化してなるものである。
【0018】
前記基礎3を構成する合成樹脂の種類は特に限定されず、広範囲の合成樹脂が使用可能であるが、ポリスチレンなどのポリスチレン系樹脂、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、あるいはポリウレタンなどのポリウレタン系樹脂がより好ましい。また、用途に応じて耐油性合成樹脂あるいは耐熱性合成樹脂からなる発泡合成樹脂成形体を使用することもできる。また、前記基礎3の発泡合成樹脂成形体は、独立気泡のものでも連続気泡のものでも、どちらでも使用可能であるが、独立気泡の発泡成形体の方が圧縮強度が高く機械的性質が優れているので好ましい。前記発泡合成樹脂成形体の製法は、通常のビーズ発泡成形法でも、または押出成形法でもよいが、高い圧縮強度が要求されるため、発泡倍率は、例えば通常40〜60倍程度が好ましいが、用途によってはさらに低発泡倍率の成形体が好ましい場合があり、たとえば20〜40倍、さらには10〜20倍程度の低発泡倍率の成形体を用いることもできる。
【0019】
本発明の柱状構造物における基礎3としては、コスト、成形加工性などの観点から、発泡ポリスチレン系成形体を使用することが特に好ましい。発泡ポリスチレン系成形体を使用する場合、そのポリスチレン系樹脂は、通常のポリスチレン、すなわちスチレンモノマーのみを重合させたホモポリマーでもよく、また、スチレンモノマーに他のモノマーを共重合したコポリマーでもよく、さらには一部合成ゴムまたはゴムラテックスなどを混合、またはグラフト重合もしくは共重合したハイ・インパクト・ポリスチレンなど、各種スチレン系ポリマーを使用することができる。また、発泡ポリスチレンの場合は、発泡倍率を高めた成形体とした場合であっても、その気泡は独立気泡であるので、圧縮強度が高く力学的性質が優れている。
【0020】
さらに、前記発泡合成樹脂成形体としては、合成繊維、炭素繊維、無機繊維、金属繊維または木材チップなどの補強材を含有する発泡合成樹脂成形体とすることもできる。前記金属繊維を構成する金属としては、鉄、アルミニウム、スチールなどが挙げられる。これら補強材を発泡合成樹脂成形体中に分散させて含有させることにより、発泡合成樹脂成形体の圧縮強度、引裂強度などの力学的性質を向上させることもできる。補強材を分散、含有させた発泡合成樹脂成形体を得るには、例えば押出発泡成形法を採用することが好ましい。前記補強材は、発泡合成樹脂成形体の内部に分散されて力学的性質を向上させる材料であれば特に限定せず使用することができる。
【0021】
通常、柱状構造物の基礎の形状は直方体であるが、本発明における基礎3は直方体に限定されず、その使用目的に応じて、その他の形状とすることも可能である。また、基礎3の大きさは、柱状構造物1の大きさや受ける風荷重などにより適宜設計される。
【0022】
前記基礎3に設ける支柱挿入孔4の大きさについては、該支柱挿入孔4内面と支柱2との間の間隙aに充填、硬化した充填材5を介して圧縮荷重を負荷される発泡合成樹脂成形体からなる基礎3の受圧面積が、構造物に作用する風荷重などにより前記充填材5を介して負荷される圧縮荷重により発泡合成樹脂成形体が破損しない程度の面積となるような大きさに設計される。発泡合成樹脂成形体が負荷される圧縮荷重は、構造体の大きさや形状などにより異なるため、支柱挿入孔4の大きさも一概には規定できないが、支柱挿入孔4があまり大きすぎてモルタルなどの充填材量が多くなると、発泡合成樹脂成形体を用いて基礎3を軽量化するというメリットが乏しくなることから、例えば支柱2の直径の1.5倍〜5倍程度で、基礎3の幅の20〜80%程度、より好ましくは30〜60%程度、特に好ましくは30〜50%程度までの幅(直径)とすることが好ましい。支柱挿入孔4の大きさを前記のように支柱2の直径に較べて大きく設けるとともに、支柱挿入孔4に挿入した支柱2との間に形成される間隙に硬化性充填材5を充填し、硬化させることで、発泡合成樹脂成形体からなる基礎3において、柱状構造物1に作用する風荷重などの受圧面積が、支柱2の直径に較べて前記間隙aの円周、すなわち直径のπ倍分だけ増大することから、単位面積当たりに負荷される圧縮荷重が小さくなり、柱状構造物1に作用する風荷重などにより基礎3が破壊されることを防止することができる。
【0023】
