JP4316781B2 - 重合官能基含有アルキレンアミド誘導体、ゲル化剤およびコーティング体 - Google Patents

重合官能基含有アルキレンアミド誘導体、ゲル化剤およびコーティング体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、広範囲の液状有機媒体を増粘化またはゲル化するのに有用なアミノ酸誘導体セグメントと重合官能基とを有するゲル化剤と、これを用いたコーティング体に関し、さらには、ゲル化剤としての使用が有望なアミノ酸誘導体セグメントと分子末端の重合官能基とを有する新規化合物の重合官能基含有アルキレンアミド誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、有機媒体に添加するか、あるいは加熱、放冷という単純な操作でゲルを形成する低分子化合物の開発が進んでいる。ゲルは、常温で液状を呈する化粧品、医薬品、接着剤、樹脂、塗料等の流動性の制御、加工等の技術への応用が期待される。例えば、流出事故による廃油や家庭内廃油のゲル化もしくは固化が可能となれば、それらの容易かつ効率の良い回収処理と廃棄、また廃溶剤の燃料としての再利用に有効となる。また、色素増感型太陽電池の電解液においても、液の蒸発を防止するために、ゲル化剤の使用が検討されている。さらに、磁気記録媒体等においても、ゲル化剤を、各種塗料の粘度調整剤としたり、コーティング材料とすることが検討されている。
【0003】
このような液状有機媒体をゲル化させる機能を有する物質(ゲル化剤)としては、長鎖脂肪酸のアルカリ金属塩(特開昭55−75493号公報)、12−ヒドロキシステアリン酸(特公昭60−44968号公報)、N−アシルアミノ酸アミド(特公昭54−33798号公報)等が知られていた。しかしながら、これらには、液状有機媒体をゲル化または固化させるのに多量の添加を必要とすること、pH等の使用条件に制約があること、ゲル化できる液状有機媒体の種類が少ないこと、等の欠点があった。
【0004】
上記のような欠点を解決するために、近年、液状有機媒体をゲル化または固化させる低分子化合物の開発が盛んに行われている。その一例として、シクロヘキサントリカルボキサミド(特開平10−273477号公報)、ジアミノシクロヘキサンとアルキルイソシアネートを反応させて得られるジアルキルウレア誘導体(特開平8−231942号公報)、環状ジペプチド(特開平7−247474号、特開平7−247473号の各公報)等が挙げられる。これらの低分子化合物は、ゲル化剤として、広範囲の有機媒体への適用が可能であり、また、形成されるゲルは熱可逆性であり、このため有機媒体にゲル化剤としてこれらの化合物を少量添加して加熱溶解するだけでゲルを形成させることができる、等の優れた特徴を有している。しかしながら、低分子化合物が形成するゲルのゲル状態は結晶状態と溶液状態との間の準安定状態であるため、長期間放置すると結晶転移してしまう場合があり不安定であること、等の欠点を持ち、低分子化合物が形成したゲルの安定性を長期間にわたって保つことに限界があった。
【0005】
そして、このようなゲルの安定性は、上記した用途においても重要な場合がある。
【0006】
なお、本発明者等は、先に、ゲル化剤としてスチレンセグメントを有するアルキレンアミド誘導体を提案しているが(日本化学会第78回春季年会 講演番号3B6 16、第49回高分子学会年次大会 講演番号 II Pd112)、ゲル化できる液状有機媒体の種類が少ないことがわかった。
【0007】
さらに、ゲル化剤に関し、主な用途別に述べると、色素増感型太陽電池では、電解液を構成する液状有機媒体(有機溶媒)のゲル化が可能であるとともに、電池の性能上、安定したゲルを得ることが必要である。
【0008】
一方、磁気記録媒体では、近年、高密度記録を達成するために、磁性層の自己減磁損失等の改善を目的として、磁性層を薄層化したものが種々提案されている(特開平9−35264号公報等)。このような磁性層を塗設する場合、塗布液として、大量の溶剤を含む希薄液を使用するため、塗布(コーティング)適性向上に有効な塗布液のレオロジー的擬塑性流動特性、特に「降伏値」、「塑性粘性」等が極端に低下し、塗布しにくく、粘度を適度に調整する必要があり、粘度調整剤の添加が必須である。従って、ゲル化剤を粘度調整剤として使用する場合、磁性粉が高充填された均一で平坦な磁性層を得るために、それに適した特性が要求される。また、このような薄い磁性層は、支持体と薄膜磁性層との間に極めて平滑な非磁性層を介在させた構造とすることが不可欠であり、極めて平坦な磁性層を得るために、非磁性層に対しても平滑で均一な塗布を行うことが必要とされる。したがって、このような塗布液においても、ゲル化剤を粘度調整剤として使用する場合、大量の溶剤希釈により低粘性でニュートンアンフロー特性に近づいてしまった塗布液に擬塑性流動特性を付与することが有効となる。
【0009】
ところで、近年、再生専用光ディスクや光記録ディスク等の光情報媒体では、動画情報等の膨大な情報を記録ないし保存するため、記録密度向上による媒体の高容量化が求められ、これに応えるために、高記録密度化のための研究開発が盛んに行われてきた。
【0010】
その中のひとつとして、例えばDVD(Digital Versatile Disk)にみられるように、記録・再生波長を短くし、かつ、記録・再生光学系の対物レンズの開口数(NA)を大きくして、記録・再生時のレーザービームスポット径を小さくすることが提案されている。DVDをCDと比較すると、記録・再生波長を780nmから650nmに変更し、NAを0.45から0.6に変更することにより、6〜8倍の記録容量(4.7GB/面)を達成している。
【0011】
さらに、最近、高品位の動画像を長時間記録するために、記録・再生波長を400nm程度まで短くし、かつ、対物レンズの開口数を0.85程度まで大きくすることにより、DVDの4倍以上、すなわち20GB/面以上の記録容量を達成しようとする試みが行われている。
【0012】
しかし、このように高NA化すると、チルトマージンが小さくなってしまう。チルトマージンは、光学系に対する光情報媒体の傾きの許容度であり、NAによって決定される。記録・再生波長をλ、記録・再生光が入射する透明基体の厚さをtとすると、チルトマージンは
λ/(t・NA3
に比例する。また、光情報媒体がレーザービームに対して傾くと、すなわちチルトが発生すると、波面収差(コマ収差)が発生する。基体の屈折率をn、傾き角をθとすると、波面収差係数は
(1/2)・t・{n2・sinθ・cosθ}・NA3/(n2−sin2θ)-5/2
で表される。これら各式から、チルトマージンを大きくし、かつコマ収差の発生を抑えるためには、基体の厚さtを小さくすればよいことがわかる。実際、DVDでは、基体の厚さをCD基体の厚さ(1.2mm程度)の約半分(0.6mm程度)とすることにより、チルトマージンを確保している。
【0013】
ところで、より高品位の動画像を長時間記録するために、基体をさらに薄くできる構造が提案されている。この構造は、通常の厚さの基体を剛性維持のための支持基体として用い、その表面にピットや記録層からなる情報記録面を形成し、その上に薄型の基体として厚さ100μm前後の光透過層を設け、この光透過層を通して記録・再生光を入射させるものである。この構造では、従来に比べ基体を著しく薄くできるため、高NA化による高記録密度達成が可能である。このような構造をもつ媒体は、例えば特開平10−289489号公報に記載されている。同公報に記載された媒体は、光硬化性樹脂からなる光透過層を有する。
【0014】
厚さ100μm前後の光透過層を形成するに際しては、光硬化性樹脂を塗布して硬化する方法が利用できる。一般に、樹脂の塗布には様々な方法が利用できるが、光透過層の形成には利用しにくい方法もある。例えばスクリーン印刷法は、従来の光ディスクにおいてレーベル面の印刷に利用されており、生産性に優れる方法である。しかし、光透過層の形成にスクリーン印刷は使用しにくい。その理由は以下のとおりである。
【0015】
レーベル面の印刷に用いる塗布液は、顔料やフィラー(シリカゲルやアルミナ等)を含有するのでチキソトロピーを示す。そのため、スクリーン印刷による塗布が容易で、かなり厚い樹脂層も比較的均一な厚さに形成できる。これに対し、光透過層は光透過性に優れ、かつ、均質である必要があるため、顔料やフィラーを含有させることはできない。そのため、厚さ100μm前後の光透過層を形成する場合に不都合が生じる。具体的には、光透過層を1回の塗布で形成しようとすると、樹脂がチキソトロピーを示さないため、かなり高粘度の樹脂とメッシュの粗い版とが必要となる。しかし、樹脂が高粘度であると、版離れ時に糸引きや泡のかみ込み等の不具合が発生し、印刷適正が悪くなってしまう。また、これを回避するために低粘度の樹脂を用いると、メッシュが粗いために液ダレが発生してしまうほか、光透過層の塗布境界(ディスクの外周縁付近および内周縁付近)において表面張力の影響を受け、盛り上がりが生じてしまう。盛り上がりが生じた領域は、データ記録領域として使用できなくなる。
【0016】
したがって、生産性に優れるスクリーン印刷法で光透過層を形成するためには、顔料やフィラーを含有せず、かつ、チキソトロピーを示す樹脂が必要である。チキソトロピーを示す樹脂であれば、版上ではゲル状態であり、印刷時にスキージによって剪断力が加わるとゾル状態となって流動して転写され、塗膜となった後に再度ゲル状態に戻る。次いで、紫外線照射等により硬化させることで、塗膜全域において均一な厚さで、透明性が良好で、均質な光透過層が得られる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、幅広い範囲の有機媒体をゲル化させることが可能であり、さらには、形成されたゲル(ないし粘性流体)を、ゲル状態(ないし粘性状態)を保持したままで高分子化し、ゲルの安定化を図ることが可能なゲル化剤を提供することであり、このようなゲル化剤への適用が特に有効であり、簡便な方法で合成可能な新規化合物の重合官能基含有アルキレンアミド誘導体を提供することである。また、このゲル化剤を用いて適正な粘性を有する塗布組成物を得、均一で平坦であるなど、特性に優れた機能性塗膜を有するコーティング体を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、下記事項によって特定されるものである。すなわち、本発明は、ゲルの安定性向上に関し、ゲル化剤を鋭意検討した結果、ゲルの結合を強固にする手段として光重合に着目し、低分子化合物が形成したゲルを重合して弱い結合を補強する、という考えに到達しなされたものである。
