JP4316599B2 - 多角形型架空線 - Google Patents

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Description

本発明は、架空電線又は架空地線等の架空線に関し、特に台風等おける強風時及び強風と大雨が同時に存在する条件下で風圧荷重が少なく、しかも中風速時の風騒音が少ない架空線に関するものである。
従来、丸素線を撚り合わせたACSRよりも風圧荷重を低減した架空線としては、外周面にらせん状の溝を形成したものが公知である(特許文献1、2参照)。
特許第2898903号公報 特許第3540720号公報
しかし、これらの電線は、強風時の風圧荷重は低減できるものの、風速10〜20m/sの風がふいた時の風騒音が大きいことが判明した。このため、民家に近いところを通る架空送電線には不向きである。
風騒音を低減するには、らせん状の突起を設けることが有効である。しかし引用文献2記載の電線にらせん状突起を設けて、風洞設備で風音測定を行った結果では、電線表面の溝の影響が大きいため、突起の大きさを大きくしないと、風音低減の効果が得られないことが分かった。しかし、らせん状突起の大きさを大きくすると、抗力係数が大きくなり、せっかくの風圧荷重低減効果が損なわれる結果となる。
このように、風圧荷重の低減と風騒音の低減は相反する関係にあり、これを両立させることは困難であった。
そこで、本発明の目的は、強風時だけでなく強風と大雨が同時に存在する条件下でも風圧荷重が少なく、しかも中風速時の風騒音も少なくできる架空線を提供することにある。
この目的を達成するため、本発明に係る架空線は、
裸撚線よりなり、断面形状が、直径18.2mmから38.4mmの円に内接する正多角形を基本形状とし、この正多角形基本形状の最も離れた位置にある2つの辺に平板状突起を設けた形であって、
前記正多角形の角数が、直径18.2mmのときは16角、直径22mmのときは17角、直径24.4mmのときは20角、直径27.4mmのときは20角又は21角、直径32.6mmのときは22角、直径38.4mmのときは22角であり、
前記平板状突起の高さが0.3mm以上、0.75mm以下である、
ことを特徴とするものである。
また、本発明に係る架空線は、
裸撚線よりなり、断面形状が、直径18.2mmから38.4mmの円に内接する正多角形を基本形状とし、この正多角形基本形状の最も離れた位置にある2つの辺に平板状突起を設けた形であって、
前記正多角形の角数Nと前記円の直径dの関係が次式の範囲にあり、
192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d−0.5<N<192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d+0.5
前記平板状突起の高さが0.3mm以上、0.75mm以下である、
ことを特徴とするものと規定することもできる。
また、本発明に係る架空線は、
裸撚線よりなり、断面形状が、直径18.2mmから27.4mmの円に内接する正多角形を基本形状とし、この正多角形基本形状の最も離れた位置にある2つの辺に平板状突起を設けた形であって、
前記正多角形の角数Nと前記円の直径dの関係が次式の範囲にあり、
192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d−0.5<N<192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d+0.5
前記平板状突起の高さが0.2mm以上、0.75mm以下である、
ことを特徴とするものと規定することもできる。
また、本発明に係る架空線は、
裸撚線よりなり、断面形状が、直径22mmから38.4mmの円に内接する正多角形を基本形状とし、この正多角形基本形状の最も離れた位置にある2つの辺に平板状突起を設けた形であって、
前記正多角形の角数Nと前記円の直径dの関係が次式の範囲にあり、
192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d−0.5<N<192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d+0.5
前記平板状突起の高さが0.3mm以上、1.0mm以下である、
ことを特徴とするものと規定することもできる。