前記支柱挿入孔4の断面形状にも特に限定はなく、平断面円形でもよいが、平断面多角形あるいは扁平断面とすることで、基礎3と充填材5との間、ひいては基礎3と支柱2との間の回転を確実に防止することができ好ましい。
【0024】
前記支柱2と基礎3の支柱挿入孔4の内面との間に形成される間隙aに充填される硬化性充填材5は常温硬化性のものが好ましい。この硬化性充填材5としては、硬化後に基礎3を構成する発泡合成樹脂成形体よりも硬質となり、柱状構造物1に作用する風荷重などを該充填材5を介して発泡合成樹脂成形体からなる基礎3に負荷させることができれば特に限定はなく、例えばモルタル、レジンモルタル、軽量モルタルなどのモルタル類、コンクリート、軽量コンクリートなどのコンクリート類、さらにはエポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂などの合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂に骨材などを含有させたものなどがいずれも使用できるが、これらのなかでもコスト、作業性、硬化後の強度などの点でモルタル類や、コンクリート類を用いることが好ましい。また、充填材5として前記モルタル類やコンクリート類を用いた場合には、支柱据え付け後には、これら充填材5の重量を利用して浮力を低減することで、基礎3の浮き上がりを防止するという効果もある。
【0025】
本発明にかかる柱状構造物1を据え付ける方法は、従来のコンクリート基礎の場合とほぼ同じで、基礎3の大きさに合わせて地面を掘削し、要すればその底部にクリ石、ゴロタ石を土または少量のモルタルなどでならした土台を設けてその上に基礎3を設置して、該基礎3に支柱2を挿入、固着したうえで掘削した土を埋め戻せばよい。基礎3に柱状構造物の支柱2を固着する方法は、基礎3に設けた支柱挿入孔4に支柱2の下部を挿入したうえで、支柱2と基礎3における支柱挿入孔4の内面との間に形成される間隙a部分にモルタルなどの硬化性充填材5を充填し、硬化させる。なお、基礎3への支柱2の固着作業は、基礎3を地中に埋設する前に施工現場で行ってもよいし、また、工場などで予め両者を固着しておいてもよい。
【0026】
本発明にかかる柱状構造物1における基礎3を構成する発泡合成樹脂成形体と土壌との馴染みは良好である。なお、基礎3と接触する土壌の状態により発泡成形体の表面強度を高める必要がある場合には、鉄、アルミニウム、スチールなどの金属板、合成樹脂板、木材、コンクリートなどで発泡成形体の表面を被覆した複合体構造としたり、発泡成形体の表面を合成樹脂フィルムや金属フィルムで被覆したり、発泡成形体の表面に塗料を塗布するようにしてもよい。また、発泡合成樹脂成形体の成形時に、その表面に合成樹脂フィルムを一体に融着したり、表面を溶融させて表皮層を形成することで表面強度を向上させるようなことも適宜実施することができる。
【0027】
また、本発明にかかる柱状構造物にあっては、基礎を軽量な発泡合成樹脂成形体としてなることから、長尺な基礎とすることもでき、フェンスの支柱やガードレールの支柱など、複数の支柱が近接して据え付けられる場合にあっては、長尺な発泡体に複数の支柱挿入孔を設けておき、複数の支柱を一体の基礎に対して固着することもできる。しかも、この場合には複数の支柱を正確な間隔で据え付けることができるので好ましい。
【0028】
次に、図2は本発明にかかる柱状構造物1の他の実施例である。この実施例では、支柱2と基礎3の支柱挿入孔4内面との間に形成される間隙aにおける上下2カ所のみにモルタルなどの硬化性充填材5を充填、硬化させるとともに、その中間部分には土砂などの非硬化性の充填材6を充填してなる。これは、図示したように基礎3に支柱2を挿入して固着した場合に、柱状構造物1に作用する風荷重による基礎3における圧縮荷重の受圧面は、主に基礎3への支柱2の挿入口部分、即ち基礎3の上下端部分、特に基礎3における上端部分であることから、この部分にのみ硬化性充填材5を充填、硬化させることでも、前記間隙aの円周分だけ発泡合成樹脂成形体からなる基礎3における受圧面積を増大させることが可能となるからである。なお、前記硬化性充填材5以外の非硬化性充填材6としては特に限定はないが、基礎3埋設時の土砂を埋め戻すようにすれば作業も容易でコストも安くつくので好ましい。
