JP4317119B2 - 熱アシスト磁気記録方法および試験記録再生方法 - Google Patents

熱アシスト磁気記録方法および試験記録再生方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱アシストを伴って磁気記録媒体に情報を記録するための磁気記録方法、および、熱アシスト磁気記録方法において採用する記録条件を決定するための試験記録再生方法に関する。
ハードディスクなどの記憶装置を構成するための記録媒体として、磁気記録媒体(磁気ディスク)が知られており、コンピュータシステムにおける情報処理量の増大に伴い、磁気ディスクについては高記録密度化の要求が高まっている。
磁気ディスクへの情報記録に際しては、磁気ディスクの記録面(記録磁性膜により構成される)に対して記録用の磁気ヘッドが近接配置され、当該磁気ヘッドにより、記録磁性膜に対し、その保磁力より強い記録磁界が印加される。磁気ディスクに対して磁気ヘッドを相対移動させつつ磁気ヘッドからの記録磁界の向きを順次反転させることにより、記録磁性膜において、磁化方向が順次反転する複数の磁区(記録マーク)が磁気ディスクの周方向ないしトラック延び方向に連なって形成される。このとき、記録磁界方向を反転させるタイミングが制御されることにより、各々に所定の長さで記録マークが形成される。このようにして、記録磁性膜において、磁化方向の変化として所定の信号ないし情報が記録される。
磁気ディスクの技術分野においては、記録磁性膜の保磁力が高いほど、記録磁性膜に形成される磁区の熱安定性が高く、微小ないし幅狭で安定した磁区を形成しやすいことが、知られている。記録磁性膜にて安定に形成され得る最小の磁区が微小であるほど、磁気ディスクにおいて、より大きな記録密度を得ることが可能である。
磁気ディスクへの情報記録においては、上述のように、記録磁性膜の保磁力より強い記録磁界を印加しなければ適切に記録マークを形成することができない。そのため、記録磁性膜について設定される保磁力の増大に伴い、磁気ヘッドにより印加すべき記録磁界の強度を増大することが考えられる。しかしながら、磁気ヘッドにより印加できる記録磁界の強度については、例えば磁気ヘッドの構造や消費電力の観点から、制約を受ける。
そこで、磁気ディスクへの情報記録においては、いわゆる熱アシスト磁気記録方式が採用される場合がある。熱アシスト磁気記録方式で磁気ディスクに情報記録が実行される場合、まず、回転する磁気ディスクの記録面に近接配置される所定の光学ヘッドからのレーザ照射により、磁気ディスクの記録磁性膜が局所的に順次昇温される。記録磁性膜における昇温領域では、その周囲の非昇温領域よりも保磁力が低下する。そして、磁気ディスクの記録面に近接配置される磁気ヘッドにより、記録磁性膜の昇温領域の保磁力より強い記録磁界が当該昇温領域に印加され、当該昇温領域の一部が所定方向に磁化される。この磁化は、当該磁化箇所の冷却の過程で定着することとなる。熱アシスト磁気記録方式では、このようにして所定方向に磁化された記録マークが形成される。熱アシスト磁気記録方式によると、加熱により保磁力が低下された箇所に対する記録磁界印加により情報記録が実行されるため、情報保持時や情報再生時の常温での記録磁性膜の保磁力を高く設定する場合であっても、磁気ヘッドにより印加すべき記録磁界の強度を過度に増大する必要はない。このような熱アシスト磁気記録方法については、例えば下記の特許文献1や特許文献2に記載されている。
特開平6−243527号公報 特開2003−157502号公報
従来の熱アシスト磁気記録方法では、磁気ディスクの回転速度は一定に設定され、且つ、照射レーザのパワーも一定に設定される。磁気ディスクの回転速度が一定であるため、情報記録時における磁気ディスクの記録面内の各箇所の線速度は、回転軸心からの距離に応じて変化する。具体的には、回転軸心に近い箇所ほど線速度は低い。線速度の低い箇所(回転軸心に近い箇所)ほど当該箇所に対するレーザ照射時間(加熱時間)は長く、且つ、上述のように照射レーザパワーは一定であるため、線速度の低い箇所ほど、単位時間あたりに受ける昇温エネルギは大きい。これとともに、線速度の低い箇所ほど、磁気ディスクが回転することに起因する冷却効率は低い。したがって、従来の熱アシスト磁気記録方法では、記録面において線速度の低い箇所ほど、即ち回転軸心に近い箇所ほど、レーザが照射された場合に、最高到達温度(レーザ照射による昇温領域内の最も高い温度)は高く且つ所定温度以上に昇温する範囲は広い。