【0019】
(1) アミノ酸誘導体セグメントと重合官能基とを有する、下記式(1)で示される重合官能基含有アルキレンアミド誘導体。
【0020】
【化3】
【0021】
[式(1)中、nは2〜30の整数であり、AおよびAは、それぞれ、−(CHCOOR(ここで、Rは水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を表す。)、−CH(CH、−CHCH(CH または−CH(CH)C 表し、BおよびBは、それぞれ、−CONH(CHOCOC(CH)=CH、−COC(CH)=CHおよび−COCH=CHから選ばれるビニル含有基、またはアルキル基を表し、少なくとも一方はビニル含有基である。AとAとは同一でも異なるものであってもよく、両方がビニル含有基であるときのBとBとは同一でも異なるものであってもよい。m1およびm2は、それぞれ、1または2である。]
(2) アミノ酸誘導体セグメントと重合官能基とを有するゲル化剤であって、下記式(1)で示される重合官能基含有アルキレンアミド誘導体であるゲル化剤。
【0022】
【化4】
【0023】
[式(1)中、nは2〜30の整数であり、AおよびAは、それぞれ、−(CHCOOR(ここで、Rは水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を表す。)、−CH(CH、−CHCH(CH または−CH(CH)C 表し、BおよびBは、それぞれ、−CONH(CHOCOC(CH)=CH、−COC(CH)=CHおよび−COCH=CHから選ばれるビニル含有基、またはアルキル基を表し、少なくとも一方はビニル含有基である。AとAとは同一でも異なるものであってもよく、両方がビニル含有基であるときのBとBとは同一でも異なるものであってもよい。m1およびm2は、それぞれ、1または2である。]
) 上記(2)のゲル化剤および有機媒体を含有する塗膜形成用ゲル化剤組成物を、被着体に塗布後、活性エネルギー線による硬化を行って機能性塗膜を形成したコーティング体。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のゲル化剤は、アミノ酸誘導体セグメントと重合官能基とを有する化合物である。アミノ酸誘導体セグメントはアミノ酸とアルキレンジアミンとのアルキレンアミド誘導体が好ましく、アミノ酸としては、末端カルボキシル基を少なくとも1個有すれば誘導体であってもよく、グルタミン酸とそのエステル、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン等より選ばれるものが好ましく、バリン、ロイシン等の2量体も好ましく用いられる。一方、重合官能基としては、2−メタクリロイルオキシエチルセグメント、メタクリル酸セグメント、アクリル酸セグメント等より選ばれるものが好ましい。ただし、スチレンセグメントは、ゲル化剤として必要な親媒性・疎水性のバランスを崩してしまうので、重合官能基は、スチレンセグメントを有しないものを選択する。
【0025】
重合官能基は1分子中に少なくとも1個存在すればよいが、2〜4個が好ましく、特に、合成および機能上、2個存在することが好ましい。
【0026】
特に好ましいゲル化剤は、グルタミン酸とそのエステル、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン等より選ばれる1種のアミノ酸の末端カルボキシル基がアルキレンジアミンによりアミド化物に変換されたものを基本骨格とし、かつ両末端のアミノ基の少なくとも一方、好ましくは両方に2−メタクリロイルオキシエチルセグメント、メタクリル酸セグメント、アクリル酸セグメント等より選ばれる1種の重合官能基をアミド結合で導入したものである。
【0027】
本発明のゲル化剤は、種々の有機媒体をゲル化ないし増粘化させることが可能であるが、さらに分子末端、特に、分子両末端に重合官能基を導入しているため、有機媒体に加熱溶解して形成された低分子ゲルないし粘性流体に光を照射するとゲル状態ないし粘性状態を保持したまま高分子化することができるという特徴を有し、高分子化することにより極めて安定なゲルを得ることができる。また、モノマーの濃度上昇によってゲル強度は増加するが、高濃度のモノマーゲルから合成したポリマーゲルは、モノマーゲルに比べて強度が著しく増加する。
【0028】
そして、このような特性を利用して、ゲル化剤としての使用のほか、塗布組成物の粘度調整剤やコーティング材料として使用でき、形成した塗膜の液状有機媒体(有機溶媒、溶剤)を除去して活性エネルギー線によって硬化することにより、各種機能膜としての用途も期待できる。すなわち、均一で、平坦な機能性塗膜を有するコーティング体とできる。
【0029】
特に、本発明のゲル化剤としては、下記式(1)で示される重合官能基含有アルキレンアミド誘導体が好ましく、このものは新規化合物である。
【0030】
【化5】
【0031】
式(1)中、nは2〜30の整数であり、特に10〜14であることが好ましい。
【0032】
およびAは、それぞれ、−(CHCOOR(ここで、Rは水素原子、炭素数1〜22のアルキル基(例えば、メチル、エチル、ブチル、ペンチル、オクチル、ドデシル、オクタデシル、ドコシル等)、フェニル基またはベンジル基を表す。)、−CH(CH、−CHCH(CH または−CH(CH)C 表す。BおよびBは、それぞれ、−CONH(CHOCOC(CH)=CH、−COC(CH)=CHおよび−COCH=CHから選ばれるビニル含有基、またはアルキル基を表し、少なくとも一方はビニル含有基である。B、Bで表されるアルキル基は、炭素数1〜22の直鎖アルキル基(例えば、メチル、ブチル、オクチル、オクタデシル、ドコシル等)が好ましい。
【0033】
1とA2、および両方がビニル含有基であるときのB1とB2は、それぞれ、同一でも異なるものであってもよいが、合成上、それぞれ同一であることが好ましい。
【0034】
m1およびm2は、それぞれ、1または2である。
【0035】
本発明のゲル化剤の好適例(但し、化合物No.49〜54、108〜112、124、132〜136、146〜148、152〜153、163〜165、169〜170、174〜175、181、183、189、192、210、214〜215、221を除く)を以下に示すが、これに限定されるものではない。式(1)の表示に従って示す。
【0036】
【化6】
【0037】
【化7】
【0038】
【化8】
【0039】
【化9】
【0040】
【化10】
【0041】
【化11】
【0042】
【化12】
【0043】
【化13】
【0044】
【化14】
【0045】
【化15】
【0046】
【化16】
【0047】
本発明のゲル化剤は、単独で用いられるが、場合によっては2種以上用いてもよい。
【0048】
本発明のゲル化剤は、アミノ酸誘導体セグメントとなるアルキレンアミド誘導体と、重合官能基セグメントとなる重合官能基含有化合物とを反応させて合成することができる。
【0049】
本発明のアルキレンアミド誘導体の原料となるアミノ酸は、天然由来の蛋白質の酸、アルカリもしくは酵素による加水分解物を抽出して得られるもの、微生物の発酵や培養産生物から分離したもの、化学合成法によって得られるもののいずれでもよい。またアミノ酸は、光学活性体、ラセミ体のいずれであっても差し支えない。分岐アミノ酸や酸性アミノ酸、芳香族アミノ酸などが好ましい。
【0050】
本発明におけるアミノ酸およびその誘導体としては、L−グルタミン酸、L−グルタミン酸エステル、L−バリン、L−バリル−L−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシン、L−イソロイシル−L−イソロイシン、L−フェニルアラニン等が挙げられる。
【0051】
アルキレンアミド誘導体の原料となるアルキレンジアミンのアルキレン鎖としては、炭素数2〜30の直鎖状のアルキレン鎖が好ましく、場合によっては不飽和結合を含むものであってもよい。具体的なアルキレンジアミンの例としては、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、などが挙げられる。その中でも炭素数が10〜14のアルキレンジアミンが最も好ましい。
【0052】
本発明のアルキレンアミド誘導体は、前記アミノ酸およびアルキレンジアミンを適宜選択し、公知の方法により合成することができる。例えば、アミノ酸の一方の官能基を保護し、アルキレンジアミンの両末端アミノ基とペプチド結合を形成し、ついで保護基を脱離除去することで合成できる。
【0053】
もう一つの有効セグメントである重合官能基は、分子末端に二重結合を有するメタクリル酸、アクリル酸等を原料としてこれらの末端カルボキシル基をハロゲン化物に変換したもの、または2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等のようなイソシアネートなどの重合官能基含有化合物を使用して導入する。
【0054】
本発明の重合官能基含有アルキレンアミド誘導体は、前記アルキレンジアミンと重合官能基含有化合物を原料として公知の方法により合成することができる。例えば、テトラヒドロフラン等の有機媒体中でアルキレンジアミンと重合官能基含有化合物を10〜30°Cで一日程度反応させることにより、本発明の重合官能基含有アルキレンアミド誘導体を得ることができる。なお、一方の末端をアルキル基とする場合も常法に従えばよい。
