JP4128984B2 - 架空被覆電線 - Google Patents

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Description

本発明は、架空被覆電線、すなわち架空に布設される絶縁電線、ケーブルに係り、強風+降水状態における抗力係数(空気抵抗係数)の増加を抑えると共に、冬季の降雪状態においては難着雪効果が得られる架空被覆電線に関するものである。
例えば、銅又はアルミニウム導体の外周に、ポリ塩化ビニール、ポリエチレン、架橋ポリエチレン等の絶縁材料を押出成形して形成される被覆体(シースを含む。以下同様)を設けてなる架空絶縁電線がある。
このような架空被覆電線において、風圧荷重の低減と難着雪効果を図るものとしては、例えば、架空絶縁電線における被覆体の外表面に周方向に所定の間隔で多数の弧状の凸部と凹部を交互に設けたものが知られている(特許文献1参照)。
特開2001−118434号公報(特許請求の範囲及び図1)
そこで、このような被覆体の外表面に多数の滑らかな凹凸部が形成された低風圧絶縁電線を試作して強風に降水を伴う風洞実験を実施すると、強風と降水が同時に作用する条件下における抗力係数と無降水状態での強風により実験方法により得られた抗力係数との間に差が生じることが分かった。
更に詳細に検討するため、台風時の条件、即ち、強風と豪雨が同時に存在する状況下で、該絶縁電線の空気抵抗、即ち、抗力係数を測定することが必要となり、風洞内に降水状態を再現するための装置を設けて、風速40m/sの強風と降水量5、10、15mm/10分間の降水を同時に発生させ、風洞実験を実施した。その結果、前記絶縁電線では降水が伴う条件下で降水による水滴が電線表面に付着して、設計時に想定している電線表面形状と著しく異なる形状になり、これが抗力係数の変化(増加)をもたらす原因であることが判明した。
強風+降水の風洞実験から前記絶縁電線の外表面に付着した水滴は、該電線の風上表面では後流側に向かって移動し、最終的にははく離点に到着する。一方、はく離点位置では後流からの渦流による戻り方向の流れがあるため、水滴はこのはく離点位置に向かって移動してくる。その結果、はく離点位置には水滴が集合し、電線表面に水路のような水道を形成する事が実験により分かった。従って、前記低風圧絶縁電線では、はく離点位置近傍の谷部(凹部)ははく離点で集合した水により塞がってしまい谷部の効果が失われてしまうものと推測される。
また、架空送電線は電線表面が素線の集合体で構成されるため最外層がねじれているが、前記低風圧絶縁電線の場合、外表面の山部が一般に長手方向に沿って軸線の周りにねじれておらず軸線と略平行(電線製造、架設時に自然に緩くねじれる場合を含む)なので、このことも被覆体の外表面に停留する水滴の量に違いが生じる。ねじれを持つ架空送電線では水路が分断されるが、山部がねじれていない絶縁電線では水路が分断されにくく、はく離点近傍でも主流が表面に近づかないので、水路を小さくする事が容易でない。
このため、通常の風洞実験、即ち、空気の流れだけを再現する実験で得られた抗力係数と、風洞内で強風+降水を再現した条件で計測された抗力係数は、設計時の電線形状を強風+降水時には保てないため、著しく異なる係数となる。即ち、抗力係数がかなり大きくなる結果を示す。従って、例えば、架空絶縁電線の設計条件が台風時による強風+降水状態の場合、抗力係数の見積りを誤る事になる。その結果、安全性を考慮して電柱等の支持物の強度を大きくする必要があり建設費用が嵩む問題がある。
本発明は上記に鑑み生まれたもので、強風+降水状態においても抗力係数の増加を低く抑えて抗力係数の見積り誤りをなくすと共に、風圧荷重の低減と降雪状態における難着雪効果が得られる架空被覆電線を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載された架空被覆電線は、押出成形して形成される被覆体を有し、この被覆体の外表面の形状が、外径dの円に内接するように、辺数Nの等辺を周方向に連接させることにより、周方向に等間隔に、かつ長手方向に略平行に延びる三角状山部を有する角型形状になっていて、前記外径dがmm単位で10≦d≦40、前記辺数Nが12≦N≦25であり、かつ辺数Nが外径dとの関係で、6.785+0.575d−0.006732d≦辺数N≦6.949+0.8380d−0.009694dの式の範囲内にあるように選定された架空被覆電線であって、前記被覆体の周方向に所定角度ずつ離間した位置に在る複数の辺面に、深さ及び幅が0.3mm以上の凹溝が長手方向に連続して形成されることを特徴とするものである。