そのため、従来の熱アシスト磁気記録方法では、記録面において回転軸心から最も遠い最外周箇所(即ち最も加熱効率の低い箇所)にて記録マークを形成するときの昇温領域の最高到達温度と、記録面において回転軸心から最も近い最内周箇所(即ち最も加熱効率の高い箇所)にて記録マークを形成するときの昇温領域の最高到達温度とは、相当程度に異なる。これとともに、記録面の最外周箇所にて記録マークを形成するときの所定温度以上の昇温範囲と、記録面の最内周箇所にて記録マークを形成するときの所定温度以上の昇温範囲とは、相当程度に広さが異なる。このような従来の熱アシスト磁気記録方法では、記録面の最外周箇所にて記録マークを形成可能な強さに照射レーザパワーが設定されるところ、記録面の内周側に対する情報記録時には、照射レーザパワーが強すぎるために、レーザ照射による記録磁性膜の最高到達温度は不当に高くなり且つ所定温度以上の昇温範囲は不当に広くなる場合がある。
記録磁性膜に対するレーザ照射と記録磁界印加とにより当該記録磁性膜のトラックに沿って記録マークが順次形成される熱アシスト磁気記録においては、最高到達温度が高すぎると、直前に形成された記録マークの当該形成箇所における保磁力が不当に低下して、記録磁界の作用により当該直前記録マークが消失ないし劣化するという、記録減磁現象が生じる場合がある。記録減磁現象は、磁気ディスク再生時の再生信号におけるSNR(Signal to Noise Ratio)を低下させて磁気ディスクの高記録密度化を阻害するので、好ましくない。また、所定温度以上の昇温範囲が広すぎると、記録マークが順次形成されているトラックの隣りのトラックまで記録マーク幅が不当に広がることにより、当該隣りのトラックの記録マークが消失ないし劣化するという、クロスライト現象が生じる場合がある。クロスライト現象は、トラックの狭ピッチ化を阻害するので、磁気ディスクの高記録密度化の観点から好ましくない。このように、記録面の最外周箇所にて記録マークを形成可能に設定される照射レーザパワーが記録面の内周側に対する情報記録時にも適用される従来の熱アシスト磁気記録方法は、記録密度を高めるうえで困難性を有するのである。
本発明は、以上のような事情の下で考え出されたものであって、磁気記録媒体の高記録密度化に適した熱アシスト磁気記録方法、および、当該方法で採用する複数のレーザパワー条件を決定するための試験記録再生方法を提供することを、目的とする。
本発明の第1の側面によると磁気記録方法が提供される。本方法では、記録磁性膜を有して回転軸心まわりに回転する磁気記録媒体において、記録磁性膜にレーザを照射して当該記録磁性膜を局所的に順次昇温させつつ当該昇温領域に記録磁界を印加することにより、情報記録を実行する。また、本方法では、記録磁性膜においてレーザを照射すべき箇所(レーザ照射予定箇所)の回転軸心からの距離に応じてレーザパワーを選択して記録磁性膜にレーザを照射する。
本熱アシスト磁気記録方法においては、記録磁性膜におけるレーザ照射予定箇所(記録マーク形成予定箇所)の回転軸心からの距離に応じて適当なレーザパワーを選択してレーザ照射を行うことにより、記録磁性膜の昇温領域の最高到達温度を適切に調節することができ、また、所定温度以上の昇温範囲を適切に調節することができる。例えば、記録磁性膜において回転軸心から最も遠くて線速度の最も高い最外周箇所に記録マークを形成する場合には最も強いレーザパワー(第1レーザパワー)を選択してレーザ照射を行い、記録磁性膜において回転軸心に最も近くて線速度の最も低い最内周箇所に記録マークを形成する場合には最も弱いレーザパワー(第2レーザパワー)を選択してレーザ照射を行い、他の箇所に記録マークを形成する場合には第1および第2レーザパワーの間の強さのレーザパワーを選択してレーザ照射を行うことにより、記録磁性膜の最外周箇所から最内周箇所にわたって、情報記録時における記録磁性膜の昇温領域の最高到達温度の相異を抑制して最高到達温度を一様化することができ、また、所定温度以上の昇温範囲の広さの相異を抑制して当該昇温範囲の広さを一様化することができる。最高到達温度を適切な温度で一様化することにより、最高到達温度が不当に高まることに起因する上述の記録減磁現象を回避または充分に抑制することが可能である。これとともに、所定温度以上の昇温範囲を適切な広さで一様化することにより、所定温度以上の昇温範囲が不当に広がることに起因する上述のクロスライト現象を回避または充分に抑制することが可能である。したがって、本熱アシスト磁気記録方法によると、記録減磁現象やクロスライト現象を回避ないし充分に抑制しつつ、適切に各記録マークを形成することができるのである。このような熱アシスト磁気記録方法は、磁気記録媒体の高記録密度化に適している。
