JP4318214B2 - 金属パネルの折曲げ加工方法及び折曲げ加工用装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、一般的な曲げ加工方式では、垂直方向のパンチによりL曲げ加工された後、水平方向のスライド曲げ型により断面コの字に形状に成形されるため、金型構造としてカム機構を用いる等、複雑で高価なものとなる。そのため、加工品の品種別に折曲げ代が変化する場合には、容易に対応できないという問題点がある。また折曲げ加工装置が大掛りとなるため、建築現場でのサイズ変更にも対応し難い。
また、建築現場では、サイズ変更に対応させるために、断熱パネルを所要サイズに切断した後、板材端部に手曲げによってコの字形状の曲げ加工を施すことも行われている。しかし、この方法の適用はアルミニウム合金板等の軟質材料に限られ、硬質の鋼板を用いた断熱パネルに適用しようとすると、形状精度が低下し、外観が悪くなる。
また、この方法では、アルミニウム合金板等の軟質材料の他に、鋼板のような硬質・高強度の金属板にあっても、外観上、外壁として問題のないパネルの成形は可能である。しかしながら、金属板製パネルを構成する表面材の金属板四辺に順次曲げ加工を施そうとするとき、量産された鋼板の材料ロット間の材料特性値のバラツキや生産面での安定化といった点から、加工後の形状精度にバラツキが生じる場合もある。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、鋼板のような硬質・高強度の金属板を素材とした金属製断熱パネルであっても、鋼板の材質特性のバラツキに影響されることなく、形状精度の良く、しかも外観的に優れた断熱パネルを成形できる折曲げ加工する方法を提供することを目的とする。
また、突き曲げ金型の金属パネルを固定する雌型の上部には、金属パネルのずれを防止するために押さえ板17を配設することが好ましい。押さえ板は、金属パネル芯材の石膏ボード等が破損しないようにスプリング18等を介して上板11に取り付けることが好ましい。さらに、同じ目的で、押さえ板の芯材当接面にはウレタンゴム等の軟質材料板を貼り付けることが好ましい。
めっき鋼板としては、亜鉛めっき鋼板,アルミニウムめっき鋼板,Zn−5%Al合金めっき鋼板,Zn−55%Al合金めっき鋼板、Zn−6%Al−3%Mg等のZn−Al−Mg系合金めっき鋼板等、種々のめっき鋼板が使用できる。めっき層は、片面当たりの付着量20〜200g/m2で形成されたものが好ましい。20g/m2未満の付着量ではめっき層の防食作用が弱く、逆に200g/m2を超える付着量では経済的に不利であるばかりでなく、加工性が低下しやすくなる。
金属パネルを構成する原板には、めっき鋼板の他にステンレス鋼板や塗装鋼板、あるいはアルミニウム合金板も使用できる。塗装鋼板としては、塗装前処理が施された少なくともその片面に防錆顔料を含み乾燥膜厚で1〜20μmのプライマー層が設けられたものが好ましい。
一般に、鋼板に曲げ加工等を施すとき、成形後の曲げ角度は、工具等の曲げ角度よりも大きくなる。いわゆるスプリングバック現象を起こして設計角度と異なった曲げ角度になることが多い。形状精度の高いフレームを得るためには、スプリングバックの小さい素材を用いることが有効である。そのためには、めっき鋼板の下地鋼板の機械的特性として、比較的降伏強さ及び引張強さが小さいもの、加工硬化指数(n値)が小さいもの、ヤング率が大きいものを使用することが好ましい。
そして、低強度材を使用することにより、曲げ荷重も低減できる。
本発明を構成する折曲げ加工治具は、図2に示すように、支柱1と、該支柱上に固定されたベッド2と、該ベッドの端部に一側が回動自在に軸支された従動板3と、該従動板の他側に回動自在に軸支された立体従動板4と、先端にローラー6が取り付けられ、垂直方向に直線運動する原動部材5とから構成されている。この原動部材5は支柱1に取り付けられたレール7に沿って、油圧装置等、図示していない駆動装置によって、図中では上方に直線運動されるようになっている。
なお、原動部材5の先端に取り付けられたローラー6は、原動板5が従動板3や立体従動板4に当接し、押圧するときの摩擦や摩耗を低減するために設けたものである。