【0055】
このようにして得られた反応生成物には、目的とする化合物の他に未反応の原料が残存している場合もあるが、抽出、再結晶等公知の方法により精製することができる。なお、ゲル化に影響がない場合は混合物のまま使用してもよい。
【0056】
本発明の重合官能基含有アルキレンアミド誘導体は、元素分析、赤外吸収スペクトル法(IR)などによって同定することができる。
【0057】
なお、式(1)に包含されない本発明のゲル化剤も、上記に準じて、合成することができ、同様に同定することができる。
【0058】
本発明の重合官能基を有するアルキレンアミド誘導体は液状有機媒体を少量の添加量でゲル化させることが可能である。ここでいう液状有機媒体としては、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール類、ニトロベンゼン、クロロベンゼン等の芳香族類、シクロヘキサノン、炭酸プロピレン(プロピレンカーボネート;PC)等のケトン類、1,4−ジオキサン等の環状エーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等の窒素化合物類、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性媒体類、ピリジン等の塩基性媒体類、コーティング用モノマー、等が挙げられる。なお、これらの有機媒体が混合されたものや、主成分である媒体に対しても有効である。この場合、ゲル化可能な有機媒体の使用量は、全体の30vol%以上が好ましい。
【0059】
例えば、炭酸エチレン(エチレンカーボネート:EC)は固体であるが、それが溶解可能な上記の液状有機媒体に溶解してゲル化に供することができる。また、コーティング用モノマーは、それ自体で、液状であるもののほか、それ自体は固体であっても、上記の液状有機媒体から溶解可能な媒体を選択し、溶解した後、ゲル化に供してもよい。さらには、モノマーのみならず、オリゴマー、ポリマー等を用いることもできる。
【0060】
本発明の化合物を前記液状有機媒体に添加し、均一状態になるように有機媒体の沸点程度まで加熱攪拌した後、常温で静置することにより、ゲル化物を調製することができる。ゲルを調製する際における本発明の化合物の添加量としては、ゲル化させる有機溶媒の種類にもよるが、液状有機媒体の1000質量部に対し5〜50質量部が好ましく、より好ましくは5〜30質量部程度である。本発明の化合物の添加量が少なすぎると、有機媒体に溶解後も液体のまま変化を示さない。多すぎてもゲル化剤が溶解しきれない場合がある。またゲルの硬さは、本発明の化合物の添加量によって調節することが可能である。
【0061】
本発明の化合物は、液状有機媒体に添加して調製したゲル化物(粘性流体)に、活性エネルギー線(例えば紫外線UV、電子線EB)を照射することにより、ゲル状態(粘性状態)を保持したままで、高分子化が可能になる。活性エネルギーとしては紫外線が好ましく用いられる。360nm以上の光を遮蔽した紫外線を数分から二晩程度照射することにより、ゲル状態を保持したまま高分子化させることができる。ゲルを高分子化させる際に使用する本発明の化合物の量は、各種有機媒体をゲル化させることのできる最少量以上であればいくらでも差し支えない。また、高分子化させる際に使用する有機媒体の種類は、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、シクロヘキサノン、炭酸プロピレン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、コーティング用モノマーが適当である。
【0062】
紫外線により、高分子化させるためのゲル化物を調製する際、重合開始剤を添加する必要がある。ここでいう重合開始剤としては、ベンゾインエチルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等が挙げられる。すなわち、液状有機媒体に本発明の化合物を加熱溶解する際に上記の重合開始剤を一種選択して添加し、ともに加熱溶解してゲルを調製する。
【0063】
前記方法によって得られた高分子ゲルは、高分子化前においては、熱可塑性ゲルであるのに対し、加熱しても融解することのない熱不可逆性ゲルである。また、得られた高分子ゲルはいかなる有機媒体に対しても溶解性を示さない。
【0064】
したがって、本発明における重合官能基含有アルキレンアミド誘導体は工業的に製造されている入手可能な原料から簡便な方法で合成でき、前述のような有機媒体を含有する接着剤、樹脂、塗料等に添加することで流動性を制御すること、また流動性を制御した状態で重合し、ゲルの結合を補強することが可能である。
【0065】
本発明のゲル化剤を用いて、ゲル化剤と有機媒体とを含有するゲル化剤組成物を構成することができ、この適度な粘性をもつ組成物を用いることによって各種被着体への塗膜の形成が可能になり、各種機能性塗膜を形成したコーティング体を得ることができる。
【0066】
本発明のゲル化剤組成物に用いる液状有機媒体は、前記の液状有機媒体も含めて、一般に用いられる塗布溶媒のほか、特に、活性エネルギー線反応性モノマー、オリゴマー、ポリマーの液状物、あるいは活性エネルギー線反応性モノマー、オリゴマー、ポリマーが固体である場合も含めて、これらを液状有機媒体(溶剤)に溶解した溶解物を、コーティング用組成物(クリヤーコート用ないしスクリーン印刷用各種機能性インキや、高機能性フィラー高含率コーティング・印刷用塗料、等)とし、コーティング(印刷も含む)しやすい擬塑性流動特性(粘性率、弾性率、チクソ性、等の特性)に調整し、コーティング(印刷も含む)を行い、その後乾燥して、溶剤を含む場合はこれを除去し、固形の各種機能性塗膜を形成することができる。そして、さらに、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより、ゲル化剤を反応性モノマーや活性エネルギー線反応性ポリマー等と反応固着して硬化することができる。重合条件等は、適宜選択できる。
【0067】
これにより、それ自体では透明性が良く、高強度の塗膜が得られ、添加したゲル化剤が塗膜(コーティング膜)表面や界面に吐出し、塗膜本来の性能を損なうことがない。
【0068】
なお、磁性粉のような活性エネルギー線遮蔽性の大きいフィラーを含む塗膜では、電子線照射による硬化が好ましい。
【0069】
本発明のゲル化剤は、電解液等の蒸散等が問題になる電池、例えば、色素増感型太陽電池やリチウム電池などの電解液、磁気記録媒体や光情報媒体などの塗膜の作製に用いられる。
【0070】
これらの応用例について以下に示す。
【0071】
本発明のゲル化剤は、色素増感型太陽電池の電解液に用いることができる。色素増感型太陽電池は、導電性支持体と、この導電性支持体上に設けられた増感色素を吸着した半導体微粒子膜と、対極とを有し、半導体微粒子膜と対極との間に電解液を介在させたものである。その一般的な構造としては、透明電極等の導電性支持体上に増感色素を吸着した酸化チタン等の半導体微粒子膜を設けた陰極と、透明電極等の導電性支持体であるか、あるいは導電性支持体上にPt等の金属膜などを被覆した陽極との間に酸化還元対を含む電解液を封入したサンドイッチ型セルが挙げられる。作動原理は、▲1▼酸化チタン等の半導体表面に吸着した増感色素が光を吸収、励起、▲2▼励起電子が速やかに半導体の伝導帯に注入される、▲3▼陰極の透明電極から電子が取り出され、陽極へ移動、▲4▼陽極から電解液中の酸化還元対が電子を受け取る、▲5▼電子を失った色素は酸化還元対から電子を受け取り元の状態に戻る、というサイクルで説明される。
【0072】
本発明のゲル化剤を電解液に添加し、電解液をゲル化することにより、溶媒の揮発をほとんど完全に抑えることが可能であり、電解液は極めて安定性に優れたものとなり、長期に亘り、劣化のない、安定した電池特性が得られる。特に、高分子化したゲルは有効である。
【0073】
従来、このような太陽電池の最大の問題点として、電解液の安定性が挙げられ、有機溶媒を用いているため、使用しているうちに封止剤の劣化、溶媒の揮発が起こり、電池特性が極端に低下するという問題があったが、本発明のゲル化剤を用いることによって、これが解決される。
【0074】
陰極に用いられる半導体微粒子は、金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物等)やペロブスカイトの微粒子であり、特に酸化物である酸化チタンの使用が一般的であるので、以下、酸化チタンを代表例として説明する。
【0075】
陰極の酸化チタン電極を製造するには、まず、酸化チタン微粒子を含む塗布液を作る。この酸化チタン微粒子は、その1次粒子径が微細なほど好ましく、その1次粒子径は、その平均値が、通常、1〜5000nm、好ましくは5〜50nmである。
【0076】
酸化チタン微粒子を含む分散液は、ゾルゲル法により酸化チタン微粒子を生成、分散する方法、または粉体の酸化チタン微粒子を溶媒に分散させることで得ることができる。
【0077】
溶媒中に分散した酸化チタン微粒子は、その1次粒子状で分散する。溶媒としては水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が挙げられる。有機溶媒としては、メタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、テルピネオ−ル等のアルコ−ル、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等が挙げられる。
【0078】
溶媒への酸化チタン微粒子の分散性を高めるため、あらかじめ酸化チタン微粒子表面を分散剤で処理したり、または塗布液中に分散剤を添加するのが好ましい。また、塗布液中には必要に応じ、界面活性剤(triton X−100等)や粘度調整剤を加えることができる。分散液中の酸化チタン微粒子濃度は、0.1〜70質量%、好ましくは5〜40質量%である。
【0079】