本発明の請求項1に記載された架空被覆電線によると、被覆体の外表面の形状が外径dに対して上記式を満足するような範囲内に選定された辺数Nを有する角型形状になり、被覆体3の外表面に周方向に等間隔に三角状山部が形成されるから、強風+降水の条件下において、降水による水滴がはく離点位置において付着、停留せず、該位置における水路が扁平、且つ小さくなる。その結果、被覆体の外表面の形状が強風+降水状態においても、設計時に想定している被覆体の外表面の形状と著しく異なる形状にならず、抗力係数の増加が低く抑えられる。従って、強風+降水状態において架空被覆電線の抗力係数を見積り誤る事がなく、電柱等の支持物の強度を必要以上に大きくしなくて済むので建設費用を安くすることができる。
また、三角状山部が形成されるので、被覆体の外表面に水滴が付着しにくくなり、強風+降水状態においても抗力係数が低く押えられて、風圧荷重を低減させることができる。
更に、周方向に所定角度ずつ離間した位置に在る複数の辺面に、深さ及び幅が0.3mm以上の凹溝が長手方向に連続して形成されるので、難着雪効果が得られ、着雪による架空被覆電線の損傷や支持物の損壊等の発生を減らすことができる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面により説明する。図1は本発明に係る架空被覆電線の一実施形態である架空絶縁電線を示す断面図である。この架空絶縁電線1は、例えば、鋼心アルミニウム撚線からなる導体2と、その外周に絶縁材料であるポリエチレン樹脂を押出成形して被覆形成された絶縁層である被覆体3と、周方向に例えば略180度ずつ離間した位置(略180度対称の位置)に在る2辺面に各1個ずつ形成された凹溝4とから構成される。
そして、被覆体3はその押出成形の際、外表面の形状が、外径dの円に内接するように、辺数Nが3以上の等辺を周方向に連接させることにより、周方向に等間隔に、且つ電線1の長手方向に沿って軸線に略平行(電線製造、架設時に自然に緩くねじれる場合を含む)に延びる辺数Nと同数の三角状山部3aを有する角型形状になっていて、辺数Nがmm単位で表示された外径dとの関係で、6.785+0.575d−0.006732d≦辺数N≦6.949+0.8380d−0.009694dの式の範囲内(辺数Nは整数で小数点一位の端数は四捨五入される。以下同様)にあるように選定される。辺数Nが外径dとの関係でこのように選定されることにより、強風+降水状態においても抗力係数の増加を低く抑えられることを下記の実験結果から見出した。
即ち、図1に示すような被覆体3(ポリエチレン樹脂の押出成形体)の外表面の形状が角型形状で、外径dを10、12、14、18、26、40mm、辺数Nを10〜27の範囲で種々異ならせた各種の架空絶縁電線1(但し、凹溝4は形成せず)を30本試作し、各電線1について風洞実験を行い、架空線路設備設計時に用いられる最高風速40m/s、降水条件5、10、15mm/10分(min)間の降水量の範囲で強風+降水状態における抗力係数の測定を行った。なお、降水条件は過去に観察された台風で強風と降水量の記録から採用した値である。
本実験のために試作された架空絶縁電線1の外径d及び辺数N、並びに各電線1に対する強風+降水状態における抗力係数の測定値は表1に示す通りである。表1中の評価で、「効果大」は抗力係数が0.80未満、「効果中」は抗力係数が0.80〜1.0未満、「効果小」は抗力係数が1.0以上である。
Figure 0004128984
表1の結果より次のようなことが分かる。即ち、被覆体3の外径dが10mmのサイズでは、辺数Nが12、14の場合の抗力係数が0.89〜0.937で効果が中と、また、辺数Nが10、16の場合は抗力係数が1以上で効果が小と判断できる。
被覆体3の外径dが12mmのサイズでは、辺数Nが13、14、16の場合の抗力係数が0.785〜0.968で降水量によっては0.7台のものも含まれるが効果が中と、また、辺数Nが10、20の場合は抗力係数が1以上で効果が小と判断できる。
被覆体3の外径dが14mmのサイズでは、辺数Nが17の場合の抗力係数が0.785〜0.793で効果が大と、また、辺数Nが14の場合の抗力係数が0.799〜0.816で効果が中と、更に、辺数Nが10、20の場合の抗力係数が1以上で効果が小と判断できる。
被覆体3の外径dが18mmのサイズでは、辺数Nが17の場合の抗力係数が0.697〜0.785で効果が大と、また、辺数Nが15、19の場合の抗力係数が0.874〜0.903で効果が中と、更に、辺数Nが13、22、25の場合の抗力係数が降水量によっては0.8〜0.9台のものも含まれるが、1以上のものもあるので効果が小と判断できる。