【0029】
また、支柱2と基礎3の支柱挿入孔4内面との間隙aに硬化性充填材5を充填するだけでなく、図3に示すように、基礎3の上面をもモルタルなどの硬化性充填材で被覆して根巻7を設けることもできる。このように根巻7を設けておくことで、基礎3内への雨水などの侵入を防止することができる。この場合、基礎3の上面に枠8を設けておき、該枠8内に硬化性充填材を充填、硬化させることで根巻7を容易に形成することができる。前記枠8の材質は、木製、ボール紙などの紙製、合成樹脂製などのいずれでもよい。この枠8は、基礎3の成形時に同時成形により予め基礎3に取り付けておいてもよいし、さらには図4に示すように、基礎3の上面に枠8を発泡合成樹脂により一体成形しておいてもよい。また、簡易的にクラフトテープなどを用いることもできる。なお、前記枠8は、柱状構造物1の据え付け後、これを除去してもよいし、据え付け後も枠8をそのままにしておいてもよい。
【0030】
また、上記図1〜図4に示した実施例では、基礎3を上下に貫通する支柱挿入孔4を設けて支柱2を基礎3の下方に突出させた状態としているが、図5に示すように、基礎3における挿入孔4は有底のものであってもよい。
【0031】
上記のように本発明にかかる柱状構造物1は、発泡合成樹脂成形体からなる基礎3に設けた支柱挿入孔4に支柱2の下部を挿入したうえで支柱2と支柱挿入孔4内面との間に形成される間隙a部分に硬化性充填材5を充填、硬化して基礎3に対して支柱2を立起状態に固着したものであるが、前記硬化性充填材5の充填後、これが硬化するまでの間に、該支柱挿入孔4に挿入した支柱2が傾いたりする場合がある。そのような場合には、充填した硬化性充填材5が硬化するまでの間、基礎3の支柱挿入孔4へ挿入した支柱2を適宜手段で立起状態に支持しておく必要がある。この場合の支柱2の支持方法としては、基礎3の支柱挿入孔4へ支柱2を挿入して支柱2と支柱挿入孔4の内面との間に石や棒などを挟んでおいてもよいが、例えば図6に示すように、基礎3の支柱挿入孔4の内面の適所に、該支柱挿入孔4に挿入される支柱2を支持するための支持凸部9を突設しておけば、硬化性充填材5の硬化までの間に支柱2が傾いたりすることを確実に防止することができる。前記支持凸部9としては、図7に示すように支柱挿入孔4の上下方向全長にわたって設けてもよいが、図8に示すように支柱挿入孔4における上下方向の一部のみに設けてあってもよい。
【0032】
上記のように、発泡合成樹脂成形体からなる基礎3の支柱挿入孔4の内面に支持凸部9を一体に突設しておけば、支柱挿入孔4に充填したモルタルなどの硬化性充填材5が硬化するまでの間に支柱2が傾いたりすることを確実に防止することができるだけでなく、支持凸部9が硬化後の充填材5内に突出することで、充填材5と基礎3との間の回転を確実に防止することができる。また、前記支持凸部9は比較的柔軟で変形可能な発泡合成樹脂にて形成されていることから、直径や断面形状の異なる支柱2の場合にも、これに形状が追随して支持することが可能である。
【0033】
さらに、前記発泡合成樹脂成形体からなる基礎3は、図8に示すように複数の成形体3a、3aに分割成形されたものであってもよく、図例の如く支持凸部9を支柱挿入孔4の上下方向に部分的に複数設ける場合には、成形加工性の観点からも基礎3を分割成形することは好ましい。また、図9に示すように、基礎3を左右に分割成形しておき、両成形体3b、3bにより支柱2を挟持するようにしてもよい。さらに、基礎3を複数に分割成形した場合には、図10に示すように各成形体3c、3cに互いに凹凸嵌合する連結凸部10と連結凹部11とを設けておけば、基礎3の組み立ては容易である。なお、前記分割された各成形体3aと3a、3bと3b、さらには3cと3cとは、それぞれ同一形状に成形したものを組み合わせて用いるようにすれば、成型用金型の製造コストが安くつくだけでなく、成形体の製品管理も容易である。
【0034】
【発明の効果】