次に、前記塗布液を基板上に塗布、乾燥し、次いで空気中または不活性ガス中で焼成して、基板上に酸化チタン膜を形成する。基板としては、少なくともその表面が導電性表面に形成された基板が用いられる。このような基板としては、ガラスなどの耐熱性基板上に酸化インジウム、酸化錫の導電性金属酸化物薄膜を形成したものや金属等の導電性材料からなる基板が用いられる。このような導電性基板は従来よく知られたものであり、表面抵抗は低い程よく、シート抵抗は40Ω/□以下(通常0.1Ω/□以上)であることが好ましい。基板の厚さは特に制限されないが、通常、0.3〜5mmである。この導電性基板は、透明または不透明であってよいが、この基板と対極のいずれかは透明であり、通常は基板が透明である。基板上に塗布、乾燥して得られる被膜は、基板との結合力およびその微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度の弱いものであることから、これを焼成して酸化チタン微粒子間を酸化チタン前駆体が架橋することで機械的強度が高められ、かつ基板に強く固着した焼成物膜とすることができる。
【0080】
この焼成物膜は多孔質膜とし、その厚さは少なくとも10nm、好ましくは500〜30000nmとし、かつその見かけ表面積に対する実表面積の比を10以上、好ましくは100以上とする。この比の上限は特に規制されないが、通常、1000〜2000である。前記見かけの表面積とは、通常の表面積を意味し、例えば、その表面形状が長方形の場合には、縦の長さ×横の長さで表される。前記実表面積とは、クリプトンガスの吸着量により求めたBET表面積を意味する。その具体的測定方法には、見かけ表面積1cm2の基板付酸化チタン膜をBET表面積測定装置(マイクロメリティクス社製、ASAP2000)を用い、液体窒素温度でクリプトンガスを吸着させる方法である。この測定方法により得られたクリプトンガス吸着量に基づいてBET表面積が算出される。このような多孔質構造膜は、その内部に微細な細孔とその表面に微細凹凸を有するものである。焼成物膜の厚さおよび見かけ表面積に対する実表面積の比が前記範囲より小さくなると、その表面に有機色素を単分子膜として吸着させたときに、その有機色素単分子膜の表面積が小さくなり、光吸収効率の良い電極を得ることができなくなる。前記のような多孔質構造の焼成物膜は、酸化チタン微粒子を含有する分散液を基板上に塗布、乾燥して形成された微粒子集合体膜の焼成に際し、その焼成温度を低くし、微粒子集合体膜を軽く焼成させることによって得ることができる。この場合、焼成温度は1000℃より低く、通常、300〜800℃、好ましくは400〜700℃である。焼成温度が1000℃より高くなると、焼成物膜の焼結が進みすぎ、その実表面積が小さくなり、所望する焼成物膜を得ることができない。前記見かけ表面積に対する実表面積の比は、酸化チタン微粒子の粒径および比表面積や、酸化チタン前駆体濃度、焼成温度等によりコントロ−ルすることができる。
【0081】
次に、前記のようにして得られた基板上の酸化チタン膜表面に、有機色素を単分子として吸着させる。有機色素としては、酸化チタン膜と化学的に結合することができる色素が好ましく、分子内にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、もしくは水酸基を有するものが好ましい。具体的には、ビピリジルRu錯体、タ−ピリジルRu錯体、フェナントロリンRu錯体、ビシンコニン酸Ru錯体などのRu錯体、エオシンY、ジブロモフルオレセイン、フルオレセイン、ロ−ダミンB、ピロガロ−ル、ジクロロフルオレセイン、エリスロシンB、フルオレシン、マ−キュロクロム等の有機色素が挙げられる。
【0082】
酸化チタン膜表面に、有機色素を単分子として吸着させるには、有機色素を有機溶媒に溶解させて形成した有機色素溶液中に、酸化チタン膜を基板とともに浸漬すればよい。この場合、有機色素溶液が、多孔質構造膜である酸化チタン膜の内部深く進入するように、その膜を有機色素への浸漬に先立ち、減圧処理したり、加熱処理して、膜中に含まれる気泡をあらかじめ除去しておくのが好ましい。浸漬時間は30分〜24時間程度である。色素の吸着を効率よく行うため、還流処理を行っても良い。また、浸漬処理は、必要に応じ、複数回繰り返し行うこともできる。前記浸漬処理後、有機色素を吸着した酸化チタン膜は、常温〜80℃で乾燥する。
【0083】
本発明においては、酸化チタン膜に吸着される有機色素は、1種である必要はなく、必要によっては光吸収領域の異なる複数の有機色素を吸着させることができる。これによって、光を効率よく利用することができる。複数の有機色素を膜に吸着させるには、複数の有機色素を含む溶液中に膜を浸漬する方法や、有機色素溶液を複数用意し、これらの溶液に膜を順次浸漬する方法等が挙げられる。有機色素を有機溶媒に溶解させた溶液において、その有機溶媒としては、有機色素を溶解しうるものであれば任意のものが使用可能である。このようなものとしては、例えば、メタノ−ル、エタノ−ル、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、ジクロロメタン、トルエン等が挙げられる。溶液中の有機色素の濃度は、溶液100ml中、1〜200mg、好ましくは10〜100mg程度である。
【0084】
色素の使用量は、酸化チタンにおける増感効果を十分得るために、全体で、支持体1m2当たり0.01〜100mモルが好ましい。また、色素の半導体微粒子に対する吸着量は酸化チタン微粒子1gに対して0.01〜1モルが好ましい。
【0085】
ゲル化電解液(ゲル電解質)は、I-/I3 -系や、Br-/Br3 -系、キノン/ハイドロキノン系等の酸化還元対と有機溶媒とを含む電解液に、本発明のゲル化剤を添加してゲル化したものである。ゲル化剤の添加量は前述のとおりである。酸化還元対となる電解質は、I2とLiI、NaI、KI、CsI、CaI2などの金属ヨウ化物、4級イミダゾリウム化合物のヨウ素塩、4級ピリジニウム化合物のヨウ素塩、テトラアルキルアンモニウム化合物のヨウ素塩、Br2とLiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2などの金属臭化物、あるいはBr2とテトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイドなど4級アンモニウム化合物の臭素塩、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオンなどの金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィドなどのイオウ化合物、ビオロゲン色素、ハイドロキノン−キノンなどを用いることができる。この中でも、I2とLiI、NaI、KI、CsI、CaI2などの金属ヨウ化物、4級イミダゾリウム化合物のヨウ素塩、4級ピリジニウム化合物のヨウ素塩、テトラアルキルアンモニウム化合物のヨウ素塩が特に好ましい。電子のキャリアとしての十分な機能を確保する上で、好ましい電解質濃度は0.05モル/リットル以上1.5モル/リットル以下である。特に0.1モル/リットル以上0.8モル/リットル以下が好ましい。電解質にヨウ素を添加して酸化還元対を予め生成させておく場合の好ましい添加濃度は0.01モル/リットル以上0.2モル/リットル以下である。
【0086】
使用する溶媒は、電気化学的に不活性であり、本発明のゲル化剤によりゲル化が可能なものであればよく、先の液状有機媒体のなかから選択することができる。また、これとの混合溶媒であってもよいが、混合溶媒としては先の液状有機媒体を30vol%以上含むものであることが好ましい。中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、アセトニトリル、などのニトリル化合物が特に好ましい。2種以上併用してもよい。
【0087】
ゲル化剤を高分子化するには、低分子ゲルによる電解質に紫外線照射などを行う。これにより、さらにゲル電解質の安定性が増す。
【0088】
対極としては、導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられるが、I3 -イオン等の酸化型レドックスイオンの還元反応を十分な速さで行わせる触媒能を持ったものの使用が好ましい。このようなものとしては、白金電極、導電材料表面に白金めっきや白金蒸着を施したもの、ロジウム金属、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、カ−ボン等が挙げられる。
【0089】
色素増感型太陽電池は、前記酸化チタン電極、電解質および対極をケ−ス内に収納して封止するかまたはそれら全体を樹脂封止する。この場合、その酸化チタン電極には光が当たる構造とする。このような構造の電池は、その酸化チタン電極に光を当てると、酸化チタン電極とその対極との間に電位差が生じ、両極間に電流が流れるようになる。
【0090】
このような色素増感型太陽電池の一般的記載については、特開平11−185836号公報等を参照することができる。
【0091】
本発明のゲル化剤は、磁気記録媒体の磁性層や、非磁性支持体と磁性層との間に設けられる非磁性下層の塗布に際して、粘度調整剤として用いられる。また、非磁性層や非磁性下層は塗布後乾燥し、溶媒を除去した後、電子線照射を行い、硬化した塗膜として得られるが、このときゲル化剤は、カレンダー工程では塗膜の可塑剤的役割を果たし、そのため塗膜表面性向上に寄与し、その後は、電子線照射により樹脂バインダーとともに高分子化し、これにより緻密で高強度で、かつ表面平滑な塗膜が得られる。
【0092】
磁気記録媒体の磁性層は、高密度記録のために、薄層化されているが、本発明のゲル化剤を粘度調整剤として用いることによって、磁性粉末、特に強磁性金属粉末を含み、かつ多量の有機溶剤を含む塗布液を塗布しやすい流動特性(擬塑性流動特性)に高めることができる。したがって、ダイコーターはもとより、ロールコーター(フレキソ、グラビア)によっても、0.5μm 以下の薄く、平滑で、しかも乾燥後の膜厚変動が抑制され、かつ磁性粉末が高充填された磁性層が得られる。