また、本発明に係る架空線は、
裸撚線よりなり、断面形状が、直径18.2mmから38.4mmの円に内接する正多角形を基本形状とし、この正多角形基本形状の最も離れた位置にある2つの辺に平板状突起を設けた形であって、
前記正多角形の角数Nが、前記円の直径dを横軸、角数Nを縦軸とする直角座標において、(d=18;N=16)(d=22;N=17)(d=27.4;N=20)(d=32.6;N=22)(d=38.4;N=22)(d=32.6;N=22)(d=24.4;N=20)(d=18;N=16)の各点を結ぶ直線で囲まれた範囲内にあり、
前記平板状突起の高さが0.3mm以上、0.75mm以下である、
ことを特徴とするものと規定することもできる。
また、本発明に係る架空線において、裸撚線の最外層を構成する素線は、一方の側面に凸条を有し、他方の側面にそれに対応する凹条を有しているものであることが好ましい。
本発明は、電線断面の基本形状を正多角形とすることで、風圧荷重が低減できることを実験により確認し、さらに、断面正多角形型架空線の外周面に高さの低い平板状突起をらせん状に形成することで、風圧荷重の増加を抑制しつつ風騒音の低減が可能であることを実験により確認して、強風と大雨が同時に存在する条件下でも風圧荷重が少なく、しかも風速10〜20m/sにおける風騒音が少ない架空線を完成したものである。
前述のように、架空線の外周面に溝を形成することにより風圧荷重を低減する方式では、風速10〜20m/sにおける風騒音が問題となることが判明したので、外周面の溝を無くして、溝の効果を(即ち溝で発生する圧力の変化を)断面正多角形の角数の増減で補えるか否かを、先ず予備調査した。この予備調査は、正多角形型架空線と同じ直径の2次元角柱を使い、正多角形の角数と風圧荷重の関係を風洞実験により調べるものである。この実験により、溝のない単純な正多角柱でも、無降水時、降水時とも、抗力係数Cd(すなわち風圧荷重)を、最外層に丸素線を撚り合わせた普通の電線(Cd=1)よりも低くできることを確認した。
そこで、溝なし正多角形型架空線を試作し、台風時の強風+降水を再現する風洞実験を行った。この実験によれば、電線風上側表面に付着した水滴は後流側に向かって移動して行き最終的にはく離点に到着すること、また、はく離点後方では後流域の渦流れによる逆流があるため水滴はこの逆流によりはく離点位置に押し戻されて集合し電線表面に水たまりを形成すること、が分かった。したがって、何らかの手段ではく離点位置に集合する水滴を排水または吹き飛ばすことができれば、台風時の強風+降水条件下でも風圧荷重を低く抑えることができると考えた。
一方、正多角形型架空線の風騒音対策は、電線の表面にらせん状突起を設けるのが一般的であり、有効な手法と考えられる。この手法は、現象的には付加されたらせん状突起が作り出す流れが、電線本体で作り出される位相のそろったカルマン渦列を分断することで、風騒音を低減するものである。
上記の2現象を考慮し、一つの対策で、高風速域である台風時の強風+降水条件下で発生する電線表面の水滴の停留集合の問題を解決し、また、中風速域における風騒音の問題を解決できれば、実用的で、かつ環境対策上有効な架空線を提供できると考えた。
上記の二つの問題を解決すべく、断面正多角形を基本形状とし、この基本形状で排水性能の優れた正多角形の角数を選定し、さらに、基本形状に一対の突起を付加することにより、中風速域では突起部から強い流れを発生させカルマン渦を分断して風騒音を抑え、高風速降水時では突起部から強制はく離を生じさせ電線表面すなわち境界層の領域に強い流れを起こして電線表面の水滴を吹き飛ばすことを考えた。それには、正多角形型架空線の表面流れを阻害しないような突起が必要となる。
まず、断面正多角形の基本形状の降水時特性を確認するため、電線ではなく、電線と同じ断面形状をもつ2次元正多角柱で、台風時の抗力特性を確認する実験を行った。これは、裸撚線の場合、表面流れが電線形状の3次元性のため(撚り方向のねじれのため)3次元流れとなって、電線表面上の水滴の動きを複雑化し、現象の把握と解釈が困難になると予測されたためである。基本形状を2次元正多角柱とすれば、現象の複雑さを抑え、現象の把握と解釈を容易にし、好ましい断面形状(角数)の探査を容易に行うことができる。
形状探索のため、直径18mmで15、16、17角形、直径22mmで16、17、18、20角形、直径25mmで18、20、22角形、直径27mmで20、22角形、直径34mmで20、22角形、直径40mmで22、24角形の2次元正多角柱を試作した。