本発明の第2の側面によると熱アシスト磁気記録方法が提供される。本方法では、記録磁性膜を有して回転軸心まわりに回転する磁気記録媒体において、記録磁性膜にレーザを照射して当該記録磁性膜を局所的に順次昇温させつつ当該昇温領域に記録磁界を印加することにより、情報記録を実行する。また、本方法では、記録磁性膜は、回転軸心を共通軸とする同軸状の複数の円環領域を含み、記録磁性膜においてレーザを照射すべき箇所(レーザ照射予定箇所)が含まれる円環領域の種類に応じてレーザパワーを選択して記録磁性膜にレーザを照射する。
本熱アシスト磁気記録方法においては、記録磁性膜におけるレーザ照射予定箇所(記録マーク形成予定箇所)が含まれる円環領域の種類に応じて適当なレーザパワーを選択してレーザ照射を行うことにより、記録磁性膜の昇温領域の最高到達温度を適切に調節することができ、また、所定温度以上の昇温範囲を適切に調節することができる。例えば、最も外側の円環領域内に記録マークを形成する場合には最も強いレーザパワー(第1レーザパワー)を選択してレーザ照射を行い、最も内側の円環領域内に記録マークを形成する場合には最も弱いレーザパワー(第2レーザパワー)を選択してレーザ照射を行い、他の円環領域が存在して当該他の円環領域内に記録マークを形成する場合には第1および第2レーザパワーの間の強さのレーザパワーを選択してレーザ照射を行うことにより、記録磁性膜の最外円環領域から最内円環領域にわたって、情報記録時における記録磁性膜の昇温領域の最高到達温度の相異を抑制して最高到達温度を一様化することができ、また、所定温度以上の昇温範囲の広さの相異を抑制して当該昇温範囲の広さを一様化することができる。最高到達温度を適切な温度で一様化することにより、最高到達温度が不当に高まることに起因する上述の記録減磁現象を回避または充分に抑制することが可能である。これとともに、所定温度以上の昇温範囲を適切な広さで一様化することにより、所定温度以上の昇温範囲が不当に広がることに起因する上述のクロスライト現象を回避または充分に抑制することが可能である。したがって、本熱アシスト磁気記録方法によると、記録減磁現象やクロスライト現象を回避ないし充分に抑制しつつ、適切に各記録マークを形成することができるのである。このような熱アシスト磁気記録方法は、磁気記録媒体の高記録密度化に適している。
本発明の第3の側面によると試験記録再生方法が提供される。本方法は、試験記録工程およびその後の再生工程を含む。試験記録工程では、記録磁性膜を有する磁気記録媒体を回転軸心まわりに回転させ、記録磁性膜にレーザを照射して当該記録磁性膜を局所的に順次昇温させつつ当該昇温領域に記録磁界を印加することにより、記録磁性膜における第1トラックに沿って第1記録マーク群を形成し、その後、第1トラックと隣り合う第2トラックに沿って第2記録マーク群を形成し、その後、第2トラックとは反対の側で第1トラックと隣り合う第3トラックに沿って第3記録マーク群を形成する。再生工程では、第1トラックに形成された第1記録マーク群に由来する磁気信号を測定する。本方法では、試験記録工程における第1トラックについて複数の線速度を設定し、試験記録工程において記録磁性膜に照射するレーザについて線速度ごとに複数のレーザパワーを設定し、試験記録工程および再生工程を、当該複数の線速度と当該複数のレーザパワーとの全ての組合せで実行する。
本方法の一の試験記録工程において第1〜第3トラックの各々に第1〜第3記録マーク群を形成する間は、第1トラックの線速度を一定に維持し、且つ、記録磁性膜に照射するレーザのパワーを一定に維持する。再生工程では、試験記録工程で第1トラックに沿って試験的に形成された第1記録マーク群に由来する磁気信号を測定するところ、この磁気信号測定に基づいて、当該再生における例えばビットエラーレート(bER)や再生信号振幅について知ることができる。このような試験記録工程およびその後の再生工程を、同一の第1トラック線速度条件において、当該線速度ごとに設定された全てのレーザパワーについて実行することにより、当該線速度条件において最小bERまたは最大再生信号振幅が得られたレーザパワーを最適レーザパワーとして決定することができる。bERが最小であることや、再生信号振幅が最大であることは、当該線速度条件において最も記録減磁現象および/またはクロスライト現象が抑制されていることを意味する。そして、同一線速度条件下でのこのような最適レーザパワーの決定を、設定される全ての線速度について行うことにより、設定される複数の線速度に対応する一組の最適レーザパワーを決定することができる。以上のようにして、本発明の第1および第2の側面の熱アシスト磁気記録方法において採用する複数のレーザパワー条件を適切に決定することが可能である。
