JP4319721B2 - プラスチックカード - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明はプラスチックカードに関するものである。特に本発明は、基材を構成する成分のうち、高分子化合物成分の固有粘度を特定の値としたものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、銀行カード(キャッシュカードとも呼ばれる)やクレジットカードを始め、種々のカードが発行され、仕様は様々であるものの、いずれもカードを保持する各個人を特定するデータ(=IDデータ)を内蔵しており、その個人の特定(ID)の手段として広く使用されている。また、身分証明書、通行証、交通機関の定期乗車券なども、それぞれが持っている情報や、表示の方法が異なっているものの、同様の機能を持っている。
【0003】
また、必ずしも個人を特定しないカードもある。定期乗車券のように交通機関の乗車区間を特定しないカード、例えば、その都度異なる区間の利用のための一括前払い金に対し発行されるカードや、公衆電話料金の前払い金に対し発行されるカード等の、前払いカードである。
【0004】
さらに、個人の特定はするが、金額そのものを扱わないカードもある。小売り業において、売上金額に対し一定の割合で顧客に点数(ポイント)を与え、累積された点数により、商品やサービスの提供を行なうことが古くから行なわれているが、その際に与えた点数を記憶し、かつ、その点数を表面に設けたリライタブル層に記録する点数カードである。
以上は、カードの利用形態のほんの数例に過ぎず、他にも様々な仕様、使われ方がある。
なお、本明細書における「カード」とは、携帯されるために、ほぼ名刺程度のサイズに統一されているもので、幾つかの例を引いて説明したように、IDデータ、残りの金額、又は点数等の何らかの情報、および情報に伴う価値を持っていて、それぞれの目的に応じて使用されるものを指す。
【0005】
ところで、カードを外観で大別すると、厚いカードと薄いカードがあり、銀行カード、クレジットカード、または身分証明書等は厚いカードであり、定期乗車券、前払いカード、点数カード等は薄いカードである。
そして一概には言えないが、厚いカードは直接的または間接的に価値が高く、他人の手に渡って不正に使用された場合の損害が大きいが、薄いカードにおいては、定期乗車券が比較的高額であるのを除けば、不正に使用されたときの損害金額は比較的少ない。
【0006】
従って、厚いカードに関しては、種々のID手段を講じて、安全の確保を狙う必要性がより大きく、通常、厚いカードには磁気記録層、インプリント部、および署名欄等のID手段が備わっており、さらには、IC又はLSI、もしくは写真等のID手段と、カードが真正であることの証明としてのホログラムシール等から選択された手段を伴う事もあり、これらとは性格を異にするが、カードの発行元、使用可能分野、使用上の注意等の目で見て分かる印刷層を有している。
【0007】
従って、厚いカードの基材には、これらのID手段やその他の手段を備えるために、(1)印刷層形成や種々の手段を備える目的で接着性を有していること、(2)前記の項目と多少重複するが、熱融着ができること、および(3)インプリント(=エンボス文字)のためのエンボス適性を有していること、等の種々の加工を考慮した加工適性を備えていることが重要であり、併せて、使用環境下で折り曲げや摩耗等に耐える機械的強度、耐水性や耐汚染性等を備えている必要がある。
【0008】
従来から、厚いカードの基材としては、ポリ塩化ビニル樹脂製のシートが使用されており、上記の各項目をいずれもほぼ満たすものであり、多量に使用されている。
ところが、カードはその保持者が長期間保持するとは限らず、クレジットカード等におけるように、一定の年限毎に更新したり、転居により最寄りの金融機関との取引を停止したとき等に、不要なカードが発生し、処分の必要が生まれる。