被覆体3の外径dが26mmのサイズでは、辺数Nが20の場合の抗力係数が0.723〜0.784で効果が大と、また、辺数Nが17、22の場合の抗力係数が0.764〜0.879で降水量によっては0.7台のものも含まれるが中と、更に、辺数Nが14、25の場合の抗力係数が降水量によっては0.9台のものも含まれるが、1以上のものもあるので効果が小と判断できる。
被覆体3の外径dが40mmのサイズでは、辺数Nが22、24の場合の抗力係数が0.625〜0.784で効果が大と、また、辺数Nが19、25の場合の抗力係数が0.728〜0.954で降水量によっては0.7台のものも含まれるが中と、更に、辺数Nが16、27の場合の抗力係数が降水量によっては0.9台のものも含まれるが、1以上のものもあるので効果が小と判断できる。
以上の実験結果を総合すると、被覆体3の外径dと角型形状の辺数Nとの間に大きな相関関係のあることが分かる。即ち、被覆体3の外表面における角型形状の辺数Nが、被覆体3の外径dとの関係で、6.785+0.575d−0.006732d≦辺数N≦6.949+0.8380d−0.009694dの式の範囲内にあるように選定されると、強風+降水状態における抗力係数が前記したように1未満となり、表1における効果が大又は中となる。このような所望の抗力係数が得られる被覆体3の外径dに対する辺数Nの好ましい範囲をグラフにすると図2に示すとおりになる。
次に前記図1の凹溝4は、断面形状が深さ及び幅が0.3mm以上の略三角形状(略V形状)で、架空絶縁電線1の長手方向に連続して形成される。凹溝4の開口縁部及び谷底縁部はR状に面取りされて丸みを帯びている。
そして、被覆体3の外表面の形状が、外径dの円に内接するように、辺数Nが3以上の等辺を周方向に連接させることにより、周方向に等間隔に三角状山部を有する角型形状になっていて、辺数Nがmm単位で表示された外径dとの関係で、6.785+0.575d−0.006732d≦辺数N≦6.949+0.8380d−0.009694dの式の範囲内にあるように選定されると共に、周方向に略180度ずつ離間した位置に在る2辺面を始め、それ以外の所定角度ずつ離間した位置に在る複数の辺面に深さ及び幅が0.3mm以上の複数の凹溝が長手方向に連続して形成されることにより、難着雪効果が得られることを下記の実験結果から見出した。
即ち、図1に示すような被覆体3(ポリエチレン樹脂の押出成形体)の外表面の形状が角型形状で、外径dを10、19、25、40mm、辺数Nを13〜22の範囲で種々異ならせ、且つ、凹溝4が形成されないもの、深さが0.3mm、0.5mm、幅が0.3mm、0.5mmの凹溝4が形成されたものといった各種の架空絶縁電線1を9本試作した。なお、被覆体3の角型形状の辺数Nは、mm単位で表示された外径dに対していずれも6.785+0.575d−0.006732d≦辺数N≦6.949+0.8380d−0.009694dの式の範囲内にあるように選定されているものである。
そして、各電線1について、風洞実験装置(図示せず)により風洞実験を行い、最高風速40m/s、降水条件15mm/10分(min)間の降水量の範囲で強風+降水状態における抗力係数の測定を行った。また、図3に示すような難着雪試験装置5を用いて難着雪効果の評価を行った。なお、この試験装置5は、雪6をブロアー7で架空絶縁電線1の外表面に向けて吹き付けながら、途中で水分8を加湿器9で雪6に含ませて、前記電線1の外表面に着雪させ、冬季における難着雪効果の有無を評価するものである。その結果を下記表2に示す。
表2において、凹溝4の個数が2個とは、被覆体3の周方向に略180度ずつ離間した位置に在る2辺面に各1個の凹溝4が形成される場合であり、個数が4個とは、被覆体3の周方向に略90度ずつ離間した位置に在る4辺面に各1個の凹溝4が形成される場合であり、個数が6個とは、被覆体3の周方向に略60度ずつ離間した位置に在る6辺面に各1個の凹溝4が形成される場合である。また、これら凹溝4はいずれも、被覆体3の辺同士が交わる頂点部位ではなく、辺面の中間部位に、且つ、被覆体3の周方向にほぼ等間隔に形成、配置されている。特に、凹溝4が前記辺面の中間部位に形成されていると、夏季、秋季の強風、降水状態において、凹溝4に水滴が滞留し難く、抗力係数の増加を抑えるのにより有効である。
Figure 0004128984