図1は、本発明に係る熱アシスト磁気記録方法と試験記録再生方法とを実施することのできる磁気ディスク10およびスライダ20を表す。
磁気ディスク10は、ディスク基板11と、記録磁性膜12と、保護膜13とを含む積層構造を有し、熱アシスト磁気記録方式による情報記録と情報再生とを実行可能な磁気記録媒体として構成されている。ディスク基板11は、主に、磁気ディスク10の剛性を確保するための部位であり、例えば、アルミニウム合金基板、ガラス基板、または樹脂基板である。記録磁性膜12は、垂直磁化膜または面内磁化膜よりなり、磁気ディスク10において情報が記録される記録面を構成する。この記録面には、同心円状の複数のトラックが磁気的に構成されている。このような記録磁性膜12は、例えば、Co合金、Fe合金、または希土類遷移金属アモルファス合金よりなる。保護層13は、記録磁性膜12を外界から物理的および化学的に保護するためのものであり、例えば、SiN、SiO2、またはダイアモンドライクカーボンよりなる。磁気ディスク10は、必要に応じて他の膜を含んでもよい。このような磁気ディスク10は、図外のスピンドルモータに支持され、スピンドルモータが回転駆動することによって矢印D方向に回転される。スピンドルモータの回転駆動は、所定の制御部からの制御信号に基づいて制御される。
スライダ20は、スライダボディ21と、集光レンズ22と、記録用磁気ヘッド23と、再生用磁気ヘッド24とを備え、磁気ディスク10の情報記録時および情報再生時に磁気ディスク10に対向して浮上配置される。スライダボディ21は、回転中の磁気ディスク10においてスライダ20に対向する箇所の線速度が所定以上であるときに、磁気ディスク10ないし保護層13とスライダ20との間に気体潤滑膜を生じさせるための所定の形状を有する。また、スライダボディ21は、その媒体対向側に所定のレーザ出射部21aを有し、図外の光源から発せられて集光レンズ22を通過したレーザLがレーザ出射部21aから出射可能に構成されている。集光レンズ22は、レーザLを集束させるためのものである。磁気ヘッド23は、記録磁性膜12に対して所定の記録磁界Hrを印加するためのものであり、磁界発生用の電流を流すためのコイルと、発生磁界を強い磁界に変換するための磁極とからなる。磁気ヘッド24は、記録磁性膜12の磁化状態に由来する磁気信号を検知して電気信号に変換するためのものであり、例えばGMR素子やMR素子よりなる。このようなスライダ20は、板バネ状のサスペンションアーム(図示略)を介して図外のアクチュエータに連結されている。サスペンションアームは、スライダ20に対し、磁気ディスク10に向けて付勢力を作用させるためのものである。アクチュエータは、例えばボイスコイルモータにより構成されている。
本発明の熱アシスト磁気記録方法においては、磁気ディスク10の記録面(記録磁性膜12により構成される)を、例えば図2に示すように、同心円状の複数のゾーン(円環領域)Z1〜Z10に区分しておく。ゾーンZ1〜Z10の各々は複数のトラック(図2において図示せず)を含む。ゾーンZ1〜Z10の各々の範囲の一例を、ディスク半径位置(ディスク径方向における1次元的な位置であって、磁気ディスク10の回転中心Oからの距離)により図3の表に示す。また、本熱アシスト磁気記録方法では、図3に示すように、ゾーンZ1〜Z10に対してレーザLのレーザパワーP1〜P10を設定しておく。レーザパワーP1〜P10は、P1<P2<P3<P4<P5<P6<P7<P8<P9<P10の関係を有する。レーザパワーP1〜P10は例えば1〜10mWの範囲に含まれる。