これらの角柱について、風洞実験を行い、風速5m/s〜40m/s、降水条件16mm/10分間で、強風+降水時の抗力係数を測定した。通常、送電線設備設計時に用いられる最高風速は40m/sであることから、本実験の最高風速は40m/sとした。降水条件は過去に観察された台風の強風と降水量の記録から採用した値である。
風洞実験は図13に示す実験設備で行った。この実験設備は、風洞11内に電線サンプル12を水平に配置し、風洞11の入口(吹出し口)の直後に気流を乱さないように設置された降水グリッド13から、風速40m/sの条件下で水を噴射するものである。噴射された水は気流に拡散し、気流と共に電線サンプル12に達し、風洞内を通り抜ける。電線サンプル12にかかる風圧は風洞11の両側に設置された3分力検出器14(荷重計)で検出する。
抗力係数Cdの定義は次式のとおりである。
Cd=測定荷重/(0.5ρVA)
ここで、測定荷重は風洞の両側に設置した荷重計の総和、ρは空気密度、Vは気流速度の2乗、Aは電線サンプルの風上投影断面積である。0.5ρVは風圧値で、単位面積あたりの風圧荷重である。標準大気圧状態で風速40m/sでは、ρ=1.293kg/mとなり、風圧値は980.7N/mとなる。30m/sでは風圧値551.6N/mとなる。
降水時の評価では、上式を変えず、空気密度ρは無降水時の値と同じ値を使用した。このため測定荷重に現れる降水の効果は、Cd値に直接的に現れ、評価が容易である。
2次元正多角柱の風洞実験結果を表1に示す。
Figure 0004316599
この試験をもとに、各直径の多角柱で無降水時、降水時とも風圧抵抗が小さい値をもつ角数を探した。結果は、表1に○印で示したように、直径18mmでは18角、直径22mmでは18角、直径25mmでは18角、直径27mmでは22角、直径32mmでは22角、直径40mmでは22角となった。この結果をもとに、実際の電線の直径に合わせて角数を決め、裸撚線よりなる正多角形型架空線を試作した。
試作した電線は次のとおりである。
直径18.2mm(公称断面積160mm相当)の電線については、正14角形(図示省略)、正15角形(図示省略)と図1(A)に示す正16角形を試作した。
直径22mm(公称断面積240mm相当)の電線については、図2(A)に示す正17角形と正20角形(図示省略)を試作した。
直径24.4mm(公称断面積330mm相当)の電線については、図3(A)に示す正20角形を試作した。
直径27.4mm(公称断面積410mm相当)の電線については、図4(A)に示す正20角形と図5(A)に示す正21角形を試作した。
直径32.6mm(公称断面積610mm相当)の電線については、図6(A)に示す正22角形を試作した。
直径38.4mm(公称断面積810mm相当)の電線については、図7(A)に示す正22角形と正24角形(図示省略)を試作した。
図1〜図7において、1は中心鋼撚線、2は内層アルミ素線、3は最外層アルミ素線である。いずれの電線も最外層アルミ素線3は、図8(A)に示すように、断面が実質的に台形で、隣りの素線と接触する一方の側面に長手方向に凸条4を有し、他方の側面にそれに対応する凹条5を有し、外面側が平面、内面側が内層外径に合う曲面となっているものである。最外層にこのような素線3を使用すると、最外層素線相互の位置ずれが発生し難くなり、正確な断面正多角形撚線を形成することができる。
なお、直径22mm と24.4mmの電線について、2次元角柱の試験結果で有効な角数である18角形を試作しなかったのは、角柱の試験結果が直径25mmと27mmで不連続な結果を示しているためである。また、試作試験は直径の大きい電線から順に実施した結果、22mmの電線で17角形が有効であることが判明したため、18.2mmの電線は14、15、16角形が試作対象となった。
試作した断面正多角形型架空線(基本形状)の風洞実験結果を表2に示す。表2は、各正多角形型架空線の、直径d、公称断面積、角数N、無降水で風速20m/s、30m/s、40m/s時の抗力係数、16mm/10分間降水強度で風速40m/s時の抗力係数を示したものである。
Figure 0004316599
これらの電線を評価する場合、設計に必要な風圧荷重値は、各条件でCd値が大なる値が用いられるかめ、無降水時40m/sと降水時40m/sの抗力係数Cd値を比較して、Cd値が大きい方がその電線の台風時抗力係数となる。表2における実行Cdとは、2つのCd値を比較したときの大きい方のCd値であり、これが台風時の抗力係数を示す値である。