【0093】
一方、非磁性下層は、平均粒径0.02〜0.04μm 程度のTiO2粒状粒子や平均長軸長120〜200nm、軸比6〜9程度のα−Fe23針状粒子(Al、Si等を添加したものでもよい。)等の非磁性微粒子を含むが、このような微粒子を含む塗布液を塗布しやすい粘度挙動に近づけることができ、平滑で均一な塗布が実現できる。
【0094】
磁性層は、極めて薄いため、非磁性下層の表面性が反映されるが、本発明のゲル化剤により、平滑な非磁性下層が得られるため、磁性層は極めて平滑となる。
【0095】
各層の塗布液の塗布溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類:メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類:酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、エチレングリコールセノアセテート等のエステル類:グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類:ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素:メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等のものが使用できる。これらの各種の溶剤は使用するモノマー、オリゴマー、ポリマー等の溶解性、ウエットな塗膜の平滑性を保持しながら乾燥するための沸点や蒸発速度のバランス保持などを考慮に入れて、増粘のためにゲル化剤と水素結合等を生じやすい溶剤と、それほどゲル化能はないが、相溶性の良い、上記ゲル化能以外のコーティング用溶剤として特性の優れた溶剤等とを2種以上混合して使用する方が有効である。その混合比は適宜選択する。
【0096】
ゲル化剤を粘度調整の目的で用いる場合の添加量は、前述のゲル化剤のところと同様としてよいが、上述のようなバランスのとれた2種以上の混合溶媒100質量部に対し、0.1〜9質量部であることが好ましい。
【0097】
塗布方法は公知のいずれのものであってもよい。
【0098】
このような磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、本発明のゲル化剤を添加した非磁性下層用塗布液を塗布し、乾燥により溶剤を除去した後、必要に応じ、非磁性下層の表面を平滑にするためカレンダー処理をし、さらに電子線照射を行い、その後、本発明のゲル化剤を含む磁性層用塗布液を塗布し、乾燥により溶剤を除去した後、さらに、磁性層表面の平滑性を増すためにカレンダー処理を行い、その後、電子線照射を行うという工程に従って作製される。
【0099】
このような磁気記録媒体は、非磁性支持体上に、強磁性粉末、好ましくは強磁性金属粉末を含有する磁性層、および非磁性支持体と磁性層との間に、少なくとも1層の非磁性下層を設けたものであり、さらに、必要に応じてバックコート層を設ける。
【0100】
非磁性支持体を形成する材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル類、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート等のセルロース誘導体、ポリアミド、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアレート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、アクリル樹脂、ポリカーボネート等のプラスチックを挙げることができる。
【0101】
非磁性支持体の形態に制限はなく、主にテープ状、フィルム状、シート状、カード状、ディスク状、ドラム状等がある。非磁性支持体の厚みには特に制約はないが、例えば、フィルム状やシート状の場合は、通常2〜100μmであり、好ましくは3〜50μmであり、ディスクやカード状の場合は30μm〜10mm程度、ドラム状の場合はレコーダ等に応じて適宜に選択される。
【0102】
磁性層は、好ましくは強磁性金属粉末を含有する。強磁性金属粉末は、任意の強磁性金属粉末を用いることができるが、その構成元素としてFe、Al、Coおよび、SmとNdとYとPrとLaからなる群より選択される1種以上の希土類元素を含有するものであることが好ましい。
【0103】
この強磁性金属粉末の含有量としては、その層における固形分全体に対し、通常60〜95質量%であり、好ましくは70〜90質量%である。
【0104】
磁性層が含有するバインダーとしては、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体等が代表的なものであり、電子線等の活性エネルギー線により架橋するタイプのものである。これらの樹脂は−SO3M、−OSO3M、−COOM、PO(OM12およびスルホベタイン基から選ばれた少なくとも一種の極性基を有することが好ましい。ただし、上記極性基において、Mは水素原子またはNa、K、Li等のアルカリ金属を表わし、またMは水素原子、Na、K、Li等のアルカリ金属またはアルキル基を表わす。
【0105】
バインダーの含有量は、強磁性金属粉末100質量部に対して、通常8〜25質量部、好ましくは10〜20質量部である。バインダーは1種単独に限らず、2種以上を組合せて用いることができる。
【0106】
磁性層の品質の向上を図るため、研磨剤、潤滑剤(脂肪酸および/または脂肪酸エステル、等)、硬化剤、分散剤、帯電防止剤および導電性(微)粉末等の添加剤をその他の成分として含有させることができる。
磁性層の厚さは、前述のとおり、0.5μm 以下であり、通常0.05μm 以上であることが好ましい。
【0107】
非磁性下層は、磁性層と同様のバインダーを含有し、非磁性粉末を含有するものである。非磁性粉末としては、前述のとおり、平均粒径0.02〜0.04μm の酸化チタン(TiO2)粒子や平均長軸長120〜200nm、軸比6〜9程度のα−Fe23針状粒子(Al、Si等を添加したものでもよい。)等が好ましい。非磁性粉末の含有量は非磁性下層全構成成分の50〜99質量%が好ましく、非磁性下層の厚さは0.2〜2.5μm であることが好ましい。
【0108】
このような磁気記録媒体のその他の一般的な記載については、特開平9−35964号公報等を参照することができる。
【0109】
次に、本発明のゲル化剤を光情報媒体の製造に適用する場合について説明する。
【0110】
光情報媒体の構成例を、図1に示す。この光情報媒体は記録媒体であり、支持基体20上に、情報記録面として記録層4を有し、この記録層4上に光透過層2を有する。記録または再生のためのレーザー光は、光透過層2を通して入射する。
【0111】
本発明は、記録層の種類によらず適用できる。すなわち、例えば、相変化型記録媒体であっても、ピット形成タイプの記録媒体であっても、光磁気記録媒体であっても適用できる。なお、通常は、記録層の少なくとも一方の側に、記録層の保護や光学的効果を目的として誘電体層や反射層が設けられるが、図1では図示を省略してある。また、本発明は、図示するような記録可能タイプに限らず、再生専用タイプにも適用可能である。その場合、支持基体20と一体的に形成されるピット列が、情報記録面を構成することになる。次に、媒体各部の具体的構成を説明する。
【0112】
支持基体20は、媒体の剛性を維持するために設けられる。支持基体20の厚さは、通常、0.2〜1.2mm、好ましくは0.4〜1.2mmとすればよく、透明であっても不透明であってもよい。支持基体20は、通常の光記録媒体と同様に樹脂から構成すればよいが、ガラスから構成してもよい。光記録媒体において通常設けられるグルーブ(案内溝)21は、図示するように、支持基体20に設けた溝を、その上に形成される各層に転写することにより、形成できる。グルーブ21は、記録再生光入射側から見て手前側に存在する領域であり、隣り合うグルーブ間に存在する筋状の凸部はランドと呼ばれる。
【0113】
光透過層2は、レーザー光を透過するために透光性を有する。本発明における光透過層2の厚さは、好ましくは30〜200μm、より好ましくは50μm超200μm以下、さらに好ましくは70〜150μmである。光透過層が薄すぎると、光透過層表面に付着した塵埃による光学的な影響が大きくなる。また、高NA化すると光ピックアップと媒体との距離を小さくする必要が生じるため、光ピックアップが媒体表面と接触しやすくなるが、光透過層が薄いと光ピックアップの接触に対して十分な保護効果が得られなくなる。一方、光透過層が厚すぎると、高NA化による高記録密度達成が難しくなる。
【0114】
光透過層2は、前記ゲル化剤組成物をスクリーン印刷により塗布し、得られた塗膜に紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより形成する。このとき用いるゲル化剤組成物は、本発明のゲル化剤と、活性エネルギー線硬化性組成物とを含有する。用いる活性エネルギー線硬化性組成物は特に限定されず、例えば各種紫外線硬化性組成物(例えば、汎用のアクリル系樹脂など)を用いることができる。
【0115】
印刷に用いる版の粗さは、光透過層の厚さ等の各種条件に応じて適宜選択すればよい。
【0116】
前記ゲル化組成物は、比較的粘度の低い活性エネルギー線硬化性組成物ないしその溶液に前記ゲル化剤を添加することにより調製され、十分なチキソトロピー性を示すので、版上ではゲル状態であり、印刷時にスキージによって剪断力が加わるとゾル状態となって流動して転写され、塗膜となった後に再度ゲル状態に戻る。このように、版上ではゲル状態であるため、比較的厚い樹脂層を形成するために粗いメッシュをもつ版を用いた場合でも、液ダレが発生することがない。また、印刷時にはゾル状態となるので、版離れ時に糸引きや泡のかみ込み等の不具合が生じることはない。また、塗膜となった後に再度ゲル状態に戻るので、表面張力の影響を受けにくく、その結果、光透過層の塗布境界における盛り上がりが抑制される。