処分の際、ポリ塩化ビニル樹脂製のシートが基材であると、焼却時に二酸化炭素、水に加えて塩化水素を発生し、焼却環境が整っていない場合には、さらにベンゼン、一酸化炭素、塩素ガス、もしくはその他のガスを発生することもある。本来的には、ポリ塩化ビニル樹脂製のシートを大量に集めて一括焼却し、有害な物質を安全に処理することは可能であるが、各個人が焼却する場合には、有害な物質の処分が完全には行われず、問題を生じる可能性があり、有害な物質を発生しない、あるいはしにくい素材のシートを使用する必要性がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、上記の従来技術において、焼却時に塩化水素等の有害な物質を発生することなく、先に挙げた種々の加工適性やその他の特性が、ポリ塩化ビニル樹脂製のシートと同等以上であるものを基材として使用したカードの提供をすることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、本質的に炭素、水素、および酸素からなり、本質的に塩素や、新たな問題を発生する可能性のある窒素を構造中に含まない高分子化合物の中から選択した樹脂を使用することにより、上記の課題を解決した。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、センターコアシート及びその表裏に積層するオーバーシートからなる基材の一部に印刷層、署名欄となる筆記性層および磁気記録層とホログラム層が積層されており、かつ前記基材の一部にエンボス文字部を有しており、また、前記基材の一部に写真が貼ってあるか、埋め込んであるか、またはプリントしてあり、更に、前記基材の一部に演算部または/およびメモリ部を有するICまたはLSIが基材の一部に埋め込んであり、前記センターコアシート及び前記オーバーシートを構成する素材のうちの高分子化合物成分の固有粘度が0.70以上0.75以下であり、前記センターコアシート及び前記オーバーシートが、テレフタール酸とエチレングリコールの縮合物を単位とする、ポリエチレンテレフタレート樹脂のエチレングリコール部分の一部をシクロヘキサンジメタノールで置き換えたポリエステルであって、エチレングリコール部分とシクロヘキサンジメタノール部分とをほぼ交互に繰り返し、非結晶質であるシートから構成されていることを特徴とすることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のカードの表側を示す平面図であって、カード基材1にはカードの名称の印刷層2a、および有効期限の項目の印刷層2bが積層されており、さらに、エンボス文字として、カードの固有番号3a、発行会社の略称3b、カードの有効期限3c、およびカード保持者の氏名3dが施されたものである。
図2は、本発明のカードの裏側を示す平面図であって、磁気記録層4、および署名欄となる筆記性層5が積層されており、カード発行元の会社名、住所、および電話番号の印刷層2cが積層されている。
【0016】
図1および図2はクレジットカードを意図したものであり、クレジットカードはこのような構成であることが多いが、身分証明書であれば、さらに写真が表面に貼ってあるか、埋め込んであるか、またはプリントしてある事があり、銀行カードや地域商店会のカードであれば、演算部または/およびメモリ部を有するICまたはLSIが基材の一部に埋め込んである事がある。あるいは、これら厚いカードに、ホログラム層を積層してある事もあるし、可変情報を表示する層を積層してあることもある。
なお、以上の説明は一例であって、印刷層2、エンボス文字3、磁気記録層4、筆記性層5、ICまたはLSI、もしくはホログラム層は、それらのうちから任意に選択し、表裏の任意の位置に設けることができる。
【0017】
カード基材としては、機械的強度を有し、塩素を含まない観点から、ポリエステル樹脂を検討したが、ポリエチレンテレフタレート樹脂に代表されるポリエステル樹脂は、引っ張り強度等に関しては強いが、印刷層の密着性がなく、熱融着も困難であり、また、エンボス文字を設けるときのように、部分的にシートが伸ばされるような加工に供するには一般的に向かないとされている。
【0018】