本発明装置を構成する突き曲げ金型は、図3に示すように、上板11,下板12及びその間に配置されて金属パネルMを固定するとともに先端工具14を受け入れる雌型13、及び前記雌型13に嵌る先端工具14を固定したカムスライド15であって、前記上板11が下降することにより垂直運動する連結部材16の運動を水平方向に変えて運動するカムスライド15が、L曲げ加工された金属板端部の芯材からはみ出ている側端の芯材厚み部に対応する箇所の中央部に先端工具14が当接するような位置関係で配置されている。
本発明装置を構成する突き曲げ金型としては、上記態様に限定されることなく、片方に1個の先端工具14を有するものとして4回の突き曲げ工程を実施してもよいし、片方に2個の先端工具14を有するものとし、左右に分けて2回の突き曲げ工程を実施するようにしてもよい。
なお、上板11は別途取り付けた押圧装置(図示せず)の駆動により、下方に押し下げられて雌型13上に載置した金属パネルMを固定するように構成されている。前記上板11の下降に伴って運動する連結部材16の垂直運動はカムスライド15によって水平方向の運動に変えられて、カムスライド15に固定された先端工具14がL曲げ加工された金属板端部の芯材からはみ出ている側端の芯材厚み部に対応する箇所の中央部に当接され、当該部分に折曲げ線が形成されるように各構成部材は配設されている。
なお、本発明方法が適用できる金属板パネルは、石膏ボードや硬質ウレタンフォーム等、硬質の定型断熱材を使用しているものであり、石綿のように形状が定まらないものには、適用できない。
コーナーカットを含め所定サイズに裁断された金属板を表面材Aとして、その裏面に石膏ボード等、所要の芯材Bが貼り付けられた金属パネル素材を、図2に示した本発明装置の折曲げ加工治具のベッド1上に載置し、図示していない固定装置を使用して固定する。
原動部材5の1ストロークの直線運動によって、表面材Aの端部をコの字状に折曲げ加工することができることになる。
金属パネルを構成する表面材Aの平行な反対側の端部についても、上記折曲げ加工を同様に施こす。この段階では、外観的には図6(a)に示す形状となっている。
突き曲げ金型上に載置された金属パネルMは、図示されていない押圧装置の駆動により下方に押し下げられた上板11と雌型13の間で固定される。前記上板11の下降に伴って下方に移動する連結部材16の上下運動はカムスライド15によって水平方向の運動に変えられて、カムスライド15に固定された先端工具14が図3中の内側方向に移動させられ、L曲げ加工された表面材A端部の芯材Bからはみ出ている側端の芯材厚み部に対応する箇所の中央部に突き当てられて当該部分に折曲げ線Fが形成される(図5、図6(b)参照)。
なお、本発明の金属パネルの折曲げ加工方法は、裏面側の側端部にLアングル等の補強材を配設した強化金属パネルの表面材を折曲げ加工する際にも使用できることは言うまでもない。
そして、上記のような作業により、精度の良い製品形状の金属パネルが容易に成形できる。この金属パネルは、必要に応じて、製品仕様が塗装外観の場合にはその表面に塗装が施され、あるいはタイル外観の場合にはその表面に接着剤を利用したタイル貼付が施されて、実際の建築物の外壁材等として使用される。
金属板として、溶融55%Al−Zn合金めっき鋼板を使用した。パネルの表面材には、板厚0.2mmの205mm×545mmの切板を用い、四隅を30mm×30mmでコーナーカットした。裏面材には、同じ厚さで158mm×500mmの切板を用いた。芯材には、12.5mm厚×150mm×500mmの石膏ボードを用い、石膏ボードの表裏面に各々の鋼板を接着剤にて貼り付けた。
次に、長辺側の二辺にL曲げ加工が施された半加工品を本発明装置の突き曲げ金型上に搬送し、上板11を下降させて前記半加工品を固定するとともに、カムスライド機構の作用により互いに内側に向けて水平移動する先端工具を表面材側端部に突き当てて、得られる金属パネルのコーナー部の表面材端部に内側に曲がった折曲げ線を付与した。
その後、折曲げ線が付された半加工品の表面材短辺側の二辺に、再び、本発明装置の折曲げ加工治具を用いて断面コの字状のL曲げ加工を施した。