試作した断面正多角形型架空線(基本形状)の評価は次のとおりである。
(1)直径18.2mmの正多角形型架空線
このサイズについては3種類の電線を試作試験した。表2に示すように、降水時の抗力係数が最小だったのは16角形であり、その効果は、対応する普通電線(丸素線を撚り合わせたACSR)の設計Cd値1.0に対し0.868となり、14%弱の風圧荷重低減となった。しかし無降水時のCd値が1.012となり、送電線路の設計に使う40m/s時の電線のCd値1.0を若干上回った。
(2)直径22mmの正多角形型架空線
このサイズについては2種類の電線を試作試験した。表2に示すように、17角形が良となり、17角形の無降水時Cd値0.831が実行Cd値となった。この値は、対応する普通電線の設計Cd値1.0に対し約17%減となり、十分な風圧荷重低減効果が得られた。
(3)直径24.4mmの正多角形型架空線
このサイズについては20角形1種類の電線を試作試験した。表2に示すように、降水時の抗力係数が実行Cdとなり、0.754であった。この値は、対応する普通電線の設計Cd値1.0に対し約24%減となり、十分な風圧荷重低減効果が得られた。
(4)27.4mmの正多角形型架空線
このサイズについては2種類の電線を試作試験した。表2に示すように、20角形、21角形とも良好な結果が得られ、20角形では降水時Cd値0.763が実行Cd値となり、21角形では降水時Cd値0.742が実行Cd値となった。21角形の実行Cd値は、対応する普通電線の設計Cd値1.0に対し約26%減となり、十分な風圧荷重低減効果が得られた。
(5)直径32.6mmの正多角形型架空線
このサイズについては22角形1種類の電線を試作試験した。表2に示すように、降水時の抗力係数が実行Cdとなり、0.711であった。この値は、対応する普通電線の設計Cd値1.0に対し約29%減となり、十分な風圧荷重低減効果が得られた。
(6)直径38.4mmの正多角形型架空線
このサイズについては2種類の電線を試作試験した。表2に示すように、22角形が良好な結果を示し、22角形の降水時Cd値0.721が実行Cd値となった。この値は、対応する普通電線の設計Cd値1.0に対し約28%減となり、十分な風圧荷重低減効果が得られた。
以上の実験結果から、断面正多角形の裸撚線よりなる電線の場合、直径18.2mmのときは16角形にすれば実行Cd値が最も低くなり、直径22mmのときは17角形、直径24.4mmのときは20角形、直径27.4mmのときは20角形又は21角形、直径32.6mmのときは22角形、直径38.4mmのときは22角形にすれば、風圧荷重を普通電線よりも低くできることが分かった。
次に、上記7種類の正多角形型架空線について、風速10m/s、15m/s、20m/sでの風騒音レベルの測定を行った。比較のため公称断面積が同じ普通の電線(丸素線を撚り合わせたACSR)についても風騒音レベルの測定を行い、その結果を表3に併せて示す。
Figure 0004316599
表3によれば、公称断面積160mmと240mmでは、正多角形型架空線の方が普通電線よりも風騒音が低くなるが、公称断面積330
mm〜810 mmでは、正多角形型架空線の方が普通電線よりも風騒音が高くなることが分かった。
このため、正多角形型架空線の風圧荷重低減効果を損なわない範囲で、正多角形を基本形状とする電線の風騒音を低減する手段を探索した結果、比較的高さの低い平板状突起をらせん状に設けることが有効であることが実験的に判明した。
そこで、平板状突起の高さの影響を調べるため、平板状突起の高さを変えた次のような電線を試作した。
(1)図1(B)に示す、断面形状が、直径18.2mmの円に内接する正16角形を基本形状とし、そのうちの1つの辺と、そこから最も離れた位置にあるもう1つの辺に平板状突起6を設けた形の電線で、平板状突起6の高さが0.2mm、0.3mm、0.5mm、0.75mm、1.0mmの5種類。
(2)図2(B)に示す、断面形状が、直径22mmの円に内接する正17角形を基本形状とし、そのうちの1つの辺と、そこから最も離れた位置にあるもう1つの辺に平板状突起6を設けた形の電線で、平板状突起6の高さが0.2mm、0.3mm、0.5mm、0.75mm、1.0mmの5種類。