回転速度一定で磁気ディスク10を回転させつつ所定の一のトラックに対して熱アシスト磁気記録方式で記録マークを形成する場合、当該トラックのディスク半径位置に応じて記録マーク形成予定箇所の線速度(ないしレーザ照射時間)は異なるところ、本発明の熱アシスト磁気記録方法では、レーザLの照射による記録磁性膜12の昇温領域の最高到達温度の相異を抑制して最高到達温度を一様化し且つ所定温度以上の昇温範囲の広さの相異を抑制して当該昇温範囲の広さを一様化するように、ゾーンZ1〜Z10の各々の平均線速度の相異に応じて、適切な強さのレーザパワーP1〜P10を設定しておくのである。具体的には、内側のゾーンほどその平均線速度は低いので、より内側のゾーンに対して、より弱いレーザパワーを設定しておく。
本発明の熱アシスト磁気記録方法による情報記録に際しては、磁気ディスク10を所定の一定速度で回転させる。回転速度は例えば4200〜10000rpmである。これにより、磁気ディスク10とスライダ20との間に気体潤滑膜が生じ、スライダ20は、磁気ディスク10に対して浮上配置されることとなる。そして、スライダ20に搭載されている集光レンズ22を通ってレーザ出射部21aから出射されるレーザLを磁気ディスク10の記録面(記録磁性膜12)に照射し続ける。本方法では、情報記録が実行されるゾーン(記録マーク形成予定箇所が含まれるゾーン)の種類(ゾーンZ1〜Z10)に応じてレーザパワーP1〜P10を選択したうえで当該レーザ照射を行う。これとともに、本方法では、スライダ20に搭載されている磁気ヘッド23により、一定強度の記録磁界を記録磁性膜12に対して印加する。記録磁界強度は例えば4〜5kOeである。また、磁気ディスク10を回転させた状態で磁気ヘッド23からの記録磁界の向きを順次反転させることにより、記録磁性膜12において、磁化方向が順次反転する複数の磁区(記録マーク)を磁気ディスク10の周方向ないしトラック延び方向に連ねて形成する。このとき、記録磁界方向を反転させるタイミングを制御することにより、各々に所定の長さで記録マークを形成する。このようにして、記録磁性膜12において、磁化方向の変化として所定の信号ないし情報を記録する。
本熱アシスト磁気記録方法においては、記録磁性膜12におけるレーザ照射予定箇所(記録マーク形成予定箇所)が含まれるゾーンの種類(ゾーンZ1〜Z10)に応じて適当なレーザパワーP1〜P10を選択してレーザ照射を行うことにより、記録磁性膜12の最外のゾーンZ10から最内のゾーンZ1にわたって、情報記録時における記録磁性膜12の昇温領域の最高到達温度の相異を抑制して最高到達温度を一様化することができ、また、所定温度以上の昇温範囲の広さの相異を抑制して当該昇温範囲の広さを一様化することができる。最高到達温度を適切な温度で一様化することにより、最高到達温度が不当に高まることに起因する記録減磁現象を回避または充分に抑制することが可能である。これとともに、所定温度以上の昇温範囲を適切な広さで一様化することにより、所定温度以上の昇温範囲が不当に広がることに起因するクロスライト現象を回避または充分に抑制することが可能である。したがって、本熱アシスト磁気記録方法によると、記録減磁現象やクロスライト現象を回避ないし充分に抑制しつつ、適切に各記録マークを形成することができるのである。このような熱アシスト磁気記録方法は、磁気記録媒体の高記録密度化に適している。
本発明の熱アシスト磁気記録方法においては、磁気ディスク10の記録面を区分するゾーンの数を増大し、設定されるレーザパワーの数を増大するほど、情報記録時における記録磁性膜12の昇温領域の最高到達温度の相異をより抑制して最高到達温度をより一様化するうえで、また、所定温度以上の昇温範囲の広さの相異をより抑制して当該昇温範囲の広さをより一様化するうえで、好適である。
図4は、上述の熱アシスト磁気記録方法で採用するレーザパワー条件(レーザパワーP1〜P10)を決定するための第1の試験記録再生方法のフローチャートである。本試験記録再生方法では、磁気ディスク10の記録面(記録磁性膜12)におけるゾーンZ1〜Z10に、各々、図5に示すようにテストエリアA1〜A10を設定しておく。テストエリアA1〜A10には、各々、図6に示すように3本のトラックT1〜T3が含まれる。本方法におけるトラックT1は、ゾーンZ1〜Z10の各々において、ディスク半径方向中央に位置する。すなわち、トラックT1のディスク半径位置は、ゾーンZ1〜Z10の各々の平均ディスク半径位置である。また、テストエリアA1〜A10には、各々、複数のレーザパワー条件を対応させて予め設定しておく。テストエリアごとの複数のレーザパワー条件は、例えば1〜10mWの範囲で設定され、全てのテストエリアA1〜A10に対して同じ一組のレーザパワー条件を設定してもよいし、異なるテストエリアに対しては異なる一組のレーザパワー条件を設定してもよい。