【0117】
なお、本発明では、光透過層を1回の塗布により形成できるが、塗布を複数回行ってもよい。また、光透過層の表面に、耐擦傷性向上のための保護コート(有機膜ないし無機膜)を設けてもよい。
【0118】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0119】
まず、本発明および比較の化合物の合成についての実施例および比較例を製造例として示す。
【0120】
製造例1
分子両末端にスチレンセグメントを有するドデカンジアミド誘導体(比較化合物)の合成
両末端にL−バリンを有するドデカメチレンジアミドの合成
保護基として、ベンジルオキシカルボニル基(Z)を有するL−バリン、すなわちZ−L−バリン6.00g(0.024mol)に酢酸エチル50mlを加え、氷冷下攪拌して完全に均一な溶液とした。ここにN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)5.36g(0.026mol)を加えて氷冷下1時間攪拌した。1時間攪拌した白濁液に1,12−ドデカンジアミン2.40g(0.012mol)を加えて氷冷下2時間攪拌した後、常温にもどして1時間、さらに45°Cに保ちながら1晩攪拌を行った。この白濁液を冷凍庫にて冷却し、沈殿物を吸引濾過して減圧乾燥した。得られた生成物8.02gに1−プロパノール540mlを加えて加熱溶解させ、熱濾過することでN,N’−ジシクロヘキシルウレアの除去を行った。濾液は冷凍庫で1晩冷却し、吸引濾過後減圧乾燥して、Z−L−バリンと1,12−ドデカンジアミンとのアルキレンジアミド誘導体(以下[Z−L−Val−NH(CH26]2と略す)6.15gを得た。
【0121】
[Z−L−Val−NH(CH26]26.15g(0.0092mol)を2−メトキシエタノール200mlに加熱溶解し、触媒としてパラジウム炭素大さじ1杯を加えて、水素ガスを注入しながら常温で6時間還元させてZ基を除去した。シリカゲル薄層クロマトグラフィーでZ基の除去を確認した後前記触媒を濾別した。濾液を減圧濃縮して乾燥テトラヒドロフラン60mlを加え、加熱溶解後不溶物を除去した。不溶物除去後の溶液を減圧濃縮し、ヘキサン100mlを加えて生成物をよく洗い、吸引濾過後減圧乾燥して、Z基を除去したL−バリンと1,12−ドデカンジアミンとのアルキレンジアミド誘導体(以下[L−Val−NH(CH26]2と略す)2.54gを得た。
【0122】
分子両末端にスチレンセグメントを有するドデカンジアミド誘導体の合成
[L−Val−NH(CH26]22.60g(0.0065mol)に乾燥テトラヒドロフラン60mlを加えて撹拌し、完全に均一な溶液とした。氷浴を用いて冷却しながらここにトリエチルアミン1.99ml(1.45g:0.0143mol)を加えて撹拌し、さらに氷冷下p−ビニルベンゾイルクロリド2.17g(0.013mol)を滴下して撹拌した。氷浴中で3時間、常温で1晩撹拌して反応させた。得られた白濁液は減圧濃縮して媒体を完全に除去し、そこにメタノール100mlを加えて反応生成物を砕くことでトリエチルアミン塩酸塩の除去を行った。よく砕いてメタノールで洗った後生成物を吸引濾過して1晩減圧乾燥した。得られた生成物3.35gに1−プロパノール400mlを加えて加熱溶解し、それを熱濾過して再結晶を行い、濾液は冷凍庫で冷却した後吸引濾過した。1晩減圧乾燥を行い、分子両末端にスチレンセグメントを有するドデカンジアミド誘導体2.92gを得た。
【0123】
この化合物の同定は、元素分析、IRによった。結果を以下に示す。
【0124】
IR
3293、2925、2852、1631、1503、1467、1154、987(cm-1)
【0125】
製造例2
分子両末端に2−メタクリロイルオキシエチルセグメントを有するドデカンジアミド誘導体(化合物No.1)の合成
製造例1と同じ[L−Val−NH(CH26]21.20g(0.0030mol)にトルエン100mlを加えて加熱溶解した。そこに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート0.85ml(0.93g:0.0060mol)を滴下し、80°Cに保ちながら撹拌還流して0.5時間反応させた。反応生成物は常温まで冷却し、そこにヘキサン100mlを加えて生成物をよく砕き、結晶を沈殿させた。沈殿物を吸引濾過して1晩減圧乾燥した。得られた生成物1.99gに1−プロパノール150mlを加えて加熱溶解し、熱濾過することで再結晶を行い、濾液は冷凍庫で1晩冷却した後吸引濾過した。1晩減圧乾燥を行い、分子両末端に2−メタクリロイルオキシエチルセグメントを有するドデカンジアミド誘導体1.22gを得た。
【0126】
この化合物の同定は、元素分析、IRによった。結果を以下に示す。
【0127】
IR
3290、3089、2926、2853、1649、1617、1469、1372、1156、1036(cm-1)
【0128】
前記製造例1(比較例)および2(本発明例)の反応工程の概要を反応式で示すと式(2)および式(3)で表される。
【0129】
【化17】
【0130】
【化18】
【0131】
製造例3
分子両末端にそれぞれメタクリル酸と2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを有するドデカンジアミド誘導体(化合物No.95)の合成
51.81g(0.116mol)のZ−L−ロイシン・DCHA(ジシクロヘキシルアミン)塩を分液漏斗に入れ、300mlのジエチルエーテルおよび150mlの1mol/l(2N)H2SO4を加えて振とう後、水層を捨てた。150mlのH2Oでエーテル層を4回洗浄し、エーテル層を分取した後、無水硫酸マグネシウムを加え自然濾過をした。その後エーテルを減圧蒸留により除去し、真空ポンプで完全に乾燥させてZ−L−ロイシン24.24gを得た。
【0132】
Z−L−ロイシン6.37g(0.024mol)に酢酸エチル50mlを加え、氷冷下撹拌して完全に均一な溶液とした。ここにN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド5.36g(0.026mol)を加えて氷冷下1時間撹拌した。1時間撹拌した白濁液に1,12−ドデカンジアミン2.40g(0.012mol)を加えて氷冷下で2時間撹拌した後常温にもどして1時間、さらに45°Cに保ちながら1晩撹拌を行った。この白濁液を冷凍庫にて冷却し、沈殿物を吸引濾過して減圧乾燥した。得られた生成物8.34gに1−プロパノール540mlを加えて加熱溶解させ、熱濾過することでN,N’−ジシクロヘキシルウレアの除去を行った。濾液は冷凍庫で1晩冷却し、吸引濾過後減圧乾燥して、Z−L−ロイシンと1,12−ドデカンジアミンとのアルキレンジアミド誘導体(以下[Z−L−Leu−NH(CH26]2と略す)5.84gを得た。
【0133】
[Z−L−Leu−NH(CH26]26.39g(0.0092mol)を2−メトキシエタノール200mlに加熱溶解し、触媒としてパラジウム炭素大さじ1杯を加えて、水素ガスを注入しながら常温で6時間還元させてZ基を除去した。シリカゲル薄層クロマトグラフィーでZ基の除去を確認した後前記触媒を濾別した。濾液を減圧濃縮して乾燥テトラヒドロフラン60mlを加え、加熱溶解後不溶物を除去した。不溶物除去後の溶液を減圧濃縮し、ヘキサン100mlを加えて生成物をよく洗い、吸引濾過後減圧乾燥して、Z基を除去したL−ロイシンと1,12−ドデカンジアミンとのアルキレンジアミド誘導体(以下[L−Leu−NH(CH26]2と略す)2.75gを得た。
【0134】
[L−Leu−NH(CH26]22.78g(0.0065mol)に乾燥テトラヒドロフラン60mlを加えて撹拌し、完全に均一な溶液とした。氷浴を用いて冷却しながらここにトリエチルアミン1ml(0.73g:0.0072mol)を加えて撹拌し、さらに氷冷下メタクリル酸クロリド0.63ml(0.68g:0.0065mol)を滴下して撹拌した。氷浴中で3時間、常温で1晩撹拌して反応させた。得られた白濁液は減圧濃縮して媒体を完全に除去し、そこにメタノール100mlを加えて反応生成物を砕くことでトリエチルアミン塩酸塩の除去を行った。よく砕いてメタノールで洗った後生成物を吸引濾過して1晩減圧乾燥した。得られた生成物1.51gに1−プロパノール200mlを加えて加熱溶解し、それを熱濾過して再結晶を行い、濾液は冷凍庫で冷却した後吸引濾過した。1晩減圧乾燥を行い、2−メタクリロイル−L−Leu−NH(CH212−L−Leu1.21gを得た。
【0135】
2−メタクリロイル−L−Leu−NH(CH212−L−Leu1.21g(0.0026mol)をトルエン50mlに加熱溶解し、溶液を80°Cに保った。ここに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート0.36ml(0.40g:0.0026mol)を滴下して0.5時間撹拌した。反応終了後ヘキサン50mlを加えて生成物をよく洗浄し、吸引濾過して1晩減圧乾燥を行った。得られた生成物1.45gに1−プロパノール100mlを加えて加熱溶解し、それを熱濾過して再結晶を行い、濾液は冷凍庫で冷却した後吸引濾過した。1晩減圧乾燥を行い、分子両末端にそれぞれメタクリル酸と2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを有するドデカンジアミド誘導体1.22gを得た。
【0136】
この化合物の同定は、元素分析、IRによった。このうち、元素分析の結果を以下に示す。
【0137】
【0138】
製造例4
分子両末端にアクリル酸を有するドデカンアミド誘導体(化合物No.157)の合成