(3)図3(B)に示す、断面形状が、直径24.4mmの円に内接する正20角形を基本形状とし、そのうちの1つの辺と、そこから最も離れた位置にあるもう1つの辺に平板状突起6を設けた形の電線で、平板状突起6の高さが0.2mm、0.3mm、0.5mm、0.75mm、1.0mmの5種類。
(4)図4(B)に示す、断面形状が、直径27.4mmの円に内接する正20角形を基本形状とし、そのうちの1つの辺と、そこから最も離れた位置にあるもう1つの辺に平板状突起6を設けた形の電線で、平板状突起6の高さが0.2mm、0.3mm、0.5mm、0.75mm、1.0mmの5種類。
(5)図5(B)に示す、断面形状が、直径27.4mmの円に内接する正21角形を基本形状とし、そのうちの1つの辺と、そこから最も離れた位置にあるもう1つの辺に平板状突起6を設けた形の電線で、平板状突起6の高さが0.2mm、0.3mm、0.5mm、0.75mm、1.0mmの5種類。
(6)図6(B)に示す、断面形状が、直径32.6mmの円に内接する正22角形を基本形状とし、そのうちの1つの辺と、そこから最も離れた位置にあるもう1つの辺に平板状突起6を設けた形の電線で、平板状突起6の高さが0.2mm、0.3mm、0.5mm、0.75mm、1.0mmの5種類。
(7)図7(B)に示す、断面形状が、直径38.4mmの円に内接する正22角形を基本形状とし、そのうちの1つの辺と、そこから最も離れた位置にあるもう1つの辺に平板状突起6を設けた形の電線で、平板状突起6の高さが0.2mm、0.3mm、0.5mm、0.75mm、1.0mmの5種類。
最外層に2本の平板状突起を設けるには、最外層素線のうちの2本の素線に、図8(A)に示す素線3の外面側に図8(B)のように平板状突起6を一体に形成した突起付き素線3aを使用すればよい。
これらの電線について、風洞実験により無降水時、降水時の抗力係数の測定と、風騒音レベルの測定を行った。その結果を、平板状突起の高さ毎にまとめて、表4〜表13に示す。これらの結果によれば、平板状突起の高さが高くなるに従い風騒音が減少していることが認められる。
表4及び表5は、上記(1)〜(7)の電線で、平板状突起の高さが0.2mmのときの抗力係数及び風騒音レベルの測定結果を示す。
Figure 0004316599
突起高さ0.2mmの場合、抗力係数は、実行Cd値で、160mmの場合普通電線より14%の低下、810mmの場合28%の低下であった。
Figure 0004316599
突起高さ0.2mmの場合、風騒音は、160mmから410mmまでは普通電線より低い値を示したが、610mm、810mmでは普通電線より高い値を示した。
表6及び表7は、上記(1)〜(7)の電線で、平板状突起の高さが0.3mmのときの抗力係数及び風騒音レベルの測定結果を示す。
Figure 0004316599
突起高さ0.3mmの場合、抗力係数は、実行Cd値で、160mmの場合普通電線より12%の低下、810mmの場合29%の低下であった。
Figure 0004316599
突起高さ0.3mmの場合、風騒音は、160mmから810mmまで、普通電線より低い値を示した。したがって160mmから810mmまでに有効な形状であることが確認された。
表8及び表9は、上記(1)〜(7)の電線で、平板状突起の高さが0.5mmのときの抗力係数及び風騒音レベルの測定結果を示す。
Figure 0004316599
突起高さ0.5mmの場合、抗力係数は、実行Cd値で、160mmの場合普通電線より11%の低下、810mmの場合29%の低下であった。
Figure 0004316599
突起高さ0.5mmの場合、風騒音は、160mmから810mmまで、普通電線より低い値を示した。したがって160mmから810mmまでに有効な形状であることが確認された。
表10及び表11は、上記(1)〜(7)の電線で、平板状突起の高さが0.75mmのときの抗力係数及び風騒音レベルの測定結果を示す。
Figure 0004316599
突起高さ0.75mmの場合、抗力係数は、実行Cd値で、160mmの場合普通電線より7%の低下、810mmの場合26%の低下であった。
Figure 0004316599
突起高さ0.75mmの場合、風騒音は、160mmから810mmまで、普通電線より低い値を示した。したがって160mmから810mmまでに有効な形状であることが確認された。