本試験記録再生方法では、まず、ステップS1において、テストエリアA1〜A10から選択した所定のテストエリアAxのトラックT1上に、アクチュエータの駆動によりスライダ20を移動させる。
次に、ステップS2において、次の試験記録工程における照射レーザLのパワーを選択する。具体的には、テストエリアAxに対して予め設定されている複数のレーザパワーから一のレーザパワーPxを選択する。
次に、ステップS3において、テストエリアAxにてレーザパワーPxの条件で試験記録工程を実行する。具体的には、まず、磁気ディスク10を所定の一定速度で回転させて磁気ディスク10上にスライダ20を浮上配置させた状態で、レーザパワーPxのレーザLをトラックT1に照射して当該トラックT1を局所的に順次昇温させつつ、当該昇温領域に対して所定強度および所定周波数の記録磁界Hrを印加することにより、トラックT1の一周にわたって第1記録マーク群を形成する。磁気ディスク10の回転速度は、本試験記録再生方法を通じて、上述の熱アシスト磁気記録方法における回転速度と同一速度に設定する。第1記録マーク群は、線記録密度が例えば800kFCIの一定マーク長の記録マークよりなる。このようにして第1記録マーク群をトラックT1に形成した後、磁気ディスク10を同一速度で回転させたまま磁気ディスク10上にスライダ20を浮上配置させた状態で、トラックT1の隣りのトラックT2に対してレーザパワーPxのレーザLを照射して当該トラックT2を局所的に順次昇温させつつ、当該昇温領域に対して所定強度および所定周波数の記録磁界Hrを印加することにより、トラックT2の一周にわたって第2記録マーク群を形成する。これに続いて、第2記録マーク群を形成したのと同様に、トラックT3の一周にわたって第3記録マーク群を形成する。第2および第3記録マーク群は、線記録密度が例えば100kFCIの一定マーク長の記録マークよりなる。以上のようにして、テストエリアAxにおけるレーザパワーPxの条件での試験記録工程を実行する。
次に、ステップS4において、上述の試験記録工程を経たテストエリアAxのトラックT1ついて再生工程を実行する。具体的には、上述のようにして第1記録マーク群が形成されたテストエリアAxのトラックT1について、スライダ20の磁気ヘッド24により、第1記録マーク群に由来する磁気信号を測定する。そして、本ステップでは、測定された磁気信号と、記録時(第1記録マーク群の形成時)の磁気信号とを比較することにより、記録時の磁気信号に対する再生時の磁気信号の誤り率をビットエラーレート(bER)として求める。第1記録マーク群に由来する磁気信号を測定した後、トラックT1〜T3の第1〜第3記録マーク群を消去する。
テストエリアA1〜A10から選択した一のテストエリアAxについて、以上のステップS3,S4を、当該テストエリアAxに対して設定された複数のレーザパワー条件の全てにおいて実行するまで、ステップS5ではステップS2に戻り、ステップS3,S4を繰り返す。このようにして、テストエリアAxについて、設定された全てのレーザパワー条件でのbERを求める。そして、一のテストエリアAxについてレーザパワー条件ごとに求めた複数のbERのうち最も値の小さいbERが得られたレーザパワー条件を、当該テストエリアAxでの最適レーザパワー条件として決定する。bERが最小であることは、当該最小bERが得られたレーザパワー条件が、当該テストエリアAxについて設定されている複数のレーザパワー条件のなかで、記録減磁現象および/またはクロスライト現象を抑制するうえで最適であることを意味する。この後、ステップS5からステップS6に進む。
一のテストエリアAxについてのステップS2〜S5を通しての最適レーザパワー条件の決定を、複数のテストエリアA1〜A10の全てにおいて実行するまで、ステップS6ではステップS1に戻り、ステップS2〜S5を繰り返す。このようにして、全てのテストエリアA1〜A10について、最適レーザパワー条件を決定することができる。
決定された一組の最適レーザパワー条件は、上述の熱アシスト磁気記録方法においてゾーンZ1〜Z10に対して設定されるレーザパワー条件(レーザパワーP1〜P10)として採用することができる。また、以上の試験記録再生方法においては、テストエリアA1〜A10のトラックT1ごとに線速度が異なるところ、テストエリアA1〜A10ごとの最適レーザパワー条件は、当該線速度ごとの最適レーザパワー条件に相当する。