Z−L−グルタミン酸エチルエステル7.42g(0.024mol)に酢酸エチル60mlを加え、氷冷下撹拌して完全に均一な溶液とした。ここにN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド5.36g(0.026mol)を加えて氷冷下1時間撹拌した。1時間撹拌した白濁液に1,12−ドデカンジアミン4.81g(0.024mol)を加えて氷冷下で2時間撹拌した後常温にもどして1時間、さらに45°Cに保ちながら1晩撹拌を行った。この白濁液を冷凍庫にて冷却し、沈殿物を吸引濾過して減圧乾燥した。得られた生成物12.39gに1−プロパノール540mlを加えて加熱溶解させ、熱濾過することでN,N’−ジシクロヘキシルウレアの除去を行った。濾液は冷凍庫で1晩冷却し、吸引濾過後減圧乾燥して、Z−L−Glu(OEt)−NH(CH212NH24.72gを得た。
【0139】
Z−L−イソロイシン2.55g(0.0096mol)に酢酸エチル50mlを加え、氷冷下撹拌して完全に均一な溶液とした。ここにN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド2.27g(0.011mol)を加えて氷冷下1時間撹拌した。1時間撹拌した白濁液にZ−L−Glu(OEt)−NH(CH212NH24.72g(0.0096mol)を加えて氷冷下で2時間撹拌した後常温にもどして1時間、さらに45°Cに保ちながら1晩撹拌を行った。この白濁液を冷凍庫にて冷却し、沈殿物を吸引濾過して減圧乾燥した。得られた生成物7.79gに1−プロパノール250mlを加えて加熱溶解させ、熱濾過することでN,N’−ジシクロヘキシルウレアの除去を行った。濾液は冷凍庫で1晩冷却し、吸引濾過後減圧乾燥して、両末端にそれぞれZ−L−グルタミン酸エチルエステルとZ−L−イソロイシンを有するアルキレンジアミド誘導体(以下Z−L−Glu(OEt)−NH(CH212NH−Z−L−Ileと略す)4.82gを得た。
【0140】
Z−L−Glu(OEt)−NH(CH212NH−Z−L−Ile4.82g(0.0065mol)を2−メトキシエタノール200mlに加熱溶解し、触媒としてパラジウム炭素大さじ1杯を加えて、水素ガスを注入しながら常温で6時間還元させてZ基を除去した。シリカゲル薄層クロマトグラフィーでZ基の除去を確認した後前記触媒を濾別した。濾液を減圧濃縮して乾燥テトラヒドロフラン60mlを加え、加熱溶解後不溶物を除去した。不溶物除去後の溶液を減圧濃縮し、ヘキサン100mlを加えて生成物をよく洗い、吸引濾過後減圧乾燥して、Z基を除去したL−グルタミン酸エチルエステル、L−イソロイシンと1,12−ドデカンジアミンとのアルキレンジアミド誘導体(以下L−Glu(OEt)−NH(CH212NH−L−Ileと略す)2.37gを得た。
【0141】
L−Glu(OEt)−NH(CH212NH−L−Ile2.37g(0.0050mol)に乾燥テトラヒドロフラン60mlを加えて撹拌し、完全に均一な溶液とした。氷浴を用いて冷却しながらここにトリエチルアミン1.52ml(1.11g:0.011mol)を加えて撹拌し、さらに氷冷下アクリル酸クロリド0.81ml(0.91g:0.010mol)を滴下して撹拌した。氷浴中で3時間、常温で1晩撹拌して反応させた。得られた白濁液は減圧濃縮して媒体を完全に除去し、そこにメタノール100mlを加えて反応生成物を砕くことでトリエチルアミン塩酸塩の除去を行った。よく砕いてメタノールで洗った後生成物を吸引濾過して1晩減圧乾燥した。得られた生成物2.42gに1−プロパノール200mlを加えて加熱溶解し、それを熱濾過して再結晶を行い、濾液は冷凍庫で冷却した後吸引濾過した。1晩減圧乾燥を行い、分子両末端にアクリル酸を有するドデカンジアミド誘導体2.17gを得た。
【0142】
この化合物の同定は、元素分析、IRによった。このうち、元素分析の結果を以下に示す。
【0143】
次に、ゲル化剤の実施例を示す。
【0144】
実施例1
製造例1(比較例)および2(本発明例)で得られた化合物について、下記の試験方法により代表的な有機媒体に対するゲル化能を試験した。それらの結果を表1に示す。
【0145】
本発明および比較の化合物を、それぞれ、ふた付き試験管に10mgずつ精秤して加え、各種有機媒体を1mlずつ入れふたをして完全な均一溶液になるまで加熱した。溶解後常温で放置してゲルを完全に生成させた後25°Cの恒温槽中に2時間静置し、ゲルの様子を肉眼で観察した。ゲル化が不完全な場合は本発明の化合物を追加し、完全にゲル化していた場合は有機媒体を追加して、各有機媒体1mlをゲル化させるのに必要な化合物の最少量(mg)を求めた。ただし加える化合物の最大量は有機媒体1mlに対して100mgまでとし、この状態で溶液のものは「ゲル化せず」と評価した。
【0146】
実施例2
製造例1(比較例)および2(本発明例)で得られた化合物について、下記の試験方法により重合試験を行った。重合結果を表1に示す。
【0147】
本発明および比較の化合物を、それぞれ、各有機媒体1mlをゲル化できる最小量(mg)の二倍程度精秤してサンプルびんに入れ、各種有機媒体1mlを加えふたをして完全な均一溶液となるまで加熱した。溶解後ゲルが完全に生成するまで常温にて静置しゲル生成後、このゲルに360nm以上の光を遮蔽した紫外線を2晩照射した。光照射後のゲルを加熱して溶解しない部分を、光重合により高分子化されたゲルと判断し、そのようなゲルが得られたものは「○」、そのようなゲルが得られなかったものは「×」と評価した。
【0148】
【表1】
【0149】
表1より、本発明の重合官能基含有アルキレンジアミド誘導体は、比較の重合官能基含有アルキレンジアミど誘導体に比べ、広範囲の種類の液状有機媒体を少量の添加でゲル化できることがわかる。また、多種類の有機媒体から作製したゲルを紫外線照射によって高分子化できることが明らかである。
【0150】
さらに、次のことが明らかになった。紫外線照射によって得られたゲルはいかなる加熱にも融解することがない。また高分子化されたゲルを常温において半年間保存してその状態を観察したところ、初期状態と何等変化なくゲルは均一で長期間の保存においても液状部分の発生はなく安定であることが確認された。すなわち、紫外線照射により高分子化されたゲルは熱安定性、長期安定性に優れている。
【0151】
したがって、本発明の化合物は、多くの有機媒体をゲル化でき、かつそのゲルを高分化できることがわかった。
【0152】
次に、本発明のゲル化剤の応用例の実施例を示す。
【0153】
実施例3
酸化チタン水系分散液の調製
チタンイソプロポキシドを以下のように加水分解することにより、酸化チタン水系分散液を調製した。
【0154】
125mlのチタンイソプロポキシドを、0.1mol/l硝酸水溶液750mlに攪拌しながら添加した。これを80℃で8時間激しく攪拌した。得られた液体をチタン製の圧力容器内で220℃、20atm、12時間オ−トクレ−ブ処理した。沈殿物を含む水系分散液を攪拌により再懸濁させた。吸引濾過により、再懸濁しなかった沈殿物を除き、エバポレ−タ−で酸化チタン濃度が11質量%になるまで水系分散液を濃縮した。基板への塗れ性を高めるため、Triton X-100を1滴添加した。
【0155】
酸化チタン膜の焼成時におけるクラックの発生および導電性表面からの膜の剥離を防止するため分子量20000のポリエチレングリコ−ル10.0gを上記酸化チタン水系分散液に添加した。
【0156】
増感色素吸着酸化チタン膜担持透明電極(酸化チタン電極:陰極)の作製
次に、縦3.0cm、横3.0cm、厚さ1mmの導電性ガラス基板(FドープSnO2、シ−ト抵抗10Ω/□)の導電膜面側に、縦0.5cm、横0.5cmの穴を設けた厚さ70μmのマスキングテ−プを貼り、穴の端部に前記酸化チタン水系分散液(酸化チタンの1次粒子の平均粒子径10nm)をピペットで添加した。このゾル液を縁が平らなガラス板を用いて引き延ばすことにより基板上に広げた。このように広げた膜を空気中で30分間乾燥し、乾燥後マスキングテ−プを剥がし取った。次に、電気炉を用いて500℃で30分間焼成した。昇温速度は2℃/minとした。
【0157】
焼成後、基板温度が80℃まで下がったところで、増感色素として(4,4‘−ジカルボン酸−2,2’−ビピリジン)ルテニウム(II)ジイソチアネ−トの3×10-4mol/l無水エタノ−ル溶液20mlに浸漬し、12時間放置した。放置後、酸化チタン電極を取り出し無水アセトニトリルで洗浄した。基板上の酸化チタン膜は吸着されたルテニウム色素により深紅色となった。
【0158】
酸化チタン膜の厚さは10,000nmであり、酸化チタン1g に対する色素吸着量は180m molであった。
【0159】
対極(陽極)の作製
縦3.0cm、横3.0cm、厚さ1mmの導電性ガラス基板(FドープSnO2、シ−ト抵抗10Ω/□)の導電膜面側に、白金を2nmの厚さで蒸着した。
【0160】
ゲル電解質の調製
テトラプロピルアンモニウムヨウジド(0.4mol/l)とヨウ素(0.04mol/l)を含むプロピレンカーボネートに、製造例2ののゲル化剤(分子両末端に2−メタクリロイルオキシエチルセグメントを有するドデカンジアミド誘導体:化合物No.1)を添加し、ゲル化電解液を調製した。また、重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを添加した。ゲル化剤および重合開始剤の添加量はそれぞれ、プロピレンカーボネート1mlに対し、15mg、0.45mgとした。ゲル化剤および重合開始剤が均一に溶解するまで加熱してから電池作製に用いた。
【0161】
電池の作製
縦0.5cm、横0.5cmの穴を設けた縦2.5cm、横3.0cm、厚さ70μmのスペサ−を、穴の部分と酸化チタン膜の部分とが一致するように酸化チタン電極上に置き、電極上に密着させた。穴の部分に、ゲル電解質を乗せ、その上に対極を置き周囲をエポキシ樹脂で封止して電池を作製した。
【0162】
その後、対極側から、360nm以上の光を遮蔽した紫外線を5分間照射しゲルの光重合を行い、ゲル状態を保持したまま高分子化した。
【0163】
これを電池サンプルNo.1とする。
【0164】