表12及び表13は、上記(1)〜(7)の電線で、平板状突起の高さが1.0mmのときの抗力係数及び風騒音レベルの測定結果を示す。
Figure 0004316599
突起高さ1.0mmの場合、抗力係数は、実行Cd値で、160mmの場合普通電線より大きくなったが、それ以外は、240mmの場合6%の低下、810mmの場合18%の低下であった。
Figure 0004316599
突起高さ1.0mmの場合、風騒音は、160mmから810mmまで、普通電線より低い値を示した。したがって160mmから810mmまでに有効な形状であることが確認された。
以上の実験結果を総合すると、裸撚線よりなる架空線の、強風+降水時の風圧荷重を普通電線より小さくし、しかも風速10〜20m/sにおける風騒音を普通電線より小さくするためには、
断面形状が、直径18.2mmから38.4mmの円に内接する正多角形を基本形状とし、この基本形状の最も離れた位置にある2つの辺に平板状突起を設けた形であって、
前記正多角形の角数が、直径18.2mmのときは16角、直径22mmのときは17角、直径24.4mmのときは20角、直径27.4mmのときは20角又は21角、直径32.6mmのときは22角、直径38.4mmのときは22角であり、
前記平板状突起の高さが0.3mm以上、0.75mm以下である、
ことが有効である。
次に、平板状突起付きで、風圧荷重低減、風騒音低減の双方に有効な正多角形型架空線の直径と角数の関係を、正多角形型架空線の直径を横軸、正多角形型架空線の角数を縦軸とするグラフにプロットすると、図9のようになる。このグラフから明らかなように、風圧荷重低減、風騒音低減の双方に有効な正多角形型架空線の直径dと角数Nは、一定の関係があることがわかる。この関係を4次多項式で数式化すると、次式のようになる。
N=192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d
この関係を図9のグラフに示すと、曲線Aのようになる。しかし、正多角形の角数は自然数をとるため、上式から得た角数の、−0.5角及び+0.5角の変更(角数の四捨五入)を考慮すると、角数Nの範囲は次式のように表せる。
192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d−0.5<N<192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d+0.5
この範囲を図9のグラフに示すと、曲線B、Cのようになる。
角数Nを上記の式で表した場合、表4ないし表13の結果によれば、裸撚線よりなる架空線の、強風+降水時の風圧荷重を普通電線より小さくし、しかも風速10〜20m/sにおける風騒音を普通電線より小さくするためには、
断面形状が、直径18.2mmから38.4mmの円に内接する正多角形を基本形状とし、この正多角形基本形状の最も離れた位置にある2つの辺に平板状突起を設けた形であって、
前記正多角形の角数Nと前記円の直径dの関係が次式の範囲にあり、
192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d−0.5<N<192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d+0.5
前記平板状突起の高さが0.3mm以上、0.75mm以下である、
ことが有効である。
また、断面形状が、直径18.2mmから27.4mmの円に内接する正多角形を基本形状とし、この基本形状の最も離れた位置にある2つの辺に平板状突起を設けた形である場合は、
前記正多角形の角数Nと前記円の直径dの関係が次式の範囲にあり、
192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d−0.5<N<192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d+0.5
前記平板状突起の高さが0.2mm以上、0.75mm以下である、
ことも、強風+降水時の風圧荷重を普通電線より小さくし、しかも風速10〜20m/sにおける風騒音を普通電線より小さくするのに有効である。
また、断面形状が、直径22mmから38.4mmの円に内接する正多角形を基本形状とし、この基本形状の最も離れた位置にある2つの辺に平板状突起を設けた形である場合は、
前記正多角形の角数Nと前記円の直径dの関係が次式の範囲にあり、