本発明の柱状構造物は、従来法のコンクリートの基礎に代えて発泡合成樹脂成形体からなる基礎を使用するもので、その重量は、支柱下部をコンクリートで固めたものと較べて軽量であることはもちろんのこと、従来の埋め殺しタイプのコンクリート製型枠に較べても約100分の1程度と格段に軽量であるため、据付作業の際の重量物運搬、コンクリート打作業、据付作業が容易であり、また施工現場での型枠の組み立て作業および撤去作業も不要で工期も短時間で済むため経済性を大幅に改善することが可能である。さらに、施工後の基礎部分の重量も、コンクリートで固める場合やコンクリート製型枠にモルタルで固着する場合に較べて約10分の1以下と軽量であることから、地盤が脆弱で従来では沈下のため施工が困難であった場所においても施工可能となる。しかも、前記発泡合成樹脂成形体よりなる基礎に対して、それよりも硬質な充填材を介して支柱を固着してなることから、支柱を発泡成形体に直接支持させる場合に較べて発泡合成樹脂成形体における風荷重などに対する受圧面積が増大し、発泡合成樹脂成形体の単位面積あたりに作用する圧縮荷重がその分減少することから、発泡成形体が破壊されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明にかかる柱状構造物の実施例を示す基礎部分の正断面図。
【図2】 本発明にかかる柱状構造物の実施例を示す基礎部分の正断面図。
【図3】 本発明にかかる柱状構造物の実施例を示す基礎部分の正断面図。
【図4】 本発明にかかる柱状構造物の実施例を示す基礎部分の正断面図
【図5】 本発明にかかる柱状構造物の実施例を示す基礎部分の正断面図。
【図6】 本発明にかかる柱状構造物の実施例を示す基礎部分の平断面図。
【図7】 本発明にかかる柱状構造物における基礎の実施例を示す一部を破断した斜視図。
【図8】 本発明にかかる柱状構造物における基礎の実施例を示す一部を破断した分解斜視図。
【図9】 本発明にかかる柱状構造物の実施例を示す模式的平面図。
【図10】 本発明にかかる柱状構造物の実施例を示す模式的分解正断面図。
【符号の説明】
1 柱状構造物、 2 支柱、 3 基礎、 4 支柱挿入孔、 5 硬化性充填材、 6 充填材、 7 根巻、 8 枠、 9 支持凸部、 10 連結凸部、 11 連結凹部、 a 間隙。
Claims (3)
- 地面を掘削して地中に埋設された発泡合成樹脂成形体からなる基礎であって、柱状構造物の支柱の直径の1.5倍〜5倍で該基礎の幅の20〜50%の大きさの支柱挿入孔を設けた基礎の前記支柱挿入孔に、地中に埋設される支柱下部を遊嵌状態に挿入するとともに、前記支柱挿入孔内面と支柱との間に形成される間隙に充填、硬化させたモルタルまたはコンクリートにより、前記発泡合成樹脂成形体からなる基礎に対して支柱を固着してなり、柱状構造物を保持する際に必要な荷重その他の力学的力を前記発泡合成樹脂成形体からなる基礎に負荷させてなることを特徴とする柱状構造物。
- 請求項1に記載の柱状構造物の据え付け方法であって、
発泡合成樹脂成形体からなる基礎であって、柱状構造物の支柱の直径の1.5倍〜5倍で該基礎の幅の20〜50%の大きさの支柱挿入孔を設けた基礎を、地面を掘削して設置し、前記発泡合成樹脂成形体からなる基礎の支柱挿入孔に前記柱状構造物の支柱を遊嵌状態に挿入し、前記支柱挿入孔内面と支柱との間に形成される間隙部分にモルタルまたはコンクリートを充填し、硬化させて固着することで、柱状構造物を保持する際に必要な荷重その他の力学的力を前記発泡合成樹脂成形体からなる基礎に負荷させてなることを特徴とする柱状構造物の据え付け方法。 - 請求項1に記載の柱状構造物の据え付け方法であって、
発泡合成樹脂成形体からなる基礎であって、柱状構造物の支柱の直径の1.5倍〜5倍で該基礎の幅の20〜50%の大きさの支柱挿入孔を設けた基礎を、前記支柱挿入孔に前記柱状構造物の支柱を遊嵌状態に挿入し、前記支柱挿入孔内面と柱状構造物の支柱との間に形成される間隙部分にモルタルまたはコンクリートを充填し、硬化させて固着し、この柱状構造物に固着した発泡合成樹脂成形体からなる基礎を、地面を掘削して地中に埋設することで、柱状構造物を保持する際に必要な荷重その他の力学的力を前記発泡合成樹脂成形体からなる基礎に負荷させてなることを特徴とする柱状構造物の据え付け方法。
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JP08690499A JP4319732B2 (ja) | 1999-03-29 | 1999-03-29 | 柱状構造物 |
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