また、比較として、紫外線照射による光重合を行わない電池サンプルNo.2を作製した。さらに、ゲル電解質のかわりに、ゲル化剤および重合開始剤を添加しない電解液を用いた電池サンプルNo.3を作製した。
【0165】
電池の評価
AM1.5(1000W/m2)のソ−ラ−シミュレ−タ−を用いて、開放電圧(Voc)、光電流密度(Jsc)、形状因子(FF)、変換効率(η)の測定を行い電池特性評価とした。電池作製直後と、200日間放置後のそれぞれの測定結果を表2に示す。
【0166】
【表2】
【0167】
上記結果より、本発明のゲル化剤を用いて電解液をゲル化することにより、電池特性の長期安定性が向上することがわかる。また、電解液ゲルの光重合は、ゲルの安定性をさらに向上させ、電池特性の安定性向上に非常に効果的である。一方、ゲル化剤を含まないサンプルでは封止剤の劣化、溶媒の揮発が起こり、長期安定性が非常に悪いことがわかる。
【0168】
実施例4
下記組成の磁性層用の塗料、非磁性下層用の非磁性塗料およびバックコート層用のバックコート塗料を調製した。下記における「部」は、特にことわらない限り、「質量部」である。
【0169】
磁性塗料
Fe−Al系強磁性金属粉末 100部
(磁性粉)
Fe:Al:Co:Y=100:10:40:8(質量比)
Hc:174kA/m(2200 Oe)、BET:58m2/g、σs:145Am2/kg(145emu/g)、結晶子サイズ:12nm、軸比6.5
平均長軸長100nm
スルホン酸カリウム基含有塩化ビニル系樹脂 (日本ゼオン(株)製 MR−110) の電子線架橋型変性体 10部
スルホン酸ナトリウム基含有ポリウレタン樹脂 (東洋紡績(株)製 UR−8700)の電子
線架橋型変性体 10部
カーボンブラック(数平均粒径90nm) 0.5部
α−アルミナ(数平均粒径0.15μm) 3部
ステアリン酸 1部
ブチルステアレート 1部
シクロヘキサノン 100部
メチルエチルケトン 100部
トルエン 100部
ゲル化剤(分子両末端に2−メタクリロイルオキシエチルセグメントを有するドデカンジアミド誘導体:化合物No.1) 1部
【0170】
非磁性塗料
非磁性粉末[α−Fe23針状粒子(Siをα−Fe23に対して0.2質量%、Alを0.5質量%含有)、平均長軸長160nm、結晶子サイズ18nm、軸比8] 100部
スルホン酸カリウム基含有塩化ビニル系樹脂(日本ゼオン(株)製 MR−110)の電子線架橋型変性体 12部
スルホン酸ナトリウム基含有ポリウレタン樹脂(東洋紡績(株)製 UR−8700)の電子線架橋型変性体 8部
α−アルミナ(数平均粒径0.2μm) 5部
カーボンブラック(数平均粒径15nm) 10部
ステアリン酸 1部
ブチルステアレート 1部
シクロヘキサノン 100部
メチルエチルケトン 100部
トルエン 100部
ゲル化剤(分子両末端に2−メタクリロイルオキシエチルセグメントを有するドデカンジアミド誘導体:化合物No.1) 2部
【0171】
バックコート塗料
カーボンブラック1(数平均粒径23nm) 45部
カーボンブラック2(数平均粒径50nm) 5部
硫酸バリウム(平均粒径200nm) 1部
ニトロセルロース 25部
ポリウレタン系樹脂 25部
(日本ポリウレタン(株)製、N−2301)
ポリイソシアネート化合物 10部
(日本ポリウレタン(株)製、コロネートL)
シクロヘキサノン 400部
メチルエチルケトン 250部
トルエン 250部
【0172】
厚さ5μm のポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルム上に、非磁性塗料を塗布し、乾燥して溶剤を除去した後、カレンダ処理を行い、さらに電子線照射(15Mrad)を行って、1.5μm 厚の非磁性下層を形成した。そして、その上に磁性塗料を塗布し、乾燥して溶剤を除去した後、カレンダ処理を行い、さらに電子線照射(15Mrad)を行って、0.10μm 厚の磁性層を形成した。
【0173】
さらに、この磁性層とは反対側の前記ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムの面(裏面)にバックコート塗料を塗布し、乾燥し、カレンダ処理を行い、その後熱硬化を行って、0.8μm 厚のバックコート層を形成した。
【0174】
これをスリットしてビデオ用にしたものを磁気テープサンプルNo.1とする。
【0175】
このサンプルNo.1において、磁性塗料および非磁性塗料にゲル化剤を添加しないものとするほかは、同様にしてサンプルNo.2を作製した。
【0176】
これらのサンプルについて、以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0177】
{電磁変換特性}
ソニー(株)製8ミリビデオカメラCCDV−900により、7MHzと6MHzとの出力差(dB)を測定し、7MHzのC/N比とした。
【0178】
{中心線平均表面粗さ(Ra)}
JIS−B0601の5項に示された方法により小坂研究所製の三次元表面粗さ計(SE−3FK)にて測定(カットオフは0.25mm)した。
【0179】
{塗布特性}
塗布特性については長手方向のスジについて目視で観察した。
【0180】
{オーバーライト特性}
2MHzの信号を飽和レベルで記録し、その後に9MHzの信号を(上書き)記録した際の2MHzの信号の残留出力レベルを判定した。残留出力レベルの低い程オーバーライト特性は良好であるとする。
【0181】
【表3】
【0182】
本発明のサンプルは、表面性が良好で、特性に優れることがわかる。
【0183】
実施例5
情報を担持するピットを形成したディスク状支持基体(ポリカーボネート製、直径120mm、内径15mm、厚さ1.2mm)の表面に、Alからなる反射膜をスパッタ法により形成した。
【0184】
次いで、反射膜表面に、スクリーン印刷により厚さ100μmの樹脂層を形成し、この樹脂層に紫外線を照射して硬化することにより光透過層を形成して、光ディスクサンプルを得た。印刷に用いたインキは、紫外線硬化性樹脂(帝国インキ製造株式会社製のUV-OPT-550)に、ゲル化剤として前記化合物No.1を3%(質量百分率)添加したものである。また、印刷に用いた版は、1インチ(2.54cm)あたりのメッシュ数が100であり、乳剤膜厚が100μmである。印刷範囲は、半径19.5〜59.5mmの領域である。印刷の際に版からの液ダレは認められなかった。
【0185】
このようにして形成した光透過層について、レーザーフォーカス変位計により厚さ分布を測定した。なお、厚さの測定は、光透過層の径方向において2mm間隔で行った。その結果、光透過層の平均厚さは100μmであり、最大厚さと最小厚さとの差は6μmであった。光透過層の外周縁付近および内周縁付近に、盛り上がりは認められなかった。
【0186】
また、前記インキにゲル化剤を添加しなかったほかは上記サンプルと同様にして比較サンプルを作製した。樹脂層を印刷する際には、版からの液ダレが認められた。この比較サンプルについて、上記サンプルと同様な測定を行った。その結果、光透過層の平均厚さは102μmであり、最大厚さと最小厚さとの差は20μmであって、厚さ分布が著しく大きくなった。また、光透過層の外周縁付近および内周縁付近に、盛り上がりが認められた。
【0187】
【発明の効果】
本発明によれば、広範囲の種類の液状有機媒体を少量の添加量で増粘化またはゲル化させることが可能となった。また、生成したゲルに紫外線を照射することでゲル状態を保持したまま高分子化させることを可能とした。また、ゲル化剤を粘度調整剤やコーティング材料として用いて各種機能性塗膜の形成が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】光情報媒体の構成例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
2 光透過層
20 支持基体
21 グルーブ
4 記録層

Claims (3)

  1. アミノ酸誘導体セグメントと重合官能基とを有する、下記式(1)で示される重合官能基含有アルキレンアミド誘導体。
    [式(1)中、nは2〜30の整数であり、
    およびAは、それぞれ、−(CHCOOR(ここで、Rは水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を表す。)、−CH(CH、−CHCH(CH または−CH(CH)C 表し、BおよびBは、それぞれ、−CONH(CHOCOC(CH)=CH、−COC(CH)=CHおよび−COCH=CHから選ばれるビニル含有基、またはアルキル基を表し、少なくとも一方はビニル含有基である。AとAとは同一でも異なるものであってもよく、両方がビニル含有基であるときのBとBとは同一でも異なるものであってもよい。m1およびm2は、それぞれ、1または2である。]
  2. アミノ酸誘導体セグメントと重合官能基とを有するゲル化剤であって、下記式(1)で示される重合官能基含有アルキレンアミド誘導体であるゲル化剤。
    [式(1)中、nは2〜30の整数であり、
    およびAは、それぞれ、−(CHCOOR(ここで、Rは水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を表す。)、−CH(CH、−CHCH(CH または−CH(CH)C 表し、BおよびBは、それぞれ、−CONH(CHOCOC(CH)=CH、−COC(CH)=CHおよび−COCH=CHから選ばれるビニル含有基、またはアルキル基を表し、少なくとも一方はビニル含有基である。AとAとは同一でも異なるものであってもよく、両方がビニル含有基であるときのBとBとは同一でも異なるものであってもよい。m1およびm2は、それぞれ、1または2である。]
  3. 請求項2のゲル化剤および有機媒体を含有する塗膜形成用ゲル化剤組成物を、被着体に塗布後、活性エネルギー線による硬化を行って機能性塗膜を形成したコーティング体。
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