192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d−0.5<N<192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d+0.5
前記平板状突起の高さが0.3mm以上、1.0mm以下である、
ことも、強風+降水時の風圧荷重を普通電線より小さくし、しかも風速10〜20m/sにおける風騒音を普通電線より小さくするのに有効である。
また、図10は、図9のグラフの測定点を直線で結んで風圧荷重及び風騒音の低減に有効な範囲を示したグラフである。このグラフによれば、裸撚線よりなる架空線の、強風+降水時の風圧荷重を普通電線より小さくし、しかも風速10〜20m/sにおける風騒音を普通電線より小さくするためには、
断面形状が、直径18.2mmから38.4mmの円に内接する正多角形を基本形状とし、この正多角形基本形状の最も離れた位置にある2つの辺に平板状突起を設けた形であって、
前記正多角形の角数Nが、前記円の直径dを横軸、角数Nを縦軸とする直角座標において、(d=18;N=16)(d=22;N=17)(d=27.4;N=20)(d=32.6;N=22)(d=38.4;N=22)(d=32.6;N=22)(d=24.4;N=20)(d=18;N=16)の各点を結ぶ直線で囲まれた範囲内にあり、
前記平板状突起の高さが0.3mm以上、0.75mm以下である、
ことが有効である。
ところで、風圧荷重を低減するためには、電線直径を小さくすることも有効な手段である。例えば図7(A)、(B)に示す810mmの電線の直径は38.4mmであるが、同じ公称断面積で図11(A)、(B)に示すように内層アルミ素線2を1層分だけ断面扇形の素線に置き換えると、直径を36.4mmにすることができる。直径が小さくなれば、その分、風圧荷重を低減できる。
また、断面正多角形の架空線は、最外層に図12(A)に示すような素線3を撚り合わせることによっても形成できる。この素線3は、電線の外周面側の面が、正多角形の角部7を形作るように三角山形に形成されているものである。この素線3で断面正多角形の電線を形成し、その外周面に平板状突起を形成する場合には、図12(B)に示すように、三角山形の左側の辺に平板状突起の右半分6Rを形成した素線3Rと、三角山形の右側の辺に平板状突起の左半分6Lを形成した素線3Lを、隣接させて撚り合わせればよい。
また、本発明は架空線の外周面の形状に関するものであるので、架空線の内部構造や材質は特に規制されない。例えば上述の電線の鋼線部分をアルミ線又はインバー線で構成することも可能であるし、アルミ線部分を耐熱アルミ合金線で構成することも可能である。また架空線だけでなく架空地線にも適用可能である。
(A)は断面正16角形の基本形状を有する外径18.2mmの電線の断面図、(B)は(A)の電線に平板状突起を形成した本発明の一実施形態に係る電線の断面図。 (A)は断面正17角形の基本形状を有する外径22mmの電線の断面図、(B)は(A)の電線に平板状突起を形成した本発明の他の実施形態に係る電線の断面図。 (A)は断面正20角形の基本形状を有する外径24.4mmの電線の断面図、(B)は(A)の電線に平板状突起を形成した本発明のさらに他の実施形態に係る電線の断面図。 (A)は断面正20角形の基本形状を有する外径27.4mmの電線の断面図、(B)は(A)の電線に平板状突起を形成した本発明のさらに他の実施形態に係る電線の断面図。 (A)は断面正21角形の基本形状を有する外径27.4mmの電線の断面図、(B)は(A)の電線に平板状突起を形成した本発明のさらに他の実施形態に係る電線の断面図。 (A)は断面正22角形の基本形状を有する外径32.6mmの電線の断面図、(B)は(A)の電線に平板状突起を形成した本発明のさらに他の実施形態に係る電線の断面図。 (A)は断面正22角形の基本形状を有する外径38.4mmの電線の断面図、(B)は(A)の電線に平板状突起を形成した本発明のさらに他の実施形態に係る電線の断面図。 (A)は断面正多角形型架空線を形成する最外層素線の一例を示す断面図、(B)は(A)の素線で形成される断面正多角形型架空線に平板状突起を形成する最外層素線を示す断面図。 平板状突起を有する断面正多角形型架空線の直径と正多角形の角数との関係を示すグラフ。 図9のグラフの測定点を直線で結んで風圧荷重及び風騒音の低減に有効な範囲を示すグラフ。 (A)は断面正22角形の基本形状を有する外径36.4mmの電線(公称断面積は図7と同じ)の断面図、(B)は(A)の電線に平板状突起を形成した本発明のさらに他の実施形態に係る電線の断面図。 (A)は断面正多角形型架空線を形成する最外層素線の他の例を示す断面図、(B)は(A)の素線で形成される断面正多角形型架空線に平板状突起を形成する2本1組の最外層素線を示す断面図。 風洞実験設備の説明図。