図7は、上述の熱アシスト磁気記録方法で採用するレーザパワー条件(レーザパワーP1〜P10)を決定するための第2の試験記録再生方法のフローチャートである。本試験記録再生方法では、磁気ディスク10の記録面(記録磁性膜12)におけるゾーンZ10の最外周に、図8に示すようにテストエリアAを設定し、このテストエリアAにおいて後述の試験記録工程や再生工程を実行する。テストエリアAには、図6に示すように3本のトラックT1〜T3が含まれる。本方法では、トラックT1について10種の異なる線速度R1〜R10が実現されるように、磁気ディスク10について10種の回転速度を設定しておく。トラックT1についての当該10種の線速度R1〜R10は、磁気ディスク10の回転速度を上述の熱アシスト磁気記録方法における回転速度と同一に設定した場合の、ゾーンZ1〜Z10の各々の平均ディスク半径位置における10種の線速度R1〜R10(ゾーンZ1〜Z10の平均線速度)である。また、トラックT1の線速度R1〜R10には、各々、複数のレーザパワー条件を対応させて予め設定しておく。線速度ごと複数のレーザパワー条件は、例えば1〜10mWの範囲で設定され、全ての線速度R1〜R10に対して同じ一組のレーザパワー条件を設定してもよいし、異なる線速度に対しては異なる一組のレーザパワー条件を設定してもよい。
本試験記録再生方法では、まず、ステップS1において、後述の試験記録工程におけるトラックT1の線速度Rxを、線速度R1〜R10から選択する。
次に、ステップS2において、次の試験記録工程における照射レーザLのパワーを選択する。具体的には、線速度Rxに対して予め設定されている複数のレーザパワーから一のレーザパワーPxを選択する。
次に、ステップS3において、テストエリアAにて線速度RxおよびレーザパワーPxの条件で試験記録工程を実行する。具体的には、まず、トラックT1の線速度が線速度Rxとなるように磁気ディスク10を一定速度で回転させて磁気ディスク10上にスライダ20を浮上配置させた状態で、レーザパワーPxのレーザLをトラックT1に照射して当該トラックT1を局所的に順次昇温させつつ、当該昇温領域に対して所定強度および所定周波数の記録磁界Hrを印加することにより、トラックT1の一周にわたって第1記録マーク群を形成する。第1記録マーク群は、線記録密度が例えば800kFCIの一定マーク長の記録マークよりなる。このようにして第1記録マーク群をトラックT1に形成した後、磁気ディスク10を同一速度で回転させたまま磁気ディスク10上にスライダ20を浮上配置させた状態で、トラックT1の隣りのトラックT2に対してレーザパワーPxのレーザLを照射して当該トラックT2を局所的に順次昇温させつつ、当該昇温領域に対して所定強度および所定周波数の記録磁界Hrを印加することにより、トラックT2の一周にわたって第2記録マーク群を形成する。これに続いて、第2記録マーク群を形成したのと同様に、トラックT3の一周にわたって第3記録マーク群を形成する。第2および第3記録マーク群は、線記録密度が例えば100kFCIの一定マーク長の記録マークよりなる。以上のようにして、線速度RxおよびレーザパワーPxの条件での試験記録工程を実行する。
次に、ステップS4において、上述の試験記録工程を経たテストエリアAのトラックT1ついて再生工程を実行する。具体的には、上述のようにして第1記録マーク群が形成されたテストエリアAのトラックT1について、スライダ20の磁気ヘッド24により、第1記録マーク群に由来する磁気信号を測定する。そして、本ステップでは、測定された磁気信号と、記録時(第1記録マーク群の形成時)の磁気信号とを比較することにより、記録時の磁気信号に対する再生時の磁気信号の誤り率をビットエラーレート(bER)として求める。第1記録マーク群に由来する磁気信号を測定した後、トラックT1〜T3の第1〜第3記録マーク群を消去する。
線速度R1〜R10から選択した一の線速度Rxについて、以上のステップS3,S4を、当該線速度Rxに対して設定された複数のレーザパワー条件の全てにおいて実行するまで、ステップS5ではステップS2に戻り、ステップS3,S4を繰り返す。このようにして、線速度Rxについて、設定された全てのレーザパワー条件でのbERを求める。そして、一の線速度Rxについてレーザパワー条件ごとに求めた複数のbERのうち最も値の小さいbERが得られたレーザパワー条件を、当該線速度Rxでの最適レーザパワー条件として決定する。bERが最小であることは、当該最小bERが得られたレーザパワー条件が、当該線速度Rxについて設定されている複数のレーザパワー条件のなかで、記録減磁現象および/またはクロスライト現象を抑制するうえで最適であることを意味する。この後、ステップS5からステップS6に進む。