表2の結果より次のようなことが分かる。即ち、架空絶縁電線1の被覆体3の外径dが10mm、辺数Nが13、被覆体3の外径dが40mm、辺数Nが22の場合には、いずれも被覆体3の外表面の形状が外径dに対して上記式を満足するような範囲内に選定された辺数Nを有する角型形状になっており、強風+降水状態における抗力係数の低減効果は得られたが、凹溝4を有しないので、被覆体3に多く着雪し、難着雪効果が得られない。これに対して、残りの7本の架空絶縁電線1の場合は、いずれも被覆体3の外表面の形状が外径dに対して上記式を満足するような範囲内に選定された辺数Nを有する角型形状になっており、強風+降水状態における抗力係数の低減効果が得られる。また、被覆体3の周方向に略180度、略90度、略60度ずつ離間した位置に在る2、4、6辺面に、深さ及び幅が0.3mm以上の凹溝4が形成されており、被覆体3への着雪量が制限されて難着雪効果が得られる。なお、周方向に略120度ずつ離間した位置に在る3辺面に、深さ及び幅が0.3mm以上の凹溝4が形成される場合等においても同様な効果が得られるものである。
以上のように、架空絶縁電線1において、被覆体3の外表面の形状が外径dに対して上記式を満足するような範囲内に選定された辺数Nを有する角型形状になり、被覆体3の外表面に周方向に等間隔に三角状山部3aが形成されるから、強風+降水の条件下において、降水による水滴がはく離点位置において付着、停留せず、該位置における水路が扁平、且つ小さくなる。その結果、被覆体3の外表面の形状が強風+降水状態においても、設計時に想定している被覆体3の外表面の形状と著しく異なる形状にならず、抗力係数の増加が低く抑えられる。従って、強風+降水状態において架空絶縁電線1の抗力係数の見積りを誤る事がなく、電柱等の支持物の強度を必要以上に大きくしなくて済むので建設費用を安くすることができる。
また、三角状山部3aが形成されるので、被覆体3の外表面に水滴が付着しにくいため、強風+降水状態においても抗力係数が低く押えられて、風圧荷重を低減させることができる。
更に、被覆体3の周方向に所定角度ずつ離間した位置に在る複数の辺面に、深さ及び幅が0.3mm以上の凹溝4が長手方向に連続して形成されるので、難着雪効果が得られ、着雪による架空被覆電線の損傷や支持物の損壊等の発生を減らすことができる。
なお、前記被覆体3の外表面における角型形状の辺数Nが、被覆体3の外径dとの関係で、5.222+0.7894d−0.009889d≦辺数N≦7.222+0.7894d−0.009889dの式の範囲内(辺数Nは整数で小数点一位の端数は四捨五入される)にあるように選定されるようにすると、強風+降水状態における抗力係数が前記表1の効果大又はこれに近い評価になる。従って、強風+降水状態における抗力係数の低減効果が更に大きくなり、架空絶縁電線1の風圧荷重がより低減され、より優れた難着雪効果が得られるので好ましい。
また、被覆体3の外表面の各三角状山部3aを結ぶ辺は直線状であるが、若干外凸状又は内凹状に緩くわん曲していてもよい。更に、被覆体3の外表面の各三角状山部3aは若干丸みを持っていてもよい。更に被覆体3に形成される凹溝4は、略U形状、半楕円形状、半円形状等のような形状にすることができる。
本発明に係る架空布設電線の一実施形態である架空絶縁電線を示す断面図である。 図1の架空絶縁電線が強風+降水状態において、所望の抗力係数を得るために必要な被覆体の外径dに対する辺数Nの範囲を示すグラフである。 図1に示す架空絶縁電線の難着雪効果を評価する難着雪試験装置の説明図である。
符号の説明
1 架空絶縁電線
2 導体
3 被覆体
3a 三角状山部
4 凹溝
5 難着雪試験装置
6 雪
7 ブロアー
8 水分
9 加湿器

Claims (1)

  1. 押出成形して形成される被覆体を有し、この被覆体の外表面の形状が、外径dの円に内接するように、辺数Nの等辺を周方向に連接させることにより、周方向に等間隔に、かつ長手方向に略平行に延びる三角状山部を有する角型形状になっていて、前記外径dがmm単位で10≦d≦40、前記辺数Nが12≦N≦25であり、かつ辺数Nが外径dとの関係で、6.785+0.575d−0.006732d≦辺数N≦6.949+0.8380d−0.009694dの式の範囲内にあるように選定された架空被覆電線であって、前記被覆体の周方向に所定角度ずつ離間した位置に在る複数の辺面に、深さ及び幅が0.3mm以上の凹溝が長手方向に連続して形成されることを特徴とする架空被覆電線。
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