符号の説明
1:中心鋼撚線
2:内層アルミ線
3:最外層アルミ線
4:凸条
5:凹条
6:平板状突起

Claims (6)

  1. 裸撚線よりなり、断面形状が、直径18.2mmから38.4mmの円に内接する正多角形を基本形状とし、この正多角形基本形状の最も離れた位置にある2つの辺に平板状突起を設けた形であって、
    前記正多角形の角数が、直径18.2mmのときは16角、直径22mmのときは17角、直径24.4mmのときは20角、直径27.4mmのときは20角又は21角、直径32.6mmのときは22角、直径38.4mmのときは22角であり、
    前記平板状突起の高さが0.3mm以上、0.75mm以下である、
    ことを特徴とする架空線。
  2. 裸撚線よりなり、断面形状が、直径18.2mmから38.4mmの円に内接する正多角形を基本形状とし、この正多角形基本形状の最も離れた位置にある2つの辺に平板状突起を設けた形であって、
    前記正多角形の角数Nと前記円の直径dの関係が次式の範囲にあり、
    192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d−0.5<N<192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d+0.5
    前記平板状突起の高さが0.3mm以上、0.75mm以下である、
    ことを特徴とする架空線。
  3. 裸撚線よりなり、断面形状が、直径18.2mmから27.4mmの円に内接する正多角形を基本形状とし、この正多角形基本形状の最も離れた位置にある2つの辺に平板状突起を設けた形であって、
    前記正多角形の角数Nと前記円の直径dの関係が次式の範囲にあり、
    192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d−0.5<N<192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d+0.5
    前記平板状突起の高さが0.2mm以上、0.75mm以下である、
    ことを特徴とする架空線。
  4. 裸撚線よりなり、断面形状が、直径22mmから38.4mmの円に内接する正多角形を基本形状とし、この正多角形基本形状の最も離れた位置にある2つの辺に平板状突起を設けた形であって、
    前記正多角形の角数Nと前記円の直径dの関係が次式の範囲にあり、
    192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d−0.5<N<192.245242−27.4410648d+1.52954875d−0.0360127956d+0.000306889377d+0.5
    前記平板状突起の高さが0.3mm以上、1.0mm以下である、
    ことを特徴とする架空線。
  5. 裸撚線よりなり、断面形状が、直径18.2mmから38.4mmの円に内接する正多角形を基本形状とし、この正多角形基本形状の最も離れた位置にある2つの辺に平板状突起を設けた形であって、
    前記正多角形の角数Nが、前記円の直径dを横軸、角数Nを縦軸とする直角座標において、(d=18;N=16)(d=22;N=17)(d=27.4;N=20)(d=32.6;N=22)(d=38.4;N=22)(d=32.6;N=22)(d=24.4;N=20)(d=18;N=16)の各点を結ぶ直線で囲まれた範囲内にあり、
    前記平板状突起の高さが0.3mm以上、0.75mm以下である、
    ことを特徴とする架空線。
  6. 裸撚線の最外層を構成する素線は、一方の側面に凸条を有し、他方の側面にそれに対応する凹条を有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の架空線。
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