本発明においては、テレフタール酸とエチレングリコールの縮合物を単位とする、ポリエステル樹脂の中では最も知られているポリエチレンテレフタレート樹脂のエチレングリコール部分の一部をシクロヘキサンジメタノールで置き換えたポリエステルであって、好ましくは、エチレングリコール部分とシクロヘキサンジメタノール部分とをほぼ交互に繰り返し、非結晶質であって、かつ固有粘度が0.70以上である樹脂で構成したシートが、カード用途に適していることが見出された。
固有粘度の上限は0.80で、従って、固有粘度としては0.70〜0.80、より好ましくは、固有粘度が0.70〜0.77、最適な範囲は、固有粘度が0.70〜0.75である。固有粘度が0.70未満ではエンボス文字の形成時にひび割れが生じ、上限を超えると、高くて明瞭なエンボス文字の形成が次第に困難になる。
上記の樹脂は、イーストマンケミカル社製の商品名、Easter PETGコポリエステルを三菱樹脂株式会社にてシート化したものが市販されている。
カード基材の厚みとしては、カードとしての総厚みが0.7〜0.8mm程度となるよう、センターコアシート(後記の「表1」中ではコアシートと略記)、およびその表裏に積層するオーバーシートの厚みを調整する。
【0019】
固有粘度の測定は、標準となる溶媒の粘度と、試料を同じ溶媒で溶解した溶液の粘度とを比較して行ない、使用溶媒としては、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの50重量%/50重量%混合溶液50mlに、試料を樹脂分が500mgになるよう採取して加熱して溶解した溶液と、なにも溶解しない同じ混合溶媒を用い、30℃の条件で細管粘度計(毛細管粘度自動測定装置、SS−600−L2型、柴山科学(株)製)を使用)の落下に要する時間を測定し、試料を含む場合の時間Tと混合溶媒だけの場合の時間Toとを求めた。
得られたT、およびToから比粘度ηrelを、ηrel=T/Toの式によって求め、得られた比粘度ηrelから相対粘度ηspをηsp=ηrel−1の式によって求め、相対粘度ηspから固有粘度(Inherent Viscosity)であるIV値をIV値=[η]=(−1+√A)/2KC、ただしA=1+4Kηspの式によって求めた。なお、ここで、Kは0.33、Cは1である。
【0020】
この固有粘度が0.70以上である上記ポリエステル樹脂は、(1)印刷層形成や種々の手段を備える目的での良好な接着性を有している、(2)約120℃で充分な強度の熱融着が行なえる(ポリ塩化ビニル樹脂の場合は約160℃)、(3)エンボス文字形成のためのエンボス適性を有している等の加工適性上の特長に加え、(4)耐折り曲げ性も優れている(ポリ塩化ビニル樹脂の数倍の回数の折り曲げに耐える)。
【0021】
ところで、カード基材に要求される性能のうち、最も厳しい条件が(3)のエンボス文字の形成である。エンボス文字部は、幅3mm、長さ3〜5mm程度で線幅1mm弱の文字を表側の面より浮き出させたもので、これを形成する際には、シートの一部が伸ばされる。また、標準的なカードにおいては、1枚のコアシートと呼ばれる中芯シートの両面をオーバーシートと呼ばれる透明シートで被覆してあるので、エンボス文字形成の際に各シートの密着強度が弱いと、裏側からエンボス文字を形成するために打刻すると、特に表側のオーバーシートとコアシートの間で密着が保たれなくなり、かつ伸びが破断限界を越える事により、表面のオーバーシートのひび割れが起こり、プラスチックカードの商品としての価値を著しく損なう。
【0022】
上記のポリエステルシートの固有粘度の異なるものを使用し、エンボス文字部の割れの有無で合格、不合格を判断したデータを「表1」に示す。エンボス文字の形成は、日本データカード社製のカード自動発行システム、DC−9000、のエンボス文字形成部を使用し、鋼鉄製のエンボス文字形成用型で、カード裏面側から、常温にて、1〜5/1000秒の速度で打刻し、高さ0.45mm程度のエンボス文字を形成した。
【0023】
【表1】
【0024】
カードを構成するその他の要素については次のようにして形成する。
表裏にある様々な印刷からなる印刷層2は、ポリエステル系樹脂をバインダーとするインキ組成物を使用し、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷等によりコアシートまたはオーバーシートに形成する。