その結果、図5でθとして示す突き曲げ角度が120度以下では、図7(a)に示すように、折曲げ加工後に金属パネルの隅部に“膨れ”が生じていた。突き曲げ角度θが120〜130度の範囲では、図7(b)に示すように、金属パネルは折曲げ加工後に各面が奇麗に曲げられていた。しかしながら、突き曲げ角度θが130度を超えるようになると、図8に見られるように、折曲げ加工後に金属パネルの隅部が次第に“開く”ような現象が認められた。突き曲げ角度θが130〜145度の範囲では、上記“開き”は図8(a)のようにまだ小さいが、突き曲げ角度θが145度を超えると、折曲げ加工後に金属パネルの隅部に座屈が生じて、図8(b)のように大きくなっている。
金属パネル表面の角度θ1とコーナーR1、ならびに裏面の角度θ2とコーナーR2の測定を行った。形状測定位置を図9に示す。
その結果、表面角度θ1は、従来の加工法では91度から96度の範囲であったが、本発明の加工法を適用したものでは、89度から93度と90度に近い形状が得られた(図10(a)参照)。また、裏面角度θ2は、従来の加工法では88度から98度とバラツキの範囲が大きく、所定の製品形状を得ることができなかったのに対して、本発明の加工法を適用したものでは、89度から94度とバラツキの範囲が狭く、安定して90度に近い形状の金属パネルを得ることが可能であった(図10(a)参照)。
これにより、本発明の突き曲げ金型を使用して曲げ線を付与した後に折曲げ加工を適用した方法では、金属パネルの表・裏面のコーナーRとも小R化が可能であった(図10(b)参照)。
5:原動部材 6:ローラー 7:レール
11:11 12:下板 13:雌型 14:先端工具
15:カムスライド 16:連結部材 17:押さえ板 18:スプリング
Claims (4)
- 金属板の裏面側に貼り付けられた芯材を覆うように当該金属板の端部を断面コの字状に折曲げ加工する際に、垂直方向に直線運動する原動部材の先端に取り付けたローラーによって、ベッド端部に一側が回動自在に軸支された従動板を上方に押圧して当該従動板をベッド端部の軸を支点に90度回転させて金属板端部をL曲げ加工した後、さらに、前記原動部材の先端に取り付けたローラーによって、従動板の他側に回動自在に軸支された立体従動板を上方に押圧し、当該立体従動板を従動板端部の軸を支点に90度回転させてL曲げ加工された金属板端部の先端をさらにL曲げ加工し、全体として原動部材の1ストロークの直線運動によって金属板端部をコの字状に折曲げ加工した後、当該L曲げ加工された金属板端部の芯材からはみ出ている金属板側端の芯材厚み部に対応する箇所の中央部に、芯材の上下面に平行な方向で外側から先端工具を押し当てて内側に曲がった曲げ線を付与し、その後に、前記コの字状に折曲げ加工した金属板端部と直交する金属板端部に、前記と同じ原動部材の1ストロークの直線運動によってL曲げ加工を施して金属板端部をコの字状に折曲げ加工することを特徴とする金属板パネルの折曲げ加工方法。
- 支柱、該支柱上に固定されたベッド、該ベッドの端部に一側が回動自在に軸支された従動板、該従動板の他側に回動自在に軸支された立体従動板、及び先端にローラーが取り付けられ、垂直方向に直線運動する原動部材を有し、当該原動部材が、前記従動板及び立体従動板に対して、前記原動部材先端のローラーが前記従動板に当接して当該従動板を上方に押圧するとき、当該従動板はその1側が軸支された前記ベッド端部に対して90度曲げられ、さらに前記原動部材先端のローラーが前記立体従動板に当接して当該立体従動板を上方に押圧するとき、当該立体従動板をその一側が軸支された前記従動板に対して90度曲げられるような位置関係で配置されている折曲げ加工治具と、上板,下板及びその間に配置されて金属パネルを固定するとともに先端工具を受け入れる雌型、及び前記雌型に嵌る先端工具を固定したカムスライドであって、前記上板が下降することにより垂直運動する連結部材の運動を水平方向に変えて運動するカムスライドが、L曲げ加工された金属板端部の芯材からはみ出ている側端の芯材厚み部に対応する箇所の中央部に前記先端工具が当接するような位置関係で配置されている突き曲げ金型とを備えていることを特徴とする金属板パネルの折曲げ加工用装置。
- 突き曲げ金型の雌型の上部に、押さえ板がスプリングを介して上板に連結されている請求項2に記載の金属板パネルの折曲げ加工用装置。
- 押さえ板の金属パネル当接面に軟質材料板が貼り付けられている請求項3に記載の金属板パネルの折曲げ加工用治具。
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