一の線速度RxについてのステップS2〜S5を通しての最適レーザパワー条件の決定を、複数の線速度R1〜R10の全てにおいて実行するまで、ステップS6ではステップS1に戻り、ステップS2〜S5を繰り返す。このようにして、全ての線速度R1〜R10について、最適レーザパワー条件を決定することができる。
決定された一組の最適レーザパワー条件は、上述の熱アシスト磁気記録方法においてゾーンZ1〜Z10に対して設定されたレーザパワー条件(レーザパワーP1〜P10)として採用することができる。本方法によると、一つのテストエリアAのみを利用して複数の最適レーザパワー条件を決定することができるので、本方法は、磁気ディスク10の高容量化の観点からは好ましい。
上述の第1および第2の試験記録再生方法のステップS3(試験記録工程)では、第1〜第3記録マーク群はいずれもトラック一周にわたって形成されているが、トラック一周を複数に区分して、その区分ごとに試験記録条件(レーザーパワーや線速度)を変化させることにより、トラック一周内にて複数の試験記録工程を同時的に実行してもよい。このような手法を採用する場合、当該複数の試験記録工程に対応する複数の再生工程は当該複数の試験記録工程の後に同時的に実行する。このような手法は、試験記録再生方法の効率化を図るうえで好ましい。
また、上述の第1および第2試験記録再生方法のステップS4では、最適レーザパワーの決定に際してbERを利用しているが、bERに代えて再生信号振幅を利用してもよい。再生信号振幅を利用した手法では、具体的には、テストエリアAxまたは線速度Rxについて、設定された全てのレーザパワー条件での再生信号振幅を測定し、一のテストエリアAxまたは線速度Rxについてレーザパワー条件ごとに測定した複数の再生信号振幅のうち最大のものが得られたレーザパワー条件を、当該テストエリアAxまたは線速度Rxでの最適レーザパワー条件として決定する。再生信号振幅が最大であることは、当該最大再生信号振幅が得られたレーザパワー条件が、当該テストエリアAxまたは線速度Rxについて設定されている複数のレーザパワー条件のなかで、記録減磁現象および/またはクロスライト現象を抑制するうえで最適であることを意味する。
本発明に係る熱アシスト磁気記録方法および試験記録再生方法を実施するための磁気ディスクおよびスライダを表す。 磁気ディスクの記録面におけるゾーン区分を表す。 本発明の熱アシスト磁気記録方法において設定される、ゾーン(円環領域)の種類、ゾーンの範囲、およびレーザパワーの関係をまとめた表である。 本発明の第1の試験記録再生方法のフローチャートである。 第1の試験記録再生方法におけるテストエリアを表す。 一のテストエリアの部分拡大図である。 本発明の第2の試験記録再生方法のフローチャートである。 第2の試験記録再生方法におけるテストエリアを表す。
符号の説明
10 磁気ディスク
12 記録磁性膜
20 スライダ
23,24 磁気ヘッド
L レーザ
Hr 記録磁界
1〜Z10,Zx ゾーン
1〜A10,Ax,A テストエリア
T1,T2,T3 トラック
1〜R10,Rx 線速度

Claims (1)

  1. 記録磁性膜を有する磁気記録媒体を回転軸心まわりに回転させ、前記記録磁性膜にレーザを照射して当該記録磁性膜を局所的に順次昇温させつつ当該昇温領域に記録磁界を印加することにより、前記記録磁性膜における第1トラックに沿って第1記録マーク群を形成し、前記第1トラックと隣り合う第2トラックに沿って第2記録マーク群を形成し、且つ、前記第2トラックとは反対の側で前記第1トラックと隣り合う第3トラックに沿って第3記録マーク群を形成するための、試験記録工程と、
    前記第1トラックに形成された第1記録マーク群に由来する磁気信号を測定するための再生工程と、を含み、
    前記試験記録工程における前記第1トラックについて複数の線速度を設定し、前記試験記録工程において前記記録磁性膜に照射する前記レーザについて前記線速度ごとに複数のレーザパワーを設定し、前記試験記録工程および前記再生工程を、当該複数の線速度と当該複数のレーザパワーとの全ての組合せで実行する、試験記録再生方法。
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