【0025】
磁気記録層4は、合成樹脂のバインダー中にフェライト等の磁気記録性粉末を練り込んだ塗料組成物を用いて、離型性シート上に形成したものを転写するか貼着することにより、形成するのが普通である。
【0026】
署名欄となる筆記性層5は、カード保持者自身の署名をする欄で、ポールペン等でサインした際に、インキを弾かず、ある程度浸透するように、適宜なバインダーに体質顔料を練り込んだ塗料組成物を用いて形成するか、あるいは別の基材に形成したものを転写するかまたは貼着して形成する。
【0027】
カードが身分証明書である場合、顔写真を形成することがある。従来からある銀塩タイプの写真を撮影し、カード基材1に貼るか埋め込む。あるいは、昇華性染料等の染着性のある素材で画像形成可能な領域を形成しておき、顔写真のビデオ信号に基づいてその領域に感熱プリンタで画像をプリントし、形成する方法も採れる。
【0028】
カード基材1には、演算部または/およびメモリ部を有するICまたはLSIを埋め込んで使用できるようにしてもよい。ICまたはLSIを使用すると、磁気記録層に記録できる情報量をはるかに上回る情報を盛り込むことができ、かつ書き込み、消去、演算等ができるので、銀行通帳、カルテ等としての利用が可能になる。
【0029】
カード基材1には、ホログラム層を積層してもよい。ホログラム層自身に肉眼では見えない情報を盛り込んでもよいが、粘着シール型のホログラムシールとして、写真を貼った上に貼ると、写真の貼り変えが防止できる。ホログラムシールは、作成が難しく、真正なシールである事の証明の意味で貼ることが多い。
【0030】
【発明の効果】
本願発明によれば、銀行カードやクレジットカードのようなプラスチックカードの基材を高分子化合物成分の固有粘度が0.70以上であるものを使用したので、物理的強度が優れ、特にエンボス文字部が良好に形成されたプラスチックカードを提供でき、しかも、焼却等において、ポリ塩化ビニル樹脂シートを使用した際の有害な物質の発生が回避できる。従って、本発明のプラスチックカードは、クレジットカード、キャッシュカード、ポイントカード、会員カード、ICカード、IDカード等の種々の用途に適したものである。
【0031】
カード保持者の写真が貼ってあるので、より確実な確認が可能なカードを提供できる。
【0032】
ICまたはLSIを適用したことにより、盛り込める情報量が多く、演算等も可能になり、広い用途に使用できるプラスチックカードを提供できる。
【0033】
ホログラム層が積層してあることにより、外観意匠が向上し、カードの真正や写真の貼り替え防止等の機能が高められたプラスチックカードを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプラスチックカードの表側を示す図である。
【図2】本発明のプラスチックカードの裏側を示す図である。
【符号の説明】
1 カード基材
2 印刷層
3 エンボス文字
4 磁気記録層
5 筆記性層
Claims (1)
- センターコアシート及びその表裏に積層するオーバーシートからなる基材の一部に印刷層、署名欄となる筆記性層および磁気記録層とホログラム層が積層されており、かつ前記基材の一部にエンボス文字部を有しており、
また、前記基材の一部に写真が貼ってあるか、埋め込んであるか、またはプリントしてあり、
更に、前記基材の一部に演算部または/およびメモリ部を有するICまたはLSIが基材の一部に埋め込んであり、
前記センターコアシート及び前記オーバーシートを構成する素材のうちの高分子化合物成分の固有粘度が0.70以上0.75以下であり、
前記センターコアシート及び前記オーバーシートが、テレフタール酸とエチレングリコールの縮合物を単位とする、ポリエチレンテレフタレート樹脂のエチレングリコール部分の一部をシクロヘキサンジメタノールで置き換えたポリエステルであって、エチレングリコール部分とシクロヘキサンジメタノール部分とをほぼ交互に繰り返し、非結晶質であるシートから構成されていることを特徴とするプラスチックカード。
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